説明

タイヤ検査装置

【課題】上リムと下リムとで挟持したタイヤ内に空気を供給し、タイヤを上リムと下リムと共に回転させてタイヤを検査するタイヤ検査装置において、タイヤ内への空気の供給及びタイヤ内の空気の排出時間を短くして検査時間の短縮化を図る。
【解決手段】上リム2と下リム1とによって挟持したタイヤW内に、空気を供給することが可能であると共に、タイヤW内の空気を排出することが可能な第1,第2の通気路を備え、各通気路の一部を、スピンドル32に穿設した通気孔aおよび連結軸26に穿設した通気孔bによってそれぞれ構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの動的釣合いやユニフォーミティなどを検査するタイヤ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記タイヤ検査装置、例えば、タイヤの動的釣合いを検査するタイヤ用ダイナミックバランサでは、検査対象のタイヤを、昇降される上リムとスピンドルに連結固定された下リムとの間に挟持し、タイヤ内に空気を供給して膨張させた後、スピンドルを駆動してタイヤを所定速度で回転させ、タイヤのアンバランスにより発生する水平方向の遠心力をロードセル等の荷重センサで計測するように構成されている。タイヤ内への空気の供給および検査後の空気の排出は、下リム側のスピンドルの内部に形成したエア通路を介して下リム側のみで行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−223570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造の場合、スピンドルの内部に形成するエア通路は、スピンドルの剛性を低下させない程度の断面積の小さいものであり、このため、タイヤへの空気の供給および排出に要する時間が長くなり、ひいては、検査時間が長くなる一因となるものであった。もちろん、スピンドル径を大きくすれば、断面積の大きいエア通路を形成して空気の供給時間および排出時間を短縮することが可能となるが、この場合には、スピンドルの大径化に伴ってスピンドルに関わる、ベアリング等の各種部品も大型のものとなり、装置全体の大型化や重量増大を招くことになる。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、部材の大型化に伴う装置全体の大型化や重量増大を招くことなく空気の流路面積を十分確保し、タイヤ内への空気の供給時間やタイヤ内に充填封入された空気の排出時間を短縮できるようにすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、次のように構成している。
【0007】
(1)本発明は、上リムと下リムとで挟持したタイヤ内に空気を供給して、前記タイヤを上リムおよび下リムと共に回転させて検査を行うタイヤ検査装置であって、
前記上リムと前記下リムとで挟持したタイヤ内に連通する上リム側の第1通気路と、前記タイヤ内に連通する下リム側の第2通気路とを備える。
【0008】
本発明によると、両リムによって挟持したタイヤ内に連通する、上リム側の第1通気路および下リム側の第2通気路の2系統の通気路を備えているので、これら2系統の通気路によって、例えば、タイヤ内への空気の供給およびタイヤ内の空気の排出を行うことができ、1系統でタイヤ内への空気の供給およびタイヤ内の空気の排出を行う場合に比べて、空気の供給時間および排出時間を短縮することができ、タイヤの検査に要する時間を短縮することができる。
【0009】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記第1通気路または前記第2通気路の一方は、空気供給源および外気に接続可能であって、前記タイヤ内への空気の供給および該タイヤ内の空気の排出を行なうものであり、
前記第1通気路または前記第2通気路の他方は、前記空気供給源および前記外気の少なくともいずれか一方に接続可能であって、前記タイヤ内への空気の供給および該タイヤ内の空気の排出の少なくともいずれか一方を行なうものである。
【0010】
この実施態様によると、第1通気路および第2通気路の一方の系統の通気路では、前記タイヤ内への空気の供給および該タイヤ内の空気の排出を行ない、他方の系統の通気路では、前記タイヤ内への空気の供給および該タイヤ内の空気の排出の少なくともいずれか一方を行なうので、1系統でタイヤ内への空気の供給およびタイヤ内の空気の排出を行う場合に比べて、空気の供給時間および排出時間の少なくとも一方の時間を短縮することができる。
【0011】
(3)本発明の他の実施態様では、前記下リムが連結されたスピンドルに、前記第2通気路の一部を構成する通気孔を穿設し、前記上リムから延出されて前記スピンドルに挿入連結される連結軸に、前記第1通気路の一部を構成する通気孔を穿設する。
【0012】
この実施態様によると、空気の流路面積は上リム側と下リム側との2系統の通気路の和となるので、下リム側の通気路を構成するスピンドルに穿設した通気孔、および、上リム側の通気路を構成する連結軸に穿設した通気孔をそれぞれ小径のものにしながら十分な流路面積を確保することができ、その結果、通気孔を穿設する部材およびこれに関わる部材の大型化を回避することができる。
【0013】
(4)本発明の更に他の実施態様では、前記第1通気路および前記第2通気路には、各リムと共にそれぞれ回転する回転側の通気路と回転しない非回転側の通気路とを接続分離するカプラを、それぞれ介在させる。
【0014】
この実施態様によると、上下リムで挟持したタイヤを回転させて検査する際に、カプラを分離操作しておくことで、回転系統を固定側から機械的に分離した自由状態にして回転作動させることができ、外部からの回転抵抗などの影響を受けることなく精度の高い検査を行うことができる。
【0015】
なお、本発明の他の実施形態として、回転側の通気路と回転しない非回転側の通気路とを接続分離するカプラを、第1通気路または第2通気路の一方の通気路だけに設けてもよい。
【0016】
(5)本発明の他の実施態様では、前記第1通気路および前記第2通気路は、それぞれ開閉弁を介して前記空気供給源および前記外気に接続される。
【0017】
この実施態様によると、開閉弁の開閉を制御することによって、第1通気路および第2通気路の2系統の通気路でタイヤ内に空気の供給を行うことができる一方、前記2系統の通気路でタイヤに封入した空気の排出を行うことができ、1系統で供給および排出を行う場合に比べて、空気の供給および排出の時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、部材の大型化に伴う装置全体の大型化や重量増大を招くことなく空気の流路面積を十分確保し、タイヤ内への空気の供給時間やタイヤ内に充填された空気の排出時間を短縮することができ、これによって、検査に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】タイヤ検査装置の側面図である。
【図2】計測部の正面図である。
【図3】計測部の横断平面図である。
【図4】上リムを連結した状態の縦断面図である。
【図5】要部を拡大した縦断面図である。
【図6】加圧空気の給排構造を示す概略図である。
【図7】把持機構の側面図である。
【図8】把持機構の平面図である。
【図9】把持機構の駆動構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以降の説明においては、タイヤWの搬入搬出方向を前後方向、これと直交する横方向を左右方向と呼称する。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ検査装置の側面図である。このタイヤ検査装置には、検査対象のタイヤWを嵌合支持する下リム1が装備された計測部Aと、下リム1と協同してタイヤWを上下から挟持する上リム2を昇降させるリム昇降装置Bと、タイヤWを左右から挟持して前後方向(図1中で紙面に垂直方向)に水平搬送および上下移動させるタイヤ搬送装置Cとが備えられている。このタイヤ搬送装置Cによって計測部Aに搬入されたタイヤWを下リム1と上リム2とで上下に挟持した後、タイヤW内に空気を供給充填して膨張させ、この膨張状態でタイヤWを所定速度で回転させ、アンバランスによって発生する水平方向の遠心力を計測することで、タイヤWの動的釣合いを検査するよう構成されており、以下、各部の構造について説明する。
【0021】
タイヤ搬送装置Cには、タイヤ搬送径路の左右両脇に固定配備されたベース板3、各ベース板3に前後水平に設けられたレール4に沿ってスライド前後移動可能な左右一対の前後可動台5、各前後可動台5に左右水平に設けられたレール6に沿ってスライド左右移動可能な左右一対の左右可動台7、縦レール8に沿ってスライド上下移動可能に左右可動台7に支持された上下可動台9、各上下可動台9の前後複数箇所に縦向きに軸支した多数個の支持ローラ10が備えられている。更に、タイヤ搬送装置Cには、左右の前後可動台5を同調して前後移動させる駆動手段、左右の左右可動台7を同調して接近および離反移動させる駆動手段、および、左右の上下可動台9を同調して上下移動させる駆動手段、等が備えられている。
【0022】
タイヤ搬送径路を挟んで対応する左右可動台7を同調して接近移動させることで、支持ローラ10群によってタイヤWを左右から押圧してセンタリングすることができると共に、さらに強く押圧挟持することでタイヤWを落下することなく支持ローラ10群で把持することができる。そして、この把持状態で左右の前後可動台5を同調して前後移動させることで、把持したタイヤWを水平に前後移動させることができ、また、タイヤ把持状態で左右の上下可動台9を同調して上下移動させることで、把持したタイヤWを持上げあるいは下降させることができる。
【0023】
リム昇降装置Bは、計測部Aにおける主フレーム11の側面にフレーム12を介して連結された支柱フレーム13に、縦レール14を介してスライド上下動可能に昇降台15を支持し、この昇降台15に備えた把持機構16を介して上リム2を支持し、ネジ軸17をモータ18で正逆回転して昇降台15をネジ送り移動することで、把持機構16で把持した上リム2を昇降するよう構成されている。
【0024】
前記把持機構16の詳細な構造が図7〜図9に示されている。この把持機構16は、昇降台15の下面に連結した支持ブラケット19の前面に、上下一対のレール20を介して前後方向に水平移動可能に前後一対の可動把持部材21を装着した構造となっている。各可動把持部材21にはラックギヤ部材22が連結されており、各ラックギヤ部材22が、支持ブラケット19の前面中央に水平支点x周りに遊転自在に支持されたピニオンギヤ23の上下箇所にそれぞれ咬合され、両可動把持部材21が同調して前後方向に背反移動するよう構成されている。そして、一方の可動把持部材21をエアシリンダ24で前後動させることで、両可動把持部材21が連動して互いに接近移動および離反移動し、接近移動する両可動把持部材21で、上リム2の中心部から上方に延出された図1に示される支持軸25の所定箇所を前後から把持するよう構成されている。なお、支持軸25は、上リム2に連結されて下方に延出された連結軸26の上端に一体連結されると共に、連結軸26にはリム交換時に用いるリム支持軸27が外嵌連結されている(図5参照)。
【0025】
図1に示すように、計測部Aの主フレーム11は矩形箱形に構成されており、スピンドル32が回転自在に鉛直に挿通支持され、主フレーム11の上面から突出したスピンドル32の上部に下リム1が連結されている。
【0026】
図2は、計測部Aの構成を示す正面図であり、図3は、計測部Aの横断平面図であり、図4は、上リムを連結した状態の縦断面図である。
【0027】
計測部Aの主フレーム11の中央部位に配備された支持ケーシング31の上下2箇所と主フレーム11の側壁11aとが、平行に水平配備された左右一対ずつのトーションバー33を介して連結されると共に、支持ケーシング31の上下中間部位と主フレーム11の上壁11bとが、鉛直配備された前後一対のトーションバー34を介して連結されている。また、支持ケーシング31の上下2箇所と主フレーム11の側壁11aとに亘って荷重検出用のロードセル35が架設されている。
【0028】
支持ケーシング31は、上方の筒状部31aと、その下部に連設された対向する一対の板状部31bとを備えており、その筒状部31aに前記スピンドル32が上下2組の軸受け36を介して鉛直軸心p周りに回動可能に支承されている。
【0029】
スピンドル32の下端部が支持ケーシング31の対向する板状部31b間に挿入され、その挿入端に備えたプーリ37と、主フレーム11の外側に配備された中継プーリ38とが歯付きのベルト39を介してスリップなく巻き掛け連動されると共に、図3に示すように、中継プーリ軸38aがサーボモータ40にベルト41を介してスリップなく巻き掛け連動されている。
【0030】
また、スピンドル32とロータリエンコーダ42とがベルト43を介してスリップなく等速で巻き掛け連動され、スピンドル32の回転位置がロータリエンコーダ42で検出されるようになっている。
【0031】
スピンドル32の上方大径部32aは、図5に示すように、支持ケーシング31および主フレーム11の上壁11bを越えて上方に突出され、この上方大径部32aに下リム装着用のフランジ44が備えられている。このフランジ44の上面には、例えば、カービックカップリングやハースカップリング(商品名)などの自動調芯カップリング45の下側カップリング45aがスピンドル32と同芯にボルト連結されている。また、自動調芯カップリング45における上側カップリング45bが、下リム1の下面に連結したブラケット46を介して下リム1と同芯にボルト連結されている。
【0032】
自動調芯カップリング45は、周知のように、上面周部に放射状に歯が形成された下側カップリング45aと、下面周部に放射状に歯が形成された上側カップリング45bとからなり、両者を上下方向に咬合させることで、下側カップリング45aと上側カップリング45bとが同芯に結合されると共に、両者が周方向ならびに前後左右に相対移動しない自動調芯機能を備えるものである。
【0033】
従って、下リム1をスピンドル32の上方から下降させ、上側カップリング45bをフランジ44上の下側カップリング45aに載せつけて咬合させるだけで、自動調芯カップリング45の自動調芯機能によって下リム1は高い精度でスピンドル32と同芯状態となる。
【0034】
上記のようにしてスピンドル32と同芯に装着した下リム1をスピンドル32に連結固定する一対のチャック機構47が、図2に示すようにスピンドル32の軸心pに対して対角位置に位置するようフランジ44の外周部位に備えられている。
【0035】
詳細な構造は図示しないが、前記チャック機構47は、図5に示すように、下リム1の下面における対角位置から下方に突出させた一対のロックピン48を、前記フランジ44の外周部に配備固定されたチャックケース49に上方から挿入し、挿入されたロックピン48にロックボールを係合させてチャックケース49からのロックピン48の抜け出しを阻止するよう構成されたものであり、ロックピン48をチャックケース49に挿入して抜け止めロックをかけることで下リム1をスピンドル32と一体化することができる。
【0036】
スピンドル32における上方大径部32aの上端には、上リム2の中心から下方に延出された上記連結軸26が挿入される上リム連結用筒軸51が同芯に連結されると共に、この上リム連結用筒軸51の下半部における上下2箇所に、周方向一定ピッチで複数個(この例では8個)づつロックボール52が組み込まれている。
【0037】
他方、連結軸26の下部外周には、上下2組のロックボール52群が入り込む環状の係合溝53が一定のピッチで多数形成されている。
【0038】
前記ロックボール52は、上リム連結用筒軸51に内外方向に移動可能に外周から挿入されており、内方に移動すると上リム連結用筒軸51の内周にロックボール52の一部が突出し、連結軸26が挿入されている場合にはロックボール52が連結軸26の係合溝53に入り込む。また、ロックボール52が外方に移動して上リム連結用筒軸51の内周から外方へ退避することで連結軸26の挿抜が許容されるようになっている。なお、上リム連結用筒軸51に形成されたボール挿入孔の内端はボール径より若干小さくなっており、連結軸26が挿入されていない状態でもロックボール52が上リム連結用筒軸51の内部に落ち込むことはない。
【0039】
上リム連結用筒軸51の下端外周には、操作筒軸55が上下スライド可能に外嵌配備されている。この操作筒軸55の内周面における上下2箇所には環状溝56が備えられており、操作筒軸55が下方にスライドされると、各環状溝56がロックボール52より下方に外れ、操作筒軸55の内面でロックボール52の外方移動が当接阻止される。また、操作筒軸55が上方にスライドされると、各環状溝56がロックボール52に対向し、ロックボール52の外方への移動空間が形成される。つまり、操作筒軸55が下方スライド位置にあると、ロックボール52が内方に突出されたロック状態に保持され、操作筒軸55が上方スライド位置にあると、ロックボール52の外方後退が許容されたロック解除状態となるのである。
【0040】
操作筒軸55の下端からは小径軸部55aが延出されて、図4に示すように支持ケーシング31の対向する板状部31b間に挿入されている。小径軸部55aの外周には圧縮コイルバネ57が外嵌装着されており、バネ上端がスピンドルに連結固定された上部バネ受けカラー58に支持されると共に、バネ下端が小径軸部51aに外嵌固定した下部バネ受けカラー59に支持されている。従って、この圧縮コイルバネ57の弾発力によって操作筒軸55が下方のロック位置に向けてスライド付勢されている。
【0041】
また、小径軸部55aの下端近くには操作フランジ55bが備えられると共に、支持ケーシング31における板状部31bの内側には、エアシリンダ60で上下移動される操作部材61が配備されており、エアシリンダ60を突出作動させて操作部材61を上方に移動させると、この操作部材61の上端に備えたローラ61aによって操作フランジ55bが突き上げ操作され、操作筒軸55が圧縮コイルバネ57に抗して上方にスライドされ、上記したロック解除状態がもたらされる。
【0042】
このタイヤ検査装置においては、下リム1と上リム2とで挟持したタイヤWへの加圧空気の給気及び排気を下リム側および上リム側から行うよう構成されており、以下その構造について説明する。
【0043】
この実施形態では、上リム2と下リム1とで挟持したタイヤW内に連通する上リム側の第1通気路と、前記タイヤW内に連通する下リム側の第2通気路とを備えている。
【0044】
下リム側においては、第2通気路を構成する操作筒軸55における小径軸部55aの中心に、図4及び図5に示すように、操作筒軸55の内部空間に連通する通気孔aが形成されていると共に、小径軸部55aの下端部にロータリジョイント65が装備され、更に、ロータリジョイント65と図6に示す加圧空気供給装置66とが、図2に示すようにエアシリンダ67によって接続および分離可能なカプラ68を介して連通接続されている。
【0045】
加圧空気供給装置66は、コンプレッサや加圧空気を貯留したエアタンクなどの加圧空気供給源69から送出された加圧空気を、高圧の減圧弁70および電磁開閉弁72を介して、あるいは、低圧の減圧弁71および電磁開閉弁73を介して前記ロータリジョイント65に送り込むよう配管接続されている。また、電磁開閉弁72,73より下手側から大気に連通した第2通気路としての排気路dが分岐されると共に、この排気路dに電磁開閉弁74および消音器75が備えられている。
【0046】
上リム側においては、前記連結軸26と、その上端に連結された支持軸25の中心に亘って第1通気路を構成する通気孔bが穿設されると共に、この通気孔bと連結軸26に外嵌したリム支持軸27の外周に亘って複数の通気孔cが放射状に穿設されている。
【0047】
また、支持軸25の上端部と加圧空気供給装置76とが、図2に示すようにエアシリンダ77によって接続および分離可能なカプラ78を介して連通接続されている。この加圧空気供給装置76も下リム側と同様に、図6に示す加圧空気供給源79から送出された加圧空気を、高圧の減圧弁80および電磁開閉弁82を介して、あるいは、低圧の減圧弁81および電磁開閉弁83を介してカプラ78に送り込むよう配管接続されている。また、電磁開閉弁82,83より下手側から大気に連通した第1通気路としての排気路eが分岐されると共に、この排気路eに電磁開閉弁84および消音器85が備えられている。
【0048】
タイヤ検査装置の主要部は以上のように構成されており、次に、その検査の動作について説明する。
【0049】
(1)図1に示すように、初期セット状態では、上リム2は下リム1から上方に大きく離れた位置で待機しており、タイヤ搬送装置Cにセンタリング把持されて検査対象のタイヤWが計測部Aに搬入されてくる。
【0050】
(2)タイヤWが計測部Aの中心上に到達すると、タイヤ搬送装置Cの上下可動台9が下降して、タイヤWの下側ビード部が下リム1に嵌合され、その後、左右の左右可動台7が同調して後退移動し、支持ローラ10群によるタイヤWの把持が解除される。
【0051】
(3)次に、待機位置の上リム2が下降される。この場合、スピンドル側では操作筒軸55がエアシリンダ60によって上方にスライド操作されてロック解除状態にある。従って、上リム2の連結軸26は上リム連結用筒軸51に挿入することができる。
【0052】
(4)上リム2が、装着したタイヤWの幅に対応して予め設定された高さ位置に至ると上リム下降作動が停止され、その後、エアシリンダ60が後退作動して操作筒軸55が下方のロック位置に付勢スライドする。ここで、連結軸26に形成した係合溝53のピッチはタイヤサイズの変更ピッチに対応されているので、上下2組のロックボール52はそれぞれいずれかの係合溝53に対向し、下方スライドする操作筒軸55に押されてロックボール52が対応する係合溝53に係合される。これによって上リム2の上下方向での位置決めロックが完了する。
【0053】
(5)次に、下リム側の第2通気路と上リム側の第1通気路からタイヤWへ空気供給作動が開始される。すなわち、先ず高圧側の電磁開閉弁72,82が開かれて高圧空気が設定時間だけ通気孔a,bに送出され、その後、低圧側の電磁開閉弁73,83が開かれて低圧空気が通気孔a,bに送出される。その場合、下リム側では、加圧空気が接続状態のカプラ68およびロータリジョイント65を経て通気孔aに送り込まれ、また、上リム側では、加圧空気が接続状態のカプラ78を経て通気孔bに送り込まれ、上下から合流した加圧空気が通気孔cからタイヤ内に供給される。
【0054】
(6)下リム側および上リム側からの空気供給によってタイヤWが所定の内圧になるまで膨張されると加圧空気の供給が停止され、上下の各カプラ68,78がエアシリンダ67,77によってそれぞれ分離される。各カプラ68,78は、接続によって通気状態となり、分離に連動して閉じる自閉機能が備えられており、各カプラ68,78の分離後もタイヤ内の空気封入状態が維持される。
【0055】
また、加圧空気の供給が停止されると、把持機構16による支持軸25の把持が解除されて、支持軸25は把持機構16および加圧空気供給装置76から機械的に分離された自由状態となる。
【0056】
(7)その後、サーボモータ40が起動されてスピンドル32が回転され、下リム1および上リム2で挟持されたタイヤWを所定の速度で回転することで、その時にアンバランスによって発生する水平方向の遠心力が、支持ケーシング31に連結された上下のロードセル35で検出される。検出されたデータはロータリエンコ−ダ42からの回転位置情報と共に演算処理装置に伝達され、タイヤWの動的釣合いが演算されると共に、軽点位置などの演算が行われる。
【0057】
(8)測定が終了すると、下リム1が基準位置に戻されるようにスピンドル32が回転制御され、その後、カプラ68,78が接続されると共に、電磁開閉弁74,84が開かれて排気径路d,eが開放され、タイヤWに充填封入された空気が通気孔cから第1,第2の通気路を構成する通気孔b,aに分散流動して、下リム側および上リム側の2系統から速やかに流出する。
【0058】
(9)その後、操作筒軸55が再び上方移動されてロック解除状態がもたらされると共に、上リム2の支持軸25が把持機構16によって把持される。
【0059】
リム昇降装置Cが作動して上リム2が元の待機位置まで上昇されて、次の測定処理に備えられる。
【0060】
(10)次に、タイヤ搬送装置Cが作動して検査済みのタイヤWを強く把持した後、持ち上げることでタイヤWが下リム1から分離され、引き続きタイヤWが水平に搬出され、これで1回の検査が完了し、以後、新たなタイヤ搬入のつど上記手順を順次繰り返す。
【0061】
以上のように、この実施形態によれば、上リム2側と下リム1側との2系統の通気路を介してタイヤW内への空気の供給を行うと共に、タイヤW内の空気の排出を行うので、1系統でタイヤWへの空気の供給および排出を行う場合に比べて、空気の供給時間および排出時間を短縮することができ、タイヤWの検査処理の向上を図ることができる。
【0062】
更に、タイヤWを回転させてそのアンバランスを測定する際には、上下の各カプラ68,78が分離されて回転部分と外部の非回転部分とが分離されるので、外部からの回転抵抗などの影響を受けることなく精度の高い測定を行うことができる。
【0063】
また、下リム側のみで空気の供給および排出を行う従来例では、カプラ68を備えておらず、ロータリジョイント65に、空気の供給及び排出のためのエアホースが常時接続されている。このため、タイヤWを回転させてそのアンバランスを測定する際に、回転部分がエアホースからの外力を受けることがないようにエアホースを配設しなければならず、狭いスペースでのエアホースの配設は容易でないが、この実施形態では、かかる不具合もない。
【0064】
なお、この実施形態のタイヤ検査装置では、検査対象となるタイヤWのサイズ変更に伴って上下リム1,2の交換が必要となった場合、リム昇降装置Bを利用して下リム1をスピンドル32から取り外すことができるようになっている。
【0065】
すなわち、上リム2を下降させて連結軸26を上リム連結用筒軸51に挿入した後、スピンドル32を介して下リム1を基準位置から所定角度(例えば45度)だけ所定方向に回動させると、チャック機構47が、主フレーム11の上面に設置したロック解除用シリンダ86(図5参照)の直上に位置する。この状態でロック解除用シリンダ86を上方に突出作動させることで、チャック機構47から下方に付勢突出された解除操作部材47aが付勢力に抗して突き上げ操作され、これによってチャック機構47がロック解除され、ロックピン48がチャックケース49から抜き出し可能な状態となる。下リム1を基準位置から所定角度だけ所定方向に回動させた状態では、連結軸26に外嵌連結したリム支持軸27の下端に十字状に備えた係合爪27aが下リム1の中央に設けられた十字形の開口部1aに係合可能な状態となり、この状態で上リム2を上昇させることで、係合爪27aと開口部1aとの係合によってリム支持軸27の下端部に係合支持された下リム1が上リム2と共に持上げられることになるのである。
【0066】
(他の実施形態)
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0067】
(1)上記実施形態では、下リム側および上リム側から加圧空気をタイヤWに供給すると共に、タイヤWに充填した空気の排出を行うようにしているが、加圧空気の供給を下リム側からのみ行い、タイヤWからの空気の排出を下リム側および上リム側から行う形態で実施することもできる。これによると、下リム側からのみ供給及び排出を行っていた従来より排出時間を短縮することができる。
【0068】
(2)また、加圧空気の供給を下リム側からおよび上リム側から行い、タイヤWからの空気の排出を下リム側からのみ行う形態で実施することもできる。これによると、下リム側からのみ供給及び排出を行っていた従来より加圧空気供給時間を短縮することができる。
【0069】
(3)下リム側の給排気系に介在したカプラ68を廃して、ロータリジョイント65と加圧空気供給装置66とを常時配管接続した従来の仕様で実施することもできる。この場合、上リム側の給排気系に備えたカプラ78に代えてロータリジョイントを介在し、このロータリジョイントと加圧空気供給装置76とを常時配管接続した形態としてもよい。
【0070】
(4)下リム側の加圧空気供給装置66と上リム側の加圧空気供給装置76の構成の少なくとも一部を共用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 下リム
2 上リム
26 連結軸
32 スピンドル
66 加圧空気供給装置
68 カプラ
76 加圧空気供給装置
78 カプラ
a 通気孔(第2通気路)
b 通気孔(第1通気路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上リムと下リムとで挟持したタイヤ内に空気を供給して、前記タイヤを上リムおよび下リムと共に回転させて検査を行うタイヤ検査装置であって、
前記上リムと前記下リムとで挟持したタイヤ内に連通する上リム側の第1通気路と、前記タイヤ内に連通する下リム側の第2通気路とを備える、
ことを特徴とするタイヤ検査装置。
【請求項2】
前記第1通気路または前記第2通気路の一方は、空気供給源および外気に接続可能であって、前記タイヤ内への空気の供給および該タイヤ内の空気の排出を行なうものであり、
前記第1通気路または前記第2通気路の他方は、前記空気供給源および前記外気の少なくともいずれか一方に接続可能であって、前記タイヤ内への空気の供給および該タイヤ内の空気の排出の少なくともいずれか一方を行なうものである、
請求項1に記載のタイヤ検査装置。
【請求項3】
前記下リムが連結されたスピンドルに、前記第2通気路の一部を構成する通気孔を穿設し、前記上リムから延出されて前記スピンドルに挿入連結される連結軸に、前記第1通気路の一部を構成する通気孔を穿設する、
請求項1または2に記載のタイヤ検査装置。
【請求項4】
前記第1通気路および前記第2通気路には、各リムと共にそれぞれ回転する回転側の通気路と回転しない非回転側の通気路とを接続分離するカプラを、それぞれ介在させる、
請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ検査装置。
【請求項5】
前記第1通気路および前記第2通気路は、それぞれ開閉弁を介して前記空気供給源および前記外気に接続される、
請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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