説明

タイヤ騒音測定装置

【課題】より精度の高いタイヤ騒音試験結果を得る。
【解決手段】タイヤ騒音試験装置10は、床面Fに設けられ、かつタイヤ3を外周面に接触させて回転させるドラム4と、回転されたタイヤ3から発生する音を測定するためのマイク2と、ドラム4が設けられた床面Fの位置F_3から所定範囲内の少なくとも一部分の床面F上に配置され、かつ音を吸収する吸音部材11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ騒音測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラム本体の外周表面に、ISO路面で用いる骨材をエポキシ系樹脂のバインダーで固めた擬似路面を設けることによって、実車によるISO路面でのタイヤ騒音試験結果に対して相関性の高いタイヤ騒音試験結果が得ようとするタイヤ騒音試験装置に用いられるタイヤ試験用ドラムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、実車に対して相関性が高い台上試験方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−218470号公報
【特許文献2】特開平7−55649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の例のタイヤ騒音試験装置では、床面による音の反射が発生する。そのため、タイヤ騒音試験装置の測音手段としてのマイクによって測定される音には、床面によって反射された音が含まれてしまう。このような場合に得られるタイヤ騒音試験結果は、実車による所定路面でのタイヤ騒音試験結果に対して相関性の低いものであり、より精度の高い試験結果が得られるタイヤ騒音試験が望まれている。
【0006】
なお、床面からの音の反射は、ドラム試験機と騒音測定用のマイクとの距離を大きくすることで改善することが可能であるが、この場合には、タイヤ騒音試験装置の規模が大きくなってしまい不便である。更に、この床面自体を吸音機能を有する部材に変更することも考えられるが、この場合には、タイヤ騒音試験の場所が限られてしまうことになり、また、コストも非常にかかってしまう。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、より精度の高いタイヤ騒音試験結果が得られるタイヤ騒音試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のタイヤ騒音試験装置は、床面に設けられ、かつタイヤを外周面に接触させて回転させるドラムと、回転された前記タイヤから発生する音を測定するための測音手段と、前記ドラムが設けられた前記床面の位置から所定範囲内の少なくとも一部分の床面上に配置され、かつ音を吸収する吸音部材と、を備えている。
【0009】
本発明のタイヤ騒音試験装置によれば、吸音部材によってタイヤから発生された音が吸収され、吸音部材が配置された部分の床面による音の反射がなくなるので、吸音部材を配置しない場合と比較すると、測音手段によって測定される音に含まれる床面から反射された音の割合が小さくなり、より精度の高いタイヤ騒音試験結果を得ることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明のタイヤ騒音試験装置のように、前記吸音部材を、前記ドラムと前記測音手段を床面に投影した位置との間の床面上に配置するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように、本発明のタイヤ騒音試験装置によれば、より精度の高いタイヤ騒音試験結果を得ることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態のタイヤ騒音試験装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施の形態のタイヤ騒音試験装置の一例を示す平面図である。
【図3】本実施の形態のタイヤ騒音試験装置によって測定されたタイヤ騒音試験結果、及び吸音部材を床面Fに配置しない従来技術の方法によって測定されたタイヤ騒音試験結果と、実車試験結果との関係グラフ(OA値での相関関係グラフ)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1(A)、図1(B)、及び図2には、本実施の形態に係るタイヤ騒音試験装置10に、試験対象であるタイヤ3が装着された状態が示されている。なお、図2は、タイヤ騒音試験装置10の平面図である。
【0015】
本実施に形態に係るタイヤ騒音試験装置10は、床面Fに設けられ、かつタイヤ3を外周面に接触させて回転させるドラム4と、回転されたタイヤ3から発生する音を測定するためのマイク2と、ドラム4が設けられた床面Fの位置F_3から所定範囲内(例えば半径0.4m範囲内)の少なくとも一部分の床面F上に配置され、かつ音を吸収する吸音部材11とを備えている。なお、ドラム4は回転装置の一例であり、マイク2は測音手段の一例である。
【0016】
ここで、本実施の形態では、吸音部材11の一部分が、ドラム4(ドラム4が設けられた床面F上の位置F_3)とマイク2を床面Fに投影した位置F_2との間の床面F上に配置されている。
【0017】
タイヤ3の赤道面7からマイク2までの回転軸6と平行な距離は1mであり、ドラム表面5からのマイク2の高さは0.25mである。なお、この距離及び高さの値は一例であり、上記で説明した値に限定されない。
【0018】
タイヤ騒音試験装置10によるタイヤ騒音試験では、マイク2をタイヤ3の前後方向2mの区間における複数K箇所の位置で(例えば、マイク2を図示しない移動機構で4cm刻みに移動させて、それぞれの位置(この場合51箇所)で)、音圧レベルを測定する。そして、特開平7−55649号公報に記載されている技術と同様にして、K個の測定された音圧レベルP〜PdB(A)に基づいて、以下の式(1)に示すように平均値を算出し、算出された平均値を評価値とする。
【0019】
【数1】

図3に、本実施の形態のタイヤ騒音試験装置10によって測定されたタイヤ騒音試験結果、及び吸音部材11を床面Fに配置しない従来技術の方法によって測定されたタイヤ騒音試験結果と、実車試験結果との関係グラフ(OA値での相関関係グラフ)を示す。
【0020】
この関係グラフによれば、本実施の形態のタイヤ騒音試験装置10によって測定されたタイヤ騒音試験結果のほうが、従来技術の方法によって測定されたタイヤ騒音試験結果よりも、実車試験結果と傾向が近く、相関度が良好であることが分かる。
【0021】
また、この関係グラフでは、例えば、従来技術では標準誤差が0.76dB(A)であったものが、本実施の形態のタイヤ騒音試験装置10では標準誤差が0.69dB(A)となり、吸音部材11を配置しない従来技術と比較すると、本実施の形態のタイヤ騒音試験装置10によって測定されたタイヤ騒音試験結果がより精度の高いものとなることが分かる。
【0022】
このように本実施の形態のタイヤ騒音試験装置10によれば、吸音部材11によってタイヤ3から発生された音が吸収され、吸音部材11が配置された部分の床面Fによる音の反射がなくなるので、吸音部材11を配置しない場合と比較すると、マイク2によって測定される音に含まれる床面Fから反射された音の割合が小さくなり、より精度の高いタイヤ騒音試験結果を得ることができる。
【0023】
また、吸音部材11を配置することで、実車路面での吸音効果を再現するため、室内試験路面には、実車路面と粗さ位置づけの近い路面材であれば、張り替え可能なものを使用することができるため、評価路面摩耗時に張り替え可能でありメンテナンス性に優れている。
【0024】
以上、本実施の形態のタイヤ騒音試験装置10について説明した。なお、上記では、吸音部材11の一部分が、ドラム4(ドラム4が設けられた床面F上の位置F_3)とマイク2を床面Fに投影した位置F_2との間の床面F上に配置された例について説明したが、吸音部材11全体が、ドラム4(ドラム4が設けられた床面F上の位置F_3)とマイク2を床面Fに投影した位置F_2との間の床面F上に配置されるようにしてもよい。
【0025】
また、吸音部材11が配置される位置は、吸音部材11を配置した場合に、吸音部材11を配置しない場合と比較して、マイク2によって測定される音に含まれる床面Fから反射される音の割合が小さくなるような位置であればどのような位置であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
2 マイク
3 タイヤ
4 ドラム
5 ドラム表面
6 回転軸
7 赤道面
10 タイヤ騒音装置
11 吸音部材
F 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設けられ、かつタイヤを外周面に接触させて回転させるドラムと、
回転された前記タイヤから発生する音を測定するための測音手段と、
前記ドラムが設けられた前記床面の位置から所定範囲内の少なくとも一部分の床面上に配置され、かつ音を吸収する吸音部材と、
を備えたタイヤ騒音測定装置。
【請求項2】
前記吸音部材を、前記ドラムと前記測音手段を床面に投影した位置との間の床面上に配置した請求項1記載のタイヤ騒音測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−214918(P2011−214918A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81780(P2010−81780)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】