説明

タイルユニット、建物の外壁及び建物

【課題】簡単に製作できるうえに正確な位置への取り付け作業が容易なタイルユニットを提供する。
【解決手段】複数枚のタイル2,・・・を上下方向又は左右方向の少なくとも一方向に連結させたタイルユニット1である。
そして、隣接するタイル2,2の対向する端面23a,24a,2a,2a間に筋状の接着部9A,9B,9Cを介在させる。
ここで、この接着部9A,9B,9Cはホットメルト型接着剤によって形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のタイルを上下方向又は左右方向の少なくとも一方向に連結させたタイルユニット、及びそのタイルユニットを使用して構築される建物の外壁、及びその外壁を備えた建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁にタイルを貼り付ける際に、予め工場で複数枚のタイルを連結させたタイルユニットを製作し、現場での施工を省力化する工法が知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
上記した特許文献には、複数のタイルの表面を覆う連結シートで連結させたタイルユニット、タイルの裏面側に網状の連結材を配設して複数のタイルを連結させたタイルユニット、タイルの裏面側に接着剤による連結部を点在させたタイルユニット、軟質シートを隣接するタイルの裏面間に架け渡して連結させたタイルユニットなどが開示されている。
【特許文献1】特許第3028283号公報
【特許文献2】特許第3458435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した表面側に連結材を配設したものは、タイルユニットを外壁として取り付けた後に連結材をきれいに剥がす作業があり手間がかかる。
【0005】
また、裏面側に連結材を配設したものは、連結材が裏面側に突起して凹凸ができてしまい傾かないように接着することが難しい場合があった。
【0006】
さらに、連結材を点在させる方法では連結箇所が多くなるため、タイルユニットの製作に手間がかかるうえに、連結箇所毎の接合精度が仕上がりに影響するため製作に熟練を要する。
【0007】
そこで、本発明は、簡単に製作できるうえに正確な位置への取り付け作業が容易なタイルユニット、及びそのタイルユニットを使用して構築される建物の外壁、及びその外壁を備えた建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のタイルユニットは、複数枚のタイルを上下方向又は左右方向の少なくとも一方向に連結させたタイルユニットであって、隣接する前記タイルの対向する端面間に筋状の接着部を介在させたことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記接着部はホットメルト型接着剤によって形成するのが好ましい。
【0010】
また、前記タイルは上下方向に重複して連結される重複部を備え、前記重複部の表面側タイルと裏面側タイルの間に筋状の接着部が形成されるようにすることもできる。
【0011】
さらに、前記接着部のうちで表面側に露出する面は、前記タイルの表面より裏面側に窪んだ位置に形成するのが好ましい。
【0012】
また、本発明の建物の外壁は、上記タイルユニットを下地材に複数取り付けて構築することを特徴とする。さらに、本発明の建物は、その外壁を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明のタイルユニットは、対向する端面間に接着部を介在させるので、表面側にも裏面側にもユニット化による凹凸が発生せず、現場での正確な位置への取り付け作業を容易におこなうことができる。
【0014】
また、筋状の接着部とすることで、連続した広い範囲を一度に接合できるとともに強固な連結とすることができる。
【0015】
さらに、接着部をホットメルト型接着剤で形成すれば、タイルの材質に関わらず容易にタイルユニットを製作することができる。
【0016】
また、タイルの重複部の表面側タイルと裏面側タイルの間にも接着部を形成することで、タイル間の連結を強固なものにすることができる。
【0017】
さらに、接着部が表面側に露出する場合は、その露出面を表面側から窪んだ位置に設け、その窪みにモルタルなどの目地材を充填することで、接着部が露出しない美感に優れた外観を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態のタイルユニット1の現場での取り付け作業状況を示した斜視図である。
【0020】
まず、構成から説明すると、このタイルユニット1は、複数枚のタイル2,・・・を上下方向及び左右方向に連結させたものであって、ここでは上段に4枚、下段に3枚のタイル2,・・・を千鳥配置で連結したタイルユニット1について説明する。
【0021】
このタイル2は、陶磁器質タイル、レンガ、セメント化粧ブロックなどの成形板などいずれの材質のものであってもよい。
【0022】
また、このタイル2には、図2(a)の側面図に示すように、上下方向の略中央の凹部21を挟んで上側足部22と下側足部23が形成されている。また、この上側足部22の上方には突出部24が裏面1b側寄りに形成されるとともに、下側足部23の下方には垂下部25が表面1a側寄りに形成される。
【0023】
この凹部21は、図1に示すようにタイルユニット1を貼り付ける建物の下地材6に水平方向に延設された凸条部3に嵌め合わせる部分で、この凸条部3の上縁に上側足部22を係合させることでタイル2の脱落を構造的に防止することができる。
【0024】
そして、上段のタイル2の垂下部25の裏面側に下段のタイル2の突出部24を差し込んで上下のタイル2,2の下縁と上縁を重複させることで、タイルユニット1の重複部11を形成する。
【0025】
この上段タイル2の下側足部23の下面となる端面23aと、その面に対向する下段タイル2の突出部24の上面となる端面24aとの間には、筋状の接着部4Aが介在されて両者が接合される。
【0026】
この接着部4Aは、加熱溶融して流動性ののり状にして塗布した後に常温で固化させて接着をおこなうホットメルト型接着剤によって形成することができる。
【0027】
このホットメルト型接着剤には、エチレン酢酸ビニル共重合物を主成分とするもの、ポリアミドを主成分とするもの、ポリオレフィン共重合物を主成分とするもの、合成ゴムを主成分とするものなどがある。
【0028】
図2(b)は、タイルユニット1を裏面1b側から見た背面図である。このタイルユニット1の裏面1b側には接着部4Aが筋状に露出することになるが、図2(a)に示すように接着部4Aは裏面1b側にはみ出すことなく上下のタイル2,2の端面23a,24a間に介在されているので、この接着部4Aによって裏面1bに凹凸が生じることはない。
【0029】
また、タイルユニット1の重複部11において、図2(a)に示すように表面1a側になる上段タイル2の垂下部25と、裏面1b側になる下段タイル2の突出部24との間にも筋状の接着部4Bをホットメルト型接着剤によって形成する。
【0030】
この接着部4Bは、表面1a側に露出しないように上段タイル2の垂下部25の下面より上方に収めるのが好ましい。
【0031】
さらに、タイルユニット1の左右方向の連結は、図2(b)に示すように、隣接するタイル2,2の左右方向の端面2a,2a間に、上下方向に延伸する筋状の接着部4Cをホットメルト型接着剤によって形成することでおこなう。
【0032】
この接着部4Cは、例えば左右に隣接するタイル2,2との目地幅の差が2mm以内に収まるように1〜3.5mmの範囲で形成する。また、図示しないが接着部4Cの表面1a側に露出する面が、タイルユニット1の表面1aより裏面1b側に窪んだ位置に形成しておくのが好ましい(後述する実施例の図4(a)の露出面91参照)。
【0033】
このようにして上段4枚、下段3枚の合計7枚のタイル2,・・・を上下方向及び左右方向に連結させたタイルユニット1は、接着部9A,9B,9Cが表面1a側にも裏面1b側にもはみ出すことなく形成される。
【0034】
次に、本実施の形態のタイルユニット1の取り付け方法について説明する。
【0035】
まず、工場で上述したタイルユニット1を建物の外壁を覆う数だけ製作しておく。このタイルユニット1は、端面2a,23a,24aや垂下部25の裏面側にホットメルト型接着剤を筋状に塗布し、タイル2,・・・を上下方向及び左右方向に接合することで製作することができる。
【0036】
一方、建物の外壁の下地材6には、水平方向に延設される凸条部3,・・・を、タイル2,・・・を配置する上下方向の間隔に合わせて並列させておく。また、下地材6には、図3に示すように、タイルユニット1の左右方向の幅に合わせて施工ライン5A〜5Cを墨出ししておく。
【0037】
そして、工場から現場に搬入したタイルユニット1の上側足部22,・・・と下側足部23,・・・に有機系接着剤を塗布して、下地板6に設けた凸条部3(図3では図示省略、図1参照)にタイル2の凹部21を合わせ、図3(a)に示すようにタイルユニット1の上段の左右の端が施工ライン5A,5Bに一致するように貼り付ける。
【0038】
続いて、図3(b)に示すように、先に貼り付けたタイルユニット1の隣に、上段の高さが同じになるように施工ライン5B,5Cにタイルユニット1の上段の左右の端を合わせて新たにタイルユニット1を貼り付ける。
【0039】
ここでも、隣接するタイルユニット1,1間の目地幅は、他の左右のタイル2,2間の目地幅の差と同様に例えば2mm以内に差が収まるようにする。
【0040】
このようにして下地材6に貼り付けたタイルユニット1,1の上方にも、図3(c)に示すように上記と同様にしてタイルユニット1,1を貼り付ける。すると、左右のタイルユニット1,1間に約タイル一枚分の隙間部6aが形成される。
【0041】
この隙間部6aには、後から後貼りタイル20を左右の目地幅が均等になるようにして貼り付ける。
【0042】
このようにタイルユニット1,・・・と後貼りタイル20,・・・の貼り付けを下地板6の全面で繰り返した後に、モルタル等の目地材(図示せず)をタイル2,2,20間の目地に充填して仕上げをおこなう。
【0043】
このように構成された本実施の形態のタイルユニット1は、対向する端面23a,24a,2a,2a間に接着部4A,4B,4Cを介在させるので、表面1a側にも裏面1b側にもユニット化による凹凸が発生せず、従来のように裏面1bの凹凸によって設置時に傾きが発生したり、表面1aの連結材を剥がす手間がかかったりすることなく一度に複数のタイル2,・・・を貼り付けることができるので、現場での正確な位置への取り付け作業を容易におこなうことができる。
【0044】
また、筋状の接着部4A〜4Cとすることで、連続した広い範囲を一度に接合できるとともに強固な連結とすることができる。
【0045】
さらに、接着部4A〜4Cをホットメルト型接着剤で形成すれば、タイル2の材質に関わらず容易に強固に連結されたタイルユニット1を製作することができる。
【0046】
また、上段タイル2と下段タイル2の端面23a,24a間の接着部4Aに加えて、重複部11の上段タイル2(表面側タイル)の垂下部25と下段タイル2(裏面側タイル)の突出部24との間にも接着部4Bを形成することで、上下のタイル2,2間の連結を強固なものにすることができる。
【実施例】
【0047】
以下、この実施例では、前記実施の形態で説明したタイルユニット1とは別の形態のタイルユニット7について図4を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0048】
このタイルユニット7は、上下方向にタイル8,8を重複させることなく連結させるもので、前記実施の形態と同様に例えば上段に4枚、下段に3枚のタイル8,・・・を千鳥配置に連結してユニット化する。
【0049】
このタイル8は、図4(a)に示すように裏面7bに複数の裏足部82,・・・が形成されるとともに、その裏足部82,82間に凹部81,・・・が形成されている。
【0050】
そして、上段のタイル8の下面側の端面8bと下段のタイル8の上面側の端面8aとの間に、ホットメルト型接着剤によって筋状の接着部9Aが形成される。
【0051】
この接着部9Aは、表面7a側に露出する露出面91が、裏面7b側に窪んだ位置に形成されており、タイル8の表面7a位置と露出面91との間に後からモルタルなどの目地材が充填できる窪んだ空間が確保されている。
【0052】
また、図4(b)に示すように左右方向の対向する端面8c,8c間にも筋状の接着部9Bを介在させて左右方向の連結をおこなう。
【0053】
このようにして製作されたタイルユニット7は、モルタルなどの接着用下地材が塗布された外壁施工面に、前記実施の形態の図3で説明したのと同様の手順で取り付けられる。
【0054】
そして、タイルユニット7を外壁全面に取り付けた後に、表面7a側からもモルタルなどの目地材をタイル8,8間の目地に充填し、接着部9A,9Bの露出面91が目地材によって覆われるようにする。
【0055】
このように接着部9A,9Bが表面7a側に露出する場合は、その露出面91を表面7a側から窪んだ位置に設け、その窪みにモルタルなどの目地材を充填することで、接着部9A,9Bが露出しない美感に優れた外観を形成することができる。
【0056】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【0057】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0058】
例えば、前記実施の形態及び実施例では接着部4A〜4C,9A,9Bをホットメルト型接着剤で形成したが、これに限定されるものではなく、エポキシ樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤などによって接着部を形成することもできる。
【0059】
また、前記実施の形態では、上段のタイル2を表面側にし、下段のタイル2を裏面側にして重複部11を形成したが、これに限定されるものではなく、突出部24と垂下部25の形状によっては、上段のタイルが裏面側、下段のタイルが表面側に位置するような重複部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の最良の実施の形態のタイルユニットの取り付け作業を説明する斜視図である。
【図2】(a)は本発明の最良の実施の形態のタイルユニットの側面図、(b)はそのタイルユニットの背面図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態のタイルユニットの取り付け作業手順を説明する作業工程図である。
【図4】(a)は実施例のタイルユニットの側面図、(b)はそのタイルユニットの背面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 タイルユニット
1a 表面
1b 裏面
11 重複部
2 タイル
2a,23a,24a 端面
4A,4B,4C 接着部
7 タイルユニット
7a 表面
7b 裏面
8 タイル
8a,8b,8c 端面
9A,9B 接着部
91 露出面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のタイルを上下方向又は左右方向の少なくとも一方向に連結させたタイルユニットであって、隣接する前記タイルの対向する端面間に筋状の接着部を介在させたことを特徴とするタイルユニット。
【請求項2】
前記接着部はホットメルト型接着剤によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイルユニット。
【請求項3】
前記タイルは上下方向に重複して連結される重複部を備え、前記重複部の表面側タイルと裏面側タイルの間に筋状の接着部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイルユニット。
【請求項4】
前記接着部のうちで表面側に露出する面は、前記タイルの表面より裏面側に窪んだ位置に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のタイルユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のタイルユニットを下地材に複数取り付けて構築することを特徴とする建物の外壁。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のタイルユニットを下地材に複数取り付けて構築された外壁を備えたことを特徴とする建物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−291811(P2007−291811A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123621(P2006−123621)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】