説明

タグシステムおよびタグ

【課題】フレキシブルなアクセス制限を可能とする。
【解決手段】所定の権限レベルを付与されたタグ10−1〜10−14と、タグに付与された権限レベルに基づいて、アクセス制限を行う制限装置(ゲート装置30)とを有するタグシステムにおいて、タグは、他のタグとタグ間通信を行う通信手段(RF送受信回路12)と、通信手段を介して、他のタグに予め付与されている権限レベルとは異なるレベルの権限を他のタグに一時的に付与する付与手段(制御回路14)と、を有し、制限装置は、新たな権限レベルが付与された場合には、当該新たな権限レベルに基づいてアクセス制限を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タグシステムおよびタグに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、靴に埋め込まれたデータキャリア体に記憶されているゲート通過許可情報を無線通信によって読み取り、予め記憶されているセキュリティ管理用情報と比較し、適正な人物である場合には、ゲートを開制御する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−260040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示される技術では、ゲート通過許可情報は許可または不許可の2種類であるため、人物毎に異なるアクセス制限を設け、当該アクセス制限に基づいてエリア毎に通過を許可または不許可とすることができない。また、ゲート通過許可情報は固定であるため、一時的にゲート通過許可を与えることができない。つまり、特許文献1に記載の技術では、アクセス情報は変更することができないため、フレキシブルなアクセス制限を実現することができないという問題点がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、フレキシブルなアクセス制限を可能とするタグシステムおよびタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、所定の権限レベルを付与されたタグと、前記タグに付与された権限レベルに基づいて、アクセス制限を行う制限装置とを有するタグシステムにおいて、前記タグは、他のタグとタグ間通信を行う通信手段と、前記通信手段を介して、前記他のタグに予め付与されている権限レベルとは異なるレベルの権限を前記他のタグに一時的に付与する付与手段と、を有し、前記制限装置は、新たな権限レベルが付与された場合には、当該新たな権限レベルに基づいてアクセス制限を実行する、ことを特徴とする。
この構成によれば、フレキシブルなアクセス制限を可能とするタグシステムを提供することができる。
【0006】
また、他の発明は、上記発明に加え、前記タグの付与手段は、自己が有する権限レベルを超えない範囲において、前記他のタグに対して権限レベルを一時的に付与することを特徴とする。
この構成によれば、他のタグに対して自己の権限を超えない範囲の権限を付与することができる。このように一時的に付与できる権限を限定することにより、不正に権限が変更されて無制限にアクセスがなされることを防止できる。
【0007】
また、他の発明は、上記発明に加え、前記他のタグは、一時的に付与される権限レベルの範囲を指定するための情報を有しており、前記付与手段は、前記範囲を超えない範囲の権限レベルを前記他のタグに対して一時的に付与することを特徴とする。
この構成によれば、他のタグに対して予め定められた範囲を超えない範囲の権限を付与することができる。このように一時的に付与できる権限を限定することにより、不正に権限が変更されて無制限にアクセスがなされることを防止できる。
【0008】
また、他の発明は、上記発明に加え、前記他のタグに一時的に付与された権限レベルは、所定の条件が満たされた場合に、無効とされることを特徴とする。
この構成によれば、一時的に変更された権限が長期に渡って不正に使用されることを防止できる。
【0009】
また、他の発明は、上記発明に加え、前記所定の条件は、前記権限レベルが付与されてから所定の時間が経過した場合、前記制限装置に対して所定の回数アクセスがなされた場合、または、前記制限装置もしくは前記タグから権限レベルを無効にする指示がなされた場合であることを特徴とする。
この構成によれば、権限レベルが付与されてから所定の時間が経過した場合、制限装置に対して所定の回数アクセスがなされた場合、または、制限装置もしくはタグから権限レベルを無効にする指示がなされた場合には、一時的に付与された権限を無効とすることにより、一時的に付与された権限が無制限に不正使用されることを防止できる。
【0010】
また、他の発明は、上記発明に加え、前記制限装置は、前記他のタグよりも所定時間前に前記タグのアクセスがなされた場合に、前記他のタグのアクセスを許可することを特徴とする。
この構成によれば、例えば、一時的に権限を付与したタグに続いて、他のタグがアクセスした場合に、アクセスが許可されるようにできるので、他のタグが単独でアクセスを行うことを禁止できる。
【0011】
また、本発明は、所定の権限レベルを付与され、当該権限レベルに基づいて制限装置によるアクセス制限を受けるタグにおいて、他のタグとタグ間通信を行う通信手段と、前記通信手段を介して、他のタグに予め付与されている権限レベルとは異なるレベルの権限を他のタグに一時的に付与する付与手段と、を有し、新たな権限レベルが付与された場合には、当該新たな権限レベルに基づいて制限装置によるアクセス制限を受ける、ことを特徴とする。
この構成によれば、フレキシブルなアクセス制限を可能とするタグを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(A)実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るタグシステムの構成例を示す図である。この図に示すように、タグシステムは、タグ10−1〜10−14、リーダーライター装置20、ゲート装置(制限装置)30、ネットワーク40、および、サーバー装置50を有している。ここで、タグ10−1〜10−14は、例えば、社員証程度の大きさのカード形状を有し、図1に示すタグシステムが配置されている企業の各構成員によって所有され、あるいは、企業を訪問する訪問者に一時的に貸与される。また、タグ10−1〜10−14は、リーダーライター装置20またはゲート装置30との間の通信(通常通信)によって、情報を授受することができるとともに、他のタグとの間の通信(タグ間通信)により、他のタグとの間で情報を授受することができる。リーダーライター装置20は、例えば、オフィス内に配置され、所定の広さを有する通信エリア内に存在するタグ10−1〜10−14との間で情報を授受する。なお、図1の例では、リーダーライター装置20は、1台しか示していないが、実際にはオフィスの規模等に応じて複数の台数が配置されている。また、タグ10−1〜10−14についても14台には限定されない。ゲート装置30は、オフィスにおいて、アクセスが制限されるエリアの入口にそれぞれ配置され、タグ10−1〜10−14が接近した場合(または、タグ10−1〜10−14がゲート装置30にかざされた場合)には、当該タグ10−1〜10−14に記憶されている情報を読み取り、アクセス権限を有する場合には、例えば、ゲートを開いてアクセスを許可する。ネットワーク40は、例えば、LAN(Local Area Network)によって構成され、リーダーライター装置20、ゲート装置30、および、サーバー装置50の間で情報を伝送する。サーバー装置50は、各リーダーライター装置20の通信エリア内に存在するタグをデータベースに登録することにより、各タグの所在位置を管理する。
【0014】
図2は、図1に示すタグ10−1〜10−14の構成例を示す図である。なお、タグ10−1〜10−14は、同様の構成とされているので、以下では、これらをタグ10としてまとめて説明する。図2に示すように、タグ10は、アンテナ11、RF(Radio Frequency)送受信回路12、バッテリー13、制御回路14、表示部15、操作部16、メモリー17、および、タイマー18を有している。
【0015】
ここで、アンテナ11は、例えば、ループアンテナによって構成され、リーダーライター装置20、ゲート装置30、または、他のタグ10から送信された交番磁界を電気信号に変換してRF送受信回路12に供給するとともに、RF送受信回路12から供給された信号を交番磁界に変換してリーダーライター装置20、ゲート装置30、または、他のタグ10に対して放射する。RF送受信回路12は、制御回路14に制御され、リーダーライター装置20が近くに存在し、これとの間で通信を可能である場合には、アンテナ11を介してリーダーライター装置20との間で情報を送受信する。また、ゲート装置30または他のタグ10との間でタグ間通信を行う場合には、アンテナ11を介してゲート装置30または他のタグ10との間で情報を送受信する。
【0016】
バッテリー13は、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池によって構成され、装置の各部に電源電力を供給する。なお、バッテリー13は、リーダーライター装置20から送信された交番磁界を受信して整流することよって得られる直流電力によって充電される。なお、二次電池の代わりにスーパーキャパシタを用いたり、二次電池ではなく一次電池を用いたりしてもよい。制御回路14は、メモリー17に格納されている制御プログラム70(図3参照)に基づいて装置の各部を制御するとともに、通信プロトコルの制御等を行う。表示部15は、例えば、EPD(Electrophoretic Display)によって構成され、制御回路14から供給された情報を表示する。操作部16は、例えば、キーデバイスによって構成され、ユーザーの操作に応じた情報を生成して出力する。メモリー17は、例えば、半導体メモリーによって構成され、制御回路14から供給されたデータを記憶するとともに、記憶されたデータを読み出して制御回路14に供給する。タイマー18は、日時情報を生成して出力するとともに、制御回路14によって設定された所定の時間が経過した場合には割り込みを発生する。
【0017】
図3は、図2に示すメモリー17に格納されている情報の一例を示す図である。この図3に示すように、メモリー17に格納されている情報60としては、固有ID(Identification)61、タグ間通信用ID62、動作モード識別子63、イニシエーターフラグ64、対応テーブル65、上限権限レベル66、基本権限レベル67、現在権限レベル68、権限付与タグID69、および、制御プログラム70が主に存在する。ここで、固有ID61は、各タグ10に付与されたユニークな識別番号であり、例えば、32ビットのデータによって構成され、リーダーライター装置20またはゲート装置30と通信を行う際には、当該固有ID61によって各タグ10が識別される。タグ間通信用ID62は、タグ間通信を実行する際に各タグ10を識別するために用いられる識別番号であり、例えば、4ビットのデータによって構成される。動作モード識別子63は、例えば、1ビットのデータによって構成され、動作モードがタグ間通信モードであるか、または、通常モードであるかを示す。イニシエーターフラグ64は、例えば、1ビットのデータによって構成され、タグ間通信の開始権限を有するイニシエーターであるか否かを示す。対応テーブル65は、図4を参照して後述するように、タグ間通信を実行する場合に、通信相手となるタグ10の固有ID61と、タグ間通信用ID62とを対応付けて格納するテーブルである。上限権限レベル66は、当該タグに付与され得る権限レベルの上限を示す。ここで、「権限レベル」とは、当該タグを有する人物に付与されたアクセス権限のレベルを示し、例えば、0〜3の範囲の数値で表され、0が最高の権限を示し、3が最低の権限を示す。基本権限レベル67は、当該タグに予め付与されている権限レベルを示す。現在権限レベル68は、当該タグに付与されている現在の権限レベルを示す。なお、現在権限レベル68は、通常の状態(権限レベルが変更されていない状態)では、基本権限レベル67と同じ権限レベルが設定されている。権限付与タグID69は、権限を一時的に付与したタグの固有IDを示す。制御プログラム70は、装置の各部を制御するためのプログラムであり、当該制御プログラム70を実行することにより、後述する処理その他が実行される。なお、固有ID61、上限権限レベル66、および、基本権限レベル67は書き換え不能な情報であり、それ以外は書き換え可能とれている。
【0018】
図4は、図3に示す対応テーブル65の一例を示している。この図4に示すように、対応テーブル65は、タグ間通信の通信相手となるタグ10が有する固有IDと、当該タグに付与されたタグ間通信用IDとを対応付けて格納している。具体的には、第1番目の情報の場合では、固有IDは32ビットの16進数データとしての「FFFFFF01」とされ、タグ間通信用IDは4ビットの16進数データとしての「01」とされている。なお、第1番目のデータは、通信を開始したタグの固有IDとタグ間通信用IDであり、第2番目以降のデータは、通信相手となる他のタグの固有IDとタグ間通信用IDである。
【0019】
図5は、図1に示すリーダーライター装置20の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、リーダーライター装置20は、アンテナ21、RF送受信回路22、制御回路23、メモリー24、および、I/F(Interface)25を有している。ここで、アンテナ21は、タグ10と同様にループアンテナによって構成され、タグ10から送信された交番磁界を電気信号に変換してRF送受信回路22に供給するとともに、RF送受信回路22から供給された信号を交番磁界に変換してタグ10に対して放射する。RF送受信回路22は、制御回路23に制御され、タグ10が近くに存在し、これとの間で通信が可能である場合には、アンテナ21を介してタグ10との間で情報を送受信する。制御回路23は、メモリー24に格納されている制御プログラムに基づいて装置の各部を制御する。メモリー24は、例えば、半導体メモリーによって構成され、制御回路23が実行する制御プログラム等を記憶している。I/F25は、ネットワーク40を介してサーバー装置50との間で情報を授受する際に、データの表現形式を適宜変換する。
【0020】
図6は、図1に示すゲート装置30の詳細な構成例を示すブロック図である。この図6に示すように、ゲート装置30は、アンテナ31、RF送受信回路32、制御回路33、メモリー34、I/F35、および、アクチュエーター36を有している。ここで、アンテナ31は、タグ10と同様にループアンテナによって構成され、タグ10から送信された交番磁界を電気信号に変換してRF送受信回路32に供給するとともに、RF送受信回路32から供給された信号を交番磁界に変換してタグ10に対して放射する。RF送受信回路32は、制御回路33に制御され、タグ10がアンテナ31に接近した場合(または、タグ10がかざされた場合)には、アンテナ31を介してタグ10との間で情報を送受信する。制御回路33は、メモリー34に格納されている制御プログラムに基づいて装置の各部を制御する。メモリー34は、例えば、半導体メモリーによって構成され、制御回路33が実行する制御プログラム等を記憶している。I/F35は、ネットワーク40を介してサーバー装置50との間で情報を授受する際に、データの表現形式を適宜変換する。アクチュエーター36は、例えば、ステッピングモーター等によって構成され、アンテナ31に接近した(またはかざされた)タグ10がアクセス権限を有する場合には、アクチュエーター36によって、通路上に設けられた通行を制限するための開閉式のゲートが一時的に開放され、通行が許可される。
【0021】
図7は、図1に示すサーバー装置50の詳細な構成例を示すブロック図である。この図7に示すように、サーバー装置50は、I/F51、制御回路52、ROM(Read Only Memory)53、RAM(Random Access Memory)54、および、HDD(Hard Disk Drive)55を有している。ここで、I/F51は、ネットワーク40を介してリーダーライター装置20およびゲート装置30との間で情報を授受する際に、データの表現形式を適宜変換する。制御回路52は、ROM53またはHDD55に記憶されている制御プログラムに基づいて装置の各部を制御する。ROM53は、制御回路52が実行する基本的なプログラムまたはデータを記憶している。RAM54は、制御回路52がプログラムを実行する際のワーキングエリアとして機能する。HDD55は、制御回路52が実行する制御プログラムおよびデータを記憶するとともに、リーダーライター装置20と、当該リーダーライター装置20の通信圏内に属するタグとを対応付けしたテーブルを記憶している。また、HDD55は、各タグの固有IDと、それぞれのタグに付与された基本権限レベルおよび上限権限レベルを対応付けて、権限テーブルとして格納している。図8は、HDD55に記憶されているこのような権限テーブルの一例を示す図である。この例では、固有ID、基本権限レベル、および、上限権限レベルが対応付けされて格納されている。具体的には、第1番目の例では、固有IDは「FFFFFF01」とされ、基本権限レベルは「2」とされ、および、上限権限レベルは「1」とされている。
【0022】
(B)実施形態の動作の説明
つぎに、本実施形態の動作について説明する。以下では、まず、(1)通常モードにおけるタグ10とリーダーライター装置20との間の通信動作について説明し、つぎに、(2)タグ間通信モードにおいて一方のタグが他方のタグの現在権限レベルを変更する動作について説明し、最後に、(3)現在権限レベルが変更された他方のタグがゲート装置30に接近した場合の動作について説明する。
【0023】
(B−1)通常モードにおける動作
通常モードでは、リーダーライター装置20は、周辺に存在するタグ10に対して一定の時間間隔で一斉に読み出し信号を送信するブロードキャスト動作を実行しており、リーダーライター装置20からの交番磁界が到達可能な範囲に存在するタグ10は、アンテナ11を介してRF送受信回路12によって当該読み出し信号を受信し、これに応答する処理を実行する。より具体的には、タグ10の制御回路14は、当該読み出し信号を受信した場合、メモリー17から固有ID61を読み出し、RF送受信回路12を介してリーダーライター装置20に対して送信する。図9(A)は、タグ10から送信される信号80のフォーマットの一例を示す図である。この例では、タグ10から送信される信号80は、同期ビット81、固有ID82、データ83、および、同期ビット84を有している。ここで、同期ビット81は、例えば、5ビットの情報量を有し、信号の開始を示すとともに、この同期ビット81に基づいてタグ10およびリーダーライター装置20が通信のタイミングを同期させる。固有ID82は、各タグ10が有する固有ID61であり、例えば、32ビットの情報量を有する。データ83は、タグ10からリーダーライター装置20に送信する実データであり、固定長のデータである。同期ビット84は、例えば、5ビットの情報量を有し、信号の終了を示すとともに、この同期ビット84に基づいてタグ10およびリーダーライター装置20が通信を同期させる。
【0024】
タグ10のこのような応答は、複数のタグ10で同時に実行されるため、応答が競合する場合も生じるが、そのような場合には、リーダーライター装置20は、交番磁界の強度が最も高い(最も近くに存在する)タグ10からの応答を受信し、固有IDを取得する。リーダーライター装置20は、受信に成功したタグ10に対しては、ブロードキャストに対して応答しないように指示するので、複数のタグ10が存在する場合であっても、リーダーライター装置20からの距離が近い順に、各タグ10の応答が順次受信される。
【0025】
リーダーライター装置20の制御回路23は、以上のようにして受信した各タグ10からの応答に含まれている固有IDと、メモリー24に格納されている自己のID(リーダーライター装置20に付与されたID)とを、I/F25を介してサーバー装置50に送信する。サーバー装置50では、制御回路52がI/F51を介して当該情報を受信し、HDD55のテーブルにリーダーライター装置20のIDと当該リーダーライター装置20の通信エリアに属しているタグ10の固有IDとを対応付けて格納する。
【0026】
以上のような動作を一定の頻度で実行することにより、リーダーライター装置20と、それぞれのリーダーライター装置20の通信エリア内に存在するタグとの対応関係を示すテーブルを生成し、常に最新の状態に保つことができる。なお、各リーダーライター装置20が設置されている場所は予め分かっていることから、各タグ10を有するユーザーがどこに存在しているかを知ることができる。また、ユーザー毎に、このような履歴を作成することにより、各ユーザーの行動履歴を作成することもできる。
【0027】
(B−2)タグ間通信モードにおける動作
つぎに、タグ間通信モードにおいて一方のタグが他方のタグの現在権限レベルを変更(新たな権限レベルを付与)する動作について説明する。以下では、一例として、タグ10−1を企業の構成員としての社員が所持し、タグ10−2が当該企業の訪問者に一時的に貸与されている場合において、アクセスが制限されているエリアに対して、もともとアクセス権限を有しない訪問者のアクセスを許可するために、タグ10−1がタグ10−2の現在権限レベルを一時的に変更する場合においてタグ10−1,10−2でそれぞれ実行される処理について説明する。
【0028】
図10は、タグ10−1とタグ10−2において実行される処理の流れを説明するフローチャートである。まず、タグ10−1とタグ10−2とがお互いに通信可能な距離(例えば、数メートル以内)に接近されるとともに、タグ10−1の操作部16を社員が操作し、タグ10−2との間におけるタグ間通信の実行を指示したとすると、タグ10−1の制御回路14は、ステップS10において、タグ間通信が指示されたと判定し(ステップS10;Yes)、ステップS11に進む。なお、指示がされていないと判定した場合(ステップS10;No)には、同様の処理を繰り返す。
【0029】
ステップS11では、タグ10−1の制御回路14は、タグ間通信マスターモードに移行する。ここで、タグ間通信マスターモードとは、タグ間通信を行う動作モードにおいて、他のタグを制御するマスターとして動作するモードである。なお、本実施形態では、これ以外の動作モードとして、タグ間通信スレーブモードおよび通常モードが存在する。タグ間通信スレーブモードとは、タグ間通信を行う動作モードにおいて、マスターに制御されて従属的に通信するスレーブとして動作するモードである。通常モードとは、リーダーライター装置20またはゲート装置30との間で通信を行うモードである。タグ間通信マスターモードに移行すると、制御回路14は、動作モード識別子63を通常モードを示す「00」から、タグ間通信マスターモードを示す「01」に変更する。また、イニシエーターフラグ64を「0」から「1」に変更する。なお、本実施形態では、タグ間通信を開始する要求を行ったタグ(いまの例ではタグ10−1)がマスターとなるとともに、イニシエーターとなる。
【0030】
ステップS12では、タグ10−1の制御回路14は、自己の周辺に存在するタグ10に対してタグ間通信の呼びかけを行うための周辺インターロゲート信号を送信する。周辺インターロゲート信号の送信の際には、送信に先立ち、RF送受信回路12による受信動作を実行してリーダーライター装置20または他のタグ10から信号が送信されていないかを確認し、送信されていないことが確認された場合には周辺インターロゲート信号を送信する。なお、周辺インターロゲート信号は、図9(A)に示す信号80と同様のフォーマットを有しており、少なくとも以下の情報を有する。
(1)ブロードキャストアドレス(ブロードキャストを示す特定のアドレス値)
(2)リードまたはライトを指示するコマンド
(3)リード先またはライト先を指定するアドレス
(4)必要に応じたデータ
なお、周辺インターロゲート信号を、通常のブロードキャスト信号から弁別するために、例えば、(1)のブロードキャストアドレスを、通常のブロードキャストアドレスとは異なる特別なブロードキャストアドレスとしたり、あるいは、(3)のアドレスを、タグ間通信用に予約された特定のアドレスとしたりするようにしてもよい。これらの方法により、周辺インターロゲート信号を、通常のブロードキャスト信号から容易に弁別することができる。
【0031】
ステップS12においてタグ10−1から送信された周辺インターロゲート信号は、タグ10−1と通信可能な位置に存在し、かつ、通常モードで受信待ち状態のタグ10−2によって受信される(ステップS30)。周辺インターロゲート信号を受信したタグ10−2の制御回路14は、自己の固有IDを含むタグ間アクノレッジ信号を返信する(ステップS31)。ここで、タグ間アクノレッジ信号は、図9(A)に示す信号80と同様のフォーマットを有しており、自己の固有IDのみを有する信号である。
【0032】
ステップS13において、タグ10−1は、タグ10−2から送信されたタグ間アクノレッジ信号を受信する。そして、タグ10−1の制御回路14は、受信したタグ間アクノレッジ信号から、通信相手であるタグ10−2の固有IDを抽出する。例えば、タグ10−2の固有IDが「FFFFFF02」である場合には、当該固有IDが取得される。
【0033】
ステップS14では、タグ10−1の制御回路14は、タグ間アクノレッジ信号を返信したタグ10−2に対してタグ間通信用IDを付与するとともに、自己に対してもタグ間通信用IDを付与する。より詳細には、タグ10−1の制御回路14は、自己に対してはタグ間通信用IDとしてマスターを示す「1」を付与し、自己のタグ間通信IDと、自己の固有IDとを対応付けして図4に示す対応テーブル65に格納する。例えば、タグ10−1の固有IDが「FFFFFF01」である場合には、当該固有IDと、タグ間通信用IDとしての「1」が図4に示すように格納される。また、制御回路14は、タグ10−2に対してタグ間通信用IDとしてスレーブを示す「2」を付与する。なお、スレーブに対しては、例えば、2〜14のタグ間通信用IDのいずれかが付与される。
【0034】
ステップS15では、タグ10−1の制御回路14は、タグ10−2に対してタグ間通信開始信号を送信する。ここで、タグ間通信開始信号は、図9(A)と同様のフォーマットを有するとともに、以下の情報を有している。
(1)タグ10−2の固有ID(いまの例では、FFFFFF02)
(2)書き込みコマンド(タグ間通信用IDを記憶するように指示するコマンド)
(3)タグ間通信用IDを記憶するアドレス(図3のタグ間通信用ID62のアドレス)
(4)タグ間通信用IDを含むデータ(タグ間通信用IDである「2」を含むデータ)
【0035】
タグ10−2は、タグ10−1から送信されたタグ間通信開始信号を受信し(ステップS32)、自己の固有IDが含まれていることから、自己宛の信号であると判定する。そして、タグ10−2の制御回路14は、当該信号がタグ間通信開始信号であると判断し、タグ間通信スレーブモードに移行する(ステップS33)。タグ間通信スレーブモードに移行すると、制御回路42は、動作モード識別子63を通常モードを示す「00」から、タグ間通信スレーブモードを示す「10」に変更する。また、イニシエーターには該当しないので、イニシエーターフラグ64は「0」のままとする。
【0036】
タグ間通信スレーブモードへの移行が完了すると、タグ10−2の制御回路14は、タグ10−1に対してタグ間通信アクノレッジ信号を送信する(ステップS34)。ここで、タグ間通信アクノレッジ信号は、図9(B)に示す信号90と同様のフォーマットを有する。この例では、タグ10−2から送信される信号90は、同期ビット91、タグ間通信プリフィックス(E)92、タグ間通信用ID93、データ長94、データ95、および、同期ビット96を有している。ここで、同期ビット91は、例えば、5ビットのデータ量を有し、信号の開始を示すとともに、この同期ビット91に基づいてタグ同士が通信を同期させる。タグ間通信プリフィックス92は、固有ID82の先頭4ビットでは使用されていない、4ビットの情報(この例では「E」=1110)によって構成され、当該タグ間通信プリフィックス92が同期ビット91の次に存在することを検出することで、タグ間通信信号であることが認識できる。タグ間通信用ID93は、タグ間通信において使用されるIDであり、タグ間通信マスターには「1」が付与され、タグ間通信スレーブには「2」〜「14」の何れかが付与される。データ長94は、例えば、8ビットの情報であり、その後に格納されるデータの長さを1〜256バイトの間で指定する。すなわち、データ長94の値が「0」である場合には「1」バイトのデータが格納され、データ長94の値が「255(=FF)」である場合には「256」バイトのデータが格納されることが示される。データ95は、1〜256バイトの可変長のデータである。同期ビット96は、例えば、5ビットのデータ量を有し、信号の終了を示すとともに、この同期ビット96に基づいてタグ同士が通信を同期させる。
【0037】
タグ10−1は、ステップS16において、タグ10−2から送信されたタグ間通信アクノレッジ信号を受信する。より詳細には、タグ10−1は、受信待ち状態において、タグ10−2から送信されたタグ間通信アクノレッジ信号を受信すると、同期ビット91において同期を図る。そして、タグ間通信プリフィックス92を受信した時点で、タグ間通信信号であることを認識するので、タグ間通信プリフィックス92に続くタグ間通信用ID93から、送信元のタグであるタグ10−2を特定する。つづいて、データ長94を参照することで、タグ10−2から送信されたデータのデータ長を特定し、データ95を受信する。つづいて、同期ビット96を受信することにより、データの受信を終了する。このようにして、タグ間通信アクノレッジ信号を受信すると、タグ10−1の制御回路14は、タグ10−2の固有ID(=FFFFFF02)と、タグ間通信用ID(=2)とを対応付けて、図4に示す対応テーブル65に格納する。これ以降は、当該対応テーブル65を参照することにより、通信相手のタグの固有IDとタグ間通信IDとの対応関係を知ることができる。
【0038】
ところで、タグ間通信開始およびタグ間通信アクノレッジが正常に受信できない場合には、タグ10−1はリトライ動作を実行する。具体的には、タグ10−1は、以下の2種類の原因を想定する。
(1)相手のタグ10−2は、タグ間通信スレーブモードに既に移行しているが、タグ間通信アクノレッジ信号の送信または受信が正常に実行できなかった。
(2)相手のタグ10−2に、タグ間通信開始信号が正常に伝わっていない。
タグ10−1は、まず、(1)が原因であると想定して、図9(B)に示すタグ間通信のフォーマットにより、タグ10−2に対して応答するように要求を行い、応答がなされた場合にはタグ間通信アクノレッジ信号を受信したとみなしてタグ間通信処理に移行する。一方、応答がなされない場合には、所定の回数だけ同様の処理を繰り返し、応答がなされた場合には、タグ間通信アクノレッジ信号を受信したとみなしてタグ間通信処理に移行し、それ以外の場合には、(2)が原因であると想定を変更して、図9(A)に示す通常のフォーマットにより、タグ間通信開始信号送信し、タグ10−2からタグ間通信アクノレッジ信号を受信した場合には、正常と判定してタグ間通信処理に移行する。なお、それでもタグ間通信アクノレッジ信号を受信できない場合には、所定の回数だけタグ間通信開始信号を送信し、その結果、タグ間通信アクノレッジ信号を受信した場合には正常と判定し、それ以外の場合には異常であると判定して、警告を行うとともに、処理を終了する。なお、タグ間通信が正常に開始された場合には、例えば、表示部15に対してタグ間通信の開始を示すメッセージ等を表示することにより、タグ間通信への移行を示すようにしてもよい。
【0039】
ステップS17では、タグ10−1の制御回路14は、操作部16が操作され、タグ10−2の権限レベルを増加する要求(新たな権限レベルを付与する要求)がなされたか否かを判定し、要求がなされたと判定した場合(ステップS17;Yes)には、ステップS18に進み、それ以外の場合(ステップS17;No)には同様の処理を繰り返す。
【0040】
ステップS18では、タグ10−1の制御回路14は、タグ10−2に対して、権限レベル増加を指示する信号を送信する。より詳細には、タグ10−1の制御回路14は、図9(B)に示すフォーマットの信号90のタグ間通信用ID93としてタグ10−2に付与された「2」を格納するとともに、権限レベルを増加することを指示するコマンドと、自己の固有IDと、自己の基本権限レベルとをデータ95に格納し、また、これらのデータ長を示す値をデータ長94に格納して送信する。この結果、タグ10−2はこの信号を受信し(ステップS35)、制御回路14がデータ95に格納されているコマンドを解釈することにより、権限レベルの増加が指示されたことを認識するとともに、タグ10−1の固有IDおよび基本権限レベルを取得する。
【0041】
タグ10−2の制御回路14は、権限レベルの増加が指示されたことを認識すると、権限レベルを増加するための条件を満たしているか否かを判断し、満たしていると判断した場合(ステップS36;Yes)にはステップS37に進み、それ以外の場合(ステップS36;No)にはステップS39に進む。より詳細には、タグ10−2の制御回路14は、自己の現在権限レベル68の値から1を減算し、得られた値が自己の上限権限レベル66を超えず、かつ、タグ10−1の基本権限レベル67を超えない場合には条件を満たすと判定する。例えば、図8に示すように、タグ10−2の基本権限レベル67の値が「3」であり、上限権限レベル66が「1」であり、タグ10−1の基本権限レベルが「2」である場合、現在権限レベル68は基本権限レベル67と同じであるので、現在権限レベル68の値から1を減算した値は「2」であることから、自己の上限権限レベル「1」を超えず、また、タグ10−1の基本権限レベル「2」を超えないため、条件を満たすと判定される。
【0042】
条件を満たすと判定された場合には、タグ10−2の制御回路14は、現在権限レベル68を増加する処理を実行する(ステップS37)。すなわち、前述のように、自己の現在権限レベル68の値が「3」である場合には、現在権限レベル68の値は「2」に変更される。
【0043】
つぎに、タグ10−2の制御回路14は、ステップS35において受信したタグ10−1の固有IDを、権限付与タグID69としてメモリー17に格納する(ステップS38)。例えば、タグ10−1の固有IDが「FFFFFF01」である場合には当該値がメモリー17に権限付与タグID69として格納される。
【0044】
つづいて、タグ10−2の制御回路14は、タグ間通信を終了するか否かを判定し、終了しない場合(ステップS39;No)には同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS39;Yes)にはステップS40に進む。具体的には、タグ10−1から所定の時間以上通信がなされない場合、または、操作部16が操作されて終了が指示された場合には、ステップS40に進む。
【0045】
同様にして、タグ10−1の制御回路14も、タグ間通信を終了するか否かを判定し、終了しない場合(ステップS19;No)には同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS19;Yes)にはステップS20に進む。具体的には、タグ10−2から所定の時間以上通信がなされない場合、または、操作部16が操作されて終了が指示された場合には、ステップS20に進む。なお、タグ10−2において、権限レベルを増加する処理が正常に実行された場合には、タグ10−2から正常に動作したことを示す情報を送信し、タグ10−1の表示部15にその旨を示す情報を表示するようにしてもよい。また、タグ10−2に対しても同様の情報を表示するようにしてもよい。
【0046】
ステップS19においてタグ間通信を終了すると判定した場合には、ステップS20に進み、タグ10−1の制御回路14は、通常モードに移行する。その際、タグ10−1の制御回路14は、動作モード識別子63をタグ間通信マスターモードを示す「01」から、通常モードを示す「00」に変更するとともに、イニシエーターフラグ64を「1」から「0」に変更する。また、必要に応じてタグ間通信用ID62および対応テーブル65をクリアする。
【0047】
同様に、タグ10−2の制御回路14は、通常モードに移行する(ステップS40)。その際、タグ10−2の制御回路14は、動作モード識別子63をタグ間通信スレーブモードを示す「10」から、通常モードを示す「00」に変更する。また、必要に応じてタグ間通信用ID62をクリアする。そして、タグ10−1およびタグ10−2が通常モードに移行すると、図9(A)に示すフォーマットの信号によってリーダーライター装置20との間で情報が送受信される。
【0048】
(B−3)ゲート装置の動作
つぎに、図11を参照して、図10の処理によって現在権限レベルが変更されたタグ10−2を有する訪問者がゲート装置30に対して接近した場合(またはタグ10−2が訪問者によってゲート装置30にかざされた場合)においてタグ10−2とゲート装置30において実行される処理について説明する。例えば、ゲート装置30は権限レベルが「2」以上の人物だけを通過させるように設定されている場合において、タグ10−1を所持する社員がゲート装置30を通過した後、つづいて、タグ10−2を有する訪問者がゲート装置30を通過しようとする場合を例に挙げて説明する。まず、タグ10−1を有する社員がゲート装置30に接近すると(またはタグ10−1が社員によってゲート装置30にかざされると)、ゲート装置30の制御回路33は、RF送受信回路32によってタグ10−1から固有IDを取得する。この結果、タグ10−1の固有IDとして「FFFFFF01」が取得される。そして、制御回路33は、I/F35およびネットワーク40を介してサーバー装置50に対して問い合わせを行い、当該社員がアクセス権限を有しているか否かを判定する。サーバー装置50は、HDD55に格納されている図8に示す権限テーブルからタグ10−1の基本権限レベル「2」を取得し、ゲート装置30に対して送信する。ゲート装置30では、タグ10−1の基本権限レベルが「2」であることから、制御回路33は対象となるタグ10−1はアクセス権限を有すると判断し、アクチュエーター36を制御して、ゲートを開いた状態としてタグ10−1を有する社員の通行を許可する。そして、ゲート装置30は、タグ10−1がエリア内に進入したことをサーバー装置50に通知する。サーバー装置50では、ゲート装置30によって進入が制限されるエリア内にタグ10−1が進入したことを記録する。
【0049】
つぎに、タグ10−2を有する訪問者が、ゲート装置30に接近したとすると、図11に示す処理が実行される。タグ10−2が接近すると、ステップS50において、ゲート装置30の制御回路33は、タグ10のアクセスがあったと判定し(ステップS50;Yes)、ステップS51に進む。なお、アクセスが発生していないと判定した場合(ステップS50;No)には同様の処理を繰り返す。
【0050】
タグ10のアクセスが発生したと判定した場合には、ステップS51に進み、制御回路33は、タグ10−2が有する固有IDの送信を要求する。タグ10−2は、このような送信要求を受信し(ステップS70)、ゲート装置30から固有IDの送信が要求されたことを認識する。前述したように、タグ10−2には一時的な権限レベルが付与されているので、タグ10−2の制御回路14は、自己の固有IDではなく、一時的な権限レベルが付与されていることを示す特定データをゲート装置30に対して送信する。なお、このような特定データは、固有IDには含まれないデータとして予め割り当てておく。
【0051】
ゲート装置30の制御回路33は、ステップS52において、タグ10−2から送信された特定データを受信する。制御回路33は、特定データを受信したことにより、タグ10−2には、一時的な権限レベルが付与されていることを認識し、ステップS53に進んで、現在権限レベルを送信するようにタグ10−2に要求する。タグ10−2の制御回路14は、現在権限レベル送信要求を受信する(ステップS72)。そして、タグ10−2の制御回路14は、メモリー17から現在権限レベル68を取得し、RF送受信回路12およびアンテナ11を介してゲート装置30に向けて送信する(ステップS73)。
【0052】
ゲート装置30の制御回路33は、ステップS54において、タグ10−2の現在権限レベルを受信する。そして、ステップS55に進み、制御回路33は、タグ10−2に対して権限付与タグIDの送信要求を行う。タグ10−2の制御回路14は、権限付与タグID送信要求を受信し(ステップS74)、メモリー17から権限付与タグID69を取得し、ゲート装置30に対して権限付与タグID69を送信する(ステップS75)。
【0053】
ゲート装置30の制御回路33は、ステップS56に進み、タグ10−2から送信された権限付与タグIDを受信する。いまの例では、タグ10−2に対して一時的な権限レベルを付与したのはタグ10−1であるので、タグ10−1の固有IDである「FFFFFF01」が取得される。
【0054】
ステップS57では、ゲート装置30の制御回路33は、タグ10−2が適正なアクセス権限を有しているか否かを判定し、適正なアクセス権限を有していると判定した場合(ステップS57;Yes)にはステップS58に進み、それ以外の場合(ステップS57;No)にはゲートを開けずに処理を終了する。より詳細には、ゲート装置30の制御回路33は、以下の条件を全て満たしているか否かを判定し、全て満たしている場合にはステップS58に進み、それ以外の場合には処理を終了する。
(1)タグ10−2の現在権限レベルが、ゲート装置30の許可レベル以上である。
(2)タグ10−2の現在権限レベルが、タグ10−2の上限レベル以下である。
(3)先に通過したタグ10−1の固有IDと、権限付与タグIDが一致する。
(4)タグ10−2の現在権限レベルが、タグ10−1の基本権限レベル以下である。
【0055】
具体的に説明する。まず、(1)については、タグ10−2の現在権限レベルは前述したように「2」であり、ゲート装置30の許可レベルは前述したように「2以上」であることから、(1)の条件は満たすと判定される。(2)については、タグ10−2の現在権限レベルは「2」であり、タグ10−2の上限レベルである「1」以下であるので条件を満たすと判定される。(3)については、先に(例えば、直前または30秒以内に)通過したタグ10−1の固有IDである「FFFFFF01」と、ステップS56で受信した権限付与タグID「FFFFFF01」は一致するので条件を満たすと判定される。(4)については、タグ10−2の現在権限レベル「2」は、タグ10−1の基本権限レベルである「2」以下であることから条件を満たすと判定される。このため、全ての条件を満たすと判定して、ステップS58に進む。
【0056】
ステップS58では、ゲート装置30の制御回路33は、アクチュエーター36を制御してゲートを開いた状態とし、タグ10−2を有する訪問者を通過させ、通過が確認された場合には再度アクチュエーター36を制御してゲートを閉じた状態とする。なお、ゲート装置30の制御回路33は、タグ10−2が一時権限に基づいてエリア内に進入したことをサーバー装置50に通知する。サーバー装置50では、ゲート装置30によって進入が制限されるエリア内にタグ10−2が進入したことを記録する。
【0057】
なお、一時的に付与された権限は、権限が付与されてから一定の時間(例えば、1時間)が経過した場合に、タグ10−2の制御回路14によって削除されるようにしてもよい。具体的には、一時的に権限が付与された場合には、タイマー18に1時間が経過した時点で割り込みを発生するように設定を行い、割り込みが発生した場合には、メモリー17に格納されている基本権限レベル67によって現在権限レベル68を上書きすることで、一時的な権限を削除する。これ以外にも、例えば、ゲート装置30に対して所定の回数アクセスがなされた場合に一時的な権限を削除するようにしたり、あるいは、タグ10−1の操作部16が操作されて一時的な権限を削除する指示がなされた場合に、一時的な権限を削除するようにしたりしてもよい。具体的には、ゲート装置30に対して、進入時と退出時の2回アクセスがされた場合に、一時的な権限が削除されるようにしたり、例えば、10回以上アクセスがなされた場合に一時的な権限が削除されるようにしたりしてもよい。さらに、リーダーライター装置20から削除信号を送信し、当該削除信号を受信した場合に、一時的な権限を削除するようにしてもよい。
【0058】
以上に説明したように、本実施形態では、タグ間通信に基づいて、一方のタグが他方のタグに対して一時的な権限レベルを付与し、当該他のタグは一時的な権限レベルに基づいてアクセス権限が判断されるようにしたので、例えば、訪問者に対して一時的な権限レベルを付与することにより、通常であればアクセスすることができない場所に対してもアクセスを許可することができる。すなわち、従来のタグの場合には、予めアクセス権限を有するタグを準備し、当該タグを訪問者に対して貸し渡すようにするか、タグシステムの管理者に対して、タグのアクセス権限を変更するように要請する必要があったが、そのような必要がなくなるため、アクセス権限の弾力的な運用を図ることができる。
【0059】
また、本実施形態では、他のタグに付与する一時的な権限は、一方のタグが有する権限を越えない範囲内に制限するようにしたので、例えば、不正に高い権限が付与されて、本来ならば、立ち入ることができないエリアに侵入されることを防止できる。
【0060】
また、本実施形態では、他のタグに一時的に付与される一時的な権限は、当該他のタグに予め設定されている範囲を逸脱しない範囲に制限するようにしたので、一時的な権限が付与される範囲を予め適正に設定することができる。これにより、不正に高い権限が付与されることを防止できる。
【0061】
また、本実施形態では、一時的な権限レベルが付与されてから一定の時間が経過した場合、ゲート装置30に所定回数アクセスがなされた場合、または、タグ10、リーダーライター装置20、もしくは、ゲート装置30から指示がなされた場合に、一時的な権限を無効にするようにしたので、一時的な権限が定められた範囲を超えて、不正に使用されることを防止できる。
【0062】
また、本実施形態では、一時的な権限を付与された他のタグがアクセスする前に、一方のタグがアクセスした場合にのみ、他のタグのアクセスを許可するようにしたので、例えば、他のタグを有する訪問者が、一方のタグを有する社員から離れて、制限エリアに不正にアクセスすることを防止できる。
【0063】
(C)変形実施の態様
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能であることは勿論である。
たとえば、以上の実施形態では、1対1のタグ間通信によって一時権限を付与する場合を例に挙げて説明したが、1対複数のタグ通信によって複数のタグに一時的な権限を付与することも可能である。具体的には、図10のステップS12〜S16およびステップS30〜S34の処理を、タグ間通信を行おうとするタグとの間で繰り返し実行することにより、1対複数のタグ間通信が可能になる。例えば、タグ10−1とタグ10−2〜10−14の間で1対13のタグ間通信を行う場合には、図4に示すような対応テーブル65が作成され、タグ10−1とタグ10−2〜10−14の間での通信が実行される。そして、このような状態において、権限レベルを増加する処理を行うことで、タグ10−2〜10−14の全ての権限を一括して増加することができる。
【0064】
また、以上の実施形態では、タグ10は人物が携行するようにしたが、例えば、タグ10を物品に付して、当該物品に付与されているタグ10に一時的な権限を付与することにより、例外的に、制限エリア内への物品の持ち込みまたは持ち出しを許可するようにしてもよい。
【0065】
また、以上の実施形態では、基本権限レベルよりも1つ高いレベルの権限を付与するようにしたが、2つ以上高いレベルの権限を付与するようにしてもよい。また、権限レベルを高い方に変更するのではなく、低い方へ変更するようにしてもよい。具体的には、訪問者が競業会社の場合には、権限レベルを一時的に低く設定するようにしてもよい。また、権限は0〜3の範囲ではなく、これよりも狭い範囲または広い範囲としてもよい。さらに、本実施形態では、基本権限レベル、上限権限レベル、および、現在権限レベルの3種類をタグに記憶させるようにしたが、権限の変更を受ける側のタグには現在権限レベルだけを記憶させ、権限を付与する側のタグの基本権限レベルを超えない範囲で権限を付与するようにしてもよい。さらにまた、図10の例では、権限レベルを付与する側のタグが有する基本権限レベルを超えない範囲で、権限を付与するようにしたが、基本権限レベルではなく、上限権限レベルを超えない範囲で、権限を付与するようにしてもよい。
【0066】
また、以上の実施形態では、権限付与の条件を満たすか否かの判定は、権限を付与される側のタグにおいて実行するようにしたが、権限を付与する側のタグにおいて実行するようにしてもよい。具体的には、図10の処理において、権限レベルの増加が指示された場合には、タグ10−2から基本権限レベル、上限権限レベル、および、現在権限レベルを受信し、タグ10−1において、前述した条件を満たすか否かを判定し、満たす場合にはタグ10−2の現在権限レベルを増加するようにしてもよい。あるいは、タグ間における処理が終了した後に通常モードに移行し、リーダーライター装置20によって、付与された権限が適正であるか否かを確認するようにしてもよい。
【0067】
また、以上の実施形態では、一時的な権限を付与されたタグ10−2のアクセスに先立って、タグ10−1がアクセスした場合に、タグ10−2のアクセスを許可するようにしたが、このような条件は除外するようにしてもよい。すなわち、タグ10−2が先にアクセスした場合であっても、通過を許可するようにしてもよい。
【0068】
また、以上の実施形態では、通常通信とタグ間通信を共通のアンテナ11およびRF送受信回路12によって実行するようにしたが、例えば、タグ間通信用に特化したアンテナおよびRF送受信回路を設けるようにしてもよい。そのような構成によれば、リーダーライター装置20に比較して、信号強度が弱いタグ間通信信号に適した設計を行うことで、タグ間通信信号を効率よく送受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のタグシステムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示すタグの構成例を示すブロック図である。
【図3】図1に示すタグのメモリーに格納されている情報の一例である。
【図4】図3に示す対応テーブルの一例である。
【図5】図1に示すリーダーライター装置の構成例を示す図である。
【図6】図1に示すゲート装置の構成例を示す図である。
【図7】図1に示すサーバー装置の構成例を示す図である。
【図8】図7に示すサーバー装置のHDDに格納されている情報の一例である。
【図9】通常通信およびタグ間通信における信号の一例である。
【図10】権限を付与する処理の流れを説明するフローチャートである。
【図11】ゲート装置において実行される処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
10…タグ、11…アンテナ、12…RF送受信回路、13…バッテリー、14…制御回路、15…表示部、16…操作部、17…メモリー、18…タイマー、20…リーダーライター装置、30…ゲート装置、31…アンテナ、32…RF送受信回路、33…制御回路、34…メモリー、35…I/F、36…アクチュエーター、40…ネットワーク、50…サーバー装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の権限レベルを付与されたタグと、前記タグに付与された権限レベルに基づいて、アクセス制限を行う制限装置とを有するタグシステムにおいて、
前記タグは、
他のタグとタグ間通信を行う通信手段と、
前記通信手段を介して、前記他のタグに予め付与されている権限レベルとは異なるレベルの権限を前記他のタグに一時的に付与する付与手段と、を有し、
前記制限装置は、新たな権限レベルが付与された場合には、当該新たな権限レベルに基づいてアクセス制限を実行する、
ことを特徴とするタグシステム。
【請求項2】
請求項1記載のタグシステムにおいて、
前記タグの付与手段は、自己が有する権限レベルを超えない範囲において、前記他のタグに対して権限レベルを一時的に付与することを特徴とするタグシステム。
【請求項3】
請求項1または2記載のタグシステムにおいて、
前記他のタグは、一時的に付与される権限レベルの範囲を指定するための情報を有しており、
前記付与手段は、前記範囲を超えない範囲の権限レベルを前記他のタグに対して一時的に付与することを特徴とするタグシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のタグシステムにおいて、
前記他のタグに一時的に付与された権限レベルは、所定の条件が満たされた場合に、無効とされることを特徴とするタグシステム。
【請求項5】
請求項4記載のタグシステムにおいて、
前記所定の条件は、前記権限レベルが付与されてから所定の時間が経過した場合、前記制限装置に対して所定の回数アクセスがなされた場合、または、前記制限装置もしくは前記タグから権限レベルを無効にする指示がなされた場合であることを特徴とするタグシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のタグシステムにおいて、
前記制限装置は、前記他のタグよりも所定時間前に前記タグのアクセスがなされた場合に、前記他のタグのアクセスを許可することを特徴とするタグシステム。
【請求項7】
所定の権限レベルを付与され、当該権限レベルに基づいて制限装置によるアクセス制限を受けるタグにおいて、
他のタグとタグ間通信を行う通信手段と、
前記通信手段を介して、他のタグに予め付与されている権限レベルとは異なるレベルの権限を他のタグに一時的に付与する付与手段と、を有し、
新たな権限レベルが付与された場合には、当該新たな権限レベルに基づいて制限装置によるアクセス制限を受ける、
ことを特徴とするタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−182151(P2010−182151A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25915(P2009−25915)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】