説明

タグ装置およびタグシステム

【課題】複数のリーダライタ装置またはアンテナを有するシステムを容易に構築することが可能なタグ装置を提供する。
【解決手段】アンテナを識別するためのアンテナ識別コードと、前回通信したタグ装置を識別するためのタグ装置識別コードとを含む読み出し信号をリーダライタ装置から受信し、当該読み出し信号に、自機のタグ装置識別コードが含まれている場合には、アンテナ識別コードを記録する記録手段(メモリ42a)と、記録手段に記録されているアンテナ識別コードを含む読み出し信号に対する応答を保留する保留手段(制御回路42)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タグ装置およびタグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
リーダライタ装置によって複数のタグ装置から情報を読み出す場合には、複数のタグ装置が送信する情報が衝突しないように制御(アンチコリジョン制御)する必要がある。特許文献1には、タグ装置のアンチコリジョンを実現するために、状態カウンタとランダム値を使ってタグ装置の応答を抑制するトリー分岐アルゴリズムに関する技術が開示されている。また、特許文献2には、リーダライタ装置から送信されたクロック信号をタグ装置でカウントし、自己のタグIDと等しい場合に応答する技術が開示されている。さらに、特許文献3には、タグ装置のナンバースペースの分割と、ビットの配置によってタグ装置の応答を制御する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平08−94746号公報
【特許文献2】特表2001−523631号公報
【特許文献3】特表2005−528815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1〜3に開示される技術は、いずれも、複数のタグ装置が同時に発信すると競合してしまうので、それを防ぐために、各タグ装置の発信を、時間的かつ自律的に制御するための技術である。このため、複数のリーダライタ装置またはアンテナを有するシステムに対しては最適化されていないので、そのようなシステムを容易に構築することができないという問題点がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数のリーダライタ装置またはアンテナを有するシステムを容易に構築することが可能なタグ装置およびタグシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、アンテナを識別するためのアンテナ識別コードと、前回検出したタグ装置を識別するためのタグ装置識別コードとを含む読み出し信号をリーダライタ装置から前記アンテナを介して受信し、当該読み出し信号に、自機のタグ装置識別コードが含まれている場合には、前記アンテナ識別コードを記録する記録手段と、前記記録手段に記録されているアンテナ識別コードを含む読み出し信号に対する応答を保留する保留手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、複数のリーダライタ装置またはアンテナを有するシステムを容易に構築することが可能となる。
【0006】
また、本発明は、アンテナを識別するためのアンテナ識別コードと、前回検出したタグ装置を識別するためのタグ装置識別コードとを含む読み出し信号を前記アンテナを介してタグ装置に送信する送信手段を有するリーダライタ装置と、前記リーダライタ装置から送信される読み出し信号に、自機のタグ装置識別コードが含まれている場合には、前記アンテナ識別コードを記録する記録手段と、前記記録手段に記録されているアンテナ識別コードを含む読み出し信号に対する応答を保留する保留手段と、を有するタグ装置と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、複数のリーダライタ装置またはアンテナを有するシステムを容易に構築することが可能となる。
【0007】
また、他の発明は、上記発明において、前記アンテナ識別コードは、少なくとも隣り合って配置されたアンテナに対しては互いに異なるアンテナ識別コードが付与されていることを特徴とする。この構成によれば、確実にアンテナ識別コードを検出することができるとともに、少ない種類のアンテナ識別コードで足りる。
【0008】
また、他の発明は、上記発明において、前記タグ装置は、所定の信号を受信した場合には、前記記録手段に記録されている前記アンテナ識別コードを消去することを特徴とする。
この構成によれば、必要に応じて記録されているアンテナ識別コードを消去することができるので、重複するアンテナ識別コードを有する他のシステムの管理下にもタグ装置を有する者が問題なく移動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(A)実施の形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るタグシステムの構成例を示す図である。この図に示すように、タグシステムは、サーバ装置10、リーダライタ装置20,30、タグ装置40〜70を有している。このようなタグシステムは、例えば、企業のオフィス内に配置され、タグ装置のそれぞれが社員に所持される。リーダライタ装置20,30は、アンテナ20a,30aのそれぞれによって形成される通信可能範囲が相互に重ならないような距離を隔てて設置される。リーダライタ装置20,30によってそれぞれ検出されたタグ装置に関する情報は、サーバ装置10に送られて管理される。なお、図1では、2台のリーダライタ装置20,30のみが表示してあるが、実際には3台以上のリーダライタ装置が配置されている。そして、所持者がオフィス内を移動した場合には、リーダライタ装置がタグ装置を検出してサーバ装置10に送信する。サーバ装置10では、タグ装置を検出したリーダライタ装置の設置場所から、所持者の現在位置を特定することができる。
【0011】
ここで、サーバ装置10は、パーソナルコンピュータによって構成され、例えば、タグ装置40〜70の位置と、時刻とを関連付けして管理する。リーダライタ装置20,30は、アンテナ20a,30aを有し、これらのアンテナ20a,30aを識別するためのアンテナIDと、前回検出したタグ装置のIDを示すタグIDを含む読み出し信号を、タグ装置40〜70に対して送信(ブロードキャスト)し、タグ装置40〜70からの応答を受信した場合には、自機のIDと受信したタグ装置のIDとをサーバ装置10に対して送信する。
【0012】
図2は、リーダライタ装置20,30の詳細な構成例を示す図である。なお、リーダライタ装置20,30は同様の構成とされているので、以下ではリーダライタ装置20について説明する。この図に示すように、リーダライタ装置20は、アンテナ20a、RF(Radio Frequency)送受信回路21、制御回路22、および、I/F(Interface)23を有している。ここで、アンテナ20aは、例えば、ループアンテナによって構成され、タグ装置40〜70との間で、例えば、交番磁界によって情報を授受する。RF送受信回路21は、制御回路22から供給される情報に基づいて搬送波を変調し、アンテナ20aを介してタグ装置40〜70に送信するとともに、タグ装置40〜70から送信された交番磁界をアンテナ20aを介して受信し、搬送波に含まれている情報を復調して、制御回路22に供給する。制御回路22は、内蔵されているメモリに格納されているプログラムを実行することにより、装置の各部を制御する。I/F23は、サーバ装置10との間で情報を授受する際に、情報の表現形式を適宜変換する。
【0013】
タグ装置40〜70は、可搬型の装置であり、例えば、所持者が首等からぶら下げることができる形態とされている。タグ装置40〜70は、リーダライタ装置20,30から送信された読み出し信号を受信し、そこに含まれているアンテナIDとタグIDを抽出し、抽出したタグIDが自機のタグIDと一致する場合には、自機がリーダライタ装置20,30によって検出されたとしてアンテナIDを記憶し、それ以降は、記憶されているアンテナIDと同一のアンテナIDを含む読み出し信号に対しては応答しない。
【0014】
図3は、タグ装置40〜70の詳細な構成例を示す図である。なお、タグ装置40〜70は同様の構成とされているので、以下ではタグ装置40について説明する。この図に示すように、タグ装置40は、アンテナ40a、RF送受信回路41、および、制御回路42を有している。ここで、アンテナ40aは、例えば、ループアンテナによって構成され、リーダライタ装置20,30との間で、例えば、交番磁界によって情報を授受する。RF送受信回路41は、制御回路42から供給される情報に基づいて搬送波を変調し、アンテナ40aを介してリーダライタ装置20,30に送信するとともに、リーダライタ装置20,30から送信された交番磁界をアンテナ40aを介して受信し、搬送波に含まれている情報を復調して、制御回路42に供給する。制御回路42は、メモリ42aに格納されているプログラムを実行することにより、装置の各部を制御する。また、メモリ42aには、自機のタグIDが格納されているとともに、後述するように自機が検出された場合には、検出したリーダライタが有するアンテナIDが格納される。
【0015】
(B)実施の形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作について説明する。以下では、まず、図4を参照してリーダライタ装置20,30において実行される処理について説明し、つぎに、図6を参照してタグ装置40〜70において実行される処理について説明し、最後に、具体例を挙げてシステム全体の詳細な動作を説明する。
【0016】
図4は、リーダライタ装置20,30において実行される処理の一例である。以下では、リーダライタ装置20を例に挙げて説明する。まず、ステップS10では、リーダライタ装置20の制御回路22は、送信しようとする読み出し信号に対してアンテナ20aに付与されているアンテナIDを付加する。図5は、読み出し信号のフォーマットの一例を示す図である。この図に示すように、読み出し信号90は、同期ビット91、アンテナID92、タグID93、コマンド94、および、同期ビット95を有している。ここで、同期ビット91,95は、タグ装置40〜70が読み出し信号を受信する際に、受信のタイミングの同期をはかるために使用されるビットである。アンテナID92は、当該読み出し信号を送信するアンテナを識別するための識別情報である。タグID93は、前回検出したタグ装置を識別するための識別情報である。コマンド94は、タグ装置に対して所定の処理を実行させるための情報である。なお、アンテナID92は、4ビットによって構成され、「0000(=0)」および「1111(=F)」は不使用とされているので、14種類のIDが存在する。タグID93は、16ビットによって構成されている。なお、タグ装置40〜70からリーダライタ装置20,30に対して送信するタグIDは、誤検出を防止するために32ビットとし、冗長なビットに含まれる情報を用いて誤検出の発生を防止するようにしてもよい。
【0017】
ステップS11では、制御回路22は、前回の読み出しにおいて、タグ装置を検出したか否かを判定し、タグ装置を検出した場合(ステップS11;Yes)にはステップS12に進み、それ以外の場合(ステップS11;No)にはステップS13に進む。例えば、前回の検出において、タグ装置を検出していない場合には、ステップS13に進む。
【0018】
ステップS12では、制御回路22は、前回検出したタグ装置のタグIDを読み出し信号にタグID93として付加する。
【0019】
ステップS13では、制御回路22は、前回検出したタグ装置のタグIDが存在しないため、タグID93として無効なID(例えば、16ビットが全て“0”であるID)を付加する。
【0020】
ステップS14では、制御回路22は、アンテナ20aを介して読み出し信号をブロードキャストする。この結果、アンテナ20aの通信可能範囲に存在するタグ装置は、読み出し信号を受信する。いま、タグ装置40とタグ装置50がアンテナ20aの通信可能範囲に存在しているとすると、タグ装置40,50によって読み出し信号が受信される。
【0021】
ステップS15では、制御回路22は、タグ装置からの応答があったか否かが判定され、応答があった場合にはステップS16に進み、それ以外の場合にはステップS14に戻って同様の処理を繰り返す。いまの例では、タグ装置40,50によって読み出し信号が受信されるので、これらのタグ装置40,50が当該読み出し信号に対して応答する。この結果、ステップS15では、Yesと判定されてステップS16に進む。
【0022】
ステップS16では、制御回路22は、タグ装置からの応答に含まれているタグIDを取得する。なお、複数のタグ装置から応答がなされた場合には、アンテナ20aに最も近い位置に存在しているタグ装置の応答が受信されて、タグIDが取得される。例えば、タグ装置40の方がタグ装置50よりもアンテナ20aに近い位置に存在している場合には、タグ装置40から放射される交番磁界の方が減衰が少ないので(磁界は距離の3乗に比例して減衰するので)、タグ装置40の応答が受信され、タグ装置40のタグIDが取得される。
【0023】
ステップS17では、制御回路22は、ステップS16で取得したタグIDと、アンテナIDと、検出した時点の時刻とをI/F23を介してサーバ装置10に送信する。サーバ装置10では、受信したこれらの情報を対応付けして記憶する。このようにして記憶された情報を参照することにより、所持者が、どの時刻に、どこにいるかを知ることができる。
【0024】
ステップS18では、制御回路22は、処理を終了するか否かを判定し、終了しない場合(ステップS18;No)にはステップS10に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS18;Yes)には処理を終了する。
【0025】
つぎに、図6を参照して、タグ装置40〜70において実行される処理の一例について説明する。なお、以下では、タグ装置40を例に挙げて説明する。図6の処理が実行されると、制御回路42は、ステップS30において、リーダライタ装置からの読み出し信号を受信したか否かを判定し、読み出し信号を受信したと判定した場合にはステップS31に進み、それ以外の場合には受信するまで同様の処理を繰り返す。例えば、リーダライタ装置20からの読み出し信号を受信した場合には、Yesと判定してステップS31に進む。
【0026】
ステップS31では、制御回路42は、受信した読み出し信号からアンテナID92を取得する。例えば、リーダライタ装置20からの読み出し信号を受信した場合には、アンテナ20aのアンテナIDを取得する。
【0027】
ステップS32では、制御回路42は、受信した読み出し信号からタグID93を取得する。例えば、前回のブロードキャストにおいて、タグ装置が検出されなかった場合には、タグIDとしては無効なIDが含まれているので、当該無効なタグIDが取得される。
【0028】
ステップS33では、制御回路42は、アンテナIDがメモリ42aに記録済みであるか否かを判定し、記録済みである場合(ステップS33;Yes)にはステップS34に進み、それ以外の場合(ステップS33;No)にはステップS35に進む。例えば、アンテナIDが記録済みでない場合には、ステップS35に進む。
【0029】
ステップS34では、制御回路42は、ステップS31で取得したアンテナIDと、メモリ42aに記録されているアンテナIDが一致するか否かを判定し、アンテナIDが一致する場合にはステップS38に進み、それ以外の場合にはステップS35に進む。例えば、アンテナIDが一致しない場合には、ステップS35に進む。
【0030】
ステップS35では、制御回路42は、ステップS32で取得したタグIDと、自機のタグID(メモリ42aに格納されているタグID)が一致するか否かを判定し、一致する場合(ステップS35;Yes)にはステップS37に進み、それ以外の場合(ステップS35;No)にはステップS36に進む。
【0031】
ステップS36では、制御回路42は、自機のタグIDをメモリ42aから取得し、RF送受信回路41およびアンテナ40aを介してリーダライタ装置20に対して送信(応答)する。その結果、リーダライタ装置20は、タグ装置40から送信されたタグIDを受信し、ステップS15においてタグ装置からの応答がなされたと判断する。
【0032】
ステップS37では、制御回路42は、ステップS31において取得したアンテナIDをメモリ42aに格納する。この結果、リーダライタ装置によって自機が認識され、自機のタグIDが読み出し信号に付加されて送られてきた場合には、当該読み出し信号を送信したリーダライタ装置のアンテナIDがメモリ42aに記録される。
【0033】
ステップS38では、制御回路42は、処理を終了するか否かを判定し、終了しない場合(ステップS38;No)にはステップS30に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS38;Yes)には処理を終了する。
【0034】
つぎに、以上の実施形態の具体的な動作について説明する。例えば、図7に示すように、タグ装置40〜60が図7に示すような位置関係を有して、破線矢印に示す方向で、リーダライタ装置20に近づいてきたとする。また、このとき、タグ装置40〜60のメモリ42a〜62aにはアンテナIDは格納されておらず、また、リーダライタ装置20の前回のブロードキャストではタグ装置は検出できなかったとする。そのような場合において、リーダライタ装置20が、ステップS14の処理により、アンテナ20aのアンテナIDを有する読み出し信号をブロードキャストしたとすると、読み出し信号はアンテナ20aの通信可能範囲内に位置しているタグ装置40〜60によって受信される。すると、タグ装置40〜60では、ステップS30において読み出し信号を受信したとしてステップS31に進み、ステップS31においてアンテナ20aのアンテナIDを取得する。また、前回のブロードキャストではタグ装置は検出されていないことから、ステップS32では、無効なタグIDが取得される。ステップS33では、アンテナIDは記録済みではないことからステップS35に進む。ステップS35では、読み出し信号に含まれるタグIDは無効であることから、ステップS36に進む。そして、タグ装置40〜60のそれぞれは、ステップS36において自機のタグIDをリーダライタ装置20に対して送信する。
【0035】
リーダライタ装置20では、ステップS15の処理により、タグ装置からの応答がなされたと判定し、ステップS16に進む。ステップS16では、アンテナ20aに最も近い位置に存在しているタグ装置40からの応答を受信し、タグIDを取得する。そして、ステップS17では、タグ装置40のタグIDその他の情報がサーバ装置10に送信され、ステップS10に戻って前述の場合と同様の処理が繰り返される。
【0036】
つぎのブロードキャストでは、前回のブロードキャストではタグ装置40が検出されていることから、タグ装置40のタグIDが読み出し信号に付加されてブロードキャストが実行される。この読み出し信号を受信したタグ装置40〜60では、ステップS30において、Yesと判定してステップS31に進み、アンテナIDとタグIDを取得する。そして、タグ装置40〜60はステップS33ではNo(アンテナIDが記録されていない)と判定してステップS35に進み、タグIDが一致するか否かを判定する。このとき、タグ装置40では、タグIDが一致すると判定してステップS37に進み、タグ装置40のメモリ42aにアンテナ20aのアンテナIDを記録する。一方、タグ装置50,60では、タグIDは一致しないので、ステップS36に進んで、自機のタグIDを送信し、アンテナ20aに近い方のタグ装置50の応答がリーダライタ装置20に受信される。
【0037】
つぎのブロードキャストでは、タグIDとしてタグ装置50のタグIDが付加された読み出し信号が送信される。タグ装置40では、ステップS33において、アンテナIDが記録済みであることから、Yesと判定されてステップS34に進む。ステップS34では記録されているアンテナIDと、読み出し信号に含まれているアンテナIDはともにアンテナ20aのもので一致するので、Yesと判定されてステップS38に進む。この結果、タグ装置40は、読み出し信号にアンテナ20aのアンテナIDが含まれている限り(アンテナ20aの通信可能範囲を出て他のアンテナの通信可能範囲に入らない限り)、ブロードキャストに応答することはない。一方、タグ装置50では、ステップS35においてタグIDが一致するとしてステップS37に進んでアンテナIDを記録する。また、タグ装置60では、ステップS36において自機のタグIDを送信する。この結果、リーダライタ装置20では、タグ装置60を検出する。
【0038】
つぎのブロードキャストでは、リーダライタ装置20は、タグ装置60のタグIDを付加した読み出し情報を送信する。タグ装置50は前回のブロードキャスト時において、アンテナIDを記録していることから、ステップS34においてYesと判定し、ステップS38に進むため、応答しない状態となる。一方、タグ装置60は、ステップS35においてタグIDが一致すると判定し、アンテナIDを記録する。このため、タグ装置60は、つぎのブロードキャストでは応答しない状態となる。以上の処理により、タグ装置40〜60に対するアンチコリジョン制御が実現されるとともに、タグ装置40〜60のタグIDが取得されてサーバ装置10に送信される。
【0039】
このような状態において、タグ装置40〜60が、リーダライタ装置30の近くに移動したとすると、タグ装置40〜60はリーダライタ装置30がブロードキャストした読み出し信号を受信する。この結果、読み出し信号を受信したタグ装置40〜60では、アンテナ20aのアンテナIDが記録済みであることからステップS33においてYesと判定され、ステップS34に進む。ステップS34では、記録されているアンテナIDはアンテナ20aのものであり、また、読み出し信号に含まれているアンテナIDはアンテナ30aのものであるので、アンテナIDが一致しないことからNoと判定されてステップS35に進む。ステップS35では、読み出し信号にはタグIDは含まれていないことから、Noと判定されてステップS36に進む。その結果、タグ装置40〜60は、ステップS36において、タグIDをリーダライタ装置30に対して送信する。なお、それ以降の処理は、前述の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態によれば、読み出し信号に前回検出したタグIDとアンテナIDを付加して送信し、タグ装置では自機のタグIDが含まれている場合には、自機が認識されたと判定してアンテナIDを記録する。そして、それ以降のブロードキャストでは、読み出し信号に含まれているアンテナIDと、記録されているアンテナIDが一致する場合には、読み出し信号に対する応答を保留するようにした。このため、自機がリーダライタ装置に認識された場合には、同一のアンテナIDを有する限り応答を行わなくなることから、アンチコリジョン制御を実現できる。また、そのような、アンチコリジョン制御を実現するにあたって必要となる追加の機能としては、タグ装置側では実質的にはプログラムの修正だけであり、ハードウエアの追加が不要であるため、簡易な構成によってアンチコリジョン制御を実現できる。
【0041】
また、読み出し信号に対して、タグIDとアンテナIDを付加して送信することにより、これらを別途送信する場合に比較して、通信の回数を減らすことにより、タグ装置の検出までに要する時間を短縮することができる。
【0042】
(C)変形実施の態様
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能であることは勿論である。
例えば、以上の実施形態では、2台のリーダライタ装置20,30の場合について説明したが、リーダライタ装置が3台以上であってもよい。また、リーダライタ装置は、1つのアンテナをそれぞれ有するようにしたが、複数のアンテナを有するようにしてもよい。例えば、1台のリーダライタ装置が2つのアンテナを有している場合には、それぞれのアンテナに対してアンテナIDを付与し、それぞれのアンテナから送信する読み出し信号に対して、対応するアンテナIDを付加するようにしてもよい。
【0043】
また、多数のアンテナが存在する場合には、少なくとも隣り合うアンテナ間でアンテナIDが異なるように設定すればよい。一例として、2種類のアンテナIDを交互に付与するようにしてもよい。例えば、「0101」と「1010」の2種類のアンテナIDを交互に付与するようにすることができる。このような少ないアンテナIDであっても、タグ装置に記録されるアンテナIDは1つだけであるので、現在のアンテナからつぎのアンテナに移動したことがアンテナIDの違いによって認識されればよいので問題はない。
【0044】
また、リーダライタ装置から所定の信号を受信した場合には、メモリ42aに記録しているアンテナIDを消去できるようにしてもよい。そのような実施形態によれば、企業のある事業所から、他の事業所に移動するような場合において、事業所の出入口にメモリ42aに記録されているアンテナIDを消去するためのリーダライタ装置を設置しておけば、これらの事業所において重複するアンテナIDが使用されているような場合であっても、タグ装置を正常に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のタグ装置を含むタグシステムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示すリーダライタ装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図1に示すタグ装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】リーダライタ装置において実行される処理である。
【図5】読み出し信号のフォーマットの一例である。
【図6】タグ装置において実行される処理である。
【図7】具体的な動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
10…サーバ装置、20…リーダライタ装置、20a…アンテナ、21…RF送受信回路、22…制御回路、23…I/F、30…リーダライタ装置、40〜60…タグ装置、40a…アンテナ、41…RF送受信回路、42…制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを識別するためのアンテナ識別コードと、前回検出したタグ装置を識別するためのタグ装置識別コードとを含む読み出し信号をリーダライタ装置から前記アンテナを介して受信し、当該読み出し信号に、自機のタグ装置識別コードが含まれている場合には、前記アンテナ識別コードを記録する記録手段と、
前記記録手段に記録されているアンテナ識別コードを含む読み出し信号に対する応答を保留する保留手段と、
を有することを特徴とするタグ装置。
【請求項2】
アンテナを識別するためのアンテナ識別コードと、前回検出したタグ装置を識別するためのタグ装置識別コードとを含む読み出し信号を前記アンテナを介してタグ装置に送信する送信手段を有するリーダライタ装置と、
前記リーダライタ装置から送信される読み出し信号に、自機のタグ装置識別コードが含まれている場合には、前記アンテナ識別コードを記録する記録手段と、
前記記録手段に記録されているアンテナ識別コードを含む読み出し信号に対する応答を保留する保留手段と、を有するタグ装置と、
を有することを特徴とするタグシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のタグシステムにおいて、
前記アンテナ識別コードは、少なくとも隣り合って配置されたアンテナに対しては互いに異なるアンテナ識別コードが付与されていることを特徴とするタグシステム。
【請求項4】
請求項2または3に記載のタグシステムにおいて、
前記タグ装置は、所定の信号を受信した場合には、前記記録手段に記録されている前記アンテナ識別コードを消去することを特徴とするタグシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−33153(P2010−33153A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192280(P2008−192280)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】