説明

タグ通信装置及びタグ通信方法

【課題】ユーザー等の生体又は移動体がRFIDタグを所持することなく又は設置されることなくシステムの情報処理装置を動作させることを可能とすること。
【解決手段】タグ通信装置であって、生体又は移動体に所持又は設置される通信タグに対し、生体又は移動体を介してデータの通信を行う第一通信部と、情報処理装置とデータの通信を行う第二通信部と、通信タグ又は情報処理装置から受信されたデータを記憶する記憶部と、記憶部に記憶されたデータを用いて、情報処理装置と通信タグとの通信を中継する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信タグを用いた通信システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体や物体の表面に発生する電界を利用した通信技術が提案されている(非特許文献1参照)。このような電界通信の技術を用いることによって、ICカード(RFIDタグ)をカードリーダーに近接させるための動作を行うことなく、ユーザーID等のデータをシステム側へ送信してシステム(例えばドアの解錠システム)を利用することが可能となった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−226560号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“RedTacton”、[online]、[平成21年7月31日検索]、インターネット<URL:http://www.redtacton.com/jp/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ユーザーはシステムを利用するためには従来のRFIDタグを所持しなければならなかった。そこで本発明は、ユーザー等の生体又は移動体がRFIDタグを所持することなく又は設置されることなくシステムの情報処理装置を動作させることを可能とするタグ通信装置及びタグ通信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の一態様は、タグ通信装置であって、生体又は移動体に所持又は設置される通信タグに対し、生体又は移動体を介してデータの通信を行う第一通信部と、情報処理装置とデータの通信を行う第二通信部と、前記通信タグ又は前記情報処理装置から受信されたデータを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されたデータを用いて、前記情報処理装置と前記通信タグとの通信を中継する制御部と、を備える。
【0007】
[2]本発明の一態様は、上記のタグ通信装置であって、前記制御部は、前記情報処理装置から受信されたデータを前記一時記憶部に書き込み、前記情報処理装置からの受信処理と非同期で、前記記憶部に記憶されたデータを前記通信タグに対して前記第一通信部から送信する、ことを特徴とする。
【0008】
[3]本発明の一態様は、上記のタグ通信装置であって、前記制御部は、前記通信タグから受信されたデータを前記一時記憶部に書き込み、前記受信の処理から所定時間が経過するまでは、前記通信タグとの通信の有無にかかわらず前記情報処理装置30に対して前記記憶部に記憶されたデータを前記第二通信部から送信する、ことを特徴とする。
【0009】
[4]本発明の一態様は、上記のタグ通信装置であって、前記制御部は、前記情報処理装置から受信されたデータと、前記通信タグから受信されたデータとを用いて前記通信タグに変わって処理を実行し、前記処理の実行結果を前記情報処理装置に対して前記第二通信部から送信する、ことを特徴とする。
【0010】
[5]本発明の一態様は、上記のタグ通信装置であって、前記制御部は、前記情報処理装置から受信されたデータを前記通信タグへ送信する処理を実行している場合、所定のタイミングで前記情報処理装置に対し、エラー処理を実行しないことを要求することを特徴とする。
【0011】
[6]本発明の一態様は、タグ通信方法であって、生体又は移動体に所持又は設置される通信タグに対し、生体又は移動体を介してデータの通信を行う第一通信部と、情報処理装置とデータの通信を行う第二通信部と、前記通信タグ又は前記情報処理装置から受信されたデータを記憶する記憶部と、を備えるタグ通信装置が、前記通信タグ又は前記情報処理装置から受信されたデータを前記記憶部に書き込むステップと、前記タグ通信装置が、前記記憶部に記憶されたデータを用いて、前記情報処理装置と前記通信タグとの通信を中継するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ユーザー等の生体又は移動体がRFIDタグを所持することなく又は設置されることなくシステムの情報処理装置を動作させることを可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態の通信システムのシステム構成を表すシステム構成図である。
【図2】非同期処理が設定された場合のシーケンス図である。
【図3】代理応答処理が設定された場合のシーケンス図である。
【図4】代理計算処理が設定された場合のシーケンス図である。
【図5】代理遅延処理が設定された場合のシーケンス図である。
【図6】第二実施携帯の通信システムのシステム構成を表すシステム構成図である。
【図7】通信システムの適用例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態の通信システム1aのシステム構成を表すシステム構成図である。通信システム1aは、通信タグ10、タグ通信装置20a、情報処理装置30を備える。以下、通信システム1aの各装置について説明する。
【0015】
通信タグ10は、人や動物などの生体によって所持され又は自動車や電車などの移動体に設置される。通信タグ10は、単にデータの読み書きをするようなタグ(RFID技術におけるICタグ)のように構成されても良いし、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを搭載して演算処理を実行できるようなカード(RFID技術におけるICカード)のように構成されても良い。通信タグ10は、タグ通信装置20aの第一通信部21に生体又は移動体の一部が接触することによって、生体又は移動体を介してタグ通信装置20aと通信を行う。以下、通信タグ10の詳細について説明する。
【0016】
通信タグ10は、記憶部11、通信部12、制御部13を備える。記憶部11は、磁気記憶装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成され、情報処理装置30において用いられるデータや、情報処理装置30から受信されるデータを記憶する。情報処理装置30において用いられるデータとは、例えば、通信タグ10が所持され又は設置される生体又は移動体を一意に識別するための識別情報である。
【0017】
通信部12は、制御部13から受け取るデータに対し変調処理を行うことによって送信信号を生成し、タグ通信装置20aに対して送信する。また、通信部12は、タグ通信装置20aから信号を受信し、受信された信号に対し復調処理を行うことによってデータを復元する。以下、通信部12の具体例について説明する。通信部12は、変調回路、復調回路、電界誘起回路、電界センサー、電極、絶縁フィルムを備える。電界センサーは、例えばトランジスタやフォトニック電界センサーを用いて構成される。通信部12は、送信を行う場合には、通信タグ10が所持され又は設置される生体又は移動体の表面に電界を誘起し、誘起する電界を変化させることによって信号を伝達する。一方、通信部12は、受信を行う場合には、生体又は移動体の表面に誘起されている電界の変化を検出し、タグ通信装置20aから送信された信号を復元し、復元された信号を復調することによってデータを復元する。
【0018】
制御部13は、データを送信する場合には、記憶部11に記憶されるデータを読み出し、読み出されたデータを通信部12へ送る。一方、制御部13は、データを受信する場合には、通信部12によって復元されたデータを記憶部11に書き込む。
【0019】
タグ通信装置20aは、通信タグ10からデータを受信すると、受信されたデータを情報処理装置30へ送信する。タグ通信装置20aは、第一通信部21、制御部22a、一時記憶部23、第二通信部24を備える。
【0020】
第一通信部21は、制御部22aから受け取るデータに対し変調処理を行うことによって送信信号を生成し、通信タグ10に対して送信する。また、第一通信部21は、通信タグ10から信号を受信し、受信された信号に対し復調処理を行うことによってデータを復元する。以下、第一通信部21の具体例について説明する。第一通信部21は、変調回路、復調回路、電界誘起回路、電界センサー、電極、絶縁フィルムを備える。電界センサーは、例えばトランジスタやフォトニック電界センサーを用いて構成される。第一通信部21は、送信を行う場合には、絶縁フィルムを介して電極に触れている生体又は移動体の表面に電界を誘起し、誘起する電界を変化させることによって信号を伝達する。一方、第一通信部21は、受信を行う場合には、絶縁フィルムを介して電極に触れている生体又は移動体の表面に誘起されている電界の変化を検出し、通信タグ10から送信された信号を復元し、復元された信号を復調することによってデータを復元する。
【0021】
制御部22aは、第一通信部21によって受信されたデータを、第二通信部24を介して情報処理装置30へ送信する。また、制御部22aは、第二通信部24によって受信されたデータを、第一通信部21を介して通信タグ10へ送信する。制御部22aは、予め設定される処理方法にしたがって上記の送信処理を行う。制御部22aに予め設定される処理方法については後述する。
【0022】
一時記憶部23は、磁気記憶装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成され、情報処理装置30から受信されたデータや通信タグ10から受信されたデータを記憶する。
【0023】
第二通信部24は、既存の通信技術によって情報処理装置30とデータの送受信を行う。第二通信部24に適用される通信技術は、LAN(Local Area Network)やUSB(Universal Serial Bus)等の有線通信技術であっても良いし、無線LANや赤外線通信等の無線通信技術であっても良い。
【0024】
情報処理装置30は、ユーザーとなる生体や移動体に対してサービスを提供するためのシステムや処理を実行するためのシステム等に設けられ、タグ通信装置20aを介して通信タグ10と通信を行い、通信結果に基づいて処理を行う。情報処理装置30は、どのような装置として実現されても良い。
【0025】
情報処理装置30は、例えばドア解錠システムに設けられる装置であっても良い。この場合、情報処理装置30は施錠可能なドアの付近に設けられ、通信タグ10に記憶されている識別情報をタグ通信装置20aから受信し、識別情報を認証可能であればドアを解錠し、識別情報を認証できない場合はドアの施錠を行う。
【0026】
また、情報処理装置30は、例えば改札システムに設けられる装置であっても良い。この場合、情報処理装置30は駅の改札のゲート毎に設けられる。情報処理装置30は、通信タグ10に記憶されている識別情報及び金額情報をタグ通信装置20aから受信し、受信された金額情報から所定の金額を差し引く。そして、情報処理装置30は、タグ通信装置20aを介して、差し引き後の金額情報を通信タグ10に送信する。
【0027】
また、情報処理装置30は、例えば改札広告配信システムに設けられる装置であっても良い。この場合、情報処理装置30は駅の改札のゲート毎に設けられる。情報処理装置30は、通信タグ10に記憶されている識別情報をタグ通信装置20aから受信し、識別情報に応じて広告データを選択する。そして、情報処理装置30は、タグ通信装置20aを介して、選択された広告データを通信タグ10に送信する。
【0028】
図2〜5は、タグ通信装置20aの制御部22aに予め設定される処理方法の具体例を表すシーケンス図である。制御部22aは、設定に応じて非同期処理(図2)、代理応答処理(図3)、代理計算処理(図4)、代理遅延処理(図5)を実行する。なお、制御部22aには、上記の処理のうち複数(全部を含む)の処理が同時に設定されても良いしいずれか一つが設定されても良い。以下、図2〜5を用いて各処理方法について説明する。
【0029】
〔非同期処理〕
図2は、非同期処理が設定された場合のシーケンス図である。非同期処理が設定されると、制御部22aは、情報処理装置30から通信タグ10宛のデータを受信する処理(受信処理)と、通信タグ10宛のデータを通信タグ10へ送信する処理(送信処理)とを非同期で実行する。まず、受信処理について説明する。第二通信部24が情報処理装置30からデータを受信すると(ステップS101)、制御部22aは、受信されたデータを一時記憶部23に書き込む(ステップS102)。
【0030】
次に送信処理について説明する。制御部22aは、一時記憶部23に通信タグ10宛のデータが記憶されているか否か判定する(ステップS201)。通信タグ10宛のデータが記憶されていない場合(ステップS201−NO)、制御部22aは繰り返しステップS201の判定を行う。通信タグ10宛のデータが記憶されている場合(ステップS201−YES)、制御部22aは通信タグ10宛のデータを一時記憶部23から読み出し、第一通信部21を介して通信タグ10へ送信する(ステップS202)。
【0031】
次に、制御部22aは、ステップS202において送信したデータについて再送処理が必要か否か判定する(ステップS203)。再送処理が必要である場合(ステップS203−NO)、制御部23は、一時記憶部23から同じデータを読み出し、第一通信部21を介して通信タグ10へ送信する(ステップS202)。一方、再送処理が不要である場合(ステップS203−YES)、制御部22aは、ステップS202で送信したデータを一時記憶部23から削除し(ステップS204)、ステップS201以降の処理を繰り返す。なお、ステップS203における再送処理の要否はどのように実現されても良い。例えば、ステップS202のデータ送信処理から所定時間を経過しても通信タグ10から受信応答(ACK等)を受信できない場合に制御部22aは再送必要と判断しても良い。
【0032】
非同期処理を実行することによってタグ通信装置20aは以下のような効果を奏する。通信システム1aでは、情報処理装置30は従来のRFIDタグを用いていたシステムにおける情報処理装置30をそのまま適用することができる。情報処理装置30がタグ通信装置20aを介して通信タグ10へデータを送信するのに要する時間は、情報処理装置30が従来のRFIDタグリーダー/ライターを介してRFIDタグへデータを送信するのに要した時間よりも長くなる可能性があり、再送の回数も増加する可能性がある。一般的に、従来のRFIDタグを用いたシステムに適用されていた情報処理装置30では、RFIDタグ技術において送受信に要する時間に基づいて、データを送信する時間間隔が設定されている。そのため、従来のRFIDシステムに用いられていた情報処理装置30をそのまま通信システム1aに適用した場合、上記のような事情により、タグ通信装置20aから通信タグ10への送信処理が完了する前に、新たなデータが情報処理装置30から送信され、エラーが生じてしまうおそれがある。一方で、タグ通信装置20aから通信タグ10への送信処理が完了するまで情報処理装置30の送信処理を待機させてしまうと、情報処理装置30における処理が停滞してしまう。しかしながら、通信システム1aでは、送信処理と受信処理とをそれぞれ非同期で行うため、タグ通信装置20aは通信タグ10に対するデータの送信が完了する前に、次々と情報処理装置30から通信タグ10宛に送信されるデータを受信し一時的に記憶しておくことができ、その後に全て通信タグ10へ送信できる。そのため、タグ通信装置20aが通信タグ10に対してデータを送信する時間を長く要してしまった場合や、再送処理が必要となった場合であっても、その影響が情報処理装置30へ及ぶことを防止できる。
【0033】
〔代理応答処理〕
図3は、代理応答処理が設定された場合のシーケンス図である。代理応答処理が設定されると、制御部22aは、通信タグ10から情報処理装置30宛のデータを受信する処理(受信処理)と、情報処理装置30宛のデータを情報処理装置30へする処理とを非同期で実行する。まず、受信処理について説明する。第一通信部21が通信タグ10からデータを受信すると(ステップS301)、制御部22aは、前回のデータ受信から所定時間が経過したか否か判定する(ステップS302)。所定時間が経過している場合(ステップS302−YES)、制御部22aは、受信されたデータを一時記憶部23に書き込み、それまで一時記憶部23に記憶されていた同種のデータを削除する(ステップS303)。なお、通信タグ10から初めてデータが受信された場合にも、制御部22aは受信されたデータを一時記憶部23に書き込む。一方、所定時間が経過していない場合(ステップS302−NO)、制御部22aは、受信されたデータを一時記憶部23に書き込むことなく廃棄する(ステップS304)。
【0034】
次に送信処理について説明する。制御部22aは、情報処理装置30に対して、通信タグ10から受信したデータを送信するタイミングになると、一時記憶部23に記憶されているデータを読み出し、第二通信部24を介して情報処理装置30へ送信する(ステップS401)。
【0035】
代理応答処理を実行することによってタグ通信装置20aは以下のような効果を奏する。通信システム1aでは、情報処理装置30は従来のRFIDタグを用いていたシステムにおける情報処理装置30をそのまま適用することができる。情報処理装置30がタグ通信装置20aを介して通信タグ10へデータを送信するのに要する時間は、情報処理装置30がRFIDタグリーダー/ライターを介してRFIDタグへデータを送信するのに要した時間よりも長くなる可能性があり、再送の回数も増加する可能性がある。一般的に、情報処理装置30が通信タグ10から受信されるデータに基づいて処理を行う場合、通信タグ10とタグ通信装置20aとの間で通信が完了しなければ、情報処理装置30は処理を進めることができない。しかしながら、通信システム1aでは、タグ通信装置20aは通信タグ10から受信されたデータを所定時間の間は一時記憶部23に記憶しておき、記憶されているデータを情報処理装置30へ送信する。そのため、タグ通信装置20aが通信タグ10からデータを受信する時間を長く要してしまった場合や、再受信処理が必要となった場合であっても、その影響が情報処理装置30へ及ぶことを防止できる。
【0036】
〔代理計算処理〕
図4は、代理計算処理が設定された場合のシーケンス図である。代理計算処理が設定されると、制御部22aは、情報処理装置30及び通信タグ10から計算処理に用いられるデータを受信すると(ステップS501、ステップS502)、受信されたデータに基づいて実行すべき計算処理を行う(ステップS503)。そして、制御部22aは、計算処理の結果を、第二通信部24を介して情報処理装置30へ送信する(ステップS504)。
【0037】
代理計算処理が実行されることにより、通信タグ10に比べて情報処理能力が高いタグ通信装置20aにおいて計算処理を実行するため、通信システム1a全体の処理速度を向上させることが可能となる。このような計算は、例えば認証処理において用いられる。
【0038】
〔代理遅延処理〕
図5は、代理遅延処理が設定された場合のシーケンス図である。以下、代理遅延処理が設定された場合の制御部22aの動作について説明する。第二通信部24が情報処理装置30からデータを受信すると(ステップS601)、制御部22aは、受信されたデータを一時記憶部23に書き込む(ステップS602)。次に、制御部22aは、一時記憶部23に通信タグ10宛のデータを一時記憶部23から読み出し、第一通信部21を介して通信タグ10へ送信する(ステップS603)。
【0039】
次に、制御部22aは、ステップS603において送信したデータについて再送処理が必要か否か判定する(ステップS604)。再送処理が必要である場合(ステップS604−NO)、制御部23は、情報処理装置30からデータを受信してから所定時間が経過したか否か判定する(ステップS605)。所定時間が経過している場合(ステップS605−YES)、制御部22aは、遅延要求を情報処理装置30へ送信する(ステップS606)。遅延要求とは、通信タグ10に対する送信処理が未完了であることを情報処理装置30に対して通知するためのデータである。遅延要求を受信した情報処理装置30は、遅延要求を受信してから所定の時間が経過するまでエラー判定を行わない、又はエラーと判断すべき状況になったとしてもエラーと判断しない。
【0040】
ステップS605において所定時間が経過していない場合(ステップS605−NO)、及びステップS606において遅延要求を送信した後、制御部23は、再送すべきデータを一時記憶部23から読み出し、第一通信部21を介して通信タグ10へ送信する(ステップS603)。一方、再送処理が不要である場合(ステップS604−YES)、制御部22aは、情報処理装置30に対して、通信タグ10に対する送信処理が完了したことを表す送信完了応答を送信する(ステップS607)。
【0041】
代理遅延処理を実行することによってタグ通信装置20aは以下のような効果を奏する。通信システム1aでは、情報処理装置30は従来のRFIDタグを用いていたシステムにおける情報処理装置30をそのまま適用することができる。情報処理装置30がタグ通信装置20aを介して通信タグ10へデータを送信するのに要する時間は、情報処理装置30が従来のRFIDタグリーダー/ライターを介してRFIDタグへデータを送信するのに要した時間よりも長くなる可能性があり、再送の回数も増加する可能性がある。一般的に、情報処理装置30は、RFIDタグへデータを送信した後に、所定の時間が経過しても送信完了要求が受信されない場合には、エラーが発生したと判定し、再送などのエラー処理を実行する。そのため、従来のRFIDシステムに用いられていた情報処理装置30をそのまま通信システム1aに適用した場合、上記のような事情により、エラー処理を行う回数が増加してしまうおそれがあった。このような問題に対し、代理遅延処理が実行されることにより、タグ通信装置20aが所定のタイミングで情報処理装置30に遅延要求を送信するため、情報処理装置30はエラーと判断することが防止され、エラー処理の回数が増大してしまうことを防止できる。
【0042】
<変形例>
通信システム1aにおいて、情報処理装置30に相当する機能部が、タグ通信装置20aと一体に構成されても良い。例えば、この場合、情報処理装置30に相当する機能部は、タグ通信装置20aと第二通信部24を介してデータの送受信を行うのではなく、装置内のバスを介してデータの送受信を行うように構成されても良い。
【0043】
[第二実施形態]
図6は、第二実施携帯の通信システム1bのシステム構成を表すシステム構成図である。第一実施形態の通信システム1aと同じ機能部には図6において図1と同じ符号を付して表し、その説明を省く。
【0044】
タグ通信装置20bは、制御部22aに代えて制御部22bを備える点、一時記憶部23及び第二通信部24を備えずにRFID通信部25を備える点でタグ通信装置20aと異なり、他の構成はタグ通信装置20aと同様である。
【0045】
制御部22bは、第一通信部21によって受信されたデータを、既存のRFID技術による通信で使用されるフォーマットに変換する。なお、第一通信部21によって受信されたデータがそのままRFID技術で通信可能である場合には、制御部22bはフォーマット変換を行う必要はない。この場合、制御部22bは、第一通信部21によって受信されたデータを単にRFID通信部25へ渡す。
【0046】
RFID通信部25は、既存のRFID技術においてRFIDタグ(ICタグ)に設けられる通信部を用いて構成される。RFID通信部25は、制御部22bによってフォーマット変換されたデータを、既存のRFID技術によってRFID通信装置40へ送信する。
【0047】
RFID通信装置40は、RFID通信部41及び制御部42を備える。RFID通信部41は、既存のRFID技術によってRFID通信部25から送信されるデータを受信する。
【0048】
制御部42は、RFID通信部41によって受信されたデータに基づいて処理を実行する。制御部42は、第一実施形態における情報処理装置30と同様に、どのような処理を行う機能部として実現されても良い。例えば、制御部42は、例えば上述のドア解錠装置を制御する機能部であっても良いし、上述の改札装置を制御する機能部であっても良いし、上述の改札広告配信装置を制御する機能部であっても良い。
【0049】
図7は、通信システム1bの適用例を表す図である。図7において、通信タグ10を所持する生体は人間であり、通信タグ10を所持する人間はタグ通信装置20bの第一通信部21に接触している。第一通信部21は、改札のゲート装置を通過する際の経路の床面に設けられる。制御部22は、第一通信部21とは異なる筐体に入れられてゲート装置の側面に配置される。RFID通信部25は、制御部22とは異なる筐体に入れられて、RFID通信部41と通信可能な位置に設けられる。RFID通信装置40は、改札のゲート装置内に設けられ、RFID通信部41はゲート装置の入り口側の上面に設けられる。
【0050】
通信タグ10を所持する人間が、第一通信部21が設けられた床面に足を触れると、通信タグ10の制御部13は記憶部11に記憶されるデータを読み出し、通信部12を介してタグ通信装置20bへデータを送信する。通信部12によって送信された信号が第一通信部21によって受信されデータが復元されると、制御部22bは、復元されたデータのフォーマット変化を行い、RFID通信部25を介してRFID通信装置40へデータを送信する。RFID通信部25によって送信された信号がRFID通信部41によって受信されデータが復元されると、制御部42は、復元されたデータに含まれる識別情報を検出し、識別情報に基づいて認証を行い、ゲートを開閉する。
【0051】
なお、RFID通信部41の表面は、一部がRFID通信部25によって覆われているものの、他の部分は露出している。そのため、従来のRFIDタグを所持する人間がゲート装置を通過する場合には、露出しているRFID通信部41にRFIDタグを近接させることによって、ゲートを開けることもできる。
【0052】
このように構成されることにより、従来のRFID通信装置40をそのまま活用して通信タグ10を用いた通信システム1bを構築することが可能となる。そのため、通信タグ10の導入に要するコストを削減し、導入に要する準備期間を短縮することが可能となる。また、従来のRFIDタグを用いることも可能であるため、導入時に通信タグ10のユーザーとRFIDタグのユーザーとに対し、同一のRFID通信装置40によって対応することが可能となる。
【0053】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10…通信タグ, 11…記憶部, 12…通信部, 13…制御部, 20a,20b…タグ通信装置, 21…第一通信部, 22…制御部, 23…一時記憶部, 24…第二通信部, 25…RFID通信部, 30…情報処理装置, 40…RFID通信装置, 41…RFID通信部, 42…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体又は移動体に所持又は設置される通信タグに対し、生体又は移動体を介してデータの通信を行う第一通信部と、
情報処理装置とデータの通信を行う第二通信部と、
前記通信タグ又は前記情報処理装置から受信されたデータを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されたデータを用いて、前記情報処理装置と前記通信タグとの通信を中継する制御部と、
を備えるタグ通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記情報処理装置から受信されたデータを前記一時記憶部に書き込み、前記情報処理装置からの受信処理と非同期で、前記記憶部に記憶されたデータを前記通信タグに対して前記第一通信部から送信する、ことを特徴とする請求項1に記載のタグ通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記通信タグから受信されたデータを前記一時記憶部に書き込み、前記受信の処理から所定時間が経過するまでは、前記通信タグとの通信の有無にかかわらず前記情報処理装置30に対して前記記憶部に記憶されたデータを前記第二通信部から送信する、ことを特徴とする請求項1に記載のタグ通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記情報処理装置から受信されたデータと、前記通信タグから受信されたデータとを用いて前記通信タグに変わって処理を実行し、前記処理の実行結果を前記情報処理装置に対して前記第二通信部から送信する、ことを特徴とする請求項1に記載のタグ通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記情報処理装置から受信されたデータを前記通信タグへ送信する処理を実行している場合、所定のタイミングで前記情報処理装置に対し、エラー処理を実行しないことを要求することを特徴とする請求項1に記載のタグ通信装置。
【請求項6】
生体又は移動体に所持又は設置される通信タグに対し、生体又は移動体を介してデータの通信を行う第一通信部と、情報処理装置とデータの通信を行う第二通信部と、前記通信タグ又は前記情報処理装置から受信されたデータを記憶する記憶部と、を備えるタグ通信装置が、前記通信タグ又は前記情報処理装置から受信されたデータを前記記憶部に書き込むステップと、
前記タグ通信装置が、前記記憶部に記憶されたデータを用いて、前記情報処理装置と前記通信タグとの通信を中継するステップと、
を備えるタグ通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−97135(P2011−97135A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246269(P2009−246269)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】