説明

タッチセンサ及びタッチ検出方法

【課題】人体の近接又は接触による静電容量の変化を簡易な構成と制御により検出することができ、外部へ放射される高周波ノイズを低減することが可能なタッチセンサ及びタッチ検出方法を提供する。
【解決手段】人体が近接又は接触する検出電極2と、検出電極と抵抗器を介して直列に一方の電極Aが接続された蓄電器3と、電極Aと接地電位とを接続又は切断する第1の接地回路4と、蓄電器3の他方の電極Bと接地電位とを接続又は切断する第2の接地回路5と、電極Bと直流電源とを接続又は切断する電圧印加回路6と、電極Bの電位を計測する計測回路7と、電圧印加回路6、第1の接地回路4及び第2の接地回路5をそれぞれ切り替え、計測回路7による計測値によって人体の近接又は接触を判断する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサ及びタッチ検出方法に関し、詳しくは、人体の近接又は接触による静電容量等の変化を簡易な構成及び制御により検出することができるタッチセンサ及びタッチ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体が近接又は接触する検出電極を備え、人体による浮遊容量又は接地(大地)との間の静電容量の変化を計測することにより人体の近接又は接触を検知するタッチセンサが広く用いられている。このようなタッチセンサにおいては、検出電極に生じる静電容量を充放電させて電圧や電荷量を計測したり、検出回路のインピーダンスの変化等を利用したりすることによって静電容量の変化が検出される。しかし人体の近接又は接触によって生じる静電容量の変化は微小な値であるため、充放電を繰返すことによって検出精度を向上させるタッチセンサが知られている。例えば、既知のコンデンサとスイッチ手段を備え、人体等によって生じる未知のコンデンサを繰返し充放電させ、電荷を既知のコンデンサに集積させることによって精度よく計測する電荷移動式キャパシタンス測定回路が開示されている(特許文献1、2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−530680号公報
【特許文献2】特開2006−78292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記電荷移動式キャパシタンス測定回路等を使用したタッチセンサにおいては、人体等が近接又は接触する検出電極に繰返し充放電や充電を行い、その充放電特性を累積して静電容量を計測するため、検出電極から周囲環境に充放電動作による高周波ノイズが放射される。一般には、装置から外部に放出される高周波ノイズを低減するために、当該装置を金属等のケースによって密閉するような方法がある。しかし、タッチセンサの場合、人体が近接又は接近する検出電極は外部に開放される必要があるため、電極部を電磁的にシールドする対策は不可能である。
とくに、車両に搭載されるタッチセンサである場合には、周囲の電子装置の動作を阻害する電磁妨害(EMI、Electromagnetic Interference)が重大な問題となっている。例えば、タッチセンサの上記充放電の繰返し時間が約7μsであれば、ほぼ140kHzを中心とする周波数領域だけでなく、広い周波数範囲で高周波ノイズが放射される。こうした高周波ノイズが放射されると、ラジオ放送の受信やスマートエントリーシステム等車載装置の動作を阻害する問題が生じた。
【0005】
また、前記のような従来のタッチセンサでは、充電や充放電を高速で制御するために専用のプロセッサを使用する等、構成及び処理が複雑なものとなった。このため、複数の検出電極を備えて、各検出電極に対する人体の近接又は接触を検知するように構成する場合には、タッチセンサが複雑化・大形化し、高コストとなる問題があった。
【0006】
本発明は、以上の問題に鑑み、人体の近接又は接触による静電容量等の変化を簡易な構成及び制御により検出することができ、外部に放出される高周波ノイズを低減することができるタッチセンサ及びタッチ検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、人体の近接又は接触を検出するタッチセンサであって、人体が近接又は接触する検出電極と、前記検出電極と抵抗器を介して直列に一方の電極(A)が接続された蓄電器と、前記蓄電器の一方の電極(A)と接地電位とを接続又は切断する第1の接地回路と、前記蓄電器の他方の電極(B)と接地電位とを接続又は切断する第2の接地回路と、前記蓄電器の他方の電極(B)と直流電源とを接続又は切断する電圧印加回路と、前記蓄電器のいずれか1つの電極に接続され、その電極の電位を計測する計測回路と、前記電圧印加回路、前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路をそれぞれ切り替え、前記計測回路により計測された電位によって人体の近接又は接触を判断する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電圧印加回路を切断するとともに前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路を接続する第1ステップと、前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路を切断するとともに前記電圧印加回路を接続する第2ステップと、前記計測回路により電位の計測を行う第3ステップと、を順次行うことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記計測回路は前記蓄電器の一方の前記電極(A)に接続されており、前記制御部は、前記第3ステップにおいて前記第2ステップの状態を継続するとともに前記計測回路により電位の計測を行うことを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記計測回路は前記蓄電器の他方の前記電極(B)に接続されており、前記制御部は、前記第3ステップにおいて前記電圧印加回路及び前記第2の接地回路を切断するとともに前記第1の接地回路を接続した後、前記計測回路により電位の計測を行うことを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3において、前記第1の接地回路は、前記蓄電器の一方の電極(A)にその出力が接続された第1の論理回路素子により構成され、前記電圧印加回路及び前記第2の接地回路は、前記蓄電器の他方の電極(B)にその出力が接続された第2の論理回路素子により構成されることを要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4において、前記制御部は、前記第1ステップから前記第3ステップまでを1ms〜7msの周期で繰り返して行うことを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5において、車両に搭載され、前記検出電極は、略長方形のシート状の導電体、又は長尺状の板状もしくは棒状の導電体であることを要旨とする。
【0010】
請求項7に記載の発明は、人体の近接又は接触を検出するタッチ検出方法であって、人体が近接又は接触する検出電極と、前記検出電極と抵抗器を介して直列に一方の電極(A)が接続された蓄電器と、前記蓄電器の一方の電極(A)と接地電位とを接続又は切断する第1の接地回路と、前記蓄電器の他方の電極(B)と接地電位とを接続又は切断する第2の接地回路と、前記蓄電器の他方の電極(B)と直流電源とを接続又は切断する電圧印加回路と、前記蓄電器のいずれか1つの電極に接続され、その電極の電位を計測する計測回路と、を備えるタッチセンサを用いて、前記電圧印加回路を切断するとともに前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路を接続する第1ステップと、前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路を切断するとともに前記電圧印加回路を接続する第2ステップと、前記計測回路により電位の計測を行う第3ステップと、を順次行うことを要旨とする。
【0011】
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記計測回路は前記蓄電器の一方の前記電極(A)に接続されており、前記第3ステップは、前記第2ステップの状態を継続するとともに前記計測回路により電位の計測を行うことを要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項7において、前記計測回路は前記蓄電器の他方の前記電極(B)に接続されており、前記第3ステップは、前記電圧印加回路及び前記第2の接地回路を切断するとともに前記第1の接地回路を接続した後、前記計測回路により電位の計測を行うことを要旨とする。
【0012】
請求項10に記載の発明は、請求項7において、前記第1の接地回路は、前記蓄電器の一方の電極(A)にその出力が接続された第1の論理回路素子により構成され、前記電圧印加回路及び前記第2の接地回路は、前記蓄電器の他方の電極(B)にその出力が接続された第2の論理回路素子により構成されるタッチセンサを用いて、前記第1ステップは、前記第1の論理回路素子の出力及び前記第2の論理回路素子の出力を低レベルとし、前記第2ステップは、前記第1の論理回路素子の出力を高インピーダンスとするとともに前記第2の論理回路素子の出力を高レベルとすることを要旨とする。
請求項11に記載の発明は、請求項10において、前記計測回路は前記蓄電器の一方の前記電極(A)に接続されており、前記第3ステップは、前記第2ステップの状態を継続するとともに前記計測回路により電位の計測を行うことを要旨とする。
請求項12に記載の発明は、請求項10において、前記計測回路は前記蓄電器の他方の前記電極(B)に接続されており、前記第3ステップは、前記第2の論理回路素子の出力を高インピーダンスとするとともに前記第1の論理回路素子の出力を低レベルとした後、前記計測回路により電位の計測を行うことを要旨とする。
【0013】
請求項13に記載の発明は、請求項7乃至12において、前記第1ステップから前記第3ステップまでを1ms〜7msの周期で繰り返して行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタッチセンサによれば、人体が近接又は接触する検出電極と、その検出電極と抵抗器を介して直列に一方の電極(A)が接続された蓄電器と、電極(A)と接地電位とを接続又は切断する第1の接地回路と、前記蓄電器の他方の電極(B)と接地電位とを接続又は切断する第2の接地回路と、電極(B)と直流電源とを接続又は切断する電圧印加回路と、前記蓄電器のいずれか1つの電極に接続され、その電位を計測する計測回路とを備えるため、少ない部品数と簡単な回路構成によってタッチセンサを構成することができる。また、前記電圧印加回路、前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路をそれぞれ切り替え、前記計測回路により計測された電位によって人体の近接又は接触を判断する制御部を備え、その制御部は、電圧印加回路を切断するとともに第1の接地回路及び第2の接地回路を接続する第1ステップと、第1の接地回路及び第2の接地回路を切断するとともに電圧印加回路を接続する第2ステップと、計測回路により電位の計測を行う第3ステップと、を順次行うため、極めて簡単な制御及び計測処理によって検出電極に生じる静電容量の変化を検知することができ、人体が近接又は接触しているか否かを判定することができる。さらに、前記第1ステップ〜第3ステップを高速に行う必要がないため、検出電極に近接又は接触して移動する手指等の静電誘導によって生じる電位の変化を検知し、判定のために利用することが可能となる。また、高周波ノイズの発生を抑えることができ、周囲の電子装置への電磁妨害を大幅に低減することができる。
【0015】
前記計測回路は前記蓄電器の一方の前記電極(A)に接続されており、前記制御部は、前記第3ステップにおいて前記第2ステップの状態を継続するとともに前記計測回路により電位の計測を行う場合には、極めて簡単な動作シーケンスにより、蓄電器の電極に生じる電位の変化を計測することができる。
前記計測回路は前記蓄電器の他方の前記電極(B)に接続されており、前記制御部は、前記第3ステップにおいて前記電圧印加回路及び前記第2の接地回路を切断するとともに前記第1の接地回路を接続した後、前記計測回路により電位の計測を行う場合には、人体の近接又は接触によって蓄電器の電極に生じる電位の微少な変化を計測することが容易となる。
前記第1の接地回路は、前記蓄電器の一方の電極(A)にその出力が接続された第1の論理回路素子により構成され、前記電圧印加回路及び前記第2の接地回路は、前記蓄電器の他方の電極(B)にその出力が接続された第2の論理回路素子により構成される場合には、極めて少ない部品数によりタッチセンサを構成することができる。これによって、複数の検出電極を備えるタッチセンサを構成することも容易となる。
【0016】
前記制御部は、前記第1ステップから前記第3ステップまでを1ms〜7msの周期で繰り返して行うことが好ましい。これによって、検出電極に近接又は接触して移動する手指等の静電誘導によって生じる電位の変化を検知し、判定のために利用することが容易となる。また、高周波ノイズの発生を抑えることができ、周囲の電子装置への電磁妨害を大幅に低減することができる。
車両に搭載され、前記検出電極は、略長方形のシート状の導電体、又は長尺状の板状もしくは棒状の導電体である場合には、広い面積又は長尺の検出電極を用いる場合であっても検出電極からの高周波ノイズの放射を抑え、周囲の車載電子装置に対する電磁妨害を低減することが可能になる。
【0017】
本発明のタッチ検出方法によれば、上記のタッチセンサの効果を発揮させるに好適なタッチ検出方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】タッチセンサの構成を表わすブロック図である。
【図2】タッチセンサの別の構成を表わすブロック図である。
【図3】タッチセンサの第1の接地回路、第2の接地回路及び電圧印加回路を論理回路素子により構成する例を表す回路図である。
【図4】図1に示したタッチセンサの電圧印加回路、第1の接地回路及び第2の接地回路をそれぞれ切り替えて行う動作ステップを示す図である。
【図5】図2に示したタッチセンサの電圧印加回路、第1の接地回路及び第2の接地回路をそれぞれ切り替えて行う動作ステップを示す図である。
【図6】図1に示したタッチセンサの動作を説明するためのタイムチャートである。
【図7】図2に示したタッチセンサの動作を説明するためのタイムチャートである。
【図8】本タッチセンサの実施例を表わすブロック図である。
【図9】複数の検出電極を備えて構成されるタッチセンサの実施例を表わすブロック図である。
【図10】図9に示した実施例の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図11】検出電極に近接又は接触して移動する手指等の動作を表わす模式図である。
【図12】(a)は検出電極に近接又は接触して手指等を動かしたときの蓄電器の電極の電位の変化を表わし、(b)は本タッチセンサの各ステップを繰り返し行う動作を表わした図である。
【図13】タッチセンサにより、人体が近接又は接触したときに生じる静電容量による電位の変化と、静電誘導による電位の変化とが合せて計測されることを表わすタイムチャートである。
【図14】計測の周期を変えて、人体が近接又は接触したときに生じる電極の電位の変化(静電容量による変化と静電誘導による変化)を計測した結果を表わす表である。
【図15】長尺又は略長方形の検出電極を備えるタッチセンサの例を表わす模式図である。
【図16】タッチ検出方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0020】
(タッチセンサの構成)
本発明のタッチセンサは、図1及び図2に示すように、人体が近接又は接触する検出電極2を備える。静電容量Cxは、検出電極2と大地(接地)との間に生じる静電容量の総和を表わし、人体が検出電極2に近接又は接触した場合には、検出電極2と大地との間に介在する人体によって静電容量が増加することとなる。
本タッチセンサ(1a、1b)は、上記検出電極2と抵抗器R1を介して直列に一方の電極Aが接続された蓄電器3と、蓄電器3の電極Aと接地電位とを接続又は切断する第1の接地回路4と、蓄電器3の他方の電極Bと接地電位とを接続又は切断する第2の接地回路5と、蓄電器3の電極Bと直流電源(Vcc)とを接続又は切断する電圧印加回路6と、蓄電器3の電極A及び電極Bのいずれか1つに接続され、その電極の電位を計測する計測回路7と、制御部8とを備える。タッチセンサ1aにおいては、計測回路7は蓄電器3の電極Aに接続されており、タッチセンサ1bにおいては、計測回路7は蓄電器3の電極Bに接続されている。制御部8は、電圧印加回路6、第1の接地回路4及び第2の接地回路5をそれぞれ接続又は切断するように制御し、所定のタイミングで計測回路7により前記電極A又は電極Bの電位を計測し、その計測値によって検出電極2への人体の近接又は接触の有無を判断するように構成される。
【0021】
タッチセンサ(1a、1b)が車両に搭載される場合には、車両のバッテリから給電を受ける電源(図示せず)によって、タッチセンサの各部に必要な電力が供給される。また、大地への接続(接地)は、車体、又は車体への電気的な接続とすることができる。
【0022】
前記検出電極2は、その表面に人体が近接又は接触するように配設される導電体であり、形状、大きさ、構造等はとくに限定されない。例えば、指でタッチできる程度のサイズの導電体であってもよいし、掌よりも広い面積の平面状の導電体であってもよいし、長尺状の板状又は棒状の導電体であってもよい。また、導電体の材質もとくに限定されず、金属の他、導電布等が使用されてもよい。
検出電極2への人体の「近接」とは、掌や手指を検出電極の表面に近付ける形態の他、検出電極の表面を覆う絶縁物を介して人体が接触する形態も含むものとする。また「接触」は、検出電極の表面に直接人体が接触する形態をいうものとする。
【0023】
蓄電器3は、その両電極(A,B)間に既知の静電容量を有する。蓄電器3の一方の電極Aは、抵抗器R1を直列に介して検出電極2と接続されている。蓄電器3の静電容量、抵抗器R1の抵抗値は、検出電極のサイズや計測の時間、精度等の条件によって、適宜に設計されればよい。例えば、蓄電器3の静電容量は数十pF〜数千pF、抵抗器R1の抵抗値は数百Ω〜数十kΩとすることができる。
また、蓄電器3の電極Aは、第1の接地回路4と接続されている。第1の接地回路4は、電極Aから抵抗器R2及びスイッチSW1aを直列に介して接地される。抵抗器R2の抵抗値は適宜の値とすることができる(例えば、0Ω〜数kΩ)。スイッチSW1aが接続状態にされたとき(onとされたとき)、蓄電器3の電極Aは抵抗器R2を介して接地電位(Gnd)と導通され、スイッチSW1aが切断状態にされたとき(offとされたとき)、電極Aと接地電位との間は遮断される。
【0024】
蓄電器3の他方の電極Bは、第2の接地回路5及び電圧印加回路6と接続されている。
第2の接地回路5は、蓄電器3の電極Bと接地電位(Gnd)とをスイッチSW2aを介して接続する回路である。スイッチSW2aが接続状態(on)のとき電極Bは接地電位と導通され、スイッチSW2aが切断状態(off)のとき電極Bと接地電位との間は遮断される。
電圧印加回路6は、蓄電器3の電極Bと直流電源(Vcc)とをスイッチSW2bを介して接続する回路である。スイッチSW2bが接続状態(on)のとき電極Bに直流電源Vccが印加され、スイッチSW2bが切断状態(off)のとき電極Bと直流電源Vccとの間は遮断される。なお、スイッチSW2aとSW2bが同時にonとなることはないものとする。
【0025】
計測回路7は、図1に示すタッチセンサ1aにおいては蓄電器3の電極Aに接続されており、図2に示すタッチセンサ1bにおいては蓄電器3の電極Bに接続されている。計測回路7は、接続されている蓄電器3の電極の電位をデジタル値に変換する回路である。計測回路7として、AD変換器(ADC)を使用することができる。その場合、計測すべき電位の範囲に対応してAD変換器の変換範囲を最適にするために、基準電圧Vrefを与えることができる。また、計測回路7は、当該電極の電位を所定の基準電位と比較するコンパレータ等により構成されてもよい。計測回路7は、計測値(又は比較結果)を制御部8に送出する。
【0026】
制御部8は、前記第1の接地回路4、前記第2の接地回路5及び前記電圧印加回路6にそれぞれ備えられているスイッチを制御し、所定のタイミングで前記計測回路7により計測を行ってその計測値(又は比較結果)を入力するように構成されている。計測値は検出電極2に生じた静電容量Cxに対応した値となるため、制御部8は、その計測値を基に演算、比較等の処理を行うことによって、検出電極2への人体の近接又は接触の有無を判定するように構成される。
制御部8の処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適には、図示しないCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成することができる。また、プログラム可能な論理回路、ゲートアレーその他の論理回路を用いて構成されてもよい。このマイクロコントローラ等に、前記計測回路や、前記第1の接地回路、第2の接地回路、電圧印加回路等が内蔵されていてもよい。
その他、制御部8は、各種装置(車載装置の例では、車内灯、車内イルミネーション、自動開閉式窓、ラジオ、エアコンディショナ等)と電気的に接続され、人体の近接又は接触状態と判定した場合には、その判定又は判定による動作をさせるための近接検出信号をそれら装置に出力するように構成することができる。
【0027】
前記スイッチSW1a、SW2a、SW2bは、半導体論理回路素子を用いて構成されてもよい。前記第1の接地回路4は、蓄電器3の電極Aにその出力が接続された第1の論理回路素子により構成され、前記電圧印加回路6及び前記第2の接地回路5は、蓄電器3の他方の電極Bにその出力が接続された第2の論理回路素子により構成されるようにすることができる。この構成例を図3に示す。このタッチセンサ11aにおいては計測回路7が蓄電器3の電極Aに接続されているが、前記のとおり、計測回路7を蓄電器3の電極B側に接続してタッチセンサ(11b)を構成してもよい。
【0028】
図3に示されるタッチセンサ11aにおいて、第1の接地回路41は、第1の論理回路素子411の出力を抵抗器R2を介して蓄電器3の電極Aに接続することによって構成されている。論理回路素子411は3ステート出力回路を備え、例えば、制御信号en4が「1」のとき出力可能であり、入力信号d4が「1」の場合には高レベル(Vccレベル)の電圧、入力信号d4が「0」の場合には低レベル(0V)の電圧を出力するものとすることができる。この場合、制御信号en4が「0」のときには、論理回路素子411の出力回路は高インピーダンス状態(High-impedance)となる。すなわち、論理回路素子411の出力は、制御信号en4=1かつ入力信号d4=0のとき低レベルとなり、前記スイッチSW1aをonとした状態に対応する。一方、制御信号en4=0のとき出力は高インピーダンスとなり、前記スイッチSW1aをoffとした状態に対応する。信号en4及びd4は、制御部81により出力することができる。
【0029】
また、タッチセンサ11aの電圧印加回路61及び第2の接地回路51は、1つの3ステート出力素子(第2の論理回路素子)611の出力回路を蓄電器3の電極Bに接続することによって構成することができる。前記同様に、論理回路素子611は、例えば、制御信号en6が「1」のとき出力可能であり、入力信号d6が「1」の場合には高レベル(Vccレベル)の電圧、入力信号d6が「0」の場合には低レベル(0V)の電圧を出力するものとすることができる。制御信号en6が「0」のときには、論理回路素子611の出力回路は高インピーダンス状態となる。これによって、論理回路素子611の出力は、制御信号en6=1かつ入力信号d6=0のとき出力は低レベルとなり、前記スイッチSW2aをonかつ前記スイッチSW2bをoffとした状態に対応する。一方、制御信号en6=1かつ入力信号d6=1のとき出力は高レベルとなり、スイッチSW2aをoffかつスイッチSW2bをonとした状態に対応する。また、制御信号en6=0のとき出力は高インピーダンスとなり、スイッチSW2a及びSW2bをともにoffとした状態に対応する。信号en6及びd6は、制御部81により出力することができる。
【0030】
(タッチセンサの動作)
タッチセンサ(1a、1b、11a、11b)に備えられる第1の接地回路(4、41)、第2の接地回路(5、51)及び電圧印加回路(6、61)は、制御部(8、81)により、図4又は図5に示すように制御することができる。ここで、スイッチSW1a、SW2a及びSW2bのon(接続)、off(切断)は、前記のとおり第1の論理回路素子411及び第2の論理回路素子611を用いて、それに対応する状態に制御することができる。
【0031】
図4は、タッチセンサ1a又は11aにおける制御を表す。まず、第1ステップにおいて、スイッチSW2bをoffとすることにより電圧印加回路を切断するとともに、スイッチSW1a及びスイッチSW2aをonとすることにより第1の接地回路及び第2の接地回路を接続する。すなわち、蓄電器3の電極A及び電極Bは接地電位に接続される。
次に、第2ステップにおいては、スイッチSW1a及びスイッチSW2aをoffとすることにより第1の接地回路及び第2の接地回路を切断するとともに、スイッチSW2bをonとすることにより電圧印加回路を接続する。すなわち、蓄電器3の電極Aは接地と遮断され、電極Bは電源(Vcc)レベルに接続される。
続く第3ステップにおいては、前記第2ステップの状態をそのまま継続する。そして、この第3ステップの状態において、制御部(8、81)は計測回路7により蓄電器3の電極Aの電位の計測を行う。
【0032】
図5は、タッチセンサ1b又は11bにおける制御を表す。この第1ステップ及び第2ステップは、上記タッチセンサ1a又は11aの場合と同じである。
続く第3ステップにおいて、スイッチSW2a及びSW2bをoffとすることにより電圧印加回路及び第2の接地回路を切断するとともに、スイッチSW1aをonとすることにより第1の接地回路を接続する。すなわち、蓄電器3の電極Aは接地電位に接続され、電極Bは電源(Vcc)及び接地電位のいずれからも切断される。
上記第3ステップの状態において、制御部(8、81)は計測回路7により蓄電器3の電極Bの電位の計測を行う。
【0033】
本タッチセンサの動作シーケンスの例を図6及び図7に示す。これらの図では、第1の接地回路により蓄電器3の電極A部に与えられる電圧V1、第2の接地回路及び電圧印加回路により蓄電器3の電極B部に与えられる電圧V2と、電極A部の電位VA、電極B部の電位VBの変化を表す。また、期間T1、T2及びT3は、それぞれ前記第1ステップ、第2ステップ及び第3ステップの状態を表わしている。期間T1、T2、T3の各時間は適宜に設定さればよく、例えば、数μs〜数ms程度とすることができる。期間T1は、少なくとも蓄電器3及び未知の静電容量Cxを放電させる時間であればよいが、計測動作(第2ステップ、第3ステップ)を実行しない間は第1ステップの状態を継続させることができる。また、期間T3は、少なくとも電極の電位を計測するために十分な時間であればよい。
【0034】
図6は、タッチセンサ1a、11aの動作を示す。期間T1(第1ステップ)において上記電圧V1及び電圧V2は0Vとされることにより、蓄電器3及び未知のキャパシタンスCxの電荷は放電され、蓄電器3の電極A部の電位VAは0Vとなる。
次に、期間T2(第2ステップ)において、電極A部が接地から遮断されるため電極A部(V1)は高インピーダンス状態とされ、電極B部(V2)にVccが印加される。これによって、蓄電器3と抵抗器R1とキャパシタンスCxとが直列に接続された回路により、時間とともに各静電容量が充電される。そして、電極A部の電位VAは、時間とともに蓄電器3(静電容量Cs)及び未知のキャパシタンスCx(静電容量Cx)によって定まる次の値に近づく。
VA=Vcc−ΔVa、 ΔVa=(Cx/(Cs+Cx))Vcc
Cs、Cx及び抵抗器R1によって定まる充電の時定数よりも期間T2を十分長くとることができるため、期間T2終了時における蓄電器3の充電電圧(電極Aと電極Bとの間の電圧)は上記ΔVaとすることができる。
【0035】
期間T3(第3ステップ)においては前記の状態を継続して、電極A部の電位VAを計測回路7に入力することができる。したがって、期間T3内のタイミングMにおいて電位VAの値を測定すれば上記ΔVaの値を知ることができ、未知のキャパシタンスCxの容量を求めることができる。
【0036】
図7は、タッチセンサ1b、11bの動作を示す。期間T1(第1ステップ)及び期間T2(第2ステップ)における動作は、上記タッチセンサ1a、11aの場合と同様である。
期間T3(第3ステップ)において、電極B部(V2)をVccから遮断して高インピーダンスの状態とし、電極A部(V1)を0Vに接続すると、キャパシタンスCxに蓄積されていた電荷は第1の接地回路により放電される。キャパシタンスCxの静電容量は小さいため放電の時定数は小さく、放電によって蓄電器3の電極A部の電位VAは速やかに0Vとなる。また、蓄電器3の電極B部は高インピーダンス状態であるため、蓄電器3に蓄積されていた電荷は保持される。すなわち、蓄電器3の充電電圧ΔVaが保持されるため、電極B部の電位VBは前記ΔVaの値となる。
この状態で、電極B部の電位VBを計測回路7に入力することができる。したがって、期間T3内のタイミングMにおいて電位VBを測定すれば上記ΔVaの値を知ることができ、未知のキャパシタンスCxの容量を求めることができる。
【0037】
一例として、蓄電器3の静電容量を500pF、抵抗器R1の抵抗値を10kΩ、電源電圧Vccを5Vとする。また、キャパシタンスCxは、人体の近接又は接触時30pF程度、非近接時10pF程度とする。この場合、上記タイミングMにおいて計測される電極B部の電位ΔVaは、人体の非近接時には0.10V程度、人体の近接又は接触時には0.28V程度となる。したがって、この計測値を所定の基準値(例えば0.2V)と比較する等の方法によって、人体の近接又は接触を判定することができる。
【0038】
(タッチ検出方法)
上記タッチセンサのタッチ検出方法を、図16のフローチャートに示す。この処理は、前記制御部によって実行されるものとすることができる。図16は、前記タッチセンサ1b、11bにおける検出方法を表す。本図においてSW1a、SW2a及びSW2bは、それぞれ前記第1の接地回路、第2の接地回路及び電圧印加回路に備えられるスイッチを表わす。
【0039】
まず、スイッチSW2bをoff(切断)とし、スイッチSW1a及びスイッチSW2aをon(接続)とする(S10)。これにより前記第1ステップの状態となり、蓄電器3の電極A及び電極Bは接地電位に接続されるため、蓄電器3及びキャパシタンスCxの電荷は放電される。そして、所定時間すなわち前記期間T1の経過を待つ(S11)。
次に、第2ステップにおいては、スイッチSW1a及びスイッチSW2aをoffとし、スイッチSW2bをonとする(S20)。これにより、蓄電器3の電極Aは接地と遮断され、電極Bは電源(Vcc)レベルとされるため、時間とともに蓄電器3及びキャパシタンスCxが充電される。そして、所定時間すなわち前記期間T2の経過を待つ(S21)。
【0040】
続いて、スイッチSW2a及びSW2bをoffとし、スイッチSW1aをonとする(S30)。これにより前記第3ステップの状態となり、蓄電器3の電極Aは接地電位に接続され、電極Bは電源(Vcc)及び接地のいずれからも切断されるため、電極B部の電位は前記ΔVaとなる。そして、上記第3ステップを開始してから所定時間t3の経過を待つ(S31)。時間t3は、第3ステップの開始後適宜の時間とすることができる。時間t3の経過後、計測回路により電極Bの電位ΔVaを計測する(S40)。
【0041】
前記タッチセンサ1a又は11aを用いる場合には、上記第3ステップの状態とするための制御(S30)は不要である。また、電極Bの電位を計測すること(S40)に換え、電極Aの電位(Vcc−ΔVa)を計測回路により計測することとすればよい。
【0042】
上記の計測値から求められた電位ΔVaから、検出電極への人体の近接又は接触を判定する(S50)。以上の処理を周期的に繰り返すことによって、キャパシタンスCxの容量の変化を検出することもできる。また、複数の検出電極を備える場合には、検出電極ごとに上記処理を行うことができる。検出電極への人体の近接又は接触は、例えば上記計測値を所定の基準値と比較することによって判定することができる。また、その基準値は、周期的に繰り返す計測の結果によって補正等がされてもよい。
【0043】
(実施例)
本タッチセンサ及びタッチ検出方法は、種々の形態で実施することができる。例えば、図8に示すタッチセンサ12のように、出力ポート1(42)、出力ポート2(62(52))及びAD変換器72が内蔵されたマイクロコントローラ等82を使用すれば、極めて少ない部品により簡単にタッチセンサを構成することができる。この例では、前記第1の論理回路素子として出力ポート1(42)が使用され、前記第2の論理回路素子として出力ポート2(62(52))が使用されている。この構成により、前記図2に説明したタッチセンサ1bと同様の動作をさせることができる。
また、上記AD変換器72は、端子91部又は蓄電器3の電極A部に接続されてもよい。その場合には、前記図1に説明したタッチセンサ1aと同様の動作をさせることができる。
【0044】
また、複数の検出電極を備えたタッチセンサを構成することも容易である。例えば、図9に示すタッチセンサ121は6個の検出電極2a〜2fを備えており、それぞれの検出電極について、出力ポート1a〜1f(42a〜42f)及び出力ポート2a〜2f(62a〜62f)を制御し、AD変換器a〜f(72a〜72f)を用いて蓄電器3a〜3fの電極Bすなわち端子92a〜92f部の電位を計測することができる。
図10は、上記構成により検出電極2a〜2fについて順次、電位を計測する動作を表す。図10において、VAa〜VAfは蓄電器3a〜3fそれぞれの電極Aの電位を表わし、VBa〜VBfは蓄電器3a〜3fそれぞれの電極Bの電位を表わす。
まず、検出電極2aについて、出力ポート1a(42a)及び出力ポート2a(62a)を図7に示したV1及びV2と同様に制御し、AD変換器ADCa(72a)を用いて端子92a部の電位を計測することができる。前記第3ステップの所定のタイミングMaにおいて電位VBaを計測することによって、検出電極2aへの人体の近接又は接触を判断することができる。同様にして、順次、検出電極2b〜2fについてタイミングMb〜Mfにおいて各電位VBb〜VBfを計測することにより、各検出電極への人体の近接又は接触を判断することができる。
また、図9に示されるAD変換器72a〜72fは、それぞれ端子91a〜91f部又は蓄電器3a〜3fの電極A部に接続されてもよい。その場合には、検出電極2a〜2fのそれぞれについて、前記図6に説明したタッチセンサ1aの動作と同様の動作をさせることができる。
【0045】
本タッチセンサは、前記第1ステップ〜第3ステップ(図4〜図7を参照)を一連の動作とし、それを周期的に繰り返すことによって検出電極に生じる静電容量の変化を検知し、人体が近接又は接触しているか否かを判定することができる。本タッチセンサは、繰返し静電容量を充電等してその充放電特性を累積させる必要がないため、第1ステップ〜第3ステップを高速に実行する必要はなく、その繰り返しの周期も適宜とすることができる。これによって、本タッチセンサは高周波ノイズの発生を抑えることができるばかりでなく、検出電極に近接又は接触して移動する手指等の静電誘導によって生じる電位の変化を検知し、上記判定のために利用することが可能となる。
【0046】
通常、人体は帯電した状態にある。そのため、図11に表わすように、本タッチセンサ14の検出電極21に近接して手指等を移動させたり、検出電極21を覆った絶縁膜上に手指等を摺動させたりしたとき等に、検出電極21に静電誘導が生じる。例えば、タッチセンサ14において、ポート1(42)の出力回路を高インピーダンスとし、且つポート2(62)の出力電圧をVccとした状態(すなわち前記T2に相当する状態)において上記の静電誘導が生じた場合、蓄電器3の電極Aの電位VAは図12(a)に示すように変化する。上記静電誘導により電位VAに変化が生じる期間をTとすると、Txは実際上100ms(数10ms〜1s)程度となる。
図12(b)は、前記第1ステップ(T1)から第3ステップ(T3)までを一連の動作とし、それを一定の周期Tで間断なく繰り返して行うタッチセンサの動作を表わした図である。すなわち上記Tは電位VBの計測を行う周期となる。そこで、第2ステップ(T2)の期間を長くし且つ上記周期Tを適宜に設定すれば、静電誘導により図12(a)のように変動する電位VAを検出することが可能となる。
【0047】
図13は、上記静電誘導により電位VAの変動が生じた場合の前記タッチセンサ14の各部電位を表わす図である。第1ステップT1から第3ステップT3までのポート1の出力V1及びポート2の出力V2の制御については、図7で示した動作と同様である。第2ステップの期間T2において、蓄電器3の電極Aの電位VAには、検出電極21に生じている静電容量(Cx)の充電による変化分ΔVaと、静電誘導に起因する変化分ΔViとが加わる。これによって、第3ステップT3における蓄電器3の電極Bの電位VBは(ΔVa+ΔVi)となり、静電誘導による変動を検出することができる。
なお、図13に示す期間T2においては、静電誘導によって、電極Aの電位VAが、破線で示す静電容量の充電による電位(Vcc−ΔVa)よりもΔVi低下する場合を示している。図12(a)から明らかなように、電位VAは、静電誘導によって上記電位(Vcc−ΔVa)より上昇する場合もある。
【0048】
図14は、前記タッチセンサ14(図11参照)を用いて、検出電極に近接して手指を移動させたときの上記電位VBすなわち(ΔVa+ΔVi)を計測した例を表にしたものである。タッチセンサ14の回路において、蓄電器3の静電容量を500pF、抵抗R1を10kΩ、抵抗R2を1kΩとした。前記繰り返し周期Tを0.1ms〜10msの範囲で変えて(ΔVa+ΔVi)の値を測定した結果は、表に示すとおりであった。
人体の静電容量は20〜30pFであるので、その静電容量によって生じる電位の変化分(ΔVa)は0.2〜0.3V程度となる。表に示されているように、周期Tが0.1msの場合の(ΔVa+ΔVi)の計測値は0.25Vとなるため、静電誘導による変動分(ΔVi)を捉えることができていないものと考えられる。周期Tを1msとした場合には、(ΔVa+ΔVi)の計測値は0.4Vとなり、その計測値に静電誘導による変動分が含まれることは明らかである。さらに、周期Tが7msを超える場合、(ΔVa+ΔVi)の計測値は2.2Vから大きくは変化しなくなった。周期Tを長くするとタッチセンサとしての応答性を損なうこととなるため、上記計測結果から、上記繰り返し周期Tを1ms〜7msとすることが好ましい(さらに好ましくは1ms)といえる。
以上のように、検出電極に近接又は接触して移動する手指等の静電誘導により蓄電器3の電極部には大きな変動が現れるため、制御部は上記周期Tcごとに計測を行うことにより電極部の電位の変動を検知し、人体が近接又は接触しているか否かの判定のために利用することができる。
【0049】
また、本タッチセンサは、車両に搭載され、前記検出電極のサイズが大きいような場合にも効果的に適用することができる。検出電極が面積の大きいシート状又は板状の導電体(形状は問わず、例えば略長方形、楕円形等が挙げられる)である場合や、長尺の板状、シート状又は棒状の導電体である場合等である。図15に表わすように、例えば、長さ(L)20〜500mm、幅(W)2〜50mm程度の長尺状の導電体により検出電極22を構成することができる。また、長さ(L)と幅(W)がそれぞれ20〜500mm程度の広い面積の導電体により検出電極22を構成することができる。このような長尺の検出電極又は面積の大きな検出電極が使用される場合であっても、本タッチセンサは、検出電極に周波数の高い信号を供給したり、検出電極に生じる静電容量を高速で充放電等したりする必要がないため、不要な高周波ノイズの放射を低く抑えることが可能である。
【0050】
上記特徴により、本タッチセンサは車載用のタッチセンサとして好適に用いることができる。自動車内の照明、加飾パネル、表示パネル、空調装置、着座判定装置など、各種車載電子機器・装置を操作するためのタッチセンサとして適用することが可能である。例えば、上記長尺の検出電極22をコンソールボックスやグローブボックス内に配設することにより、乗員の掌や手指が検出電極22に近接したときにボックス内を照らすことができる。また、例えば、広い面積の検出電極を天井部に配設することにより、検出電極に掌や手指が近接したときにルームランプを点けることができる。
【0051】
なお、本発明においては、上述の実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施形態とすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1a、1b、11a、11b、12、121、14、15;タッチセンサ、2、21、22;検出電極、3;蓄電器、4、41;第1の接地回路、411;第1の論理回路素子、5、51;第2の接地回路、6、61;電圧印加回路、611;第2の論理回路素子、7、72;計測回路(AD変換器)、8、81;制御部、Cx;未知のキャパシタンス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の近接又は接触を検出するタッチセンサであって、
人体が近接又は接触する検出電極と、
前記検出電極と抵抗器を介して直列に一方の電極(A)が接続された蓄電器と、
前記蓄電器の一方の電極(A)と接地電位とを接続又は切断する第1の接地回路と、
前記蓄電器の他方の電極(B)と接地電位とを接続又は切断する第2の接地回路と、
前記蓄電器の他方の電極(B)と直流電源とを接続又は切断する電圧印加回路と、
前記蓄電器のいずれか1つの電極に接続され、その電極の電位を計測する計測回路と、
前記電圧印加回路、前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路をそれぞれ切り替え、前記計測回路により計測された電位によって人体の近接又は接触を判断する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電圧印加回路を切断するとともに前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路を接続する第1ステップと、前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路を切断するとともに前記電圧印加回路を接続する第2ステップと、前記計測回路により電位の計測を行う第3ステップと、を順次行うことを特徴とするタッチセンサ。
【請求項2】
前記計測回路は前記蓄電器の一方の前記電極(A)に接続されており、
前記制御部は、前記第3ステップにおいて前記第2ステップの状態を継続するとともに前記計測回路により電位の計測を行う請求項1記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記計測回路は前記蓄電器の他方の前記電極(B)に接続されており、
前記制御部は、前記第3ステップにおいて前記電圧印加回路及び前記第2の接地回路を切断するとともに前記第1の接地回路を接続した後、前記計測回路により電位の計測を行う請求項1記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記第1の接地回路は、前記蓄電器の一方の電極(A)にその出力が接続された第1の論理回路素子により構成され、
前記電圧印加回路及び前記第2の接地回路は、前記蓄電器の他方の電極(B)にその出力が接続された第2の論理回路素子により構成される請求項1乃至3のいずれかに記載のタッチセンサ。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1ステップから前記第3ステップまでを1ms〜7msの周期で繰り返して行う請求項1乃至4のいずれかに記載のタッチセンサ。
【請求項6】
車両に搭載され、前記検出電極は、略長方形のシート状の導電体、又は長尺状の板状もしくは棒状の導電体である請求項1乃至5のいずれかに記載のタッチセンサ。
【請求項7】
人体の近接又は接触を検出するタッチ検出方法であって、
人体が近接又は接触する検出電極と、
前記検出電極と抵抗器を介して直列に一方の電極(A)が接続された蓄電器と、
前記蓄電器の一方の電極(A)と接地電位とを接続又は切断する第1の接地回路と、
前記蓄電器の他方の電極(B)と接地電位とを接続又は切断する第2の接地回路と、
前記蓄電器の他方の電極(B)と直流電源とを接続又は切断する電圧印加回路と、
前記蓄電器のいずれか1つの電極に接続され、その電極の電位を計測する計測回路と、
を備えるタッチセンサを用いて、
前記電圧印加回路を切断するとともに前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路を接続する第1ステップと、
前記第1の接地回路及び前記第2の接地回路を切断するとともに前記電圧印加回路を接続する第2ステップと、
前記計測回路により電位の計測を行う第3ステップと、
を順次行うことを特徴とするタッチ検出方法。
【請求項8】
前記計測回路は前記蓄電器の一方の前記電極(A)に接続されており、
前記第3ステップは、前記第2ステップの状態を継続するとともに前記計測回路により電位の計測を行う請求項7記載のタッチ検出方法。
【請求項9】
前記計測回路は前記蓄電器の他方の前記電極(B)に接続されており、
前記第3ステップは、前記電圧印加回路及び前記第2の接地回路を切断するとともに前記第1の接地回路を接続した後、前記計測回路により電位の計測を行う請求項7記載のタッチ検出方法。
【請求項10】
前記第1の接地回路は、前記蓄電器の一方の電極(A)にその出力が接続された第1の論理回路素子により構成され、前記電圧印加回路及び前記第2の接地回路は、前記蓄電器の他方の電極(B)にその出力が接続された第2の論理回路素子により構成されるタッチセンサを用いて、
前記第1ステップは、前記第1の論理回路素子の出力及び前記第2の論理回路素子の出力を低レベルとし、
前記第2ステップは、前記第1の論理回路素子の出力を高インピーダンスとするとともに前記第2の論理回路素子の出力を高レベルとする請求項7記載のタッチ検出方法。
【請求項11】
前記計測回路は前記蓄電器の一方の前記電極(A)に接続されており、
前記第3ステップは、前記第2ステップの状態を継続するとともに前記計測回路により電位の計測を行う請求項10記載のタッチ検出方法。
【請求項12】
前記計測回路は前記蓄電器の他方の前記電極(B)に接続されており、
前記第3ステップは、前記第2の論理回路素子の出力を高インピーダンスとするとともに前記第1の論理回路素子の出力を低レベルとした後、前記計測回路により電位の計測を行う請求項10記載のタッチ検出方法。
【請求項13】
前記第1ステップから前記第3ステップまでを1ms〜7msの周期で繰り返して行う請求項7乃至12のいずれかに記載のタッチ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−257882(P2011−257882A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130451(P2010−130451)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(306026810)株式会社アウトソーシングセントラル (3)
【Fターム(参考)】