説明

タッチセンサ及びリモコン装置

【課題】簡易的な構造でポインタなどの座標位置の指定の操作の精度を向上させたり、ユーザがより直感的に操作可能とする技術を提供する。
【解決手段】タッチセンサ20は立体的な形状を有しており、上面視では略円形の形状を有している。中央部分には凸状部25が曲面で形成されている。この凸状部25は、中心の中央部30で凸状の曲面である内側曲面部31を形成しており、同心状に一旦高さが外に向かって低くなっており、最深部で底部32を形成している。そして底部32からは、同心状に徐々に高さが高くなって、外縁部34まで曲面である外側曲面部33が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサおよびリモコン装置に係り、特に立体形状を有するタッチセンサ及びそのようなタッチセンサを備えるリモコン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ノート型パーソナルコンピュータやリモコンにおける、いわゆる座標情報を入力する手段としてトラックボールやフラットパットがある。ユーザは、その様な入力手段により表示画面に表示されたポインタを操作して所定の装置を操作する。
【0003】
トラックボールは操作性がよいことが知られているが、一般には機構構造が複雑であり小型化が難しいという課題がある。また、操作対象であるボールのスリップ防止のために定期的なメンテナンスが必要である。
【0004】
また、フラットパットは、指を所定の領域に接触させてさらにスライドさせることで座標位置指定を行う。一般には、フラットパットで微妙な操作を行うことは難しいという課題があり、フラットパットの操作性は、トラックボールの操作性には及ばない。
【0005】
これらの課題を改善するために、例えば、トラックボールのボールを擬して半球状(ドーム状)に形成されたタッチセンサを用いた座標入力装置がある。
【特許文献1】特開2004−94450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の技術では、指を接触及びスライドさせて座標位置を指定する操作方式であり、ポインタに微妙な動きをさせることに対して何ら対策が施されておらず、上記課題は依然として残っており、より直感的にポインタを操作可能なディバイスが求められている。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、簡易的な構造でポインタなどによる座標位置の指定操作の精度を向上させる技術を提供することにある。また別の観点では、ポインタなどを、ユーザがより直感的に操作可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタッチセンサは、略円形に形成された凹状部と、前記凹状部の中央に形成された凸状部とを有する。
また、前記凸状部は、同心状に高さが変化してもよい。
前記凸状部は、外形が曲面で形成されてもよい。
前記凸状部の頂部は、前記凹状部の外縁より低くてもよい。
また、ユーザの接触位置の、前記凹状部の中心に対する相対位置にもとづいて、当該タッチセンサで操作するポインタの移動速度及び移動方向を決定してもよい。
本発明に係るリモコン装置は、上述のタッチセンサを備え、前記タッチセンサの外部近傍に選択ボタンを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センサ部分を内部に凸状部を有する凹状の立体形状としたため、簡易的な構造で座標位置の指定操作の精度を向上させる技術を提供することができる。また別の観点では、ポインタなどを、ユーザがより直感的に操作可能な技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るリモコン10の上面から見た外観を示す平面図である。また、図2は、リモコン10の機能ブロック図である。ユーザはこのリモコン10を用いてテレビ(図示せず)を操作する。リモコン10は、操作インタフェイス11として、テンキー16や電源ボタン17、ファンクションボタン18等の各種ボタンとテレビに表示されるポインタを操作したり表示されるボタンの選択を変更等するためのポインティングディバイス15とを備える。
【0012】
ポインティングディバイス15は、静電容量式の接触センサであるタッチセンサ20と、タッチセンサ20の上側近傍の左右の位置で、左側の第1の操作ボタン21と右側の第2の操作ボタン22とを備える。なお、タッチセンサ20のセンサタイプとして静電容量式に限る趣旨ではなく、タッチセンサ20に対するユーザの接触位置を適当に検知できればよく、例えば、電磁誘導式などのセンサであってもよい。
【0013】
制御部12は、操作インタフェイス11に対するユーザの操作を判別して、その操作に関連づけられた所定の信号を送信するように送信部13に指示する。送信部13は、その指示を受けて、図示しないテレビなどの操作対象に対して、赤外線を用いて指示信号を出力する。
【0014】
図3は、タッチセンサ20の形状を示した図であり、図3(a)は、上(Z軸方向)から見た平面図であり、図3(b)は、図3(a)におけるA−A断面図である。なお、図では、便宜的に、図横方向をX軸、縦方向をY軸、高さ方向をZ軸で表示している。
【0015】
図示の通り、タッチセンサ20は立体的な形状を有しており、上面視では円形の形状を有している。中央部分には凸状部25が曲面で形成されている。この凸状部25は、中心の中央部30が滑らかな凸状の曲面となっており、その曲面から連続して滑らかに下る内側曲面部31が形成されている。したがって、凸状部25は同心状に一旦高さが外に向かって低くなっている。そして、最深部で底部32を形成している。底部32からは、中央部30から同心状に徐々に高さが高くなって、外縁部34まで曲面である外側曲面部33が形成されている。なお、タッチセンサ20の外形は、上面視で真円に限らず楕円であってもよい。なお、凸状部25の最も高い中央部30は、図示においてZ軸マイナス側に位置して示しているように、外縁部34よりも低くなっている。
【0016】
ここでは、内側曲面部31と外側曲面部33とは底部32において滑らかに連続している。また、外側曲面部33の外側端部である外縁部34は、ユーザが触れたときに端部であることを明確に認識できる形状になっている。つまり、外側曲面部33とカバー面36との境界を滑らかにせずに、エッジを有する形状としている。従来技術(特許文献1)に示したような、カバー面36に対して半円状(ドーム状)形状の場合、カバー面と半円状形状との境界は、実質的に接触できないため、無駄な領域が生じていたが、本実施形態では、立体形状を全て有効に利用できる。
【0017】
図4は、タッチセンサ20を用いてテレビなどの表示装置に表示されるポインタの移動を行う場合について説明する図である。
【0018】
ポインタの移動は、中心点Oを基準として接触点P0の半径方向の距離LとX軸方向に対する角θで決定される。具体的には、タッチセンサ20は、上述の通り、上(Z軸方向)から見ると半径Rの円形となっており、凸状部25の頂部である中央部30が中心点Oとして定められている。ポインタの移動方向は、この中心点O(中心部30)より接触点P0を見た角θの方向により決定される。ユーザの指がタッチセンサ20に接触しているとポインタは移動し、タッチセンサ20から離間するとポインタの移動は停止する。また、ポインタの移動速度は、中心点0(中央部30)と接触点P0の距離Lにしたがって決定される。なお、移動速度の最大は、中央部30から外縁部34までの距離、つまり半径Rである最大距離Lmaxに対応する速度である。
【0019】
そして、ポインタの速度Vは、一次線形速度変化方式による計算に従う次の(1)式、または、非線形速度変化方式による計算に従う次の(2)式、さらにまた(1)式と(2)式の組合せにより決定され、距離Lの変化に応じて連続的に変化する。以下、ポインタの速度Vを算出する以下の(1)式及び(2)式をまとめて、「速度算出式」という。
V=k×L ・・・(1)式
V=k×Lα ・・・(2)式
(なお、α、kは定数)
【0020】
図5は、タッチセンサ20に対応するポインタの速度Vについて、タッチセンサ20のどの部位を操作したときにどのような速度となるかを決定するかを説明するために示す図である。タッチセンサ20の接触対象領域は、中心からの距離に応じて第1〜第3領域A1〜A3に3分割されており、それぞれの領域に対して異なる速度算出式が適用される。
【0021】
まず、第1領域A1は、中心点O(中央部30)からの距離R1の領域である。この領域は、凸状部25の内側曲面部31における内側の領域の一部にあたる。この第1領域A1は、主にユーザがポインタの位置を僅かに移動させると言った微調整を行うときに操作対象となる。そのため、距離変化に対して速度変化量を少なくしており、例えば、距離L1の接触位置P1の速度V1はk1及びnを定数として上記(2)式をベースとする以下の(3)式が適用される。
V1=(1/k1)×L1n・・・(3)式
【0022】
第2領域A2は、第1領域A1より外側の領域で、A1中心点O(中心部30)からの距離R1から距離R2(ただし、R2>R1)までの環状の領域である。この領域は、内側曲面部31における外側の領域と、外側曲面部33における内側の領域を含んだ領域で、内側曲面部31と外側曲面部33の境界である底部32を含んでいる。この第2領域A2は、それほど微調整を必要としていない、比較的大まかな移動をするための操作を想定した領域である。距離L2の接触位置P2の速度V2は、k2を定数として上述の(1)式をベースとする以下の(4)式が適用される。
V2=k2×L2・・・(4)
(4)式に示すように、速度V2は距離Lに対して線形で変化するため、ユーザは、直感的にポインタの移動速度をコントロールできる。なお、第1領域A1と第2領域A2との境界に設定される速度V1−2を連続的にするため、上記定数k1、k2、nは、以下の(5)式を満たすよう決定される。
V1−2=(1/k1)×Ln=k2×L・・・(5)
【0023】
第3領域A3は、第2領域A2より外側の領域で、中心点O(中央部30)からの距離R2から距離R3(ただし、R3>R2)までの環状の領域である。この第3領域A3は、第2領域A2と同様に大まかにポインタを移動させるための領域であり、ここでは、第2領域A2よりも更に高速で移動させたいときに操作対象となる。距離L3の接触位置P3の速度V3は、k3及びmを定数として、上述の(2)式をベースとする以下の(6)式が適用される。
V3=k3×L3m・・・(6)式
僅かな接触位置の変化でも、ポインタの速度が大きく変わるように設定される。なお、第2領域A2と第3域A3との境界に設定される速度V2−3を連続的にするため、上記定数k2、k3、mは以下の(5)式の関係を満たすよう決定される。
V2−3=k2×L=k3×Lm・・・(6)
【0024】
タッチセンサ20に対する、ユーザの一般的な使用方法、つまりポインタの移動のさせ方は、以下の(1)〜(3)のような流れとなる。
(1)第2領域A2または第3領域A3に対する操作により大まかにポインタを移動させる。
(2)第1領域A1に対する操作によりポインタを微調整移動させる。
(3)ポインタの位置が所望の位置に確定したら、第1の操作ボタン21や第2の操作ボタン22を用いて決定動作等を行う。なお、凸状部25の中央部30に対するタップ動作により決定動作を行う構成としてもよい。
【0025】
以上、本実施形態によれば、タッチセンサ20を立体形状にしたため、ユーザが感覚的に中心からの距離を捉えやすく、テレビ等の表示装置に表示されるポインタの速度や方向を直感的に調整することができる。また、タッチセンサ20への操作のとき、タッチセンサ20の外縁部34で膨らむ形状となっているため、ユーザはどこまでがセンサ範囲であるかを、視認することなく指による触覚で感覚的に理解することが可能となる。また、ユーザは、ポインタを移動させるときに、指を接触させたままスライドさせる必要がなく、ただ接触させたままでよい。また、ボールを回転させる構成でないため、ポインタの移動位置の制御が比較的容易である。
【0026】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、図6に示すように、タッチセンサ20の断面形状において、凸状部25の内側曲面部31の曲面を、中央部30に近づくにしたがって、斜面の傾斜を大きくなる形状としてもよい。この形状の場合、ユーザは中央部30の位置をより正確に認識できる。
【0027】
また、図7に示すように、タッチセンサ20の底部32を所定の幅となるように環状に形成してもよい。このとき、上述の第1領域A1を凸状部25の内側曲面部31の全面に、第2領域A2を底部32の全面に、さらに、第3領域A3を外側曲面部33の全面に設定してもよい。この形状の場合、ユーザは、第1〜第3領域A1〜A3の把握が容易である。
【0028】
また、本実施形態ではタッチセンサ20がリモコン10に設けられる構成であるが、これに限らず、例えば、ノート型パーソナルコンピュータに搭載されてもよい。タッチセンサ20が凹状であるため、ノート型パーソナルコンピュータを問題なく折り畳むことができる。また、マウスやトラックボールの代わりに単独でのポインティングディバイスを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係る、リモコンの上面外観を示す平面図である。
【図2】実施形態に係る、リモコンの機能ブロック図である。
【図3】実施形態に係る、タッチセンサの形状を示した図である。
【図4】実施形態に係る、タッチセンサを用いて、テレビなどの表示装置に表示されるポインタの移動とタッチセンサのタッチ位置との関係について説明する図である
【図5】実施形態に係る、タッチセンサに対する操作位置とポインタの速度との関係を説明するために示す図である。
【図6】実施形態の変形例に係る、タッチセンサの断面形状を示す図である。
【図7】実施形態の変形例に係る、タッチセンサの断面形状を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10 リモコン
11 操作インタフェイス
12 制御部
13 送信部
15 ポインティングディバイス
16 テンキー
17 電源ボタン
18 ファンクションボタン
20 タッチセンサ
21 第1の操作ボタン
22 第2の操作ボタン
25 凸状部
30 中央部
31 内側曲面部
32 底部
33 外側曲面部
34 外縁部
A1 第1のタッチ領域
A2 第2のタッチ領域
A3 第3のタッチ領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円形に形成された凹状部と、
前記凹状部の中央に形成された凸状部と
を有することを特徴とするタッチセンサ。
【請求項2】
前記凸状部は、同心状に高さが変化していることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記凸状部は、外形が曲面で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記凸状部の頂部は、前記凹状部の外縁より低いことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のタッチセンサ。
【請求項5】
ユーザの接触位置の、前記凹状部の中心に対する相対位置にもとづいて、当該タッチセンサで操作するポインタの移動速度及び移動方向を決定することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のタッチセンサ。
【請求項6】
請求項1〜5までのいずれか1項に記載のタッチセンサと、
前記タッチセンサの外部近傍に選択ボタンを有することを特徴とするリモコン装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−25881(P2009−25881A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185648(P2007−185648)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】