説明

タッチゾーンを持つ単層タッチパッド

【課題】 タッチゾーンを持つ単層タッチパッドを提供する。
【解決手段】 比較的透明な基材、この基材上に配置された第1作用電極、及びこの電極上に配置された感知電極を含み、第1作用電極及び感知電極は導体で形成されており、第1作用電極及び感知電極の組み合わせを使用して先が尖った物体のゾーンでの存在を検出し、先が尖った物体がいずれのゾーンで検出されたのかを確認し、又は多数の先が尖った物体が多数のゾーンに同時に存在することを検出し、及び使用者がディスプレースクリーンを見たときにパターンを視覚的に検出できるように第1作用電極及び/又は感知電極が十分視認性に形成されている、単層タッチパッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、非暫定的であり、米国仮特許出願第60/400,843号の優先権を主張するものである。
本発明は、全体としてタッチパッドに関する。更に詳細には、本発明は、コンピュータモニター、PDA、又は携帯電話等の視認スクリーン又はディスプレースクリーン上に配置できる透明タッチパッドに関する。タッチパッドは使用者がディスプレースクリーンのいずれのゾーンと接触しているのかを確認できる。
【背景技術】
【0002】
現在、タッチパッドの技術は、これらのタッチパッドを使用する新たな用途や装置が考案されているために大きく変化している。タッチパッドは、基本的には、タッチ感知装置であり、抵抗感知、容量感知、光学式感知又は他のタッチ感知手段の原理を使用して作動することが分かっている。
【0003】
タッチパッドを用いた実験が増えるにつれて、タッチパッドを透明基材上に配置できることが確認された。この場合、タッチパッドのセンサ境界を画成する電極は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明な又はほぼ透明なインクから形成される。電極は、非常に細いワイヤから形成することもできるが、この方法は何らかの困難をもたらす。かくして、比較的シースルーの又は透明なタッチパッドに関し、ディスプレースクリーン上に配置でき、当該技術分野で周知のタッチスクリーンとほぼ同様に作動できる。
【0004】
透明タッチパッドの電極が配置された基材は剛性であっても可撓性であってもよいが、実際には、基材は比較的薄くなければならない。薄い基材は、透明タッチパッドをできるだけ透明にするのを補助するに過ぎない。透明性は、透明タッチパッドの下に置かれることが多いディスプレースクリーンの性質のため、重要である。換言すると、ディスプレースクリーンは、特に輝度が高いスクリーンでなくてもよい。かくして、眼の疲労を大きくすることなく、使用者を補助するため、基材及び透明タッチパッドの電極を通過してもディスプレースクリーンができるだけ暗くならないようにしなければならない。
【0005】
比較的透明であり、使用者がディスプレースクリーンを見ることができる基材用の良好な材料には、カプトン(カプトン(KAPTON)は登録商標である)、マイラー(マイラー(MYLAR)は登録商標である)、カダデックス(カダデックス(KADADEX)は登録商標である)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及び同様の機械的特性及び電気的特性を持つ他の材料が含まれる。
【0006】
本願は、透明タッチパッドに関する。かくして、好ましい実施例は、本明細書中でゾーン検出として定義された限定されたタッチパッド機能を提供する透明タッチパッドに関する。しかしながら、透明タッチパッドは、単層タッチパッドに限定されない。従って、本願は、更に、二層のタッチパッド電極を使用することによって、完全なタッチパッド機能を持つタッチパッドに関する。
【0007】
完全なタッチパッド機能は、一般的には、コンピュータ、テレビ、又はPDA等のポータブル電子機器、カメラ、携帯電話、等に対してカーソル制御を行うことを特徴とする。従って、このようなタッチパッドは、タッチパッドが、シルク社が提供する技術等の容量検出技術を使用する場合、少なくとも二つの検出電極層を必要とする。多数の基材層及びかくして多数の電極又は重なった電極層により、一般的には、最も透明度が高いがシースルーが困難なタッチパッドが形成される。これにより、タッチパッドをディスプレースクリーン上に配置した場合の使用性に問題が生じる。
【0008】
基材層及び電気トレースに使用されたインクを薄くし、及び従って、見掛けの透明度を高める試みがなされてきたがこれには全く価値がない。こうした試みは、タッチパッド電極によりスクリーンを不都合な程、暗くしてしまう。
【0009】
従って、使用者の見やすさを大幅に向上するため、当該技術分野における現状よりも透明度が高い完全なタッチパッド機能を提供するタッチパッドが必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、一つの作用電極及び一つの感知電極を含むタッチパッドを単一の基材に設け、これによって、ディスプレースクリーンの透明性を、タッチパッドで使用された電極の総数を減少することによって高めることである。
【0011】
別の目的は、タッチパッドのセンサ領域内の複数の様々な位置に一つの作用電極を設けることである。
別の目的は、ほぼ透明な基材に一つの作用電極及び一つの感知電極を設けることである。
【0012】
別の目的は、一つの作用電極及び一つの感知電極を全体に透明なITOインクとして提供することである。
別の目的は、ゾーンに接触する物体を検出し、物体がいずれのゾーンを検出したのかを確認できる単層タッチパッドを提供することである。
【0013】
別の目的は、タッチパッドの複数の様々なゾーンと接触する複数の物体の存在を同時に検出できる単層タッチパッドを提供することである。
別の目的は、タッチパッドの一つの作用電極及び一つの感知電極が所望のパターンで配置されており、ディスプレースクリーンを見たときに所望のパターンを最小の干渉で見ることができる、単層タッチパッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
好ましい実施例では、本発明は、単層タッチパッドであり、比較的透明な基材、この基材上に配置された第1作用電極、及びこの第1作用電極に配置された第1感知電極を含み、第1作用電極及び感知電極の組み合わせを使用して先が尖った物体のゾーンでの存在を検出し、先が尖った物体がいずれのゾーンを検出したのかを確認し、又は多数の先が尖った物体が多数のゾーンに同時に存在することを確認し、第1作用電極及び/又は感知電極は、ディスプレースクリーンを見たときに使用者がパターンを視覚的に検出できるように、十分に見えるように形成されている、単層タッチパッドである。
【0015】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴、利点、及び別の特徴は、添付図面と組み合わせて以下の詳細な説明を考えることにより、当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に添付図面を参照する。これらの図面では、本発明の様々なエレメントに参照番号が付してあり、当業者が本発明を実施し使用できるように本発明を論じる。以下の説明は、本発明の原理の単なる例示であって、特許請求の範囲を減縮するものであると考えられるべきではないということは理解されるべきである。
【0017】
タッチパッドの特徴を論じるとき、多くの場合、カーソル制御がタッチパッドを完全に機能させる上で所望の機能であると言われる。この他の所望の機能には、スクロール性、ドキュメントに亘って移動するための、即ちウェブブラウザーの頁に亘るナビゲーションを制御するためのナビゲーションキーが含まれる。しかしながら、これらの特徴は、タッチパッドが使用される特定の装置で必ずしも必要とされるわけではない。
【0018】
冒頭に説明した透明タッチパッドに戻ると、本発明は、容量感知式の機能が限られたタッチパッドでタッチゾーン制御を行う。タッチゾーン制御は、本発明の透明タッチパッドが、上述のディスプレースクリーンを持つポータブル電子機器等の装置にデータを送出する有用な特徴である。
【0019】
図1では、様々な電極102として示す透明タッチパッド100がディスプレースクリーン104上に配置してある。ディスプレースクリーン104及び透明タッチパッド100は、ポータブル電子機器106の部分である。ポータブル電子機器は、本願で上文中に言及した任意の機器、又はタッチパッド入力の利点が得られるディスプレースクリーンを持つ任意の他の装置であってもよい。様々な電極102は、透明タッチパッドを機能させるのに必要な電気接続部の詳細なしで示してあるということに着目されたい。これらの電気接続部は以降の図面に示してある。更に、様々な電極102がディスプレースクリーン104上に非常に濃い線として示してある。様々な電極102の濃さを誇張したのは単なる例示の目的である。様々な電極102に使用されたインク又は他の導体は使用者にとって比較的透明であるということを思い出されたい。
【0020】
図1に示す透明タッチパッド100は、以下に更に詳細に示すように別個の別々のゾーンを画成するということに着目されたい。透明タッチパッド100と関連した感知回路が送出したデータは、先の尖った物体との接触をポータブル電子機器106に表示する。先の尖った物体は、容量感知式透明タッチパッド100が検出できる指又は他の物体であってもよい。更に、透明タッチパッド100は、いずれのゾーンが接触されているのかを表示できる。
【0021】
従って、本発明は、一次元入力装置の機能を提供する。例えば、透明タッチパッド100は、ボタン入力を提供できる。各別々は単一のボタンである。ポータブル電子機器は、いずれのゾーン又はボタンが接触されているのかを検出することによって、別個の作業を行うことができる。
【0022】
一次元入力の別の例は、スライド制御又はスクロール制御である。図2は、ゾーン108が直線状に並んでコラムを形成する場合、ゾーンからゾーンへの移動を別個の工程として検出する。比較的高度なタッチパッド回路が設けられている場合には、コラムに沿った更に細かな動きを確認でき、及びかくしてコラムに沿った移動増分が小さくなる。
【0023】
更に、図3に示すように一つ以上のコラムを設けてもよく、その結果、コラム1(110)及び2(112)、平行な透明タッチパッド、垂直な透明タッチパッド、又は何らかの他の所望のゾーン構成で示すのと同じ透明タッチパッドによって多数のスクロール領域を制御できる。一次元領域又はゾーンからなるパターン又はレイアウトは、大幅に変化させることができ、本発明を限定する要因であると考えられるべきではない。
【0024】
図4は、本発明の現在の好ましい実施例の拡大概略レイアウトである。図4は、図の平面であると仮定される単層基材10を示す。ゾーンでの接触を検出するために必要な作用電極(X又はY)は一つだけである。電極20、22、24、26がX電極であると仮定する。図4は四つのゾーン12、14、16、18を有する。これらの四つのゾーンは、全体が、部品番号の各々を含む破線によって画成される。四つのゾーン12、14、16、18は、対応する電極20、22、24、26及びそれらの周囲の一つの検出電極30までの空間を含む。検出電極30は、他の検出電極を他の電極ワイヤ又は他のインターフェースの信号からシールドする接地リング32によって取り囲まれている。
【0025】
本発明は、作用電極20、22、24、26及び一つの検出電極30を透明タッチパターン10と関連したタッチパッド検出回路に接続したとき、作動する。タッチパッド検出回路は、シルク(シルク(Cirque)は登録商標である)社がそのタッチパッドで販売している回路であってもよい。完全なタッチパッド機能を提供するように設計されたタッチパッド感知回路は、単一の層を持つ透明タッチパッドで使用できる。しかしながら、タッチパッド感知回路は、更に、限定されたタッチパッド機能をだけを提供する場合には使用されない作用電極に対して入力することなく、更に効率的に作動するように変更を施してもよい。
【0026】
本発明の重要な特徴は、作用電極、一つの感知電極、又は作用電極及び一つの感知電極の両方を所望のパターンで賦形する特徴を提供することである。ディスプレースクリーンが暗くならないようにするため、電極を使用者に対してできるだけ透明であるように形成するのが望ましいと冒頭に述べた。しかしながら、ディスプレースクリーンを見たときに電極の少なくとも一部が使用者に見えるように形成するのが望ましい。
【0027】
かくして、本発明の重要な特徴は、ディスプレースクリーンを見たとき、所望のパターンを見えるようにできることである。単層タッチパッドがディスプレースクリーンと使用者との間に配置されているものと仮定すると、又はタッチパッドがディスプレースクリーンの下側から見えるものと仮定すると、タッチパッドが使用者に対して完全に透明でないのが望ましい。
【0028】
例えば、使用された材料の特定の特徴の利点により、パッドの電極が使用者に見えるようにできる。様々な程度の視認性を得るため、幅又は厚さを変化させることができる電極用導体を考える。更に、電極に使用された導体に追加の材料を追加できる。追加の材料は、導体の見た目を暗くしたり明るくしたりする。
【0029】
電極の不透明度を高める目的は、透明タッチパッドの存在が気付かれないようにするという最終目的に反するものと考えられる。しかしながら、電極を少なくとも一つのゾーンで部分的に見えるようにすることにより、装置の販売者は、使用者即ち製品購入者に特定の画像が見えるようにできる。換言すると、販売者は装置のブランドを主張でき、そのため、使用者又は購入者がロゴ又は他のサービス又は商標を視覚的に識別するとき、装置の販売者に関して誤りが起こらない。
【0030】
図4を示し、販売者のロゴが電極20、22、24、又は26のうちの一つの形状であると仮定する。ディスプレースクリーンを見たときにこれらの電極20、22、24、又は26の一つ又は全てを僅かに見えるようにできる。
【0031】
透明タッチパッドが提供できるゾーンの数もまた、使用される透明タッチパッドの性質に応じて変更できる。ゾーンの数は限定要因であると考えられてはならない。これは、タッチパッド及びその関連したタッチパッド感知回路を多くの別個の所望のゾーンを提供するように変更できるためである。
【0032】
図5は、本発明の別の透明タッチパッドの拡大概略ブロックダイヤグラムである。作用電極40、42、44、46の形状が図4の作用電極と異なっているということに着目されたい。これは、単に、電極の形状を多くの所望の形状及びパターンであるように変更できるということを明らかにするためである。
【0033】
本発明の別の重要な特徴は、透明タッチパッドの機能を他の機械的特徴と組み合わせることができるということである。例えば、一つの所望の機械的特徴は、ドーム状ボタンである。図6は、この概念の拡大断面図であり、タッチパッド基材50を示す。この基材50には、透明タッチパッドの電極52の所望のパターン又はレイアウトが配置されている。これらの電極上には機械式ドームスイッチ54が配置されている。電極52が提供する機能は領域のスクロールである。機械式ドームスイッチ54は、かくして、同じ空間に様々な機能を提供する。しかしながら、電極52はボタンとしても機能できる。かくして、同じ領域を二つの用途で使用できる。電極が作用状態にある場合には、電極スイッチを作動させることができる。電極が作用状態にない場合には、おそらくは機械式ドームスイッチが操作され、別の入力を提供する。
【0034】
上述の構成は本発明の原理の用途の単なる例示であるということは理解されよう。当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多くの変形及び変更を考案できる。添付の特許請求の範囲は、このような変形及び変更を含もうとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ディスプレースクリーン及び入力を提供するためにこのスクリーン上に配置された透明タッチパッドを持つポータブル電子機器の斜視図である。
【図2】スクロール入力を提供するため、コラム状に配置されたゾーンを示す図である。
【図3】二つの異なる入力用のスクロール制御を提供するため、ゾーンの二つの平行なコラムを示す図である。
【図4】本発明の原理に従って形成された透明タッチパッド用の電極のレイアウトの拡大概略ダイヤグラムである。
【図5】透明タッチパッド用の電極の別のレイアウトの拡大概略ダイヤグラムである。
【図6】機械式ドームスイッチが上側に配置された透明タッチパッドの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
100 透明タッチパッド
102 電極
104 ディスプレースクリーン
106 ポータブル電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレースクリーンを持つ装置へ入力を提供するための単層タッチパッドにおいて、
タッチ感知領域の少なくとも二つの別個の領域に配置された、ディスプレースクリーン上に配置された場合にほぼ透明な第1作用電極、
前記少なくとも二つの別個の領域の前記第1作用電極と隣接して配置された、前記ディスプレースクリーン上に配置された場合にほぼ透明な感知電極、及び
前記第1作用電極及び前記感知電極に接続されたタッチパッド感知回路を含み、前記タッチパッド感知回路は、先が尖った物体が前記タッチ感知領域と接触したときにこれを確認し、前記タッチパッド感知回路は、前記先が尖った物体が前記少なくとも二つの別個の領域のいずれと接触したのかを確認する、単層タッチパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−500642(P2006−500642A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526384(P2004−526384)
【出願日】平成15年8月4日(2003.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/024311
【国際公開番号】WO2004/013833
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(501146007)サーク・コーポレーション (19)
【Fターム(参考)】