説明

タッチパネル、タッチパネルシステム、および電子機器

【課題】指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできるタッチパネルを提供する。
【解決手段】本発明のタッチパネルは、タッチ操作を行うタッチ入力面から一定の距離を有する面に、互いに平行な複数の第1電極31Aからなる第1電極群と、第1電極31Aに対して垂直に設けられた複数の第2電極32Aからなる第2電極群とを備えている。第1電極31Aおよび第2電極32Aは、タッチ入力面と対向する面において、第1電極31Aの延在部31cと、第2電極32Aの延在部32cとが、互い違いに配置されており、入り組んだ形状となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル、タッチパネルシステム、および電子機器に関し、特に、タッチ位置を高感度に検出するために、特定形状の電極が特定の配置状態で設けられたタッチパネル、そのタッチパネルを備えたタッチパネルシステム、およびそのタッチパネルシステムを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン等の携帯情報機器、自動券売機等の自動販売機を始めとする様々な電子機器に、タッチパネルの搭載が急速に進んでいる。タッチパネルの動作原理には、種々の方式がある。現在、広く普及しているタッチパネルは、抵抗膜方式のタッチパネルである。一方、投影型静電容量方式のタッチパネルの普及も進みつつある。投影型静電容量方式のタッチパネルは、指先の多点検出(複数の指先による入力の検出)が可能であるため、実用性が高い。
【0003】
図8は、従来の投影型静電容量方式のタッチパネル100に設けられた電極の形状を示す模式図である。図8に示すように、一般的な投影型静電容量方式のタッチパネル100は、2層構造の電極(第1電極101,第2電極102)を備えている。第1電極101,第2電極102は、それぞれ、タッチパネル100を上方(タッチ操作面側)からみたとき、多数の正方形(ダイヤ形状)の電極が連続的に配置された形状となっている。つまり、第1電極101,第2電極102は、互いに等しい形状を有する多数の正方形の電極が、マトリクス状に配置された構成である。
【0004】
一方、特許文献1には、指先の接触した座標検出の精度を向上(指先による反応を向上)させることのできる投影型静電容量方式のタッチパネルが開示されている。図9は、特許文献1のタッチパネル200に設けられた電極の形状を示す模式図である。図8と同様に、図9に示すように、特許文献1のタッチパネル200も、2層構造の電極(第1電極201,第2電極202)を備えている。ただし、特許文献1のタッチパネル200は、第1電極201の形状と、第2電極202の形状とが異なる。具体的には、第1電極201は、平行に並べられた複数の上部電極203から構成されている。一方、第2電極202は、上部電極203と直交する方向に平行に並べられた複数の下部電極204から構成されている。第2電極202は、第1電極201よりもタッチ入力面から離れて配置されている。上部電極203は菱形が連鎖した形状であり、下部電極204は六角形が連鎖した形状である。特許文献1のタッチパネル200は、指先に対する下部電極204の反応を向上させることによって、指先に対する反応を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−176581号公報(2010年8月12日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の静電容量方式のタッチパネルは、例えば、指先より小さな物体での入力を検出することが困難であり、位置検出感度が高いとは言えない。
【0007】
具体的には、特許文献1のタッチパネル200をはじめとする、従来の静電容量方式のタッチパネルは、基本的に指先入力を前提としている。このため、従来の静電容量方式のタッチパネルは、指先より小さな物体での入力(例えば、ペン入力)は、想定されていない。
【0008】
従来の静電容量方式のタッチパネルにおいて、指先より小さな物体での入力感度を向上するためには、タッチパネルの位置検出精度を向上させる必要がある。例えば、図8の第1電極101,第2電極102を構成する正方形の各電極を縮小する(正方形の各辺を短くしピッチを)ことが考えられる。しかし、各電極を縮小した場合、第1電極101,第2電極102を構成する各電極数が増加する。このため、ドライブライン数の増加に伴い、ドライブラインの駆動周波数の増加が必要になる。その結果、タッチパネルからの信号を処理するタッチパネルコントローラを含めたタッチパネルシステム全体の見直しが必要になる。図9の第1電極201,第2電極202も同様である。このように、正方形の各電極を縮小することは、大掛かりな改変が必要になるため、現実的でない。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできるタッチパネル、タッチパネルシステム、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るタッチパネルは、上記の課題を解決するために、タッチ操作を行うタッチ入力面から一定の距離を有する第1の面に、互いに平行な複数の第1電極からなる第1電極群と、
タッチ操作を行うタッチ入力面から一定の距離を有する第2の面に、第1電極に対して垂直に設けられた複数の第2電極からなる第2電極群とを備え、
第1電極および第2電極は、それぞれ、基部と、基部から延びた複数の延在部とを有しており、
第1電極および第2電極は、タッチ入力面と対向する面において、第1電極の延在部と、第2電極の延在部とが、互い違いに配置されていることを特徴としている。
【0011】
上記の発明によれば、タッチパネルのタッチ位置を検出するために、複数の第1電極からなる第1電極群と、複数の第2電極からなる第2電極群とを備えている。しかも、第1電極および第2電極は、それぞれ、基部と、基部から延びた複数の延在部とを有し、第1電極の延在部と、第2電極の延在部とが、互い違いに(交互に)に配置されている。
【0012】
これにより、第1電極および第2電極の各延材部が、入り組んで配置される。その結果、第1電極および第2電極により検出される静電容量値は、従来のタッチパネルよりも緩やかに変化する。さらに、静電容量値の変化量も、従来のタッチパネルよりも小さくなる。そして、特に、静電容量値の変化のない領域が、従来のタッチパネルよりも狭くなる。これにより、タッチパネルの位置検出精度が向上する。従って、指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできるタッチパネルを提供することができる。
【0013】
本発明に係るタッチパネルにおいて、第1の面と第2の面とが、同一面であることが好ましい。
【0014】
上記の発明によれば、第1電極群と第2電極群とが、同一平面上に配置される。これにより、タッチ入力面と、第1電極群および第2電極群とが、より近接して設けられる。従って、タッチパネルの薄型化が可能となると共に、より高感度でタッチ操作による静電容量の変化を高感度で検出することが可能となる。
【0015】
本発明に係るタッチパネルにおいて、第1電極および第2電極の各延在部は、基部から櫛歯状に並んでいる構成であってもよい。
【0016】
上記の発明によれば、第1電極および第2電極が、櫛歯状に形成された複数の延在部を備えており、第1電極の櫛歯(延在部)と、第2電極の櫛歯(延在部)とが交互に配置される。従って、スペースを有効に活用して、各電極の延在部を、確実かつ容易に互い違いに(交互に)に配置することができる。
【0017】
本発明に係るタッチパネルにおいて、第1電極および第2電極の少なくとも一方の基部の外形が、四辺形であってもよい。
【0018】
上記の発明によれば、第1電極および第2電極の基部の外形が、四辺形である。従って、第1電極および第2電極の形状を簡素化することができる。
【0019】
本発明に係るタッチパネルにおいて、上記延在部は、上記基部の各辺から垂直に延びている構成であってもよい。また、本発明に係るタッチパネルにおいて、上記延在部の先端部は、上記延在部の基部側の端部よりも太くなっている構成であってもよい。
【0020】
上記各発明によれば、スペースを有効に活用して、各電極の延在部を確実かつ容易に互い違いに(交互に)に配置することができる。
【0021】
本発明に係るタッチパネルは、投影型静電容量方式のタッチパネルであることが好ましい。上記の発明によれば、タッチパネルが、投影型の静電容量方式で動作する。従って、指先等の多点検出が可能なタッチパネルを提供することができる。
【0022】
本発明に係るタッチパネルにおいて、第1電極および第2電極が、透明電極であることが好ましい。上記の発明によれば、第1電極および第2電極が、透明電極であるため、タッチパネルの下方の状態を透視することができる。
【0023】
本発明に係るタッチパネルシステムは、上記の課題を解決するために、前記いずれかのタッチパネルと、表示装置とを備えたタッチパネルシステムにおいて、上記タッチパネルが、表示装置の前面に設けられていることを特徴としている。
【0024】
上記の発明によれば、本発明にかかるタッチパネルが、表示装置の前面に設けられている。従って、指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできるタッチパネルシステムを提供することができる。
【0025】
本発明に係るタッチパネルシステムにおいて、上記表示装置は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、または有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイであることが好ましい。
【0026】
上記の発明によれば、表示装置が、日常的な電子機器に多用されている各種ディスプレイから構成されている。従って、汎用性の高いタッチパネルシステムを提供することができる。
【0027】
本発明に係る電子機器は、上記の課題を解決するために、前記タッチパネルシステムを備えることを特徴としている。
【0028】
上記の発明によれば、本発明にかかるタッチパネルシステムを備えているため、指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできる電子機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明に係るタッチパネルは、第1電極および第2電極は、タッチ入力面と対向する面において、第1電極の延在部と、第2電極の延在部とが、互い違いに配置されている構成である。また、本発明に係るタッチパネルシステムは、本発明に係るタッチパネルを備える構成であり、本発明に係る電子機器は、本発明に係るタッチパネルシステムを備える構成である。それゆえ、指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできるタッチパネル、タッチパネルシステム、および電子機器を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るタッチパネルにおける第1電極および第2電極の形状を示す模式図である。
【図2】本発明に係るタッチパネルシステムの基本構成を示す概略図である。
【図3】図1の第1電極の基本単位を示す模式図である。
【図4】図1のタッチパネルにおける第1電極および第2電極と、従来のタッチパネルにおける第1電極および第2電極との、形状および位置検出精度を比較した図である。
【図5】本発明に係るタッチパネルにおける第1電極および第2電極の別の形状を示す模式図である。
【図6】図5の第1電極の基本単位を示す模式図である。
【図7】本発明に係るタッチパネルにおける別の第1電極の基本単位を示す模式図である。
【図8】従来の投影型静電容量方式のタッチパネルに設けられた電極の形状を示す模式図である。
【図9】特許文献1のタッチパネルに設けられた電極の形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0032】
(1)タッチパネルシステム1の構成
図2は、本発明の実施の一形態に係るタッチパネルシステム1の基本構成を示す概略図である。タッチパネルシステム1は、表示装置2と、タッチパネル3とを備えている。以下では、使用者が利用する側を、前面(または上方)として説明する。
【0033】
表示装置2は、図示しない表示画面(表示部)を備えている。表示画面には、操作用の各種アイコンや、使用者の操作指示に応じた文字情報等が表示される。表示装置2は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED;field emission display)等から構成される。これらのディスプレイは、日常的な電子機器に多用されており、汎用性の高いタッチパネルシステム1が構成される。表示装置2は、任意の構成とすればよく、特に限定されない。
【0034】
タッチパネル3は、使用者が指先またはペン等により、タッチパネル3の表面をタッチ(押圧)操作することによって、各種の操作指示を入力する。タッチパネル3は、表示画面を覆うように、表示装置2の前面(上部)に積層されている。本実施形態において、タッチパネル3は、投影型静電容量方式のタッチパネルである。このため、タッチパネル3は、透過率が高く、耐久性も有するという利点を有する。
【0035】
タッチパネル3は、タッチ操作を行うタッチ入力面から一定の距離を有する同一面上(同一面内)に、第1電極群31と、第2電極群32とを備えている。第1電極群31,第2電極群32は、使用者によるタッチパネル3のタッチ操作を検出する。タッチ操作には、ダブルクリック操作、スライド操作、シングルクリック操作、ドラッグ操作等が含まれる。
【0036】
第1電極群31は、互いに平行な複数の第1電極31Aから構成されている。各第1電極31Aは、等間隔に配置されている。第2電極群32は、第1電極31Aに対して垂直に設けられた、複数の第2電極32Aから構成されている。各第2電極32Aは、互いに平行であり、等間隔に配置されている。すなわち、本実施形態では、各第1電極31Aは、X軸に平行に設けられたX電極である。一方、各第2電極32Aは、X軸に対して垂直なY軸に平行に設けられたY電極である。第1電極31Aおよび第2電極32Aは、導電性材料から形成されていればよいが、ITO(Indium Thin Oxide:酸化インジウムスズ)などの透明な配線材料から形成されていることが好ましい。つまり、第1電極31Aおよび第2電極32A(第1電極群31および第2電極群32)は、透明電極(透明電極群)であることが好ましい。
【0037】
第1電極31Aおよび第2電極32Aの一方の端部は、接続配線33Aまたは33Bに接続されている。第1電極31Aに接続された接続配線33Aおよび第2電極32Aに接続された接続配線33Bの一方は、ドライブラインとして機能し、他方はセンスラインとして機能する。すなわち、接続配線33Aがドライブラインとして機能する場合には第2電極32Aの接続配線33Bがセンスラインとして機能し、第1電極31Aの接続配線33Aがセンスラインとして機能する場合には第2電極32Aの接続配線33Bがドライブラインとして機能する。
【0038】
ドライブラインとして機能する接続配線33Aまたは33Bは、図示しない駆動回路に接続されている。これにより、タッチパネルシステム1の起動時に、接続配線33Aまたは33Bを介して、タッチパネル3に一定周期で電位が印加される。
【0039】
一方、センスラインとして機能する接続配線33Aまたは33Bは、図示しないタッチパネルコントローラに接続されている。これにより、タッチパネル3で発生した静電容量が検出される。
【0040】
このように、タッチパネルシステム1は、タッチパネル3における静電容量の変化に基づいて、使用者によるタッチ位置(タッチされた箇所のX座標,Y座標)が検出される。
【0041】
(2)第1電極31A,第2電極32Aの形状および配置
従来の静電容量方式のタッチパネルは、基本的に指先入力を前提としているため、指先より小さな物体での入力(例えば、ペン入力)は、想定されていない。従って、指先より小さな物体での入力を実現するためには、タッチパネルの位置検出精度を向上させる必要がある。
【0042】
そこで、本実施形態のタッチパネルシステム1は、静電容量を検出するための第1電極31Aおよび第2電極32Aが、特定の形状を有すると共に、複雑に入り組んだ配置となっていることを最大の特徴としている。図1は、タッチパネル3における第1電極31Aおよび第2電極32Aの形状を示す模式図である。すなわち、図1は、図2に示されるタッチパネル3における、第1電極31Aおよび第2電極32Aの一部を取り出し、各電極の形状および配置状態を示した図である。図3は、図1の第1電極31Aおよび第2電極32Aの基本単位を示す模式図である。
【0043】
第1電極31Aは、図3に示すような基本電極31aが、複数連なった構成である。基本電極31aは、基部31bと、基部31bから外側へ向かって延びた複数の延在部31cとを備えている。延在部31cの先端部には、接続端子31dが形成されている。具体的には、基本電極31aは、基部31bの外形が四辺形(正方形)であり、基部31bの各辺から等間隔に設けられた3本および延在部31cが、櫛歯状に並んでいる。各延在部31cは、基部31bの各辺に対して垂直である。すなわち、延在部31cは、基部31bの周囲(周辺部)に形成され、基部31bの各辺(櫛根部)から垂直に櫛型に突起した形状であるとも言い換えられる。
【0044】
なお、図3では、2つの延在部31cに、接続端子31dが形成されている。しかし、接続端子31dは、少なくとも1つの延在部31cに形成されていればよい。また、基部31bは、基本電極31aの中央部に設けられているが、基部31bの位置は中央部に限定されるものではない。
【0045】
第2電極32Aも、第1電極31Aを構成する基本電極31aと同様に、複数の基本電極32aが連なった構成である。基本電極32aも、基本電極31aと同様、基部32b、延在部32c、および接続端子32dを備えており、説明を省略する。なお、第1電極31A,第2電極32Aは、同一の基本電極31a,32aが連なったものでもよいし、異なる基本電極31a,32aが連なったものでもよい。また、上述した図2において、模式的に菱形で示された部分が、それぞれ、第1電極31Aおよび第2電極32Aの基本単位(基本電極31a,32a)となる。
【0046】
図1に示すように、第1電極31Aおよび第2電極32Aは、図3に示す基本電極31a,32aが、X軸またはY軸に対して平行に複数連なった構成である。つまり、第1電極31Aは、複数の基本電極31aが同一直線上に並んだ構成であり、第2電極32Aは、複数の基本電極32aが同一直線上に並んだ構成である。これにより、第1電極31Aと第2電極32Aとは、互いに垂直に配置される。
【0047】
さらに、第1電極31Aは、隣り合う基本電極(図3参照)における接続端子31d・31d同士が、配線34によって接続される。同様に、第2電極32Aは、隣り合う基本電極(図3参照)における接続端子32d・32d同士が、配線35によって接続される。配線34と配線35とは、互いに干渉しないようになっている。つまり、配線35は、配線34を避けて、接続端子32dに引き回されている。
【0048】
しかも、図1に示すように、第1電極31Aおよび第2電極32Aは、タッチパネル3を上方(タッチ入力面側)から見たとき、第1電極31Aの延材部31cと、第2電極32Aの延材部32cとは、互い違いに配置されている。言い換えれば、第1電極31A,第2電極32Aは、単純な平面形状ではなく、入り組んだ凹凸状の電極パターンとなっている。
【0049】
なお、タッチパネル3では、第1電極31A(第1電極群31)および第2電極32A(第2電極群32)を用いて静電容量を検知する。つまり、基部31b,32bと、延在部31c,32cとは、形状は異なるものの、いずれも静電容量を検知するという機能は同一である(機能面では相違しない)。
【0050】
(3)タッチパネル3の効果
次に、このような第1電極31Aおよび第2電極32Aを備えたタッチパネル3の効果について、図8に示す電極を備えた従来のタッチパネルと比較して説明する。図4は、図1のタッチパネル3における第1電極31Aおよび第2電極32Aと、従来のタッチパネルにおける第1電極101および第2電極102との、形状および位置検出精度を比較した図である。図4の上段の模式図は、本実施形態のタッチパネル3と図8のタッチパネルとにおける電極の形状と配置を示している。図4の下段のグラフは、図4の上段に示す本実施形態のタッチパネル3および図8のタッチパネルにおける、静電容量測定ライン上に、指先よりも小さなペン等の被測定物が移動した場合の静電容量値の変化を示している。
【0051】
なお、図4において、「本発明」は、図1のタッチパネル3を示し、「従来」は、図8のタッチパネルを示すものとする。また、図4に示すように、「本発明」と「従来」との電極のピッチは、略同一である。
【0052】
図4の上段に示す従来のタッチパネルにおいて、破線で示す静電容量測定ライン上を左から右へ、すなわち、第1電極101の左から右へ、ペン等の被測定物を移動させた。その結果、静電容量値の変化は、図4の下段に示すような「従来」のグラフとなった。このグラフにおいて、実線は、図中左側の第1電極101で測定された静電容量値の変化を示し、破線は、図中右側の第1電極101で測定された静電容量値の変化を示している。
【0053】
このグラフにおいて、平坦な領域では、被測定物がどこに存在していても(どこに移動しても)静電容量値が変化しない。このため、被測定物の位置を特定することができない。つまり、グラフが平坦な領域は、静電容量値を測定しても、被測定物によるタッチ位置の検出が困難な領域である。
【0054】
一方、このグラフにおいて、傾斜した領域では、被測定物の移動に伴い、静電容量値が変化しているため、被測定物の位置を特定することができる。つまり、グラフが傾斜した領域は、被測定物によるタッチ位置の検出が可能な領域である。
【0055】
これに対し、図4の上段に示す本発明のタッチパネル3においても同様に、実線で示す静電容量測定ライン上を左から右へ、すなわち、第1電極31Aの左から右へ、ペン等の被測定物を移動させた。その結果、静電容量値の変化は、図4の下段に示すような「本発明」のグラフとなった。このグラフにおいて、実線は、図中左側の第1電極31Aで測定された静電容量値の変化を示し、破線は、図中右側の第1電極31Aで測定された静電容量値の変化を示している。
【0056】
「本発明」のグラフにおいても、静電容量値が変化しない平坦な領域と、静電容量値が変化する傾斜した領域とが存在する。つまり、静電容量値の測定によって、被測定物の位置を特定できない領域と、特定できる領域とが存在する。しかし、「本発明」のグラフは、「従来」のグラフと比べて、以下の特徴的な挙動を示した。
・グラフの傾きが緩やかである。
・静電容量値の変化量が小さい。
・静電容量値が変化しない領域が狭く(グラフの平坦な領域が小さく)なっている。
【0057】
このように、第1電極31Aの延材部31cと、第2電極32Aの延材部32cとを互い違いに配置した場合、特に、静電容量値の変化しない領域が狭くなる。つまり、被測定物の位置を特定できない領域が縮小される。従って、従来の電極(第1電極101,第2電極102)と同一ピッチで、タッチパネルの位置検出精度を向上することができる。つまり、ピッチの縮小に伴う端子数および回路数の増加を伴うことなく、タッチパネル3の空間解像度を高めることができる。また、「本発明」のグラフから、基部31bの面積が狭いほど、グラフの平坦な領域が小さくなり、タッチパネルの位置検出精度がより向上することがわかる。
【0058】
なお、図4では、第1電極31Aの左から右へ、ペン等の被測定物を移動させた。しかし、第1電極31Aの右から左へ被測定物を移動させた場合も、第2電極32Aを上下に移動させた場合も、タッチパネルの位置検出精度が向上する。
【0059】
以上のように、本実施形態のタッチパネル3は、タッチパネル3のタッチ位置を検出するために、複数の第1電極31Aからなる第1電極群31と、複数の第2電極32Aからなる第2電極群32とを備えている。しかも、第1電極31Aおよび第2電極32Aは、それぞれ、基部31b,32bと、基部31b,32bから延びた複数の延在部31c,32cとを有し、第1電極31Aの延在部31cと、第2電極32Aの延在部32cとが、互い違いに(交互に)に配置されている。
【0060】
これにより、第1電極31Aおよび第2電極32Aの各延材部31c,32cが、入り組んで配置される。その結果、第1電極31Aおよび第2電極32Aにより検出される静電容量値は、従来のタッチパネルよりも緩やかに変化する。さらに、静電容量値の変化量も、従来のタッチパネルよりも小さくなる。そして、特に、静電容量値の変化のない領域が、従来のタッチパネルよりも狭くなる。これにより、タッチパネル3の位置検出精度が向上する。従って、指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできるタッチパネル3を提供することができる。
【0061】
なお、第1電極31Aおよび第2電極32Aの各延材部31c,32cが、入り組んだ部分が多いほど、キャパシタが変化する面積(静電容量の変化が大きくなる領域)が増える。従って、タッチ位置をより高精度に検出することができる。
【0062】
また、タッチパネル3では、第1電極群31と第2電極群32とが、同一平面上に配置される。これにより、タッチ入力面と、第1電極群31および第2電極群32とが、より近接して設けられる。従って、タッチパネル3の薄型化が可能となると共に、タッチ操作による静電容量の変化をより高感度で検出することが可能となる。
【0063】
なお、第1電極群31と第2電極群32とは、同一平面上に配置されることに限定されない。例えば、第1電極群31と第2電極群32とは、タッチ入力面から一定距離を有する互いに異なる2つの面(第1の面,第2の面)に配置されていてもよい。つまり、第1電極群31が、第2電極群32よりも、タッチ入力面の近くに配置された、2層構造となっていてもよい。この場合も、各延材部31c,32cが、入り組んで配置されるため、タッチパネル3の位置検出精度が向上する。また、第1電極群31と第2電極群32との干渉を確実に避けることができる。
【0064】
一方、本実施形態のタッチパネル3のように、第1電極群31と第2電極群32とが同一平面上に設けられていれば、タッチパネル3の薄型化に伴い、タッチパネルシステム1、および、タッチパネルシステム1を備えた各種電子機器の薄型化も実現することができる。
【0065】
また、タッチパネル3では、第1電極31Aおよび第2電極32Aは、透明電極であることが好ましい。この構成では、第1電極31Aおよび第2電極32Aが、透明電極であるため、タッチパネルの下方の状態を透視することができる。
【0066】
また、タッチパネル3では、第1電極31Aおよび第2電極32Aの各延在部31c,32cは、基部31b,32bから櫛歯状に並んでいる。すなわち、第1電極31Aおよび第2電極32Aが、櫛歯状に形成された複数の延在部31c,32cを備えており、第1電極31Aの櫛歯(延在部31c)と、第2電極32Aの櫛歯(延在部32c)とが交互に配置される。従って、スペースを有効に活用して、各電極31A,32Aの延在部31c,32cを、確実かつ容易に交互に配置することができる。
【0067】
また、タッチパネル3では、第1電極31Aおよび第2電極32Aの各基部31b,32bの外形が、四辺形となっている。従って、第1電極31Aおよび第2電極32Aの形状を簡素化することができる。なお、第1電極31Aおよび第2電極32Aの両基部31b,32bを四辺形とする場合、第1電極31Aおよび第2電極32Aの少なくとも一方の基部31bまたは32bを四辺形とすればよい。また、第1電極31Aおよび第2電極32Aの両基部31b,32bの外形は、四辺形に限定されるものではなく、円形等種々の形状とすることができる。
【0068】
また、タッチパネル3において、第1電極31Aおよび第2電極32Aの形状(延在部31c,32cの形状)は、上述のような櫛歯状に限定されるものではない。図5は、本発明に係るタッチパネル3における第1電極31Aおよび第2電極32Aの別の形状を示す模式図である。図6は、図5の第1電極31A’の基本単位を示す模式図である。図7は、本発明に係るタッチパネル3における別の第1電極31A’’の基本単位を示す模式図である。
【0069】
具体的には、図5に示す第1電極31A’は、図6に示すような基本電極31a’が、複数連なった構成である。図5に示す第2電極32A’も、基本電極31a’と略同形状である。より詳細には、図6に示すように、基本電極31a’は、四辺形の基部31bと、基部31bの各辺の一方の頂点から各辺を延長する方向に(直線状に)延びている4つの延在部31c’とを備えている。基部31bの中央には、接続端子31d’が形成されている。各延在部31c’は、基部31bの各辺から垂直に延びていればよく、基部31bの頂点から延在することに限定されない。さらに、各延在部31c’の先端部は、延在部31c’の基部31b側の端部よりも太くなっている。言い換えれば、延在部31c’は、先端部が折れ曲がった形状となっている。このように、基本電極31a’の外形は、手裏剣型であり、各延在部31c’は、基部31bの四辺の各辺に垂直に突起しているといえる。
【0070】
図5に示すように、第1電極31A’は、図6の基本電極31a’が、X軸方向に複数連なった構成である。第2電極32A’も、基本電極31a’とほほ同一の基本電極がY軸方向に複数連なった構成である。ただし、第2電極32A’では、基部32bではなく、延在部32c’の先端部に端子(図示せず)が形成されている。
【0071】
さらに、第1電極31A’は、隣り合う基本電極(図6参照)における接続端子31d’・31d’同士が、配線34によって接続される。同様に、第2電極32A’は、隣り合う基本電極における延在部32c’の先端部に形成された接続端子(図示せず)同士が、配線35によって接続される。配線34と配線35とは、互いに干渉しないようになっている。つまり、配線35は、配線34を避けて、第2電極32A’の接続端子に引き回されている。
【0072】
しかも、図5に示すように、第1電極31A’および第2電極32A’は、タッチパネル3を上方(タッチ入力面側)から見たとき、第1電極31A’の延材部31c’と、第2電極32A’の延材部32c’とは、互い違いに配置されている。言い換えれば、第1電極31A’,第2電極32A’は、単純な平面形状ではなく、入り組んだ凹凸状の電極パターンとなっている。
【0073】
図5に示すような第1電極31A’および第2電極32A’を備えたタッチパネル3においても、図4に示した効果と同様の効果が得られる。すなわち、特に、静電容量値の変化のない領域が、従来のタッチパネルよりも狭くなる。これにより、タッチパネル3の位置検出精度が向上する。従って、指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできるタッチパネル3を提供することができる。
【0074】
一方、図6に示す基本電極31a’は、図7に示す基本電極31a’’のような構成であってもよい。すなわち、図7の基本電極31a’’は、基本電極31a’と、延在部31c’の形状が異なる。具体的には、基本電極31a’’では、延在部31c’の太さが均一である。つまり、図7の基本電極31a’’では、延在部31c’の先端部は、図6の基本電極31a’の先端部が太くなっていない。このように、基本電極31a’’の外形は、風車型であり、各延在部31c’は、基部31bの四辺の各辺に垂直に突起しているといえる。このような基本電極31a’’が連なった第1電極および第2電極を備えたタッチパネル3においても、図4に示した効果と同様の効果が得られる。すなわち、特に、静電容量値の変化のない領域が、従来のタッチパネルよりも狭くなる。これにより、タッチパネル3の位置検出精度が向上する。従って、指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできるタッチパネル3を提供することができる。
【0075】
また、図5〜図7に示すような構成の場合、スペースを有効に活用して、各電極の延在部31c’,32c’を互い違いに(交互に)に配置することができる。
【0076】
本実施形態のタッチパネルシステム1は、タッチパネル3が、表示装置2の前面に設けられている。従って、指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできるタッチパネルシステム1を提供することができる。
【0077】
また、本実施形態では、投影型静電容量方式のタッチパネル3を備えたタッチパネルシステム1について説明した。しかし、タッチパネル3の動作原理(センサの動作方式)は、投影型静電容量方式に限定されるものではない。例えば、表面型静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線方式、超音波方式、または電磁誘導結合方式のタッチパネルを備えたタッチパネルシステムも、同様に、タッチパネルの位置検出精度を向上することができる。また、表示装置2の種類も問わずに、タッチパネルの位置検出精度を向上することができる。
【0078】
本実施形態のタッチパネルシステム1は、タッチパネル式の各種電子機器に適用することができる。電子機器としては、図示しないが、例えば、テレビ、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、携帯ゲーム機、電子フォトフレーム、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)、電子ブック、家電製品(電子レンジ,洗濯機等)、券売機、ATM(Automated Teller Machine)、カーナビゲーション等を挙げることができる。これにより、指先より小さな物体による入力であっても、タッチ位置を高精度に検出することのできる電子機器を提供することができる。
【0079】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。すなわち、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が本発明の範囲に含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、テレビ、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、携帯ゲーム機、電子フォトフレーム、携帯情報端末、電子ブック、家電製品、券売機、ATM、カーナビゲーション等、タッチパネル式の各種電子機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 タッチパネルシステム
2 表示装置
3 タッチパネル
31 第1電極群
31A 第1電極
31b 基部(第1電極の基部)
31c 延在部(第1電極の延在部)
32 第2電極群
32A 第2電極
31b 基部(第2電極の基部)
31c 延在部(第2電極の延在部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ操作を行うタッチ入力面から一定の距離を有する第1の面に、互いに平行な複数の第1電極からなる第1電極群と、
タッチ操作を行うタッチ入力面から一定の距離を有する第2の面に、第1電極に対して垂直に設けられた複数の第2電極からなる第2電極群とを備え、
第1電極および第2電極は、それぞれ、基部と、基部から延びた複数の延在部とを有しており、
第1電極および第2電極は、タッチ入力面と対向する面において、第1電極の延在部と、第2電極の延在部とが、互い違いに配置されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
第1の面と第2の面とが、同一面であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
第1電極および第2電極の各延在部は、基部から櫛歯状に並んでいることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
第1電極および第2電極の少なくとも一方の基部の外形が、四辺形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項5】
上記延在部は、上記基部の各辺から垂直に延びていることを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル。
【請求項6】
上記延在部の先端部は、上記延在部の基部側の端部よりも太くなっていることを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
投影型静電容量方式のタッチパネルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項8】
第1電極および第2電極が、透明電極であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のタッチパネルと、表示装置とを備えたタッチパネルシステムにおいて、上記タッチパネルが、表示装置の前面に設けられていることを特徴とするタッチパネルシステム。
【請求項10】
上記表示装置は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、または有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイであることを特徴とする請求項9に記載のタッチパネルシステム。
【請求項11】
請求項9または10に記載のタッチパネルシステムを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−221426(P2012−221426A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89456(P2011−89456)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】