説明

タッチパネル及びそのタッチパネルを利用する携帯機器

【課題】ニュートンリングの発生を防止し、視認性を改善できるタッチパネル及びそのタッチパネルを利用する携帯機器を提供する。
【解決手段】一方の面に上部透明電極5を有する上部透明電極基材1と、前記上部透明電極5が配置された面に対向する面に下部透明電極6を有する下部透明電極基材2と、前記上部透明電極5と前記下部透明電極6との間に配置されかつ複数の感圧粒子を分散含有する絶縁性の透明接着層3とを備えて、前記上部透明電極基材1の他方の面に力が作用すると、作用する力で、前記透明接着層3内の前記感圧粒子間で電流が流れることにより前記上部透明電極5と前記下部透明電極6との間で導通が行われ、前記上部透明電極基材1の前記他方の面沿いの、前記力が作用した位置座標を検出するタッチパネルにおいて、前記上部透明電極5と前記絶縁性の透明接着層3との間に透明な液状の中間層4が形成されて、空気層を無くすように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、携帯ゲーム機、電子辞書、カーナビシステム、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯型MD(PMD)、その他の携帯機器に適用可能なタッチパネル及びそのタッチパネルを利用する携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルの上部透明電極基材と下部透明電極基材との間には、それぞれの内面に配置された透明電極同士が通常は接触して導通しないように、スペースで維持された空間が確保されている。押圧力が作用したときのみ、上部透明電極基材がたわんで、透明電極同士が接触して導通することにより、押圧力が作用した位置座標を検出するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2005/064451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上部透明電極基材の透明電極と空間との界面、及び、空間と下部透明電極基材の透明電極との界面で外部光が反射し、上部と下部との透明電極基材間にある空間のギャップ量に依ってはニュートンリングが発生しやすく、視認性に課題があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、界面での反射を抑制し、ニュートンリングの発生を防止し、視認性を改善できるタッチパネル及びそのタッチパネルを利用する携帯機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0007】
本発明の第1態様によれば、一方の面に上部透明電極を有する上部透明電極基材と、
前記上部透明電極が配置された面に対向する面に下部透明電極を有する下部透明電極基材と、
前記上部透明電極と前記下部透明電極との間に配置されかつ複数の感圧粒子を分散含有する絶縁性の透明接着層とを備えて、
前記上部透明電極基材の他方の面に力が作用すると、作用する力で、前記透明接着層内の前記感圧粒子間で電流が流れることにより前記上部透明電極と前記下部透明電極との間で導通が行われ、前記上部透明電極基材の前記他方の面沿いの、前記力が作用した位置座標を検出するタッチパネルにおいて、
前記上部透明電極と前記絶縁性の透明接着層との間に透明な液状の中間層が形成されたタッチパネルを提供する。
【0008】
本発明の第2態様によれば、前記中間層がシリコーン系またはフッ素系の不活性液体である、第1の態様に記載のタッチパネルを提供する。
【0009】
本発明の第3態様によれば、前記上部透明電極基材の他方の面に力が作用すると、作用する力により、前記透明接着層内の前記感圧粒子間で電流が流れることにより前記上部透明電極と前記下部透明電極との間での抵抗値が変化し、前記力の大きさの変化を検出するZ方向検出部をさらに備える、第1又は2の態様に記載のタッチパネルを提供する。
【0010】
本発明の第4態様によれば、前記上部透明電極と前記下部透明電極のそれぞれの周囲の外側でかつ前記上部透明電極と前記下部透明電極のそれぞれからの配線が配置されている額縁部に、レジスト層を前記上部透明電極基材と前記下部透明電極基材にそれぞれ配置し、前記上部透明電極基材側のレジスト層と前記下部透明電極基材側のレジスト層との間にも前記透明接着層が配置されている、第1〜3の態様のいずれかに記載のタッチパネルを提供する。
【0011】
本発明の第5態様によれば、第1〜4のいずれか1つの態様に記載の前記タッチパネル
と、
前記タッチパネルを支持する筐体と、
前記筐体内の前記タッチパネルの内側に配置される表示装置とを備える、携帯機器を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上部透明電極基材及び下部透明電極基材との間の隙間に感圧接着層としての透明接着層が充填されているため、上部透明電極基材と空気層、空気層と下部透明電極基材の2つの界面で発生する光の反射を抑制し、ニュートンリングの発生を防止することができて、視認性を向上させることができる。
【0013】
また、この透明接着層が充填されている構成において、上部透明電極と透明接着層との間に透明な液状の中間層が形成されているため、透明接着層上に上部透明電極基材を積層する際に生じる僅かの気泡(泡かみ)をほぼ完全に排除できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかるタッチパネルの断面図である。
【図2A】抵抗膜方式タッチパネルの面内のXY座標測定を示す図であって、電源からパネル駆動電圧をX端子とX端子とに印加し、Y端子からXの座標位置を読み取ることができることを示す図である。
【図2B】抵抗膜方式タッチパネルの圧力測定を示す図であって、電源からパネル駆動電圧をY端子とX端子とに印加し、Z位置をX端子から読み取り、Z位置をY端子から読み取ることができることを示す図である。
【図3】前記実施形態にかかる抵抗膜方式タッチパネルを組み込んだタッチウインドウ形式の携帯電話の分解斜視図である。
【図4】前記実施形態にかかる抵抗膜方式タッチパネルを組み込んだ前記タッチウインドウ形式の携帯電話の断面図である。
【図5】前記実施形態にかかる抵抗膜方式タッチパネルを組み込んだベゼル構造形式の携帯電話の断面図である。
【図6】前記実施形態にかかるタッチパネルの界面での反射を説明するための断面図である。
【図7】従来のタッチパネルの界面での反射を説明するための断面図である。
【図8】感圧センサを従来のタッチパネルに配置する場合の構造の例を示す断面図である。
【図9】前記実施形態にかかるタッチパネルの界面での反射を説明するための断面図である。
【図10】前記実施形態にかかるタッチパネルの製造における気泡除去工程の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
本発明の第1の実施形態にかかるタッチパネル15は、図1に示すように、上部透明電極基材1と、下部透明電極基材2と、透明接着層3と、中間層4と、透明基板9とを主として備えるように構成されている。一例として、四角形のタッチパネル15について説明する。
【0017】
上部透明電極基材1は、一方の面(例えば図1の上部透明電極基材1の下面)の透明窓部12内の所定位置に上部透明電極5を有する四角形のフィルムで構成されている。上部透明電極基材1は、透明であり、上部透明電極5を支持し、通常のタッチパネルの透明電極基材と同等の電気特性(直線性など)を有しているとともに、上部透明電極基材1の他方の面(例えば図1の上部透明電極基材1の上面)に作用する力を下方の透明接着層3に伝達できる機能があればよい。このため、上部透明電極基材1としては、可撓性は必ずしも必要とはしない。なお、従来のタッチパネルでは、空気層で潰れないようにある程度の強度が電極基材(フィルム)に必要であるが、本実施形態では空気層を透明接着層3で埋め、それでも残る僅かな気泡(泡かみ)を中間層4によって排除できるため、従来よりも薄型のフィルムを採用することが可能となっている。
【0018】
上部透明電極基材1の一例として、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリエーテルケトン系等のエンジニアリングプラスチック、アクリル系、ポリエチレンテレフタレート系、又は、ポリブチレンテレフタレート系などの樹脂フィルムなどを用いることができる。また、上部透明電極基材1の周囲であってかつ透明窓部12を囲む四角形枠状の額縁部11でかつ上部透明電極5の周囲の前記一方の面(例えば図1の上部透明電極基材1の下面)には、銀などで印刷などにより形成されかつ上部透明電極5と接続された上側引き回し電極5aが配置されている。額縁部11の内側は、タッチパネル15の入力部である透明窓部12を構成している。上側引き回し電極5aは、接続用端子部を除き、上部透明電極基材1に固定された底面を除く他の面は、絶縁性のレジスト層8で覆われており、上側引き回し電極5aと透明接着層3内の感圧粒子7とが額縁部11で導電しないように絶縁している。これは、透明窓部12で入力しようとして、額縁部11を意図せずに操作者が誤って押したときに、額縁部11で通電しないようにするためである。
【0019】
下部透明電極基材2は、前記上部透明電極5が透明窓部12内の所定位置に配置された面に対向する面(例えば図1の下部透明電極基材2の上面)に下部透明電極6を有する四角形のフィルムで構成されている。下部透明電極基材2は、透明であり、下部透明電極6を支持し、通常のタッチパネルの透明電極基材と同等の電気特性(直線性など)を有している。下部透明電極基材2の周囲の四角形枠状の額縁部11でかつ下部透明電極6の周囲の前記上部透明電極配置面対向面(例えば図1の下部透明電極基材2の上面)には、銀などで印刷などにより形成されかつ下部透明電極6と接続された下側引き回し電極6aが配置されている。下側引き回し電極6aは、接続用端子部を除き、下部透明電極基材2に固定された底面を除く他の面は、絶縁性のレジスト層8で覆われており、下側引き回し電極6aと透明接着層3内の感圧粒子7とが額縁部11で導電しないように絶縁している。これは、透明窓部12で入力しようとして、額縁部11を意図せずに操作者が誤って押したときに、額縁部11で通電しないようにするためである。下部透明電極基材2の一例として、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリエーテルケトン系等のエンジニアリングプラスチック、アクリル系、ポリエチレンテレフタレート系、又は、ポリブチレンテレフタレート系などの樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0020】
なお、上部透明電極5及び下部透明電極6の材質の例としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、若しくはITO等の金属酸化物や、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミニウム、若しくはパラジウム等の金属や導電性ポリマーの薄膜が使用できる。
【0021】
下部透明電極基材2の下面には、上部透明電極基材1と下部透明電極基材2となどを支持する透明基板9が配置されている。透明基板9は、通常のタッチパネルの透明基板と同等の機能(曲げ剛性、光学特性など)を有しており、例えば、ガラス、ポリカーボネート、又は、アクリルなどで構成することができて、厚みは一例として0.55〜1.1mm程度とすればよい。
【0022】
透明接着層3は、少なくとも、タッチパネル15の入力部である透明窓部12には、すべて、均一な厚さで配置されている。一例としては、図1に示すように、上部透明電極基材1と下部透明電極基材2との間の隙間を全て埋めるように配置されており、上部透明電極基材1と下部透明電極基材2とを接着して一体化している。
【0023】
透明接着層3は、絶縁性の基材部3a内に、分散された多数の電気導電性の感圧粒子7を含有する。透明接着層3の基材部3aの材料としては、無色透明で絶縁性を有し、上部透明電極5及び下部透明電極6との密着性が良く、上部透明電極5及び下部透明電極6に対して侵食せず、かつ、熱圧着前と熱圧着時に粘着性を発揮し、熱圧着後は常温で粘着性が無い固体であり、弾性はほぼ不要である。また、透明接着層3は、必ずしも、熱硬化性に限定されるものではなく、後述するように、紫外線硬化性など非熱硬化性の糊材も使用することができる。
【0024】
例えば、透明接着層3の基材部3aの厚さは、感圧粒子7間でトンネル電流が流れる厚さであって、数十μm(例えば、40μm〜80μm)で、例えば、スクリーン印刷で形成するのが好ましい。透明接着層3の厚さは、製造可能な見地から40μm以上であり、トンネル電流が効果的に確実に流れる見地から80μmまでとするのが好ましい。ここで、トンネル電流とは、導電性の粒子が直接的には接触してはいないが、ナノメートルオーダーで非常に近接している場合において、導電性の粒子間における電子の存在確率密度がゼロでないために、電子が染み出して電流が流れることを意味するものであり、量子力学でトンネル効果として説明される現象である。感圧粒子7が透明な場合には視認性に問題はないが、感圧粒子7が不透明な場合には、視認性に影響を与えない程度に粒子を細かくして、基材部3a中に拡散させる必要がある。透明接着層3の基材部3aの具体的な材料の例としては、透明電極面に対して透明接着層3の材料が撥かれず(透明電極面に対して透明接着層3を配置するとき、濡れ性が悪く、透明接着層3の材料を透明電極面に塗布しても上手く濡れない状態とならず)、透明電極5,6を浸食しない無色透明の糊(接着剤)、すなわち、溶剤系の糊材であり、例えば、加熱したときに圧着可能なヒートシール用の糊、熱硬化性又は紫外線硬化性の額縁用の接着糊など、タッチパネル15の端からにじみ出たり、はみ出たりすることがない、すなわち、端部の糊のベト付きが小さい(タック感がない)接着層が好ましい。具体的には、このような糊材としては、ビックテクノス又はダイアボンドなどの会社から市販されている溶剤系の糊材が適用できる。
【0025】
感圧粒子7としては、それ自体は変形せず、通電可能な導電性を有し、後述する量子トンネル効果が期待できるものであればよく、粒径は印刷に適した粒径であればよい。一例として、スクリーン印刷であれば、メッシュを抵抗なく通過できる粒径であればよい。感圧粒子7の具体的な材料の例としては、後述するQTCが挙げられる。感圧粒子7は、基材部3a内に、視認性に影響を与えず、通電可能な範囲で分散されている。
【0026】
透明接着層3は、一例として、圧力の印加に伴って、透明接着層3の内部に多数含まれる導電性の粒子である感圧粒子7間であって、近接している複数の感圧粒子7間で、直接的な接触の有無とは関係なく、トンネル電流が流れて、透明接着層3は絶縁状態から通電状態に変化するものである。そのような透明接着層3を構成する組成物の一例は、英国、ダーリントン(Darlington)のペラテック社(PERATECH LTD)から商品名「QTC」で入手可能な量子トンネル性複合材(Quantum Tunneling Composite)である。
【0027】
中間層4は、少なくとも、タッチパネル15の入力部である透明窓部12には、ほぼ均一は厚さで配置されている。一例としては、図1に示すように、上部透明電極5と透明接着層3との間の隙間を全て埋めるように配置されており、透明接着層3上に上部透明電極基材1を積層する際に生じる僅かの気泡(泡かみ)22が形成されるのを防止する役割を果たしている。なお、上部透明電極基材1及び下部透明電極基材2との接着のために、透明窓部12を囲む額縁部11には中間層4が形成されない枠形状の領域を設けることが必要である。
【0028】
中間層4は、導電性または非導電性のいずれであってもよいが、液状である必要がある。液状であれば形状の自由度が高いため、上部透明電極基材1を積層する際(図9参照)に気泡(泡かみ)22が発生し難く、又仮に発生しても上部透明電極基材1の上から滑らすように押圧することにより容易に気泡(泡かみ)22を移動させて透明窓部12の内側より除去できるからである(図10参照)。さらに詳しく説明すると、上部透明電極基材1を積層する際の気泡(泡かみ)の発生は、透明接着層3の形状の自由度の低さが原因である。すなわち、前述したように透明接着層3はタッチパネル15の端からにじみ出たり、はみ出たりすることがないものであるから形状の自由度が低く、下部透明電極基材2上に全面形成されたときに当該透明接着層3の上面において十分な平滑性が得られない。その結果、中間層4が存在しない場合には、上部透明電極基材1を積層する際に気泡(泡かみ)が発生するのである。しかも発生した気泡(泡かみ)22は、透明接着層3の形状の自由度が低くかつ透明接着層3が上部透明電極基材1と全面接着するため、移動させて透明窓部12の内側より除去するのが難しい。なお、本明細書おいて液状とはゲル状をも含むものである。
【0029】
また、中間層4が液状であれば僅かの押圧力でも中間層4が動くので、上部透明電極基材1の他方の面(例えば図1の上部透明電極基材1の上面)から指又はペンなどにより力を作用させた際、該作用させた力をほぼそのまま透明接着層3に伝えることができるからである。すなわち、前記上部透明電極基材1の他方の面(例えば図1の上部透明電極基材1の上面)に指又はペンなどからの力が作用すると、作用する力が上部透明電極基材1を厚み方向に貫通して透明接着層3に伝わり、前記透明接着層3内の前記複数の感圧粒子7間でトンネル効果が生じて、複数の感圧粒子7間でトンネル電流が流れて、前記上部透明電極5と前記下部透明電極6との間で導通し、タッチパネル15の厚さ方向(Z方向)に作用する押圧力の変化を抵抗値の変化として(電圧の変化に換算して)XY方向座標検出部20で検出することができ、前記上部透明電極基材1の前記上面において前記力が作用した位置座標(XY座標)を検出することができる。なお、上記したように僅かの押圧力でも中間層4が動くので、押圧点直下の中間層4が存在しないかあるいは薄くなるため、中間層4が非導電性であっても抵抗値の変化を検出できる。
【0030】
中間層4の厚さは、1μm〜1000μmくらいで、塗装やインクジェットなどで透明接着層3上に形成するとよい(図9参照)。中間層4の厚さは製造可能な見地から1μm以上であり、中間層4により気泡(泡かみ)が移動して外部に除去でき、かつ僅かの押圧力で中間層4が動いて作用させた力をほぼそのまま透明接着層3に伝えることができる見地から1000μmまでにするのが好ましい。
【0031】
中間層4の例としては、シリコーン系またはフッ素系の不活性液体が挙げられる。例えば3M社のフッ素系の不活性液体(商品名「フロリナート」や「ノベック」)、信越シリコーン社のシリコンオイル(商品名「KF」や「HIVAC」)などは市販で入手可能な材料である。
【0032】
XY方向座標検出部20は、上部透明電極基材1の上面に力が作用すると、中間層4を貫通して作用する力で、透明接着層3内の感圧粒子7間で電流が流れることにより上部透明電極5と下部透明電極6との間で導通が行われ、上部透明電極基材1の上面沿いの、力が作用した位置座標(XY位置座標)を検出することができる。具体的には、XY方向座標検出部20は、上部透明電極5と前記下部透明電極6とにそれぞれ接続され、電源から電圧を上部透明電極5の端子間に印加した状態で、上部透明電極5の一方の端子と下部透明電極6の1つの端子間での電圧の変化を検出して、X方向の位置座標を検出することができる。次いで、XY方向座標検出部20は、上部透明電極5の端子間への電圧の印加を停止したのち、電源から電圧を下部透明電極6の端子間に切り替えて印加した状態で、下部透明電極6の一方の端子と上部透明電極5の1つの端子間での電圧の変化を検出して、Y方向の位置座標を検出することができる。
【0033】
なお、前記電圧を上部透明電極5に印加した状態で、X方向の位置座標を検出したのち、前記電圧を下部透明電極6に印加した状態で、Y方向の位置座標を検出しているが、これに限られるものではなく、前記電圧を上部透明電極5に印加した状態で、Y方向の位置座標を検出したのち、前記電圧を下部透明電極6に印加した状態で、X方向の位置座標を検出するようにしてもよい。
【0034】
一方、Z方向の位置検出はZ方向位置検出部21で行う。すなわち、Z方向位置検出部21は、上部透明電極基材1の上面に力が作用すると、中間層4を貫通して作用する力により、透明接着層3内の感圧粒子7間で電流が流れることにより上部透明電極5と下部透明電極6との間での抵抗値が変化し、力の大きさの変化を検出することができる。
【0035】
より具体的には、Z方向位置検出部21は、以下のようにして、力の大きさの変化の検出を行うことができる(テキサス・インスツルメンツのHPの「タッチ・スクリーン・システムのアナログ入力雑音を低減する方法」参照)。
【0036】
すなわち、前記タッチパネル15が抵抗膜方式タッチパネルであるとき、一般に、その圧力は、図2AのポイントA〜B間の抵抗値Rに反比例する。抵抗値Rは、式(1)で求められる。
【0037】
=(VB−VA)/ITOUCH ......(1)
ここで、
VA= VD×Z/Q
VB= VD×Z/Q
とZはそれぞれ測定されたZ位置とZ位置、Qは座標検出制御回路(検出した電圧値をA(アナログ)/D(デジタル)変換してデジタル座標にする回路で構成されるA/Dコンバータ)の分解能である。例として、分解能が12bitであれば、解像度は4096(0もカウントするため、Q=4095になる。)、X座標の範囲(X=Z)とY座標の範囲(Y=Z)は0〜4095になる(実際には、タッチパネルの引き回し回路及び制御系の回路で若干の電圧を消費するため、もう少し範囲は狭くなる)。例えば、座標検出制御回路の分解能が8ビットの場合はQ=256であり、10ビットの場合はQ=1024であり、12ビットの場合はQ=4096である。図2Bのように座標検出制御回路又は電源(VDD)21vから駆動電圧がY端子とX端子との間に所定の電圧が印加された場合に、X端子とX端子との間の抵抗値をRとすると、ポイントAとX間の抵抗値が
XA= R×X/Q
であるため、
TOUCH=V/RXA=(V×Z/Q)/RXA
となる。
【0038】
ここで、図2Aは抵抗膜方式タッチパネルのXY座標測定を、図2Bは抵抗膜方式タッチパネルの押圧力測定を示す図である。図2Aでは、電源21vからパネル駆動電圧をX端子とX端子とに印加し、Y端子からXの座標位置を読み取ることができる。図2Bでは、電源21vからパネル駆動電圧をY端子とX端子とに印加し、Z位置をX端子から読み取り、Z位置をY端子から読み取ることができる。
【0039】
図2Aに示すように、Xは座標検出制御回路がXの座標位置を検出しようとしている場合のX位置の測定値である。したがって、ITOUCHの式を式(1)に代入すると、式(2)が得られる。なお、ITOUCHとは図2Bの接続時にパネルを入力したときに流れる電流値であり、電流は直列経路で常に一定なことから、上記の計算式で求めることができる。
【0040】
={[V×(Z−Z)/Q]/[V×Z/Q]}×RXA=R×X
/Q[(Z/Z)−1] ......(2)
タッチパネルが指又はペンでタッチされていない場合は、タッチパネルのZ方向(厚さ方向)の抵抗値Rは無限に近くなる。タッチパネルに指又はペンなどからの力が作用すると、電流が流れ、タッチパネルに加えられた圧力(P)に反比例して、抵抗値が数百〜1kΩになります。つまり、タッチパネル上の圧力PはRの関数として表すことができ、次の式(3)で計算される。
【0041】
P=α−β×R ......(3)
ここで、αとβは正の実数値で、実験から取得する値である。
【0042】
上述の計算方式では、Z位置とZ位置(XY座標)とX端子とX端子との間の抵抗値をRとから、上下電極間のタッチ部の抵抗値を算出している。押圧と押面積が変化すれば、上下電極間のタッチ部の抵抗値が変化するため、押圧(と押面積の)相対的な変化を検出することができる。
【0043】
次に、前記タッチパネル15を組み込んだ携帯機器の一例としての携帯電話18,18Aについて説明する。
【0044】
図3及び図4は、抵抗膜方式タッチパネル15の表面層に、印刷によるデコレーション(加飾層16)を施して構成されているタッチウインドウ19を示している。筐体14の第1凹部14a内にタッチパネル15が嵌め込まれて、筐体14の第1凹部14aの周囲の外面とタッチパネル15の外面とが面一となるように配置されている。第1凹部14aの底面に形成された第2凹部14bには液晶又は有機ELなどのディスプレイ13が固定されており、タッチパネル15の透明窓部12を通してディスプレイ13の表示を見ることができる。17は引き回し電極5a,6aからの配線である。
【0045】
このような構成では、印刷によるデコレーション(加飾層16)が施されたタッチウインドウ19は、前記回路部が加飾層16で隠れてしまうため、表面に実装することができ、タッチパネル15と筐体14との間で段差のない、薄型でスタイリッシュなデザインを実現することができる。ベゼル構造から解放され、通常のタッチパネルでは実現できなかった薄型化が可能となっている。
【0046】
図5に示す別の構造では、引き回し電極5a,6aなどの回路部が見えないように、筐体4のベゼル24cで回路部を覆うようにしている。筐体24には、1つの大きな凹部24aを形成して、凹部24a内に、液晶又は有機ELなどのディスプレイ13とタッチパネル15とをはめ込み、タッチパネル15の引き回し電極5a,6aなどの回路部を筐体4のベゼル24cで覆うようにしている。
【0047】
前記実施形態によれば、以下のような効果を奏することかできる。
【0048】
上部透明電極基材1及び下部透明電極基材2との間の隙間に感圧接着層としての透明接着層3が充填されており、さらに上部透明電極5と透明接着層3との間に中間層4が形成されているため空気層が無く、界面(すなわち、上部透明電極基材1と空気層、空気層と下部透明電極機材2の2つの界面)で発生する光の反射を抑制し、ニュートンリングの発生を防止することができて、視認性を向上させることができる。
【0049】
具体的には、図6に示すように、一般に、空気との界面で大きく光が反射されるが、上部透明電極基材1の上面とタッチパネル15の外側の空気層との間での界面A、及び、基板9とタッチパネル15の外側の空気層との間での界面Bとの2つの層のみで、上部透明電極基材1の下面と隙間の空気層との間での界面C、及び、下部透明電極基材2の上面と隙間の空気層との間での界面Dとの2つの層が減ることで、反射率が例えば15〜20%程度、軽減される。これに対して、従来のタッチパネル30では、図7に示すように、上部透明電極基材31の上面とタッチパネル30の外側の空気層との間での界面Aと、上部透明電極基材31の下面と隙間33の空気層との間での界面Cと、下部透明電極基材32の上面と間33の空気層との間での界面Dと、基板39とタッチパネル30の外側の空気層との間での界面Bとの4つの層で反射が発生していた。また、上部透明電極と下部透明電極との間の空気層の隙間量が著しく小さくなると、ニュートンリングが発生してしまう。これらの影響で視認性が低下する原因となっていた。
【0050】
また、上部透明電極基材1及び下部透明電極基材2との間の隙間に感圧接着層としての透明接着層3が充填されており、さらに上部透明電極5と透明接着層3との間に中間層4が形成されているためタッチパネル自体の強度を向上させることができ、上部透明電極基材1を従来よりも薄く構成することができて、タッチパネル全体の厚さを小さくすることができる。例えば、従来は上部透明電極基材1に剛性をもたせるために下部透明電極基材2より厚くしていたのを、上部透明電極基材1の厚さを下部透明電極基材2の厚さと同じに構成することができる。言い換えれば、従来は、上部透明電極基材1及び下部透明電極基材2とはそれらの周囲の額縁用の粘着層でのみ保持されて上部透明電極基材1及び下部透明電極基材2との間に空間を維持して絶縁性を確保するため、上部透明電極基材1に剛性をもたせる必要があり、下部透明電極基材2よりも上部透明電極基材1を厚くする必要があった。しかしながら、本実施形態では、透明接着層3により前記空間を無くすことができて、上部透明電極基材1に剛性をもたせる必要がなくなり、上部透明電極基材1を例えば下部透明電極基材2と同じ厚さまで(又は、材質によっては、上部透明電極基材1を下部透明電極基材2よりも)薄くすることができるようになる。なお、上部透明電極5と下部透明電極6との間の絶縁性は、絶縁性の透明接着層3により確保することができるため、何ら問題は生じない。
【0051】
また、上部透明電極基材1及び下部透明電極基材2との間に、感圧接着層としての透明接着層3が隙間無く充填され、透明窓部12を囲む額縁部11に中間層4が形成されない枠形状の領域を有しているため、従来の枠形状の額縁用の粘着層は不要となり、位置合わせして貼り付ける工程を無くすことができる。
【0052】
また、上部透明電極基材1及び下部透明電極基材2との間の隙間に感圧接着層としての透明接着層3、さらに上部透明電極5と透明接着層3との間に中間層4が充填されているため、タッチパネル15が高温高湿な状態で使用されたとしても、空気層が無いため、上部透明電極基材1及び下部透明電極基材2との間で結露したり、曇ったりといった不具合は発生しない。
【0053】
また、上部透明電極基材1及び下部透明電極基材2との間の隙間に感圧接着層としての透明接着層3、さらに上部透明電極5と透明接着層3との間に中間層4が充填されているため、上部透明電極基材1はたわむ必要がなく、上部透明電極基材1が変形して電極同士が接触することにより通電するものではないため、上部透明電極層に入力に伴う局所的な応力が発生しなくなり上部透明電極基材1及び上部透明電極基材1に形成される上部透明電極5の耐久性に富むものとすることができる。
【0054】
また、作用する力を検出するために、タッチパネル15の外側、例えば、下側に感圧センサを新たに設ける必要がなく、タッチパネル15の厚みを小さく、コンパクトなものとすることができる。これに対して、従来、タッチパネルの内面側に感圧センサを配置することを考えた場合、図8に示すように、タッチパネル30の内面側に感圧センサ40を貼り重ねる構成となっているため、タッチパネル30の厚さに加えて感圧センサ40の厚さが加わり、全体としてタッチパネルの厚さが大きくならざるを得なかった。これに対して、本実施形態では、タッチパネル自体の構造内に感圧センサを配置することができて、部品点数が減ることで、コスト削減することができるとともに、通常のタッチパネルと一見類似する構成でありながら、XY座標検出だけでなく、感圧機能も備えることができ、非常にコンパクトでかつ高性能なタッチパネルを提供することができる。
【0055】
また、上部透明電極基材1と下部透明電極基材2との間には、透明接着層3が介在するため、従来のスペーサは不要となり、スペーサ形成工程が不要となりコスト削減が図れる。
【0056】
また、この透明接着層3が充填されている構成において、上部透明電極5と透明接着層3との間に透明な液状の中間層4が形成されているため、透明接着層3上に上部透明電極基材1を積層する際に生じる僅かの気泡(泡かみ)22をほぼ完全に排除できる。
【0057】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、透明接着層3は、単層に限らず、複数層で構成することも可能である。
【0058】
前記実施形態では、タッチパネル15として、抵抗膜方式について説明したが、これに限られるものではなく、静電容量タイプのタッチパネルにも適用できることは言うまでも無い。
【0059】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれ有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明にかかるタッチパネル及びそのタッチパネルを利用する携帯機器は、上部透明電極基材及び下部透明電極基材との間の隙間に感圧接着層としての透明接着層が充填されており、空気層が無いため、ニュートンリングの発生を防止することができて、視認性を向上させることができ、携帯電話、携帯ゲーム機、電子辞書、カーナビシステム、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、又は、携帯型MD(PMD)等として有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 上部透明電極基材
2 下部透明電極基材
3 透明接着層
3a 透明接着層の基材部
4 中間層
5 上部透明電極
5a 上側引き回し電極
6 下部透明電極
6a 下側引き回し電極
7 感圧粒子
8 レジスト層
9 基板
11 額縁部
12 透明窓部
14 筐体
14a 第1凹部
14b 第2凹部
15 タッチパネル
16 加飾層
17 配線
18,18A 携帯電話
19 タッチウインドウ
20 XY方向座標検出部
21 Z方向座標検出部
21v 電源
22 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に上部透明電極(5)を有する上部透明電極基材(1)と、
前記上部透明電極が配置された面に対向する面に下部透明電極(6)を有する下部透明
電極基材(2)と、
前記上部透明電極と前記下部透明電極との間に配置されかつ複数の感圧粒子(7)を分散含有する絶縁性の透明接着層(3)とを備えて、
前記上部透明電極基材の他方の面に力が作用すると、作用する力で、前記透明接着層内の前記感圧粒子間で電流が流れることにより前記上部透明電極と前記下部透明電極との間で導通が行われ、前記上部透明電極基材の前記他方の面沿いの、前記力が作用した位置座標を検出するタッチパネルにおいて、
前記上部透明電極(5)と前記絶縁性の透明接着層(3)との間に透明な液状の中間層(4)が形成されたタッチパネル。
【請求項2】
前記中間層(4)がシリコーン系またはフッ素系の不活性液体である、請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記上部透明電極基材の他方の面に力が作用すると、作用する力により、前記透明接着層内の前記感圧粒子間で電流が流れることにより前記上部透明電極と前記下部透明電極との間での抵抗値が変化し、前記力の大きさの変化を検出するZ方向検出部(21)をさらに備える、請求項1又は2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記上部透明電極と前記下部透明電極のそれぞれの周囲の外側でかつ前記上部透明電極と前記下部透明電極のそれぞれからの配線(5a,6a)が配置されている額縁部(11)に、レジスト層(8)を前記上部透明電極基材と前記下部透明電極基材にそれぞれ配置し、前記上部透明電極基材側のレジスト層と前記下部透明電極基材側のレジスト層との間にも前記透明接着層が配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の前記タッチパネルと、
前記タッチパネルを支持する筐体と、
前記筐体内の前記タッチパネルの内側に配置される表示装置とを備える、携帯機器。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−79228(P2012−79228A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225900(P2010−225900)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【特許番号】特許第4791591号(P4791591)
【特許公報発行日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】