説明

タッチパネル及び位置検出方法

【課題】複数の接触点を検出することのできるタッチパネルを提供する。
【解決手段】上部導電膜を有する上部電極基板と、下部導電膜を有する下部電極基板と、前記上部導電膜において第1の方向に電位分布を発生させるため、前記上部導電膜の前記第1の方向の両端に設けられた2つの電極と、前記下部導電膜において前記第1の方向と直交する第2の方向に電位分布を発生させるため、前記下部導電膜の前記第2の方向の両端に設けられた2つの電極と、前記上部導電膜における2つの電極のいずれかに接続される第1の抵抗部と、前記下部導電膜における2つの電極のいずれかに接続される第2の抵抗部と、前記下部電極基板または前記上部電極基板に接続されるフレキシブル基板と、を有し、前記第1の抵抗部は前記上部電極基板またはフレキシブル基板に形成されており、前記第2の抵抗部は前記下部電極基板またはフレキシブル基板に形成されていることを特徴とするタッチパネルを提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、ディスプレイに直接入力をすることが可能な入力デバイスであり、ディスプレイの前面に設置して使用される。このタッチパネルは、ディスプレイにより視覚的にとらえた情報に基づき、直接入力することができることから、様々な用途において普及している。
【0003】
このようなタッチパネルとしては、抵抗膜方式が広く知られている。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電膜が形成された上部電極基板及び下部電極基板において、各々の透明導電膜同士が対向するように設置し、上部電極基板の一点に力を加えることにより各々の透明導電膜同士が接触し、力の加えられた位置の位置検出を行うことができるものである。
【0004】
抵抗膜方式のタッチパネルは、4線式と5線式とに大別することができる。4線式は、上部電極基板又は下部電極基板のどちらか一方にX軸の電極が設けられており、他方にY軸の電極が設けられている。一方、5線式は、下部電極基板にX軸の電極及びY軸の電極がともに設けられており、上部電極基板は、電圧を検出するためのプローブとして機能するものである(例えば、特許文献1、2、3)。
【0005】
具体的に、図1及び図2に基づき4線式のタッチパネルについて説明する。図1は、4線式のタッチパネルの断面の概要図であり、図2は、4線式のタッチパネルの斜視図である。
【0006】
4線式のタッチパネルは、上部電極基板となる一方の面に透明導電膜30の形成されたフィルム10と、下部電極基板となる一方の面に透明導電膜40の形成されたガラス20からなり、透明導電膜30及び透明導電膜40が対向するようにスペーサ50を介し接続されて形成されている。このような4線式のタッチパネルはホストコンピュータ等と不図示のケーブルにより電気的に接続されている。
【0007】
また、上部電極基板となるフィルム10には、透明導電膜30の形成された面のX軸方向の両端に、Y軸方向に沿って電極31及び32が設けられており、下部電極基板となるガラス20には、透明導電膜40の形成された面のY軸方向の両端に、X軸方向に沿って電極41及び42が設けられている。
【0008】
このような構成の4線式のタッチパネルにおいて、タッチパネルに接触した位置を検出する場合について説明する。
【0009】
最初に、図3に示すように、上部電極基板における電極31と電極32とに電圧を印加する。具体的には、電極31を接地(0V)し、電極32にVcc、例えば、5Vを印加する。この状態で、タッチパネルにおけるA点においてタッチペン60等が接触している場合、上部電極基板における透明電極膜30と下部電極基板における透明電極膜40とはA点において接触する。透明電極膜30は、電極31及び電極32により、X軸方向に電位勾配が生ずるように電圧が印加されており、A点において、透明電極膜30と透明電極膜40とが接触するため、透明電極膜40より、A点における電位を検出することができる。この電位は、電極32と電極31において印加された電圧がA点において抵抗分割された値であり、透明電極膜40に設けられた電極41を介して電圧計70により検出される。この後、図4に示すように、電圧計70により計測された電圧Vaに基づき、A点におけるX座標の座標位置を検出することができる。
【0010】
次に、図5に示すように、下部電極基板における電極41と電極42に電圧を印加する。具体的には、電極41を接地(0V)し、電極42にVcc、例えば、5Vを印加する。上記と同様に、タッチパネルにおけるA点においてタッチペン60等が接触している場合、上部電極基板における透明電極膜30と下部電極基板における透明電極膜40とが、A点において接触する。透明電極膜40は、電極41及び電極42により、Y軸方向に電位勾配が生ずるように電圧が印加されており、A点において、透明電極膜30と透明電極膜40とが接触するため、透明電極膜30より、A点における電位を検出することができる。この電位は、電極41と電極42に印加された電圧がA点において抵抗分割された値であり、透明電極膜30に設けられた電極31を介して電圧計80により検出される。この後、図6に示すように、電圧計80により計測された電圧Vbに基づき、A点におけるY座標の座標位置を検出することができる。
【0011】
以上より、A点におけるX座標とY座標とを得ることができ、A点における二次元的な位置を知ることができる。
【0012】
このような4線式のタッチパネルでは、上部電極基板における透明電極膜30に電圧を印加し下部電極基板における透明電極膜40より電位を検出する動作と、下部電極基板における透明電極膜40に電圧を印加し上部電極基板における透明電極膜30より電位を検出する動作とを交互に繰り返し行うことにより、連続的に接触位置の検出を行うことが可能である。
【0013】
ところで、上述した4線式のタッチパネルでは、一点における接触位置は検出することは可能であるが、複数点が同時に接触した場合には位置検出をすることができない。
【0014】
即ち、図7に示すように、上部電極基板における電極31と電極32に電圧を印加した状態、例えば、電極31を接地(0V)し、電極32にVcc、例えば、5Vを印加した状態のタッチパネルにおいて、B点及びC点の2点においてタッチペン61及び62等が接触している場合、B点及びC点における各々の座標位置を検出することができない。
【0015】
このように、タッチパネルにおける接触点がB点及びC点の2点である場合、透明電極膜40においては、図8に示すようにB点とC点の2点の中点における電位Vxが検出される。従って、タッチパネルにおいては二点で接触している場合であっても、検出される電位は1つであり、一点で接触しているものとして座標位置が検出されるため、B点及びC点における二点の各々の座標位置を検出することができない。
【0016】
このため、特許文献4においては、透明電極膜30及び40に各々抵抗を接続することにより、マルチタッチの検出を行なうことのできるタッチパネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−272722号公報
【特許文献2】特開2008−293129号公報
【特許文献3】特開平11−353101号公報
【特許文献4】特開2009−176114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献4に開示されているタッチパネルでは、別途抵抗をタッチパネルの外に設ける必要があり、タッチパネルの大型化及びコスト上昇を招いてしまう。
【0019】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、タッチパネルの大型化及びコスト上昇を招くことなくマルチタッチによる検出を行なうことのできるタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上部導電膜を有する上部電極基板と、下部導電膜を有する下部電極基板と、前記上部導電膜において第1の方向に電位分布を発生させるため、前記上部導電膜の前記第1の方向の両端に設けられた2つの電極と、前記下部導電膜において前記第1の方向と直交する第2の方向に電位分布を発生させるため、前記下部導電膜の前記第2の方向の両端に設けられた2つの電極と、前記上部導電膜における2つの電極のいずれかに接続される第1の抵抗部と、前記下部導電膜における2つの電極のいずれかに接続される第2の抵抗部と、前記下部電極基板または前記上部電極基板に接続されるフレキシブル基板と、を有し、前記第1の抵抗部は前記上部電極基板またはフレキシブル基板に形成されており、前記第2の抵抗部は前記下部電極基板またはフレキシブル基板に形成されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上部導電膜を有する上部電極基板と、下部導電膜を有する下部電極基板と、前記上部導電膜において第1の方向に電位分布を発生させるため、前記上部導電膜の前記第1の方向の両端に設けられた2つの電極と、前記下部導電膜において前記第1の方向と直交する第2の方向に電位分布を発生させるため、前記下部導電膜の前記第2の方向の両端に設けられた2つの電極と、前記上部導電膜における2つの電極のいずれかに接続される第1の抵抗部と、前記下部導電膜における2つの電極のいずれかに接続される第2の抵抗部と、を有し、前記第1の抵抗部は前記上部電極基板に形成されており、前記第2の抵抗部は前記下部電極基板に形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記第1の抵抗部は、前記上部電極基板に抵抗ペーストを印刷することにより形成されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記第2の抵抗部は、前記下部電極基板に抵抗ペーストを印刷することにより形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記第1の抵抗部は、前記フレキシブル基板に搭載された抵抗チップであることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、前記第2の抵抗部は、前記フレキシブル基板に搭載された抵抗チップであることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、前記第1の抵抗部は、前記上部導電膜の一部により形成されていることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、前記第2の抵抗部は、前記下部導電膜の一部により形成されていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、前記第1の抵抗部は複数の第1の分割抵抗部に分割されており、前記複数の第1の分割抵抗部を直列または並列に接続したものであることを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、前記第2の抵抗部は複数の第2の分割抵抗部に分割されており、前記複数の第2の分割抵抗部を直列または並列に接続したものであることを特徴とする。
【0030】
また、本発明は、前記第1の抵抗部は、前記第1の抵抗部の周囲の上部導電膜を除去することにより形成されていることを特徴とする。
【0031】
また、本発明は、前記第2の抵抗部は、前記第2の抵抗部の周囲の上部導電膜を除去することにより形成されていることを特徴とする。
【0032】
また、本発明は、前記上部電極基板と前記下部電極基板は接着材料により接着することにより形成されているものであって、前記第1の抵抗部または前記第2の抵抗部の表面には、前記接着材料が形成されていないことを特徴とする。
【0033】
また、本発明は、前記第1の抵抗部または前記第2の抵抗部の表面には、ドットスペーサが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、タッチパネルの大型化及びコスト上昇を招くことなくマルチタッチによる検出を行なうことのできるタッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来の4線式のタッチパネルの断面概要図
【図2】従来の4線式のタッチパネルの斜視図
【図3】従来の4線式のタッチパネルにおけるX方向の座標検出方法の説明図
【図4】X方向における電位と接触位置との説明図
【図5】従来の4線式のタッチパネルにおけるY方向の座標検出方法の説明図
【図6】Y方向における電位と接触位置との説明図
【図7】従来の4線式のタッチパネルにおける二点接触の場合の説明図
【図8】二点接触の場合における電位と接触位置との説明図
【図9】第1の実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板の構造図
【図10】第1の実施の形態におけるタッチパネルの下部電極基板の構造図
【図11】第1の実施の形態におけるタッチパネルの説明図(1)
【図12】第1の実施の形態におけるタッチパネルの説明図(2)
【図13】第1の実施の形態におけるタッチパネルの抵抗部の説明図
【図14】第1の実施の形態におけるタッチパネルの他の抵抗部の説明図
【図15】第2の実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板の構造図
【図16】第2の実施の形態におけるタッチパネルの下部電極基板の構造図
【図17】第3の実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板の構造図
【図18】第3の実施の形態におけるタッチパネルの下部電極基板の構造図
【図19】第4の実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板の構造図
【図20】第4の実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板の抵抗部の説明図
【図21】第4の実施の形態におけるタッチパネルの下部電極基板の構造図
【図22】第4の実施の形態におけるタッチパネルの下部電極基板の抵抗部の説明図
【図23】第4の実施の形態におけるタッチパネルの下部電極基板の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態におけるタッチパネルについて説明する。図9から図12に示されるように、本実施の形態におけるタッチパネルは、上部電極基板110と下部電極基板120とを有している。上部電極基板110は、図9に示されるように、略長方形状の絶縁性を有するフィルム基板の一方の面にITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明導電膜130が設けられており、Y軸方向の両端のX軸方向に沿った辺の近傍には、各々金属等により形成された電極部131及び132が設けられており、電極部132には第1の抵抗部となる抵抗部133が接続されている。また、下部電極基板120は、図10に示されるように、上部電極基板110に対応した形状の略長方形状のガラス基板の一方の面にITO等からなる透明導電膜140が設けられており、X軸方向の両端のY軸方向に沿った辺の近傍には、各々金属等により形成された電極141及び142が設けられており、電極142には第2の抵抗部となる抵抗部143が接続されている。尚、透明導電膜130または透明導電膜140の表面には必要に応じて不図示のドットスペーサが形成されている。
【0038】
上部電極基板110と下部電極基板120とは透明導電膜130と透明導電膜140とが対向した状態で、上部電極基板110と下部電極基板120との外周部分を両面テープ、接着樹脂、糊等により張り合わされており、更に、外部と接続するためのフレキシブル基板160が設けられている。
【0039】
このような本実施の形態におけるタッチパネルにおいては、図11及び図12に示すように、X軸方向及びY軸方向において電位分布を発生させ、発生させた電位分布における電位を検出することにより、マルチタッチの操作の検出を行なうことができる。
【0040】
上部電極基板110を形成しているフィルム基板には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、耐熱性ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、環状ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、ポリアリレート、ポリプロピレン、耐熱性ナイロン等からなる材料が用いられる。
【0041】
また、下部電極基板120を形成しているガラス基板に代えてプラスチック基板を用いることも可能であり、プラスチック基板としては、ポリカーボネート、耐熱性ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、環状ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、ポリアリレート、ポリプロピレン、耐熱性ナイロン等からなる材料が用いられる。
【0042】
また、本実施の形態では透明導電膜130及び透明導電膜140は、ITOにより形成されたものについて説明しているが、ITO以外の材料としては、ZnO(酸化亜鉛)にAlまたはGa等が添加された材料、SnO(酸化スズ)にSb等が添加された材料等の透明であって導電性を有する材料を用いることができる。
【0043】
本実施の形態におけるタッチパネルでは、抵抗部133は上部電極基板110に設けられており、抵抗部143は下部電極基板120に設けられている。
【0044】
図9に示すように、上部電極基板110に設けられる抵抗部133は、上部電極基板110の抵抗部133の形成される領域の透明導電膜130を除去し、透明導電膜130が除去された領域にカーボンペースト(抵抗形成用カーボンペースト、尚、本願においては、抵抗ペーストと記載する場合がある。)等を用いて印刷することにより形成する方法、または、上部電極基板110の抵抗部133の形成される領域の透明導電膜130上に絶縁膜を形成し、この絶縁膜上にカーボンペースト等を印刷することにより形成する方法等により形成することができる。形成される抵抗部133の抵抗値は、電極131と電極132との間における透明導電膜130の抵抗値の約70%に相当する値のものである。抵抗部133の一方の端は電極132と引出線等を介し接続されており、他方の端はフレキシブル基板160と引出線等を介し接続されている。
【0045】
また、図10に示すように、下部電極基板120に設けられる抵抗部143は、下部電極基板120の抵抗部143の形成される領域の透明導電膜140を除去し、透明導電膜140が除去された領域にカーボンペースト等を用いて印刷することにより形成する方法、または、下部電極基板120の抵抗部143の形成される領域の透明導電膜140上に絶縁膜を形成し、この絶縁膜上にカーボンペースト等を印刷することにより形成する方法等により形成することができる。形成される抵抗部143の抵抗値は、電極141と電極142との間における透明導電膜140の抵抗値の約70%に相当する値のものである。抵抗部143の一方の端は電極142と引出線等を介し接続されており、他方の端はフレキシブル基板160と引出線等を介し接続されている。
【0046】
次に、本実施の形態におけるタッチパネルの製造方法について説明する。本実施の形態におけるタッチパネルの下部電極基板120は、透明導電膜140となるITO膜が形成されたガラス基板(厚さが約1.1mm)における外周部のITO膜をエッチングにより除去し、エッチングされなかった透明導電膜140上に不図示のドットスペーサをフォトレジストにより形成する。この後、銀ペーストを用いたスクリーン印刷により、透明導電膜140上に電極141及び142、引出線等を形成する。次に、図13に示すように、透明導電膜140の除去された領域に抵抗部143を形成する。具体的には、透明導電膜140の除去された領域にカーボンペーストを用いて印刷を行なった後、乾燥、焼成を行なうことにより形成する。形成される抵抗部143の抵抗値は430Ωであり、電極141と電極142との間における透明導電膜140の抵抗値が620Ωである。よって、抵抗部143の抵抗値は、電極141と電極142との間における透明導電膜140の抵抗値の約69%である。尚、抵抗部143は電極142と引出線等により電気的に接続されている。
【0047】
また、抵抗143の形成方法としては、図14に示すように、抵抗部143の形成される領域の透明導電膜140上に絶縁膜144をスパッタリング等の真空成膜または印刷等により形成し、形成された絶縁膜144上に抵抗部143を印刷等により形成する方法であってもよい。
【0048】
次に、本実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板110は、透明導電膜130となるITO膜が形成されたフィルム基板(厚さが約188μm)における外周部のITO膜をエッチングにより除去する。この後、銀ペーストを用いたスクリーン印刷により、透明導電膜130上に電極131及び132、引出線等を形成する。次に、透明導電膜130の除去された領域に抵抗部133を形成する。具体的には、透明導電膜130の除去された領域にカーボンペーストを用いた印刷を行なった後、乾燥、焼成を行なうことにより形成する。形成される抵抗部133の抵抗値は255Ωであり、電極131と電極132との間における透明導電膜130の抵抗値が380Ωである。よって、抵抗部133の抵抗値は、電極131と電極132との間における透明導電膜130の抵抗値の約67%である。尚、抵抗部133は電極132と引出線等により電気的に接続されている。
【0049】
また、抵抗133の形成方法としては、抵抗部133の形成される領域の透明導電膜130上に絶縁膜をスパッタリング等の真空成膜または印刷等により形成し、形成された絶縁膜上に抵抗部133を印刷等により形成する方法であってもよい。
【0050】
次に、上部電極基板110と下部電極基板120とを透明導電膜130と透明導電膜140とが対向するように不図示の両面テープにより貼り合わせ、電極131及び132、電極141及び142に接続される引出線とフレキシブル基板160とを熱圧着等により接続する。
【0051】
このように形成されたタッチパネルにタッチパネルの制御回路を接続し、多点同時入力における入力を確認したところ、拡大、縮小、回転等のマルチタッチ操作によるジェスチャー操作を正常に行なうことができ、円滑な操作を行なうことができた。
【0052】
また、熱衝撃試験(−40℃〜+85℃、各0.5時間、1000サイクル)を行なったところ、初期の特性をそのまま維持しており、高い信頼性を確認することができた。また、高温高湿保存試験(85℃85%RH、1000時間)を行なったところ、初期特性は維持され、異常等は見られなかった。
【0053】
本実施の形態では、抵抗部143はカーボンペーストを用いた印刷により形成した場合について説明したが、抵抗部143として抵抗チップ(400Ω)を用い、導電性接着剤により接続したものであってもよい。
【0054】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、フレキシブル基板に抵抗を設けた構造のものであり、これにより上部電極基板及び下部電極基板には抵抗を設ける必要がなくなる。従って、タッチパネルとして利用することのできる領域を広く確保することができ、また、上部電極基板及び下部電極基板は多点入力に対応していないものを用いることができるため、低コスト化が可能となる。
【0055】
図15及び図16に基づき本実施の形態におけるタッチパネルについて説明する。本実施の形態におけるタッチパネルは、上部電極基板210と下部電極基板220とを有している。上部電極基板210は略長方形状の絶縁性を有するフィルム基板の一方の面にITO等からなる透明導電膜130が設けられており、Y軸方向の両端のX軸方向に沿った辺の近傍には、各々金属等により形成された電極部131及び132が設けられている。下部電極基板220は上部電極基板210に対応した形状の略長方形状のガラス基板の一方の面にITO等からなる透明導電膜140が設けられており、X軸方向の両端のY軸方向に沿った辺の近傍には、各々金属等により形成された電極141及び142が設けられている。
【0056】
上部電極基板210と下部電極基板220とは透明導電膜130と透明導電膜140とが対向した状態で、上部電極基板210と下部電極基板220との外周部分を両面テープ、接着樹脂、糊等により張り合わされており、更に、外部と接続するためのフレキシブル基板260が設けられている。
【0057】
フレキシブル基板260には抵抗チップ261及び262が設けられている。抵抗チップ261は、上部電極基板210における電極132と電気的に接続されるように、フレキシブル基板260の所定の配線部分に設けられており、抵抗チップ262は、下部電極基板220における電極142と電気的に接続されるように、フレキシブル基板260の所定の配線部分に設けられている。
【0058】
本実施の形態におけるタッチパネルにおいても、第1の実施の形態におけるタッチパネルと同様に良好な特性を得ることができる。これにより、タッチパネルとして利用することのできる領域を広く確保することができ、更には、マルチタッチ機能を有するタッチパネルを低コストで作製することができる。
【0059】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上部電極基板及び下部電極基板に形成されている透明導電膜の一部により抵抗を形成したものである。
【0060】
図17及び図18に基づき本実施の形態におけるタッチパネルについて説明する。本実施の形態におけるタッチパネルは、上部電極基板310と下部電極基板320とを有している。尚、図17及び図18においては、引出し線等の記載は省略されている。
【0061】
上部電極基板310は略長方形状の絶縁性を有するフィルム基板の一方の面にITO等からなる透明導電膜330が設けられており、Y軸方向の両端のX軸方向に沿った辺の近傍には、各々金属等により形成された電極部331及び332が設けられている。また、電極332と電極334との間には、第1の抵抗部となる抵抗部333が設けられている。抵抗部333は上部電極基板310に形成された透明導電膜の一部により形成されており、抵抗部333が形成される領域の周囲の透明導電膜をエッチング等により除去することにより形成されている。尚、電極332と電極334との間に形成された抵抗部333は、第1の実施の形態における抵抗部133と同様の機能を有するものである。
【0062】
また、下部電極基板320は上部電極基板310に対応した形状の略長方形状のガラス基板の一方の面にITO等からなる透明導電膜340が設けられており、X軸方向の両端のY軸方向に沿った辺の近傍には、各々金属等により形成された電極341及び342が設けられている。また、電極342と電極344との間には、第2の抵抗部となる抵抗部343が設けられている。抵抗部343は下部電極基板320に形成された透明導電膜の一部により形成されており、抵抗部343が形成される領域の周囲の透明導電膜をエッチング等により除去することにより形成されている。尚、電極342と電極344との間に形成された抵抗部343は、第1の実施の形態における抵抗部143と同様の機能を有するものである。
【0063】
上部電極基板310と下部電極基板320とは透明導電膜330と透明導電膜340とが対向した状態で、上部電極基板310と下部電極基板320との外周部分を両面テープ、接着樹脂、糊等により張り合わされており、更に、外部と接続するための不図示のフレキシブル基板が設けられている。
【0064】
尚、抵抗部333は抵抗部333が形成される領域の周囲の透明導電膜をレーザアブレーション、ドライエッチング、ウエットエッチングにより除去することにより形成されている。同様に、抵抗部343は抵抗部343が形成される領域の周囲の透明導電膜をレーザアブレーション、ドライエッチング、ウエットエッチングにより除去することにより形成されている。
【0065】
本実施の形態では、抵抗部333及び抵抗部343は、透明導電膜330及び透明導電膜340と同じITO等により形成されているため、抵抗チップを搭載する必要がなく、また、スクリーン印刷等の工程を行なうことなく形成することができる。従って、マルチタッチ機能を有するタッチパネルを低コストで得ることができる。また、抵抗部333及び343は、透明導電膜330及び透明導電膜340と同じ材料により形成されているため、環境や経時変化により透明導電膜330及び透明導電膜340の特性が変化した場合には同様の傾向で変化する。即ち、環境や経時変化によっては、電極331と電極332の間における透明導電膜330の抵抗値と、抵抗部333の抵抗値との比は殆ど変化することはなく、また、電極341と電極342の間における透明導電膜340の抵抗値と、抵抗部343の抵抗値との比は殆ど変化することはない。従って、タッチパネルの設置されている環境や経時変化により検出精度等が大きく変わることはない。尚、抵抗部333または抵抗部343の表面には、必要に応じてフォトレジスト等により不図示のドットスペーサを形成してもよい。
【0066】
尚、透明導電膜330及び340は、第1の実施の形態における透明導電膜130及び140と同様のものであり、電極331、332、341及び342は、第1の実施の形態における電極131、132、141及び142と同様のものである。また、上記以外の内容については第1の実施の形態と同様である。
【0067】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第3の実施の形態における抵抗部を分割して形成したものであり、タッチパネルとして利用することのできる領域を広く確保することができるものである。
【0068】
図19から図22に基づき本実施の形態におけるタッチパネルについて説明する。本実施の形態におけるタッチパネルは、上部電極基板410と下部電極基板420とを有している。尚、図19及び図21においては、引出し線等の記載は省略されている。
【0069】
図19に示されるように、上部電極基板410は略長方形状の絶縁性を有するフィルム基板の一方の面にITO等からなる透明導電膜330が設けられており、X軸方向に沿った両端の辺には、金属等により形成された電極部331及び332が設けられている。電極332と電極434との間には、複数に分割された抵抗部(第1の分割抵抗部)433a、433b、433c、433d、・・・・、433xが設けられている。これらの抵抗部433a〜433xは上部電極基板410に形成された透明導電膜の一部により形成されており、抵抗部433a〜433xが形成される領域の周囲の透明導電膜をエッチング等により除去することにより形成されている。本実施の形態では、抵抗部433a〜433xは、電極332と電極434との間において並列に接続されている。即ち、図20に示すように、第3の実施の形態における抵抗部333を電流が流れる方向に沿って分割することにより抵抗部433a〜433xを形成し、この抵抗部433a〜433xが並列に接続されるように電極332と電極434が形成されている。
【0070】
また、図21に示されるように、下部電極基板420は上部電極基板410に対応した形状の略長方形状のガラス基板の一方の面にITO等からなる透明導電膜340が設けられており、Y軸方向に沿った両端の辺には、金属等により形成された電極341及び342が設けられている。電極342と電極444との間には、複数に分割された抵抗部(第2の分割抵抗部)443a、443b、443c、443d、・・・・、443w、443xが設けられている。これらの抵抗部443a〜443xは下部電極基板420に形成された透明導電膜の一部により形成されており、抵抗部443a〜443xが形成される領域の周囲の透明導電膜をエッチング等により除去することにより形成されている。本実施の形態では、抵抗部443a〜443xは、電極342と電極444との間において直列に接続されている。即ち、図22に示すように、第3の実施の形態における抵抗部343を電流が流れる方向と垂直方向に分割することにより抵抗部443a〜443xを形成し、抵抗部443a〜443xが直列となるように、電極445a、445b、445c、・・・、445wにより接続されている。
【0071】
図23は、図21における一点鎖線21A−21Bにおいて切断した断面図である。上部電極基板410と下部電極基板420とは、電極445w上及び外周部分に設けられた接着材料451と、電極342上を含む領域に設けられた接着材料452により接着されている。接着材料を抵抗部443x等の上に形成すると、接着材料が抵抗部443x等に悪影響を及ぼす場合があるため、透明導電膜340と同様に表面には接着材料は形成されていない。また、透明導電膜340と同様に、抵抗部443a〜443xの上にはフォトレジスト等により不図示のドットスペーサを形成してもよく、このドットスペーサは、上部電極基板410における抵抗部433a〜433xの上に設けてもよい。
【0072】
本実施の形態におけるタッチパネルは抵抗部が分割されているため抵抗部の形成される幅を狭くすることができる。これによりタッチパネルとして利用することのできる領域を広く確保することができる。
【0073】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0074】
110 上部電極基板
120 下部電極基板
130 透明導電膜
131 電極
132 電極
133 抵抗部(第1の抵抗部)
140 透明導電膜
141 電極
142 電極
143 抵抗部(第2の抵抗部)
160 フレキシブル基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部導電膜を有する上部電極基板と、
下部導電膜を有する下部電極基板と、
前記上部導電膜において第1の方向に電位分布を発生させるため、前記上部導電膜の前記第1の方向の両端に設けられた2つの電極と、
前記下部導電膜において前記第1の方向と直交する第2の方向に電位分布を発生させるため、前記下部導電膜の前記第2の方向の両端に設けられた2つの電極と、
前記上部導電膜における2つの電極のいずれかに接続される第1の抵抗部と、
前記下部導電膜における2つの電極のいずれかに接続される第2の抵抗部と、
前記下部電極基板または前記上部電極基板に接続されるフレキシブル基板と、
を有し、
前記第1の抵抗部は前記上部電極基板またはフレキシブル基板に形成されており、
前記第2の抵抗部は前記下部電極基板またはフレキシブル基板に形成されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
上部導電膜を有する上部電極基板と、
下部導電膜を有する下部電極基板と、
前記上部導電膜において第1の方向に電位分布を発生させるため、前記上部導電膜の前記第1の方向の両端に設けられた2つの電極と、
前記下部導電膜において前記第1の方向と直交する第2の方向に電位分布を発生させるため、前記下部導電膜の前記第2の方向の両端に設けられた2つの電極と、
前記上部導電膜における2つの電極のいずれかに接続される第1の抵抗部と、
前記下部導電膜における2つの電極のいずれかに接続される第2の抵抗部と、
を有し、
前記第1の抵抗部は前記上部電極基板に形成されており、
前記第2の抵抗部は前記下部電極基板に形成されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項3】
前記第1の抵抗部は、前記上部電極基板に抵抗ペーストを印刷することにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記第2の抵抗部は、前記下部電極基板に抵抗ペーストを印刷することにより形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記第1の抵抗部は、前記フレキシブル基板に搭載された抵抗チップであることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記第2の抵抗部は、前記フレキシブル基板に搭載された抵抗チップであることを特徴とする請求項1または5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記第1の抵抗部は、前記上部導電膜の一部により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記第2の抵抗部は、前記下部導電膜の一部により形成されていることを特徴とする請求項1、2、5または7のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記第1の抵抗部は複数の第1の分割抵抗部に分割されており、
前記複数の第1の分割抵抗部を直列または並列に接続したものであることを特徴とする請求項7に記載のタッチパネル。
【請求項10】
前記第2の抵抗部は複数の第2の分割抵抗部に分割されており、
前記複数の第2の分割抵抗部を直列または並列に接続したものであることを特徴とする請求項8または9に記載のタッチパネル。
【請求項11】
前記第1の抵抗部は、前記第1の抵抗部の周囲の上部導電膜を除去することにより形成されていることを特徴とする請求項7または9に記載のタッチパネル。
【請求項12】
前記第2の抵抗部は、前記第2の抵抗部の周囲の上部導電膜を除去することにより形成されていることを特徴とする請求項8、10または11のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項13】
前記上部電極基板と前記下部電極基板は接着材料により接着することにより形成されているものであって、
前記第1の抵抗部または前記第2の抵抗部の表面には、前記接着材料が形成されていないことを特徴とする請求項7から12のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項14】
前記第1の抵抗部または前記第2の抵抗部の表面には、ドットスペーサが形成されていることを特徴とする請求項7から13のいずれかに記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−230504(P2012−230504A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97609(P2011−97609)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】