説明

タッチパネル構造体

【課題】複数の音源の音量を調整し、または複数のライトを調整する操作盤を、タッチパネル機能を使用して操作を可能とするタッチパネル構造体を提供すること。
【解決手段】指タッチによるタッチパネル表示面を有するタッチパネル構造体において、
(1)タッチパネル表示面は、ドーナツ型の指タッチ部を有し、
(2)各指タッチ部は、0.1〜1.0mmの深さを有しかつ10.0〜20.0mmの幅を有するドーナツ型の溝状部の形状を有し、
(3)各指タッチ部は、その長さ方向における指タッチの位置に基づいて、多段のスイッチ機能が付与されている、
ことを特徴とするタッチパネル構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル構造体に関する。更に詳しくは、マルチタッチ機能およびマルチスイッチ機能を有するタッチパネル構造体に関する。殊に本発明は、光学式または静電容量式に基づくタッチパネル構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の音源からマイクを通して集められた各音源の音量を調整して混合し、スピーカーを介して音声を流したり或いは録音することは、スタジオ、音楽ホール或いは劇場で実施されている。この複数の音源からの音量を調整し混合する操作は、ミキサーと称される操作盤に設けられた多数のキィーを手動で操作することにより行われている。
また、音楽ホールや劇場では、光の照射により舞台の演出効果を高めるために常時実施されている。この場合、光源の強弱の変化および光源の色の変換は、舞台の進行を観察しながら、オペレーターが操作盤の多数のキィーを操作して行われている。
【0003】
これら操作盤では、音源の数や光源の数に応じて多数のキィーを操作されている。この操作盤における多数のキィーの操作は一人もしくは複数の人によって実施されている。
前記操作盤は、音楽ホールや劇場の舞台の見える位置に配置されているが、その操作盤は比較的大きく、例えば縦の幅が約1mもしくはそれ以上のものがある。その上操作盤は電気配線のコードの数も多く簡単に設置したり移動することは困難である。
【0004】
一方、タッチパネルは、表示面を指タッチすることにより、表示や入力が可能であり、種々の分野で広く利用されている。殊に抵抗膜式タッチパネルは、構造が簡単であり、価格も安いことから最も広く実用化されている。抵抗膜式タッチパネルは、指1本による入力が普通であり、複数の指による同時入力は困難である。
これに対して、複数の指による同時入力、つまりマルチタッチ入力が可能なタッチパネルとして光学式または静電容量式のタッチパネルが提案され、実用化されている。このマルチタッチ入力が可能なタッチパネルは、例えば携帯電話やゲーム機を中心に最近広く商品化されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、光学式や静電容量式のタッチパネルにおけるマルチタッチ入力の機能を利用して、前記したホールや劇場において、音声や光の調整に使用される操作盤の操作を、タッチパネル表示面により実施する可能性に研究を進めた。
タッチパネルの表示面は、通常ガラス板もしくは透明樹脂フィルムで構成され、その表示面の表面は平滑である。タッチパネルの利用者は、表示面に表示される種々の文字、図形または模様を見て、必要な位置を指でタッチして入力している。
【0006】
ところが、ホールや劇場において、操作盤を操作する人(オペレーター)は、音声や光を調整する際、通常舞台や演奏者の方を観察しながら、操作盤を操作する事が多く、操作盤を常時見ていることはない。すなわち、オペレーターは操作盤の多数のキィーを手で触れて、直視することなく操作していることが多い。
このことは、従来の操作盤を単にタッチパネルに置き換えた場合、オペレーターは、タッチパネルの平滑な表示面を片手或いは両手の指で触れて必要な入力を行うことになる。そうすると、オペレーターは舞台(もしくは演奏者)を観察しながらタッチパネルの表示面をマルチタッチ入力すると、入力位置を同時にかつ正確に入力することが困難となることがあり、時には入力位置がずれることが起る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、オペレーターがタッチパネルの表示面を同時にマルチタッチしても、表示面の入力位置にずれが生じない手段について種々研究を進めた。その結果、タッチパネルの表示面に、指先が感じる程度の適当な形状の溝状部を多数形成させることにより、指による入力位置のずれが可及的に少なくなり、オペレーターが舞台や演奏者の観察に注意力を集中しても、指入力の位置を正確に維持できることが判明した。
すなわち、タッチパネルの表示面に或る程度の深さと或る程度の幅を有する溝状部を形成させ、かつその溝状部を多数配置することによって、指先の接触する感覚に基づいて指のマルチ入力を正確に実施できることが判明した。この溝状部の数は、音声の場合、マイクの数や楽器の数に依存して決められ、また舞台の照明の場合、ライトの数やライトの色の数などによって決められる。
【0008】
本発明によれば、下記(I)〜(V)のタッチパネル構造体が提供される。
(I)指タッチによるタッチパネル表示面を有するタッチパネル構造体において、
(1)タッチパネル表示面は、ドーナツ型の指タッチ部を有し、
(2)各指タッチ部は、0.1〜1.0mmの深さを有しかつ10.0〜20.0mmの幅を有するドーナツ型の溝状部の形状を有し、
(3)各指タッチ部は、その長さ方向における指タッチの位置に基づいて、多段のスイッチ機能が付与されている、
ことを特徴とするタッチパネル構造体。
(II)光学式または静電容量式にづく前記(I)記載のタッチパネル構造体。
(III)各指タッチ部は、80〜150mmの直径を有するドーナツ型の溝状部の形状を有する前記(I)記載のタッチパネル構造体。
(IV)タッチパネル表示面に前記ドーナツ型の指タッチ部が1〜10個配置されている前記(I)記載のタッチパネル構造体。
(V)各指タッチ部は、その長さ方向において、3〜30段のスイッチ機能を有する前記(I)記載のタッチパネル構造体。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタッチパネル構造体は、タッチパネル表示面にドーナツ型の溝状部が1個〜複数個配置されているので、その溝状部の数に応じて種々の機能を入力することができ、また溝状部の長さに対応して多段のスイッチ機能を入力することができるので、入力位置を指先の感覚で正確にかつ簡単に指示することができる。しかも、本発明のタッチパネル構造体は、構造が簡単でありしかもコンパクトであるので、従来の操作盤に比べて設置や移動が容易であるという優れた利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明におけるタッチパネル構造体の表示面1のドーナツ型の溝状部4の配置を模式的に示した平面図である。
【図2】本発明におけるタッチパネル構造体の表示面1の直角断面図を示す。つまり図1のX−X’線における直角断面図を示す。
【図3】本発明におけるタッチパネル構造体の表示面1のドーナツ型の溝状部4の配置を示した他の形態の平面図を示す。
【図4】液晶表示デバイス(LCD)5の面上に本発明のタッチパネル構造体を設置した状態の断面形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のタッチパネル構造体を図面により説明する。図1は、本発明のタッチパネル構造体の表示面1のドーナツ型の溝状部4の配置を模式的に示した平面図を示し、図2は、その表示面の直角断面図、すなわち、図1のX−X’線における直角断面図を示したものである。
図1において、タッチパネル構造体の表示面1には、指タッチ部であるドーナツ型の溝状部4が多数(n1〜n6)形成されている。この溝状部4は、ドーナツ型の形状を有し、ほぼ円形であればよい。またドーナツ型の溝上部4は、完全な輪である必要はなく図1のように下部の一部が切れていることが望ましい。溝状部4の数は特に制限されないが通常1〜10個、好ましくは1〜8個である。またドーナツ型の溝状部4の大きさは、同じである必要はなく、異なっていてもよい。
【0012】
図2には、図1の表示面1の直角断面図(X−X’方向の直角断面図)が示されている。図2において表示面1は、透明基板2と透明ガラス板または透明フィルム3より構成され、透明基板2上に透明ガラス板または透明フィルム3が貼り合わされている。つまり、透明基板2上の透明ガラス板または透明フィルム3が削り取られることによってドーナツ型の溝状部4が形成されている。
図2の表示面における透明基板2としては、厚さ1〜5mm好ましくは1〜4mmの透明なシート状物であればよく、例えばガラス板の他にポリカーボネートシート、ポリエステルシートまたはポリオレフィンシートなどが使用されるが、ガラス板またはポリカーボネートシートが好適である。また透明ガラス板または透明フィルム3としては、透明ガラス板の他にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムなどが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが実用上好ましい。
【0013】
図2において、溝状部4の深さはdで示され、この深さdは、事実上透明ガラス板または透明フィルム3の厚さを示すことになる。溝状部4深さdは、0.1〜1mm、好ましくは0.2〜0.8mmである。また溝状部4の幅はwで表わされ、この幅wは10〜20mm好ましくは12〜18mmであるのが有利である。
さらに、ドーナツ型の溝状部4の直径は、l(図2にて示す)で表わされ、この直径lは、溝状部の幅の2つの中心線の最大距離を示す。このドーナツ型の溝状部の直径は80〜150mm、好ましくは90〜140mmであるのが適当である。ドーナツ型の溝状部4の深さ、幅および直径が前記した寸法であることによって、指先で表示面1を触れたとき、指タッチ部である溝状部4を正確に感知することができる。また溝状部4の長さ方向に沿って指先を移動させることによって、多数のスイッチ機能を容易に働かせることができる。溝状部4は、多数の指で同時に異なる溝状部4をタッチしてもずれることがなく、各々の指が溝状部4を正確に触れることが容易に可能となる。
ドーナツ型の溝状部4は図1に示すように、溝状部の切れ目が下部にあってもよく、また切れ目は上部或いは横(左右)にあってもよい。さらに溝状部の配列は一段でもよくまた二段でもよい。
【0014】
溝状部4の数は、例えば音声の場合、マイクの位置や楽器の種類に対応して決められ、また照明の場合、ライトの位置や光の色に対応して決められる。一方溝状部4の長さ方向は、指タッチの位置に応じて多段スイッチ機能を有している。例えば音声の場合、ドーナツ型の溝状部4の一端部から他端部の方向に指を移動することによって、音量が段階的に増大するようにスイッチ機能を付与することができる。また照明の場合、溝状部4を一端部から他端部へ指タッチすることにより光量を増大させることができる。各溝状部4のスイッチ機能は5〜20mm間隔で切り換えることができ、溝状部4の長さにもよるが、例えば段階的に切り換える時は3〜30段階のスイッチ機能を付与することができ、また連続的な切り換え機能であってもよい。
【0015】
図3に、本発明のタッチパネル構造体の表示面1の溝状部4の他の形態の平面図を示す。図3には、表示面1にドーナツ型の溝状部4(図面上は3個)および縦長状の溝状部7(図面上は12個)の2種類の溝状部が配置されている平面図が示されている。図3におけるドーナツ型の溝状部の形状は前述したとおりの、深さ、幅および直径を有している。一方縦長状の溝状部7の深さおよび幅はドーナツ型の溝状部4で説明したものと同じ範囲から選ばれる。また縦長状の溝状部7の長さは100〜200mm、より好ましくは120〜180mmであるのが適当である。この縦長状の溝状部7においてもその長さ方向に、連続的に或いは3〜30段のスイッチ機能を有していることが有利である。
【0016】
図4には、本発明のタッチパネル構造体を液晶表示デバイス(LCD)5の表面に設置した状態における断面形状を示す。図4において液晶表示デバイス(LCD)5の表示面上に、タッチパネル構造体が貼り合わされ、タッチパネル構造体の表示面1の周囲は額縁部6が形成されている。図4では、表示面1の溝状部は図面で省略され表示されてはいない。
本発明のタッチパネル構造体は、多数の指タッチによるマルチタッチに適用することが可能な光学式タッチパネルまたは静電容量式タッチパネルであるのが望ましい。殊に光学式タッチパネルであるのが有利である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
従来音楽ホールや劇場で使用されている音量調整や照明の調整に利用されていた操作盤は大型で簡単に設置や移動が困難であったが、本発明のタッチパネル構造体は、従来の操作盤の代替用機器として利用でき、その操作も簡単であるばかりでなく、設置や移動も極めて容易であり、広い場所も必要としない。しかも本発明のタッチパネルはその表示面に指のタッチ感覚によって認知でき溝状部が形成されているので、指タッチによる位置を正確に触れることができるという利点を有している。
従って本発明のタッチパネル構造体は、音楽ホールや劇場のみならず、設置や移動が簡単であることから、通常のホールや野外ホールなどにも利用できる。
【符号の説明】
【0018】
1.タッチパネル構造体の表示面
2.透明基板
3.透明ガラス板または透明フィルム
4.溝状部
d.溝状部の深さ
w.溝状部の幅
l.溝状部の直径
5.液晶表示デバイス(LCD)
6.額縁部
7.縦長状の溝状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指タッチによるタッチパネル表示面を有するタッチパネル構造体において、
(1)タッチパネル表示面は、ドーナツ型の指タッチ部を有し、
(2)その指タッチ部は、0.1〜1.0mmの深さを有しかつ10〜20mmの幅を有するドーナツ型の溝状部の形状を有し、
(3)その指タッチ部は、その長さ方向における指タッチ部の位置に基づいて多数のスイッチ機能が付与されている、
ことを特徴とするタッチパネル構造体。
【請求項2】
光学式または静電容量式に基づく請求項1記載のタッチパネル構造体。
【請求項3】
前記指タッチ部は、80〜150mmの直径を有するドーナツ型の溝状部の形状を有する請求項1記載のタッチパネル構造体。
【請求項4】
タッチパネル表示面に、前記ドーナツ型の指タッチ部が1〜10個配置されている請求項1記載のタッチパネル構造体。
【請求項5】
各指タッチ部は、その長さ方向において、3〜30段のスイッチ機能を有する請求項1記載のタッチパネル構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−93003(P2013−93003A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248045(P2011−248045)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(504203354)株式会社タッチパネル研究所 (41)
【Fターム(参考)】