説明

タッチパネル装置の駆動方法

【課題】 操作者に十分なクリック感を与えることができる防塵構造のタッチパネル装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】 画像表示装置5に対して所定間隔をおいて配置されたタッチパネル3と、該タッチパネル3が保持固定されタッチパネル2にタッチするための操作窓3a1を有するケース3と、タッチパネル2の画像表示装置5側に接着されるとともにタッチパネルを振動させる帯状の圧電素子1とを具備するタッチパネル装置の駆動方法であって、タッチパネル2の周囲がケース3に固定されており、タッチパネル2が操作窓3a1を介してタッチされた際に、圧電素子1に電圧を印加して圧電素子1を長さ方向に収縮させた後、電圧印加を停止する動作を繰り返すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルの操作面をタッチすることで入力信号が得られた際、タッチパネルに取り付けられた圧電素子に電圧を印加して圧電素子を駆動させ、タッチパネルを振動させ、タッチパネルの操作者に触感をフィードバックする機能を有するタッチパネル装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駅の券売機やカーナビゲーションシステム、さらには携帯電話の入力デバイスとして、タッチパネル装置が普及しつつある。タッチパネルの代表的な方式として、抵抗膜式、静電容量式、光センサー式などがあるが、いずれの方式においても、タッチパネルは、画像表示装置の上方に配置されており、透明なタッチパネルを介して画像表示装置の情報を操作者に視覚的に供給する。操作者は、画像表示装置の上方に配置されたタッチパネルの操作面をタッチすることで、あたかも実際のボタンを押して情報をコンピュータに入力したのと同様な効果を得ることができる。
【0003】
しかしながら、このようなタッチパネル装置では、操作者がタッチパネルをタッチした際に、ボタンを押すような強い反発感(クリック感)はフィードバックされないため、ボタンを押したことを触覚にて認識できないという問題があった。
【0004】
この問題に対して、近年、ボタンを押した感覚を操作者へ触覚でフィードバックするフォースフィードバックと呼ばれる技術を搭載したタッチパネル装置の検討が進んでいる。フォースフィードバック技術の一例として、タッチパネル表面に圧電素子を貼り付け、操作者がタッチパネルの操作面をタッチした際に、圧電素子に電圧印加することで圧電素子を伸縮変形させて、その変形よりタッチパネルを振動させる方式が提案されている。
【0005】
例えば、このようなタッチパネル装置として、特許文献1に示されるように、タッチパネルと、このタッチパネルに貼り付けられた圧電素子とを備え、タッチパネルへの入力操作を検出した際に、圧電素子に駆動電圧を加えて圧電素子を伸縮させることでタッチパネルを振動させて、入力操作感を与える構造において、長方形状のタッチパネルの長さ方向の一辺の長さより短い細長帯状の圧電素子を一対固着し、一対の圧電素子は、それぞれ長方形の対角位置近傍から長さ方向の一辺に沿って固着させたものが知られている。
【0006】
また、他のタッチパネル装置として、バイモルフ型構造の圧電素子でタッチパネルを変位させる変位機構部と、タッチパネルの押圧操作を検出する手段と、押圧操作を検出すると、タッチパネルを操作者に感じられないように一方向に徐々に変位させた後に、逆方向に急激に変化させるタッチパネル装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−222326号公報
【特許文献2】特開2004−192412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなタッチパネル装置では、操作者がタッチパネルの操作面をタッチした際に、タッチパネル全領域において押した感覚(クリック感)を得るため、タッチパネルをほぼ全面で大きく振動させる必要がある。そのためには、タッチパネルに取り付けられる圧電
素子の配置位置や、圧電素子の駆動電圧が重要となる。
【0009】
上記特許文献1では、タッチパネルの4隅のみが画像表示装置に固定され、振動し易いタッチパネルの支持構造とした上で、タッチパネルの長さより短い長さの一対の圧電素子をタッチパネルの長さ方向にそれぞれ対角となるように配置している。このような場合、タッチパネルの固有振動数近傍の信号を印加すると、タッチパネルが共振振動することから容易に大きな振動を得ることができ、操作者に十分なクリック感を与えることができる。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1のタッチパネル装置では、タッチパネルの4隅のみを画像表示装置に固定していたため、タッチパネルと画面表示装置との間の固定されていない部分から埃が入ってしまうという問題があった。これに対して、タッチパネルの周囲を固定すれば防塵構造となるが、これでは、圧電素子による振動が妨げられ、操作者に十分なクリック感を与えることができないという問題があった。
【0011】
また、従来の圧電素子は、圧電素子を構成する圧電磁器の分極方向に対して順方向の電場と逆方向の電場が交互に印加されて、圧電素子が駆動される方法となっている。従って、タッチパネルの周囲を固定した場合は、指が押される側になるタッチパネルの正の振幅が小さくなり、操作者に十分なクリック感を与えることができないという問題があった。
【0012】
本発明は、操作者に十分なクリック感を与えることができる防塵構造のタッチパネル装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のタッチパネル装置の駆動方法は、画像表示装置に対して所定間隔をおいて配置されたタッチパネルと、該タッチパネルが収容され保持固定されるとともに前記タッチパネルにタッチするための操作窓を有するケースと、前記タッチパネルの前記画像表示装置側の面に接着されるとともに前記タッチパネルを振動させる帯状の圧電素子とを具備するタッチパネル装置の駆動方法であって、前記タッチパネルの前記操作窓の周囲に位置する部分が前記ケースに固定されており、前記タッチパネルが前記操作窓を介してタッチされた際に、前記圧電素子に電圧を印加して該圧電素子を長さ方向に収縮させた後、電圧印加を停止する動作を繰り返すことを特徴とする。
【0014】
圧電素子をタッチパネルに接着した場合、電圧印加により長手方向に伸縮運動する圧電素子と、それ自体では変形しないタッチパネルとを貼り合せた構造となることで、圧電素子の伸縮運動がタッチパネルの上下の屈曲振動へと変換される。このような状態において、タッチパネルの周囲をケースに固定した場合には、タッチパネル自体の共振モードが発生し難いために、タッチパネルの変形は小さくなってしまう。また、圧電素子が収縮した場合は、タッチパネルが上方向(操作者側に凸)に変形することでタッチパネルにより操作者の指が撥ね返されて、クリック感を感じることができるが、圧電素子が伸長した場合は、タッチパネルは下方向(画像表示装置側に凸)に変形するため、操作者はクリック感を感じない。本発明では、圧電素子に電圧を印加して長さ方向に収縮させた後、電圧印加を停止させる動作を繰り返すことで、言い換えれば、圧電素子を収縮させ、タッチパネルを上方向(操作者側に凸)にのみ変形させることで、タッチパネルが操作者側にのみ変形し、これにより大きな変位を発生させることができ、効率的に操作者へ十分なクリック感を与えることができる。
【0015】
また、本発明のタッチパネル装置の駆動方法は、前記圧電素子に印加される電圧による電場の方向は、前記圧電素子の分極方向と同一方向であることを特徴とする。このようなタッチパネル装置の駆動方法では、帯状の圧電素子の分極方向に順方向の電場をかけるこ
とで、帯状の圧電素子が長手方向に収縮し、タッチパネルが上方向(操作者側に凸)に屈曲振動する。また圧電素子の分極方向と順方向に電場をかけることから、脱分極や圧電特性の劣化といった経時的な特性変動が起こりにくく、操作者へ十分なクリック感を長期間与えることができる。
【0016】
すなわち、上記した特許文献2のタッチパネル装置では、タッチパネル面を変位させるために、バイモルフ型構造の圧電素子の分極方向に対して逆方向に電場をかけており、タッチパネルを一方向に変形させてから、逆方向に変形させている。このような駆動方法では、圧電素子に分極方向と逆方向の電場が印加されるため、分極工程にて揃えた分極軸が反転することにより圧電特性が経時的に低下し易いという問題があったが、本発明では、圧電素子に印加される電場の方向は、圧電素子の分極方向と同一方向であるため、圧電特性の経時的な低下が抑制され、操作者へ十分なクリック感を長期間与えることができる。
【0017】
さらに、本発明のタッチパネル装置の駆動方法は、前記圧電素子は最外側に収縮しない不活性層を有するユニモルフ型素子であり、前記圧電素子の前記不活性層の側が前記タッチパネルに接着されていることを特徴とする。このような帯状の圧電素子を用いることで、圧電素子自体の収縮運動が圧電素子の不活性層側への屈曲運動に変換されるため、タッチパネルがより上方向(操作者側に凸)へ屈曲しやすくなり、タッチパネルの変位量が拡大することで、操作者へより十分にクリック感を与えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタッチパネル装置の駆動方法では、タッチパネルの操作窓の周囲に位置する部分がケースに固定された場合においても、操作者に十分なクリック感を与え、触覚的に操作情報を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本形態のタッチパネル装置の分解斜視図である。
【図2】タッチパネルにおける圧電素子、操作領域およびガスケット材の位置関係を説明するための説明図である。
【図3】本形態のタッチパネル装置の断面図であり、(a)はタッチパネル装置の長さ方向における断面図、(b)はタッチパネル装置の幅方向における断面図である。
【図4】圧電素子の断面図であり、(a)は長さ方向の断面図、(b)は電圧印加後の長さ方向の断面図である。
【図5】従来のタッチパネル装置の駆動方法を説明するための説明図である。
【図6】本形態のタッチパネル装置の駆動方法を説明するための説明図である。
【図7】(a)は従来の駆動方法における変位の時間応答を示すグラフであり、(b)は本形態の駆動方法における変位の時間応答を示すグラフである。
【図8】圧電素子への駆動電圧波形を示すもので、(a)は従来の駆動電圧波形、(b)(c)は本形態の駆動電圧波形である。
【図9】本発明で適用されるユニモルフ型素子の圧電素子の断面図であり、(a)は長さ方向の断面図、(b)は電圧印加後の長さ方向の断面図である。
【図10】時間に対する入力電圧、変位量を示すもので、(a)は従来の場合、(b)は本形態の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、タッチパネル装置の駆動方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1〜図3は、タッチパネル装置の構成を示す分解斜視図である。タッチパネル装置は、帯状の圧電素子1と、圧電素子1が裏面に接着されたタッチパネル2と、タッチパネル2が収容されたケース3と、タッチパネル2の上面とケース3の上蓋3aの内面との間に
配置された環状のガスケット材4とで構成されている。ケース3内には、タッチパネル2の裏面側に、タッチパネル2と所定間隔をおいて配置された画像表示装置5と、タッチパネル2、画像表示装置5が接続される、図示しないコンピュータ等の処理装置とが収容され、例えば、携帯電話、携帯型音楽プレイヤー、パーソナルコンピュータ(PC)が構成される。
【0022】
圧電素子1はタッチパネル2の画像表示装置5側の面に、接着層7を介して接着されている。接着層7は、接着剤、両面テープにより形成されている。接着剤としては、エポキシ系接着剤や、シアノ系接着剤など、硬化後の硬度が十分に高いものが用いられる。
【0023】
すなわち、上蓋3aと容器3bとから構成されるケース3内には、タッチパネル2と画像表示装置5と図示しない処理装置とが収容され、タッチパネル2はガスケット材4を介して上蓋3aの内面に接着され、画像表示装置5は、容器3bの内壁面に形成された段部に支持固定され、これにより、タッチパネル2と画像表示装置5とは所定間隔をおいて、ケース3内に収容されている。
【0024】
タッチパネル2は主面が長方形状であり、タッチパネル2の上方より画像表示装置5を目視可能とするため、透明な材料を用いて形成されている。そのため、タッチパネル2の材質はアクリルやポリカーボネートなどのプラスチック基板や、ガラス基板が使用されている。また、ガスケット材4には、外部からの埃が内部に入らない防塵性を確保するため、全周囲が固定されている。そのため、ガスケット材4には、タッチパネル2が変形し易い低密度高反発性の材料が望ましく、例えばウレタンフォームなどが用いられている。
【0025】
また、タッチパネル2とケース3の上蓋3aとの間に矩形環状のガスケット材4が配置されており、ガスケット材4にてタッチパネル装置が密閉され、タッチパネル2と画像表示装置5の間、さらに他の機器も含めて収納されたケース3が、埃の入らない防塵構造となっている。ガスケット材4は、タッチパネル2とケース3の上蓋3aの内面との間に、接着剤、両面テープ等で接着されている。
【0026】
また、上蓋3aには、タッチパネル2を指でタッチするための長方形状の操作窓3a1が形成されており、タッチパネル2はその外周部を除いて外部に露出しており、この操作窓3a1から外部に露出したタッチパネル2の長方形状の表面が操作領域2aとされている。操作領域2aは、環状のガスケット材4の内側に形成されている。操作者は、操作領域2aに映った画像表示装置5のボタン等に対応した位置のタッチパネル2を指で押す(タッチする)ことで、必要とする機能を実現できる。
【0027】
すなわち、タッチパネル装置は、タッチパネル2を指で押すことにより、抵抗膜式、静電容量式、光センサー式などの動作原理で得られた位置情報が、コンピュータ等の処理装置に入力されるように構成されている。そして、透明なタッチパネル2を介して画像表示装置5の情報が操作者に視覚的にフィードバックされる。操作者は、画像表示装置5の上方に配置されたタッチパネル2の操作領域2aをタッチすることで、あたかも実際のボタンを押して情報をコンピュータに入力したのと同様の効果を得ることができる。
【0028】
圧電素子1は、タッチパネル2の操作領域2aの外側に接着されており、上蓋3aにより外部から見えないように構成されている。なお、図1では、操作窓3a1内に露出した部分のタッチパネル2全体を操作領域2aとしたが、操作窓3a1内に露出したタッチパネル2の一部を不透明、例えば、操作窓3a1内に露出したタッチパネル2の外周部を不透明とし、中央部を透明とし、この透明な中央部から画像表示装置5の情報を確認できるようにし、実際のタッチは中央部のみ行うようにしても良いことは勿論である。
【0029】
また、本形態では圧電素子1の数が4個の場合について説明しているが、本形態では圧電素子1の数は限定されるものではなく、必要な特性に応じて圧電素子数を変更できる。
【0030】
図4に帯状の圧電素子1の長手方向における断面図を示す。図4において、帯状の圧電素子1は積層構造となっている。積層構造とすることで、圧電素子1に印加する駆動電圧を低下できるため、機器の低電圧化が実現される。また、図4において、符号10aは圧電体層1であり、符号11、12は外部電極、符号13a、13bは内部電極、符号14a、14bは端面電極である。
【0031】
圧電体層1は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスから形成され、外部電極11、12、端面電極14a、14bは厚膜印刷や蒸着などで形成されている。
【0032】
外部電極11と内部電極13aとは、端面電極14aを介して接続されている。一方、外部電極12と内部電極13bとは、端面電極14bを介して接続されている。また、圧電素子1の圧電体層10aは、全て分極がされ伸縮する活性層とされている。そして、図4(a)に示す電圧未印加の状態から、圧電体層10aに分極方向と同じ方向に電場を印加することで、帯状の圧電素子1は、図4(b)に示すように長手方向に収縮する。
【0033】
本形態のタッチパネル装置の駆動方法を従来の駆動方法と比較しながら、図5〜図8を用いて説明する。図5は、従来のタッチパネル装置の駆動方法を説明したものである。この図5、6では、理解を容易にするために、一つの帯状の圧電素子1を、タッチパネル2の長さ方向に平行に接着した場合について説明する。また図5、6において、黒矢印は圧電素子の変形方向を、白矢印はタッチパネルの変形方向を示したものである。矢印の長さによって、圧電素子1およびタッチパネル2の変形量を示している。
【0034】
従来の駆動方法では、圧電素子1に、図8(a)に示すような電圧を印加して駆動する。これにより図5(a)の通常状態から、図5(b)、図5(c)へと帯状の圧電素子1を長手方向に対して収縮させる。タッチパネル2が圧電素子1を拘束することから、タッチパネル2が上側(操作者側に凸)に変形する。図5(c)にてタッチパネルが上側に最も変形した後、図5(d)の状態を経て図5(e)の元の状態に戻る。
【0035】
つぎに圧電素子1に図5(b)、図5(c)とは逆位相の電圧が印加され、圧電素子1を長手方向に伸長させることで、タッチパネル2が圧電素子1を拘束することから、図5(f)、図5(g)に示すように、タッチパネル2が下側(画像表示装置5側に凸)に変形する。図5(g)でタッチパネルが下側に最も変形した後で、図5(h)の状態を経て図5(i)の元の状態となる。
【0036】
従って、従来の駆動方法では、タッチパネル2は一度操作者側に凸になるように変形するが、すぐに画像表示装置5側に向かって凸になるように変形するため、操作者側への変形量が小さく、操作者はクリック感を感じにくい。
【0037】
一方、本形態におけるタッチパネル装置の駆動方法を、図6を用いて説明する。本形態の駆動方法では、通常状態である図6(a)から、例えば図8(b)に示すような電圧が印加され、図6(b)、図6(c)、図6(d)に示すように圧電素子1を長手方向に収縮させることで、タッチパネル2は操作者側に凸となるように大きく変形する。その後、図6(e)、図6(f)の状態となり、駆動電圧が零になったとき図6(g)の元の状態となる。この場合、タッチパネル2は操作者側に凸となるように大きく変形することから、操作者はクリック感を感じやすくなる。
【0038】
図7にタッチパネル2の中心部A点の変形を時間応答で示す。図7(a)が従来の駆動方法による変形であり、図7(b)は本形態の駆動方法による変形を示している。振幅(変位量X)と変形している時間tは同じである。一方、操作者側からみた変位量は、従来方法ではX/2であるのに対して、本形態ではXであり、従来方法と比較して2倍の変位量が得られることになり、操作者に十分なクリック感を与えることができる。
【0039】
従来と本形態における圧電素子への駆動電圧波形の一例を、図8に示す。図8(a)は従来の駆動電圧波形であり、図8(b)は本形態の駆動電圧波形であり、正弦波の位相を90度遅らせたものにオフセット電圧を加えたものである。基本波の信号のみであり、操作者はスムーズなタッチ感を得ることができる。図8(c)は本形態の駆動電圧波形であり、三角波形状であり、信号が瞬間的に切り替わることから、操作者は鋭いタッチ感を得ることができる。
【0040】
図9は、本発明の他のユニモルフ型の圧電素子を示すもので、図9に示す圧電素子20では、内部電極13cは端面電極14a、14bおよび外部電極11、12とは接続していない。圧電素子20の最外側に形成された2層の圧電体層10bは、分極工程時に外部電極11、12に電圧を印加しても電場が印加されないため、分極されておらず、収縮しない不活性層とされている。ここで図9(a)に示す電圧未印加の状態から、圧電体層10aに分極方向と同じ方向に電場を印加することで、圧電体層10aは長手方向に収縮する。一方、不活性層である圧電体層10bは収縮しないことから活性層である圧電体層10aを拘束する。この結果、図9(b)に示すように、圧電素子20は圧電体層10b側が凸となるようにたわむ。図9において、圧電体層10bに形成された外部電極12が、図1〜図3において、接着層7を介して、タッチパネル2に接着される。ここで、圧電素子20内に圧電体層10bが存在するため、圧電素子20の収縮振動が上方向のたわみ振動に変換されて、圧電素子20が接合されたタッチパネル2が上方向にたわみ易くなる。
【0041】
なお、図1〜3において図4の圧電素子1及び図9の圧電素子20を接着する場合、タッチパネルの変位を大きくするためには、接着層7として接着剤が望ましい。圧電素子とタッチパネルとの間を粘着性の強い両面テープなどで接続した場合、両面テープにて伸縮運動が吸収される虞があり、タッチパネルの屈曲振動が弱まる傾向にある。圧電素子とタッチパネルを接着剤で強く固定することで、タッチパネルの屈曲振動による変位を大きくして、操作者へクリック感を与えることができる。
【実施例】
【0042】
タッチパネル装置の駆動方法について、効果を確認した。図2に示すように、基材が厚み1.5mm、長さ105mm、幅46mmの透明フィルムからなる抵抗膜式のタッチパネル2の長さ方向に、図9(a)に示すような帯状の圧電素子20をそれぞれ2個ずつ不活性層となる圧電体層10b側を接着剤で接着した。圧電素子20の活性層は13層、不活性層は2層であり、1個あたりの圧電素子20の静電容量は1.2μFとなるように作製した。圧電素子20の寸法は、幅2.6mm、長さ40mmであった。
【0043】
圧電素子20は、図2に示すように、71mmの長辺と35mmの短辺で形成される操作領域2aの長辺に沿って2個ずつ接着してタッチパネル装置を作製した(図10(a))。
【0044】
タッチパネル2に、環状のガスケット材4として多孔質弾性体((株)イノアックコーポレーションのPORON)を両面テープ(G9000)で接着し、環状のガスケット材4を両面テープ(G9000)でケース3の上蓋3aの内面に接着した。圧電素子20への印加電圧は、図8(a)に示すような45Vpp(peak to peak)と、図8(b)に示すような45V0P(zero to peak)の2種類を印加した。信
号印加時間tは5m秒とした。
【0045】
波形は(株)NF回路設計ブロックの関数発生器WF1943により生成して、(株)メステックのピエゾドライバM−2131にて増幅して、圧電素子20に印加した。一方、タッチパネル2の中心点A点の変位は、ドップラ振動計LV−1710の速度信号を、テクトロニクス(株)のオシロスコープTDS3014でデジタルデータに変換して、コンピュータ上で台形近似積分することで求めた。
【0046】
図10に、タッチパネル中心部A点の変位量を測定した結果を示す。図10(a)は45Vpp(従来の駆動方法)、図10(b)は45V0P(本形態の駆動方法)を印加した結果である。2つの図において、変位量、電圧値、時間はそれぞれ軸を揃えている。図10(a)と図10(b)とを比較すると、同じ振幅の電圧印加にも関わらず、変位が正の変位量(操作者側へ凸の変位量)は、本形態の駆動方法では従来と比較して2.5倍の変位量が得られている。
【0047】
これにより、本形態の駆動方法では、タッチパネル2が操作者側に凸に大きく変位していることから、操作者はよりクリック感を感じることがわかる。また、変位の振幅(peak to peak)を比較すると、本形態の駆動方法が従来に比べて1.4倍の変位が得られており、同じ振幅の電圧を印加しても、本発明がより効率的に変位していることがわかる。
【0048】
また、図1〜3の構造をとる場合は、タッチパネル2の屈曲を利用するため、中心点A点が最も変位する。四隅の変位を増やすためには、圧電素子20への印加電圧を増やすのが最も容易である。しかし、従来の駆動方法では、電圧を上げると分極方向と反対の電場が印加されるため、圧電素子20の分極がとれやすくなり圧電特性が経時的に劣化する虞がある。一方、本形態の駆動方法では、圧電素子20の分極方向と同一の電場が圧電磁器にかかるため、高い電圧を印加することができ、変位を容易に大きくできることがわかる。
【符号の説明】
【0049】
1、20:圧電素子
2:タッチパネル
2a:操作領域
3:ケース
3a:上蓋
3a1:操作窓
3b:容器
4:ガスケット材
5:画像表示装置
7:接着層
10a:活性層となる圧電体層
10b:不活性層となる圧電体層
11、12:外部電極
13a、13b、13c:内部電極
14a、14b:端面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置に対して所定間隔をおいて配置されたタッチパネルと、該タッチパネルが収容され保持固定されるとともに前記タッチパネルにタッチするための操作窓を有するケースと、前記タッチパネルの前記画像表示装置側の面に接着されるとともに前記タッチパネルを振動させる帯状の圧電素子とを具備するタッチパネル装置の駆動方法であって、前記タッチパネルの前記操作窓の周囲に位置する部分が前記ケースに固定されており、前記タッチパネルが前記操作窓を介してタッチされた際に、前記圧電素子に電圧を印加して該圧電素子を長さ方向に収縮させた後、電圧印加を停止する動作を繰り返すことを特徴とするタッチパネル装置の駆動方法。
【請求項2】
前記圧電素子に印加される電圧による電場の方向は、前記圧電素子の分極方向と同一方向であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置の駆動方法。
【請求項3】
前記圧電素子は最外側に収縮しない不活性層を有するユニモルフ型素子であり、前記圧電素子の前記不活性層の側が前記タッチパネルに接着されていることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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