説明

タッチパネル装置

【課題】タッチパネルを正面以外から操作した場合に、誤操作を低減する仕組みを安価に実現出来るタッチパネル装置を実現する。
【解決手段】タッチパネル装置において、ディスプレイ上の所定の点灯表示された点とタッチパネルセンサ上での点の対応箇所を使用者にタッチさせることによるタッチパネルセンサのタッチ検出値とから使用者の視点座標値を決定する使用者視点座標値決定手段と、使用者がタッチパネルセンサ上の使用したい箇所をタッチすることによるタッチパネルセンサのタッチ検出値と決定された視点座標値とから使用者がタッチしようとしたディスプレイ上の座標値を演算するディスプレイ座標値演算手段と、タッチパネルセンサ上の使用したい箇所のタッチ座標値と使用者がタッチしようとしたディスプレイ上の座標値との座標値の差を演算する偏差値演算手段と、を具備したことを特徴とするタッチパネル装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は従来より一般に使用されている従来例の要部構成説明図である。
図において、1はタッチパネルユニットで、ディスプレイ11とガラス12とタッチパネルセンサ13とを有する。
ディスプレイ11は、この場合は、LCD液晶パネルが使用されている。
ディスプレイ11の一面には、ガラス12の一面が接している。
ガラス12の他面にはタッチパネルセンサ13が設けられている。
【0003】
以上の構成において、タッチパネルユニット1を、手あるいはスタイラスAで触れた時に、座標をそのまま使用する。
図8の場合、液晶パネル11上の点P1から出た光線はQ1を経由して目に届く。
この時、P1に触れようとすると、点Q11に触れることとなり、タッチパネルユニット1としては点Q11に対して触れたと認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−149347号公報
【特許文献2】特開2006−099247号公報
【特許文献3】特開2006−285417号公報
【特許文献4】特開2007−219737号公報
【特許文献5】特開2007−207008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような装置においては、以下の問題点がある。
タッチパネルユニット1を正面から操作しない場合に、使用者の意図しない位置を選択したように検出してしまう。
図8の様に視線位置が正面でない場合、P1に触れる意図で操作するとQ11に触れることになり、Q11に触れたように検出する。
【0006】
従来からタッチパネルユニット1のキャリブレーションは行われているが、タッチパネルユニット1や機器の個体差を吸収する目的であるため、使用環境に応じた調整などには機能が不足している。
オシロスコープ、カーナビゲーションシステムなどは、使用環境で、パネル面の空きがある場所に置かれることも多く、常に正面から操作できるとは期待できない。
【0007】
タッチパネルユニット1に使用されるLCDの性能向上に伴い、LCD視野角が広がっている。
このため従来よりも使用者の視点位置の自由度が上がっている。
タッチパネルの大型化の結果、視点による誤差も拡大することになる。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、タッチパネルを正面以外から操作した場合に、誤操作を低減する仕組みを安価に実現出来るタッチパネル装置を提供することにある。
なお、特許文献5の「特開2007−207008号公報」にはタッチパネル以外の装置をも使用して本問題を解決する方法がある。
本提案では、タッチパネルのみにて行う点が異なる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1のタッチパネル装置においては、
ディスプレイから所定距離を置いて配置されたタッチパネルセンサを有するタッチパネルユニットを具備するタッチパネル装置において、前記ディスプレイ上の所定の点灯表示された点とタッチパネルセンサ上での前記点の対応箇所を使用者にタッチさせることによるタッチパネルセンサのタッチ検出値とから使用者の視点座標値を決定する使用者視点座標値決定手段と、前記使用者が前記タッチパネルセンサ上の使用したい箇所をタッチすることによるタッチパネルセンサのタッチ検出値と前記決定された視点座標値とから前記使用者がタッチしようとしたディスプレイ上の座標値を演算するディスプレイ座標値演算手段と、前記タッチパネルセンサ上の使用したい箇所のタッチ座標値と前記使用者がタッチしようとしたディスプレイ上の座標値との座標値の差を演算する偏差値演算手段と、前記偏差値を補正信号として出力し前記補正信号に基づきタッチパネルが使用される全体装置の出力をキャリブレーションするキャリブレーション手段と、を具備したことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2のタッチパネル装置においては、請求項1記載のタッチパネル装置において、
前記使用者視点座標値決定手段は、ディスプレイ上の所定の点灯表示位置からタッチパネルセンサ上での前記対応箇所位置までのベクトルを演算するベクトル演算手段と、前記ベクトルが屈折率の影響を受けてタッチパネルセンサを通過後の方向を演算するベクトル方向演算手段と、前記所定の点灯表示位置と前記所定の点灯表示位置以外の複数のディスプレイ点灯表示位置とから求められた前記タッチパネルセンサを通過後の方向線の交差する交点から、使用者視点座標値を決定する交点演算手段と、を具備したことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3のタッチパネル装置においては、請求項1又は請求項2記載のタッチパネル装置において、
前記ディスプレイ座標値演算手段は、前記使用者が前記タッチパネルセンサ上の使用したい箇所をタッチすることによるタッチ検出値と前記決定された視点座標値とから、前記視点座標値と前記タッチ点までのタッチ点ベクトルを演算するタッチ点ベクトル演算手段と、前記タッチ点ベクトルと前記タッチ点とから前記タッチ点ベクトルが屈折率の影響を受けてタッチパネルセンサを通過して前記ディスプレイに到達する点を演算するディスプレイ点演算手段と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果がある。
視点位置のずれによる、タッチパネルセンサ上の座標値とディスプレイ上の座標値との座標値の誤差の検出を、演算のみにより処理できるので、装置が本来有するCPU等が利用出来、特別の機構や装置を必要とせず、安価なタッチパネル装置が得られる。
タッチパネルが使用される全体装置を、補正信号出力手段から出力される補正信号を利用して補正できるので、使用者が触れようと意図したタッチパネルの位置が、より正確に得られるタッチパネル装置が得られる。
【0013】
タッチパネルセンサ上の座標値とディスプレイ上の座標値との座標値の誤差による、タッチパネルの操作に伴う違和感を軽減出来るタッチパネル装置が得られる。
視点位置のずれによる、タッチパネルセンサ上の座標値とディスプレイ上の座標値との座標値の誤差を、補正信号出力手段から出力される補正信号を利用して補正できるので、機器の設置位置やタッチパネルの配置位置などの自由度が上がるタッチパネル装置が得られる。
【0014】
上記の結果、誤入力が減る。また誤入力を避けるために取っていたインタフェース上の余白を減らすことが可能になり、タッチパネル・画面を有効に使用できるタッチパネル装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】図1の原理的要部構成説明図である。
【図3】図1の原理的要部構成説明図である。
【図4】図1の原理的要部構成説明図である。
【図5】図2の動作手順説明図である。
【図6】図3の動作手順説明図である。
【図7】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図8】従来より一般に使用されている従来例の要部構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図、図2,図3,図4は図1の原理的要部構成説明図、図5,図6は図2,図3のそれぞれの動作手順説明図である。
図において、図8と同一記号の構成は同一機能を表す。
以下、図8との相違部分のみ説明する。
【0017】
図1において、使用者視点座標値決定手段21は、ベクトル演算手段211とベクトル方向演算手段212と、交点演算手段213とを有する。
【0018】
ベクトル演算手段211は、図2に示す如く、ディスプレイ11上の所定の点灯表示位置P2からタッチパネルセンサ13上での使用者のタッチ対応箇所位置Q2までのベクトルU2を演算する。
ベクトル方向演算手段212は、ベクトルU2が屈折率の影響を受けてタッチパネルセンサ13を通過後のベクトルV2の方向を演算する。
【0019】
交点演算手段213は、所定の点灯表示位置P2と前記所定の点灯表示位置以外の複数のディスプレイ点灯表示位置P2〜P2とから求められた、タッチパネルセンサ13を通過後の方向線の交差する交点Eから、使用者視点座標値を決定する。
【0020】
次に、ディスプレイ座標値演算手段22は、図3に示す如く、タッチ点ベクトル演算手段221と、ディスプレイ点演算手段222とを有する。
タッチ点ベクトル演算手段221は、使用者が、タッチパネルセンサ13上の使用したい箇所Q3をタッチすることによるタッチ検出値と決定された視点座標値Eとから、視点座標値Eとタッチ点Q3までのタッチ点ベクトルV3を演算する。
ディスプレイ点演算手段222は、タッチ点ベクトルV3とタッチ点Q3とから、タッチ点ベクトルV3が屈折率の影響を受けてタッチパネルセンサ13を通過して、ディスプレイ11に到達する点を演算する。
【0021】
図3に示す如く、偏差値演算手段23は、タッチパネルセンサ13上の使用者の使用したい箇所のタッチ座標値Q3と使用者がタッチしようとしたディスプレイ上の座標値P3との座標値の差mを演算する。
補正信号出力手段24は、偏差値mを補正信号として出力する。
【0022】
以上の構成において、
視点推定は以下の如くして行う。

(2)図4のStep5に示す如く、ベクトルUはガラス内の方向なので、ガラス・空気の屈折率の影響を補正し、空気中の視線方向のベクトルVを求める。
(3)図4のStep6に示す如く、点QとベクトルVから視点Eと点Qを通る直線QEが求められる。
(4)図4のStep6,Step7に示す如く、異なる点Piに対して(1)〜(3)の手順を繰り返し、対応する点Qiを求め、視点EとQiを通る直線(Q1E〜QnE)を求める。Piは3点以上で同一直線上にない点を選ぶ。
(5)図4のStep8に示す如く、直線Q1E〜QnEの交点を視点の位置とする。
実際には、Qiの入力には使用者指定のブレとセンサの誤差が含まれるため、直線は交差しない。(6)の処理で視点を推定する。
(6)真の視点の座標をTと仮定し、Tと直線QiEの距離をDi(T)として、
【0023】
【数1】

を定義する。この式が最小値返すTを最急降下法により求め、そのTを視点座標とする。
【0024】
次に、接触位置推定は以下の如くして行う。
(1)図5のStep1,Step2に示す如く、タッチパネル上の点Qに触れた場合、点Qと視点Tを結ぶ直線を求める。
(2)図5のStep3に示す如く、直線QTのベクトルVからガラスの屈折率と厚みdを考慮し、ベクトルUを求める。
(3)図5のStep4に示す如く、点QとベクトルUから点Pを計算し、この点を使用者が触れようとした点と推定する。
【0025】
この結果、
本発明によれば、次のような効果がある。
視点位置のずれによる、タッチパネルセンサ上の座標値とディスプレイ上の座標値との座標値の誤差の検出を、演算のみにより処理できるので、装置が本来有するCPU等が利用出来、特別の機構や装置を必要とせず、安価なタッチパネル装置が得られる。
タッチパネルが使用される全体装置を、補正信号出力手段から出力される補正信号を利用して補正できるので、使用者が触れようと意図したタッチパネルの位置が、より正確に得られるタッチパネル装置が得られる。
【0026】
タッチパネルセンサ13上の座標値とディスプレイ11上の座標値との座標値の誤差による、タッチパネルの操作に伴う違和感を軽減出来るタッチパネル装置が得られる。
視点位置のずれによる、タッチパネルセンサ13上の座標値とディスプレイ11上の座標値との座標値の誤差を、補正信号出力手段から出力される補正信号を利用して補正できるので、機器の設置位置やタッチパネルの配置位置などの自由度が上がるタッチパネル装置が得られる。
【0027】
上記の結果、誤入力が減る。また誤入力を避けるために取っていたインタフェース上の余白を減らすことが可能になり、タッチパネル・画面を有効に使用できるタッチパネル装置が得られる。
【0028】
なお、前述の(1)式のD(T)の関数はこれに限ることはなく。点Tと直線との距離を評価できる適切な関数であれば、他の関数に置き換えてもよいことは勿論である。
【0029】
また、前述の(1)式のD(T)の最小値を与えるTを最急降下法で求めているが、共役勾配法などでも良い。また、収束技法でTを計算する際に、厳密に解を得る必要はないので、Tの収束速度が落ちたら打ちきることが可能である。
実際には単眼で見ているわけではないので、視点が1つというモデルは厳密には当てはまらない。他にも誤差要因が多いので、正確に解を得る必要もない。
【0030】
また、タッチパネル上の任意の点と視点を結ぶ直線が平行を見做せるような場合(タッチパネルのサイズが小さく、またパネルと使用者間が比較的離れているなど)、タッチパネルと視点との距離は無視できるので、直線の方向ベクトルだけ推定すれば良い。
結果として図2における、ベクトルVの推定だけで処理が済むのでQiEの方向ベクトルの平均を求めれば良く、処理の負荷が軽減できる。
【0031】
更にまた、図7に示す如く、上記の場合と同様な条件において、図7(a)に示す如く、垂直視点位置をA〜C、図7(b)に示す如く、水平視点位置をa〜cの様に単純化する(視点位置は使用者が直接指定する)。
この場合、視点位置が9点に単純化され、接触位置推定における修正も9通りに単純化でき、計算もまた単純化(単純な表参照などで)できる。したがって、計算機資源が極めて貧弱な場合にも容易に適用できる。
【0032】
なお、前述の実施例においては、ディスプレイ11とタッチパネルセンサ13の間にガラス12が挟まれていると説明したが、ガラス12限ることはないことは勿論である。
【0033】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【符号の説明】
【0034】
1 タッチパネルユニット
11 ディスプレイ
12 ガラス
13 タッチパネルセンサ
21 使用者視点座標値決定手段
211 ベクトル演算手段
212 ベクトル方向演算手段
213 交点演算手段
22 ディスプレイ座標値演算手段
221 タッチ点ベクトル演算手段
222 ディスプレイ点演算手段
23 偏差値演算手段
24 補正信号出力手段
A スタイラス
E 交点
d 厚み
m 偏差値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイから所定距離を置いて配置されたタッチパネルセンサを有するタッチパネルユニットを具備するタッチパネル装置において、
前記ディスプレイ上の所定の点灯表示された点とタッチパネルセンサ上での前記点の対応箇所を使用者にタッチさせることによるタッチパネルセンサのタッチ検出値とから使用者の視点座標値を決定する使用者視点座標値決定手段と、
前記使用者が前記タッチパネルセンサ上の使用したい箇所をタッチすることによるタッチパネルセンサのタッチ検出値と前記決定された視点座標値とから前記使用者がタッチしようとしたディスプレイ上の座標値を演算するディスプレイ座標値演算手段と、
前記タッチパネルセンサ上の使用したい箇所のタッチ座標値と前記使用者がタッチしようとしたディスプレイ上の座標値との座標値の差を演算する偏差値演算手段と、
前記偏差値を補正信号として出力し前記補正信号に基づきタッチパネルが使用される全体装置の出力をキャリブレーションするキャリブレーション手段と、
を具備したことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記使用者視点座標値決定手段は、ディスプレイ上の所定の点灯表示位置からタッチパネルセンサ上での前記対応箇所位置までのベクトルを演算するベクトル演算手段と、
前記ベクトルが屈折率の影響を受けてタッチパネルセンサを通過後の方向を演算するベクトル方向演算手段と、
前記所定の点灯表示位置と前記所定の点灯表示位置以外の複数のディスプレイ点灯表示位置とから求められた前記タッチパネルセンサを通過後の方向線の交差する交点から、使用者視点座標値を決定する交点演算手段と、
を具備したことを特徴とする請求項1記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記ディスプレイ座標値演算手段は、前記使用者が前記タッチパネルセンサ上の使用したい箇所をタッチすることによるタッチ検出値と前記決定された視点座標値とから、前記視点座標値と前記タッチ点までのタッチ点ベクトルを演算するタッチ点ベクトル演算手段と、
前記タッチ点ベクトルと前記タッチ点とから前記タッチ点ベクトルが屈折率の影響を受けてタッチパネルセンサを通過して前記ディスプレイに到達する点を演算するディスプレイ点演算手段と、
を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−59049(P2012−59049A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202107(P2010−202107)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】