説明

タッチパネル

【課題】主に各種電子機器の操作に用いられるタッチパネルに関し、安価で、確実な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10外周の間に露出する箇所の、上電極5や6または下電極7や18を複数に、例えば下電極18を複数の下電極18Aと18Bに分岐形成することによって、異物の付着等によって、例えば一方の下電極18Aの抵抗値が高くなった場合でも、他方の下電極18Bによって安定した操作位置の検出が行えると共に、露出した箇所を接着剤等で覆う必要がないため、製作も容易に行うことができ、安価で、確実な操作が可能なタッチパネルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられるタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電子カメラ等の各種電子機器の高機能化や多様化が進むなか、液晶表示素子等の表示素子の前面に光透過性のタッチパネルを装着し、このタッチパネルを通して背面の表示素子の表示を見ながら、指やペン等でタッチパネルを押圧操作することによって、機器の様々な機能の切換えを行うものが増えており、安価で、確実な操作を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来のタッチパネルについて、図3及び図4を用いて説明する。
【0004】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図3は従来のタッチパネルの平面図、図4は同分解斜視図であり、同図において、1はフィルム状で光透過性の上基板、2はガラス等の光透過性の下基板で、上基板1の下面には酸化インジウム錫等の光透過性の上導電層3が、下基板2の上面には同じく下導電層4が各々形成されている。
【0006】
また、上導電層3の左右端には銀等の一対の上電極5と6が、下導電層4の上導電層3とは直交方向の前後端には、一対の下電極7と8が各々形成されると共に、この上電極5、6や下電極7、8が、上基板1や下基板2の外周前端に延出している。
【0007】
そして、下導電層4上面には絶縁樹脂によって、複数のドットスペーサ(図示せず)が所定間隔で形成されると共に、上基板1下面と下基板2上面の外周内縁には略額縁状で絶縁樹脂製のスペーサ9が設けられ、この間に塗布形成された接着剤(図示せず)によって、上基板1と下基板2の外周が貼り合わされ、上導電層3と下導電層4が所定の間隙を空けて対向している。
【0008】
さらに、10はフィルム状の配線基板で、この上下面には複数の配線パターン11が形成されると共に、この配線基板10の後端が、スペーサ9前端の切欠部9A内の上基板1と下基板2の間に挟持され、合成樹脂内に導電粒子を分散した異方導電接着剤(図示せず)等によって、各配線パターン11の後端が上電極5、6や下電極7、8の前端に各々接着接続されて、タッチパネルが構成されている。
【0009】
そして、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、配線基板10の複数の配線パターン11の前端が、接続用コネクタや半田付け等によって機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0010】
以上の構成において、タッチパネル背面の表示素子の表示に応じて、上基板1上面を指やペン等で押圧操作すると、上基板1が撓み、押圧された箇所の上導電層3が下導電層4に接触する。
【0011】
そして、電子回路から配線基板10の複数の配線パターン11を介して、一対の上電極5、6や下電極7、8へ順次電圧が印加され、上導電層3両端、及びこれと直交方向の下導電層4両端の電圧比によって、押圧された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0012】
つまり、タッチパネル背面の表示素子に、例えば複数のメニュー等が表示された状態で、所望のメニュー上の上基板1上面を押圧操作すると、この操作した位置を配線基板10の複数の配線パターン11を介して電子回路が検出して、複数のメニューの中から所望のメニューの選択や、あるいは確定等の操作が行えるように構成されている。
【0013】
また、以上のようなタッチパネルを製作するには、先ず、下面に酸化インジウム錫等の上導電層3が形成された上基板1や、上面に下導電層4が形成された下基板2に、印刷等によって上電極5、6や下電極7、8を形成した後、これらを覆うように同じく印刷等によって、上基板1下面と下基板2上面の外周内縁に略額縁状のスペーサ9を形成すると共に、前端の切欠部9A内に上電極5、6や下電極7、8前端を延出させる。
【0014】
そして、上基板1と下基板2をスペーサ9によって、上導電層3と下導電層4が所定の空隙を空けて対向するように貼り合せると共に、異方導電接着剤を塗布した配線基板10の後端を、スペーサ9前端の切欠部9A内の上基板1と下基板2の間に挟み込む。
【0015】
なお、この時、スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10後端の間には隙間が殆んどないが、切欠部9Aと配線基板10左右端の間には、左右各々に2mm前後の隙間Lが設けられているため、これによって配線基板10を左右方向へ動かして、各配線パターン11後端と上電極5、6や下電極7、8前端に、中心ずれがなく一致して重なるように、左右方向の位置合わせを行う。
【0016】
さらに、この後、切欠部9A内の配線基板10後端とこの上下の上基板1と下基板2前端を加熱加圧し、配線基板10の配線パターン11後端を上電極5、6や下電極7、8前端に接着接続して、タッチパネルが完成する。
【0017】
ただ、この時、上電極5、6や下電極7、8の前端は、上記のように配線パターン11後端に圧着され、その他の上基板1や下基板2の外周に延出した箇所は、略額縁状のスペーサ9によって覆われているが、スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10外周の間の隙間Lには、例えば切欠部9Aと配線基板10右端の間には、下電極8の一部である下電極8Aが露出している。
【0018】
そして、この露出した箇所に万が一、皮膚屑のような塩化ナトリウム等を含む微細な異物が付着した場合、使用される周囲の温度や湿度等の環境、あるいは長期間の使用等によって、この異物が下電極8Aを形成するエポキシ等の樹脂を分解し、これによって下電極8の抵抗値が部分的に高くなり、操作位置の検出が不安定なものになってしまうことがある。
【0019】
したがって、このようにスペーサ9の切欠部9Aと配線基板10外周の間の隙間Lに、下電極8の一部等が露出している場合には、接着剤等を塗布し、下電極8Aを覆う等の対策を行うことによって、このような不具合を防ぐように構成されているものであった。
【0020】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2009−176199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上記従来のタッチパネルにおいては、配線基板10の配線パターン11後端と、上電極5、6や下電極7、8前端の位置合わせのための、スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10外周の間の隙間Lに、下電極8の一部等が露出した場合、この露出した下電極8Aを接着剤等で覆っているため、製作に手間がかかり、高価なものとなってしまうという課題があった。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、安価で、確実な操作が可能なタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明は、スペーサの切欠部と配線基板外周の間に露出する箇所の上電極または下電極を、複数に分岐形成してタッチパネルを構成したものであり、分岐した一方の電極の抵抗値が異物の付着等によって高くなった場合でも、他方の電極によって安定した操作位置の検出が行えると共に、露出した箇所を接着剤等で覆う必要がないため、製作も容易に行うことができ、安価で、確実な操作が可能なタッチパネルを得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、安価で、確実な操作が可能なタッチパネルを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態によるタッチパネルの平面図
【図2】同分解斜視図
【図3】従来のタッチパネルの平面図
【図4】同分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。
【0028】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0029】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0030】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるタッチパネルの平面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、1はポリエチレンテレフタレートやポリエーテルサルホン、ポリカーボネート等のフィルム状で光透過性の上基板、2は同じくフィルム状またはガラス等の薄板状で光透過性の下基板で、上基板1の下面には酸化インジウム錫や酸化錫等の光透過性の上導電層3が、下基板2の上面には同じく下導電層4が各々、スパッタ法等によって形成されている。
【0031】
また、上導電層3の左右端には銀やカーボン等の一対の上電極5と6が、下導電層4の上導電層3とは直交方向の前後端には、一対の下電極7と18が各々形成されると共に、この上電極5、6や下電極7、18が、上基板1や下基板2の外周前端に延出している。
【0032】
そして、下導電層4上面にはエポキシやシリコーン等の絶縁樹脂によって、複数のドットスペーサ(図示せず)が所定間隔で形成されると共に、上基板1下面と下基板2上面の外周内縁には略額縁状でポリエステルやエポキシ、不織布等のスペーサ9が設けられ、この間に塗布形成されたアクリルやゴム等の接着剤(図示せず)によって、上基板1と下基板2の外周が貼り合わされ、上導電層3と下導電層4が所定の間隙を空けて対向している。
【0033】
さらに、10はポリイミドやポリエチレンテレフタレート等のフィルム状の配線基板で、この上下面には銅箔や銀、カーボン等の複数の配線パターン11が形成されている。
【0034】
そして、この配線基板10の後端が、スペーサ9前端の切欠部9A内の上基板1と下基板2の間に挟持され、エポキシやアクリル、ポリエステル等の合成樹脂内に、ニッケルや樹脂等に金メッキを施した複数の導電粒子を分散した異方導電接着剤(図示せず)等によって、各配線パターン11の後端が上電極5、6や下電極7、18の前端に各々接着接続されている。
【0035】
また、スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10左右端の間には、左右各々に2mm前後の隙間Lが設けられると共に、この切欠部9Aと配線基板10外周の間の隙間Lには下電極18の一部が露出しているが、この露出した箇所の下電極18は、前後に二股状に分岐した複数の下電極18Aと18Bから形成されて、タッチパネルが構成されている。
【0036】
そして、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、配線基板10の複数の配線パターン11の前端が、接続用コネクタや半田付け等によって機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0037】
以上の構成において、タッチパネル背面の表示素子の表示に応じて、上基板1上面を指やペン等で押圧操作すると、上基板1が撓み、押圧された箇所の上導電層3が下導電層4に接触する。
【0038】
そして、電子回路から配線基板10の複数の配線パターン11を介して、一対の上電極5、6や下電極7、18へ順次電圧が印加され、上導電層3両端、及びこれと直交方向の下導電層4両端の電圧比によって、押圧された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0039】
つまり、タッチパネル背面の表示素子に、例えば複数のメニュー等が表示された状態で、所望のメニュー上の上基板1上面を押圧操作すると、この操作した位置を配線基板10の複数の配線パターン11を介して電子回路が検出して、複数のメニューの中から所望のメニューの選択や、あるいは確定等の操作が行えるように構成されている。
【0040】
また、以上のようなタッチパネルを製作するには、先ず、下面に酸化インジウム錫等の上導電層3が形成された上基板1や、上面に下導電層4が形成された下基板2に、印刷等によって上電極5、6や下電極7、18を形成した後、これらを覆うように同じく印刷等によって、上基板1下面と下基板2上面の外周内縁に略額縁状のスペーサ9を形成すると共に、前端の切欠部9A内に上電極5、6や下電極7、18前端を延出させる。
【0041】
そして、上基板1と下基板2をスペーサ9によって、上導電層3と下導電層4が所定の空隙を空けて対向するように貼り合せると共に、異方導電接着剤を塗布した配線基板10の後端を、スペーサ9前端の切欠部9A内の上基板1と下基板2の間に挟み込む。
【0042】
なお、この時、スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10後端の間には隙間が殆んどないが、切欠部9Aと配線基板10左右端の間には上述したように、左右各々に2mm前後の隙間Lが設けられているため、これによって配線基板10を左右方向へ動かして、各配線パターン11後端と上電極5、6や下電極7、18前端に、中心ずれがなく一致して重なるように、左右方向の位置合わせを行う。
【0043】
さらに、この後、切欠部9A内の配線基板10後端とこの上下の上基板1と下基板2前端を加熱加圧し、配線基板10の配線パターン11後端を上電極5、6や下電極7、18前端に接着接続して、タッチパネルが完成する。
【0044】
すなわち、配線基板10を接着接続する際、スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10左右端の間に、各々2mm前後の隙間Lを設け、この範囲で配線基板10を動かして左右方向の位置合わせを行うことによって、配線パターン11後端と上電極5、6や下電極7、18前端を、中心ずれのない状態で接着接続できるようになっている。
【0045】
なお、この時、上電極5、6や下電極7、18の前端は、上記のように配線パターン11後端に圧着され、その他の上基板1や下基板2の外周に延出した箇所は、略額縁状のスペーサ9によって覆われているが、スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10外周の間の隙間Lには、例えば切欠部9Aと配線基板10右端の間には、下電極18の一部が露出している。
【0046】
このため、この露出した箇所に万が一、皮膚屑のような塩化ナトリウム等を含む微細な異物が付着した場合、使用される周囲の温度や湿度等の環境、あるいは長期間の使用等によって、この異物が下電極18を形成するエポキシ等の樹脂を分解し、これによって下電極18の抵抗値が部分的に高くなってしまう場合があるが、本発明においては、この隙間Lに露出した箇所の下電極18は、前後に二股状に分岐した複数の下電極18Aと18Bから形成されている。
【0047】
したがって、タッチパネル製作時や長期間使用される間に万が一、この隙間Lに露出した箇所に皮膚屑等の異物が付着したとしても、例えば一方の下電極18Aに異物が付着し、これによって下電極18Aの抵抗値が部分的に高くなったとしても、他方の異物が付着せず抵抗値の低い下電極18Bによって、安定した操作位置の検出が行えるようになっている。
【0048】
つまり、スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10外周の間の隙間Lに露出する箇所の下電極18を、二股状に分岐した複数の下電極18Aと18Bから形成することによって、異物の付着等によって一方の下電極18Aの抵抗値が高くなった場合でも、他方の下電極18Bによって安定した操作位置の検出が可能なように構成されている。
【0049】
また、このように隙間Lに露出する箇所の下電極18を、複数の下電極18Aと18Bから形成することで、隙間Lに接着剤等を塗布して、これらを覆う必要もないため、製作も短時間で容易に行うことができ、タッチパネルを安価に製作できるようになっている。
【0050】
なお、以上の説明では、スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10外周の間に露出する箇所の下電極18を、複数の下電極18Aと18Bから分岐形成した構成について説明したが、例えば上電極5や6が隙間Lに露出するような構成の場合には、これらの露出した箇所を二股状に分岐した複数の上電極から形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0051】
このように本実施の形態によれば、スペーサ9の切欠部9Aと配線基板10外周の間に露出する箇所の、上電極5や6または下電極7や18を複数に、例えば下電極18を複数の下電極18Aと18Bに分岐形成することによって、異物の付着等によって、例えば一方の下電極18Aの抵抗値が高くなった場合でも、他方の下電極18Bによって安定した操作位置の検出が行えると共に、露出した箇所を接着剤等で覆う必要がないため、製作も容易に行うことができ、安価で、確実な操作が可能なタッチパネルを得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によるタッチパネルは、安価で、確実な操作が可能なものを得ることができるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 上基板
2 下基板
3 上導電層
4 下導電層
5 上電極
6 上電極
7 下電極
9 スペーサ
9A 切欠部
10 配線基板
11 配線パターン
18、18A、18B 下電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に上導電層が形成された上基板と、上面に下導電層が形成された下基板と、上記上導電層の両端から上記上基板前端へ延出する一対の上電極と、上記下導電層の上記上導電層とは直交方向の両端から上記下基板前端へ延出する一対の下電極と、上記上基板下面及び上記下基板上面の外周内縁に形成され、前端に切欠部が設けられた略額縁状のスペーサと、複数の配線パターンの後端が上記上電極及び上記下電極前端に接続された配線基板からなり、上記スペーサの切欠部と上記配線基板外周の間に露出する箇所の、上記上電極または上記下電極を複数に分岐形成したタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−88822(P2012−88822A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233220(P2010−233220)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】