説明

タッチ感知式デバイス

ユーザ/機械インタフェースは、表面を有し且つ撓み波を支持可能なパネルと、表面に関連付けられたタッチ感知式入力デバイスと、入力デバイスに力フィードバックを供給するための力変換器を含む手段とを備える。力は、パネルに対するパルス形式であり、パルスは、ボタンクリック感覚をユーザの指先に提供するような減衰正弦波として波形成形された変調信号の形式である。変調信号は、150〜750Hzの範囲で且つ少なくとも10msの持続時間である基調搬送周波数によって発生させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ/機械インタフェースの性質を有するタッチ感知式デバイスに関する。より具体的には、限定ではないが、本発明は、振動音響デバイスとタッチ感知式デバイスとを組み合わせた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撓み波又は分布モードラウドスピーカ(DML)が、New Transducers Ltd名義の国際特許出願WO97/09842及び他の文献において記載されている。このようなラウドスピーカは、ラウドスピーカ要素が追加の機能性を有するような用途で用いることができる。例えば、国際特許出願WO97/09843、WO97/09853、及びWO01/31971では、こうしたパネルを天井タイル、投射スクリーン、及びキーボードとしてそれぞれ用いることを記載している。
【0003】
更に、DML技術の応用は、タッチ感知式機能を組み込んだ透明及び不透明な両方のラウドスピーカパネルの用途にまで広がっている。例えば、国際特許出願WO00/54548では、ユーザアクセス可能な表面を有する撓み波パネル部材と、印加される電気信号に応答して撓み波エネルギーをパネル部材にもたらすためのパネル部材上にある電気音響振動励振器と、ユーザアクセス可能表面上又はこれに関連して取り付けられ且つユーザ接触に応答する少なくとも1つのタッチ感知式領域とを含むラウドスピーカを組み込んだ電子装置を記載している。国際特許出願WO01/48684では、表示装置の前部に取り付けられた透明なタッチ感知式プレートを備える接触感知デバイスを記載している。
【0004】
国際特許出願WO02/51201では、表面を定める撓み波パネル及び撓み波パネルに取り付けられてパネル内に撓み波を励振する電気音響変換器を有し、音響出力と、表面の一部を形成する入力デバイスと、該入力デバイスへの力フィードバックを提供する手段とを提供する撓み波パネルラウドスピーカを備えた装置を記載している。
【0005】
国際特許出願WO01/54450では、例えばパネルなどの音響放射体を励振する力を発生して音響出力を生成するようにする変換器を記載している。変換器は、目的とする作動周波数帯域を有し、モード分布を有し且つ作動周波数範囲帯域においてモード性がある共振素子を備える。変換器のパラメータは、共振素子のモダリティを改善するように調整することができる。このような力変換器は、分布モードアクチュエータ又は「DMA」として公知である。
【0006】
触知フィードバックを備えたタッチパネルは、米国特許第5,977,867号及びWO2008/045694から公知である。
【0007】
【特許文献1】WO97/09842公報
【特許文献2】WO97/09843公報
【特許文献3】WO97/09853公報
【特許文献4】WO01/31971公報
【特許文献5】WO00/54548公報
【特許文献6】WO01/48684公報
【特許文献7】WO02/51201公報
【特許文献8】WO01/54450公報
【特許文献9】米国特許第5,977,867号公報
【特許文献10】WO2008/045694公報
【非特許文献1】Massachusetts工科大学機械工学科のLynette Jonesによる「Human Factors and Haptics Interfaces」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は改善されたタッチ感知式デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様によれば、本発明は、表面を有し且つ撓み波を支持可能なパネルと、表面に関連付けられたタッチ感知式入力デバイスと、入力デバイスに力フィードバックを与えるための力変換器を含む手段とを備え、力がパネルに対するパルス形式のものであり、パルスがボタンクリック感覚をユーザの指先に提供するような変調信号の形式であり、変調信号が150〜750Hzの範囲の基調搬送周波数を有し且つ少なくとも10msの持続時間であるユーザ/機械インタフェースを提供する。
【0010】
好ましくは、搬送周波数は400Hz近くにある。40msよりも長い持続時間はクリック感覚を改善しないことが分かっている。
【0011】
変調信号は、振幅及び/又は周波数変調することができる。変調信号は、減衰正弦波の形式とすることができる。変調信号は次式とすることができる。

又は、

ここで、αは包絡線の減衰率、
Cは定数、
βは周波数変調の割合を制御するパラメータ、
ωcは時間t=0での角周波数、
である。
【0012】
搬送波の周波数変調は、時間に対する変調の深さ及びコンテンツを定める所定関数を有することができる。変調信号基本波(すなわち、一次成分)は、上記で定義された狭周波数範囲及び短いパルス幅を有するような狭帯域正弦波を有することができる。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、パネルが撓み波パネルラウドスピーカの音響放射体であり、変換器が音響出力と力フィードバックの両方を発生する広帯域デバイスである、上述のユーザ/機械インタフェースを備えた装置を提供する。
【0014】
変換器は、分布モードアクチュエータ(WO01/54450で説明される)を含み、分布モードアクチュエータの第1のモードは変調信号に調整することができる。
【0015】
変調信号はパネルの本体全体モードに調整することができる。例えば、スマートフォン又はパーソナルデータアシスタント(PDA)用にパネルが小型である場合、パネルのアスペクト比は3:2とすることができる。パネルは、裏面を密閉する浅いキャビティを有することができる。
【0016】
パネルのスチフネス及びアクチュエータの出力インピーダンスは、30mNよりも大きな力をユーザの指先に提供するよう構成することができる。好ましくは、指先に提供される力は、30から500mNの範囲にあるように構成される。
【0017】
2つ又はそれ以上の分布モードアクチュエータは、パネルに取り付けられ、タッチ位置でパネル変位を増強するように構成される。デジタル信号処理を利用して、タッチ位置でパネル変位を増強するように変調信号の波形成形することができる。
【0018】
従って、装置は、ラウドスピーカと同じ表面への力フィードバック機構とを組み合わせることができる。パネルは、リンガーラウドスピーカ、及び/又はモバイル又は携帯電話、ページャー、その他用の振動変換器として機能することができる。或いは、力フィードバック機構は、触覚機構として公知である。
【0019】
装置は、撓み波パネルに関連付けられた視覚表示装置を含むことができる。視覚表示装置は、液晶ディスプレイ(LCD)パネルなどの従来のディスプレイ表面の形式とすることができる。パネルの少なくとも一部は透明とすることができ、視覚表示装置はパネルの透明部分の背後に装着することができ、よってパネルは透明ディスプレイウィンドウとして機能することができる。或いは、パネルはまた、例えば発光ポリマー又は色素を含む発光表面仕上げを施すことによって、ディスプレイとして機能することができる。従って、デバイス中の構成要素の数を汎用性又は機能性を失うことなく削減することができる。
【0020】
他の機能を備えることもできる。パネルはマイクロフォンとして機能することができる。或いは、1つ又はそれ以上のマイクロフォンをパネル又はデバイスのケースに取り付けることができる。以下のアイテム、すなわち静止画又はビデオカメラ、加熱及び/又は冷却素子、並びに例えば化学合成品、電子センサ、露出計、その他のような種々の他のセンサのいずれかをパネル又はケースに取り付けることができる。
【0021】
受動的色彩仕上げ(例えば、防幻又は鏡面仕上げ)などの色彩特徴をパネルに含めることができる。代替的に或いは追加的に調光又は熱変色性などの能動的色彩部を設けることもできる。パネルは、表面テクスチャ及び/又は変化する表面輪郭を有することができる。
【0022】
広範な音響及び他の感覚機能をパネルに同時に統合することができる。従って、パネルは、多数の機能相乗作用をもたらすことができる単一構成部品の組立体であるので高機能表面(HFS)と呼ぶことができる。パネルにより提供される機能は、上述の機能のいずれかから選択することができる。例えば、透明なタッチ感知式パネルを力フィードバック機構と共に用いることにより、情報を見て、音響信号(メッセージ、ビープ音、クリック音、その他)を聞き、人の指先を通じて模擬ボタンクリックを感じるのに用いることができる装置を得ることが可能になる。
【0023】
本装置の1つの利点は、タッチ感知式パネルを用いることによって、別個のキーパッドの必要性を排除可能になる点とすることができる。これは、例えば、構成部品のスペースが限られているハンドヘルドデバイスなどの小型電子製品に特に有用とすることができる。特定の用途(例えば、通信及びコンピュータ)では、デバイスのサイズ又はバルク、すなわち個々の構成部品が収容される内部容積は減少しており、ゼロに向かう傾向にある。従って、このようなデバイスの有用性は、単位表面積当たりの機能性の観点で表現することができる。本発明は、この傾向を見越して、設計者にあらゆる所与の表面に対する感覚の選択肢の範囲を最大にする方法を提供する。
【0024】
本発明による装置は、複数の機能を提供するのに必要な表面積を低減することができる。本発明は、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)と呼ぶことができるこうした装置の製造及び使用の有意な利点をもたらす機能性及び他の感覚機能と振動音響デバイスとの併合に関連するとみなすことができる。
【0025】
こうした複数の組み合わせは、従来のラウドスピーカを用いるとより困難になる。従来のラウドスピーカのコーン上にキーパッド、ディスプレイ、その他を装着することは、コーンの機能を妨げる可能性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
ここで、本発明の実施形態を純粋に例証として添付図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、ケース3とタッチ感知式パネル5の形態のユーザ/機械インタフェース(入力デバイス)とを有する、スマートフォン又はパーソナルデータアシスタント(PDA)の形態の本発明による装置を示す。パネルは、複数の振動音響を行う目的で撓み波振動に設定されることになる適切な厚みと適度な機械的インピーダンスがある。パネルは、パネルの背後に装着される液晶ディスプレイ(LCD)9が見えるように透明な材料で作られる。
【0028】
パネルは、ラウドスピーカの音響放射体として機能し、撓み波を支持することができる。第1の変換器15がパネルに装着され、パネル内で撓み波振動を励振して音響出力を生成するようにする。音響出力の音量は、ハンズフリーラウドスピーカ電話として会議モードで、或いはユーザの耳に保持される電話モードでPDAを利用できるように調整することができる。
【0029】
また、第2の励振器13がパネル上に装着され、キーが押されたときにパネルにパルスを供給し、すなわち触覚又は触知フィードバックを供給するようにする。ラウドスピーカ機能とフィードバック機能の両方を提供する単一のデュアル機能ブロードバンド変換器を備えてもよい。デュアル機能変換器、或いは第1又は第2の変換器のいずれかはまた、無音の呼出し信号を送出するために身体知覚帯域でエネルギー供給可能とすることができる。従って、パネルは、例えば受話器、ハンドフリースピーカ又はリンガーとしてマルチモードラウドスピーカを動作させる。
【0030】
パネル5はまた、キーパッド又はキーボードとして機能する。キーパッドの個々のキー11は、パネルの下に装着されたディスプレイ上に現れることができ、或いはキーは、表面上にマーク付けすることができる。マイクロフォン変換器7はまた、パネルがマイクロフォンとして機能できるようにパネルに固定される。或いは、音を取り込むことが可能なパネル又はケーシング、及び会議又はビデオモード時に音を再生する位置に1つ又はそれ以上のマイクロフォンを取り付けることができる。移動体通信用アンテナ及び関連する従来の移動電話回路(図示せず)により、デバイスが移動電話として機能し、又はメッセージ又はビデオ資料を送受信できるようになる。内蔵ビデオカメラを用いて画像を取り込むこともできる。
【0031】
上記で概説されたように、パネルは複数の機能を提供するので、高機能表面(HFS)と考えることができる。装置は簡単な構造を有し、各々がユーザのメインインタフェース媒体としてパネル(HFS)を用いる多くの別個のデバイスの機能を実施する。
【0032】
図2は、ケーシング23及びパネル25を有する携帯型多チャンネルプレーヤ21の形態の本発明による別の装置を示している。パネル25は、複数の領域に分割されており、各々が例えばラウドスピーカ、入力及び/又は表示機能など別個の機能を提供する。
【0033】
パネルは、3つのラウドスピーカ領域を有し、それぞれ左チャンネル31、右チャンネル33、中央チャンネル35を提供する。少なくとも1つの変換器(図示せず)が各パネル領域に装着され、パネル内で撓み波振動を励振して音響出力を生成する。図示のようにディスク29がプレーヤ21内に挿入されると、パネル25は、ディスクに記憶されている多チャンネル情報を再生することができる。
【0034】
パネル25の透明領域の背後にビデオ表示領域37が装着されている。表示領域37は、ディスク29からの情報を表示することができ、或いは、パネル25のキーボード領域27上でユーザがデバイスに入力した情報を表示することができる。ユーザ/機械インタフェースを形成するキーボード領域27は、パネル25の表面上にマーク付けされた複数のキー39を含む。キー39は、例えば、図1に示すような変換器を設けることによって、触覚又は触知フィードバックを提供するように構成される。
【0035】
図3は、図1のPDA又は図2のディスクプレーヤの側断面図である。図3では、撓み波ラウドスピーカパネル5は、周辺コンプライアント取り付け部6を介してデバイス1、21のケース又はハウジング3内に装着されることが分かる。変換器15は、パネル5の裏面又は内面に装着され、慣性タイプのものである。変換器は、撓み波エネルギーをパネル5に加え、音響出力を生成するよう配置される。変換器は、WO97/09842に記載のタイプ、又はWO01/54450に記載のタイプのものとすることができる。変換器13は、分布モードアクチュエータであり、デバイスのケーシング又はハウジング3に装着され、カプラを用いてパネル5に結合されてパネルに力フィードバックを加える。変換器13は、矢印2で示すようにユーザの指先によりパネル表面10上にタッチされたときにパネルに変調又は過渡スパイク信号を印加し、矢印4で示すように指先に相対するフィードバック力を加えてボタン又はキークリックをシミュレートするようにする。
【0036】
図4のブロック図は、上述の種類の力フィードバック又は触覚構成の回路システム48を示している。撓み波パネル放射体5は、生のタッチデータ2を出力するタッチ感知式表面10を組み込む。1対の力アクチュエータ13がパネル5に結合され、ユーザに触覚フィードバックを提供する。生のタッチデータがインタフェース47により処理され、好適な形態で触覚論理制御ユニット46に供給される。この触覚論理制御ユニット46は、情報を中央プロセッサ(図示せず)に送り、タッチデータ及びその保全性に関する視覚及び/又は音声情報を提供することができる。中央プロセッサはまた情報を受け取って、例えば、ユーザに対する触覚応答を修正し、更なる情報を提供することができる。
【0037】
記憶装置を含むことができるジェネレータ45は合成信号を提供し、この合成信号は、適切な振動入力を増幅器44に提供するよう波形成形され、これが力変換器13に供給される。複数の変換器13に対して複数の増幅器出力を提供し、触覚力のより特定の位置を定めるようにすることができる。増幅器44はまた、中央プロセッサの制御を受けて、例えば、漸変される触覚応答を提供することができる。図4に示すシステムは、図示しない通常電源を必要とする点は理解されるであろう。
【0038】
増幅器は、過渡的なスパイク信号又はパルスを変換器13に出力するよう構成される。図5aは、減衰正弦波の形式の振幅変調信号、すなわち振幅が時間と共に減少する電磁波である信号を示している。図に明確に示されているように、信号の振幅は、0.01秒の後にピークがあり、0.04秒で有意に減少しており、よって「ボング」と呼ぶことができる。
【0039】
この信号は、次式の形の包絡関数(振幅変調関数)を用いて作成される。

ここでαは包絡線の減衰率である。
【0040】
この関数の値は、時間零で0であり、無限大で0に向かう。t=1/αで最大値1がある。従って、αを適切に選ぶことにより、任意のパルス幅を決定することができ、パルスの持続時間はαに反比例する。
【0041】
この包絡関数を用いて正弦波信号と包絡関数の積である合成信号を生成し、次式が得られる。

ここでωcは時間t=0での角周波数である。
【0042】
よって、この信号は変調正弦波であり、sin(ωct)はsin(φ(t))で表すことができる。この関数は、例えばwt+定数のような単純なものとすることができ、或いは、より複雑なもの、すなわち周波数又は位相変調を含むようにすることができる。φ(t)の一般形は、

であり、ここでCは定数、βは周波数変調の割合を制御するパラメータ、ωcは時間t=0での角周波数である。
【0043】
種々の自由変数、例えばα、β、並びに定数Cは、信号スペクトルと指の感度データとの間の良好な一致をもたらす値が割り当てられている。単純なケースでは、f(t)のスペクトルは、分析的に計算することができるが、一般的には数値フーリエ変換が必要となる。最良の信号であれば、正弦関数のピークと一致するように振幅(すなわち包絡線)のピークが設定されることは理解される。従って、単純な式φ(t)=ωctにおいて、αの値=583が最適値であり、ωcは628πである。
【0044】

では、αの値=493が最適値であり、β=99.9、ωc=572πである。
【0045】
包絡線の長さは、10msよりも長い必要があるが、長さが約40msを超えて増大すると、可検出性が改善されないことになる。これらの持続時間は、125〜500の範囲のαの値に相当する。信号は可聴性であるので、「良好な」音声信号であるのが好ましい。αの値が小さくなるほど、かなり純粋なトーン様音を生じ、より大きな値はクリック様音を生じる。図5aに示す信号では、中央周波数が375Hz、α=125である。この信号のパワースペクトルは、図5bに示されており、ここでこの信号の帯域幅が約1半音であることが分かる。これらの信号を有する旋律を再生することは全く可能である。
【0046】
分散は、信号の波の速度を信号の周波数帯域にわたって変化させる可能性がある特定材料の作用である。図5cに示すように、信号が狭帯域であるので分散は問題にはならない。図5aの信号では、通信用途において標準的な被覆プラスチックパネルに沿って1m進んだ後、包絡線の変形は見られない。より短いパルスでは、幾らかの変形が見られる場合があるが、これはプラズマTVを除けばいずれのものよりもかなり大きいので、この作用は重要ではないとみなされる。400Hzではパネル内の波長は約100mmであり、大面積ディスプレイを除く全てについて触覚フィードバックのどのような局在性も無関係になることに留意されたい。
【0047】
周波数は、人間の指の変位感知により求められる。Massachusetts工科大学機械工学科のLynette Jonesによる「Human Factors and Haptics Interfaces」と題されたpdf文書では、「触知調整曲線」が示されている。これは変位に対する感度の周波数依存閾値を示している。このpdf文書に示されているデータは、次式で記述される全伝達関数(最小位相)を用いて図5dで比較される。

ωc=2366、α=1107
【0048】
図5dから、搬送波の周波数は250Hzから700Hzの間にある必要があり、特に400Hzに近い周波数が有効であることは明らかである。興味深いことに、この関数H(s)は、上記で使用した関数f(t)のラプラス変換F(s)に似ており、すなわち

である。
【0049】
指により与えられるインピーダンスは、本質的に、最大約3kHzまでの全周波数について約22kN/mのスチフネスを有するバネのものであり、その後では、減衰性が次第に重要になる。結果として、力に対する指の感度は、変位に対する感度から直接スケール調整するようにして推測することができる。300HZ前後では、力感度閾値は約30mNに計算される。従って、パネルスチフネス及びアクチュエータの出力インピーダンスは、ユーザの指先に対して30mNよりも大きい、好ましくは300mNから500mNの力を提供するよう構成される。
【0050】
代替の減衰正弦波信号は、周波数及び振幅が変調された余弦関数であり、すなわち、

h(t)は上記で使用された包絡関数g(t)と周波数変調関数fm(t)との積である。βは周波数変調の割合を制御するパラメータ、ωcは時間t=0での角周波数である。
【0051】
上述のように、種々の自由変数、例えばα、βは、信号スペクトルと指の感度データとの間の良好な一致をもたらす値が割り当てられている。この関数は更に、新しい変数Aを関数に付加することによって更に変えることができる。

【0052】
次に、この修正関数は、目標とする触覚スペクトルに最適に適合させることができる。最良の信号では、t=1/αでの包絡線のピークは余弦関数のピークに一致することが分かった。このケースでは、Aを直接設定することができる。初等微積分学を用いると、正しい値により余弦の引数がt=1/αで0に設定されることが確認され、すなわち、

上述のように、h(t)は、包絡関数g(t)と周波数変調関数fm(t)との積であるが、このケースでは、

である。
【0053】
3つの変数の最適値、α=532.5、β=83.85、ωc=3133は、元の関数の値とは僅かに異なる。両方のケースにおいて、パラメータは、振動に対する指先の相対感度を振動数の関数として示すスペクトルテンプレートと一致するよう選択される。目的は、指が最も高感度となる周波数帯域において最大エネルギーにすることである。
【0054】
図6は、信号の包絡関数g(t)(振幅変調関数)及び周波数変調関数fm(t)についての時間変動を示している。図6aはまた、αがどのように得られるかを示している。非ゼロの第1の交点のタイミングは1/αに等しい。図6bは、ユーザに対する所望の感知を与える目標スペクトル(破線)と上記で詳細に説明された変調関数の実スペクトルとを示している。2つのスペクトル間には良好な一致がある。パラメータの他の値又は他の信号を用いて同様の目的を達成することができる。図7a及び7bの信号は、正にこうした信号であり、パラメータ値はまた目標スペクトルに一致するように選択される。
【0055】
図7a及び7bは、周波数領域で始まるベースを有し、次式で表される代替の変調正弦波信号を示している。

ここで、a=96505=310.72、b=2011、A=5.181rad=297°である。
【0056】
図7aは、感度曲線(fm(t))が正規分布曲線に似ていることを示している。また、この曲線(fm(t))が自己フーリエ変換であることも知られており、よって時間領域信号も同様である。図7aはまた、aとωcがどのように算出されるかを示している。a及びωcは上述のように算出される。図7bに示すように、この代替形態は、図6aの信号と同程度の良好な目標スペクトルへの当てはめは提供しないが、スペクトルの高周波数端がより早く低下するという主な利点がある。
【0057】
2つの信号を比較すると、同じピーク振幅に対して代替の信号の方がエネルギー効率が25%良いことが分かる。しかしながら、ある試験では、同じ感覚を得るためには振幅が15%〜20%大きいことが必要となることが示されており、これにより利点が相殺されるようになる。代替の信号では高周波数エネルギーが小さく、このことは信号をより無音にするのを大きく促進させることができる。要するに、両者の間に優劣はほとんどないことになる。
【0058】
上記で規定された帯域幅及び持続時間のパラメータ内のあらゆる信号が可能性のある候補であると留意することは重要である。上記で表された変調正弦波関数の特定の実施例は、好適な信号の1つに過ぎない。適切な変調(振幅、周波数、又は位相)を用いてあらゆる減衰正弦波関数(正弦波、余弦波、又は同様の関数)を用いることができる。
【0059】
図示の装置は、コンピュータ、通報器、ウェブTV、テレビ電話、カムコーダー、ディクタフォン(Dictaphone)、オーガナイザ、拡張リアリティウィンドウ、GPS/ナビゲーション、ゲーム、及び/又は装着ファッションアクセサリとして機能するよう適合させることができる。装置は更に、3Dイメージ知覚用の視聴装置又は追加音響チャネル(例えばリアチャンネル及びサブウーファ)を再生するための付加的な音源を備えることができる。図2のメディアプレーヤはディスクに記憶された音響及び視覚情報の実施例であるが、記憶手段もまた半導体メモリチップとすることができる点は理解されるであろう。従って、情報は、例えば無線リンク又はコンピュータからダウンロードすることができる。
【0060】
本発明は、他の機能の一部又は全てと共に別個の感覚機能の各々の組み合わせの総数として表すことができる多数の新規のデバイス選択肢を切り開くものと見なされる。各機能の組み合わせを適合させることにより、本発明は、以下の分野の各々で適用される。
a)全ての民生用途/産業用途での制御表面(ディスプレイ又は製品ハウジングを含む)
b)移動又は固定電話を含む電話、インターフォン、ページャー、或いはテレビ電話
c)ラップトップ又はパーソナルデータアシスタント(PDA)を含むマルチメディアデバイス
d)携帯型音楽又はビデオプレーヤ及びレコーダ、ディクタフォン(Dictaphone)、玩具、ゲーム、カメラ、ビデオカメラ、テレビ、3Dテレビ、バーチャルリアリティデバイス、拡張リアリティデバイス、又はビデオオンデマンドデバイスを含む電子製品
e)白物又は褐色家電製品、医療用デバイス、衣類、バッジ、ラベル、新製品、及びお祝い製品、クレジットカード、又はスマートカードなどの他の製品
f)例えば、家具又はオフィス備品などの建築用途
g)例えば、美術又は防衛などの他の用途
【0061】
当業者であれば他の多くの効果的な代替形態が想起されるであろう。本発明は、記載の実施形態に限定されず、当業者には明らかなように添付の請求項の精神及び範囲内にある修正形態を含む点は理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明によるパーソナルデータアシスタント(PDA)の斜視図を示す。
【図2】本発明によるハンドヘルドマルチチャンネルプレーヤの平面図を示す。
【図3】図1のデバイス又は図2のデバイスの側断面図である。
【図4】タッチセンサ及び触覚フィードバック回路のブロック図である。
【図5a】振幅変調信号の時間に対する振幅を示している。
【図5b】図5aの信号の相対パワースペクトルを示す。
【図5c】パネル上の点源から0.1mと1mの位置での図5aの信号のパルス形状を示している。
【図5d】人間の指の相対感度データと推定伝達関数を比較するための周波数(Hz)に対する絶対閾値(mm)を示す。
【図6a】周波数及び振幅変調正弦波信号の成分の時間に対する振幅のグラフである。
【図6b】図6aの信号のスペクトルと目標スペクトルのグラフである。
【図7a】別の変調減衰正弦波信号の成分の時間に対する振幅のグラフである。
【図7b】図7aの信号のスペクトルと目標スペクトルのグラフである。
【符号の説明】
【0063】
1 パーソナルデータアシスタント(PDA)
3 ケース
5 タッチ感知式パネル
7 マイクロフォン変換器
9 液晶ディスプレイ(LCD)
11 キー
13 第2の励振器
15 第1の変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有し且つ撓み波を支持可能なパネルと、前記表面に関連付けられたタッチ感知式入力デバイスと、前記入力デバイスに力フィードバックを与えるための力変換器を含む手段とを備え、
前記力が前記パネルに対するパルス形式のものであり、前記パルスが、ボタンクリック感覚をユーザの指先に提供するような変調信号の形式であり、前記変調信号が150〜750Hzの範囲の基調搬送周波数を有し且つ少なくとも10msの持続時間である、
ユーザ/機械インタフェース。
【請求項2】
前記搬送周波数が400Hz又はその近傍である、
請求項1に記載のユーザ/機械インタフェース。
【請求項3】
前記パルス持続時間が40msよりも長くない、
請求項1又は2に記載のユーザ/機械インタフェース。
【請求項4】
前記変調信号が振幅変調である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のユーザ/機械インタフェース。
【請求項5】
前記振幅変調信号が減衰正弦波の形式である、
請求項4に記載のユーザ/機械インタフェース。
【請求項6】
前記変調信号が周波数変調である、
前記請求項のいずれか1項に記載のユーザ/機械インタフェース。
【請求項7】
前記搬送波の周波数変調が、時間に対する変調の深さ及びコンテンツを定める所定関数を有する、
請求項6に記載のユーザ/機械インタフェース。
【請求項8】
前記変調信号基本波が狭帯域正弦波を含む、
前記請求項のいずれか1項に記載のユーザ/機械インタフェース。
【請求項9】
前記パネルが撓み波パネルラウドスピーカの音響放射体であり、前記変換器が音響出力と力フィードバックの両方を発生する広帯域デバイスである、
請求項1から8のいずれか1項に記載のユーザ/機械インタフェースを備えた装置。
【請求項10】
前記変換器が分布モードアクチュエータを含み、前記分布モードアクチュエータの第1のモードが変調信号に調整される、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記変調信号が前記パネルの本体全体モードに調整される、
請求項9又は10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記パネルが小型で実質的に3:2のアスペクト比を有する、
請求項9から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記パネルのスチフネス及び前記アクチュエータの出力インピーダンスが、30mNよりも大きな力をユーザの指先に提供するよう構成されている、
請求項9から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記指先に提供される力が30から500mNの範囲にあるように構成される、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記パネルに取り付けられ、且つタッチ位置において前記パネル変位を増強するように構成された少なくとも2つの分布モードアクチュエータを備える、
請求項9から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記タッチ位置において前記パネル変位を増強するためのデジタル信号処理を含む、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記撓み波パネルに関連付けられた視覚表示装置を備える、
請求項9から16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記パネルの少なくとも一部が透明であり、前記視覚表示装置が前記パネルの透明部分の背後に装着される、
請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記パネルが統合型視覚表示装置を含む、
請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記パネルがマイクロフォンとして機能する、
前記請求項のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2011−507088(P2011−507088A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537524(P2010−537524)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/GB2008/051167
【国際公開番号】WO2009/074826
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(507384629)ニュー トランスデューサーズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】