説明

タッチ描画表示装置及びその操作方法

【課題】タッチ操作による描画中に、ユーザの意図しないスクロールを防止することができるタッチ描画表示装置及びその操作方法を提供する。
【解決手段】画像を表示するための表示パネルと、表示パネルに重畳して配置され、タッチされた位置を検出するためのタッチパネルとを備えたタッチ描画表示装置において、検出された位置の移動によって形成される軌跡504の開始位置500が、タッチパネルの端部領域400内にある場合、表示パネルに表示されている画像をスクロールし、検出された位置の移動によって形成される軌跡の開始位置が、端部領域400外にある場合、この軌跡に対応する線410を、表示パネルに表示されている画像上に描画する。これにより、タッチ操作による描画中に、タッチの軌跡が端部領域を通過しても、ユーザの意図しないスクロールを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置と入力装置とを含むタッチ描画表示装置に関し、特に、タッチ操作によって描画とスクロールとを両立させて実行可能なタッチ描画表示装置及びその操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチ描画表示装置の1つである、会議等で用いられる電子黒板として、様々な構成のものが実用化されている。特に、大型の表示画面を有する表示装置と、タッチパネル等の2次元における位置座標を検知する入力装置とを組合せ、コンピュータシステムとして構成された電子黒板装置が利用されている。
【0003】
一般的に、電子黒板装置は、ペン等によって指定される位置座標及び移動量の情報を逐次読取り、読取った情報を元に入力の軌跡を表示装置に表示する。これによって、電子黒板装置は手書き入力等の、電子黒板としての動作を実現している。
【0004】
タッチ操作による入力装置に関して、下記特許文献1には、入力パッドの周縁部に、入力パッドの辺に沿って機能領域を配置し、機能領域内で指等が接触した位置を移動させることによって、表示されている画像をスクロールさせる入力処理装置が開示されている。この入力処理装置においては、入力パッドとの接触位置が機能領域内で辺に沿って移動された後、接触したまま曲線軌跡で連続的に周回された場合、スクロール動作を継続する。
【0005】
また、下記特許文献2には、タッチ操作を採用し、表示された画面上に描画可能な投射型のプレゼンテーション装置が開示されている。繰返し同じ画面に書込みされると元画像の認識が難しくなる問題を解決するために、本装置においては、作図領域において連続してタッチ操作される間描画し、作図領域でのタッチ操作が一旦終わった後、次に作図領域でタッチ操作が検出されると、先の図形を自動的に削除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−182197号公報
【特許文献2】特開平6−175776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような電子黒板装置において、表示画面の描画領域内にページ操作ボタン(ページ送りボタン及びページ戻しボタン)を配置することがある。これらのボタンにタッチすると、表示されている画像(ページ)がスクロールし、別の画像(次のページ又は前のページ)に変更される。通常、これらのボタンは描画領域の周縁部に配置される。また、上記した特許文献1に開示されているように、表示画面の周縁部に、スクロール操作のための機能領域が設定される場合もある。
【0008】
これらの場合、ユーザがタッチ操作によって描画等を行なっているときに、タッチ位置の軌跡が誤ってページ操作ボタン又は機能領域の上を通過すると、表示されている画像が予期せずスクロールする問題がある。予期せずスクロールした場合、ユーザは元の画像を表示するための操作を行なわなければならない。また、これを避けるために、タッチの軌跡が周縁部を通過しないように常に注意することを、ユーザに強いることにもなる。したがって、ユーザにとって煩雑であり、議論に集中できない原因になる。
【0009】
これは、電子黒板装置に限らず、タブレット型の端末装置等、タッチによる描画を表示可能な表示装置において生じる問題である。上記の特許文献2に開示された発明によっては、この問題は解決されない。
【0010】
したがって、本発明は、タッチ操作による描画中に、ユーザの意図しないスクロールを防止することができるタッチ描画表示装置及びその操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、下記によって達成することができる。
【0012】
即ち、本発明に係るタッチ描画表示装置は、画像を表示するための表示部と、表示部に重畳して配置され、タッチされた位置を検出するための検出部とを備え、検出された位置の移動によって形成される軌跡の開始位置が、検出部の所定領域内にある場合、表示部に表示されている画像をスクロールし、検出された位置の移動によって形成される軌跡の開始位置が、所定領域外にある場合、この軌跡に対応する線を、表示部に表示されている画像上に描画する。
【0013】
好ましくは、所定領域は、検出部の辺に沿った、検出部の端部に位置する領域であり、スクロールを指示するためのボタンが所定領域内に配置される。
【0014】
より好ましくは、検出された位置の移動によって形成される軌跡の開始位置がボタン上にある場合、ボタンによる指示によるスクロールが実行され、検出された位置の移動によって形成される軌跡の開始位置がボタン上にない場合、軌跡がボタンの上を通過しても、ボタンによる指示によるスクロールは実行されない。
【0015】
本発明に係るタッチ描画表示装置の操作方法は、画像を表示するための表示部と、表示部に重畳して配置され、タッチされた位置を検出するための検出部とを備えたタッチ描画表示装置の操作方法であって、検出された位置の移動によって形成される軌跡の開始位置が、検出部の所定領域内にあるか否かを判定するステップと、開始位置が所定領域内にあると判定された場合、表示部に表示されている画像をスクロールするステップと、開始位置が所定領域内にないと判定された場合、軌跡に対応する線を、表示部に表示されている画像上に描画するステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タッチ操作によって描画とスクロールとを両立させて実行可能となる。即ち、描画領域の端部領域におけるタッチ操作によるスクロールを有効にしたまま、描画モード中にタッチの軌跡が端部領域を通過しても、ユーザの意図しないスクロールが行なわれることを回避することができる。したがって、ユーザは、端部領域を気にすることなく描画を行ない、議論に集中することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子黒板装置の構成の概要を示すブロック図である。
【図2】タッチ入力の検出方法の一例を示す図である。
【図3】表示画面の一例を示す図である。
【図4】図1に示した電子黒板装置においてタッチ操作により描画及びスクロールを両立させて実現するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図5】タッチ操作による描画を示す図である。
【図6】タッチ操作によるスクロールを示す図である。
【図7】タッチ操作による描画の後に実行される、タッチ操作によるスクロールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0019】
また、以下において、「タッチ」とは入力位置の検出装置が位置を検出可能な状態になることを意味し、検出装置に接触して押圧する場合、押圧せずに接触する場合、及び、接触せずに近接する場合を含む。後述するように、入力位置の検出装置には、接触型に限らず非接触型の装置を用いることもできる。非接触型の検出装置の場合には「タッチ」とは、入力位置を検出可能な距離まで検出装置に近接した状態を意味する。
【0020】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る電子黒板装置100は、演算処理部(以下、CPUと記す)102、読出専用メモリ(以下、ROMと記す)104、書換可能メモリ(以下、RAMと記す)106、記録部108、インターフェイス部(以下、IF部と記す)110、タッチ検出部112、表示部114、表示制御部116、ビデオメモリ(以下、VRAMと記す)118、及びバス120を備えている。CPU102は、電子黒板装置100全体を制御する。
【0021】
ROM104は不揮発性の記憶装置であり、電子黒板装置100の動作を制御するために必要なプログラム及びデータを記憶している。RAM106は、揮発性の記憶装置である。記録部108は、通電が遮断された場合にもデータを保持する不揮発性記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等である。記録部108は着脱可能に構成されていてもよい。CPU102は、バス120を介してROM104からプログラムをRAM106上に読出して、RAM106の一部を作業領域としてプログラムを実行する。CPU102は、ROM104に格納されているプログラムにしたがって電子黒板装置100を構成する各部の制御を行なう。
【0022】
バス120には、CPU102、ROM104、RAM106、記録部108、IF部110、タッチ検出部112、表示制御部116、及びVRAM118が接続されている。各部間のデータ(制御情報を含む)交換は、バス120を介して行なわれる。
【0023】
IF部110は、ネットワーク等の外部との接続を行ない、ネットワークに接続されたコンピュータ等との間で画像データを送受信する。IF部110を介して外部から受信した画像データは、記録部108に記録される。
【0024】
表示部114は、画像を表示するための表示パネル(液晶パネル等)である。表示制御部116は、表示部114を駆動するための駆動部を備え、VRAM118に記憶された画像データを所定のタイミングで読出し、表示部114に画像として表示するための信号を生成して、表示部114に出力する。表示される画像データは、CPU102が記録部108から読出して、VRAM118に伝送する。
【0025】
タッチ検出部112は、例えばタッチパネルであり、ユーザによるタッチ操作を検出する。タッチ検出部112にタッチパネルを用いる場合のタッチ操作の検出について、図2を参照して説明する。
【0026】
図2は、赤外線遮断検出方式のタッチパネル(タッチ検出部112)を示す。タッチパネルは、長方形の書込面の隣接する2辺にそれぞれ一列に配置された発光ダイオード列(以下、LED列と記す)200、202と、それぞれのLED列200、202に対向させて一列に配置された2つのフォトダイオード列(以下、PD列と記す)210、212とを備えている。LED列200、202の各LEDから赤外線を発光し、この赤外線を対向するPD列210、212の各PDが検出する。図2において、LED列200、202の各LEDから赤外線を上向き及び左向きの矢印で示す。
【0027】
タッチパネルは、例えばマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)(CPU、メモリ、入出力回路等を含む素子)を備え、各LEDの発光を制御する。各PDは、受光した光の強度に応じた電圧を出力する。PDの出力電圧は、アンプによって増幅される。また、各PD列210、212の複数のPDからは同時に信号が出力されるので、出力信号は一旦バッファに保存された後、PDの配列順序に応じたシリアル信号として出力され、マイコンに伝送される。PD列210から出力されるシリアル信号の順序は、X座標を表す。PD列212から出力されるシリアル信号の順序は、Y座標を表す。
【0028】
ユーザがタッチペン220でタッチパネル上の1点にタッチすると、タッチペン220のペン先によって赤外線が遮断される。したがって、遮断される前まで、その赤外線を受光していたPDの出力電圧は減少する。タッチされた位置(XY座標)に対応するPDからの信号部分が減少するので、マイコンは、受信した2つのシリアル信号の信号レベルが低下している部分を検出し、タッチされた位置座標を求める。マイコンは、決定した位置座標をCPU102に伝送する。このタッチ位置を検出する処理は、所定の検出周期で繰返されるので、同じ点が検出周期よりも長い時間タッチされていると、同じ座標データが繰返し出力される。タッチペン220を使用せずに、指でタッチ検出部112にタッチしても、同様にタッチされた位置を検出することができる。
【0029】
上記したタッチされた位置の検出技術は公知であるので、これ以上の説明は繰返さない。また、タッチ検出部112には、赤外線遮断方式以外のタッチパネル(静電容量方式、表面弾性波方式、抵抗膜方式等)を用いてもよい。なお、静電容量方式では、センサに近接していれば非接触でも位置を検出することができる。
【0030】
表示部114には、図3に示すような画面が表示される。表示部114の表示画面は、描画領域230と機能ボタン領域240とに区分されている。描画領域230は、ユーザがタッチ操作によって描画できる領域である。即ち、タッチされた点及びその移動軌跡のXY座標が、上記したようにタッチ検出部112からCPU102に伝送される。CPU102は、受信した座標データに応じて、VRAM118上の対応するメモリアドレスに所定値を書込む。VRAM118上の画像データの画素値を変更してもよいが、ここでは、VRAM118は、画像データを記憶する領域とは別に、描画データを記憶する領域(以下、オーバレイ領域とも記す)を備えているとする。この場合、例えば、オーバレイ領域の描画されていないメモリアドレスのデータを“0”として、CPU102は、描画位置に対応するメモリアドレスに“1”を書込む。表示制御部116は、画像データと描画データ(オーバレイ領域のデータ)とをスーパーインポーズして表示部114に表示する。即ち、描画データがある点(例えばオーバレイ領域に“1”が記録されている画素)では描画データを表示(予め設定された色を表示)し、描画データがない点(例えばオーバレイ領域に“0”が記録されている画素)では画像データを表示する。
【0031】
機能ボタン領域240には、各々特定の機能が割当てられた機能ボタン242が表示される。描画領域230の下部には、ページ操作領域250が表示される。この領域には、ページ送りボタン252、ページ戻しボタン254、及びページ番号表示欄256が表示される。ページ送りボタン252は、タッチされると、表示されているページ(画像データ)を右側に送り、次のページを表示するためのボタンである。ページ戻しボタン254は、タッチされると、表示されているページを左側に送り、前のページを表示するためのボタンである。ページ番号表示欄256には、表示対象の複数のページのうち、現在表示されているページの番号が表示される。ページ操作領域250は、位置が固定されており、スクロール中にも移動しない。例えば、ページ操作領域250を表示部114に表示するためのデータは、描画用のオーバレイ領域とは別のオーバレイ領域に記憶しておけばよい。
【0032】
ユーザが、ページ送りボタン252をタッチすると、タッチされた位置の座標データがタッチ検出部112からCPU102に伝送され、CPU102は、受信し座標データが、ページ送りボタン252が表示された領域内の位置であると判定する。そして、CPU102は、VRAM118に次のページの画像データを伝送し、表示制御部116に、ページ送りのコマンドを伝送する。これを受けて、表示制御部116は、VRAM118上の現在表示されているページに対応する画像データと、次ページに対応する画像データとから、ページ送りの途中の画像を表示するための信号を生成し、表示部114に出力する。これによって、表示部114に、ページ送りされている途中の画像が表示される。なお、ページ送りの途中では、現在表示されている画像の枠だけが表示部114の表示画面上で移動するような表示であってもよい。
【0033】
機能ボタン242に割当てられる機能は、例えば、タッチ操作による描画機能(ペンの種類を選択可能)、記録部108に保存されているファイル(画像データ)を開く機能、所定領域の描画を削除する消しゴム機能、表示されている画像データを記録部108に保存する機能、表示されている画像データを印刷する機能等である。各機能ボタン242は、アイコンとして表示される。
【0034】
以下に、電子黒板装置100の操作方法について、即ち、タッチ操作によって描画とスクロールとを両立させて実行するプログラムの制御構造に関して説明する。以下の説明では、電子黒板装置100は、図3に示した画面において、描画を行なう機能ボタンが選択され、タッチ検出部112の描画領域230がタッチされると描画されるモードになっているとする。また、描画領域230内の端部領域がタッチ操作によってスクロールの指示を行なう領域として設定されているとする。具体的には、図5に示すように、ページ操作領域250を含む、描画領域230内の端部領域400がスクロールの指示を行なう領域として設定されている。タッチはシングルタッチ(1点でのタッチ)であるとする。なお、「スクロール」とは、表示されている画像を表示画面上で任意の距離だけ移動させ、表示画面に別の画像を表示する処理である。ページ単位で移動させるページ送り及びページ戻しは、画像の横方向の長さだけスクロールする処理であるので、スクロールに含まれる。
【0035】
ステップ300において、CPU102はタッチ検出部112がタッチされたか否かを判定する。上記したように、CPU102は、タッチ検出部112から座標データを受信したか否かを判定する。タッチ検出部112からは、タッチされた点の位置座標(X座標,Y座標)が、タッチされた順に出力される。タッチされたと判定された場合、ステップ302に移行し、タッチされたと判定されなかった場合、ステップ306に移行する。
【0036】
ステップ302において、CPU102は、所定の時間受信した座標データ(タッチされた点の座標データ)を、受信した順序が分かるようにRAM106に記憶する。ステップ306において、CPU102は終了するか否かを判定する。CPU102は、機能ボタン242の1つに割当てられた終了ボタンが押された場合、プログラムを終了する。そうでなければ処理はステップ300に戻り、タッチされるのを待つ。
【0037】
ステップ303において、CPU102は、タッチの開始位置がページ操作ボタンの上、即ち、ページ送りボタン252又はページ戻しボタン254の上にあるか否かを判定する。具体的には、CPU102は、ステップ302で記憶した複数の座標データのうち、最初に受信した座標データ(タッチの開始位置)がページ操作ボタン上の点を示すか否かを判定する。ページ操作ボタン上の点を示すと判定された場合、ステップ334に移行し、後述するページめくり処理を実行する。この処理は、上記で図3を引用して説明したページ送りボタン252及びページ戻しボタン254の機能と同じである。ページ操作ボタン上の点であると判定されなかった場合、ステップ304に移行する。
【0038】
ステップ304において、CPU102は、タッチの開始位置が端部領域400内にあるか否かを判定する。具体的には、CPU102は、ステップ302で記憶した複数の座標データのうち、最初に受信した座標データ(タッチの開始位置)が端部領域400内の点を示すか否かを判定する。端部領域400内の点を示すと判定された場合、ステップ320に移行し、端部領域400内の点であると判定されなかった場合、ステップ310に移行する。
【0039】
ステップ310において、CPU102は、タッチされた点の移動軌跡にしたがって、表示部114に表示されている画像上に描画する。具体的には、CPU102は、ステップ302で記憶した複数の座標データをRAM106から読出し、それらに対応するVRAM118のオーバレイ領域上の点、及びそれらの点を順に結ぶ線分上の各点に、所定のデータを書込む。これによって、上記したように、画像データと描画データ(オーバレイ領域のデータ)とが合成されて表示部114に表示され、画像上に描画されたように表示される。なお、後述するようにステップ310の処理は繰返されるので、オーバレイ領域は、既存の描画データを残したまま上書きされる。
【0040】
ステップ312において、CPU102は描画内容をRAM106に一時記憶する。描画を再現できればよく、記憶する方法は任意である。例えば、ステップ302で順序を保持したままRAM106に記憶された座標データをそのまま保持する。また、VRAM118のオーバレイ領域のデータを2次元画像データとして、RAM106に記憶してもよい。
【0041】
ステップ314において、CPU102は、タッチが維持されているか否かを判定する。即ち、CPU102は、タッチ検出周期より長い所定時間、タッチ検出部112から継続して座標データを受信しているか否かを判定する。例えば、タッチペン220又はユーザの指がタッチ検出部112から離れた場合、CPU102は、タッチ検出周期を経過しても、タッチ検出部112から座標データを受信しなくなる。タッチが維持されていると判定された場合、ステップ316に移行する。タッチが維持されていないと判定された場合、ステップ300に戻り、タッチ検出部112が再びタッチされるのを待つ。
【0042】
ステップ316において、CPU102は、ステップ314で受信したタッチ位置の座標データを、受信順序を保持してRAM106に記憶する。その後、処理はステップ310に戻り、ステップ310〜316の処理を繰返す。
【0043】
このように、描画領域230内におけるタッチの開始が、端部領域400外の位置から始まった場合、ステップ310〜ステップ316の処理によって、タッチ位置の移動にしたがって、即ちタッチ位置の移動軌跡にしたがって表示部114に表示されている画像上に描画される。例えば、図5は、タッチペン220によって描画410がなされている状態を示す。即ち、描画410内の文字を描画した後、タッチ開始位置420にタッチペン220をタッチし、タッチしたままタッチペン220を、現在のタッチ位置422まで移動させた状態である。これによって線424が描画されている。描画された線424は、タッチ位置の軌跡でもある。タッチ位置が端部領域400内で右方向に移動しているが、後述するスクロール(ステップ326参照)は実行されず、端部領域400内においても描画が行なわれている。また、仮にタッチ位置の移動軌跡がページ送りボタン252又はページ戻しボタン254の上を通過しても、ページ操作は実行されない。ページ送りボタン252又はページ戻しボタン254が直接タッチされた場合、即ち、ページ送りボタン252又はページ戻しボタン254内にタッチの開始位置がある場合に、ページ操作が実行される。
【0044】
ステップ320において、CPU102は、端部領域400の輝度を低下させてグレー表示にする。端部領域400の輝度を低下させるには、例えば、CPU102が、表示制御部116に所定のコマンドを伝送し、表示制御部116に、表示部114に出力する信号を画素位置に応じて調整させればよい。例えば、表示制御部116は、VRAM118から読出した画素データが端部領域400内の画素データであれば、輝度を所定の比率で減少させて、表示部114への出力信号を生成する。表示制御部116は、VRAM118から読出した画素データが端部領域400外の領域に表示するデータであれば、VRAM118から読出したデータをそのまま使用して、表示部114への出力信号を生成する。端部領域400をグレー表示にするのは、この領域内で行なわれるタッチ操作がスクロールを指示する操作として扱われることをユーザに示すためである。したがって、グレー表示は任意の処理である。
【0045】
ステップ322において、CPU102は、タッチが維持されているか否かを判定する。タッチが維持されていると判定された場合、ステップ324に移行し、タッチが維持されていないと判定された場合、ステップ330に移行する。
【0046】
ステップ324において、CPU102は、タッチ位置が移動したか否かを判定する。CPU102は、ステップ304でタッチ検出部112から最初に受信した座標データ(タッチ開始位置)を始点とし、ステップ322でタッチ検出部112から受信した座標データ(現在のタッチ位置)を終点とするベクトルの長さを計算する。ベクトルの長さが所定値以上であれば、タッチ位置が移動していると判定し、所定値未満であれば移動していないと判定する。所定値は、タッチ検出部112の分解可能な最小長さに設定することができる。所定値を最小長さよりも大きい値に設定し、いわゆる「あそび」を設けてもよい。その場合、タッチ検出部112の分解能及びタッチ位置のゆらぎを考慮して、後述するスクロール中の画像表示が不自然にならないように所定値を設定することが好ましい。
【0047】
ステップ326において、CPU102は、ステップ324で求めたベクトルの長さに応じた距離だけ、画像を右又は左にスクロールする。その後、処理はステップ322に戻り、ステップ322〜326の処理が繰返される。スクロールの方向は、ベクトルのX座標が正であれば右、負であれば左である。ベクトルの長さに応じてスクロールさせる距離は、適宜設定すればよい。
【0048】
ステップ322〜326の処理によって、タッチ位置の移動距離に応じて、画像がスクロールされる。例えば、図6は、グレー表示された端部領域400内においてタッチペン220でタッチ操作されることによってスクロールが実行されている状態を示す。2つの画像の境界を起点として示した破線の矢印510は、スクロール方向を表す。図6には、タッチ開始位置500にタッチペン220をタッチし、タッチしたままタッチペン220を、現在のタッチ位置502まで移動させたときのタッチ位置の移動軌跡504を示している。描画モードであったとしても、この軌跡504に対応する描画は行なわれないので、軌跡504は破線で示している。このとき、タッチ位置の移動軌跡がページ送りボタン252又はページ戻しボタン254の上を通過しても、これらのボタンによるページ操作は実行されない。ページ送りボタン252又はページ戻しボタン254が直接タッチされた場合、即ち、ページ送りボタン252又はページ戻しボタン254内にタッチの開始位置がある場合に、ページ操作が実行される。
【0049】
ステップ330において、CPU102は、端部領域400のグレー表示を解除する。
【0050】
ステップ332において、CPU102は、タッチ位置が所定距離以上移動したか否かを判定する。具体的には、CPU102は、ステップ302で最初に記憶した座標データ(タッチ開始位置)と、最後に受信した座標データ(現在のタッチ位置)との距離を計算する。最後に受信した座標データは、ステップ322でタッチが維持されていないと判定される直前にステップ324で受信した座標データである。
【0051】
タッチ位置が所定距離以上移動したと判定された場合、ステップ334に移行する。ステップ334において、CPU102は、ページめくり処理、即ち、タッチが維持されていないと判定されるまで行なっていたスクロール処理を続行して、次の画像(ページ)を表示する。この処理は、上記したようにページ送りボタン252及びページ戻しボタン254の機能と同じである。即ち、タッチが維持されていないと判定されるまで行なっていたスクロールが右方向か左方向かに応じて、ページ送りボタン252又はページ戻しボタン254の機能と同じ処理が実行される。一方、タッチ位置が所定距離以上移動していないと判定された場合、ステップ336に移行する。ステップ336において、CPU102は、タッチが維持されていないと判定されるまで行なっていたスクロール処理を解除して、元の画像(ページ)を表示する。
【0052】
ステップ332〜336の処理によって、タッチが維持されなくなれば、それまで行なわれたスクロールの程度に応じた処理(ページめくり又はスクロールの解除)が行なわれる。ステップ334又はステップ336の処理が実行された後、ステップ300に戻り、タッチ検出部112が再びタッチされるのを待つ。
【0053】
以上によって、電子黒板装置100は、ユーザによるタッチの開始位置に応じて、描画又はスクロールを行なうことができる。即ち、タッチの開始位置が端部領域400内にあれば、その後のタッチ位置の移動軌跡に応じてスクロールが実行され、描画は行なわれない。タッチの開始位置が描画領域230内にあるが、端部領域400内になければ、その後のタッチ位置の移動軌跡によって描画が行なわれる。したがって、ユーザが描画中に、誤ってタッチ位置が端部領域400内を通過しても、ユーザの意図しないスクロールが行なわれることが無く、描画を続けることができる。
【0054】
例えば、図7は、ステップ310〜316の処理が繰返されて描画410が行なわれ(図5参照)、その後ステップ322〜326の処理が繰返されて端部領域400内でのタッチ操作によるスクロール処理(図6参照)が実行されている状態を示す。このように、端部領域400内の描画部分をも保持したまま、スクロールが行なわれる。図7では、スクロール中、ページ操作領域250と描画410とが重なって表示されている。しかし、ページ操作領域250を優先的に表示し、ページ操作領域250と重なる描画部分を表示しないようにスクロールしてもよい。
【0055】
上記では、背景に記録部108から読出した画像が表示されている場合を説明したが、これに限定されない。タッチ検出部112へのタッチ操作によって描画する機能を備えていれば、背景画像は一様な色(例えば、白、黒、灰色等)の画像であってもよい。
【0056】
タッチ操作によってスクロールを指示できる領域は、描画領域230の下側の端部領域に限定されない。例えば、描画領域230の上側の端部領域であってもよい。また、画像を上下にスクロールさせる場合には、描画領域230の右側又は左側の端部領域であることができる。
【0057】
上記では、タッチの開始位置が端部領域内であるか否かをCPU102が判定する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、タッチ検出部112のマイコンがこの判定を行ない、その結果をCPU102に伝送してもよい。
【0058】
また、ステップ324において、タッチ位置の移動距離を、タッチの開始位置を基準として計算する場合を説明したが、これに限定されない。現在のタッチ位置の座標データと、この直前にタッチ検出部112から受信した座標データとの距離を計算し、その距離に応じて、画像の直前の表示位置からのスクロール量(差分量)を決定してもよい。
【0059】
また、ページ送りボタン252又はページ戻しボタン254は、ページ単位(画像単位)で画像を変更するためのボタンに限らない。例えば、押されている間、少しずつ画像をスクロールするためのボタンであってもよい。
【0060】
上記では、電子黒板装置について説明したが、これに限定されず、本発明は、タブレット型の端末装置等、タッチによって描画及び画面操作を行なうことができる表示装置全般に適用することができる。
【0061】
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 電子黒板装置
102 演算処理部(CPU)
104 読出専用メモリ(ROM)
106 書換可能メモリ(RAM)
108 記録部
110 インターフェイス部(IF部)
112 タッチ検出部
114 表示部
116 表示制御部
118 ビデオメモリ(VRAM)
120 バス
200、202 LED列
210、212 PD列
220 タッチペン
230 描画領域
240 機能ボタン領域
242 機能ボタン
250 ページ操作領域
252 ページ送りボタン
254 ページ戻しボタン
256 ページ番号表示欄


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するための表示手段と、
前記表示手段に重畳して配置され、タッチされた位置を検出するための検出手段とを備え、
検出された前記位置の移動によって形成される軌跡の開始位置が、前記検出手段の所定領域内にある場合、前記表示手段に表示されている画像をスクロールし、
検出された前記位置の移動によって形成される軌跡の開始位置が、前記所定領域外にある場合、該軌跡に対応する線を、前記表示手段に表示されている画像上に描画することを特徴とするタッチ描画表示装置。
【請求項2】
前記所定領域は、前記検出手段の辺に沿った、前記検出手段の端部に位置する領域であり、
スクロールを指示するためのボタンが前記所定領域内に配置されることを特徴とする請求項1に記載のタッチ描画表示装置。
【請求項3】
検出された前記位置の移動によって形成される軌跡の開始位置が前記ボタン上にある場合、前記ボタンによる指示によるスクロールが実行され、
検出された前記位置の移動によって形成される軌跡の開始位置が前記ボタン上にない場合、前記軌跡が前記ボタンの上を通過しても、前記ボタンによる指示によるスクロールは実行されないことを特徴とする請求項2に記載のタッチ描画表示装置。
【請求項4】
画像を表示するための表示手段と、前記表示手段に重畳して配置され、タッチされた位置を検出するための検出手段とを備えたタッチ描画表示装置の操作方法であって、
検出された前記位置の移動によって形成される軌跡の開始位置が、前記検出手段の所定領域内にあるか否かを判定するステップと、
前記開始位置が前記所定領域内にあると判定された場合、前記表示手段に表示されている画像をスクロールするステップと、
前記開始位置が前記所定領域内にないと判定された場合、前記軌跡に対応する線を、前記表示手段に表示されている画像上に描画するステップとを含むことを特徴とするタッチ描画表示装置の操作方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−168621(P2012−168621A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27238(P2011−27238)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】