説明

タッチ操作入力装置

【課題】構成の簡素化及びそれに伴う小型化が可能なタッチ操作入力装置を提供することにある。
【解決手段】タッチセンサ70は、操作面20bにおける指先の接触面積を示す旨のセンサ信号を制御部60に対して出力する。制御部60は、センサ信号から指先の接触面積を求め、単位時間当たりの接触面積の増加量として設定された傾度閾値よりも指先の接触面積が大きい場合、操作面20bに対して確定操作がなされたと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ操作入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両にあっては、センターコンソール等の操作し易い場所に配設されたタッチ操作入力装置とセンタークラスタパネル等の視認し易い場所に配設されたディスプレイ(表示部)とを備えるディスプレイシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ユーザは、タッチ操作入力装置の操作面に触れる(タッチ操作)ことで、ディスプレイに表示された複数の機能項目から一つの機能項目を選択して、所望の画面を表示させたり車両の付帯装備を作動させたりすることができる。よって、このようなディスプレイシステムによれば、ディスプレイを視認しながら操作面を容易に操作することができ、車両の利便性が向上する。
【0003】
ところで、この種のタッチ操作入力装置には、操作面に指先を接触させた状態で該操作面上を移動させるトレース操作と操作面を押圧する確定操作との2つの操作態様がある。ユーザは、トレース操作を行うことによりディスプレイ上の所望の機能項目を仮選択し、確定操作を行うことにより同機能項目を選択することができる。
【0004】
このような確定操作を検出するタッチ操作入力装置の構造としては、図7に示す構造が提案されている。タッチ操作入力装置100は、操作面101が押圧操作された際に支点Oを中心として回動する揺動部材102を備えている。タッチ操作入力装置100は、揺動部材102が回転(図7に二点鎖線で示す)することによりタクトスイッチ103がオンした場合、確定操作がなされたと判断する。ユーザは、操作面101を押圧操作(確定操作)することによりディスプレイ上の機能項目を選択できる。このような片ヒンジ構造を有するタッチ操作入力装置によれば、操作面101をトレース操作する際や確定操作する際に操作面101がぐらつくことがなく、ユーザは良好な操作フィーリングでこれら操作を行うことができる。
【特許文献1】特開2001−325072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、タッチ操作入力装置の小型化への要求が高まってきている。しかしながら、従来のタッチ操作入力装置100では、確定操作を検出するために片ヒンジ構造を採用しているため、タッチ操作入力装置100の構成が複雑となってしまい、その小型化は困難であった。特に、操作面101に垂直な方向では揺動部材102が回動するためのスペースが必須とされ、タッチ操作入力装置100の小型化において制約となっていた。そこで、構成を簡素化でき、小型化できるタッチ操作入力装置の提供が望まれている。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成の簡素化及びそれに伴う小型化が可能なタッチ操作入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明では、ケース本体から露出する操作面を有する入力手段と、該ケース本体とは別個に設けられた表示部に複数の機能項目を表示し、前記操作面を押圧する確定操作がなされたことを前記入力手段により検出したときは、前記表示部の機能項目のうち前記操作面上の接触位置に相当する前記機能項目が選択されたと判断して該機能項目に対応付けられた制御を行う制御手段とを備えるタッチ操作入力装置において、前記入力手段は、前記操作面における指先の接触面積を示す旨のセンサ信号を前記制御手段に対して出力し、前記制御手段は、前記センサ信号から指先の接触面積を求め、単位時間当たりの接触面積の増加量として設定された傾度閾値よりも該指先の接触面積が大きい場合、前記操作面に対して確定操作がなされたと判断することを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のタッチ操作入力装置において、前記制御手段は、前記操作面における指先の接触面積が前記傾度閾値よりも大きく、且つ、前記操作面に対する指先の最大接触面積以下の面積として予め設定された上限閾値よりも大きい場合、前記操作面に対して確定操作がなされたと判断することを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のタッチ操作入力装置において、前記制御手段は、前記入力手段に指先が接触した状態で移動されるトレース操作がなされている期間にわたって前記操作面における指先の接触面積の平均値を求め、該平均値の大きさに応じて前記上限閾値を変更することを要旨とする。
【0010】
以下、本発明の作用について説明する。
請求項1に記載の発明によれば、制御手段は、入力手段の操作面における指先の接触面積の単位時間当たりの増加量が傾度閾値よりも大きい場合、操作面に対して確定操作がなされたと判断する。すなわち、制御手段は、操作面に対して確定操作がなされたか否かを指先の接触面積の増加割合に基づいて判断する。この操作面における指先の接触面積の増加割合は、たとえ入力手段がケース本体に固定されている状態においても変化するため、制御手段は、可動部材(従来のタッチ操作入力装置における揺動部材)やタクトスイッチといった機械部品を用いることなく確定操作を確実に検出することが可能である。したがって、本発明によれば、タッチ操作入力装置の構成を簡素化することができ、タッチ操作入力装置を小型化することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、制御手段は、操作面における指先の接触面積が傾度閾値よりも大きく、且つ、上限閾値よりも大きい場合、操作面に対して確定操作がなされたと判断する。つまり、操作面における指先の接触面積が、たとえ傾度閾値よりも大きくても、その接触面積が上限閾値よりも大きくならなければ、制御手段は確定操作がなされたと判断しない。このため、例えば、ユーザが確定操作を行う意図がないのに外乱(例えば車両の振動等)により操作面を押圧してしまって、操作面における指先の接触面積の増加割合が傾度閾値よりも大きくなってしまったとしても、その接触面積が上限閾値よりも大きくならない場合には、制御手段は操作面に対して確定操作がなされたと判断しない。したがって、制御手段は、ユーザの意図に則して確実に確定操作を検出することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、制御手段は、トレース操作がなされている期間にわたって指先の接触面積の平均値を求め、この平均値の大きさに応じて上限閾値を変更する。指先の接触面積の平均値は、ユーザの性別や、操作面を強く押しながらトレース操作(すなわち指先の接触面積が相対的に大きい状態でトレース操作)をする癖があるのか否か等によって異なる。このように、接触面積の平均値に応じて上限閾値を変更することにより、制御手段は、ユーザに適切な上限閾値を用いて確定操作の検出を行うことができる。したがって、制御手段は、ユーザの個性によらず確実に確定操作を検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構成の簡素化及びそれに伴う小型化が可能なタッチ操作入力装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、車両用のディスプレイシステムに用いられるタッチ操作入力装置に本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。本ディスプレイシステムは、エアコン、オーディオ、ナビゲーションシステム等の車両に付帯する付帯装備の操作を行うものである。
【0015】
図1に示すように、ディスプレイシステム1は、タッチトレーサ(タッチ操作入力装置)10及びディスプレイ(表示部)11から構成されている。
ディスプレイ11は、運転者及び同乗者(ユーザ)が容易に視認することができるセンタークラスタパネルの中央部等に配置されている。ディスプレイ11は、タッチトレーサ10からの操作入力情報に応じて、エアコン、オーディオの操作状況やナビゲーションシステムの案内地図画面等を表示する。一方、タッチトレーサ10は、ユーザが容易に操作することができる場所、例えばセンターコンソールに配置されている。
【0016】
タッチトレーサ10は、選択ボタン13と操作パネル20とを備えている。選択ボタン13は、一般的なプッシュボタンであり、本実施形態においては現在地ボタン14、目的地ボタン15、メニューボタン16、エアコンボタン17、オーディオボタン18、及び検索ボタン19により構成されている。これらボタン14〜19を押圧操作することにより、選択されたボタン14〜19に対応する機能項目の全てまたは一部がディスプレイ11に表示される。例えば、エアコンボタン17が押圧操作された場合、タッチトレーサ10は、風量設定アイコン(機能項目)、温度設定アイコン(機能個目)等をディスプレイ11に表示する。なお、機能項目の数は、各ボタン14〜19毎に対応して予め設定されている。
【0017】
図2及び図3に示すように、タッチトレーサ10は、ケース本体30を備えている。ケース本体30の内部には、入力手段としてのセンサ部40と回路基板50とがそれぞれ収容されている。回路基板50には、制御手段としての制御部60が実装されている。
【0018】
ケース本体30は、第1ケース31と第2ケース32とが、図2における上下方向から組み付けられることにより全体として略直方体状をなしている。第1ケース31は、底部が開口した有蓋箱体状に形成されており、第2ケース32は、上部が開口した有底箱体状に形成されている。これら第1ケース31と第2ケース32とは、第1ケース31の内部に第2ケース32が収容されるように組み付けられている。図2における第1ケース31の上面には、四角形状の開口部31aが透設されている。
【0019】
センサ部40は、操作パネル20とタッチセンサ70とが固着されることにより一体的に構成されている。操作パネル20には、開口部31aと同形同大に形成された突部20aが形成されている。タッチセンサ70は、ハーネス71を介して回路基板50に接続されている。センサ部40は、操作パネル20の操作面20bが開口部31aから露出するように、操作パネル20の突部20aが開口部31aに挿入された状態で第1ケース31に固定されている。すなわち、センサ部40は、操作パネル20の突部20aと開口部31aとの間に隙間が空かないように第1ケース31に固定されている。なお、センサ部40は、第1ケース31に固定される代わりに、回路基板50に固定されてもよい。
【0020】
次に、ディスプレイシステム1の電気的構成について図4及び図5にしたがって説明する。
図4に示すように、タッチトレーサ10とディスプレイ11とは、電気的に接続されている。選択ボタン13及びタッチセンサ70は、それぞれ制御部60に接続されている。
【0021】
タッチセンサ70は、静電容量式センサにより構成されている。タッチセンサ70は、ユーザの指先が操作面20bに接触した場合、その操作面20bにおける指先の接触面積及び指先の接触位置を示す旨のセンサ信号を制御部60に出力する。
【0022】
制御部60は、図示しないCPU及びメモリ60aを備えている。メモリ60aには、操作面20bに対するユーザの押圧操作を確定操作として認識するための閾値の一つである傾度閾値が予め記憶されている。この傾度閾値は、単位時間当たりの指先の接触面積の増加量を示す値である。詳しくは、傾度閾値は、図5に示すように、ポイントP1からポイントP2までの期間における指先の接触面積の増加量(面積S)をポイントP1からポイントP2までに要した時間Tで除算した値として設定される。なお、本実施形態における傾度閾値は、複数人の被験者を対象とした確定操作の結果として求められた各人の確定操作に要する時間とその時間内における指先の接触面積に対して統計的手法を施すことによって求められた単位時間当たりの指先の接触面積の増加量よりも若干小さな値に設定されている。
【0023】
制御部60は、所定の時間(例えば数msec)毎にタッチセンサ70から入力されるセンサ信号をサンプリングし、そのセンサ信号から求められる指先の接触面積(指先が操作面20bに接触していない場合も含む)をメモリ60aに逐次書き込む。そして、制御部60は、メモリ60aに記憶されている指先の接触面積のうちの複数個を用いて同接触面積の平均値(測定値A)を求め、この測定値Aの推移を監視する。
【0024】
制御部60は、測定値Aの増加割合が傾度閾値よりも小さい場合、操作面20bに対してトレース操作がなされていると判断する。トレース操作時において制御部60は、センサ信号から求められる指先の接触位置に応じて、ディスプレイ11に表示される選択項目のフォーカスを切り換える。
【0025】
制御部60は、測定値Aが一定の傾きをもって増加し始めた場合、増加し始める前の測定値Aに所定の演算を施すことにより、操作面20bに対するユーザの押圧操作を確定操作として認識するための二つ目の閾値である上限閾値THを算出する。本実施形態における上限閾値THは、指先の接触面積の平均値が30%増加したときの同接触面積(測定値A×1.3)として設定されている(図5参照)。
【0026】
制御部60は、測定値Aの単位時間当たりの増加量が傾度閾値よりも大きく、且つ、測定値Aが上限閾値THよりも大きい場合、操作面20bに対して押圧操作がなされたと判断する。すなわち、制御部60は、操作面20bにおける指先の接触面積の変化割合が、たとえ傾度閾値よりも大きいとしても、その接触面積が上限閾値THよりも大きくなければ、操作面20bに対して確定操作がなされたとは判断しない。このように、制御部60は、操作面20bに対するユーザの押圧操作を確定操作として認識するための閾値として、傾度閾値と上限閾値THとの2つの閾値を用いている。
【0027】
制御部60は、確定操作がなされたと判断した場合、その時点においてセンサ信号から認識される指先の接触位置に対応するディスプレイ11の機能項目が選択されたものと判断して、選択された機能項目に対応する付帯装備を作動させるべく制御を行う。
【0028】
<作用>
次に、このように構成されたタッチトレーサ10の作用について図6にしたがって説明する。ここでは、操作面20bを強く押圧する癖を持つユーザ(強癖者)によってタッチトレーサ10が操作される場合と、操作面20bを軽く押圧する癖を持つユーザ(弱癖者)によってタッチトレーサ10が操作される場合とについて説明する。
【0029】
「強癖者によって操作された場合」
タッチトレーサ10の操作面20bがトレース操作されると、測定値MAは、例えば図6に示す経路S1に沿って推移する。このときの測定値MAの増加割合は、傾度閾値よりも小さいため、タッチトレーサ10は、操作面20bに対してトレース操作がなされていると判断し、操作面20bにおける指先の接触位置に応じてディスプレイ11上の選択項目へのフォーカスを切り換える。
【0030】
ポイントP11において操作面20bが押圧操作されると、測定値MAは、操作面20bにおける指先の接触面積の増加に伴って増加する。この際、タッチトレーサ10は、ポイントP11における測定値MAから上限閾値MTHを算出する。その後、例えば図6に示す経路S2に沿ってポイントP12で示す時点まで測定値MAが増加した場合、測定値MAの増加割合は、傾度閾値(図6に二点鎖線で示す)よりも大きく、また、上限閾値MTHよりも大きくなる。このため、タッチトレーサ10は、操作面20bに対して確定操作がなされたと判断して、トレース操作により仮選択されている機能項目を選択して対応する付帯装備を作動させる。
【0031】
一方、ポイントP11の時点から経路S3に沿ってポイントP13まで測定値MAが増加し、その後一定値に落ち着いた場合、測定値MAの増加割合は傾度閾値よりも大きくなるが、ポイントP13における測定値MAは上限閾値MTHよりも小さいままである。このため、タッチトレーサ10は、ユーザにより確定操作がなされたとは判断せず、依然としてトレース操作が行われていると判断する。また、ポイントP11の時点から経路S4に沿ってポイントP14まで測定値MAが増加し、その後一定値に落ち着いた場合、ポイントP13における測定値MAは上限閾値MTHよりも大きくなるが、測定値MAの増加割合は傾度閾値よりも小さいままであるため、この場合も、タッチトレーサ10は、ユーザにより確定操作がなされたとは判断しない。すなわち、タッチトレーサ10は、測定値MAが傾度閾値よりも大きく、且つ、測定値MAが上限閾値MTHよりも大きい場合にのみ、操作面20bに対して確定操作がなされたと判断する。
【0032】
「弱癖者によって操作された場合」
弱癖者によって操作面20bに対してトレース操作がなされると、測定値FAは、測定値MAよりも小さい値で時間と共に推移することになる。例えば、図6に示す経路S10に沿って推移した場合、このときの測定値FAの増加割合は、傾度閾値よりも小さいため、タッチトレーサ10は、強癖者が操作した場合と同様に、操作面20bに対してトレース操作がなされていると判断して、操作面20bにおける指先の接触位置に応じてディスプレイ11上の選択項目へのフォーカスを切り換える。
【0033】
ポイントP21において操作面20bが押圧操作されると、測定値FAは、操作面20bにおける指先の接触面積の増加に伴って増加する。この際、タッチトレーサ10は、測定値FAから上限閾値FTHを算出する。この上限閾値FTHは、上限閾値MTHよりも小さな値となる。すなわち、タッチトレーサ10(制御部60)は、トレース操作がなされている期間にわたって指先の接触面積の平均値である測定値Aを求め、この測定値Aの大きさに応じて上限閾値THを変更している。
【0034】
その後、例えば、図6に示す経路S11に沿ってポイントP22で示す時点まで測定値FAが増加した場合、測定値FAの増加割合は傾度閾値よりも大きく、また、上限閾値FTHよりも大きくなる。よって、タッチトレーサ10は、操作面20bに対して確定操作がなされたと判断し、トレース操作により仮選択されている機能項目を選択して対応する付帯装備を作動させる。
【0035】
一方、ポイントP21の時点から経路S12に沿ってポイントP23まで測定値FAが増加し、その後一定値に落ち着いた場合、測定値FAの増加割合は傾度閾値よりも大きくなるが、ポイントP23における測定値FAは上限閾値FTHよりも小さいままである。このため、タッチトレーサ10は、ユーザにより確定操作がなされたとは判断せず、依然としてトレース操作が行われていると判断する。また、ポイントP21の時点から経路S13に沿ってポイントP24まで測定値FAが増加し、その後一定値に落ち着いた場合、ポイントP24における測定値FAは上限閾値FTHよりも大きくなるが、測定値FAの増加割合は傾度閾値よりも小さいままであるため、この場合も、タッチトレーサ10は、確定操作がなされたとは判断しない。このように弱癖者により操作された場合も、タッチトレーサ10は、測定値FAが傾度閾値よりも大きく、且つ測定値FAが上限閾値FTHよりも大きい場合にのみ、操作面20bに対して確定操作がなされたと判断する。
【0036】
以上のように、タッチトレーサ10は、上限閾値MTH及び上限閾値FTHといった2つの上限閾値THを用いて、ユーザによる確定操作がなされたか否かを判断している。このため、タッチトレーサ10は、単一の上限閾値TH、例えば、複数人にとって最適だと推定される単一の上限閾値THを確定操作の有無の判断に用いた場合に比較して、ユーザ各人に対して一層最適な上限閾値THを用いて確定操作がなされたか否かを判断することができる。つまり、タッチトレーサ10は、強癖者及び弱癖者の確定操作をそれぞれ確実に検出できる。
【0037】
したがって上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)制御部60は、測定値Aが傾度閾値よりも大きい場合、操作面20bに対して確定操作がなされたと判断する。一方、測定値Aが傾度閾値以下の場合、制御部60は、操作面20bに対してトレース操作がなされていると判断する。すなわち、制御部60は、指先の接触面積の増加割合に基づいてトレース操作と確定操作とを区別している。制御部60は、指先の接触面積の増加割合をタッチセンサ70のセンサ信号から求める。このため、タッチトレーサ10は、第1ケース31とタッチセンサ70とを固定するといった上記実施形態に示す構成をとることが可能となり、従来のタッチ操作入力装置におけるような片ヒンジ構造部やタクトスイッチのような機械部品を備える必要がなくなる。したがって、タッチトレーサ10の構成を簡素化でき、タッチトレーサ10を小型化することができる。
【0038】
(2)制御部60は、操作面20bにおける指先の接触面積の平均値である測定値Aの増加割合が傾度閾値よりも大きく、且つ、測定値Aが上限閾値THよりも大きい場合にのみ、操作面20bに対して確定操作がなされたと判断する。つまり、操作面20bにおける指先の接触面積が、たとえ傾度閾値よりも大きくても、その接触面積が上限閾値THよりも大きくならなければ、制御部60は確定操作がなされたと判断しない。このため、例えば、ユーザが確定操作を行う意図がないのに、車両の振動等によって操作面20bを押圧してしまって、操作面20bにおける指先の接触面積の増加割合が傾度閾値よりも大きくなってしまったとしても、その接触面積が上限閾値THよりも大きくならない場合には、制御部60は操作面20bに対して確定操作がなされたと判断しない。したがって、タッチトレーサ10は、ユーザの意図に則して確実に確定操作を検出することができる。
【0039】
(3)制御部60は、トレース操作がなされている期間にわたって指先の接触面積の平均値である測定値Aを求め、この測定値Aの大きさに応じて上限閾値THを変更する。測定値Aは、操作面20bを強く押しながらトレース操作をする癖があるのか否か等のユーザの特性によって異なる。しかし、制御部60は、測定値Aの大きさに応じて上限閾値THを変更するため、ユーザに適切な上限閾値THを用いて確定操作の検出を行うことができる。したがって、タッチトレーサ10は、ユーザの個性によらず確実に確定操作を検出することができる。
【0040】
(4)タッチセンサ70は第1ケース31に固定されている。このため、ユーザは、操作面20b上のどの箇所を触った場合でも、同一の操作フィーリングで確定操作を行うことができる。
【0041】
ちなみに、従来のタッチ操作入力装置においては、片ヒンジ構造を用いて確定操作の認識を行っていた。このため、操作面20b上のどの部分を触るかによって(すなわち、支点からどのくらい離れた位置を押すかによって)押圧操作量が異なってしまい、良好な操作フィーリングを得られ難かった。このことは、操作面20bが広くなればなるほど顕著に現れるという問題があった。本発明のタッチトレーサ10によれば、このような問題点をも解消することができる。
【0042】
(5)センサ部40は、操作パネル20の突部20aと開口部31aとの間に隙間が空かないように第1ケース31に固定されている。このため、タッチトレーサ10の内部にごみ等が侵入するのを防止することができる。また、開口部31aと操作パネル20との間に防水構造を設ける必要がなく、タッチトレーサ10の構成を一層簡素化することができる。ちなみに、従来のタッチ操作入力装置においては、片ヒンジ構造を作動させるために必然的に開口部31aと操作パネル20との間には隙間が存在していた。
【0043】
なお、本発明の上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において上限閾値THは、操作面20b上の指先の接触面積の平均値である測定値Aの大きさに応じて可変となっている。しかし、上限閾値THは、例えば複数人に対して行った評価に基づき予め固定値としてメモリ60aに記憶されていてもよい。そして、制御部60は、このメモリ60aに記憶されている上限閾値THと傾度閾値とを用いて、確定操作がなされたか否かを判断するようにしてもよい。
【0044】
・上記実施形態において制御部60のメモリ60aには、単一の傾度閾値が記憶されている。制御部60は、強癖者であろうが弱癖者であろうが共に同一の傾度閾値を用いている。しかし、制御部60のメモリ60aには、測定値Aに応じて予め複数の傾度閾値が記憶されていてもよい。そして、制御部60は、測定値Aの大きさに応じて、すなわち、ユーザの操作態様に応じて、メモリ60aに記憶されている傾度閾値からその操作態様に最適な傾度閾値を選択し、同傾度閾値と上限閾値THとから確定操作がなされたか否かを判断するようにしてもよい。例えば、タッチトレーサ10は、操作面20bに対する操作フィーリングを設定するモード(設定モード)を有し、同モードにおいて測定値Aが変化した場合、メモリ60aに記憶されている傾度閾値のうち同測定値Aの変化割合に一番近い傾度閾値(選択傾度閾値)を選択するようにしてもよい。そして、制御部60は、この選択傾度閾値を用いて、ユーザによるトレース操作と確定操作とを判別するようにしてもよい。このようにすれば、ユーザは、例えば選択ボタン13を操作することで設定モードに切り換えて、実際に操作面20bに対して確定操作を行うことにより、自らに最適な傾度閾値を選択して自分好みの操作フィーリングでタッチトレーサ10を操作することができる。したがって、タッチトレーサ10は、ユーザ毎に一層最適な操作フィーリングを提供することができる。
【0045】
・上記実施形態においてタッチトレーサ10は、図4に破線で示すように、車両の走行速度に応じた検出信号を出力する車速センサ75を新たに備えてもよい。このようなタッチトレーサ10において制御部60は、車速センサ75から車両が走行していると判断した場合、測定値Aの変化の割合が傾度閾値よりも大きく、測定値Aが上限閾値THよりも大きい場合でも、確定操作がなされたと判断しないようにしてもよい。すなわち、制御部60は、車両が走行していると判断した場合には確定操作を無効とするようにしてもよい。このようにすれば、車両の走行中における振動の影響による確定操作の誤検出の可能性を排除でき、ユーザによる確定操作を一層確実に認識することができる。
【0046】
また、制御部60は、車速センサ75から求められる走行速度に応じて、傾度閾値や上限閾値THを変更するようにしてもよい。例えば、制御部60は、車両の走行速度が速いと認識した場合、上限閾値THを若干大きな値に補正するようにしてもよい。一般に、車両の走行速度の上昇に伴い車両の振動も大きくなるため、ユーザは、車両速度の上昇に伴って操作面20bを強く押圧すると推定される。この場合、停車している場合と車両が走行している場合とで、操作フィーリングが相違してしまう。しかし、このように制御部60が走行速度に応じて上限閾値THを変更することにより、ユーザは、車両の停車時及び走行時の双方において同程度の操作フィーリングで操作面20bを操作することができる。
【0047】
・上記実施形態において制御部60は、確定操作がなされたか否かを、測定値Aの変化の割合が傾度閾値よりも大きいか否かのみで判断するようにしてもよい。このようにしても、タッチトレーサ10の構成を簡素化し、タッチトレーサ10を小型化することができる。
【0048】
・上記実施形態においてタッチセンサ70は、静電容量式センサに限られない。例えば、タッチセンサ70は、操作面20bの下方に格子状に配置された圧力センサでもよい。要するに、タッチセンサ70は、操作面20bにおける指先の接触位置と接触面積とを検出可能なセンサであれば、その構成や指先の接触面積の検出原理は限定されない。
【0049】
・本発明は、車両に配設されたタッチトレーサ10への適用に限定されず、例えばカーナビゲーションシステムのリモートコントローラーとして適用されてもよい。
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0050】
(1)請求項1に記載のタッチ操作入力装置において、車両の走行状態を検出して該状態を示す検出信号を前記制御手段に出力する検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記検出信号により車両が走行していると判断した場合、前記操作面における指先の接触面積が傾度閾値よりも大きくても、確定操作はなされていないと判断すること。なお、上記実施形態において検出手段は、車速センサ75に相当する。
【0051】
(2)請求項2又は請求項3に記載のタッチ操作入力装置において、車両の走行状態を検出して該状態を示す検出信号を前記制御手段に出力する検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記検出信号により車両が走行していると判断した場合、前記操作面における指先の接触面積が上限閾値よりも大きくても、確定操作はなされていないと判断すること。なお、上記実施形態において検出手段は、車速センサ75に相当する。
【0052】
(3)請求項1〜3、技術的思想(1),(2)のいずれか一項に記載のタッチ操作入力装置において、前記入力手段は、前記操作面に接触する被接触体と該操作面との間の静電容量に相関する前記センサ信号を出力する静電容量式センサを備えること。なお、上記実施形態において被接触体は、ユーザの指先に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明におけるディスプレイシステムの外観を概略的に示す斜視図。
【図2】一実施形態のタッチトレーサにおいて、図1のA−A断面図。
【図3】同タッチトレーサにおいて、図2のB−B断面図。
【図4】一実施形態におけるディスプレイシステムの電気的構成を概略的に示すブロック図。
【図5】一実施形態のタッチトレーサの制御部が備えるメモリに記憶される傾度閾値を幾何学的に示すグラフ。
【図6】同タッチトレーサにおいて、操作面における指先の接触面積の平均値が推移する様子を示すグラフ。
【図7】従来のタッチ操作入力装置の断面図。
【符号の説明】
【0054】
10…タッチ操作入力装置としてのタッチトレーサ、20…入力手段としての操作パネル、20b…操作面、30…ケース本体、60…制御手段としての制御部、70…入力手段としてのタッチセンサ、TH,FTH,MTH…上限閾値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体から露出する操作面を有する入力手段と、該ケース本体とは別個に設けられた表示部に複数の機能項目を表示し、前記操作面を押圧する確定操作がなされたことを前記入力手段により検出したときは、前記表示部の機能項目のうち前記操作面上の接触位置に相当する前記機能項目が選択されたと判断して該機能項目に対応付けられた制御を行う制御手段とを備えるタッチ操作入力装置において、
前記入力手段は、前記操作面における指先の接触面積を示す旨のセンサ信号を前記制御手段に対して出力し、
前記制御手段は、前記センサ信号から指先の接触面積を求め、単位時間当たりの接触面積の増加量として設定された傾度閾値よりも該指先の接触面積が大きい場合、前記操作面に対して確定操作がなされたと判断することを特徴とするタッチ操作入力装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記操作面における指先の接触面積が前記傾度閾値よりも大きく、且つ、前記操作面に対する指先の最大接触面積以下の面積として予め設定された上限閾値よりも大きい場合、前記操作面に対して確定操作がなされたと判断することを特徴とする請求項1に記載のタッチ操作入力装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記入力手段に指先が接触した状態で移動されるトレース操作がなされている期間にわたって前記操作面における指先の接触面積の平均値を求め、該平均値の大きさに応じて前記上限閾値を変更することを特徴とする請求項2に記載のタッチ操作入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−209684(P2006−209684A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24329(P2005−24329)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】