説明

タッチ検出機能付きスイッチ装置

【課題】タッチ検出機能付きスイッチ装置において、タッチ検出用電極と配線基板の電気的接続部との導通を充分に確保しながらも、操作ノブの操作時のフィーリングを良くする。
【解決手段】操作ノブ2を、軸部4を介して揺動可能に設け、操作ノブ2に設けたタッチ検出用電極8を配線基板11の電気的接続部12に電気的に接続する接続導体9を、軸部4の近傍を通るようにした。これにより、接続導体9の端部を電気的接続部12に弾性的且つ電気的に接触させるための弾性部10及び導電性ゴム19の弾性力を大きくしても、操作ノブ2を揺動操作する際の操作力には殆ど影響を与えないようにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ノブに手指が接触した際にこれを検出するためのタッチ検出用電極を有するタッチ検出機能付きスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチ装置の操作ノブに手指が接触した際に、これを検出して、その操作ノブに対応する選択部の表示状態を変化させるような構成とするタッチ検出機能付きスイッチ装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このスイッチ装置では、図4に示すように、操作ノブ101の下方に、電気的接続部102を有する配線基板103が配置され、配線基板103には、スイッチ要素104と、弾性的接触手段としての板ばね製の接触子105が設けられている。また、操作ノブ101には、薄膜状のタッチ検出用電極106が設けられ、このタッチ検出用電極106の一部が、操作ノブ101の大形部101aの下面まで導出されて接続導体106aが形成されている。
【0004】
上記した接触子105は、略逆V字状で、一端部が配線基板103に固定され、他端部が電気的接続部102に摺接し、中間部が操作ノブ101の下端の接続導体106aに下方から弾性的に圧接されることで、タッチ検出用電極106を配線基板103の電気的接続部102に電気的に接続するようになっている。
【0005】
このような構成のスイッチ装置によれば、手指が操作ノブ101に接触すると、表示装置の画面において操作ノブ101に対応する選択部が表示状態になり、この状態で操作ノブ101を押圧操作すると、スイッチ要素104が動作して選択部の選択を決定する。これにより、表示装置の画面を見れば、手指が接触している操作ノブ101の位置がわかるため、操作ノブ101を見ないでも、表示装置の画面のみを見て操作することが可能となる。
【0006】
また、上記した構成のものによれば、タッチ検出用電極106を配線基板103の電気的接続部102に電気的に接続するためのコネクタが不要であり、組付け性の向上及び低コスト化が可能となる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−059912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の構成のものでは、タッチ検出用電極106と配線基板103の電気的接続部102との導通を充分に確保するためには、接続導体106aと接触子105との接圧を上げるべく接触子105の弾性力を大きくする必要があるが、接触子105の弾性力を大きくすると、その弾性力のアップ分がそのまま操作ノブ101の操作荷重に重畳されるようになるため、操作ノブ101を操作する際の操作力が大きくなってしまい、操作ノブ101の操作時のフィーリング(ストローク‐操作荷重特性)が悪くなるという問題点がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タッチ検出用電極と配線基板の電気的接続部との導通を充分に確保するために、接続導体を電気的接続部に弾性的且つ電気的に接触させるための弾性的接触手段による弾性力を大きくしても、操作ノブを操作する際の操作力には殆ど影響を与えないようにできるタッチ検出機能付きスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のタッチ検出機能付きスイッチ装置は、軸部を中心に揺動可能に設けられた操作ノブと、手指が接触したことを検出するために前記操作ノブに設けられたタッチ検出用電極と、電気的接続部を有した配線基板と、この配線基板に設けられ前記操作ノブの揺動操作に基づき押圧操作されるスイッチ要素と、一端部が前記軸部付近を通って前記タッチ検出用電極に電気的に接続され、他端部側が前記配線基板側へ導出された接続導体と、この接続導体の他端部を前記電気的接続部に弾性的且つ電気的に接触させる弾性的接触手段と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記手段によれば、タッチ検出用電極を配線基板の電気的接続部に電気的に接続するための接続導体を、揺動操作される操作ノブの揺動中心となる軸部の近傍を通しているので、接続導体の他端部を前記電気的接続部に弾性的且つ電気的に接触させるための弾性的接触手段による弾性力を大きくしても、操作ノブを揺動操作する際の操作力には殆ど影響を与えないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示すタッチ検出機能付きスイッチ装置の縦断面図
【図2】操作ノブを操作したときの図1相当図
【図3】タッチ検出回路の等価回路を示す図
【図4】従来のタッチ検出機能付きスイッチ装置の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を自動車に用いられるタッチ検出機能付きスイッチ装置に適用した一実施例について、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、タッチ検出機能付きスイッチ装置の縦断面図である。スイッチ本体としてのボディ1は、図1中、下面が開口した矩形箱状をなすもので、例えば合成樹脂により形成されている。ボディ1の上部には、操作ノブ2を配置するための開口部3が設けられ、操作ノブ2が、当該操作ノブ2の一端部に設けられた軸部4を介して揺動可能に支持されている。この操作ノブ2も、例えば合成樹脂により形成されている。また、ボディ1の内部には、図1中、上下方向に延びるガイド部5が設けられている。
【0014】
操作ノブ2の他端部(軸部4とは反対側の端部)には、突出部6が設けられ、操作ノブ2は、この突出部6によりボディ1から上方への抜け止めがなされている。操作ノブ2の下方には、上部及び下部に丸みを帯びた棒状のプッシャ7が配設されている。このプッシャ7は、前記ガイド部5内に挿入されることによって上下方向に直線的に移動可能に支持されている。
【0015】
操作ノブ2の表面側には、全体にわたって薄板状の導電部材からなるタッチ検出用電極8が設けられている。タッチ検出用電極8は、操作ノブ2に人の手指が接触したことを検出するためのものである。このタッチ検出用電極8には、タッチ検出用電極8と同一の導電部材からなる薄板状の接続導体9が一体に接続されている。この接続導体9は、ばね性を有する略C字状の弾性部10(弾性的接触手段)を備え、一端部が前記軸部4付近を通ってタッチ検出用電極8に電気的に接続され、他端部が後述の配線基板11側(図1中、下側)へ導出されている。この場合、タッチ検出用電極8、接続導体9、及び弾性部10を一体に構成する導電部材は、例えばスズメッキを施した銅板により形成されている。
【0016】
図1に示すように、操作ノブ2の下方には、電気的接続部12及び固定接点13を有する配線基板11が配置されている。この配線基板11は、ボディ1の下面の開口部14を塞ぐように装着されている。配線基板11の上面側には、この配線基板11の上面側を覆うようにラバーシート15が設けられている。ラバーシート15は、弾性を有する絶縁材料、例えばシリコーンゴムにより形成されていて、平坦面15aを有している。
【0017】
ラバーシート15にあって固定接点13に対応する部分には、この固定接点13を覆うドーム状をなして弾性変形可能なラバードーム16が設けられている。このラバードーム16は、ラバーシート15の平坦面15aから上方に膨出した弾性変形可能な変形部16aと、この変形部16aの上端部に一体に設けられた円柱状の被押圧部16bとから構成されている。ラバードーム16の被押圧部16bの上面が、プッシャ7に下方から当接していて、変形部16aの弾性力により操作ノブ2を上方に付勢するようになっている。
【0018】
このラバードーム16の内面にあって被押圧部16bの下面には、固定接点13に対向して可動接点17が設けられている。ラバードーム16における変形部16aの弾性変形に伴い、可動接点17が固定接点13に対して接離し、この固定接点13及び可動接点17によりスイッチ要素18が構成されている。
【0019】
配線基板11の電気的接続部12の上面には、弾性及び導電性を有する導電性ゴム19が配置されている。この導電性ゴム19は、例えばシリコーンゴムに導電剤としてカーボンブラックを加えたもので、前記ラバーシート15に一体化されていて、下面が電気的接続部12に接触している。この導電性ゴム19の上面には、前記接続導体9の他端部がL字状になって圧接されている。これにより、導電性ゴム19及び前記弾性部10は、弾性的接触手段として接続導体9を電気的接続部12に弾性的且つ電気的に接触させるようになっている。
【0020】
次に、このタッチ検出機能付きスイッチ装置のタッチ検出回路20について、図3を参照して説明する。このタッチ検出回路20は、一般的な静電容量検出回路であり、高周波信号を出力する一方の端子がグランドに接続された発振部21、負荷抵抗22、高周波信号の検波及び平滑を行う検波部23及びオペアンプ24を備えて構成されている。
【0021】
発振部21の出力端子(他方の端子)には、負荷抵抗22、電気的接続部12、導電性ゴム19及び接続導体9を介してタッチ検出用電極8が接続されている。検波部23は、ダイオード及びコンデンサなどからなり、発振部21からの高周波信号が負荷抵抗22を介して入力されている。また、検波部23の出力は、オペアンプ24を介して増幅及びオフセットされた信号Voutとして制御装置(図示しない)に入力されている。なお、発振部21、負荷抵抗22、検波部23及びオペアンプ24は、パッケージ化された静電容量検出IC25として構成されている。
【0022】
次に、本実施例の作用について説明する。
使用者の手指が操作ノブ2の上面に接触すると、使用者の手指はグランドに接続された状態になっているので、使用者の手指とタッチ検出用電極8とで可変のコンデンサCが形成され、コンデンサCの静電容量の変化はほとんどなくなる。これにより、配線基板11の電気的接続部12は、導電性ゴム19、接続導体9、コンデンサC及び手指を介してグランドに接続されることになる。従って、発振部21から出力された高周波信号は、負荷抵抗22の抵抗値とコンデンサCのインピーダンスとで分圧されて検波部23に入力される。
【0023】
その結果、操作ノブ2に手指が触れていない状態と比べて、検波部23に入力される高周波信号のレベルが小さくなるため、検波部23及びオペアンプ24を介して出力される信号Voutのレベルも小さくなる。制御装置(図示しない)は、この信号Voutのレベルの変化により操作ノブ2への手指の接触を検出し、表示装置(図示しない)の画面において、その操作ノブ2に対応する選択部を暫定的な表示状態にする。
【0024】
その後、使用者によって操作ノブ2が下方へ揺動操作されると、図2に示すように、操作ノブ2が軸部4を中心に下方へ揺動することでプッシャ7が下方へ移動し、ラバードーム16の被押圧部16bが下方へ押し下げられ、可動接点17が固定接点13に接触する。これにより、スイッチ要素18がオン作動し、このスイッチ要素18のオン信号を受けて、制御装置は、操作ノブ2に対応する選択部を固定的な表示状態に変化させ、その選択部の選択を決定する。操作後、使用者が手指を操作ノブ2から離すと、ラバードーム16の付勢力により、操作ノブ2は元の位置に戻る。
【0025】
このような本実施例によれば、タッチ検出用電極8を配線基板11の電気的接続部12に電気的に接続するための接続導体9を、揺動操作される操作ノブ2の揺動中心となる軸部4の近傍を通しているので、接続導体9の他端部を電気的接続部12に弾性的且つ電気的に接触させるための弾性的接触手段である弾性部10及び導電性ゴム19による弾性力を大きくしても、操作ノブ2を揺動操作する際の操作力には殆ど影響を与えないようにできる。
すなわち、弾性部10及び導電性ゴム19による弾性力を大きくしてタッチ検出用電極 8と電気的接続部12との導通を充分に確保しながらも、操作ノブ2の操作時のフィーリング(ストローク‐操作荷重特性)を良くすることができる。
【0026】
また、弾性的接触手段として弾性部10及び導電性ゴム19が設けられているが、これらのうち一方だけでも、接続導体9を電気的接続部12に弾性的且つ電気的に接触させることができ、本実施例では、弾性部10及び導電性ゴム19の2つの弾性的接触手段を用いることで、よりいっそう電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0027】
導電性ゴム19を用いないで弾性部10のみを弾性的接触手段とする場合は、前記接続導体9の他端部を電気的接続部12の上面に直接圧接すれば良く、この場合も弾性部10の弾性力によりタッチ検出用電極8と電気的接続部12との導通を充分に確保できる。
接続導体9に弾性部10がなく、導電性ゴム19のみを弾性的接触手段とする場合も、導電性ゴム19の弾性力によりタッチ検出用電極8と電気的接続部12との導通を充分に確保できる。
【0028】
また、本実施例によれば、タッチ検出用電極8と接続導体9と弾性部10は、連続した一体の導電部材によって構成されているので、部品数を少なくすることができ、組立て性を良くすることもできる。
【0029】
また、ボディ1に操作ノブ2及び配線基板11を組み込むだけで、接続導体9及び導電性ゴム19によりタッチ検出用電極8を配線基板11の電気的接続部12に電気的に接続することができ、コネクタが不要であり、組付け性の向上及び低コスト化が可能となる。
【0030】
なお、本発明は、上記し且つ図面に示す実施例に限定されるものではなく、例えば、軸部4を操作ノブ2の中央に配置しても良く、この場合、操作ノブ2は、軸部4の前後両側(図1において左右)に揺動し、タッチ検出用電極8に接続した接続導体9は、操作ノブ2の中央の前記軸部4付近を通すようにし、スイッチ要素18を軸部4の前後両側の下方に2箇所配置するようにしても良い。
この他、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変形または拡張して実施し得る。
【符号の説明】
【0031】
図面中、2は操作ノブ、4は軸部、8はタッチ検出用電極、9は接続導体、10は弾性部(弾性的接触手段)、11は配線基板、12は電気的接続部、18はスイッチ要素、19は導電性ゴム(弾性的接触手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を中心に揺動可能に設けられた操作ノブと、
手指が接触したことを検出するために前記操作ノブに設けられたタッチ検出用電極と、
電気的接続部を有した配線基板と、
この配線基板に設けられ前記操作ノブの揺動操作に基づき押圧操作されるスイッチ要素と、
一端部が前記軸部付近を通って前記タッチ検出用電極に電気的に接続され、他端部側が前記配線基板側へ導出された接続導体と、
この接続導体の他端部を前記電気的接続部に弾性的且つ電気的に接触させる弾性的接触手段と、を具備したことを特徴とするタッチ検出機能付きスイッチ装置。
【請求項2】
前記弾性的接触手段は、弾性及び導電性を有し、前記接続導体の他端部と前記電気的接続部との間に介在された導電性ゴムにより構成されていることを特徴とする請求項1記載のタッチ検出機能付きスイッチ装置。
【請求項3】
前記弾性的接触手段は、前記接続導体にあって前記軸部と前記他端部との間に設けられた弾性部により構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のタッチ検出機能付きスイッチ装置。
【請求項4】
前記タッチ検出用電極と前記接続導体と前記弾性部は、連続した一体の導電部材によって構成されていることを特徴とする請求項3記載のタッチ検出機能付きスイッチ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−165384(P2011−165384A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24166(P2010−24166)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】