説明

タブ端子

【課題】 挿入時の挿入力を低減させるとともに、電気的接続を安定させることが可能なタブ端子を提供する。
【解決手段】 オス端子10は、先端部10aと、接触部10bとを有する。先端部10aは、挿入口2aへの挿入時に、挿入口2a内のメス端子20と摺接し、接触部10bは、挿入口2aへの挿入完了後に、メス端子20と接触する。このオス端子10の表面には、摩擦力を低減する分散粒子が用いられて、複合めっき層が形成されている。先端部10aの表面の複合めっき層における分散粒子は、接触部10bの表面の複合めっき層よりも密になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入口内の相手端子と接触するタブ端子に係り、特に、複合めっき層が表面に形成されたタブ端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コネクタの端子に対し、低挿入力化などを目的に、複合めっき処理が施されている。従来の複合めっき処理では、端子全体をめっき液中に浸し、その表面に、金属マトリックスとともに、分散粒子を共析させるようになっている(特許文献1)。ここで、端子は銅などからなり、金属マトリックスはスズ、鉛、銀などであり、分散粒子はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの低摩擦物質である。
【0003】
【特許文献1】特表2000−508379号公報(第15頁第19行〜第17頁第5行、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仮に、挿入力をより大きく低減させるため、端子表面での分散粒子の析出量を多くしたとすると、そのような複合めっき層を有する端子と、この端子に接触する端子との間で十分な導電性が確保できない恐れがある。これは、分散粒子として用いられるPTFEなどのフッ素樹脂に、絶縁性があるからである。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決することができるタブ端子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係るタブ端子は、挿入口への挿入時に、該挿入口内の相手端子と摺接する先端部、及び、前記挿入口への挿入完了後に、前記相手端子と接触する接触部を有するとともに、摩擦力を低減する分散粒子による複合めっき層が表面に形成されたタブ端子である。本タブ端子は、前記先端部の表面の前記複合めっき層における前記分散粒子が、前記接触部の表面の前記複合めっき層よりも密であることを特徴とする。
請求項2に係るタブ端子は、請求項1に係るタブ端子において、前記複合めっき層が、前記先端部の表面にのみ凹凸が形成された状態で、複合めっき処理が前記先端部の表面及び前記接触部の表面に施されることによって形成されることを特徴とする。
請求項3に係るタブ端子は、請求項1又は請求項2に係るタブ端子において、前記先端部の前記複合めっき層が、挿入時の挿入力を低減させる分散粒子を含むとともに、前記接触部の前記複合めっき層が、挿入完了後の端子間の接触が安定する分散粒子の密度とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本タブ端子では、先端部の複合めっき層における分散粒子が、接触部の複合めっき層よりも密になっている。そのため、タブ端子の挿入時には、分散粒子がより密となった先端部と、挿入口内の相手端子との摺接により、挿入力が低減されるとともに、その挿入完了後には、分散粒子がより疎となった接触部と、相手端子との接触により、電気的接続が安定したものになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
(最良の実施の形態)
本発明の最良の実施の形態であるオス端子(タブ状の端子)について説明する。図1に示すように、コネクタが嵌合される際、オスコネクタ1のオス端子10が、メスコネクタ2の挿入口2aに挿入される。この挿入口2a内には、メス端子20が形成されており、オス端子10は、このメス端子20と、接点21で接触するようになっている。
【0009】
ここで、オス端子10は、先端部10aと、接触部10bとを有し、先端部10aは、オス端子10の挿入口2aへの挿入時に、挿入口2a内のメス端子20(接点21)と摺接する(図2(a))。通常、この挿入時において、挿入力がピーク値になる。挿入口2aへの挿入が完了した後、接触部10bが、メス端子20と接触する(同図2(b))。
【0010】
オス端子10の表面(先端部10a及び接触部10bの表面)には、図3のように、複合めっき層Pが形成されている。この複合めっき処理における分散粒子には、オス端子10の挿入時に、メス端子20との間で働く摩擦力を低減させるものを用いる。その分散粒子は、例えば、カーボン、PTFEなどである。また、オス端子10には、銅合金などを用い、金属マトリックスとして、スズ、金、ニッケル、銀などを用いてよい。(この複合めっき処理自体は、従来から周知の手法による。)
【0011】
本オス端子10の特徴の一つは、先端部10aの表面の複合めっき層Pにおける分散粒子が、接触部10bの表面の複合めっき層Pよりも密である点である。(図1及び図3では、その分散粒子の密度を表現するために、分散粒子を、実際よりも大きく誇張して表している。)具体的に、このオス端子10の製造方法を説明すると、(1)プレス加工の金型を構成して、オス端子10のプレス加工時に、同時に、先端部10aに、半球状をした多数の凹部Cが形成されるようにする(図4)。そうして、(2)先端部10aの表面のみに凹部Cが形成された状態で、1回の複合めっき処理をオス端子10全体の表面に施すことによって、上記の複合めっき層Pを形成する。先端部10aの表面積は、凹部Cにより大きくなっているから、接触部10bよりも多くの分散粒子が析出することになる。
【0012】
以上のオス端子10では、分散粒子が摩擦力を低減させ絶縁抵抗を有するものであり、先端部10aの複合めっき層Pにおけるその分散粒子が、接触部10bの複合めっき層Pよりも密になっている。そのため、オス端子10の挿入時には、先端部10aと挿入口2a内のメス端子20との摺接により、挿入力が低減される。これとともに、その挿入完了後には、接触部10bとメス端子20とが、分散粒子に妨げられることなく接触し、この接触により、電気的接続が安定したものになる。
【0013】
(他の実施の形態等)
以上、具体的な実施の形態により本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施の形態を変更して実施することができる。
a. 例えば、凹部Cの形状は、半球状としたが、もちろん、半楕円球状等の他の類似の形状としてよい。また、多数の半円柱状の溝部を設けるようにしてもよい。そのような溝部を形成する場合、オス端子の挿入方向に合わせてもよいし、オス端子の挿入方向と垂直にしてもよい。さらに、凹部でなく、凸部が形成されるようにしてもよい。
【0014】
b. オス端子10は、厚さを有する一枚板で構成されることを想定して、そのプレス加工時に、ともに、先端部10aに、凹部Cが形成されるものとした。これとは異なり、薄板金属を所定形状に打ち抜いて、これに折り曲げ加工を施すこと等によって、オス端子10を形成してもよい。この場合、打ち抜き時に、凹部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るオス端子を示す斜視図
【図2】オス端子とメス端子との接触部分を示す断面図
【図3】オス端子表面の複合めっき層Pのイメージを示す断面図
【図4】オス端子表面に形成される多数の凹部Cのイメージを示す図
【符号の説明】
【0016】
1…………オスコネクタ
2…………メスコネクタ
2a………挿入口
10………オス端子(タブ端子)
10a……先端部
10b……接触部
20………メス端子(相手端子)
21………接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口への挿入時に、該挿入口内の相手端子と摺接する先端部、及び、前記挿入口への挿入完了後に、前記相手端子と接触する接触部を有するとともに、摩擦力を低減する分散粒子による複合めっき層が表面に形成されたタブ端子であって、
前記先端部の表面の前記複合めっき層における前記分散粒子は、前記接触部の表面の前記複合めっき層よりも密であることを特徴とするタブ端子。
【請求項2】
前記複合めっき層は、前記先端部の表面にのみ凹凸が形成された状態で、複合めっき処理が前記先端部の表面及び前記接触部の表面に施されることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のタブ端子。
【請求項3】
前記先端部の前記複合めっき層は、挿入時の挿入力を低減させる分散粒子を含むとともに、前記接触部の前記複合めっき層は、挿入完了後の端子間の接触が安定する分散粒子の密度とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタブ端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−218096(P2009−218096A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60989(P2008−60989)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】