説明

タマネギフレーバー化合物および使用

本発明は、タマネギフレーバーを消費財およびフレーバー組成物に付与するO−アルキル化された硫黄含有アミノ酸またはペプチドの化合物、並びにこのような化合物を含む消費財およびフレーバー組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タマネギフレーバー化合物、消費財におけるタマネギフレーバー化合物の使用、並びにこのような化合物を含むフレーバー組成物および消費財に関する。
【背景技術】
【0002】
フレーバーは、所望のフレーバーノートを示すことは別として、他の望まないフレーバーノートを付与してはならない。
後者には、特に、消費者により一般的に望まないと知られる苦い、または金属性のノートが含まれる。ある用途について、追加のフレーバーノート(例えば塩味、コク味(kokumi)、甘味または酸味)に興味が持たれ得るが、所与のフレーバー化合物の適用範囲が制限される。
【0003】
所望のフレーバーノートの存在および望まないノートの不存在に加えて、フレーバー化合物は、好ましくは、以下の特性の1つまたは2つ以上を有しなければならない:これらは、生産するのが安価であり、長期間の貯蔵の間、並びに高温および高い湿度および極度のpHを含み得る加工条件に対して安定でなければならない。さらに、当該化合物は、広範囲のpH、特にpH3〜pH8にわたり所望のタマネギノートを示さなければならない。
【0004】
本出願人は、消費財にタマネギフレーバーを付与し、前述の要求を満たすことができる、以下の(hereinunder)式Iで表されるO−アルキル化された硫黄含有アミノ酸またはペプチドを特定した。
【0005】
新たに切断したタマネギのフレーバーは、大きい程度にわたり、広範囲の硫黄化合物に基づいている。主要な寄与する硫黄化合物は、プロパンチアール(propanthial)−S−オキシド、また4種の異なる群のチオスルフィネート類:完全に飽和したチオスルフィネート類(例えば、CH−S(O)−S−CH)、モノまたはビス−β,γ−不飽和チオスルフィネート類(例えば、CH−CH−CH−S(O)−S−CH−CH−CH、アリシン)、モノ−α,β−不飽和チオスルフィネート類(例えば、CH−S(O)−S−CH−CH−CH)、並びに混合α,β−およびβ,γ−不飽和チオスルフィネート類(例えば、CH−CH−CH−S(O)−S−CH−CH−CH)である (Block, Angew. Chem. 1992, 104, 1158-1203)。3−メルカプト−2−メチルペンタン−1−オールは、未加工のタマネギから単離されたさらなる強度のフレーバーである(Widderら、J. Agric. Food Chem. 2000, 48, 418-423)。
【0006】
これらの既知のタマネギフレーバー化合物は、化学的に単離または合成するのが困難であり、その結果通常製造するのが高価である。
【発明の開示】
【0007】
生成するのが比較的容易であり、フレーバー組成物および消費財にタマネギフレーバーを付与する代替の、または改善された化合物についての必要性が、依然としてある。
驚くべきことに、本出願人は、式Iで表される化合物がタマネギフレーバーを付与することができることを見出した。
【0008】
したがって、第1の側面において、本発明は、式I
【化1】

式中、残基R、RおよびRは、以下のように選択される:
は、−CHSX、−CHCHSXおよび−CHCHCHSXからなる群から選択される残基であり、Xは、Hおよび−CHから選択される残基であり;
【0009】
は、−O−CH、−O−CH−CH、−O−CHCHCH、−O−CHCHCHCH、−O−CHCHCHCHCH、−O−CH(CH)CH、−O−CHCH(CH、−O−CHCH(CH)(CHCH)および−O−CHCHCH(CHを含む直鎖状または分枝状のC〜Cアルコキシ残基から選択される残基であり;また
【0010】
は、H、およびγ−Glu(−CO−CH−CH−CH(NH)−COOH)、β−Asp(−CO−CH−CH(NH)−COOH)、α−Glu(−CO−CH(NH)−CH−CH−COOH)、α−Asp(−CO−CH(NH)−CH−COOH)、β−Ala(−CO−CH−CH−NH)、α−Ala、α−Val、α−Leu、α−Ile、α−Met、α−Pro、α−Phe、α−Trp、α−Ser、α−Thr、α−Asn、α−Gln、α−Tyr、α−Cys、α−Lys、α−Arg、α−His、α−Asp、ガンマアミノ酪酸(GABA)、および4−ヒドロキシプロリン、ε−N,N,N−トリメチルリジン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、O−ホスホセリン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸塩、ε−N−アセチルリジン、ω−N−メチルアルギニン、N−アセチルセリン、N,N,N−トリメチルアラニン、N−ホルミルメチオニンを含む稀なアミノ酸からなる群から選択される、ペプチド結合を介して結合するアミノ酸残基の群から選択される残基である、
で表される化合物の、フレーバーとしての使用を対象とする。
【0011】
アミノ酸についての標準的な略語を、本明細書を通じて用いて、遊離のアミノ酸よりも大きい化合物内のこれらの残基を特定する。例えば、上記のRは、γ−Glu(−CO−CH−CH−CH(NH)−COOH)、β−Asp(−CO−CH−CH(NH)−COOH)、α−Glu(−CO−CH(NH)−CH−CH−COOH)またはα−Asp(−CO−CH(NH)−CH−COOH)の残基であり得る。「稀な(uncommon)」または非標準のアミノ酸は、生物系中に存在する20種の標準的なアミノ酸の1種の誘導体である;天然に存在するタンパク質の成分として存在するものもあれば、生物学的に活性なペプチドであるものもある。
【0012】
式Iで表される化合物は、示した形態で、または対イオンを含む、もしくは含まないこのイオン性形態で、例えばこのナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩または同様の形態で、存在し得る。
【0013】
他の側面において、本発明は、Rが、H、γ−Glu、β−Asp、α−Glu、α−Aspからなる群から選択される残基である、式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用を対象とする。
他の側面において、本発明は、Rが、γ−Glu、β−Aspの残基からなる群から選択される残基である、式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用を対象とする。
【0014】
他の側面において、本発明は、XがHである、式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用を対象とする。
他の側面において、本発明は、RがCHSHである、式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用を対象とする。
他の側面において、本発明は、XがCHである、式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用を対象とする。
他の側面において、本発明は、RがCHCHSCHである、式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用を対象とする。
【0015】
他の側面において、本発明は、Rが、−O−CH、−O−CH−CH、−O−CHCHCH、−O−CHCHCHCH、−O−CHCHCHCHCH3、−O−CH(CH)CH、−O−CHCH(CH、−O−CHCH(CH)(CHCH)および−O−CHCHCH(CHからなる群から選択される直鎖状または分枝状のC〜Cアルコキシ残基から選択される残基である、式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用を対象とする。
【0016】
他の側面において、本発明は、Rが、−O−CH、−O−CH−CH、−O−CHCHCH、−O−CH(CH)CHおよび−O−CHCH(CHを含む直鎖状または分枝状のC〜Cアルコキシ残基から選択される残基である、式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用を対象とする。
【0017】
他の側面において、本発明は、化合物が、Cys−O−CH、Cys−O−C、Cys−O−CHCHCH、Cys−O−CH(CH)CH、Met−O−CH、Met−O−C、γ−Glu−Cys−O−CH、γ−Glu−Cys−O−Cからなる群から選択される、式Iで表される化合物のフレーバーとしての使用を対象とする。
【0018】
以下の表は、多数の式Iで表される例示的な化合物を示す:
【0019】
【表1】

【0020】
式Iで表される化合物は、広範囲のpHにわたり所望のタマネギノートを示す。
【0021】
式Iで表される化合物の数種は、新規である。したがって、他の側面において、本発明は、式Iで表される化合物であって、ただし、該化合物が、R=CHSH、R=OCHおよびR=H、Cysまたはγ−Glu;R=CHSH、R=OCHCHおよびR=H、Cys、Ala、Glyまたはγ−Glu;R=CHSH、R=OCHCHCHおよびR=H;R=CHSH、R=OCHCHCH(CHおよびR=H;R=CHSH、R=OCHCH(CH)(CHCH3)およびR=H;R=CHSH、R=OCHCH(CHおよびR=H;R=CHSH、R=OCH(CH)CHおよびR=H;R=CHSCH、R=OCHおよびR=H、Gly、Pheまたはα−Asp;R=CHSCH、R=OCHCHおよびR=HまたはGly;R=CHCHSH、R=OCHおよびR=H;R=CHCHSH、R=OCHCHおよびR=H;R=CHCHSH、R=OCHCHCHおよびR=H;R=CHCHSH、R=OCH(CH)CHおよびR=H;R=CHCHSCH、R=OCHおよびR=H、Ser、Gly、Phe、Leu、Metまたはα−Asp;R=CHCHSCH、R=OCHCHおよびR=H、Met、Pheまたはβ−Ala;R=CHCHSCH、R=OCHCHCHおよびR=H;R=CHCHSCH、R=OCHCH(CHおよびR=H;R=CHCHSCH、R=OCH(CH)CHおよびR=H;R=CHCHSCH、R=OCHCHCH(CHおよびR=H;R=CHCHCHSH、R=OCHおよびR=H;並びにR=CHCHCHSCH、R=OCHおよびR=Hである化合物からなる群から選択されない、前記化合物を対象とする。
【0022】
他の側面において、本発明は、上記で定義した式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む、フレーバー組成物を対象とする。
【0023】
他の側面において、本発明は、上記で定義した式(I)で表される1種もしくは2種以上の化合物またはこれらの混合物を、1〜25,000ppm(重量/重量)の濃度で含む、消費財を対象とする。有用な濃度は、例えば、0.1〜50mmol/L、または0.5〜20mmol/L、1〜10mmol/Lの濃度である。
【0024】
他の側面において、本発明は、タマネギフレーバーを消費財に付与する方法であって、上記に記載した化合物を消費財に、タマネギ味を付与するのに十分な量で加えることを含む、前記方法を対象とする。当該化合物を、これが生成した精製されていない反応混合物の形態で、植物もしくは発酵からの抽出物の形態で、前述の粗製の抽出物の形態で、または精製された形態で加えてもよい。
【0025】
他の側面において、本発明は、タマネギフレーバーおよびコク味を消費財に付与する方法であって、請求項1において定義した式Iで表され、式中R=γ−Gluである化合物を消費財に加えることを含む、前記方法を対象とする。
【0026】
「コク味」は、フレーバー産業において、持続性、広がり、豊かさおよび厚みなどの特徴を表すのに用いられる用語である。これに対して、基本的な味についての官能に関する用語は、塩味、甘味、酸味、苦味または旨味であり、後者は、グルタミン酸一ナトリウム(MSG)の味である。コク味は、独特な味質であるか、またはむしろ、味増強品質であり、これは、訓練されたパネリストによる官能試験で容易に検出および識別され得る。コク味を付与する化合物は、通常水中で無味であるが、前述の品質に関して他の味物質と組み合わされて味を増強する。
【0027】
本発明の方法において、化合物を、当該化合物が生成された未精製の酵素反応混合物の形態で、このような混合物の粗製の抽出物の形態で、または精製された形態で加えてもよい。
本発明において用いるための化合物を、当該分野において十分知られている手順により調製することができる。
【0028】
式Iで表される数種の化合物をまた、当該分野において十分知られているように、ガンマグルタミントランスペプチダーゼ酵素(GGTP)を用いて、商業的な供給源を含み、例えばSuzukiら、J. Mol. Catal. 1999, B6, 175-184; Suzukiら、J. Agric. Food Chem. 2002, 50, 313-318, Suzukiら;J. Agric. Food Chem.; 52 (2004); 577-580; StrumeyerおよびBloch, Biochem. Prep. 1962, 9, 52-55; ThompsonおよびMeister, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 1975, 72, 1985-1988; AllisonおよびMeister, J. Biol. Chem. 1981, 256, 2988-2992; Meister, The Enzymes B(Academi, New York), 第3版、第10巻、671〜697頁;StrumeyerおよびBloch, J. Biol. Chem. 1969, 235, 27; ThompsonおよびMeister, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 1975, 72, 1985-1988; Oppenheimerら、J. Biol. Chem. 1979, 254, 5184-5190; TateおよびMeister, J. Biol. Chem., 1975, 250, 4619-4627により以前記載されている種々の供給源からの酵素を用いて、酵素的に調製することもできる。
【0029】
出発物質および酵素は、商業的に容易に入手できるか、または上記に示した参考文献に記載されているように得ることができる。他の可能性は、アミノ酸からのペプチドの化学的合成であり、これは当該分野において十分知られている。
【0030】
生成した生成物を、精製し、精製した形態でフレーバーとして用いてもよいか、あるいはこれらを、粗製の形態(酵素反応混合物)においてフレーバーとして、または発酵からの、もしくは単離した酵素との酵素反応からの粗製の抽出物として、用いてもよい。
【0031】
所望により、生成物を、以下のようにして精製してもよい:凍結乾燥、続いてクロマトグラフィーによる作業(work-up)、例えばゲル透過クロマトグラフィーを用いてもよい。クロマトグラフィーを、例えば固定相としてSephadex G-10 (Amersham Bioscience, Uppsalla, Sweden)を、および移動相として水を用いて行うことができる。流出物を、例えば220nmにおいてUV検出器を用いてモニタリングする。生成物溶出液を、当該分野において十分知られている分析方法により、例えば液体クロマトグラフィーおよび質量分析法(LC−MS)および核磁気共鳴(NMR)分光法により、確認することができる。
【0032】
本発明において用いるための化合物は、消費財にタマネギ味を付与する。本明細書中で用いる用語「消費財」は、食品製品、飲料およびこのような製品に混合するための組成物、特にフレーバー組成物を含む。フレーバー組成物を、これらの加工の間加工した食品または飲料に加えてもよいか、またはこれらは、実際に独立した消費財、例えばソースなどの調味料であってもよい。
【0033】
本発明において用いるための化合物またはこれらの混合物を、フレーバー組成物中のフレーバー成分として用いることができる。化合物または化合物の混合物を、前述の組成物中の他のフレーバー成分と配合してもよい。化合物または化合物の混合物は、タマネギ味を、すべての種類の消費財に付与し、これは風味のある消費財において特に興味深い。
【0034】
消費財の例には、穀物製品、ベーカリー製品、パン製品、酵母製品、塩およびスパイス製品、マスタード製品、酢製品、ソース(調味料)、スープ、加工食品、調理済み果物および野菜製品、肉および肉製品、卵製品、牛乳および乳製品、チーズ製品、バターおよびバター代用製品、牛乳代用製品、大豆製品、食用油脂製品、薬剤、飲料、アルコール飲料、ビール、清涼飲料水、食用エキス、植物エキス、肉エキス、調味料、甘味料、栄養補給食品、錠剤、トローチ剤、ドロップ、エマルジョン、エリキシル剤、シロップ並びに飲料、インスタント飲料および発泡錠を製造するための他の調製物が含まれる。
【0035】
式(I)で表される化合物の風味物質(flavourant)品質は、広範囲の濃度にわたり確実であり得る。例えば、食品または飲料製品の場合において、化合物または化合物の混合物は、例えば1〜10,000ppm、5〜25,000ppm、10〜10,000ppm、50〜5000ppmおよび100〜1000ppm(重量を基準とする)の範囲内の濃度で存在し得る。当業者は、適切な濃度は、消費財、他のフレーバーの存在および所望のフレーバーの強度に依存することを理解する。当該濃度を、当業者により所望の効果に対して容易に調整することができる。
【0036】
当業者は、配合物および消費財は、当該分野において十分知られている種々の添加剤および賦形剤を含んでいてもよい追加の成分を含んでいてもよく、これには、凝結防止剤、消泡剤、酸化防止剤、結合剤、着色料、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、封入剤(encapsulating agent)または配合物、酵素、脂肪、調味料、香味剤、ガム、潤滑剤、多糖類、保存剤、タンパク質、可溶化剤、溶媒、安定剤、糖誘導体、界面活性剤、甘味剤、ビタミン類、ロウなどが含まれることを理解する。
【0037】
用いることができる溶媒は、当業者に知られており、これには、例えば、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン、フタル酸ジエチルおよびフタル酸ジメチルが含まれる。カプセル材料およびガムには、マルトデキストリン、アラビアゴム、アルギン酸塩類、ゼラチン、加工デンプンおよび多糖類が含まれる。フレーバーまたは芳香性化合物のための添加剤、賦形剤、担体、希釈剤または溶媒の例は、例えば、”Perfume and Flavor Materials of Natural Origin”, S. Arctander編、Elizabeth, N.J., 1960中;"Perfume and Flavor Chemicals", S. Arctander編、Vol. I & II, Allured Publishing Corporation, Carol Stream, USA, 1994中;“Flavourings”, E. ZieglerおよびH. Ziegler(編)、Wiley-VCH Weinheim, 1998、並びに“CTFA Cosmetic Ingredient Handbook”, J.M. Nikitakis(編)、第1版、The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association, Inc., Washington, 1988中に見出され得る。
【0038】
ここで、本発明を例示する作用を奏する一連の非限定的例を続ける。
【0039】
例1〜5
他に示さない限り、すべての官能試験は、3点比較法であり、“Amtliche Sammlung von Untersuchungsverfahren nach §35 LMBG (Lebensmittel- und Bedarfsgegenstaendegesetz)“; L 00.90 7 , Untersuchung von Lebensmitteln, Sensorische Pruefverfahren, Dreieckspruefung (Uebernahme der gleichnahmigen Deutschen Norm DIN ISO 4120, Ausgabe Januar 1995)中の指針に従って以下のように行う:
【0040】
官能パネリストを、文献(WieserおよびBelitz, Z. Lebensm. Unters. Forsch., 1975, 159, 65-72)に記載されているように、3点比較法を用いることにより以下の標準味化合物の水溶液(各々4ml)の味を評価するように訓練する:甘味についてスクロース(40mmol/L);酸味についてクエン酸(5mmol/L);塩味についてNaCl(12mmol/L);苦味についてカフェイン(2mmol/L);および旨味についてグルタミン酸一ナトリウム(MSG;6mmol/L)。コク味について、グルタチオン(10mmol/L)を希釈チキンブロス濃縮物(Gourmet Bouillon Huhn, Maggi, Singen, Germany;3g/100gビン入り水(Evian(登録商標))に溶解した溶液を調製し、グルタチオンを加えていないチキンブロスの味と比較する。官能パネリスト室中で22〜25℃にて、3つの異なる期間にわたり、8〜10人の個人の訓練されたパネリストにより、すべての官能分析を行う。
【0041】
味のプロファイルを記録するために、以下の例に示すように試料を調製する。試料の味のプロファイルを、3つの異なる期間において、3点比較法において決定する。パネリストは、期間の前少なくとも1時間にわたり飲食を控える。期間の開始時および各々の試行の前に、対象を水で洗浄し、吐き出した。参加者に、2つのブランクと1つの味試料との組を与える。液体試料を、口中で短時間旋回させ、吐き出す。固体試料を、20秒間かみ、次に吐き出す。いずれのガラスビンが異なる味のプロファイルおよび識別の表現を示すかを示した後に、参加者に、2つのブランクと1つの味試料との他の試行組を与える。添加剤を含む各々の試料を、添加剤を含まない2つの基準試料と比較する。
【0042】
対応する残基を有する式Iで表される試料化合物を、以下に列挙する:
【0043】
【表2】

【0044】
例1
式Iで表される化合物の水中での官能効果
【表3】

【0045】
例2
チキンブロス中での式Iで表される化合物の官能効果
官能試験(3点比較法)を、種々の個人の官能パネリストを用いて、各々の化合物について少なくとも3回行って、結果を確認する。
3gのチキンブロス濃縮物(Gourmet Bouillon Huhn; Maggi, Singen, Germany)を100mlの水(Evian)で希釈することにより、チキンブロスを調製する。添加剤を、以下の表に特定するように加える。
すべての試料のpH値を、ギ酸(0.1mol/L)または水酸化ナトリウム(0.1mol/L)を用いて6.5に調整する。
【0046】
フレーバー強度(タマネギまたはコク味)を、0〜5の階級に従って0〜5で評定する(5が最も強い)。GSH(5mmol/L)は、すべての試験において3のコク味強度を有すると決定される。
添加剤を消費財に加え、試料を均質化する。試料を、均質化した直後に官能パネリストに提示する。
試験の結果を、以下の表に示す。各々の試料について、フレーバーの強度を評定し、パネリストに、官能的特徴を表現するように要求する。
【0047】
【表4】

【0048】
例3
トマトスープ中のタマネギフレーバー化合物
Cys−O−Cおよびγ−Glu−Cys−O−Cを、トマトスープ(Unox, Unilever Bestfoods, Germany、pH4.5)に、以下に示す濃度で加える。
【0049】
【表5】

【0050】
すべてのパネリストは、試料2〜5が基準試料とは異なり、好ましいことを見出す。試料Cys−O−C(1mmol/L)およびCys−O−C(5mmol/L)は共に、タマネギ様であり、わずかに肉らしいフレーバーを有すると表現され、γ−Glu−Cys−O−C(1mmol/L)およびγ−Glu−Cys−O−C(5mmol/L)はさらに、一層ロースト風であると表現される。γ−Glu−Cys−O−Cを含む試料はまた、コク味を有し、パネリストは、当該試料を、一層複雑であり、長続きする味覚および増加した広がりを有すると特徴づけした。
【0051】
例4
マッシュルームクリームスープ中のタマネギフレーバー化合物
Cys−O−Cおよびγ−Glu−Cys−O−Cを、マッシュルームクリームスープ(Unox, Unilever Bestfoods, Germany)、pH6.0に、1mmol/Lの濃度で加え、試料を、均質化した直後に評価する。
【0052】
【表6】

【0053】
Cys−O−Cは、8人のパネリストのうち7人により、タマネギ様フレーバーを有すると示される。γ−Glu−Cys−O−Cは、Cys−O−Cと同様に表現されているが、観察された効果は比較的高く、試料は一層複雑であり、長続きする味を誘発する。
【0054】
例5
バーベキューソース中でのタマネギフレーバー化合物
以下の表に示すタマネギフレーバー化合物を、バーベキューソース(Kraft Foods, Germany)、pH3.3に加える。
【0055】
【表7】

【0056】
添加剤を含む両方の試料は、顕著に好ましく、タマネギ様であり、わずかに肉風のフレーバーを有すると表現され、γ−Glu−Cys−O−Cを含む試料はさらに、一層ロースト風であると表現される。この試料はまた、コク味を有し、パネリストは、当該試料を、一層複雑であり、長続きする味覚および増加した広がりを有すると特徴づけした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式中、残基R、RおよびRは、以下のように選択される:
は、−CHSX、−CHCHSXおよび−CHCHCHSXからなる群から選択される残基であり、Xは、Hおよび−CHから選択される残基であり;
は、−O−CH、−O−CH−CH、−O−CHCHCH、−O−CHCHCHCH、−O−CHCHCHCHCH、−O−CH(CH)CH、−O−CHCH(CH、−O−CHCH(CH)(CHCH)および−O−CHCHCH(CHを含む直鎖状または分枝状のC〜Cアルコキシ残基から選択される残基であり;また
は、H、およびγ−Glu(−CO−CH−CH−CH(NH)−COOH)、β−Asp(−CO−CH−CH(NH)−COOH)、α−Glu(−CO−CH(NH)−CH−CH−COOH)、α−Asp(−CO−CH(NH)−CH−COOH)、β−Ala(−CO−CH−CH−NH)、α−Ala、α−Val、α−Leu、α−Ile、α−Met、α−Pro、α−Phe、α−Trp、α−Ser、α−Thr、α−Asn、α−Gln、α−Tyr、α−Cys、α−Lys、α−Arg、α−His、α−Asp、ガンマアミノ酪酸(GABA)、および4−ヒドロキシプロリン、ε−N,N,N−トリメチルリジン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、O−ホスホセリン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸塩、ε−N−アセチルリジン、ω−N−メチルアルギニン、N−アセチルセリン、N,N,N−トリメチルアラニン、N−ホルミルメチオニンを含む稀なアミノ酸からなる群から選択される、ペプチド結合を介して結合するアミノ酸残基の群から選択される残基である、
で表される少なくとも1種の化合物またはこれらの塩の、フレーバーとしての使用。
【請求項2】
が、H、γ−Glu、β−Asp、α−Glu、α−Aspからなる群から選択される残基である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
が、γ−Glu、β−Aspの残基からなる群から選択される残基である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
XがHである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
がCHSHである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
XがCHである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
がCHCHSCHである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
が、−O−CH、−O−CH−CH、−O−CHCHCH、−O−CHCHCHCH、−O−CHCHCHCHCH、−O−CH(CH)CH、−O−CHCH(CH、−O−CHCH(CH)(CHCH)および−O−CHCHCH(CHからなる群から選択される直鎖状または分枝状のC〜Cアルコキシ残基から選択される残基である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
が、−O−CH、−O−CH−CH、−O−CHCHCH、−O−CH(CH)CHおよび−O−CHCH(CHを含む直鎖状または分枝状のC〜Cアルコキシ残基である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
化合物が、Cys−O−CH、Cys−O−C、Cys−O−C、Cys−O−C、Met−O−CH、Met−O−C、γ−Glu−Cys−O−CH、γ−Glu−Cys−O−Cからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
請求項1の式Iにおいて定義した化合物であって、ただし、該化合物が、R=CHSH、R=OCHおよびR=H、Cysまたはγ−Glu;R=CHSH、R=OCHCHおよびR=H、Cys、Ala、Glyまたはγ−Glu;R=CHSH、R=OCHCHCHおよびR=H;R=CHSH、R=OCHCHCH(CHおよびR=H;R=CHSH、R=OCHCH(CH)(CHCH)およびR=H;R=CHSH、R=OCHCH(CHおよびR=H;R=CHSH、R=OCH(CH)CHおよびR=H;R=CHSCH、R=OCHおよびR=H、Gly、Pheまたはα−Asp;R=CHSCH、R=OCHCHおよびR=HまたはGly;R=CHCHSH、R=OCHおよびR=H;R=CHCHSH、R=OCHCHおよびR=H;R=CHCHSH、R=OCHCHCHおよびR=H;R=CHCHSH、R=OCH(CH)CHおよびR=H;R=CHCHSCH、R=OCHおよびR=H、Ser、Gly、Phe、Leu、Metまたはα−Asp;R=CHCHSCH、R=OCHCHおよびR=H、Met、Pheまたはβ−Ala;R=CHCHSCH、R=OCHCHCHおよびR=H;R=CHCHSCH、R=OCHCH(CHおよびR=H;R=CHCHSCH、R=OCH(CH)CHおよびR=H;R=CHCHSCH、R=OCHCHCH(CHおよびR=H;R=CHCHCHSH、R=OCHおよびR=H;並びにR=CHCHCHSCH、R=OCHおよびR=Hである化合物からなる群から選択されない、前記化合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかにおいて定義した式Iで表される1種もしくは2種以上の化合物またはこれらの混合物を含む、フレーバー組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかにおいて定義した式(I)で表される1種もしくは2種以上の化合物またはこれらの混合物を、1〜25,000ppm(重量/重量)の濃度で含む、消費財。
【請求項14】
タマネギフレーバーを消費財に付与する方法であって、請求項1〜11のいずれかにおいて定義した1種または2種以上の化合物を消費財に加えることを含む、前記方法。
【請求項15】
タマネギフレーバーおよびコク味を消費財に付与する方法であって、請求項1において定義した式Iで表され、式中Rがγ−Gluである化合物を消費財に加えることを含む、前記方法。
【請求項16】
化合物を、当該化合物が生成された未精製の反応混合物の形態で、植物または発酵からの抽出物の形態で、前述の粗製の抽出物の形態で、または精製された形態で加える、請求項14または15に記載の方法。

【公表番号】特表2009−511682(P2009−511682A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534931(P2008−534931)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009838
【国際公開番号】WO2007/042287
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508112221)
【氏名又は名称原語表記】THOMAS FRANK HOFMANN & ANDREAS DUNKEL
【住所又は居所原語表記】Institut fuer Lebensmittelchemie,Westfaelische Wilhelms−Universitaet,Corrensstr.45,48161 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】