説明

タンクの解体方法

【課題】 タンクの切断片を簡単にソフトランディングさせることが出来るタンクの解体方法を提供することにある。また、吊り降ろし後の切断片の取り扱いが容易なタンクの解体方法を提供する。
【解決手段】 ガスや液体を貯蔵するタンク本体の底部を含む下部を湾曲板で構成しタンク本体が脚柱により支持されたタンクの解体方法であって、吊り降ろされたタンク本体の上部の切断片を取り出すための取出口を前記湾曲板に設けるステップと、タンク本体の上部を切断した切断片をタンク本体内部を通して所定の高さまで吊り降ろすステップと、 所定の高さまで吊り降ろした切断片を前記湾曲板の内壁面のカーブに沿わせながら吊り降ろして前記取出口まで移動させて前記取出口から取り出すステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスや液体を貯蔵するタンクの解体方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般にガスや液体を貯蔵するタンクを解体する方法は、タンク周囲に作業足場を仮設した後に、この作業足場を使用して作業員がタンク本体を細かく切断し、切断した切断片を、タンク周囲に設置した大型のクレーンで地上に吊り降ろすという大掛かりな作業を繰り返して解体撤去を行っている。
【0003】
また、特許文献1には、従来一般の解体作業における高所作業を削減し、外殻部材の天井部の中心近傍位置から所定間隔をもって広がる渦巻きラインに沿って順次切断していく解体方法の発明が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、足場を必要とせず高所作業を低減する発明が開示されている。この発明は、赤道から上に位置する上半球部と下に位置する下半球部とに分けて解体を実施するもので、タンクの側面に沿ってガイドレールを架設し、このガイドレールに沿って自動切断機を作動させて切断する解体方法である。
【0005】
また、特許文献3には、高所作業を少なくし、作業効率を向上させる発明が開示されている。この発明は、球形タンク本体の下半球部分と上半球部分とを、それぞれ逆三角形状の切断片として切り出して自重により外側又は内側へ倒し込み、地上へ吊り降ろして解体する工法である。
【0006】
【特許文献1】特開平8−60893号
【特許文献2】特開平10−110543号
【特許文献3】特開平10−278993号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来一般の解体方法や特許文献1乃至3では、タンクの切断片の吊り降ろし作業における工夫が特に無く、切断片をソフトランディング(切断片に加わる着地時の衝撃を無くし又は少なくして、切断片を安全に地面、基礎、搬送装置等へ着地させること)させるための手間が煩雑であった。
【0008】
また、上記従来一般の解体方法や特許文献1乃至3では、タンクの切断片の吊り降ろし作業における工夫が特に無く、吊り降ろし後の切断片の取り扱いが煩雑であった。特に特許文献3については、切断片が細長い帯状なので切断するラインの長さも長くなり、さらにこの帯状切断片の取り扱いが煩雑であった。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、タンクの切断片を簡単にソフトランディングさせることが出来るタンクの解体方法を提供することにある。また、吊り降ろし後の切断片の取り扱いが容易なタンクの解体方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載のタンクの解体方法は、ガスや液体を貯蔵するタンク本体の底部を含む下部を湾曲板で構成しタンク本体が脚柱により支持されたタンクの解体方法であって、吊り降ろされたタンク本体の上部の切断片を取り出すための取出口を前記湾曲板に設けるステップと、タンク本体の上部を切断した切断片をタンク本体内部を通して所定の高さまで吊り降ろすステップと、所定の高さまで吊り降ろした切断片を前記湾曲板の内壁面のカーブに沿わせながら吊り降ろして前記取出口まで移動させて前記取出口から取り出すステップとを有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2記載のタンクの解体方法は、請求項1記載のタンクの解体方法において、前記取出口を前記湾曲板に設けるステップは、前記湾曲板の一部の部位の上部がタンク本体に繋がったまま下端部が下方に移動するように切断展開するステップであり、前記取出口は、前記切断展開した部位の下端部であり、前記湾曲板の内壁面のカーブは、前記切断展開した部位の内壁面のカーブであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3記載のタンクの解体方法は、請求項1記載のタンクの解体方法において、前記取出口は、前記湾曲板の一部を切り取って設けることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4記載のタンクの解体方法は、請求項1乃至3いずれか1項記載のタンクの解体方法において、前記取出口付近に、前記切断片を搬送する搬送装置を配置し、前記取出口から取り出した切断片をこの搬送装置に直接載せることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5記載のタンクの解体方法は、請求項1乃至4いずれか1項記載のタンクの解体方法において、前記切断片は、曲板であり、前記の吊り降ろした切断片を前記湾曲板の内壁面のカーブに沿わせる際に、前記切断片のカーブと前記湾曲板の内壁面のカーブが略同方向の向きに向いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のタンクの解体方法によれば、所定の高さまで吊り降ろした切断片を前記湾曲板の内壁面のカーブに沿わせて吊り降ろしながら前記取出口まで移動させて前記取出口から取り出すことにより、切断片がカーブに沿って移動するので、所定の高さから下において、切断片が取出口まで緩やかに移動して取出口から取り出されるため、切断片を垂直に降ろした場合に比べて簡単に取出口から地面、基礎、搬送装置等に切断片をソフトランディングさせることが出来る。さらに、タンク本体内部を移動することにより、強風の影響を受けずに安全に吊り降ろすことが出来る。
【0016】
請求項2記載のタンクの解体方法によれば、前記湾曲板の一部の部位の上部がタンク本体に繋がったまま下端部が下方に移動するように切断展開するため、取出口をタンク本体下方の地面、基礎、又は搬送装置等に近づけることが出来、切断片をより簡単にソフトランディングさせることが出来る。
【0017】
請求項3記載のタンクの解体方法によれば、前記湾曲板の一部を切り取るだけで切り取った後の口が取出口となるため、取出口を簡単に形成できる。
【0018】
請求項4記載のタンクの解体方法によれば、前記取出口付近に、前記切断片を搬送する搬送装置を配置し、前記取出口から取り出した切断片をこの搬送装置に直接載せることにより、切断片を搬送装置に別途乗せるといった必要が無く、切断片を搬送装置により直接搬送できる。これにより、吊り降ろし後の切断片の取り扱いが容易となる。
【0019】
請求項5記載のタンクの解体方法によれば、前記切断片は、曲板であり、前記の吊り降ろした切断片を前記湾曲板の内壁面のカーブに沿わせる際に、前記切断片のカーブと前記湾曲板の内壁面のカーブが略同方向の向きに向いていることにより、切断片を滑らかに移動させることが出来、切断片のソフトランディングがより簡単にできる。また、前記切断片は、曲板であり、前記の吊り降ろした切断片を前記湾曲板の内壁面のカーブに沿わせる際に、前記切断片のカーブと前記湾曲板の内壁面のカーブが略同方向の向きに向いていることにより、吊り降ろし後の切断片のカーブの向きをそろえることが出来るので、切断片の搬送が簡単になるため、吊り降ろし後の切断片の運搬などの取り扱いが容易となる。また、吊り降ろし後の切断片のカーブの向きが同じ場合は、切断片を複数積み重ねる場合において、切断片を積み重ね易くなるため、吊り降ろし後の切断片の保管などの取り扱いが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明に係るタンクの解体方法の実施形態の一例について、図1乃至図5を参照して説明する。なお、本説明では、タンク本体が球形の球形タンクの場合について説明するが、タンク本体は、ガスや液体を貯蔵するタンク本体の底部を含む下部を湾曲板で構成し、タンク本体が脚柱により支持されたタンクであれば良く、湾曲板よりも上の部分(例えば球形タンク本体の赤道部よりも上の部分)については、円筒形状等であっても良い。湾曲板は、板が湾曲したものであり、球形タンク本体の上部又は下部である半球殻板、半卵型板等を含む。
【0021】
なお、タンク本体の上部は、球形タンクにおいては球形タンク本体の赤道部よりも上にある部分(略上半分)である。なお、タンク本体の上部は、タンク本体の形状が球形以外の場合においては、タンク本体の湾曲板よりも上の部分である。なお、タンク本体の下部は、タンク本体の底部を含み、湾曲板により構成される。タンク本体の下部は、球形タンクにおいては球形タンク本体の赤道部よりも下にある部分(略下半分)である。
【0022】
図1は、タンク本体の上部を解体する状況を示す第一説明図である。図2は、タンク本体の上部を解体する状況を示す第二説明図である。図3は、タンク本体の上部を解体する状況を示す第三説明図である。図4は、タンク本体の上部を解体する状況を示す第四説明図である。
【0023】
1はタンク本体、1aはタンク本体の上部、1bはタンク本体の下部の湾曲板、1cはタンク本体の赤道部、2はクレーン、3は上部ノズル(図示せず)を含む天頂部、4は下部ノズル(図示せず)を含む最下部、5は切断片を搬送する搬送装置、15はタンク本体1を支持する脚柱を示す。
【0024】
なお、図1乃至図4において、タンク本体1を支持する複数の脚柱15の一部を省略した。また、図1乃至図4において、タンク本体1の解体作業の際に必要な足場及び足場上で作業する作業員等は省略した。
【0025】
タンクの解体方法においては、例えばクレーン2を設置して解体作業を実施する。
【0026】
搬送装置5は、タンク本体1の下方に搬送装置5を走行可能状態に挿入され、最下部4やタンクから切断して切り取った切断片の受け台、搬送(移送および搬出)に使用する。この搬送装置5は、例えば台車により構成する。台車は、ターンテーブル状の方向変更自在なものを使用することが望ましい。
【0027】
第一ステップとして、球形タンク本体1の天頂部3(大きさ及び形状は適宜決定できる。ここでは、円形状)を切り取り、クレーン2で撤去し、孔1dを形成する(図1参照)。この第一ステップは、後述の切断片7a、8a等をタンク本体1a上部から切断出来れば不要の場合もある。
【0028】
第二ステップとして、球形タンク本体1の最下部4(大きさ及び形状は適宜決定できる。ここでは、円形状)を切り取り、孔1eを形成する(図1参照)。また、最下部4は、搬送装置5に載せて搬送する。この第二ステップは、後述のガイド板6を形成できれば不要の場合もある。
【0029】
第三ステップとして、湾曲板1bに孔1eから赤道部1cにかけて経線方向に切れ目を入れ、切れ目を入れた部位の上部6aがタンク本体1に繋がったままこの部位の下端部6bが下方に移動するように、この部位を下方向に垂らすように押し広げることにより下方向にガイド板6として展開する(図2参照)。
【0030】
このガイド板6の下端部6bは、取出口に相当する。下端部6bは、取出口6bとも表現する。
【0031】
湾曲板1bの一部の部位の上部6aがタンク本体に繋がったまま下端部6bが下方に移動するように切断展開するため、取出口6bをタンク下方の地面、基礎、搬送装置等に近づけることが出来、切断片7a、8aをより簡単にソフトランディングさせることが出来る。前記の切断展開する場合は、タンク最下部が高い位置にあり、地面、基礎、搬送装置等とタンク本体下部の距離が離れている場合に特に有効である。
【0032】
第二ステップ及び第三ステップでは、吊り降ろされたタンク本体1の上部の切断片を、取り出すための取出口6bを湾曲板1bに設けている。より具体的には、第二ステップ及び第三ステップでは、湾曲板1bの一部の部位の上部6aがタンク本体1に繋がったまま下端部6bが下方に移動するように切断展開している(すなわち、第二ステップ及び第三ステップではガイド板を形成している)。ここで、切断展開した部位(前記の湾曲板1bの一部の部位)はガイド板6に相当する。ここで、切断は上記の最下部4の切り取りや椀曲板1bに切れ目を入れることが含まれる。
【0033】
ガイド板6の形状は、上記の切れ目を略経線方向(経線方向、縦方向を含む)に入れているため、略帯状(帯状含む)となっている(図5参照)が、ガイド板6は逆三角形の形状でも良い。ガイド板6の形状は、ある程度幅があればよく、ガイド板6のカーブに切断片を沿わせながら吊り降ろすことができれば、どのような形状でも良い。
【0034】
なお、タンク本体1の上部の切断片を、取り出すための取出口6を湾曲板1bに設けることが出来れば、具体的には、湾曲板1bの一部の部位の上部がタンク本体1に繋がったまま下端部6bが下方に移動するように切断展開出来れば、第二ステップを省略してもよい。第二ステップを省略する場合には、第三ステップにおいて所定形状の切れ目を入れて(例えば、湾曲板1bの最下部から赤道部1cにかけて切れ目を入れて)展開する、すなわち、所定形状に切断展開して、ガイド板6を形成する。
【0035】
なお、取出口6b付近(ここでは、取出口6bの位置)には、搬送装置5が配置される。
【0036】
第四ステップとして、タンク本体1の上部を切断した切断片7a、8aを、タンク本体1内部を通して所定の高さまで吊り降ろし、第五ステップとして、所定の高さまで吊り降ろした切断片7a、8aを、前記湾曲板1b(ガイド板6)の内壁面のカーブに沿わせながら吊り降ろして取出口6bまで移動させて取出口6bから取り出し(すなわち、取出口6bを通過させ)、搬送装置5の上に載せる(図3及び図4参照)。第四ステップ及び第五ステップの作業を順次繰り返して行い、タンク本体1の上部の解体を行う。
【0037】
図3のように、タンク本体1の上上部板7を所定の大きさに切断し、切断片7a(タンク本体が球形であるため曲板となる。また、タンク本体の上部が例えば円筒状でも曲板となる。)とし、この切断片7aをクレーン2によりタンク本体1内部を通して所定の高さまで吊り降ろし、所定の高さまで吊り降ろした切断片7aをガイド板6上に沿わせながら吊り降ろして取出口6bまで移動させて取出口6bから取り出して搬送装置5の上に着地させる(すなわち搬送装置5に直接載せる)。これを順次繰り返して、タンク本体1の上上部板7を解体する。
【0038】
図4のように、タンク本体1の下上部板8を所定の大きさに切断し、切断片8a(タンク本体が球形であるため曲板となる。また、タンク本体の上部が例えば円筒状でも曲板となる。)とし、この切断片8aをクレーン2によりタンク本体1内部を通して所定の高さまで吊り降ろし、所定の高さまで吊り降ろした切断片8aをガイド板6上に沿わせながら吊り降ろして取出口6bまで移動させて取出口6bから取り出して搬送装置5の上に着地させる(すなわち搬送装置5に直接載せる)。これを順次繰り返して、タンク本体1の下上部板8を解体する。
【0039】
切断片7a、8aを、タンク本体1内部を通して吊り降ろすことにより、切断片7a、8aがタンク本体1に守られて風の影響を減少させることが出来るので、強風時においても影響を受けることなく、切断片7a、8aを、安全に吊り降ろすことが出来る。また、切断片7a、8aを、タンク本体1内部を通して吊り降ろすことにより、切断片7a、8aを、例えばクレーン2で吊ってタンク本体1の外部に移動させる必要が無いので、タンク周囲が狭いなど制限され作業領域が無くても解体作業が可能となる。これは、後述の変形例でも言えることである。
【0040】
湾曲板1bの内壁面のカーブに沿わせながら吊り降ろして取出口6bまで移動させて取出口6bから切断片7a、8aを取り出すことにより、切断片7a、8aがカーブに沿って移動するので、所定の高さから下において、切断片7a、8aが取出口6bまで緩やかに移動して取出口6bから取り出されるため、切断片7a、8aを垂直に降ろした場合に比べて簡単に取出口6bから地面、基礎、搬送装置等に切断片をソフトランディングさせることが出来る。また、湾曲板1bの内壁面のカーブを利用するので、湾曲板1bそのものを利用出来、カーブを設けるために他の資材を用意する必要が無く経済的である。これらは、後述の変形例でも言えることである。
【0041】
さらに、切断片7a、8aを湾曲板1bの内壁面のカーブに沿わせることにより、切断片7a、8aの動き(例えば地震等による動き)を制限することが出来るので、切断片7a、8aを湾曲板1bの内壁面のカーブに沿わせる時において、地震等の天災等で切断片7a、8aが急激に予想外に移動する等の危険を低減することができる。これは、後述の変形例でも言えることである。
【0042】
ここで、吊り降ろした切断片7a、8aを湾曲板1bの内壁面のカーブ(ガイド板6の内壁面のカーブ)に沿わせる際に、図3及び図4のように、切断片7a、8aのカーブと湾曲板1bの内壁面のカーブ(ガイド板6の内壁面のカーブ)が略同方向の向きに向いていると良い。これにより、切断片7a、8aを滑らかに移動させることが出来、切断片7a、8aのソフトランディングがより簡単にできる。また、切断片7a、8aは、曲板であり、前記の吊り降ろした切断片7a、8aを湾曲板6bの内壁面のカーブに沿わせる際に、切断片7a、8aのカーブと湾曲板1bの内壁面のカーブが略同方向の向きに向いていることにより、吊り降ろし後の切断片7a、8aのカーブの向きをそろえることが出来るので、切断片7a、8aの搬送が簡単になるので、吊り降ろし後の切断片7a、8aの取り扱いが容易となる。また、吊り降ろし後の切断片7a、8aのカーブの向きが同じ場合は、切断片7a、8aを複数積み重ねる場合において、切断片7a、8aを積み重ね易くなるため、吊り降ろし後の切断片7a、8aの取り扱いが容易となる。これらは、後述の変形例でも言えることである。
【0043】
取出口6b付近に、切断片7a、8aを搬送する搬送装置5を配置し、取出口6bから取り出した切断片7a、8aをこの搬送装置5に直接載せることにより切断片7a、8aを搬送装置5に別途乗せるといった必要が無く、切断片7a、8aを搬送装置5により直接搬送できる。この搬送装置5は、ターンテーブル状に方向変更が自在なものを採用することにより、位置合わせや移動の作業性が向上する。これにより、吊り降ろし後の切断片の積込み運搬などの取り扱いが容易となる。これは、後述の変形例でも言えることである。
【0044】
この略同方向の向きに向けるのは、例えば、クレーン2で、切断片7a、8aを所定の高さまで吊り降ろした際、作業員が向きを整えることにより可能となる。
【0045】
また、この略同方向の向きに向けるのは、タンク本体が球形の場合、切断片7a、8aの切断前のタンク本体1水平断面における方向(例えばタンク本体を上から見た東方向)と、ガイド板6のタンク本体1水平断面における方向(例えばタンク本体を上から見た東方向)とが略同方向であり、クレーン2は切断片7a、8aを切断した際に切断片7a、8aの上部を吊り下げることにより可能となる。なお、吊り降ろしの際に切断片7a、8aの向きが変化しないように留意する。
【0046】
所定の高さは、例えば上記湾曲板1bの内壁面のカーブ(ガイド板6の内壁面のカーブ)の位置(近傍含む)等が該当する。
【0047】
なお、ガイド板6は複数設けることにより、切断片7a、8aのカーブと湾曲板1bの内壁面のカーブ(ガイド板6の内壁面のカーブ)とを略同方向の向きに向け易いガイド板6を選択して切断片7a、8aを湾曲板1b(ガイド板6)の内壁面のカーブに沿わせることが出来るので、切断片7a、8aのカーブと湾曲板1bの内壁面のカーブとを略同方向の向きに向け易くなる。また、切断片7a、8aを近くのガイド板6まで移動させればよくなるので、切断片7a、8aの移動距離を短くしてクレーン2の作業労力を低減することが出来る。
【0048】
図5は、タンク本体の下部を解体する状況を示す第一説明図である。図5において、タンク本体1を支持する複数の脚柱15の一部を省略した。また、球形タンク本体1の解体作業の際に必要な足場及び足場上で作業する作業員等は省略した。図5では、ガイド板6がタンク本体1水平断面の東西南北の方向(タンク本体1を上から見た東西南北の方向)に四つ設けている(北方向のガイド板は隠れて見えていない)。
【0049】
タンク本体1の上部を解体後に第六ステップとして、タンク本体1の下部のガイド板6を解体する。具体的には、ガイド板6を切断片60a、60b、60c・・・というように順次下から切断していき(図5参照)、搬送装置5により搬送する。
【0050】
取出口の変形例について、以下説明する。
切断片7a、8a等を取り出す取出口は、湾曲板1bの一部を切り取って設けてもよい。すなわち、上記のようなガイド板6を形成せずに、例えば第二ステップで湾曲板1bの最下部4を切り取って形成した孔1eを取出口としても良い。この場合、取出口は孔1eに対応する。孔1eの大きさは当然切断片7a、8a等を取り出せる、すなわち、通過できる大きさにする。この変形例では、第三ステップ及び第六ステップが適宜不要になる。また、この変形例では、第四ステップ及び第五ステップにおいて、湾曲板1bの内壁面のカーブは、ガイド板6のカーブではなく、湾曲板1bの一部を切り取った後の残りの湾曲板1bの内壁面のカーブになる。
【0051】
この変形例は、タンク本体の湾曲板1bの例えば最下部が地面、基礎、又は搬送装置等と近い位置にある場合に有効である。すなわち、この変形例は、湾曲板1bの一部を切り取って設けた孔1e(取出口)が地面、基礎、又は搬送装置等と近い位置にある場合に有効である。
【0052】
この変形例では、取出口は、湾曲板1bの一部を切り取るだけで切り取った後の口(孔1e)が取出口となるため、取出口を簡単に形成できる。これにより、タンク本体の解体が容易になる。また、この変形例では、第六ステップが適宜不要になるので、タンク本体下部の解体が容易になる。
【0053】
この変形例では、吊り降ろされる切断片7a、8aは、タンク本体1内部通過中から取出口(孔1e)に至るまで、タンク本体1により風から守られるので、前記ガイド板6を形成した場合に比べてより安全に切断片7a、8aを吊り降ろすことができる。
【0054】
この変形例では、上記のガイド板6が湾曲板1bの一部を切り取った残りの部分に相当し、残りの部分の内壁面、360度すべてを湾曲板1bの内壁面のカーブとして用いることが出来るので、切断片7a、8a(曲板の場合)のカーブと湾曲板1bの内壁面のカーブとの方向が同じ向きなるような内壁面を選択し易く、7a、8a等(曲板の場合)のカーブと湾曲板1bの内壁面のカーブとの方向を略同方向の向きに向け易くなる。また、この7a、8a等を移動する際に、上記のガイド板6が湾曲板1bの一部を切り取った残りの部分に相当し、残りの部分の内壁面、360度すべてを湾曲板1bの内壁面のカーブとして用いることが出来るので、切断片7a、8aの移動距離を短くしてクレーン2の作業労力を低減することが出来る。
【0055】
本実施形態及び変形例において、切断片の切断や、切れ目を入れる作業等タンク本体を切断等する作業は、作業ロボットや図示しない足場上の作業員等により例えばガス切断等により行う。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のタンクの解体方法は、作業場所が狭く大きなクレーンなどを使用することができない場合に適するもので、小形のクレーンと操作性の良い搬送装置を使用して安全作業で作業効率良く経済的に解体施工することができ、上述の実施形態及び変形例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施形態及び変形例に適宜変更を加え、種々の貯槽などの構築物について採用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】タンク本体の上部を解体する状況を示す第一説明図である。
【図2】タンク本体の上部を解体する状況を示す第二説明図である。
【図3】タンク本体の上部を解体する状況を示す第三説明図である。
【図4】タンク本体の上部を解体する状況を示す第四説明図である。
【図5】タンク本体の下部を解体する状況を示す第一説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 タンク本体
1a タンク本体の上部
1b タンクの下部の湾曲板
1c タンクの赤道部
1d 孔
1e 孔(取出口)
2 クレーン
3 上部ノズルを含む天頂部
4 下部ノズルを含む最下部
5 搬送装置
6 ガイド板
6a 切れ目を入れた部位の上部
6b 下端部(取出口)
7 上上部板
7a 切断片
8 下上部板
8a 切断片
15 脚柱
60a、60b、60c 切断片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスや液体を貯蔵するタンク本体の底部を含む下部を湾曲板で構成しタンク本体が脚柱により支持されたタンクの解体方法であって、吊り降ろされたタンク本体の上部の切断片を取り出すための取出口を前記湾曲板に設けるステップと、タンク本体の上部を切断した切断片をタンク本体内部を通して所定の高さまで吊り降ろすステップと、所定の高さまで吊り降ろした切断片を前記湾曲板の内壁面のカーブに沿わせながら吊り降ろして前記取出口まで移動させて前記取出口から取り出すステップとを有することを特徴とするタンクの解体方法。
【請求項2】
請求項1記載のタンクの解体方法において、前記取出口を前記湾曲板に設けるステップは、前記湾曲板の一部の部位の上部がタンク本体に繋がったまま下端部が下方に移動するように切断展開するステップであり、前記取出口は、前記切断展開した部位の下端部であり、前記湾曲板の内壁面のカーブは、前記切断展開した部位の内壁面のカーブであること を特徴とするタンクの解体方法。
【請求項3】
請求項1記載のタンクの解体方法において、前記取出口は、前記湾曲板の一部を切り取って設けることを特徴とするタンクの解体方法。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか1項記載のタンクの解体方法において、前記取出口付近に、前記切断片を搬送する搬送装置を配置し、前記取出口から取り出した切断片をこの搬送装置に直接載せることを特徴とするタンクの解体方法。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項記載のタンクの解体方法において、前記切断片は、曲板であり、前記の吊り降ろした切断片を前記湾曲板の内壁面のカーブに沿わせる際に、前記切断片のカーブと前記湾曲板の内壁面のカーブが略同方向の向きに向いていることを特徴とするタンクの解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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