説明

タンク内の残油の回収方法

【課題】
軽油を使用せず或いは少量の軽油の使用で十分であり、かつ従来に比べて極めて短い時間で残油を回収する方法を提供する。
【解決手段】
石油製品を貯蔵していたタンクの底部における残油を除去する方法において、タンクの底部の残油を既設の配管(以下、底引き配管と言う)を経由して既設のポンプにより抜き出し、次に底引き配管の内径より小さな外径を持つフレキシブルホースを底引き配管の出口方向から底引き配管の中に挿入してフレキシブルホースの先端が底板に届くようにし、底板の上に残っている残油をフレキシブルホースに接続された仮設ポンプにより吸引回収することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油産業で使用されるタンクの底部における残油を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油産業においてタンクに貯蔵されていた石油製品、例えばナフサ或いはガソリンを抜き出してタンクをからにしたい場合に、タンクの下部に設けられている配管(底引き配管)から、ポンプ(底引きポンプ)によって製品を抜き取る。タンク底板と底引き配管の先端(ノズル)とを接するようにすることは構造上できず、数十センチの間隙がある。従って、該数十センチに相当する体積、たとえば15〜50キロリットルの製品が底板の上に残る。これを、残油と呼んでいる。この状態ではタンクの空間部分には製品から気化した低沸点の炭化水素が充満しているので、タンク上部のマンホールを開けると、引火の危険があり、また、人がタンク内に入ることが出来ない。そこで、気化している炭化水素を吸収する為に先ず例えば2000〜3000キロリットルの軽油をタンクに供給し、十分な時間をおいて炭化水素を吸収した後に軽油を底引きノズルから抜き出し、次に軽油から気化した少しの低揮発分を除くために換気し、しかる後にマンホールを開放して人がタンク内に入って、残存する15〜50キロリットルの軽油を人力により回収し、水でタンク底部を洗ったあとに同様にして洗い水を回収している。
【0003】
タンク底部のスラリー状の残油を清掃する装置が知られている(特許文献1及び特許文献2)。タンクを開放できるようにした後に、装置をタンクに入れて、スラリーを自動的に切り崩し粉砕し、ポンプで吸引する。これらは、タンク底部の流動性の残油を回収するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−8933号公報
【特許文献2】特開平8−103745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の残油回収方法では、大量の軽油を必要とし、かつ時間がかかる。本発明は、軽油を使用せず或いは少量の軽油の使用で十分であり、かつ従来に比べて極めて短い時間で残油を安全に回収する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、石油製品を貯蔵していたタンクの底部における残油を除去する方法において、タンクの底部の残油を既設の配管(以下、底引き配管と言う)を経由して既設のポンプにより抜き出し、次に底引き配管の内径より小さな外径を持つフレキシブルホースを底引き配管の出口方向から底引き配管の中に挿入してフレキシブルホースの先端が底板に届くようにし、底板の上に残っている残油をフレキシブルホースに接続された仮設ポンプにより吸引回収することを特徴とする方法である。
【0007】
好ましくは、上記工程の後に、10〜20キロリットルの軽油をタンクに供給し、これを上記フレキシブルホースを介して仮設ポンプで吸引回収する。これにより、僅かに残っていた残油が完全に取り除かれる。
【0008】
しかる後に、既設の水線配管を介してタンクに水を入れてタンク底板を洗い、該水を上記フレキシブルホースを介して仮設ポンプで吸引回収する。
さらに、既設の水線配管を介してタンクに、一杯に(浮き屋根式タンクの場合には屋根板が浮上するまで)水を入れて、タンク空間部のガスをパージし、既設の配管から水位の落差で水を抜き出し、水処理設備へ移す。
この後には、安全にマンホールを解放することが出来、人力によりタンク内部を清掃できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、軽油を使用せず或いは少量の軽油の使用で十分であり、かつ従来に比べて極めて短い時間で残油を安全に回収することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を説明する概念図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、1はタンクであり、その底部に既設の底引き配管2及びそれを開閉するバルブ3がある。貯蔵していた石油製品、たとえばナフサ、ガソリンを既設の底引き配管2で抜き出した後に、残油4が、底引き配管2の先端と底板5の間の容積に残る。この量は、典型的には15〜50キロリットルである。
【0012】
フレキシブルホース10と回収冶具14から成る回収手段を用意する。回収冶具14は、バルブ11及びその両端に接続された管並びに管の各解放端に固定されたフランジから成り、フレキシブルホース10は回収冶具14を介して仮設ポンプ12に接続される。フレキシブルホース10は、底引き配管2の内径よりも小さな外径を持つ。当初、バルブ111は閉じられている。
バルブ3を全開にし、フレキシブルホース10を底引き配管2の出口方向から底引き配管2の中に挿入してフレキシブルホース10の先端10’が底板に届くようにする。この際に、タンク内部は大気圧と同じであるので、タンク内の気体が漏れ出す量は、僅かである。好ましくは、回収冶具14のフレキシブルホース側には、両端部に外径の異なるフランジを有する接続パイプ13を介して回収冶具14と底引き配管2が互いに固定される。バルブ11を開け、仮設ポンプ12を稼働して、残油4を吸引回収する。
【0013】
フレキシブルホース10は、限定的ではないが好ましくは、静電気発生防止のために静電気対策用コイルを内蔵しており、内側はベアロン(商標)製である。回収冶具14は、静電気発生防止のために静電気対策用コイルを内蔵しており、内側はベアロン(商標)製である。 また、底引き配管2の内径は、たとえば4インチ又は6インチであり、その長さが異なりうるので、異なる長さに対応できるように、接続パイプ13の内側には、たとえば1.5インチ径のインナーパイプ(図示せず)が通っており、弁11と接続パイプ13とを接合させることが可能となるようスライド可能な構造とすることが好ましい。
そのインナーパイプの長さは限定的ではないが、200mm程度のスライドが可能となるような長さとすることが好ましい。
【0014】
仮設ポンプは、好ましくは、可搬式のエアー駆動の小容量のポンプである。
【0015】
好ましくは、次に10〜20キロリットルの軽油をタンクに供給し、これを上記フレキシブルホース10を介して仮設ポンプ12で吸引回収する。これにより、僅かに残っていた残油が完全に取り除かれる。この態様においては、少量の軽油を使用するが、従来必要であった2000〜3000キロリットルに比べて僅かである。
【0016】
しかる後に、既設の水線配管を介して水でタンク底板を洗い、該水を上記フレキシブルホース10を介して仮設ポンプ12で吸引回収する。
さらに、既設の水線配管を介してタンク1に、一杯に(浮き屋根式タンクの場合には屋根板が浮上するまで)水を入れて、タンク空間部のガスをパージし、既設の配管(図示せず)から水位の落差で水を抜き出し、水処理設備へ移す。
この後には、安全にマンホールを開放することが出来、人力によりタンク内部を清掃できる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、石油製品を貯蔵していたタンクの底部における残油を除去する方法であり、石油産業において有用である。
【符号の説明】
【0018】
1:タンク
2:底引き配管
3:バルブ
4:残油
5:底板
10:フレキシブルホース
10’:フレキシブルホースの先端
11:バルブ
12:仮設ポンプ
13:接続パイプ
14:回収冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油製品を貯蔵していたタンクの底部における残油を除去する方法において、タンクの底部の残油を既設の配管(以下、底引き配管と言う)を経由して既設のポンプにより抜き出し、次に底引き配管の内径より小さな外径を持つフレキシブルホースを底引き配管の出口方向から底引き配管の中に挿入してフレキシブルホースの先端が底板に届くようにし、底板の上に残っている残油をフレキシブルホースに接続された仮設ポンプにより吸引回収することを特徴とする方法。
【請求項2】
さらに、10〜20キロリットルの軽油をタンクに供給し、これを上記フレキシブルホースを介して仮設ポンプで吸引回収する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、既設の水線配管を介してタンクに水を入れてタンク底板を洗い、該水を上記フレキシブルホースを介して仮設ポンプで吸引回収する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、既設の水線配管を介してタンク1に、一杯に水を入れて、タンク空間部のガスをパージし、既設の配管から水位の落差で水を抜き出し、水処理設備へ移す、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−228648(P2012−228648A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98083(P2011−98083)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000108317)東燃ゼネラル石油株式会社 (22)
【Fターム(参考)】