説明

タンク洗浄装置

【課題】駆動部と洗浄部とを分離して使い勝手の良い構成にしつつ、駆動部内部に潤滑油を必要とせず潤滑油によってタンク内を汚すおそれのない、優れた洗浄性能を有するタンク洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄部1に連結されたドライブシャフト(駆動伝達棒)31と、タンク外に設けられ、駆動伝達棒31を介して洗浄部1を旋回させる駆動部2と、駆動部2の上部に連結され洗浄水100を取り込む洗浄水取込部4と、洗浄部1と駆動部2とを連結し、内部に駆動伝達棒31が貫通され、洗浄水取込部4から取り込まれた洗浄水100が流入する連結筒32とを備える。洗浄水取込部4から取り込まれた洗浄水100が、駆動部2のの内部に流入した後、連結筒32を介して洗浄部1に供給される。駆動部2の内部には、洗浄水取込部4から取り込まれた洗浄水100によって回転駆動力を得て駆動伝達棒31を回転させるギア機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタンカーのタンク内の洗浄に用いられるタンク洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タンカーのタンク内の洗浄に用いられる洗浄装置が知られている。タンク洗浄装置は、噴射ノズルが取り付けられた洗浄部を備え、その洗浄部をタンク内に挿入して噴射ノズルから洗浄水を噴射させることでタンク内の隔壁の洗浄を行うものである。タンク洗浄装置では、タンク内を全周にわたって洗浄することができるように、洗浄部全体、および噴射ノズルが回転するようになっている。このため、タンク洗浄装置は、洗浄部を回転駆動するための駆動部を備えている。特許文献1には、駆動部が洗浄部に一体的に取り付けられ、駆動部および洗浄部の双方がタンク内に挿入される構成のタンク洗浄装置が記載されている。しかしながら、駆動部と洗浄部とが一体化されていると、修理や保守をするときに、洗浄部および駆動部の双方をタンク内から取り出さねばならず、使い勝手が悪いという問題がある。
【0003】
これに対し、駆動部と洗浄部とを分離し、駆動部をタンク外に設けるようにした駆動分離型のタンク洗浄装置が知られている(特許文献2参照)。駆動部をタンク外に設けることで、修理や保守をしやすくなる。図2は従来のタンク洗浄装置の一例として、特許文献2に記載のタンク洗浄装置の構成を示している。このタンク洗浄装置は、タンク上面の上甲板101よりも上側に取り付けられる駆動部110を備えている。駆動部110は、連結筒121を介して、タンク内に挿入された洗浄部120に連結されている。洗浄部120は、旋回筒122と噴射ノズル123とを有している。連結筒121内には駆動部110の回転駆動力を洗浄部120に伝達する旋回軸124が挿通されている。駆動部110は、ケーシング111とギアボックス112とで構成されている。ケーシング111には洗浄水100を取り込む取入パイプ118が設けられている。取入パイプ118は、水平方向に延在して水平方向から洗浄水100が供給される。取水パイプ118はケーシング111内で2本の通路に分かれており、一方の通路にはインペラ116が挿入され、他方の通路には開閉弁119が介装されている。ギアボックス112は、取入パイプ118の上部に設けられ、内部に歯車列113を有して密閉されている。ギアボックス112の入口側の回転軸はケーシング111側に突出してインペラ116が取り付けられてている。出口側の回転軸115もケーシング111側に突出している。回転軸115は旋回軸124に連結されている。
【0004】
このタンク洗浄装置では、特許文献2の段落[0011]に記載されているように、駆動部110の取水パイプ118から水が供給されるとインペラ116が回転し、その回転力が歯車列113を介して旋回軸124を回転させ、旋回筒122を垂直軸まわりで回転させる。一方、開閉弁119を経て、ケーシング111から連結筒121の内部を経て旋回筒122の内部へ供給された洗浄水100は、噴射ノズル123を水平軸まわりで回転させながら、ノズル口から水流を噴射する。この噴射水は垂直面内で放射状に飛び、かつ噴射方向が旋回筒122により360°連続変化するので、タンク内の隔壁や底面、天面を洗浄することができる。また、この噴射水は水平面内でも旋回するので、タンク内の全面を洗浄することができる。
【特許文献1】実開平7−544号公報
【特許文献2】特開2005−81221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献2に記載の構造では、駆動部110のギアボックス112内には洗浄水100が入らないように密閉されている。しかしながら、特許文献2に記載の構造では、旋回軸124を回転駆動させるためのギア機構(歯車列113)が取入パイプ118の上部のギアボックス112内に設けられているため、ギア機構を円滑に動かすためにギアボックス112内に潤滑油が必要とされる。この場合、ギアボックス112は密閉されているものの、回転軸115および旋回軸124を介してタンク内に連結されているため、潤滑油がギアボックス112内から回転軸115および旋回軸124を介して洗浄部120に漏れてしまうおそれがある。そして、洗浄部120の噴射ノズル123から潤滑油が放出されタンク内を汚してしまうおそれがある。このため、洗浄性能の点で問題がある。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、駆動部と洗浄部とを分離して使い勝手の良い構成にしつつ、駆動部内部に潤滑油を必要とせず潤滑油によってタンク内を汚すおそれのない、洗浄性能にも優れたタンク洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるタンク洗浄装置は、タンク内に挿入され、洗浄水を噴射する噴射ノズルが設けられた洗浄部と、洗浄部に連結された駆動伝達棒と、タンク外に設けられ、駆動伝達棒を介して洗浄部を旋回させる駆動部と、駆動部の上部に連結され洗浄水を取り込む洗浄水取込部と、洗浄部と駆動部とを連結し、内部に駆動伝達棒が貫通され、洗浄水取込部から取り込まれた洗浄水が流入する連結筒とを備え、洗浄水取込部から取り込まれた洗浄水が、駆動部内部に流入した後、連結筒を介して洗浄部に供給されるように構成されているものである。また、駆動部内部に、洗浄水取込部から取り込まれ、内部に流入した洗浄水によって回転駆動力を得て駆動伝達棒を回転させるギア機構を有するものである。
【0008】
本発明によるタンク洗浄装置では、駆動部が洗浄部から分離されると共に、洗浄水取込部が駆動部の上部に連結される。そして、洗浄水取込部から取り込まれた洗浄水が、駆動部内部に流入した後、連結筒を介して洗浄部に供給される。駆動部内部のギア機構は、洗浄水取込部から取り込まれ、内部に流入した洗浄水によって回転駆動力を得て、駆動伝達棒を回転させる。ギア機構が、内部に流入した洗浄水によって回転駆動力を得る構成となっているので、駆動部内部を密閉させて潤滑油を用いてギア機構を動かす従来の方式とは異なり、潤滑油は必要とされない。これにより、使い勝手の良い駆動分離型の構成にしながらも油漏れのおそれがなくなり、洗浄性能が向上する。
【0009】
本発明によるタンク洗浄装置において、駆動部内部のギア機構は、例えば、駆動伝達棒に連結されたギアホイールと、洗浄水取込部から取り込まれた洗浄水の水流によって回転するインペラーと、インペラーに連結され、インペラーの回転によって回転駆動されるタービンシャフトと、タービンシャフトの回転動力をギアホイールに伝達するピニオン機構とを有して構成することができる。
【0010】
この場合において、さらに、インペラーに対して上流側に設けられ、洗浄水取込部から取り込まれた洗浄水を整流する整流部材を駆動部内部に有していても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタンク洗浄装置によれば、駆動部を洗浄部から分離すると共に、駆動部の上部に洗浄水取込部を連結し、その洗浄水取込部から取り込まれ、内部に流入した洗浄水によって駆動部内部のギア機構が回転駆動力を得て駆動伝達棒を回転させて洗浄部を駆動するようにしたので、駆動部と洗浄部とを分離して使い勝手の良い構成にしつつ、駆動部内部に潤滑油を必要とせず、潤滑油によってタンク内を汚すおそれのない、優れた洗浄性能を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るタンク洗浄装置の一構成例を示している。このタンク洗浄装置は、タンク内に挿入される洗浄部1と、タンク外に設けられ、洗浄部1を駆動する駆動部2と、洗浄部1と駆動部2とを連結する延長管部3と、駆動部2の上部に連結され洗浄水100を取り込む洗浄水取込部4とを備えている。
【0013】
延長管部3は、内部にドライブシャフト(駆動伝達棒)31が貫通されると共に、洗浄水取込部4から取り込まれた洗浄水100が流入する連結筒32を有している。洗浄水取込部4は、洗浄水100を取り込む取込口41と、取り込まれた洗浄水100の水流の調節を行うバルブ42と、一端がバルブ42に連結され他端が駆動部2の上端部に連結されたL字パイプ43とを有している。このタンク洗浄装置は、洗浄水取込部4から取り込まれた洗浄水100が、駆動部2の内部に流入した後、連結筒32を介して洗浄部1に供給されるように構成されている。
【0014】
洗浄部1は、連結筒32を介して洗浄水100が供給される洗浄部本体11と、洗浄部本体11の水平(X軸)方向に取り付けられた噴射ノズル12とを有している。洗浄部本体11は、その上端部が下部取付フランジ6によって連結筒32の下端部に回転自在に取り付けられている。また、洗浄部本体11には、駆動伝達棒31の下端部が取り付けられている。これにより、洗浄部1は、駆動伝達棒31によって伝達された回転駆動力によって全体が垂直軸(Y軸)を回転軸として水平面内で例えば時計回りに360°回転(旋回)するようになされている。噴射ノズル12は、連結筒32を介して洗浄部本体11に供給された洗浄水100の水流によって、水平軸(X軸)を回転軸として垂直面内で例えば時計回りに360°回転(旋回)すると共に、その先端部から洗浄水100を放射状に噴射するようになっている。
【0015】
駆動部2の底部は、延長管部3の上部に連結されると共に、上部取付フランジ5によって、タンク上面の上甲板101に設けられたハッチ102に固定されるようになっている。駆動部2は、その内部に、洗浄水取込部4から取り込まれ、内部に流入した洗浄水100によって回転駆動力を得て駆動伝達棒31を回転させるギア機構を有している。ギア機構は、全体が、駆動部2内部に流入した洗浄水100によって浸水される。洗浄水取込部4が駆動部2の上部に取り付けられ、上部から水圧が掛かるのでギア機構を動作させやすくなっている。
【0016】
駆動部2内部のギア機構は、インペラー(羽根車)22と、タービンシャフト23と、ホリゾンタルシャフト24と、ピニオンギア25と、ギアホイール26とを有して構成されている。ギアホイール26は、駆動伝達棒31の上端部に連結されている。インペラー22は、羽根車状のものであり、洗浄水取込部4から取り込まれた洗浄水100の水流によって回転するようになっている。タービンシャフト23は、インペラー22に連結され、インペラー22の回転によって回転駆動されるものである。ホリゾンタルシャフト24およびピニオンギア25は、タービンシャフト23の回転動力をギアホイール26に伝達するピニオン機構となっている。タービンシャフト23の回転動力は、タービンシャフト23に対して水平方向に取り付けられたホリゾンタルシャフト24を介してピニオンギア25に与えられ、ピニオンギア25が回転するようになっている。ピニオンギア25はギアホイール26に噛み合わされている。これにより、ギアホイール26が回転する。
【0017】
駆動部2内部にはまた、インペラー22に対して上流側に、洗浄水取込部4から取り込まれた洗浄水100を整流する整流部材(インペラーガイド)21が設けられている。インペラーガイド21は、例えば格子状の整流板構造を有し、水平面内で水流を均一化してインペラー22を効率的に回転させるためのものである。
【0018】
なお、タービンシャフト23とホリゾンタルシャフト24との間では、回転軸が異なる方向に変換されているが、このような軸変換は、ウォームホイール(図示せず)を利用したウォームギア機構により実現できる。例えばタービンシャフト23をウォーム(ねじ歯車)とし、タービンシャフト23とホリゾンタルシャフト24との間の接合部に、ウォームと組み合わされるウォームホイールを設けることで、ウォームギアを形成することができる。ホリゾンタルシャフト24とピニオンギア25も同様に、接合部にウォームホイールを設けたウォームギア機構により軸変換を行うことができる。駆動部2内のギア機構は、金属とプラスチックの組み合わせで構成されていることが好ましい。一部をプラスチック材料で構成することにより、ギア機構の軽量化を図ることができる。また、水流によってギア機構を円滑に動かしやすくなる。例えば上記ウォームホイールをプラスチックで構成すると良い。
【0019】
次に、以上のように構成されたタンク洗浄装置の動作を説明する。
このタンク洗浄装置では、駆動部2が洗浄部1から分離されると共に、洗浄水取込部4が駆動部2の上部に連結される。そして、洗浄水取込部4から取り込まれた洗浄水100が、駆動部2内部に流入した後、連結筒32を介して洗浄部1に供給される。駆動部2内部のギア機構は、洗浄水取込部4から取り込まれ、内部に流入した洗浄水100によって回転駆動力を得て、駆動伝達棒31を回転させる。具体的にはまず、内部に流入した洗浄水100が、まずインペラーガイド21によって整流され、その整流された洗浄水100の水流によってインペラー22が回転する。そして、インペラー22の回転力によってタービンシャフト23が回転駆動する。タービンシャフト23の回転動力はホリゾンタルシャフト24およびピニオンギア25を経てギアホイール26に伝達され、ギアホイール26が回転する。ギアホイール26の回転によって駆動伝達棒31が回転駆動される。
【0020】
これにより、駆動伝達棒31に連結された洗浄部1が全体として、垂直軸(Y軸)を回転軸として水平面内で例えば時計回りに360°回転(旋回)する。一方、連結筒32の内部を経て洗浄部本体11の内部へ供給された洗浄水100は、噴射ノズル12を水平軸(X軸)まわりで回転(旋回)させると共に、その先端部から洗浄水100を放射状に噴射させる。このようにして、噴射水が垂直面内で放射状に360°飛び、かつ洗浄部1全体が水平面内で回転することで、タンク内の全面を洗浄することができる。
【0021】
以上のようにして、本実施の形態に係るタンク洗浄装置によれば、ギア機構が、内部に流入した洗浄水100によって回転駆動力を得る構成となっているので、駆動部2内部を密閉させて潤滑油を用いてギア機構を動かす従来の方式(図2)とは異なり、洗浄水100自体が潤滑油の役割を果たすので、潤滑油は必要とされない。これにより、使い勝手の良い駆動分離型の構成にしながらも油漏れのおそれがなくなり、洗浄性能が向上する。
【0022】
また、従来の構造では、駆動部2の水平方向から洗浄水100が流入するものであったが、本実施の形態のタンク洗浄装置では、駆動部2の上部から洗浄水100が流入するので、ギア機構を効率的に動かすことができる。
【0023】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、駆動部2の内部のギア機構は図1に示した例に限らず、他の形態を取り得る。また、本発明のタンク洗浄装置は、タンカーに限らず、例えば地上に固定されたタンク内の洗浄等、その他のタンク洗浄用途に用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係るタンク洗浄装置の一構成例を示す断面図である。
【図2】従来のタンク洗浄装置の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…洗浄部、2…駆動部、3…延長管部、4…洗浄水取込部、5…上部取付フランジ、6…下部取付フランジ、11…洗浄部本体、12…噴射ノズル、21…インペラーガイド(整流部材)、22…インペラー(羽根車)、23…タービンシャフト、24…ホリゾンタルシャフト、25…ピニオンギア、26…ギアホイール、31…ドライブシャフト(駆動伝達棒)、32…連結筒、41…取込口、42…バルブ、43…L字パイプ、100…洗浄水、101…上甲板、102…ハッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に挿入され、洗浄水を噴射する噴射ノズルが設けられた洗浄部と、
前記洗浄部に連結された駆動伝達棒と、
タンク外に設けられ、前記駆動伝達棒を介して前記洗浄部を旋回させる駆動部と、
前記駆動部の上部に連結され洗浄水を取り込む洗浄水取込部と、
前記洗浄部と前記駆動部とを連結し、内部に前記駆動伝達棒が貫通され、前記洗浄水取込部から取り込まれた洗浄水が流入する連結筒と
を備え、前記洗浄水取込部から取り込まれた洗浄水が、前記駆動部内部に流入した後、前記連結筒を介して前記洗浄部に供給されるように構成され、
前記駆動部内部に、前記洗浄水取込部から取り込まれ、内部に流入した洗浄水によって回転駆動力を得て前記駆動伝達棒を回転させるギア機構を有する
ことを特徴とするタンク洗浄装置。
【請求項2】
前記駆動部内部のギア機構は、
前記駆動伝達棒に連結されたギアホイールと、
前記洗浄水取込部から取り込まれた洗浄水の水流によって回転するインペラーと、
前記インペラーに連結され、前記インペラーの回転によって回転駆動されるタービンシャフトと、
前記タービンシャフトの回転動力を前記ギアホイールに伝達するピニオン機構と
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のタンク洗浄装置。
【請求項3】
さらに、前記インペラーに対して上流側に設けられ、前記洗浄水取込部から取り込まれた洗浄水を整流する整流部材を前記駆動部内部に有する
ことを特徴とする請求項2に記載のタンク洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate