説明

タンパク質および植物油を用いる酸性飲料組成物ならびにその製造方法

本発明は、(A)水和タンパク質安定剤と、(B)タンパク質材料と、(C)式(I)(式中、R1、R2およびR3は脂肪族基であり、約7〜約23個の炭素原子を含有する)の植物油トリグリセリド、遺伝子組換え植物油トリグリセリドまたは合成トリグリセリド油を含むトリグリセリドと、(D)果実ジュース、野菜ジュース、グルコノデルタラクトン、リン酸、もしくはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸およびアスコルビン酸のナトリウム塩または酸を含む香味材料とを含む酸性飲料組成物に関し、該酸性飲料組成物は3.0〜4.5のpHを有する。また、酸性飲料組成物の調製方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口当たりがよく、美味しく、嗜好性であり、そして良好な貯蔵安定性を有するタンパク質ベースの酸性飲料の調製方法に関する。タンパク質源に加えて、植物油、安定剤および香味材料も使用される。
【背景技術】
【0002】
ジュースおよび他の酸性ジュース様飲料は、人気のある市販の製品である。栄養健康飲料に対する消費者需要により、タンパク質を含有する栄養ジュースまたはジュース様飲料の開発が行われている。タンパク質は、飲料の成分により提供される栄養素に加えて、栄養を提供する。近年、特定のタンパク質は、栄養を提供することを超えて、特別の健康上の利益を有することが発見された。例えば、大豆タンパク質は、米国食品医薬品庁(United States Food and Drug Administration)によって、健康的な食事と併せて血中コレステロール濃度を低下させるために有効であると認識されている。それに応じて、このような特別な健康上の利益を提供するタンパク質を含有する酸性ジュース様飲料に対する消費者需要が高まってきている。
【0003】
しかしながら、タンパク質を酸性飲料に添加することへの障害は、タンパク質が水性の酸性環境で比較的不溶性なことである。大豆タンパク質およびカゼインなどの最も一般的に使用されるタンパク質は、酸性pHで等電点を有する。従って、タンパク質は、酸性飲料のpHにおいて、あるいはその付近で、水性液体中での溶解性が最も低い。例えば、大豆タンパク質はpH4.5で等電点を有し、カゼインはpH4.7で等電点を有するが、最も一般的なジュースは、3.7〜4.0の範囲のpHを有する。結果として、タンパク質は、酸性タンパク質含有飲料中で沈降物として沈降しやすく、飲料において望ましくない品質である。
【0004】
水性の酸性環境でタンパク質を懸濁液として安定させるタンパク質安定剤は、タンパク質の不溶性により提示される問題を克服するために使用される。ペクチンは、一般に使用されるタンパク質安定剤である。しかしながら、ペクチンは高価な食品成分であり、タンパク質を含有する水性の酸性飲料の製造業者はあまり高価でない安定剤を所望し、必要とされるペクチンの量が低減されるか、あるいは排除されて、あまり高価でない安定剤が選ばれる。
【0005】
豆乳はジュース飲料において使用され得る代替原材料であるが、その豆の香味と共に、豆乳の低タンパク質含量によって、豆乳のジュース飲料における適用は制限される。
【0006】
本発明の利点は、酸性飲料のために植物油と共に大豆タンパク質が用いられることである。大豆タンパク質および植物油は酸性飲料組成物の保存期間にわたって安定なエマルジョンを提供し、これは、酸性飲料組成物にこくを与えることによって達成される。またエマルジョンベースの酸性飲料組成物は、貯蔵の間、安定な色を有する。これは、食品グレードの色が通常はタンパク質表面に吸収されており、時間と共にタンパク質が溶液から沈殿または沈降するので次第に消えていくという事実による。エマルジョン系は、安定で均一な懸濁液を形成することによって色が次第に消えていくのを防止する。
【0007】
米国特許第5,286,511号明細書(Klavonsら、1994年2月15日)は、大豆タンパク質粒子の懸濁により濁ったオレンジジュースなどの飲料を提供しており、ペクチンによって、タンパク質粒子は沈降する程度まで凝集することが防止される。ペクチンは、個々のタンパク質粒子に吸着して、タンパク質粒子に全体として負の電荷を付与することによってタンパク質が沈降するのを抑制し、その結果として粒子の相互の反発力をもたらし、それにより、タンパク質粒子が凝集して懸濁液から沈降することが防止される。またペクチンは飲料の粘度を増大させ、タンパク質粒子を重力に対して安定させるのに役立つ。
【0008】
米国特許第6,221,419号明細書(Gerrish、2001年4月24日)は特に、水性の酸性化乳飲料中に存在するタンパク質を安定させる際に使用するための、タンパク質を安定させるペクチンに関する。ペクチンを含有することが、酸性化乳飲料の特性に対して望ましい効果と望ましくない効果の両方を有することは理解されるに違いない。ペクチンは、カゼイン粒子の沈降または乳漿の分離に対する安定剤の役割を果たすことができるが、自然に共存するカルシウムカチオンとの架橋のために飲料の粘度を増大させるという不都合を有し、飲料の味を悪くし得る。ペクチンがなければ、どちらの飲料の場合にも、カゼイン粒子の不安定性によって生じる著しい沈降があり、これも比較的高い粘度をもたらすことが分かるであろう。特定の濃度のペクチンの添加後、カゼイン粒子は沈降に対して安定になり、その後、ペクチン濃度の増大は沈降に対してあまり影響を有さない。飲料の粘度について考えると、これもカゼイン粒子の安定化の際に顕著に降下するが、次に、共存するカルシウムカチオンによって付加される過剰のペクチンの架橋のためにほとんど直ぐに再度上昇し始める。この粘度の増大は、官能特性が良くない飲料をもたらすので望ましくない。この範囲は、飲料重量全体を基準としたときにペクチンがわずか0.06重量%であるように狭いであろう。この動作範囲より下では、沈降が顕著な問題であり、これより上では、飲料の粘度は望ましくなく高い。米国特許第6,413,561号明細書(サス(Sass)ら、2002年7月2日)は、3.5〜4.5のpHで、少なくとも1つの脂肪、1つの親水コロイド、1つの乳タンパク質、ならびにカルシウムおよびマグネシウムイオンを含有する酸性飲料に関する。飲料中で使用される脂肪は、この参考文献によると、所望される任意の植物性、動物性または合成脂肪または脂肪源もしくはその混合物に由来し得る。使用される脂肪源は、好ましくは乳、通常は0.3〜4%の脂肪含量を有する牛乳である。酸性飲料中の総脂肪含量は、通常、0.003〜3.8g/lである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(A)水和タンパク質安定剤と、
(B)タンパク質材料と、
(C)式
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1、R2およびR3は脂肪族基であり、約7〜約23個の炭素原子を含有する)の植物油トリグリセリド、遺伝子組換え植物油トリグリセリドまたは合成トリグリセリド油を含むトリグリセリドと、
(D)果実ジュース、野菜ジュース、グルコノデルタラクトン、リン酸、もしくはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸およびアスコルビン酸のナトリウム塩または酸を含む香味材料と、
を含む酸性飲料組成物に関し、該酸性飲料組成物は、3.0〜4.5のpHを有する。
【0012】
また、酸性飲料組成物の調製方法も開示されており、
(A)タンパク質安定剤の第1の部分と、
(B)水和タンパク質材料および塩基性塩の水性混合物と
を混ぜ合わせてブレンド(I)を形成することと、
前記ブレンド(I)に、
(C)式
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R1、R2およびR3は脂肪族基であり、約7〜約23個の炭素原子を含有する)の植物油トリグリセリド、遺伝子組換え植物油トリグリセリドまたは合成トリグリセリド油を含むトリグリセリド
を添加した後に均質化を行ない、ブレンド(II)を形成することと、
タンパク質安定剤の第2の部分を水和させ、水和タンパク質安定剤と、
(D)香味材料と
を混ぜ合わせてブレンド(III)を形成することと、
ブレンド(II)およびブレンド(III)を混ぜ合わせてブレンドを形成することと、
ブレンドを低温殺菌および均質化することと、
を含み、酸性飲料組成物は3.0〜4.5のpHを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
タンパク質ベースの酸性飲料は、通常、可能性のある立体安定化および静電反発機構により安定な懸濁液を提供する安定剤で安定化される。図1は、タンパク質安定化酸性飲料の通常の加工条件を示す。1において、安定剤は単独で2〜3%のスラリーに水和されるか、あるいは糖とブレンドされるかのいずれかで、pH3.5を有する安定剤スラリーが生じる。5において、乾燥タンパク質粉末は、まず周囲温度で水中に分散され、高温でしばらくの間水和される。5におけるpHは、ほぼ中性である。1からの水和安定剤スラリーおよび5からの水和タンパク質スラリーは、10において、攪拌下で10分間一緒に混合される。10におけるpHは、約7である。追加の糖、果実ジュースまたは野菜ジュースや、リン酸、アスコルビン酸、クエン酸などの様々な酸のようなその他の成分は、20において添加され、pHは約3.8にされる。内容物は、30において、195°Fで30秒間低温殺菌され、そしてまず2500ポンド/平方インチで、次に500ポンド/平方インチで均質化される。40において容器は高温充填および冷却され、50においてpH3.8を有する製品が与えられる。この方法の問題点は、安定剤がタンパク質と混合された後、ブレンドのpHが中性付近であり、特に加熱時にベータ脱離によって安定剤が潜在的に分解されることである。このことは安定剤の分子量の低下を引き起こし、pHが後で更に低くされたときに安定剤がタンパク質を安定させる能力は大きく低下される。安定剤は、室温で安定なだけである。温度が上昇するにつれてベータ脱離が始まり、その結果、鎖の切断が起こり、安定剤が安定な懸濁液を提供する能力が非常に急速に損失される。
【0016】
図2は、本発明の方法を概説する。105において、クエン酸ナトリウムの塩基性塩溶液が調製され、タンパク質材料が添加されて水和され、(B)が形成される。タンパク質安定剤(A)の2つの部分が用いられる。糖を有するあるいは有さない101における第1の部分は(B)に添加されて水和され、108においてブレンド(I)が形成される。110では、植物油(C)がブレンド(I)に添加され、内容物は115で均質化されて、118でブレンド(II)が得られる。タンパク質安定剤(A)の第2の部分は、120で水和される。120におけるpHは3.5である。タンパク質安定剤の第2の部分は、120においてすぐに水和され、123で香味材料(D)と混ぜ合わせられ、128でブレンド(III)が形成される。118からのブレンド(II)および128からのブレンド(III)は混ぜ合わせられて、130においてブレンドが生じる。このブレンドの内容物は、195°Fで30秒間低温殺菌されてから、140においてまず2500ポンド/平方インチ、次に500ポンド/平方インチで均質化される。容器は150で高温充填および冷却され、160において、pH3.8を有する製品が与えられる。
【0017】
成分(A)
本発明はタンパク質安定剤の2つの部分を使用し、該タンパク質安定剤は、アルギン酸塩、微結晶性セルロース、ジェランガム(jellan gum)、タラガム、カラギナン、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、セルロースガムおよびペクチンを含む親水コロイドである。好ましい親水コロイドはペクチンである。本明細書中での使用では、「ペクチン」という用語は、部分的にメトキシル化されたポリガラクツロン酸から主になる中性の親水コロイドを意味する。「高メトキシルペクチン」という用語は、本明細書における使用では、50パーセント(50%)以上のメトキシルエステル化度を有するペクチンを意味する。本発明において有用な高メトキシル(HM)ペクチンは市販されている。1つの供給業者は、Hercules Incorporated(DK−4623,Lille Skensved、Denmark)の部門であるCopenhagen Pectin A/Sである。その製品は、Hercules YM100L、Hercules YM100H、Hercules YM115L、Hercules YM115HおよびHercules YM150Hで識別される。Hercules YM100Lは約56%のガラクツロン酸を含有し、ガラクツロン酸の約72%(±2%)がメチル化されている。もう1つの供給業者は、Danisco A/S(Copenhagen,Denmark)であり、AMD783が供給される。
【0018】
酸性飲料を調製する前に、タンパク質安定剤の第1の部分および第2の部分の両方を水和させることが必要である。水がタンパク質安定剤に添加されてスラリーを形成するか、あるいはタンパク質安定剤が水に添加されてスラリーを形成するかのいずれかにより、タンパク質安定剤の水和が実施される。スラリーは、高せん断下、室温で混合され、140〜180°Fで10分間加熱される。この固形分濃度では、安定剤において最も完全な水和が得られる。従って、スラリー中の水は、最も効率的に使用される。甘味料は、この時点または後で添加されてもよいし、あるいは甘味料の一部がここで添加され、また後で添加されてもよい。好ましい甘味料はスクロース、コーンシロップを含み、そして、デキストロースおよび高フルクトースコーンシロップおよび人口甘味料を含むこともできる。
【0019】
成分(B)
(B)内のタンパク質材料は、水性の酸性液体、好ましくは3.0〜5.5のpHを有する水性の酸性液体、最も好ましくは3.5〜4.5のpHを有する水性の酸性液体中に少なくとも部分的に不溶性であるどんな植物性または動物性タンパク質でもよい。本明細書中での使用では、「部分的に不溶性の」タンパク質材料は、特定のpHでタンパク質材料の少なくとも10重量%の不溶性材料を含有するタンパク質材料である。本発明の組成物において有用な好ましいタンパク質材料には、大豆タンパク質材料、カゼインまたはカゼイン塩、コーンタンパク質材料、特にゼイン、および小麦グルテンが含まれる。また好ましいタンパク質には、酪農の乳漿タンパク質(特に酪農のスイートホエータンパク質)、およびウシ血清アルブミン、卵白アルブミンなどの非酪農の乳漿タンパク質、ならびに大豆タンパク質などの植物性乳漿タンパク質(すなわち、非酪農の乳漿タンパク質)も含まれる。
【0020】
本発明と共に有用な大豆タンパク質材料は、大豆粉、大豆濃縮物、そして最も好ましくは大豆タンパク質単離物である。大豆粉、大豆濃縮物、および大豆タンパク質単離物は、大豆または大豆誘導体であり得る大豆出発材料から形成される。好ましくは、大豆出発材料は、大豆ケーク、大豆チップ、大豆ミール、大豆フレーク、またはこれらの材料の混合物のいずれかである。大豆ケーク、チップ、ミール、またはフレークは、当該技術分野における従来の手順に従って大豆から形成することができる。ここで、大豆ケークおよび大豆チップは、加圧または溶媒により大豆の油の一部を抽出することによって形成され、大豆フレークは、大豆を砕き、加熱し、薄片にし、そして溶媒抽出により大豆の油含量を低減することによって形成され、大豆ミールは、大豆ケーク、チップ、またはフレークを粉砕することによって形成される。
【0021】
大豆粉、大豆濃縮物および大豆タンパク質単離物は、「無水基準(moisture free basis)」(mfb)に基づくタンパク質範囲を含むと以下に説明されている。
【0022】
大豆粉は、本明細書において使用される場合、No.100メッシュ(米国基準)スクリーンを通過できるようなサイズを有する粒子で形成された、好ましくは1%未満の油を含有する脱脂大豆材料の細分した形態を示す。大豆ケーク、チップ、フレーク、ミールまたは材料の混合物は、従来の大豆粉砕法を用いて大豆粉に細分される。大豆粉は、無水基準(mfb)で約49%〜約65%の大豆タンパク質含量を有する。好ましくは、粉は非常に細かく粉砕され、最も好ましくは約1%未満の粉が300メッシュ(米国基準)スクリーン上に保持されるように粉砕される。
【0023】
大豆濃縮物は、本明細書において使用される場合、約65%〜約72%の大豆タンパク質(mfb)を含有する大豆タンパク質材料を示す。大豆濃縮物は、好ましくは、溶媒抽出により油が除去された市販の脱脂大豆フレーク材料から形成される。大豆濃縮物は、酸浸出法によって、またはアルコール浸出法によって製造される。酸浸出法では、大豆フレーク材料は、ほぼ大豆タンパク質の等電点のpH、好ましくは約4.0〜約5.0のpH、最も好ましくは約4.4〜約4.6のpHを有する水性溶媒で洗浄される。等電点洗浄は、大量の水溶性炭水化物および他の水溶性成分をフレークから除去するが、タンパク質および繊維はあまり除去せず、これにより大豆濃縮物が形成される。大豆濃縮物は、等電点洗浄のあとに乾燥される。アルコール浸出法では、大豆フレーク材料は、エチルアルコール水溶液で洗浄され、ここでエチルアルコールは、約60重量%で存在する。タンパク質および繊維は不溶性のままであるが、スクロース、スタキオースおよびラフィノースの炭水化物大豆糖は、脱脂フレークから浸出される。水性アルコール中に可溶性の大豆糖は、不溶性タンパク質および繊維から分離される。水性アルコール相中に不溶性のタンパク質および繊維は次に乾燥される。
【0024】
大豆タンパク質単離物は、本明細書において使用される場合、少なくとも約90%以上のタンパク質含量、好ましくは約92%以上のタンパク質含量(mfb)を含む大豆タンパク質材料を示す。大豆タンパク質単離物は、通常、脱脂大豆材料などの出発材料から製造されるが、その際、油が抽出されて、大豆ミールまたはフレークが残される。より詳細には、大豆は、まず砕かれ、または粉砕され、次に従来の搾油機を通過させられる。しかしながら、ヘキサンまたはその共沸混合物などの脂肪族炭化水素を用いる溶媒抽出によって、大豆に含まれる油を除去することが好ましく、これらは、油の除去のために使用される従来の技法を表す。脱脂大豆タンパク質材料または大豆フレークは、次に、タンパク質を抽出するために、水性浴中に置かれ、少なくとも約6.5、好ましくは約7.0〜10.0のpHを有する混合物を提供する。通常、pHを6.7よりも高くすることが所望されるならば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムまたは他の一般に容認される食品グレードのアルカリ試薬などの様々なアルカリ試薬を使用して、pHを高めることができる。アルカリ抽出はタンパク質の可溶化を容易にするので、約7.0よりも高いpHが通常好ましい。通常、タンパク質の水性抽出物のpHは、少なくとも約6.5、好ましくは約7.0〜10.0であろう。植物性タンパク質材料に対する水性抽出剤の重量比は、通常、約20対1〜好ましくは10対1の比率の間である。代替の実施形態では、植物性タンパク質は、水を用いて、すなわちpH調節なしに、粉砕した脱脂フレークから抽出される。
【0025】
また、本発明で使用される大豆タンパク質単離物を得る際には、pH調整を用いてまたは用いずに、水性抽出工程中に高温を使用してタンパク質の可溶化を容易にすることも望ましいが、所望されるなら、周囲温度も同様に満足できる。使用することができる抽出温度は、周囲温度から約120°Fまでの範囲であり、好ましい温度は90°Fである。抽出時間は更に限定されず、約5〜120分の間の時間を都合よく使用することができ、好ましい時間は約30分間である。植物性タンパク質材料の抽出に続いて、タンパク質の水性抽出物は、貯蔵タンクまたは適切な容器に貯蔵することができ、第1の水性抽出工程からの不溶性固形分において第2の抽出が実行される。このことは、第1の工程の残留固形分からタンパク質を徹底的に抽出することによって、抽出過程の効率および歩留まりを改善する。
【0026】
pH調整をせずに、または少なくとも6.5、好ましくは約7.0〜10のpHを有する、両方の抽出工程から混ぜ合わせた水性タンパク質抽出物は、次に、抽出物のpHをタンパク質の等電点、またはその付近に調整することによって沈殿されて、不溶性の凝乳沈殿物を形成する。タンパク質抽出物が調整される実際のpHは、使用される植物性タンパク質材料に応じて変化するが、大豆タンパク質の場合には、これは通常約4.0〜5.0である。沈殿工程は、酢酸、硫酸、リン酸、塩酸などの一般の食品グレードの酸性試薬の添加によって、あるいは他の適切な酸性試薬を用いて、都合よく実行することができる。大豆タンパク質は、酸性化した抽出物から沈殿し、次に抽出物から分離される。分離されたタンパク質は水で洗浄されて、残留する可溶性炭水化物および灰分をタンパク質材料から除去することができ、残留する酸は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの塩基性試薬の添加によって、約4.0〜約6.0のpHに中和される。この時点で、タンパク質材料は低温殺菌工程を受ける。低温殺菌工程は、存在し得る微生物を殺す。低温殺菌は、少なくとも180°Fの温度で少なくとも10秒間、少なくとも190°Fの温度で少なくとも30秒間、あるいは少なくとも195°Fの温度で少なくとも60秒間実行される。次に、タンパク質材料は従来の乾燥手段を用いて乾燥されて、大豆タンパク質単離物を形成する。大豆タンパク質単離物は、例えば、SUPRO(登録商標)PLUS675、FXP950、FXP HO120、SURPO(登録商標)XT40、SUPRO(登録商標)710およびSUPRO(登録商標)720としてSolae(登録商標)LLCから市販されている。
【0027】
好ましくは、本発明で使用されるタンパク質材料は、タンパク質材料の特性を高めるように変化される。この変化は、タンパク質材料の有用性または特性を改善するために当該技術分野において知られている変化であり、タンパク質材料の変性および加水分解を含むが、これらに限定されない。
【0028】
タンパク質材料は、より低い粘度に変性および加水分解され得る。タンパク質材料の化学的な変性および加水分解は、当該技術分野においてよく知られており、通常は、pHおよび温度の制御された条件下で、タンパク質材料を所望の程度まで変性および加水分解するのに十分な時間、水性タンパク質材料を水溶液中で1つまたは複数のアルカリ試薬で処理することからなる。タンパク質材料の化学的な変性および加水分解のために用いられる典型的な条件は、約10まで、好ましくは約9.7までのpH、約50℃〜約80℃の温度、および約15分〜約3時間の期間であり、ここで、水性タンパク質材料の変性および加水分解は、より高いpHおよび温度条件でより急速に生じる。
【0029】
また、タンパク質材料の加水分解は、タンパク質を加水分解することができる酵素でタンパク質材料を処理することによって達成することができる。タンパク質材料を加水分解する多くの酵素が当該技術分野において知られており、真菌プロテアーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、およびキモトリプシンを含むが、これらに限定されない。酵素加水分解は、十分な量の酵素、通常はタンパク質材料の約0.1重量%〜約10重量%の酵素をタンパク質材料の水性分散液に添加し、酵素が活性である通常は約5℃〜約75℃の温度、そして通常は約3〜約9のpHで、タンパク質材料を加水分解するのに十分な時間、酵素およびタンパク質材料を処理することによって達成される。十分な加水分解が生じたら、75℃よりも高い温度に加熱することによって酵素は不活性にされ、溶液のpHをタンパク質材料の等電点付近に調整することによって、タンパク質材料が沈殿される。本発明において加水分解に有用な酵素には、ブロメラインおよびアルカラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明の方法において有用なカゼインタンパク質材料は、スキムミルクから凝乳の凝固によって調製される。カゼインは、酸凝固、自然の酸性化(natural souring)、またはレンネット凝固によって凝固される。カゼインの酸凝固をもたらすために、適切な酸、好ましくは塩酸がミルクに添加されて、ミルクのpHをカゼインの等電点付近、好ましくは4.0〜5.0のpH、最も好ましくは4.6〜4.8のpHまで低下させる。自然の酸性化による凝固をもたらすために、ミルクは発酵用バットに保持され、乳酸を形成させる。ミルクは十分な時間発酵させられ、形成した乳酸がミルク中のカゼインの大部分を凝固できるようにする。レンネットによるカゼインの凝固をもたらすために、十分なレンネットがミルクに添加され、ミルク中のカゼインの大部分を沈殿させる。酸凝固、自然の酸性化、およびレンネット沈殿されたカゼインは全て、多数の製造業者または供給業者から市販されている。
【0031】
本発明において有用なコーンタンパク質材料には、コーングルテンミール、最も好ましくはゼインが含まれる。コーングルテンミールは、従来のコーン精製法から得られ、市販されている。コーングルテンミールは、約50%〜約60%のコーンタンパク質および約40%〜約50%のデンプンを含有する。ゼインは、コーングルテンミールを希アルコール、好ましくは希イソプロピルアルコールで抽出することによって製造される市販の精製コーンタンパク質である。
【0032】
本発明の方法において有用な小麦タンパク質材料には、小麦グルテンが含まれる。小麦グルテンは従来の小麦精製法から得られ、市販されている。
【0033】
タンパク質材料の存在に加えて、(B)は、一価のカチオン塩基性塩も含有する。塩基性塩は、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびギ酸ナトリウムからなる群から選択される。好ましい塩基性塩は、クエン酸ナトリウムである。塩基性塩の目的は、酸性飲料中のタンパク質材料の溶解度を高めることである。タンパク質材料のスラリーは、7.0よりも低いpHを有するであろう。塩基性塩は、スラリー(B)が7.0と8.0の間、好ましくは7.3と7.7の間のpHを有するように十分な量で添加される。
【0034】
酸性飲料を調製する前に、(B)内のタンパク質材料を水和することが必要である。乾燥タンパク質材料が塩基性塩の水溶液に添加され、これによりスラリーが形成される。タンパク質材料を水和することが重要である。スラリー(B)は、スラリーの重量を基準として1〜10重量%の固形分を含有する。より好ましくは、スラリー(B)は、1〜7重量%の固形分を含有する。最も好ましくは、スラリー(B)は、1〜6重量%の固形分を含有する。スラリーは、高せん断下、室温で混合され、140〜180°Fで更に10分間加熱されて、タンパク質を水和する。この固形分濃度では、タンパク質において最も完全な水和が得られる。従って、スラリー中の水は、この濃度で最も効率的に使用される。
【0035】
(C)トリグリセリド油
本発明の実施では、トリグリセリド油が使用される。この油の目的は、酸性飲料に心地よいこくを提供すると共に、タンパク質材料の沈殿を防止する助けとなる浮揚力も提供することである。油は、水中油型安定エマルジョンを提供する。「水中油型エマルジョン」という用語は、連続相内に不連続相が分散されたエマルジョンを示す。油が不連続相であり、水が連続層である。安定剤(A)は、タンパク質材料(A)を含有する水中油型エマルジョンのための乳化剤の役割を果たす。水中油型エマルジョンで調合された酸性飲料は、貯蔵中に安定な色も提供する。食品グレードの色は、通常タンパク質表面に吸収されている。底に沈降するタンパク質はどれも、酸性飲料に色の変化を生じるであろう。水中油型エマルジョンは、安定で均質なタンパク質懸濁液を形成することによって、色が次第に消えるのを防止する。
【0036】
使用されるトリグリセリド油は、式
【0037】
【化3】

【0038】
(式中、R1、R2およびR3は脂肪族基であり、約7〜約23個の炭素原子を含有する)の植物油トリグリセリド、遺伝子組換え植物油トリグリセリドまたは合成トリグリセリド油を含む。
【0039】
脂肪族基は、ヘプチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、ヘプタデシル、およびオクチルなどのアルキル基、ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニル、トリデセニル、ヘプタデセニル、ヘンエイコセニルなどの単一の二重結合を含有するアルケニル基、8,11−ヘプタデカジエニルおよび8,11,14−ヘプタデカトリエニルなどの2または3個の二重結合を含有するアルケニル基、ならびに三重結合を含有するアルキニル基である。これらの全ての異性体が含まれるが、直鎖基が好ましい。
【0040】
全てのトリグリセリド油は、様々な量の飽和性、単不飽和性または多不飽和性を含有する。遺伝子組換え植物油トリグリセリドは、低飽和性および低多不飽和性を有するという犠牲を払って、高い(60%または70%、もしくは更に80%よりも多い)単不飽和性で調製することができる。合成トリグリセリド油は、任意の量の飽和性、単不飽和性または多不飽和性で調製することができる。すなわち、合成トリグリセリド油は、100%飽和性、または100%単不飽和性または100%多不飽和性を含有するように合成され得る。合成トリグリセリド油は、所望されるどんな特性でも有するように合成することができる。
【0041】
通常の植物油トリグリセリド(非遺伝子組換え)は、以下の表に示されるように、広範な種類の飽和性、単不飽和性または多不飽和性を有する。
【0042】

【0043】
好ましい植物油トリグリセリドは、室温で油が液体形態にあることを保証するために30%未満の飽和性を有する。好ましい植物油トリグリセリドは、ピーナッツ油、キャノーラ油、菜種油、大豆油、オリーブ油、ひまわり油およびコーン油である。キャノーラ油は、1%未満のエルカ酸を含有する様々な菜種油である。最も好ましい植物油トリグリセリドは、ひまわり油である。
【0044】
合成トリグリセリドは、1モルのグリセロールと3モルの脂肪酸または脂肪酸混合物との反応によって形成されるものである。
【0045】
遺伝子組換え植物油トリグリセリドは、通常よりも高い単不飽和性を生じるために遺伝子が組換えられた油糧種子から調製される。遺伝子組換え植物油トリグリセリドでは、脂肪酸部分は、トリグリセリド油が、少なくとも60パーセント、好ましくは少なくとも70パーセント、最も好ましくは少なくとも80パーセントの単不飽和性を有するようなものである。これらの遺伝子組換え植物油トリグリセリドは、通常よりも高いオレイン酸含量を有する植物によって製造される。通常のひまわり油は、18〜40パーセントのオレイン酸含量を有する。ひまわりの種の遺伝子組換えを行なうことによって、オレイン含量が約60パーセント〜約92パーセントであるひまわり油を得ることができる。すなわち、R1、R2およびR3基はヘプタデセニル基であり、1,2,3−プロパントリイル基−CH2CHCH2−に結合したR1COO-−、R2COO-−、およびR3COO-−は、オレイン酸分子の残基である。米国特許第4,627,192号明細書および米国特許第4,743,402号明細書は、高オレインひまわり油の調製に対するその開示について、参照によって本明細書中に援用される。
【0046】
オレイン酸部分だけで構成されるトリグリセリド油は、その原料にかかわらず、100%のオレイン酸含量を有し、従って、100%の単不飽和性を有する。トリグリセリドが、70%のオレイン酸、10%のステアリン酸、13%のパルミチン酸、および7%のリノール酸である酸部分からなる場合には、飽和性は23%であり、単不飽和性は70%であり、多不飽和性は7%である。好ましい遺伝子組換え植物油トリグリセリドは、高オレイン酸(少なくとも60パーセント)植物油トリグリセリドである。本発明において使用される通常の遺伝子組換え高オレイン植物油トリグリセリドは、高オレインピーナッツ油、高オレインコーン油、高オレインひまわり油、および高オレイン大豆油である。好ましい遺伝子組換え高オレイン植物油は、ヘリアンサス(Helianthus)sp.から得られる遺伝子組換え高オレインひまわり油である。この製品は、Sunyl(登録商標)高オレインひまわり油として、テネシー州メンフィスのA.C.Humko Corporationから入手可能である。Sunyl100油は、酸部分が少なくとも85パーセントのオレイン酸を含む遺伝子組換え高オレイン植物油トリグリセリドである。
【0047】
本発明では、遺伝子組換え植物油トリグリセリド(C)として、オリーブ油および菜種油は除外されることに注意すべきである。オリーブ油のオレイン酸含量は、通常、65〜85パーセントの範囲であり、菜種油は約63パーセントである。しかしながら、これらの単不飽和含量は、遺伝子組換えによって達成されるのではなく、自然に生じる。
【0048】
更に、遺伝子組換え植物油トリグリセリドは、ジ−およびトリ−不飽和酸を犠牲にして高オレイン酸含量を有することに注意すべきである。通常のひまわり油は、20〜40パーセントのオレイン酸部分および50〜70パーセントのリノール酸部分を有する。これは、90パーセントのモノ−およびジ−不飽和酸部分(20+70)または(40+50)の特性を与える。植物油トリグリセリドの遺伝子組換えは、低ジ−またはトリ−不飽和部分の植物油トリグリセリドを生成する。本発明の遺伝子組換え植物油トリグリセリドは、約2〜約90のオレイン酸部分:リノール酸部分の比率を有する。トリグリセリド油の60パーセントのオレイン酸部分の特性および30パーセントのリノール酸部分の特性は、2の比率を与える。80パーセントのオレイン酸部分および10パーセントのリノール酸部分からなるトリグリセリド油は、8の比率を与える。90パーセントのオレイン酸部分および1パーセントのリノール酸部分からなるトリグリセリド油は、90の比率を与える。通常のひまわり油の比率は、約0.5(30パーセントのオレイン酸部分および60パーセントのリノール酸部分)である。
【0049】
好ましいトリグリセリド油は、植物油トリグリセリドおよび遺伝子組換え植物油トリグリセリドである。
【0050】
成分(D)
タンパク質材料は、それ自体、望ましくないあと味または望ましくない香味を有し得る。香味材料(D)の作用は、タンパク質材料(B)の不利な香味を隠し、酸性飲料組成物に好ましい味感を与えることである。香味材料(D)は、果実ジュース、野菜ジュース、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アスコルビン酸、グルコノデルタラクトン(glucone delta lactone)、リン酸またはこれらの組み合わせを含む。
【0051】
ジュースとしては、果実および/または野菜を、丸ごと、液体、液体濃縮物、ピューレまたは別の変性形態で添加することができる。果実および/または野菜からの液体は、ジュース製品において使用される前にろ過されてもよい。果実ジュースは、トマト、ベリー、シトラスフルーツ、メロンおよび/またはトロピカルフルーツからのジュースを含むことができる。単一の果実ジュースまたは果実ジュースのブレンドを使用することができる。野菜ジュースは、多数の異なる野菜ジュースを含むことができる。本発明において用いることができる多数の特定のジュースのうちのいくつかの実施例には、全ての種類のベリー、フサスグリ、アプリコット、ピーチ、ネクタリン、プラム、チェリー、リンゴ、洋ナシ、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライム、ミカン、マンダリン、タンジェロ、バナナ、パイナップル、グレープ、トマト、ダイオウ、プルーン、イチジク、ザクロ、パッションフルーツ、グアバ、キウイ、キンカン、マンゴ、アボカド、全ての種類のメロン、パパイヤ、カブ、ルタバガ、ニンジン、キャベツ、キュウリ、カボチャ、セロリ、ラディッシュ、モヤシ、アルファルファの芽、タケノコ、豆および/または海草からのジュースが含まれる。認識されるように、1つまたは複数の果実、1つまたは複数の野菜、および/または1つまたは複数の果実および野菜が酸性飲料に含有されて、酸性飲料の所望の香味を得ることができる。
【0052】
果実および野菜の香味も、香味材料(D)の役割を果たすことができる。果実香味料は、タンパク質材料のあと味を中和することが分かっている。果実香味料は、天然および/または人工の香味料でよい。認識されるように、酸性飲料の特徴的な香味を高め、そしてタンパク質材料に由来し得る望ましくない香味感を隠すために、野菜香味料などの他の香味材料と共に使用される場合には果実香味料が最も良い。
【0053】
成分(A)、(B)、(C)および(D)を調製したら、残っているのは、本発明の方法に従って成分を混ぜ合わせて、酸性飲料組成物を形成することだけである。タンパク質安定剤(A)の2つの別々のスラリーが水和される。糖は、一方に添加されてもよいし、両方に添加されてもよいし、あるいはいずれのスラリーにも添加されなくてもよい。成分(B)は、塩基性塩を水中に溶解した後、タンパク質を水和するために乾燥タンパク質を添加することによって調製される。水和タンパク質安定剤(A)の第1の部分は、(B)と混ぜ合わされて、ブレンド(I)が形成される。水性媒体中のタンパク質安定剤(A)の部分と、水性媒体中の(B)からのタンパク質とを混ぜ合わせることが必要である。これにより、全てのタンパク質安定剤が(B)に添加されれば生じ得るタンパク質の凝集を起こすのではなく、タンパク質安定剤(A)のその部分がタンパク質と相互作用できるようにする。
【0054】
トリグリセリド油(C)はブレンド(I)に添加され、水中油型エマルジョンが形成される。エマルジョンの形成後、内容物は均質化されてブレンド(II)を形成する。均質化は、ブレンド(II)中のタンパク質の粒径を小さくする働きをする。均質化は、Gaulinホモジナイザー(モデル15MR)において高圧段階および低圧段階の2段階で実行される。高圧段階は、1500〜5000ポンド/平方インチ、好ましくは2000〜3000ポンド/平方インチである。低圧段階は、300〜1000ポンド/平方インチ、好ましくは400〜700ポンド/平方インチである。
【0055】
水和タンパク質安定剤(A)の第2の部分は(D)と混ぜ合わされて、ブレンド(III)が形成される。
【0056】
ブレンド(II)およびブレンド(III)は混ぜ合わせられて、酸性飲料組成物のブレンドが形成される。ブレンドは殺菌または低温殺菌工程を受けて、均質化される。低温殺菌は、比較的高温で短時間加熱することによって実行される。この低温殺菌工程は、ブレンド中の微生物を殺す。例えば、ブレンド中の微生物を殺すのに有効な処理は、約180°Fの温度で約10秒間、好ましくは少なくとも190°Fの温度で少なくとも30秒間、最も好ましくは195°Fの温度で60秒間、ブレンドを加熱することを含む。180°Fよりも低い温度も作用し得るが、少なくとも180°Fの温度は、安全係数を提供する。200°Fよりも高い温度も微生物を殺す効果がある。しかしながら、より高い温度に関連するコストが、有害な微生物をかなり少ししか含有しない製品につながるわけではない。更に、高すぎる温度で長すぎる時間低温殺菌すると、タンパク質の更なる変性を生じることがあり、更に変性したタンパク質の不溶性のためにより多くの沈降物を生じる。
【0057】
均質化は、上記のブレンド(II)を得るための均質化と同じようにして実行される。
【0058】
ブレンドは、低温殺菌および均質化の後、3.0〜4.5、好ましくは3.2〜4.0、最も好ましくは3.6〜3.8のpHを有する。ビンは高温充填され、2分間逆向きにされ、次に氷水中に置かれ、内容物の温度はほぼ室温にされる。ビンの内容物は、酸性飲料組成物である。
【0059】
ブレンド(I)の調製において、乾燥(A)の第1の部分:(B)100部は、通常、0.1〜0.4:100、好ましくは0.15〜0.35:100、最も好ましくは0.2〜0.3:100である。ブレンド(II)の調製において、(C):ブレンド(I)の重量比は、通常、3〜15:85〜97、好ましくは5〜12:88〜95、最も好ましくは70〜80:20〜30である。ブレンド(III)の調製において、水和した(A)の第2の部分:(D)の重量比は、通常、50〜90:10〜50、好ましくは60〜85:15〜40、最も好ましくは70〜80:20〜30である。ブレンドの調製において、ブレンド(III):ブレンド(II)の重量比は、通常、35〜50:50〜65、好ましくは38〜48:52〜62、最も好ましくは40〜45:55〜60である。
【実施例】
【0060】
酸性飲料組成物
実施例Aは、図1に定義されるような基準方法の実施例である。この実施例の酸性飲料組成物は、タンパク質源として、乾燥タンパク質を用いる。
【0061】
実施例A
8オンス分につき6.5gのタンパク質の強化ジュース飲料を、Solae(登録商標)LLCにより製造されるFXP HO 220タンパク質を用いて製造する。
【0062】
容器に、5494gの蒸留水を添加し、次に332gのFXP HO 220タンパク質を添加する。5.70%固形分の内容物を中程度のせん断下で分散させ、5分間混合した後、170°Fで10分間加熱して、タンパク質懸濁スラリーを生じる。別の容器で、60グラムのペクチン(YM−100L)を高せん断下で2940グラムの蒸留水中に分散させて、2%のペクチン分散液を生じる。塊が観察されなくなるまで、分散液を170°Fに加熱する。ペクチン分散液をタンパク質懸濁スラリー中に添加し、中程度のせん断下で5分間混合する。この後、27グラムのクエン酸、27グラムのリン酸、210グラムの濃縮リンゴジュースおよび1000グラムの糖を添加する。内容物を中程度のせん断下で5分間混合する。この混合物の室温におけるpHは、3.8〜4.0の範囲である。内容物を195°Fで30秒間低温殺菌し、第1の段階では2500ポンド/平方インチ、そして第2の段階では500ポンド/平方インチで均質化して、タンパク質安定化酸性飲料を生じる。180〜185°Fにおいてビンに飲料を高温充填する。ビンを逆向きにして2分間保持し、次に、氷水中に入れて、内容物の温度を室温付近にする。ビンの内容物をほぼ室温にしたら、ビンを室温で6ヶ月間貯蔵する。
【0063】
上記で概略的に説明された本発明は、以下に説明される実施例を参照することによってよりよく理解され得る。以下の実施例は、本発明の特定の、しかし非限定的な実施形態を表す。
【0064】
実施例1
8オンス分につき6.5gのタンパク質の強化ジュース飲料を、Solae(登録商標)LLCにより製造されるFXP HO 220タンパク質を用いて製造する。
【0065】
容器に、5000gの脱イオン水中の150gのクエン酸ナトリウムを添加する。クエン酸ナトリウムが溶解したら、Solae,LLCから入手可能な153gのFXP HO 220を添加する。内容物を180°Fに加熱し、8分間保持して、タンパク質材料を水和する。別の容器で、150gのペクチンおよび300gのスクロースを乾燥混合することによって安定剤の第1の部分を調製し、次にこれを水和タンパク質の容器に添加して、ペクチンを水和し、そしてブレンド(I)を形成する。少なくとも85%の単不飽和含量を有するTrisun100のような高オレインひまわり油500gをブレンド(I)に添加して、水中油型エマルジョンを形成し、180°Fで5分間混合させ、次に、2500ポンド/平方インチの高圧段階、それから500ポンド/平方インチの低圧段階の2段階で均質化させ、ブレンド(II)を形成する。もう1つの容器で、250gのペクチンおよび3400gの水を添加してペクチンを水和することによって、安定剤の第2の部分を調製する。400gのスクロース、164gのリンゴジュース濃縮物および350のクエン酸の溶液としての香味材料を安定剤の第2の部分に添加し、すぐに水和して、ブレンド(III)を形成する。ブレンド(II)およびブレンド(III)を混ぜ合わせて、ブレンドを形成し、ブレンドを195°Fで60秒間低温殺菌した後、2500ポンド/平方インチの高圧段階、それから500ポンド/平方インチの低圧段階の2段階で均質化する。pHは、3.86である。ビンを高温充填し、2分間逆向きにし、次に氷水中に置いて、内容物の温度をほぼ室温にする。ビンを貯蔵し、4℃で並べて比較して1ヶ月の時点で粘度、漿液(serum)および沈降物の値を決定する。
【0066】
250ミリリットルの細口角ビン(Nalge Nunc International)に各飲料を充填することによって漿液および沈降物の値を決定する。次に、各サンプルの沈降物の割合および漿液の割合を測定して、各飲料における安定化の有効性を決定する(沈降物=溶液/懸濁液から降下した固体材料、漿液=懸濁したタンパク質を少ししか、またはまったく含有しない溶液の透明層)。沈降物の割合は、サンプル中の沈降層の高さを測定し、サンプル全体の高さを測定することによって決定され、ここで、沈降パーセント=(沈降層の高さ)/(サンプル全体の高さ)×100である。漿液の割合は、サンプル中の漿液層の高さを測定し、サンプル全体の高さを測定することによって決定され、ここで、漿液パーセント=(漿液層の高さ)/(サンプル全体の高さ)×100である。サンプルの均質性またはその欠如に関して視覚的な観察も行う。試験の結果は、以下の表Iに示される。
【0067】
表Iでは、基準方法の飲料実施例Aおよび本発明の方法の飲料実施例1がタンパク質とタンパク質で互いに比較される。
【0068】

1 スピンドルS18を備えたBrookfield Model DV−II粘度計。
実施例は60rpmで実行。報告値はセンチポアズ(Cps)による。
【0069】
上記実施例の貯蔵沈降データから、本発明の方法を包含する実施形態は、飲料の通常の調製方法よりも、タンパク質ベースの酸性飲料の調製において沈殿が少ないという点で改善を提供することが観察される。
【0070】
本発明はその好ましい実施形態に関して説明されたが、説明を読むことでその様々な変更が当業者に明らかになるであろうということは理解されるべきである。従って、本明細書中に開示される本発明が、特許請求の範囲内にあるこのような変更も包含することが意図されることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】典型的なタンパク質含有酸性飲料を製造するための産業全体にわたる方法のブロック流れ図である。該方法では、乾燥タンパク質はタンパク質スラリーとして水和され、乾燥安定剤は安定剤スラリーとして水和され、そして2つのスラリーは一緒にブレンドされ、残りの成分が添加された後、低温殺菌および均質化が行われる。
【図2】タンパク質含有酸性飲料を製造するための本発明の方法のブロック流れ図である。安定剤の第1の部分は、水和タンパク質の存在下で水和される。次に、油が添加され、そして安定剤の第2の部分が水和され、残りの成分が混ぜ合わせられて、油のブレンドに添加された後、本発明の原理に従って低温殺菌および均質化が行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水和タンパク質安定剤と、
(B)タンパク質材料と、
(C)式
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は脂肪族基であり、約7〜約23個の炭素原子を含有する)の植物油トリグリセリド、遺伝子組換え植物油トリグリセリドまたは合成トリグリセリド油を含むトリグリセリドと、
(D)果実ジュース、野菜ジュース、グルコノデルタラクトン、リン酸、もしくはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸およびアスコルビン酸のナトリウム塩または酸を含む香味材料と、
を含み、3.0〜4.5のpHを有する酸性飲料組成物。
【請求項2】
前記タンパク質安定剤(A)が、親水コロイドを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記親水コロイドが、アルギン酸塩、微結晶性セルロース、ジェランガム、タラガム、カラギナン、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、セルロースガムおよびペクチンを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記タンパク質安定剤(A)が、高メトキシルペクチンである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記タンパク質安定剤(A)のpHが、2.0〜5.5である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記タンパク質材料(B)が、大豆タンパク質材料、カゼイン、乳漿タンパク質、小麦グルテンまたはゼインを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記大豆タンパク質材料が、大豆粉、大豆濃縮物または大豆タンパク質単離物を含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記大豆タンパク質材料が、大豆タンパク質単離物を含む請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記タンパク質材料(B)が、加水分解タンパク質材料または非加水分解タンパク質材料を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記タンパク質材料(B)が、加水分解タンパク質材料を含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記(B)において、スラリーが1〜10重量%の固形分を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記(B)において、スラリーが1〜7重量%の固形分を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記(B)において、スラリーが1〜6重量%の固形分を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記トリグリセリドが、植物油トリグリセリドまたは遺伝子組換え植物油トリグリセリドを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記合成トリグリセリド油が、少なくとも1つの直鎖脂肪酸とグリセロールとのエステルである請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記脂肪酸が、オレイン酸である請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記植物油トリグリセリドが、ピーナッツ油、大豆油、コーン油、オリーブ油、ひまわり油および菜種油を含む請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記遺伝子組換え植物油において、R1、R2およびR3が、少なくとも60パーセントの単不飽和性を有する請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記単不飽和性が、オレイン酸の脂肪酸残基である請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記遺伝子組換え植物油が、遺伝子組換えピーナッツ油、遺伝子組換え大豆油、遺伝子組換えコーン油または遺伝子組換えひまわり油を含む請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記遺伝子組換え植物油が、約2〜約90のオレイン酸部分:リノール酸部分を有する請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記酸性飲料組成物のpHが、3.2〜4.0である請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記酸性飲料組成物のpHが、3.6〜3.8である請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
(A)タンパク質安定剤の第1の部分と、
(B)水和タンパク質材料および塩基性塩の水性混合物と
を混ぜ合わせてブレンド(I)を形成することと、
前記ブレンド(I)に、
(C)式
【化2】

(式中、R1、R2およびR3は脂肪族基であり、約7〜約23個の炭素原子を含有する)の植物油トリグリセリド、遺伝子組換え植物油トリグリセリドまたは合成トリグリセリド油を含むトリグリセリド
を添加した後に均質化を行ない、ブレンド(II)を形成することと、
タンパク質安定剤の第2の部分を水和させ、
(D)香味材料
と混ぜ合わせてブレンド(III)を形成することと、
ブレンド(II)およびブレンド(III)を混ぜ合わせてブレンドを形成することと、
ブレンドを低温殺菌および均質化することと、
を含む、酸性飲料中のタンパク質材料の安定な懸濁液の調製方法であって、前記酸性飲料組成物が3.0〜4.5のpHを有する方法。
【請求項25】
前記タンパク質安定剤(A)が、親水コロイドを含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記親水コロイドが、アルギン酸塩、微結晶性セルロース、ジェランガム、タラガム、カラギナン、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、セルロースガムおよびペクチンを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質安定剤(A)が、高メトキシルペクチンである請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質安定剤(A)のpHが、2.0〜5.5である請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記タンパク質材料(B)が、大豆タンパク質材料、カゼイン、乳漿タンパク質、小麦グルテンまたはゼインを含む請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記大豆タンパク質材料が、大豆粉、大豆濃縮物または大豆タンパク質単離物を含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記大豆タンパク質材料が、大豆タンパク質単離物を含む請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記タンパク質材料(B)が、加水分解タンパク質材料または非加水分解タンパク質材料を含む請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記タンパク質材料(B)が、加水分解タンパク質材料を含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記(B)において、スラリーが1〜10重量%の固形分を有する請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記(B)において、スラリーが1〜7重量%の固形分を有する請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記(B)において、スラリーが1〜6重量%の固形分を有する請求項24に記載の方法。
【請求項37】
前記トリグリセリドが、植物油トリグリセリドまたは遺伝子組換え植物油トリグリセリドを含む請求項24に記載の方法。
【請求項38】
前記合成トリグリセリド油が、少なくとも1つの直鎖脂肪酸とグリセロールとのエステルである請求項24に記載の方法。
【請求項39】
前記脂肪酸が、オレイン酸である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記植物油トリグリセリドが、ピーナッツ油、大豆油、コーン油、オリーブ油、ひまわり油および菜種油を含む請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記遺伝子組換え植物油において、R1、R2およびR3が、少なくとも60パーセントの単不飽和性を有する請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記単不飽和性が、オレイン酸の脂肪酸残基である請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記遺伝子組換え植物油が、遺伝子組換えピーナッツ油、遺伝子組換え大豆油、遺伝子組換えコーン油または遺伝子組換えひまわり油を含む請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記遺伝子組換え植物油が、約2〜約90のオレイン酸部分:リノール酸部分を有する請求項24に記載の方法。
【請求項45】
前記酸性飲料方法のpHが、3.2〜4.0である請求項24に記載の方法。
【請求項46】
前記酸性飲料方法のpHが、3.6〜3.8である請求項24に記載の方法。
【請求項47】
前記(B)が7.0〜8.0のpHを有するのに十分な量で、前記塩基性塩が存在する請求項24に記載の方法。
【請求項48】
前記(B)が7.3〜7.7のpHを有するのに十分な量で、前記塩基性塩が存在する請求項24に記載の方法。
【請求項49】
前記塩基性塩が、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびギ酸ナトリウムからなる群から選択される請求項24に記載の方法。
【請求項50】
前記塩基性塩が、クエン酸ナトリウムである請求項24に記載の方法。
【請求項51】
前記ブレンド(I)において、(A)の第1の部分:100(B)が、0.1〜0.4:100である請求項24に記載の方法。
【請求項52】
前記ブレンド(II)において、(C):ブレンド(I)の重量比が、3〜15:85〜97である請求項24に記載の方法。
【請求項53】
前記ブレンド(III)において、水和した(A)の第2の部分:(D)の重量比が、50〜90:10〜50である請求項24に記載の方法。
【請求項54】
前記ブレンドにおいて、ブレンド(III):ブレンド(II)の重量比が、35〜50:50〜65である請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−505613(P2008−505613A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508568(P2007−508568)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/012859
【国際公開番号】WO2005/102074
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】