説明

タンパク質を二段階標識する方法

【課題】タンパク質を二段階標識する方法の提供。
【解決手段】標識対象タンパク質とPYP(Photoactive Yellow Protein)等との融合タンパク質を得ること、前記融合タンパク質と式(I)の化合物とを反応させ、式(I)の化合物中の式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と融合タンパク質に含まれるPYP等とを結合させ、次いで、得られたPYP等が結合された式(I)の化合物に、式(II)の化合物を反応させることにより、式(I)の化合物のZ1基と式(II)の化合物のZ2基とをカップリングさせ、前記対象タンパク質をX1で標識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を二段階標識に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物が生きた状態において、生物内のタンパク質などの生体分子の機能を観察するバイオイメージングが注目されている。この生体分子機能の観察は、生体分子を蛍光で標識し、生物内におけるその生体分子の局在や動きを可視化することにより汎用的に行われている。生体分子を蛍光で標識する方法としては、遺伝子工学的手法を用いて、蛍光タンパク質を目的とする生体分子(タンパク質)の融合タンパク質として発現させる方法が一般的である。この蛍光タンパク質は、分子サイズが大きく、また、組織透過性の高い近赤外光蛍光の観測が困難であるなどの不都合がある。そのため、蛍光タンパク質より分子サイズが小さく、かつ、蛍光特性に優れた有機小分子に注目が集まっている。有機小分子を目的タンパク質にラベルする技術として、HaloTag(登録商標)(プロメガ株式会社)(例えば非特許文献1参照)およびSNAP−tag(登録商標)(例えば非特許文献2参照)を用いたラベル化キットが商品化されている。これらのラベル化法は、目的とする生体分子に融合させたタンパク質の酵素反応を利用して目的とする生体分子を蛍光で標識する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Qureshi,M.H., ら、J. Biol. Chem., 2001, 276, p.46422-8
【非特許文献2】Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2004, 101, p.9955-9959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のラベル化キットに代表されるように観察対象のタンパク質に融合させるタンパク質は、小型化が図られてきた。しかしながら、観察対象のタンパク質の機能をできるだけ阻害しないという点からは、融合させるタンパク質のさらなる小型化が望まれている。また、バイオイメージングの適用範囲を拡大する点からは、さらなるラベル化技術の開発が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、生体内における生体分子(タンパク質)を蛍光で標識するために使用できる、タンパク質を二段階標識する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タンパク質を二段階標識する方法であって、
標識対象タンパク質とPYP(Photoactive Yellow Protein)またはPYP由来タンパク質との融合タンパク質を得ること、および
前記融合タンパク質と下記式(I)で表わされる化合物またはその塩とを反応させ、前記式(I)で表わされる化合物またはその塩の式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と前記融合タンパク質に含まれるPYPまたはPYP由来タンパク質とを結合させ、次いで、得られたPYPまたはPYP由来タンパク質が結合された前記式(I)で表わされる化合物に、下記式(II)で表わされる化合物またはその塩を反応させることにより、前記式(I)で表わされる化合物またはその塩のZ1基と前記式(II)で表わされる化合物またはその塩のZ2基とをカップリングさせ、その結果、前記対象タンパク質をX1で標識することを含む。
【0007】
【化1】

【0008】
前記式(I)中、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
1は、低級アルキル基、ハロゲン置換された低級アルキル基、アリール基、ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基、低級アラルキル基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基であり、
2は、クマリン骨格を有する式(A)で表わされる基またはベンゼン骨格を有する式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1は、Z2と反応性の基であり、
1は、Z1のためのリンカーであり、
3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基またはハロゲン置換された低級アルキル基であり、
5は、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、低級アルコキシ基であり、
【0009】
【化2】

【0010】
は、二重結合または三重結合を意味する。
前記式(II)中、
1は、蛍光性基またはビオチン由来の基であり、
2は、Z2のためのリンカーであり、
2は、Z1と反応性の基である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタンパク質を二段階標識する方法は、比較的小さなタンパク質であるPYPを利用するため、タンパク質を精度よく標識することができる。また、PYPは真正細菌由来であるため、PYPを細胞内で用いた際、PYP由来の内在性タンパク質が標識に悪影響を与える可能性は低い。その結果、精度の高い標識が可能である。また、二段階で標識するため、小分子である式(II)の化合物を種々変更することにより標識を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(a)は、PYPと化合物CATPの反応後のCBB染色画像を、図1(b)はPYPと化合物CATPの反応後の蛍光画像を示す。
【図2】図2(a)は、緩衝液中でのPYPの二段階標識反応後のCBB染色画像を、図2(b)は緩衝液中でのPYPの二段階標識の蛍光画像を示す。
【図3】図3(a)は、細胞溶解液中でのPYPの二段階標識反応後のCBB染色画像を、図3(b)は細胞溶解液中でのPYPの二段階標識の蛍光画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
PYP(Photoactive Yellow Protein)は、紅色光合成細菌Ectothiorhodospira halophila(Halorhodospira halophila)から単離された光受容タンパク質である。この紅色光合成細菌は真正細菌であるため、PYPを細胞内で用いた際、PYP由来の内在性タンパク質が標識に悪影響を与える可能性は低い。また、このPYPは、125のアミノ酸残基(配列表の配列番号1)により構成されており、比較的小さな(14kDa)タンパク質である。このPYPの69番目のシステイン残基に発色団であるp−クマル酸がチオエステル結合を介して結合する。PYPにはp−クマル酸以外、様々な類似体が結合することが知られている(例えば、以下のスキーム1に示す化合物。例えばCordgunkeら、Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 1998, 95, pp7396-7401、Koonら、The Journal of Biological Chemistry, 1996, 271, pp. 31949-31956を参照)。
【0014】
【化3】

【0015】
本発明の標識方法においては、PYPまたはPYP由来タンパク質と標識対象タンパク質とを融合させた融合タンパク質を、式(I)の化合物またはその塩と反応させ、前記式(I)で表わされる化合物またはその塩における式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と、前記融合タンパク質におけるPYPまたはPYP由来タンパク質とを結合させる。次いで、そこへ、式(II)の化合物を反応させる。そうすると式(I)の化合物中のZ1基が、式(II)の化合物中のZ2基と反応して結合する(スキーム2中、Z1基とZ2基は結合してZ基へ変換されている)。その結果、前記融合タンパク質は式(II)の化合物由来のX1基で標識される。このX1基が蛍光性基である場合には、この式(II)の化合物が結合した融合タンパク質はX1基由来の蛍光を発する。また、このX1基がビオチン由来の基である場合、さらに蛍光を発する官能基(または酵素)とビオチンに結合する部位(例えばアビジン)の両方を有する化合物と反応させ、その結果、式(II)の化合物と結合した融合タンパク質は蛍光を発する(スキーム2参照)。このように、本発明の標識方法で用いるPYPまたはPYP由来タンパク質は、約14kDaと比較的大きさが小さく、標識対象タンパク質に与える影響は低いという利点がある。さらにPYPまたはPYP由来タンパク質や、クマリン誘導体またはクマル酸誘導体は動物細胞内に存在しない物質であるため、標識に与える影響は低いという利点がある。また、蛍光を発する官能基(または酵素)とビオチン由来の基に結合する部位の両方を有する化合物は、官能基の種類を種々変更することができるため、蛍光標識(または酵素標識)の種類を容易に変更することができる。
【0016】
【化4】

【0017】
PYPのアミノ酸配列としては、例えば、配列表の配列番号1〜17で表されるアミノ酸配列が挙げられ、PYPをコードするポリヌクレオチドとしては、例えば、配列表の配列番号18〜29で表される塩基配列が挙げられる。
【0018】
融合タンパク質を発現可能なプラスミド若しくはベクターを得るには、標識対象タンパク質をコードするポリヌクレオチド、PYPまたはPYP由来のタンパク質をコードするポリヌクレオチド等を用い、通常の方法に従い、そのようなプラスミド若しくはベクターを調製することができる。本発明において、ベクターは、ポリヌクレオチド、好ましくは、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを細胞内に導入するためのポリヌクレオチドをいい、プラスミドを含むものをいう。なお、ベクターは、プラスミドベクターであってもよく、ウイルスベクターであってもよい。融合タンパク質を発現可能とする配列は、当業者であれば、導入する細胞の種類に応じて適宜選択しうる。プラスミド及びベクターは、融合タンパク質の発現を調節する配列(例えば、発現誘導プロモーターや制御配列)を含んでもよい。
【0019】
細胞内で融合タンパク質を発現させるには、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたは、融合タンパク質を発現可能なプラスミド若しくはベクターを用いて、通常の方法に従って行うことができる。
【0020】
発現した融合タンパク質を単離するには、通常の方法に従って行うことができる。
【0021】
本発明のタンパク質を二段階標識する方法において用いられる式(I)の化合物は、前記のように、Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
1は、低級アルキル基、ハロゲン置換された低級アルキル基、アリール基、ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基、低級アラルキル基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基であり、
2は、クマリン骨格を有する式(A)で表わされる基またはベンゼン骨格を有する式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1は、Z2と反応性の基であり、
1は、Z1のためのリンカーであり、
3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、またはハロゲン置換された低級アルキル基であり、
5は、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、低級アルコキシ基であり、
【0022】
【化5】

【0023】
は、二重結合または三重結合を意味する。
【0024】
【化6】

【0025】
また、本発明のタンパク質を二段階標識する方法において用いられる式(II)の化合物は、前記のように、X1は、蛍光性基またはビオチン由来の基であり、L2は、Z2のためのリンカーであり、Z2は、Z1と反応性の基である。
【0026】
【化7】

【0027】
本発明において、蛍光性基とは、可視光線、紫外線、X線等が照射され、そのエネルギーを吸収することにより電子が励起し、それが基底状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出する性質を有する基を意味する。具体的には、蛍光性基とは、フルオレセイン、キサンテン色素、シアニン色素、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素、アミノフタル酸ヒドラジド、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノン等から誘導される基あるいは発光性希土類錯体が挙げられ、フルオレセイン、キサンテン色素から誘導される基が好ましい。
【0028】
本発明において、Z1のためのリンカーL1とは、式(A)の基のクマリン骨格とZ1基とを、式(B)の基のベンゼン骨格とZ1基とを結びつけるための基である。このリンカーL1は、式(A)の基中のZ1基と式(II)の化合物中のZ2基、または式(B)の基中のZ1基と式(II)の化合物中のZ2基とが分子間で反応するよう、柔軟かつある程度の長さを有するものが好ましい。柔軟であるためには、リンカーL1は、鎖状構造を有するものが好ましい。また、長さについては、リンカーL1は、例えば6Å〜20Å、好ましくは8Å〜18Å、より好ましくは10Å〜16Åの長さを有する。
【0029】
また、本発明において、Z2のためのリンカーL2とは、Z2基とX1基とを結びつけるための基である。このリンカーL2は、式(A)の基中のZ1基と式(II)の化合物中のZ2基、または式(B)の基中のZ1基と式(II)の化合物中のZ2基とが分子間で反応するよう、柔軟かつある程度の長さを有するものが好ましい。柔軟であるためには、リンカーL2は、鎖状構造を有するものが好ましい。また、長さについては、リンカーL2は、例えば1Å〜15Å、好ましくは2Å〜12Å、より好ましくは2Å〜10Åの長さを有する。
【0030】
具体的には、L1およびL2は、例えば、−(CH2n1O(CH2n2−、−(CH2n1CONR11(CH2n2−、−(CH2n1NR11CO(CH2n2−、−(CH2n1NR11CONR12(CH2n2−、−(CH2n1NR11CSNR12(CH2n2−、−(CH2n1CONR11(CH2n3CONR12(CH2n2−,−(CH2n1−、−(CH2n1S(CH2n2−、−(CH2n1NR11(CH2n2−、−(CH2n1CO2(CH2n2−等の1以上を組み合わせたものが挙げられる。前記式中、n1、n2、n3はそれぞれ独立して、0または1〜5の整数であり、R11およびR12は、それぞれ、水素原子または低級アルキル基である。このリンカーL1およびL2は、本発明のタンパク質を二段階標識する方法における条件下で切断されないリンカーであれば、その構造は限定されない。前記L1としては、下記式(a)または(b)で表わされる基が好ましい。前記L2としては、−(CH2n1NR11CO(CH2n2−が好ましい。
【0031】
【化8】

【0032】
ここで、式(a)において、n1、n2、n3、n4、n5およびn6は、それぞれ独立して、0または1〜5の整数であり、
式(b)において、n7およびn8は、それぞれ独立して、0または1〜5の整数であり、R11は、水素原子または低級アルキル基である。
【0033】
式(I)の化合物において、R1、R2、式(A)の基および式(B)の基は、1か所以上の不斉中心を有することもあり、それゆえ、式(I)の化合物はラセミ体または純粋な立体異性体として存在してもよい。さらに、式(B)が二重結合を含有する場合、シス又はトランス異性体として存在しうる。同様に、式(II)の化合物において、X1およびL2の基は、1か所以上の不斉中心を有することもあり、それゆえ、式(II)の化合物はラセミ体または純粋な立体異性体として存在してもよい。いずれの場合にも、本発明はそれらの混合物及び各異性体を共に包含するものである。
【0034】
本発明において「低級」は、特に指示がなければ、炭素原子1〜6個、好ましくは炭素原子1〜4個を意味する。
【0035】
本発明において、「ハロゲン原子」または「ハロゲン」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0036】
本発明において、「低級アルキル基」または「低級アルキル」とは、炭素数1〜6のものが挙げられる。具体的には、低級アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、sec−ペンチル、t−ペンチル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、および1−エチル−1−メチルプロピルなどの直鎖状または分岐状のアルキル基を挙げることができ、好適には炭素数1〜3のものが挙げられる。
【0037】
本発明において、「低級アルコキシ基」または「低級アルコキシ」とは、炭素数1〜6のアルキルオキシ基が挙げられる。具体的には、低級アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、i−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、n−ペンチルオキシ、i−ペンチルオキシ、sec−ペンチルオキシ、t−ペンチルオキシ、2−メチルブトキシ、n−ヘキシルオキシ、i−ヘキシルオキシ、t−ヘキシルオキシ、sec−ヘキシルオキシ、2−メチルペンチルオキシ、3−メチルペンチルオキシ、1−エチルブチルオキシ、2−エチルブチルオキシ、1,1−ジメチルブチルオキシ、2,2−ジメチルブチルオキシ、3,3−ジメチルブチルオキシ、および1−エチル−1−メチルプロピルオキシなどの直鎖状または分岐状のアルキルオキシ基を挙げることができ、好適には炭素数1〜3のアルキルオキシ基が挙げられる。
【0038】
本発明において、「アリール基」とは、炭素数6〜10のものが挙げられる。具体的には、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、好適にはフェニル基が挙げられる。
【0039】
本発明において、「低級アラルキル基」とは、アリール置換された低級アルキル基が挙げられる。具体的には、低級アラルキル基としては、ベンジル(フェニルメチル)、フェネチル(フェニルエチル)、3−フェニルプロピル、1−ナフチルメチル、2−(1−ナフチル)エチル等を挙げることができ、好適にはベンジル基が挙げられる。
【0040】
本発明において、「ハロゲンで置換された低級アルキル基」としては、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、1−フルオロエチル、1−クロロエチル、1−ブロモエチル、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、1,2−ジフルオロエチル、トルフルオロメチルなどが挙げられる。
【0041】
本発明において、「低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基」としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、i−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等が挙げられる。
【0042】
本発明において、「ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基」としては、4−ヒドロキシフェニル、4−クロロフェニル、4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、4−メトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、2−ヒドロキシナフチル等が挙げられる。
【0043】
本発明において、「ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基」としては、4−ヒフォロキシベンジル、2−クロロベンジル、2−ブロモベンジル、4−メトキシベンジル等が挙げられる。
【0044】
式(I)の化合物の塩および式(II)の化合物の塩は、酸または塩基との塩であってもよい。そのような塩としては、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などの無機塩基との塩、及びトリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンアミンなどの有機アミン塩、及び塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸塩、及びギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、酒石酸などの有機カルボン酸塩、及びメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸付加塩、及びアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの塩基性又は酸性アミノ酸といった塩基との塩又は酸付加塩が挙げられる。
【0045】
式(I)の化合物および式(II)の化合物は、溶媒和物の形をとることもありうるが、これも本発明の範囲に含まれる。溶媒和物としては、好ましくは、水和物及びエタノール和物が挙げられる。
【0046】
本発明のタンパク質を二段階標識する方法において用いられる式(I)の化合物および/または式(II)の化合物は、従来技術における公知文献を参考に自家製造してもよいし、市販で入手してもよい。
【0047】
本発明のタンパク質を二段階標識する方法における標識対象タンパク質は、特に制限されないが、好ましくは、動物細胞のタンパク質であって、より好ましくは哺乳類のタンパク質であって、さらに好ましくは霊長類のタンパク質であって、さらにより好ましくはヒトのタンパク質である。また、本発明のタンパク質を二段階標識する方法における標識対象タンパク質は、少なくとも1部分が細胞外に存在しうるタンパク質であることが好ましく、膜タンパク質又は分泌されるタンパク質であることがより好ましい。なお、本発明のタンパク質を二段階標識する方法において、PYPまたはPYP由来タンパク質を融合させる部分は、標的対象タンパク質の細胞外に存在しうる部分であることが好ましい。したがって、本発明は、膜タンパク質を二段階標識する方法を提供しうる。
【0048】
本発明のタンパク質を二段階標識する方法において用いられる、標識対象タンパク質とPYPまたはPYP由来タンパク質との融合タンパク質を得ることは、例えば、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得ること、融合タンパク質を発現可能なプラスミド若しくはベクターを得ること、細胞内で融合タンパク質を発現させること、又は、発現した融合タンパク質を単離することを含んでもよい。融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、標識対象タンパク質をコードするポリヌクレオチド、PYPまたはPYP由来タンパク質をコードするポリヌクレオチド等を用い、通常の方法に従い、融合タンパク質を発現可能なプラスミド若しくはベクターを調製することができる。
【0049】
本発明のタンパク質をタンパク質を二段階標識する方法において、前記融合タンパク質と、式(I)の化合物とを反応させる工程は、融合タンパク質を発現する生体内で行ってもよく、単離した融合タンパク質を用いてin vitroで行ってもよい。標識をin vitroで行う場合、例えば、緩衝液中(pH6.8〜8.5)で20〜37℃の温度で行ってもよい。
【0050】
本発明のタンパク質をタンパク質を二段階標識する方法において、融合タンパク質におけるPYPまたはPYP由来タンパク質のアミノ酸配列は、
1)配列表の配列番号1〜17で表されるアミノ酸配列、
2)配列表の配列番号1〜17で表されるアミノ酸配列において、第1番目から第24、25、26、または27番目までが欠失したアミノ酸配列、
3)上記1)または2)のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列の1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されたアミノ酸配列であって、前記融合タンパク質が前記式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と結合しうるアミノ酸配列、及び、
4)上記1)または2)のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、前記融合タンパク質が前記式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と結合しうるアミノ酸配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列であるのが好ましい。なお、配列表の配列番号1〜17で表されるアミノ酸配列は、15種の紅色細菌(purple bacteria)に存在するPYPのアミノ酸配列である。また、これらの紅色細菌のPYPは、文献[Kumauchi et al. Photochemistry and Photobiology, 2008, 84:956-969]によれば、N末端の24〜27番目のアミノ酸配列を欠失させてもリガンド結合能を示すことが知られている。なお、当業者であれば、同文献図2(a)のマルチプルアライメントを参照してN末端の欠失可能部位を容易に判断できる。
【0051】
標識対象タンパク質とPYPまたはPYP由来タンパク質との融合タンパク質は、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得ること、融合タンパク質を発現可能なプラスミド若しくはベクターを得ること、細胞内で融合タンパク質を発現させること、又は、発現した融合タンパク質を単離することの1以上の工程を含む方法、または全ての工程を含む方法により得ることができる。すなわち、融合タンパク質を得ることは、該タンパク質を単離することのみならず、細胞内や生体内で発現させることを含む。
【0052】
本発明のタンパク質を二段階標識する方法は、式(I)の化合物中のZ1基がビオチンである場合、さらに蛍光を発する官能基とビオチンに結合する部位(例えばアビジン)の両方を有する化合物と反応させる工程を含んでもよい。この反応の結果、融合タンパク質は蛍光を発する官能基に由来する蛍光を発し、従って、融合タンパク質を標識することができる。また、さらに酵素とビオチンに結合する部位(例えばアビジン)との両方を有する化合物と反応させる工程を含んでもよい。この場合、その酵素の作用により蛍光を発する基質と反応させ、蛍光量から酵素を検出する工程をさらに含む。そしてその酵素に基づき、酵素が結合された融合タンパク質、すなわち、標識対象タンパク質を標識することができる。このような酵素としては、例えば、ELISA法において一般に用いられる酵素が挙げられる。
【0053】
本発明は、また、前記式(I)で表わされる化合物またはその塩と、式(II)で表わされる化合物またはその塩とを含む本発明の方法に用いるための組成物である。
【0054】
【化9】

【0055】
前記式(I)中、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
1は、低級アルキル基、ハロゲン置換された低級アルキル基、アリール基、ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基、低級アラルキル基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基であり、
2は、クマリン骨格を有する式(A)で表わされる基またはベンゼン骨格を有する式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1は、Z2と反応性の基であり、
1は、Z1のためのリンカーであり、
3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基またはハロゲン置換された低級アルキル基であり、
5は、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、低級アルコキシ基であり、
【0056】
【化10】

【0057】
は、二重結合または三重結合を意味する。
前記式(II)中、
1は、蛍光性基またはビオチン由来の基であり、
2は、Z2のためのリンカーであり、
2は、Z1と反応性の基である。
【0058】
本発明は、また、本発明の方法に用いるためのプラスミドまたはベクターであって、
前記プラスミドまたはベクターは、標識対象タンパク質とPYPまたはPYP由来タンパク質との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをクローニングするため又は前記融合タンパク質を発現させるためのプラスミド又はベクターであり、
前記プラスミド又はベクターは、
1)配列表の配列番号18〜29で表される塩基配列、
2)配列表の配列番号18〜29で表される塩基配列において、前記塩基配列がコードするアミノ酸配列のN末端の第1番目から第24、25、26、または27番目までの欠失に相当する塩基配列が欠失した塩基配列、
3)上記1)または2)の塩基配列の1〜数個の塩基が欠失、置換、又は付加された塩基配列であって、前記融合タンパク質が下記式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と結合しうるアミノ酸配列をコードする塩基配列、及び、
4)上記1)または2)の塩基配列と70%以上の相同性を有する塩基配列であって、前記融合タンパク質が下記式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と結合しうるアミノ酸配列をコードする塩基配列、からなる群から選択される塩基配列を含む。なお、配列表の配列番号18〜29で表される塩基配列は、それぞれ、配列表の配列番号1〜12で表されるPYPのアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記2)の塩基配列における5’側塩基配列の欠失については、上述のとおりである。
【0059】
また、本発明は、前記式(I)で表わされる化合物またはその塩と前記式(II)で表わされる化合物またはその塩とを含む本発明の方法に用いるための組成物と、本発明の方法に用いるためのプラスミドまたはベクターとを含むタンパク質の二段階標識方法用キットである。
【0060】
本発明のタンパク質の二段階標識方法用キットは、さらに、前記プラスミド又はベクターを導入するための宿主細胞、キットの取り扱い説明書を含むのが好ましい。
【0061】
本発明の方法、組成物、およびキットにおいて、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
1は、低級アルキル基、ハロゲン置換された低級アルキル基、アリール基、ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基、低級アラルキル基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基であり、
2は、クマリン骨格を有する式(A)で表わされる基またはベンゼン骨格を有する式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1は、−N3基、−C≡CH基または−CHO基であり、
1は、Z1のためのリンカーであり、
3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基またはハロゲン置換された低級アルキル基であり、
5は、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、低級アルコキシ基であり、
【0062】
【化11】

【0063】
が、二重結合を意味する式(I)の化合物またはその塩が好ましい。
【0064】
また、本発明の方法、組成物、およびキットにおいて、
Yが、硫黄原子であり、
1が、アリール基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基であり、
2が、式(A)または式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1が、式(a)または式(b)で表わされる基であり、
1が、−N3基または−C≡CH基であり、
3およびR4が、水素原子であり、
5が、ヒドロキシであり、
【0065】
【化12】

【0066】
が、二重結合を意味し、
ここで式(a)において、
n1、n2、n3、n4、n5およびn6は、それぞれ独立して、0または1〜5の整数であり、
式(b)において、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0または1〜5の整数であり、
11は、水素原子または低級アルキル基である式(I)で表わされる化合物またはその塩がさらに好ましい。
【0067】
【化13】

【0068】
また、本発明の方法、組成物、およびキットにおいて、
2が−N3基、−C≡CH基、−ONH2基または−CONHNH2基であり、L2が−(CH2n1NR11CO(CH2n2−であり、X1が式(i)の基である式(II)の化合物またはその塩が好ましい。前記式中、n1およびn2はそれぞれ独立して、0または1〜5の整数であり、R11は、水素原子または低級アルキル基である。
【0069】
【化14】

【0070】
また、本発明の方法、組成物、およびキットにおいて、式(II)の化合物としては、以下の式で表わされる化合物6−CFAがより好ましい。
【0071】
【化15】

【0072】
また、本発明は、一般式(I)で表わされる化合物またはその塩である。
【0073】
【化16】

【0074】
前記式(I)中、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
1は、低級アルキル基、ハロゲン置換された低級アルキル基、アリール基、ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基、低級アラルキル基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基であり、
2は、クマリン骨格を有する式(A)で表わされる基またはベンゼン骨格を有する式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1は、−N3基、−C≡CH基または−CHO基であり、
1は、Z1のためのリンカーであり、
3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、またはハロゲン置換された低級アルキル基であり、
5は、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、低級アルコキシ基であり、
【0075】
【化17】

【0076】
は、二重結合または三重結合を意味する。
【0077】
前記式(I)中、
Yが、硫黄原子であり、
1が、アリール基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基であり、
2が、式(A)または式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1が、式(a)または式(b)で表わされる基であり、
1が、−N3基または−C≡CH基であり、
3およびR4が、水素原子であり、
5が、ヒドロキシであり、
【0078】
【化18】

【0079】
が、二重結合を意味し、
ここで式(a)において、
n1、n2、n3、n4、n5およびn6は、それぞれ独立して、0または1〜5の整数であり、
式(b)において、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0または1〜5の整数であり、
11は、水素原子または低級アルキル基であるのが好ましい。
【0080】
【化19】

【0081】
また、式(II)の化合物としては、以下の式で表わされる化合物6−CFAがより好ましい。これらの好ましい式(I)の化合物および式(II)の化合物は、本発明におけるタンパク質を二段階標識する方法、組成物等においても好ましく用いられる。
【0082】
【化20】

【0083】
式(I)の化合物は、例えば、下記スキーム3に従い、製造することができる。なお、出発原料は従来技術における公知文献を参考に自家製造してもよいし、購入してもよい。
【0084】
【化21】

【0085】
前記式中、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
1は、低級アルキル基、ハロゲン置換された低級アルキル基、アリール基、ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基、低級アラルキル基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基であり、
2は、クマリン骨格を有する式(A)で表わされる基またはベンゼン骨格を有する式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1は、Z2と反応性の基であり、
1は、Z1のためのリンカーであり、
3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基またはハロゲン置換された低級アルキル基であり、
5は、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、低級アルコキシ基であり、
【0086】
【化22】

【0087】
は、二重結合または三重結合を意味する。
【0088】
本発明は、さらに、本発明のタンパク質を二段階標識する方法により標的対象タンパク質を標識することを含むバイオイメージング方法を提供しうる。本発明のバイオイメージング方法は、好ましくは、前記標的対象タンパク質を発現する細胞又は組織のイメージングを含む。前記細胞又は組織としては、特に制限されないが、好ましくは、動物の細胞又は組織であって、より好ましくは哺乳類の細胞又は組織であって、さらに好ましくは霊長類の細胞又は組織であって、さらにより好ましくはヒトの細胞又は組織である。
【0089】
[実施例]
本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
DMSO:ジメチルスルホキシド
HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
DMF:ジメチルホルムアミド
WSCD・HCl:水溶性カルボジイミド:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
MOMCl:メトキシメチルクロライド
DIEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン
NBS:N−ブロモスクシンイミド
AIBN:アゾビスブチロニトリル
TFA:トリフルオロ酢酸
TCEP:トリス[2−カルボキシエチル]ホスフィン
SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
CBB:クマシーブリリアントブルー
DTT:ジチオトレイトール。
【0090】
[化合物および機器]
化合物は、入手できる最も高いグレードのものであり、東京化成工業株式会社、和光純薬工業株式会社、およびシグマ−アルドリッチジャパン株式会社から購入して、さらなる精製を行わずに用いた。
【0091】
NMRスペクトルは、1H用には400MHzで、13NMR用には100.4MHzで、テトラメチルシランを内部標準として用い、JEOL JNM−AL400装置(日本電子株式会社)で測定した。質量スペクトル(EI)は、CBP1−M25−025カラムを備えたShimazu GCMS−QP2000(株式会社島津製作所)で電子衝撃モード(70eV)で操作して測定した。高分解能質量分析(HRMS)は、JEOL JMS−DX303(日本電子株式会社)測定した。ESI−TOF MSは、Waters LCT−Premier XE(日本ウォーターズ株式会社)で測定した。蛍光スペクトルは、日立分光蛍光光度計F−4500(株式会社日立製作所)を用いて測定した。スリット幅は励起および放射の両方について2.5nmであった。光電子増倍管電圧は700Vであった。蛍光測定前にサンプルはDMSO(生化学用グレード、和光純薬工業株式会社)に溶解させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、BW−300(富士シリシア化学株式会社)を用いて行った。蛍光イメージングは、AE−6935B VISIRAYS−Bを用いて視覚化した。
【実施例1】
【0092】
化合物CATPの製造
下記化合物CATPを下記スキーム4に従い製造した。
【0093】
【化23】

【0094】
スキーム4において:(a)マロン酸ジエチル、ピペリジン/EtOH、(b)MOMCl、DIEA/DMF、(c)NBS、AIBN/CCl4、(d)1. 2−[2−(2−アジドエトキシ)エトキシ]エタノール、NaH/DMF;2. 2N NaOH水溶液;3. TFA、(e) チオフェノール、WSCD・HCl、HOBt・H2O/DMF。
【0095】
7−ヒドロキシ−5−メチルクマリン−3−カルボン酸エチルエステル(1)の製造
2,4−ジヒドロキシ−6−メチルベンズアルデヒド(2.0g)、マロン酸ジエチル(2.2ml,14.4mmol)およびピペリジン(0.35ml)をエタノール(20ml)に溶解させ、100℃で23時間攪拌した。混合物を冷却後、生じた結晶をろ過して単離し、冷エタノール(−20℃)で洗浄して標題化合物を得た(2.02g,収率62%)。
【0096】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.41 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 2.54 (s, 3H), 4.41 (q, J =7.2 Hz, 2H), 6.71 (d, J =7.2 Hz, 1H) 6.76 (d, 1H), 8.71 (s, 1H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3): δ 14.1, 17.9, 60.8, 99.9, 109.3, 110.9, 115.2, 140.6, 146.0, 156.4, 157.9, 163.3, 164.2;
HRMS(EI+) : 計算値248.06、測定値248.06。
【0097】
7−(メトキシメトキシ)−5−メチルクマリン−3−カルボン酸エチルエステル(2)の製造
7−ヒドロキシ−5−メチルクマリン−3−カルボン酸エチルエステル(1)(0.20g,0.7mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.40ml,1.8mmol)およびクロロメチルメチルエーテル(0.015ml,1.8mmol)をDMF中に溶解させ、0℃で2時間攪拌した。溶媒を混合物から除去した後、得られた残渣を10%クエン酸水溶液(30mL)に溶解させ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を減圧留去して標題化合物を得た(0.186mg,収率79%)。
【0098】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3); δ 1.41 (t, J = 7.2 Hz, 3H) 2.55 (s, 1H) 3.49 (s, 3H) 4.42 (q, J =7.2 Hz, 2H) 5.23 (s, 2H) 6.82 (d, J =6.0 Hz, 1H) 6.85 (d, J =6.0 Hz,1H) 8.69 (s, 1H) ;
13C-NMR(100 MHz, CDCl3): δ 14.3, 18.5, 56.5, 61.7, 94.2, 101.2, 111.7, 113.8, 115.3, 139.8, 145.9, 157.1, 157.9, 162.1, 163.8;
HRMS(EI+) : 計算値292.09, 測定値 292.09。
【0099】
5−ブロモメチル−7−(メトキシメトキシ)クマリン−3−カルボン酸エチルエステル(3)の製造
7−(メトキシメトキシ)−5−メチルクマリン−3−カルボン酸エチルエステル(2)(0.5g,1.3mmol)、NBS(0.365g,2.1mmol)およびAIBN(0.04g,0.24mmol)をCCl4(15ml)に溶解させ、95度で7時間攪拌した。溶媒を混合物から除去した後、得られた残渣をジクロロメタン/酢酸エチル(97/3)で溶出してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物を得た(0.327g,収率52%)。
【0100】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3); δ 1.42 (t, J = 7.2 Hz, 3H) 3. 50 (s, 3H) 4.42 (q, J =7.2 Hz, 2H) 4.65 (s, 1H) 5.27 (s, 2H) 6.98 (d, J =6.0 Hz, 1H) 7.01 (d, J =6.0 Hz,1H) 8.77 (s, 1H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3): δ 14.3, 27.9, 56.7, 62.0, 94.5, 103.7, 110.7, 114.8, 115.7, 138.1, 144.5, 156.4, 157.9, 161.7, 163.3;
HRMS(EI+) : 計算値 370.01, 測定値 370.00。
【0101】
5−((2−(2−(2−アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)−7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸(4)の製造
2−[2−(2−アジドエトキシ)エトキシ]エタノール(0.233g,1.3mmol)および 水素化ナトリウム(0.038g,1.6mmol)をDMF(5ml)中に溶解させ、室温で15分間攪拌した。5−ブロモメチル−7−(メトキシメトキシ)クマリン−3−カルボン酸エチルエステル(3)をその混合物へ加え、得られた混合物を室温で1.5時間攪拌した。その後、NaOH水溶液(2N、3ml)をその混合物へ添加した。20分後、その混合物を飽和クエン酸水溶液で中和し、ジクロロメタンで中和した。溶媒を除去した後、得られた残渣をTFA(10ml)中に溶解させ、室温で1時間攪拌した。溶媒を除去した後、0.1%ギ酸を含有するH2O/アセトニトリルで溶出する逆相HPLCで得られた残渣を精製し、標題化合物を得た(21mg,収率8%)。
【0102】
1H-NMR(400 MHz, CDCl3): δ 3.21 (s, 2H) 3.53-3.61 (m, 10H) 6.61 (s,1H) 6.82 (s,1H) 8.86 (s,1H);
MS(ESI+) : 計算値 394.35, 測定値 394.11。
【0103】
化合物CATPの製造
5−((2−(2−(2−アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)メチル)−7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸(4)(15.5mg,0.039mmol)、WSCD・HCl(9.6mg,0.047mmol)およびHOBt・H2O(7.3mg,0.047mmol)をDMF(2ml)に溶解させ、室温で1時間攪拌した。その後、チオフェノール(0.0039ml,0.039mmol)をその混合物に添加し、1時間攪拌した。溶媒を除去した後、得られた残渣をジクロロメタン/メタノール(98/2)で溶出してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物を得た(17mg,89%)。
【0104】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 3.37 (t, J = 4.8 Hz, 2H) 3.60-3.75 (m, 10H) 4.73 (s, 2H) 6.71 (d, J =2.0 Hz, 1H) 7.01 (d, J =2.0 Hz, 1H) 7.46 (m, 5H) 8.68 (s, 1H);
13C-NMR(100 MHz, CDCl3): δ 50.5, 69.6, 69.8, 70.1, 70.2, 70.6, 77.0, 70.6, 102.4, 109.6, 114.5, 117.6, 128.3, 129.1, 129.5, 134.9, 140.5, 158.1, 159.2, 163.4, 187.2;
HRMS (FAB+) 計算値 486.14, 測定値 486.13。
【0105】
[PYPのクローニング]
プラスミド(PYPのHisタグ融合タンパク質のDNAをコード)を鋳型として、下記に示すプライマーを用いてPCR(PrimeSTAR HS DNA Polymerase, タカラバイオ社)によってHis−PYPのDNAを増幅した。前記プラスミドは、アムステルダム大学のK. J. Hellingwerf教授から提供を受けた。前記PYPは、Ectothiorhodospira halophila(Halorhodospira halophila)由来である。PCR断片(インサート)は、2.0%アガロースゲルによる分離後、キット(QIA quick Gel Extraction kit, QIAGEN)を用いて抽出した。大腸菌発現用ベクターであるpET−21b(+)とインサートをHindlIIIとNdeI(それぞれタカラバイオ社)で制限酵素処理し、T4−DNAリガーゼを用いてpET−21b(+)にインサートを組み込み、pET−PYPを作成した。
【0106】
【化24】

【0107】
[PYPの発現・精製]
pET−PYPを大腸菌(BL21(DE3))に形質転換後、LB培地にて培養し、OD600が0.6〜0.8Åになるまで37℃で増殖させた。次に、IPTGを終濃度100μMになるように加え、20℃で一晩培養した。培養した大腸菌を集菌し、超音波破砕した後に可溶性画分を抽出した。可溶性画分のPYPは、下記に示す緩衝液を用いて、QIAGEN社のプロトコールに従い、Ni−NTAカラム(Ni-NTAアガロース、QIAGEN社)により精製した。その後、トリス緩衝液(20 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 1 mM TCEP, pH 8.0)を移動相として、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー(SuperdexTM 75 10/300 GL, GEヘルスケア社)により最終精製した。
【0108】
Ni−NTAカラムの条件:
結合液:リン酸緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、10mMイミダゾール、pH8.0)
洗浄液:リン酸緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、20mMイミダゾール、pH8.0)
溶出液:リン酸緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、50mMイミダゾール、pH8.0)。
【0109】
[PYPのエンテロキナーゼ処理]
HisタグとPYPの間には、プロテアーゼであるエンテロキナーゼにより切断される配列が組み込まれている。Hisタグを除去するために、精製したPYPにエンテロキナーゼ(Recombinant Enterokinase, Novagen社)を加え、室温で18時間静置した。静置後、Ni−NTAカラム(Ni−NTAアガロース、QIAGEN社)に試料を添加しHisタグ部位を吸着させることにより、切断後のPYPを精製した。Hisタグ部位を除去した試料をベンズアミジンカラム(HiTrap Benzamidine FF, GEヘルスケア)に添加し、プロテアーゼを除去した。精製した試料は限外濾過(VIVASPIN 500, 5000 MWCO PES, sartorius stedim社)によりトリス緩衝液(20 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 1 mM TCEP, pH 8.0)に置換した。
【0110】
[PYPと化合物CATPの反応]
トリス緩衝液(20mM Tris−HCl、150mM NaCl、1mM TCEP(pH8.0))中、5μMのPYPと50μMの化合物CATPを37℃で24時間反応させた。反応終了後、SDS−PAGE(20%アクリルアミド分離ゲル)により結果を解析した。その結果得られたCBB染色画像を図1(a)に、蛍光画像を図1(b)に示す。図1(a)から、PYPのバンド(14kDa)が確認され、図1(b)から蛍光画像においても、化合物CATPの添加に伴い、その対応する位置に蛍光が確認された。これらのことから、化合物CATPによりPYPを蛍光標識できることが確認された。また、DTT(100mM)の添加により、化合物CATPにより標識されたPYPのバンドが減少し、蛍光強度も消失したことから、PYPと化合物CATPのチオエステル結合が、大過剰のDTTにより加水分解されたことが確認できた。なお、化合物CATP中のクマリン骨格は、それ自体蛍光を発する。
【0111】
[緩衝液中でPYPを化合物CATPと化合物6−CFAで二段階標識]
トリス緩衝液(20mM Tris−HCl、150mM NaCl、1mM TCEP(pH8.0))中、5μMのPYPと12.5μMの化合物CATPを37℃で30分間反応させた後、150μMの化合物6−CFA(6−カルボキシフルオレセインプロパラギルアミン、引用文献(J. Juら J. Org. Chem. 2003年, 第68巻, pp609-612に従い製造)を加え、CuSO4(8.3mM)およびTCEP(8.3mM)存在下、室温で1時間反応させた。反応終了後SDS−PAGE(20%アクリルアミド分離ゲル)により解析した。その結果得られたCBB染色画像を図2(a)に、蛍光画像を図2(b)に示す。図2(a)および図2(b)に示すように、化合物6−CFAとの添加に伴い、PYP(14kDa)より移動の遅いバンドがCBB染色画像に確認できた。そしてそのバンドに対応する位置に蛍光が確認できた。これらのことから、PYPと化合物CATPが反応し、その後化合物6−CFAと反応してPYPを特異的に二段階標識できることが確認された。
【0112】
[細胞溶解液中でPYPを化合物CATPと化合物6−CFAで二段階標識]
トリス緩衝液(20mM Tris−HCl、150mM NaCl、1mM TCEP(pH8.0))に溶かしたHEK293T細胞溶解液において、5μMのPYPと12.5μMの化合物CATPを37℃で30分間反応させた後、150μMの化合物6−CFA(6−カルボキシフルオレセインプロパラギルアミン)を加え、CuSO4(8.3mM)およびTCEP(8.3mM)存在下、室温で1時間反応させた。反応終了後SDS−PAGE(20%アクリルアミド分離ゲル)により解析した。その結果得られたCBB染色画像を図3(a)に、蛍光画像を図3(b)に示す。図3(a)および図3(b)に示すように、化合物CATPとPYP(14kDa)を反応させたレーンにおいて、単一の蛍光バンドが確認された。さらに、化合物6−CFAによる二段階標識後、PYP(14kDa)より移動の遅い蛍光バンドが検出された。このことから、細胞溶解液中において化合物CATPはPYPを特異的に標識でき、さらに、化合物6−CFAによる二段階標識が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明のタンパク質を二段階標識する方法は、細胞イメージング等に適用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0114】
配列番号30:フォワードプライマー
配列番号31:リバースプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を二段階標識する方法であって、
標識対象タンパク質とPYP(Photoactive Yellow Protein)またはPYP由来タンパク質との融合タンパク質を得ること、および
前記融合タンパク質と下記式(I)で表わされる化合物またはその塩とを反応させ、前記式(I)で表わされる化合物またはその塩の式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と前記融合タンパク質に含まれるPYPまたはPYP由来タンパク質とを結合させ、次いで、得られたPYPまたはPYP由来タンパク質が結合された前記式(I)で表わされる化合物に、下記式(II)で表わされる化合物またはその塩を反応させることにより、前記式(I)で表わされる化合物またはその塩のZ1基と前記式(II)で表わされる化合物またはその塩のZ2基とをカップリングさせ、その結果、前記対象タンパク質をX1で標識することを含むタンパク質を二段階標識する方法。
【化25】

前記式(I)中、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
1は、低級アルキル基、ハロゲン置換された低級アルキル基、アリール基、ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基、低級アラルキル基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基であり、
2は、クマリン骨格を有する式(A)で表わされる基またはベンゼン骨格を有する式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1は、Z2と反応性の基であり、
1は、Z1のためのリンカーであり、
3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基またはハロゲン置換された低級アルキル基であり、
5は、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、低級アルコキシ基であり、
【化26】

は、二重結合または三重結合を意味する。
前記式(II)中、
1は、蛍光性基またはビオチン由来の基であり、
2は、Z2のためのリンカーであり、
2は、Z1と反応性の基である。
【請求項2】
前記融合タンパク質における前記PYPまたはPYP由来タンパク質のアミノ酸配列が、
1)配列表の配列番号1〜17で表されるアミノ酸配列、
2)配列表の配列番号1〜17で表されるアミノ酸配列において、第1番目から第24、25、26、または27番目までが欠失したアミノ酸配列、
3)上記1)または2)のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列の1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されたアミノ酸配列であって、前記融合タンパク質が前記式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と結合しうるアミノ酸配列、及び、
4)上記1)または2)のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、前記融合タンパク質が前記式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と結合しうるアミノ酸配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列である、請求項1記載のタンパク質を二段階標識する方法。
【請求項3】
前記融合タンパク質を得ることが、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得ること、前記融合タンパク質を発現可能なプラスミド若しくはベクターを得ること、細胞内で前記融合タンパク質を発現させること、又は、発現した前記融合タンパク質を単離することを含む、請求項1又は2記載のタンパク質を二段階標識する方法。
【請求項4】
式(I)で表わされる化合物またはその塩と、式(II)で表わされる化合物またはその塩とを含む請求項1〜3のいずれかの方法に用いるための組成物。
【化27】

前記式(I)中、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
1は、低級アルキル基、ハロゲン置換された低級アルキル基、アリール基、ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基、低級アラルキル基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基であり、
2は、クマリン骨格を有する式(A)で表わされる基またはベンゼン骨格を有する式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1は、Z2と反応性の基であり、
1は、Z1のためのリンカーであり、
3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、またはハロゲン置換された低級アルキル基であり、
5は、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、低級アルコキシ基であり、
【化28】

は、二重結合または三重結合を意味する。
前記式(II)中、
1は、蛍光性基またはビオチン由来の基であり、
2は、Z2のためのリンカーであり、
2は、Z1と反応性の基である。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの方法に用いるためのプラスミドまたはベクターであって、
前記プラスミドまたはベクターは、標識対象タンパク質とPYPまたはPYP由来タンパク質との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをクローニングするため又は前記融合タンパク質を発現させるためのプラスミド又はベクターであり、
前記プラスミド又はベクターは、
1)配列表の配列番号18〜29で表される塩基配列、
2)配列表の配列番号18〜29で表される塩基配列において、前記塩基配列がコードするアミノ酸配列のN末端の第1番目から第24、25、26、または27番目までの欠失に相当する塩基配列が欠失した塩基配列、
3)上記1)または2)の塩基配列の1〜数個の塩基が欠失、置換、又は付加された塩基配列であって、前記融合タンパク質が下記式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と結合しうるアミノ酸配列をコードする塩基配列、及び、
4)上記1)または2)の塩基配列と70%以上の相同性を有する塩基配列であって、前記融合タンパク質が前記式(A)中のクマリン骨格または式(B)中のベンゼン骨格と結合しうるアミノ酸配列をコードする塩基配列、からなる群から選択される塩基配列を含むプラスミドまたはベクター。
【化29】

前記式(I)中、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
1は、低級アルキル基、ハロゲン置換された低級アルキル基、アリール基、ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基、低級アラルキル基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基であり、
2は、クマリン骨格を有する式(A)で表わされる基またはベンゼン骨格を有する式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1は、Z2と反応性の基であり、
1は、Z1のためのリンカーであり、
3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、またはハロゲン置換された低級アルキル基であり、
5は、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、低級アルコキシ基であり、
【化30】

は、二重結合または三重結合を意味する。
前記式(II)中、
1は、蛍光性基またはビオチン由来の基であり、
2は、Z2のためのリンカーであり、
2は、Z1と反応性の基である。
【請求項6】
請求項4に記載の組成物と、請求項5に記載のプラスミドまたはベクターとを含むタンパク質を二段階標識する方法用キット。
【請求項7】
一般式(I)で表わされる化合物またはその塩。
【化31】

前記式(I)中、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
1は、低級アルキル基、ハロゲン置換された低級アルキル基、アリール基、ヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基、低級アラルキル基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換された低級アラルキル基であり、
2は、クマリン骨格を有する式(A)で表わされる基またはベンゼン骨格を有する式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1は、−N3基、−C≡CH基または−CHO基であり、
1は、Z1のためのリンカーであり、
3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、またはハロゲン置換された低級アルキル基であり、
5は、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルでモノまたはジ置換されたアミノ基、低級アルコキシ基であり、
【化32】

は、二重結合または三重結合を意味する。
【請求項8】
Yが、硫黄原子であり、
1が、アリール基またはヒドロキシ、ハロゲンおよび低級アルコキシからなる群から選択される1以上で置換されたアリール基であり、
2が、式(A)または式(B)で表わされる基であり、
ここで、式(A)および式(B)において、
1が、式(a)または式(b)で表わされる基であり、
1が、−N3基または−C≡CH基であり、
3およびR4が、水素原子であり、
5が、ヒドロキシであり、
【化33】

が、二重結合を意味し、
ここで式(a)において、
n1、n2、n3、n4、n5およびn6は、それぞれ独立して、0または1〜5の整数であり、
式(b)において、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0または1〜5の整数であり、
11は、水素原子または低級アルキル基である。
【化34】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−207134(P2010−207134A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56306(P2009−56306)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、科学技術総合研究委託事業「科学技術連携施策群の効果的・効率的な推進 生体内分子を可視化するナノセンサ分子開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】