説明

タンパク質ナノ粒子を含む染毛剤組成物

【課題】安全性が高く、粒子径が小さいことにより透明性が高く、且つ、良好な頭皮及び毛包への浸透性を示すタンパク質ナノ粒子を含む染毛剤組成物を提供すること。
【解決手段】(a)1種以上の染毛剤又はその構成成分、並びに(b)平均粒子サイズが10〜200nmのタンパク質ナノ粒子、を含有する染毛剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質ナノ粒子を含む染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化が進んできた現代に於いて、高齢者が社会に進出する度合いは非常に増大している。このため、化粧料の分野に於いても、染毛料等の高齢者向け製品の需要が著しい伸びを見せている。
【0003】
毛髪を染色するための染毛剤は、「一時染毛剤」、「半永久染毛剤」、並びに「永久染毛剤」が汎用されている。特に「永久染毛剤」は汎用性が特に高く、この中でも酸化染料前駆体(単に、酸化染料と称する場合もある)に酸化剤を作用させて発色を行う「酸化染毛剤」は、パラフェニレンジアミンなどの酸化染料前駆体を用いた酸化染毛剤が染毛力や堅牢性に優れ、色調が多彩であることから広く用いられてきている。これら酸化染毛剤は、主にアルカリ性条件下で毛髪を膨潤させ、キューティクルを開いて種々の酸化染料前駆体を毛髪内部に浸透させ、過酸化水素などの酸化剤を用いることにより酸化重合させて発色させるのであるが、その染料の組み合わせや配合比率により重合の度合いが異なり、重合体の色も変化する。そのため様々な色調を得ることができる。このように重合度が異なるため、毛髪内部には様々な大きさの色素が生じることになる。一般に、重合して大きくなった色素分子は、染料が重合する前に毛髪内に浸透する際に通過したキューティクル間の隙間より大きくなり、毛髪内部より流出しなくなるため、酸化染毛剤は色持ちがよいとされている。
【0004】
しかし、実際には次第に毛髪の色が変化し、あるいははげ落ちていく。この原因として日光の紫外線やドライヤーの熱などの他に、シャンプーの度に徐々に色素が流出することが挙げられる。また、汗などで髪が濡れると色素が流れ出て、衣服の襟周りを汚すといった課題があった。また、色持ちをよくするシャンプーなどが染毛剤用として開発されているが、充分な効果は未だ得られていない。
【0005】
一方、「半永久染毛剤」の品質について種々の要求がなされるようになっている。その中で、特にその要望が高く、且つ、技術的に解決が難しいとされてきたことの一つが、染毛料による毛髪の損傷と、均一な染毛、およびその堅牢性である。毛髪の損傷の防止、均一な染毛とその堅牢性の具現のための努力は、これまでは染毛素材の開発にのみ注力されており、剤形的な工夫による改善は為されていなかった。
【0006】
この様な不均一の改善策としては、例えば、均一な染毛であれば、系の粘度を上げて付着性を向上させる方法や界面活性剤の量を増やすことにより、毛髪の表面の濡れ特性を向上させる方法などが開発され、染色に於いては、ベンジルアルコールなどの浸透促進剤を用いて染色剤の毛髪内への浸透を促進する手段が開発されている。しかしながら、系の粘度を上げる手段は使用性を損なう場合があり、界面活性剤の増量は安全性上好ましくない場合があり、浸透促進剤であるベンジルアルコールは安全性上或いは環境科学上問題を指摘される場合があり、その含有量は、減量する必要が指摘されているものであった。
【0007】
一方、タンパク質ナノ粒子は薬剤送達システム(DDS)の分野で注目される材料であり、化粧品への適用も提案されている(特許文献1)が、毛髪への適用例及び染毛の堅牢性に対しての効果はこれまで知られていない。
【0008】
【特許文献1】WO2007/114262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、洗髪に対する染毛の堅牢性を向上し、毛髪の損傷がないか、あるいは極めて少なく、かつ均一な染毛を可能とする染毛剤組成物を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、染毛剤又はその構成成分にタンパク質ナノ粒子を配合することによって、洗髪に対する染毛の堅牢性を向上し、毛髪の損傷がないか、あるいは極めて少なく、かつ均一な染毛を可能とする染毛剤組成物を提供できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0011】
即ち、本発明によれば、(a)1種以上の染毛剤又はその構成成分、並びに(b)平均粒子サイズが10〜200nmのタンパク質ナノ粒子、を含有する染毛剤組成物が提供される。
【0012】
好ましくは、染毛剤は、染料である。
好ましくは、染毛剤は、酸化染毛剤である。
好ましくは、酸化染毛剤は、酸化染料前駆体と酸化剤との組み合わせである。
好ましくは、タンパク質ナノ粒子の含有量は、組成物の重量に対して0.01〜50重量%である。
【0013】
好ましくは、タンパク質はコラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0014】
好ましくは、本発明の染毛剤組成物は、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%の頭髪有効成分をさらに含有する。
好ましくは、頭髪有効成分は、芳香剤、抗菌剤、柔軟剤、保湿剤、紫外線吸収剤、活性酸素除去剤、抗酸化剤、育毛剤、アミノ酸類、ミネラル、又は抗微生物剤である。
好ましくは、頭髪有効成分は、イオン性物質または脂溶性物質である。
【0015】
好ましくは、本発明の染毛剤組成物のエタノール含有量は20重量%以下である。
好ましくは、ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質が架橋処理されている。
好ましくは、酵素を用いて架橋処理を行う。
【0016】
好ましくは、本発明の染毛剤組成物は、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を含む。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を pH3.5〜7.5の酸性水性媒体に注入する工程:
【0017】
好ましくは、本発明の染毛剤組成物は、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を含む。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH を等電点からpH1以上離れたpHまで下降させる工程:
【0018】
さらに本発明によれば、上記した本発明の染毛剤組成物を毛髪に塗布する工程を含む、毛髪の染毛方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の染毛剤組成物におけるタンパク質ナノ粒子はナノサイズであるため、毛髪との親和性が高いため、洗髪に対する染毛の堅牢性が向上し、毛髪の損傷がないか、あるいは極めて少なく、かつ均一な染毛が可能である。また、本発明においては、天然のタンパク質ナノ粒子を用いるため、安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。
本発明の染毛剤組成物は、(a)1種以上の染毛剤又はその構成成分、並びに(b)平均粒子サイズが10〜200nmのタンパク質ナノ粒子、を含有することを特徴とする。本発明の染毛剤組成物は、好ましくは、組成物の重量に対して0.01〜50重量%のタンパク質ナノ粒子を含有し、より好ましくは0.1〜10重量%のタンパク質ナノ粒子を含有し、より好ましくは、0.5〜5重量%のタンパク質ナノ粒子を含有し、特に好ましくは、1〜3重量%のタンパク質ナノ粒子を含有する。
【0021】
本発明のカゼインナノ粒子の平均粒子サイズは、通常は10〜200nmであり、好ましくは10〜100nmであり、より好ましくは10〜50nmであり、特に好ましくは15〜30nmである。
【0022】
本発明で用いる染毛剤としては、一時染毛剤、半永久染毛剤、又は永久染毛剤の何れでもよい。一時染毛剤および半永久染毛剤としては、直接、染料が配合でき、タール系色素や天然色素などの公知のものを1種または2種以上併用できる。その中でも、ニトロ系染料、アゾ染料、ニトロソ染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キノリン染料、アントラキノン染料またはインジゴ染料が、良好な染毛効果を得られ好ましく、また、さらに好ましくは、橙205号、黒401号、紫401号、赤102号、赤227号、赤106号、赤504号、黄203号、黄403(1)、緑204号、カーボンブラック、黒酸化チタン、ヘナ、酸化鉄、タール色素、クロロフィル、顔料などが挙げられる。
【0023】
永久染毛剤としては、酸化染毛剤を用いることができる。酸化染毛剤は、通常、酸化染料前駆体を含む第1剤と,酸化剤を含む第2剤とからなる2剤形式の形態を採るが、本発明においては、タンパク質ナノ粒子は、これら2剤形式の酸化染毛剤の構成単位のうちの何れ(即ち、第1剤、又は第2剤の何れかまたはその両方)に配合してもよい。なお、本明細書で言う「染毛剤又はその構成成分」における「その構成成分」とは、例えば、上記の通り染毛剤が2剤形式である場合における第1剤又は第2剤のことを意味する。また、1剤形式の酸化染毛剤に、本発明を適用することもできる。
【0024】
即ち、本発明の酸化染毛剤用組成物は、2剤型の酸化染毛剤の第1剤にタンパク質ナノ粒子を配合した形態,第2剤にタンパク質ナノ粒子を配合した形態,第1剤及び第2剤にタンパク質ナノ粒子を配合した形態、又は1剤型の酸化染毛剤にタンパク質ナノ粒子を配合した形態のいずれの形態をも採り得る。なお、本発明の酸化染毛剤用組成物には、上記必須成分の他に通常、酸化染毛剤中に配合される他の成分を、本発明の所期の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0025】
例えば2剤型の酸化染毛剤において、第1剤中に配合される酸化染料前駆体としては、フェニレンジアミン類,アミノフェノール類,トルイレンジアミン類,アミノニトロフェノール類,ジアミノピリジン類又はこれらの塩類等を挙げることができる。
【0026】
本発明の染毛剤組成物におけるこれらの酸化染料前駆体の配合量は、通常、組成物全体に対して0.01重量%以上10.0重量%以下程度である。またカップラーとして、例えばレゾルシン,メタアミノフェノール,メタフェニレンジアミン等を対応する酸化染料前駆体と共に配合することもできる。
【0027】
さらに第1剤中には、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル塩,ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸アミド等の界面活性剤;グリセリン,プロピレングリコール等の保湿剤;ラノリン,流動パラフィン等の油性成分;亜硫酸塩,アスコルビン酸等の安定剤;カルボキシメチルセルロース,カルボキシビニルポリマー等の増粘剤;アンモニア水,モノエタノールアミン,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等のアルカリ剤;高級アルコール、香料等を配合することができる。
【0028】
一方、第2剤の酸化剤としては、通常過酸化水素が用いられるが、この第2剤中にも、例えばターピナル,錫酸ナトリウム等の安定剤;パラフィン等の油脂類;高級アルコール、界面活性剤、酸、pH調整剤、香料等を配合することができる。このような2剤型の本発明の酸化染毛剤組成物は、通常使用直前に第1剤と第2剤とを混合して10分〜30分間毛髪の染毛に供する。
【0029】
また、1剤型の酸化染毛剤において、例えば硫酸2,4−ジアミノフェノール,塩化ステアリルトリメチルアンモニウム・トリエタノールアミン,チオグリコール酸アンモニウム,プロピレンジグリコール,LPG(ガス)等の成分を、上記必須成分の他に配合することができる。
【0030】
本発明の染毛剤組成物は、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%の頭髪有効成分を含有することが好ましく、タンパク質の重量に対して、0.1〜50重量%の頭髪有効成分を含有することがさらに好ましい。
【0031】
本発明において、頭髪有効成分は、タンパク質ナノ粒子の形成時に添加してもよいし、ナノ粒子の作成後に添加してもよい。
【0032】
本発明で用いる頭髪有効成分の種類は、特に限定されないが、例えば、化粧品用成分、医薬部外品成分、又は医薬品成分から選ぶことができる。本発明において、タンパク質ナノ粒子に内包される頭髪有効成分の具体例としては、芳香剤、抗菌剤、柔軟剤、保湿剤、紫外線吸収剤、活性酸素除去剤、抗酸化剤、育毛剤、アミノ酸類、ミネラル、又は抗微生物剤などから選ぶことができる。
【0033】
芳香剤としては、ジャコウ、アカシア油、アニス油、イランイラン油、シナモン油、ジャスミン油、スウィートオレンジ油、スペアミント油、ゼラニウム油、タイム油、ネロリ油、ハッカ油、ヒノキ油、フェンネル油、ペパーミント油、ベルガモット油、ライム油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズ油、ローズウッド油、アニスアルデヒド、ゲラニオール、シトラール、シベトン、ムスコン、リモネン、バニリンなどが挙げられる。
【0034】
抗菌剤としては、ピロクトンオラミン、イソプロピルメチルエーテル、ヒノキチオール、ジンクピリチオン、クリンバゾール、塩化ベンザルコニウム、感光色素101号、クロルヘキシジン、サリチル酸、フェノール、ケトコナゾール及びミコナゾール、イオウ、トリクロサン、トリクロロカルバニリド、クロルヘキシジン塩酸塩、クロルヘキシジングルコン酸塩、ハロカルバン、クロロフェネシン、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化リゾチーム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール、安息香酸、感光素201号、チモール、ヘキサクロロフェン、ベルベリン、チオキソロン、ユキノシタエキス、オウバクエキス、オウゴンエキスとそれらの誘導体および塩などを挙げることができる。
【0035】
柔軟剤としては、グリセリン、ミネラルオイル、エモリエント成分(例えば、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ポリグリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸オクチル、オレイン酸、オレイン酸グリセリル、カカオ脂、コレステロール、混合脂肪酸トリグリセリド、コハク酸ジオクチル、酢酸ステアリン酸スクロース、シクロペンタシロキサン、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ベヘン酸アラキル、ポリベヘン酸スクロース、ポリメチルシルセスキオキサン、ミリスチルアルコール、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシルなど)などを挙げることができる。
【0036】
保湿剤としては、例えば、カンテン、ジグリセリン、ジステアリルジモニウムヘクトライト、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、ヨクイニンエキス、ワセリン、尿素、ヒアルロン酸、セラミド、リピジュア、イソフラボン、アミノ酸、コラーゲン、ムコ多糖、フコダイン、ラクトフェリン、ソルビトール、キチン・キトサン、リンゴ酸、グルクロン酸、プラセンタエキス、海藻エキス、ボタンピエキス、アマチャエキス、オトギリソウエキス、コレウスエキス、マサキ抽出物、コウカエキス、マイカイ花エキス、チョレイエキス、サンザシエキス、ローズマリーエキス、デュークエキス、カミツレエキス、オドリコソウエキス、レイシエキス、セイヨウノコギリソウエキス、アロエエキス、マロニエエキス、アスナロエキズ、ヒバマタエキス、オスモインエキス、オーツ麦エキス、チューベロースポリサッカライド、冬虫夏草エキス、大麦エキス、オレンジ抽出物、ジオウエキス、サンショウエキス、ヨクイニンエキスなどを挙げることができる。また、カゼインナノ粒子の場合は、カゼイン自体が保湿性を有する。
【0037】
紫外線防止剤としては、サリチル酸ホモメンチル、4−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、4−t−ブチル−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタン、酸化チタンおよび酸化亜鉛等が挙げられる。
【0038】
活性酸素除去剤としては、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、マンニトール、ベータカロチン等のカロテノイド類、アスタキサンチン、ルチン及びその誘導体、ビリルビン、コレステロール、トリプトファン、ヒスチジン、クエルセチン、クエルシトリン、カテキン、カテキン誘導体、没食子酸、没食子酸誘導体、オウゴン抽出物、イチョウ抽出物、ユキノシタ抽出物、メリッサ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ボタンピ抽出物、パセリ抽出物、トルメンチラ抽出物、羅漢果抽出物、海藻抽出物、ヤシャジツ抽出物、ジコッピ抽出物等が挙げられる。
【0039】
抗酸化剤としては、例えば、カロテン類、レチノイン酸、レチノール、ビタミンC及びその誘導体、カイネチン、アスタキサンチン、トレチノイン、ビタミンEおよびその誘導体、セサミン、α−リポ酸、コエンザイムQ10、フラボノイド類、エリソルビン酸、没食子酸プロピル、BHT(ジ-n-ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、コウキエキス、大豆エキス、紅茶エキス、茶エキス、エイジツエキスなどを挙げることができる。
【0040】
育毛剤が、グリチルレチン酸又はその誘導体、グリチルリチン酸又はその誘導体、ヒノキチオール、ミノキシジルまたはその類縁体、アデノシン、ビタミンE又はその誘導体、ビタミンC誘導体、6-ベンジルアミノプリン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸β-ブトキシエステル、イソプロピルメチルフェノール、ペンタデカン酸又はその誘導体、セファラチン、フィナステリド、t-フラバノン、パントテン酸、パンテノール、カンゾウ抽出物、キンセイソウ抽出物、クジン抽出物、センブリ抽出物、トウガラシ抽出物、トウチャ抽出物、ニンジン抽出物、ホウコウエイ抽出物、ボタン抽出物、ミカン抽出物などを挙げることができる。
【0041】
アミノ酸類としては、グルタミン酸、L−アスパラギン酸、L−アラニン、L−システイン、グリシン、L−イソロイシン、L−ロイシン、リジン、などやそれらの塩類などが挙げられる。ミネラル及び抗微生物剤も公知のものを適宜使用することができる。
【0042】
上記した頭髪有効成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0043】
本発明においては、脂溶性の頭髪有効成分とカゼイン疎水性部分の相互作用を利用して、カゼインナノ粒子内に頭髪有効成分を内包できることが見出された。さらに、これらの粒子は水溶液中で安定に存在することが見出された。脂溶性の物質としては、好ましくはClogPが0より大きく、より好ましくはClogPが1以上である。
【0044】
また、タンパク質とイオン性多糖または別種のイオン性タンパク質との混合粒子により、イオン性頭髪有効成分を内包することも見出された。
【0045】
本発明で用いるタンパク質の種類は特に限定されないが、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパクが好ましく、分子量1万から100万程度のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質の由来は特に限定されないが、ヒト由来のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、ケラチン、セリシン、ゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができる。また、タンパク質の由来は特に限定するものではなく、牛、豚、魚、および遺伝子組み換え体のいずれも用いることができる。遺伝子組み換えゼラチンとしては、例えばEU1014176A2号、米国特許6,992,172号に記載のものを用いることができるがこれらに限定されるものではない。その中で好ましいものは、カゼイン、酸処理ゼラチン、コラーゲン、又はアルブミンであり、最も好ましいものはカゼイン、又は酸処理ゼラチンである。
【0046】
本発明でカゼインを用いる場合、カゼインの由来は特に限定されず、乳由来であっても、豆由来であってもよく、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼインおよびそれらの混合物を使用することができる。遺伝子組み換え体を使用することもできる。好ましくは、カゼインナトリウムを用いることができる。カゼインは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
本発明に用いられるタンパク質は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0048】
本発明では、ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質を架橋処理することができる。上記した架橋処理は、酵素を用いることができる。酵素としては、タンパクの架橋作用が知られているものであれば特に制限されず、その中で好ましいものはトランスグルタミナーゼである。
【0049】
トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、遺伝子組み換え体を用いることができる。具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼ、ヒト由来リコンビナントトランスグルタミナーゼなどが挙げられる。
【0050】
本発明において架橋処理のために用いられる酵素の量は、タンパク質の種類に応じて適宜設定することが出来るが、標準的には、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%程度を添加することができ、好ましくは、1〜50重量%程度を添加することができる。
【0051】
酵素による架橋反応の時間は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、1時間から72時間反応することができ、好ましくは、2時間から24時間反応することができる。
【0052】
酵素による架橋反応の温度は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃で反応することができ、好ましくは、25℃から60℃で反応することができる。
【0053】
本発明に用いられる酵素を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
本発明のナノ粒子は、特許文献特開平6−79168号公報、又はC.Coester著、ジャーナル・ミクロカプスレーション、2000年、17巻、p.187−193に記載の方法に準じて作製することができるが、架橋方法としてグルタルアルデヒドの代わりに酵素を用いることが好ましい。
【0055】
また、本発明においては、酵素架橋処理を有機溶媒中で行うことが好ましい。ここで用いる有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、アセトン、THFなどの水溶性有機溶媒が好ましい。
さらに、本発明においては、架橋処理後に有機溶媒を留去し、水分散することが好ましい。有機溶媒を留去前に水を加えてもよく、留去後に水を加えても良い。
【0056】
本発明の染毛剤組成物には、脂質(リン脂質など)、セラミド、アニオン性多糖、カチオン性多糖、アニオン性タンパク質、カチオンタンパク質、又はシクロデキストリンから選択される1種以上の成分を添加することもできる。脂質(リン脂質など)、アニオン性多糖、カチオン性多糖、アニオン性タンパク質、カチオンタンパク質、及びシクロデキストリンの添加量は特に限定されないが、一般的にはタンパク質の重量に対して0.1〜100重量%の量で添加することができる。本発明の染毛剤組成物においては、上記成分とタンパク質の比を変えることよって、徐放速度を調整することができる。
【0057】
本発明に用いることができるリン脂質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンなどが挙げられる。
【0058】
本発明に用いることができるアニオン性多糖とはカルボキシル基、硫酸基又はリン酸基等の酸性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、フコイダン、アガロペクチン、ポルフィラン、カラヤガム、ジェランガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸類等が挙げられる。
【0059】
本発明に用いることができるカチオン性多糖とは、アミノ基等の塩基性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。キチン、キトサンなどのグルコサミンやガラクトサミンを構成単糖として含むものなどが挙げられる。
【0060】
本発明に用いることができるアニオン性タンパク質とは等電点が生理的pHよりも塩基性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リゾチーム、チトクロムC、リボヌクレアーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、α−キモトリプシンなどが挙げられる。
【0061】
本発明に用いられるカチオンタンパク質とは等電点が生理的pHよりも酸性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリリジン、ポリアルギニン、ヒストン、プロタミン、オバルブミンなどが挙げられる。
【0062】
本発明においては、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を用いることができる。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を pH3.5〜7.5の酸性水性媒体に注入する工程:
【0063】
さらに本発明においては、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を用いることができる。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH を等電点からpH1以上離れたpHまで下降させる工程:
【0064】
本発明においては、所望のサイズのカゼインナノ粒子を作製できる。また、疎水性の頭髪有効成分とカゼイン疎水性部分の相互作用を利用して、カゼインナノ粒子内に頭髪有効成分を内包できる。さらに、これらの粒子は水溶液中で安定に存在することが見出された。
また、カゼインとイオン性多糖または別種のイオン性タンパク質との混合粒子により、イオン性頭髪有効成分を内包することも見出された。
【0065】
本発明のカゼインナノ粒子の作製方法は、カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、塩基性水性媒体中に注入する方法と、カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、攪拌しながら、pHを下降させる方法が挙げられる。
【0066】
カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、塩基性水性媒体中に注入する方法としては、シリンジによるのが簡便で好ましいが、注入速度、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。一般的には、注入速度は、1mL/minから100mL/minで注入することができる。塩基性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から70℃にすることができる。水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から60℃ですることができる。攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100rpmから3000rpmにすることができ、好ましくは、200rpmから2000rpmである。
【0067】
カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、攪拌しながら、pHを下降させる方法としては、酸を滴下するのが簡便で好ましいが、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。塩基性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から70℃にすることができる。攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100rpmから3000rpmにすることができ、好ましくは、200rpmから2000rpmである。
【0068】
本発明に用いる水性媒体は、有機酸または塩基、無機酸または無機塩基の水溶液、又は緩衝液を用いることができる。
【0069】
具体的には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸、トリフルオロ酢酸、モルホリノエタンスルホン酸、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸のような有機酸;トリス(ヒドロキシメチル)、アミノメタン、アンモニアのような有機塩基;塩酸、過塩素酸、炭酸のような無機酸;燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムのような無機塩基を用いた水溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本発明に用いる水性媒体の濃度は、約10mMから約1Mが好ましい。より好ましくは、約20mMから約200mMである。
【0071】
本発明に用いる塩基性水性媒体のpHは、8以上が好ましく、8から12が好ましい。より好ましくはpH10〜12である。pHが高すぎると加水分解の懸念や取り扱い上の危険性があるため、上述の範囲が好ましい。
【0072】
本発明において、カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に混合させる温度は、0〜90℃が好ましく、10〜80℃が好ましい。より好ましくは、20〜70℃である。
【0073】
本発明に用いる酸性水性媒体のpHは、好ましいpHは3.5〜7.5である。より好ましくはpHは5から6である。前述の範囲外では、粒子サイズが大きくなる傾向が見られる。
【0074】
本発明の染毛剤組成物は、トリートメント剤を含むことができる。トリートメント剤としては特に限定することはないが、カチオン活性剤やシリコーン、加水分解タンパク質、油分、リン脂質ポリマー、セラミドから選択される1種以上のものを使用することができる。
【0075】
本発明で用いることができるカチオン活性剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘントリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ジココジモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0076】
本発明で用いることができる油分として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。椿油、サラソウジュ種子脂、マカダミアナッツ油、コメ胚芽油、ミンク油、パーム油などが挙げられる。
【0077】
本発明で用いることができるシリコーンとして具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ジメチコン、ジメチコノール、フェニルトリメチコン、シクロペンタシロキサン、シクロメチコン、アミノプロピルジメチコン、アモジメチコン、その共重合体などが挙げられる。
【0078】
本発明の染毛剤組成物はさらに、添加物を含むことができる。添加物としては特に限定することはないが、真珠光沢材料、防腐剤、酸化防止剤、色素剤、増粘剤、又はpH調整剤から選択される1種以上のものを使用することができる。さらに必要に応じて、高級アルコール(セタノールやステアリルアルコールなど)、動・植物油脂、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルセルロースなどを含有させても良い。
【0079】
本発明で用いることができる真珠光沢材料として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、グアニンおよび二酸化チタンを被覆した雲母、オキシ塩化ビスマス、およびステアリン酸モノエタノールアミドなどが挙げられる。
【0080】
本発明で用いることができる防腐剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、過酸化水素、ギ酸、ギ酸エチル、ジ亜塩素酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、ペクチン分解物、ポリリジン、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、フェノキシエタノール、レゾルシン、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、チモール、チラム、ティートリー油、ヒノキチオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、1.3-ブチレングリコール、1.4-ブチレングリコール、1,2ペンタンジオール、2−メチル−2,4ペンタンジオール、などが挙げられる。
【0081】
本発明で用いることができる酸化防止剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ビタミンA、レチノイン酸、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチノイン酸トコフェリル、ビタミンCおよびその誘導体、カイネチン、β−カロテン、アスタキサンチン、ルテイン、リコピン、トレチノイン、ビタミンE、α−リポ酸、コエンザイムQ10、ポリフェノール、SOD、フィチン酸などが挙げられる。
【0082】
本発明で用いることができる色素剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。オキアミ色素、オレンジ色素、カカオ色素、カオリン、カルミン類、グンジョウ、コチニール色素、酸化クロム、酸化鉄、二酸化チタン、タール色素、クロロフィルなどが挙げられる。
【0083】
本発明で用いることができる増粘剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クインスシード、カラギーナン、アラビアガム、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ペクチン、デンプン、シクロデキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0084】
本発明で用いることができるpH調整剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸、コハク酸などが挙げられる。
【0085】
本発明の染毛剤組成物の剤型は特に限定されないが、例えば、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、ヘアパック、ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアスプレー、パーマネントウエーブ用組成物、ボディーソープ、石鹸、サンケア(サンスクリーン、サンオイル、アフターサンローション)、フレグランス、外用液剤、湿布剤、塗布剤、清拭剤、浴剤、消毒剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、泥膏剤、経皮吸収型粘着テープ、創傷保護剤、エアゾール剤、ローション剤、トニック剤、リニメント剤、乳剤、懸濁剤、粉剤、泡剤、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、シート状外用剤、マスカラなどのメーキャップ化粧料などを挙げることができる。
【0086】
本発明の染毛剤組成物の塗布方法は特に限定されないが、ウォッシュオフ(シャンプーまたはコンディショナーなど)としてもよく、リーブオン(ジェル、ムース、クリーム、ローション、スプレー、またはエア注入式スタイリングフォームなど)としてもよい。
【0087】
本発明の染毛剤組成物の投与量は、頭髪有効成分の種類及び使用量、使用者の髪の量、状態などに応じて適宜設定することができるが、一般的には、1回の投与につき、1μg〜50mg/cm2程度を投与することができ、好ましくは2.5μg〜10mg/cm2程度を投与することができる。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0088】
製造例1:
カゼイン(乳由来・和光純薬製)200mgを、pH10、50mMクエン酸バッファー10mLに混合させる。塩酸を加えpHを7に調整したところ、カゼインナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、マルバーン(株)製Nano-ZSを用い測定したところ、19nmであった。
【0089】
製造例2:
カゼインNa(乳由来・和光純薬製)10mgをpH9、50mMリン酸バッファー1mLに混合させる。ニコチン酸アミド(和光純薬製)1.5mgをエタノール0.25mLに溶解させる。塩酸を加えpHを7に調整したところ、ニコチン酸アミドを内包したカゼインナノ粒子の水分散液が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、マルバーン(株)製Nano-ZSを用い測定したところ、21nmであった。
【0090】
製造例3:
カゼインNa(乳由来・和光純薬製)10mgをpH9、50mMリン酸バッファー1mLに混合させる。ヒノキチオール(和光純薬製)1.7mgをエタノール0.25mLに溶解させる。カゼイン溶液に攪拌下、ヒノキチオール溶液を滴下し、この混合液を、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、1mLをマイクロシリンジを用いて、pH5、200mMのリン酸バッファー水10mL中に注入したところ、ヒノキチオールを内包したカゼインナノ粒子の水分散液が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、57nmであった。
【0091】
製造例4:
カゼインNa(乳由来・和光純薬製)10mgをpH9、50mMリン酸バッファー1mLに混合させる。酢酸トコフェロール0.5mgをエタノール0.25mLに溶解させる。カゼイン溶液に攪拌下、酢酸トコフェロール溶液を滴下し、塩酸を加えpHを7に調整したところ、酢酸トコフェロールを内包したカゼインナノ粒子の水分散液が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、マルバーン(株)製Nano-ZSを用い測定したところ、68nmであった。
【0092】
製造例5:
酸処理ゼラチン10mg、TG-S(味の素製)5mgを水1mLに溶解させる。外設40℃、800rpmの攪拌条件で、ゼラチン溶液1mLをマイクロシリンジを用いて、グリチルレチン酸1.7mgを溶解したエタノール10mL中に注入したところ、ゼラチンナノ粒子が得られた。外設55℃で5時間静置し、ゼラチンナノ粒子を酵素架橋する。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、80nmであった。
【0093】
得られたゼラチンナノ粒子分散液に水5mLを加え、ロータリーエバポレーターにて、エタノールを除去し、グリチルレチン酸を内包したゼラチンナノ粒子の水分散液が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、201nmであった。
【0094】
製造例6:
酸処理ゼラチン10mg、TG-S(味の素製)5mgを水1mLに溶解させる。外設40℃、800rpmの攪拌条件で、ゼラチン溶液1mLをマイクロシリンジを用いて、トコフェロール1.7mgを溶解したエタノール10mL中に注入したところ、ゼラチンナノ粒子が得られた。外設55℃で5時間静置し、ゼラチンナノ粒子を酵素架橋する。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、95nmであった。
【0095】
〔染毛剤用組成物の評価〕
下記の各処方で、調製した酸化染毛剤用組成物およびヘアマニキュア用組成物を評価した。
【0096】
染毛方法
下記の処方の染毛剤を、室温で毛髪〔白髪(5g )〕に塗布し、20分間放置した。次いで、この毛髪を40℃の温湯で十分にすすぎ、40℃で15分間乾燥した(この染毛方法は,いずれの試験系においても共通する)。
【0097】
(1)染上がり試験:下記の処方に従って調製した染毛剤について、毛髪ストランドによる染上がり(均一性)を、その処方の酸化染毛剤の配合成分からタンパク質ナノ粒子を削除した処方の染毛剤(比較例)との対比により、各酸化染毛剤の染上がりについての評価を行った。また、毛髪の光沢について目視による評価も行った。
【0098】
評価基準
○:実施例の方が比較例に比べて染着性に優れている。
△:実施例と比較例は同程度の染着性である。
×:実施例が比較例に比べて劣る。
【0099】
(2)耐シャンプー性試験:下記の処方に従って調製した染毛剤(各実施例とこれらに対する上記の関係を有する比較例)について、これを用いて染め上げた毛髪ストランドについて、次の要領で染色の堅牢性を比較した。
染色毛を市販のシャンプー(メリットシャンプー;花王(株)製)で3回シャンプーし(40℃,10分)、次に恒温槽(40℃,15分間)で乾燥した。この操作を10回繰返し、染色毛の色の変化(退色及び変色)について確認をし、下記の基準で評価した。
【0100】
評価基準
○:実施例の方が比較例に比べて優れている。
△:実施例と比較例は同程度である。
×:実施例が比較例に比べて劣る。
【0101】
(3)毛髪損傷試験:下記の処方に従って調製した染毛剤について、これを用いて染め上げた毛髪ストランドの染色前後の毛髪の表面を電子顕微鏡で観察して(倍率3000倍)、その処方の酸化染毛剤の配合成分からサクシノグリカンを削除した処方の酸化染毛剤(比較例)との対比により、これらの毛髪の毛小皮の損傷程度の評価を行った。
【0102】
評価基準
○:実施例の方が比較例に比べて優れている。
△:実施例と比較例は同程度である。
×:実施例が比較例に比べて劣る。
【0103】
実施例1:酸化染毛剤(1)
配合量(重量%)
(第1剤)
パラフェニレンジアミン 1.0
プロピレングリコール 10.0
エデト酸ナトリウム 0.3
亜硫酸ナトリウム 0.5
アスコルビン酸ナトリウム 0.5
カゼインナノ粒子(製造例1) 1.0
アンモニア水 pH10.0になる量
イオン交換水 残 量
(第2剤)
30%過酸化水素水 6.0
イオン交換水 残 量
【0104】
実施例2:ヘアマニキュア(2)
ヒドロキシプロピルセルロース 2 重量部
橙205 1 重量部
茶401 1 重量部
紫401 1 重量部
炭酸プロピレン 8 重量部
POE(20)ベヘニル 0.1重量部
燐酸 0.5重量部
水酸化ナトリウム 0.1重量部
カゼインナノ粒子(製造1) 1 重量部
エタノール 10 重量部
水 73.3重量部
【0105】
<製法>
実施例1は、第1剤,第2剤とも、各配合成分を混合して調製した。この酸化染毛剤(1)および実施例2のヘアマニキュア(2)について、上記(1)染上がり試験,(2)耐シャンプー性、及び(3)毛髪損傷試験を行った。これらの試験結果を、表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
表1に示された結果から、各実施例では、従来品(比較サンプル)と対比して、洗髪に対する染毛の堅牢性が向上し、毛髪の損傷が少なく、かつ染毛性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種以上の染毛剤又はその構成成分、並びに(b)平均粒子サイズが10〜200nmのタンパク質ナノ粒子、を含有する染毛剤組成物。
【請求項2】
染毛剤が、染料である、請求項1に記載の染毛剤組成物。
【請求項3】
染毛剤が、酸化染毛剤である、請求項1に記載の染毛剤組成物。
【請求項4】
酸化染毛剤が、酸化染料前駆体と酸化剤との組み合わせである、請求項3に記載の染毛剤組成物。
【請求項5】
タンパク質ナノ粒子の含有量が、組成物の重量に対して0.01〜50重量%である、請求項1から4の何れかに記載の染毛剤組成物。
【請求項6】
タンパク質がコラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1から5の何れかに記載の染毛剤組成物。
【請求項7】
タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%の頭髪有効成分をさらに含有する、請求項1から6の何れかに記載の染毛剤組成物。
【請求項8】
頭髪有効成分が、芳香剤、抗菌剤、柔軟剤、保湿剤、紫外線吸収剤、活性酸素除去剤、抗酸化剤、育毛剤、アミノ酸類、ミネラル、又は抗微生物剤である、請求項7に記載の染毛剤組成物。
【請求項9】
頭髪有効成分が、イオン性物質または脂溶性物質である、請求項7又は8に記載の染毛剤組成物。
【請求項10】
エタノール含有量が20重量%以下である、請求項1から9の何れかに記載の染毛剤組成物。
【請求項11】
ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質が架橋処理されている、請求項1から10の何れかに記載の染毛剤組成物。
【請求項12】
酵素を用いて架橋処理を行う、請求項11に記載の染毛剤組成物。
【請求項13】
下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を含む、請求項1から12の何れかに記載の染毛剤組成物。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を pH3.5〜7.5の酸性水性媒体に注入する工程:
【請求項14】
下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を含む、請求項1から12の何れかに記載の染毛剤組成物。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH を等電点からpH1以上離れたpHまで下降させる工程:
【請求項15】
請求項1から14の何れかに記載の染毛剤組成物を毛髪に塗布する工程を含む、毛髪の染毛方法。

【公開番号】特開2009−274968(P2009−274968A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125657(P2008−125657)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】