説明

タンパク質可溶化のための方法およびシステム

タンパク質を可溶化する方法であって、石灰のようなアルカリを加え、加熱して反応液を生じ、次いで該反応液から固体を分離し、続いて反応液を中和して中和された液体を生じることを含む方法。本方法は次いで、中和された液体を濃縮し、水を反応に戻すことを含む。本開示はそのような方法を遂行するためのシステムをも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンパク質、特にタンパク質がすぐ可溶化されない源からのタンパク質を可溶化するプロセスに関する。いくつかの実施形態は、可溶化タンパク質中のプリオンを破壊するためのプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年の間に世界人口の増大により食糧の要求は劇的に増加し、家畜のためのタンパク源の需要の増大につながった。増大した人口はますます増大する量の廃棄物をも生んでいるが、そうした廃棄物は動物飼料を生産するための貴重な源となりうるものである。
【0003】
生物的源からのタンパク質可溶化のプロセスは、廃棄物のタンパク質を価値のあるタンパク源に変える点で有用である。そのため、これまでにそのようなプロセスはいくつか開発されている。プロセスによっては容易に可溶化されるタンパク質についてのみ機能するが、鶏の羽毛のような、タンパク質が容易に可溶化されない源からのタンパク質の可溶化を改善するために考案されたものもある。
【0004】
熱化学的処理はタンパク質に富む物質の加水分解を促進し、複雑な高分子をより小さな分子に分解し、その消化性を改善し、動物が維持、成長および生産の必要をより少ない総飼料で満たすことを可能にする産物を生成する。
【0005】
鶏の羽毛のタンパク質の可溶化のための一つの従来のプロセスは蒸気処理に関わる。このプロセスでは、羽毛を蒸気で処理して羽毛ミールをつくる。このプロセスは羽毛のタンパク質の可溶性または消化性をわずかに高めるだけである。
【0006】
もう一つの従来のプロセスはタンパク源の酸処理に関わる。この処理はアミノ酸を加水分解するが、通例あまりに過酷な条件のため多くのアミノ酸が破壊されてしまう。また、酸性条件はジスルフィド結合については、可溶性を支援するはずの破壊よりむしろ形成を促してしまう。
【0007】
さらに、従来のシステムにおける条件はもともとのタンパク源にあるプリオンの破壊のために好適ではないことがある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タンパク質可溶化のための新規なプロセスを含む。そのプロセスは一般に、石灰のようなアルカリを生物的源に供給してスラリーを生産することに関わる。スラリー中のタンパク質は加水分解されて液体生成物を生成する。加水分解を助けるためにスラリーを加熱してもよい。固体の残渣も得られることがある。この残渣は本発明のさらなるプロセスにかけられうる。
【0009】
ある個別的な実施形態によれば、本発明はタンパク質を可溶化する方法を含む。該方法は、タンパク質にアルカリを加えてスラリーを形成し、タンパク源に含まれるタンパク質の加水分解を許容するのに十分な温度にスラリーを加熱して反応液を得、該反応液から固体を分離し、該反応液を酸または酸源で中和して中和液を得、該中和液を濃縮して濃縮液および水を生成し、その水を前記加熱ステップの前または加熱中のスラリーに戻すことを含みうる。
【0010】
別の個別的な実施形態によれば、本発明はタンパク質を可溶化するシステムを含む。該システムは、タンパク源とアルカリを反応させて反応液を生成することのできる加熱反応器(heated reactor)を含みうる。該システムはまた、該反応液から固体を分離できる固体/液体分離器をも含みうる。該システムはまた、該反応液に酸を加えて中和液を生成することを許容できる中和槽と、中和液を濃縮して濃縮液および水を生成できる濃縮槽とをも含みうる。該システムはさらに、濃縮槽から加熱反応器に水を渡すことのできる導管(conduit)と、プロセス熱を交換できる少なくとも一つの熱交換器とを含みうる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の追加的な利点としては、次のようなものが含まれる。
【0012】
易反応性(labile)および難反応性(recalcitrant)タンパク質の混合物を同時に処理しうる。
【0013】
現在の既存の栓流反応器を使用しうる。
【0014】
可溶化されるとタンパク質の消化性が著しく高まる。
【0015】
本プロセスは簡単で、いくつかの成分および熱の回収を許容する。
【0016】
プリオンが破壊されれば、食物安全性が改善される。
【0017】
粉砕によってタンパク質消化の反応率が高まり、生成物濃度の上昇と生成物劣化の減少が許容される。
【0018】
非反応性成分を除去しうる。
【0019】
タンパク質生成物を濃縮および乾燥しうる。
【0020】
微生物が破壊されうる。
【0021】
本発明はまた、本発明の諸プロセスを収容するのに好適な反応器システムをも含む。
【0022】
本発明およびその利点のよりよい理解のため、例示的な実施形態および付属の図面の以下の記述を参照しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、加水分解により生物的源からのタンパク質を可溶化するプロセスに関する。本発明はまた、そのような可溶化において使用するための装置に、および可溶化システムにも関する。
【0024】
以下に記載される具体的な実施形態は、生物的源の3つの異なるグループからのタンパク質の可溶化に関する。第一のグループは鶏の羽毛および動物の毛のような難反応性またはケラチン性のタンパク源を含む。第二のグループは、鶏の臓物およびエビの頭のような易反応性または動物組織のタンパク源を含む。第三のグループは、大豆乾草およびアルファルファのような植物タンパク源を含む。上記の3つのグループ内のさらなるタンパク源のグループおよび例は当業者には明らかであろう。
【0025】
本プロセスは一般に石灰(Ca(OH)すなわち水酸化カルシウム)のようなアルカリを特定の温度でタンパク源に加えることに関わる。若干の固体残渣とともに液体生成物が得られる。3つのグループの源それぞれについて好適なプロセス条件について、下記の表1に記載される個別的な実施形態に与えておく。

表1 タンパク質可溶化のための好適な処理条件
【0026】
【表1】


本発明のある種の実施形態では、種々の時間期間についてタンパク質加水分解(可溶化)を実行してアミノ酸に富む液体生成物を得るために断熱のよい混合反応器(stirred reactor)が使われる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では石灰が使われるが、本発明では、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムおよびアンモニアといった代替的なアルカリを使ってもよい。ただし、そうしたアルカリの大半は二酸化炭素通気によって回収されないかもしれない。
【0028】
石灰はまた、水に溶けにくいため、他のいくつかのアルカリに勝る恩恵を提供する。低溶解度のため、溶液中に十分な石灰が懸濁している限り、石灰は水溶液について比較的一定のpH(〜12)を維持する。このことは、熱化学処理の間の一定のpHおよび比較的弱めの(水酸化ナトリウムなどの強塩基に比べて)の加水分解条件を保証し、それにより影響を受けやすいアミノ酸の劣化を軽減しうる。
【0029】
タンパク質に富む物質の熱化学処理は、小さなペプチドと遊離アミノ酸の混合物を生じる。処理の間、ペプチドまたはアミノ酸の新たに生成されたカルボキシル末端はアルカリ性媒質中で反応してカルボキシル酸イオンを生成し、その過程で石灰またはその他のアルカリを消費する。
【0030】
タンパク質加水分解の間に、いくつかの副反応が起こる。図1はタンパク質に富む物質のアルカリ性条件のもとでの加水分解のステップごとの図を示している。アミノ酸分解(たとえばアスパラギンやグルタミンの脱アミドでアスパラギン酸塩やグルタミン酸塩を生成物として生じるなど)の間の副産物としてアンモニアが生成される。いくつかの実施形態では、このアンモニアは捕捉され、硫酸のような酸で中和されてアンモニウム塩を生成する。これらの塩はその後肥料として、あるいはその他の目的のために使用されうる。
【0031】
アルギニン、トレオニンおよびセリンもアルカリ性条件下で分解を受けやすい。アルギニンおよびトレオニンが分解を受けやすいことは、両者とも必須アミノ酸なので栄養上重要である。可溶性ペプチドおよびアミノ酸とアルカリ性媒質との間の接触時間を減らすことは分解を減らし、最終生成物の栄養的な品質を高める。低い温度(〜100°C)の使用も分解を減らしうる。
【0032】
タンパク質に富む物質の段階的処理は、高い可溶化効率のために長期の処理時間が必要とされるときに使われうる(動物の毛および鶏の羽毛)。早期処理の間にはより良い品質の初期生成物が得られ、その後はより低い品質の生成物が生じる。たとえば、初期廃棄物が混合物の場合、一連の石灰処理を使うことで種々の特性をもつ生成物を得ることができる。たとえば、臓物+羽毛の混合物において、初期処理は低い温度および短い時間を使って鶏の臓物の加水分解を目標とし、二度目の石灰処理(より長時間でより高温)は羽毛を消化するなどである。
【0033】
表2は、種々の物質についてのタンパク質加水分解について、種々の処理変数(温度、濃度、石灰添加量および時間)の好適な条件および効果をまとめている。

表2 調査された物質の熱化学処理のための好適な条件
【0034】
【表2】


本発明の工程でアルカリ物質として水酸化カルシウムを使うことは、反応から得られる液体生成物(実施形態によっては「遠心分離した液」と称される)において比較的高いカルシウム濃度を生じさせる。カルシウム塩のいくつかは溶解度が低いので、カルシウムはCaCO、Ca(HCO)またはCaSOとして沈殿させることによって回収できる。炭酸カルシウムがその低溶解度(0.0093g/L;CaCOの溶解度積は8.7×19−9)のために好ましいかもしれない。対照的に、CaSOの溶解度は1.06g/L、溶解度積は6.1×10−5であり、Ca(HCO)の溶解度は166g/L、溶解度積は1.08である。また、CaCOからCa(OH)を再生するのはCaSOからよりも容易である。
【0035】
反応液体生成物にCOを通気することによる炭酸カルシウムの沈殿は、50ないし70%のカルシウム回収の結果となる。カルシウム回収前の反応液体生成物では高いpH(>10)が推奨される。プロセス中に重炭酸カルシウムではなく炭酸カルシウムが形成されるようにするためである。回収後の最終的なpHは〜8.8ないし9.0でありうる。
【0036】
本発明のプロセスから得られるタンパク質は、動物飼料としての用途を含む数多くの用途を有しうる。一般則として、難反応性および植物性タンパク質源からの可溶性タンパク質はバランスのよいアミノ酸プロファイルをもたない。したがって、これらのタンパク質は反芻動物飼料として使われるのが最善である。易反応性タンパク質では、アミノ酸プロファイルはよくバランスが取れており、可溶化タンパク質は単胃動物のための食料としても使用されうる。このように、本プロセスによって可溶化されたタンパク質の最終用途はそのようなタンパク質のもともとの源によって指示されうるのである。動物飼料用途のさらなる恩恵は、本発明のいくつかのプロセスによって生成されたタンパク質にはプリオンがないことでありうる。石灰処理条件は多くのプロセスにおいてプリオンを実質的に破壊するのに十分過酷であり、それにより可溶化タンパク質を使って生成される任意の食品の安全性を改善する。
【0037】
さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、液中に存在するかもしれないプリオンのすべてまたはかなりの量を破壊するために反応液がある時間期間にわたってある高められた温度まで加熱される保持ステップを含む。たとえば、液は125‐250°Cの温度に1秒ないし5時間にわたって加熱されうる。
【0038】
廃棄物中にしばしば見出されるタンパク質に富む物質は、ケラチン質、動物組織および植物性物質という三つの範疇に細分されうる。このそれぞれが異なる特性を有している。
【0039】
動物の毛および鶏の羽毛は高いタンパク質含量を有しており(それぞれ〜92%および〜96%)、畜殺過程からのミネラル、血、脂質といった若干の不純物を伴う。動物の毛および鶏の羽毛における主要成分はケラチンである。ケラチンは機械的に丈夫で、化学的に不活性なタンパク質である。これはそれが見出される組織の強靱で繊維状の基質を提供するというそれが果たす生理学上の役割に添ったものとなっている。哺乳類の毛、ひづめ、角および羊毛では、ケラチンはα−ケラチンとして存在する。鳥類の羽毛では、ケラチンはβ−ケラチンとして存在する。ケラチンは非常に栄養価が低く、大量のシステインを含み、非常に安定な構造を有しており、そのためほとんどのタンパク質分解酵素によって消化するのは困難である。
【0040】
本発明の熱化学的処理のいくつかの工程の間の鶏の羽毛および動物の毛の振る舞いが図2および図3に呈示されている。図2は、動物の毛より鶏の羽毛についてより高い加水分解率および消化性タンパク質へのより高い最終的な変換率を示している。この差は、β−ケラチンにおけるより伸びた配位に対して石灰がより近づきやすかったことにより、あるいは鶏の羽毛と比べたときの動物の毛に存在する異なるマクロ構造(繊維構造、多孔性など)によって説明しうる。毛については高い転換率のためには100°Cで0.1gCa(OH)/g乾燥物 の石灰添加量を用いて少なくとも8時間が推奨されるが、羽毛の場合には〜4時間で70%の転換率が達成される。
【0041】
反応速度と変換率との間の線形関係が両物質について見出される(図3)。これはタンパク質のアルカリによる加水分解について、反応速度が一次であることを示している。
【0042】
動物組織はケラチン質の物質よりも、消化上、呈される問題が少ない。動物組織中の細胞は核およびその他の細胞小器官を、単純な原形質膜によって限られた流体基質(細胞質)中に含んでいる。原形質膜は容易に破れ、グリコーゲン、タンパク質およびその他の構成要素を解放して酵素または化学物質による消化に供する。
【0043】
動物組織(臓物およびエビの頭)は15分未満でよく加水分解され(図4)、強い処理条件は必要としない。低い温度、低い石灰添加量および短い時間が好適である。脂質および動物組織中に存在するその他の物質が、脂質鹸化のような副反応を通じてより速く石灰を消費する結果、プロセスの終わりには液体生成物のpHはより低くなり、液体生成物が発酵しやすくなる。
【0044】
エビの頭および鶏の臓物はいずれも食品産業からの動物性タンパク質副産物である。これらは動物組織であるので、液体生成物のアミノ酸分布は動物の要求に近いものと期待される。ただし、物質はバッチによりさまざまなので、品質もさまざまであろうが。この液体生成物ではヒスチジンが限定(limiting)アミノ酸となりうる。
【0045】
本プロセスのもう一つの具体的な用途は、養鶏産業における鳥の死骸の処理に関わる。たとえば、鶏の約5%が畜殺場に着く前に死ぬ。しかしながら、典型的な養鶏場には場内で処理するのに十分な死骸はないので、処理のための収集を待つ間死骸を保存する方法が必要である。本発明の方法を使うことで、鳥の死骸はハンマーミルのような好適な装置で粉砕されることができ、鳥のpHを上げて腐敗を防止するために、石灰を加えてもよい。石灰濃度は約0.1gCa(OH)2/g鳥死骸乾燥質量 でよい。石灰処理された鳥が収集されて中央処理プラントに持ち込まれたときに、加熱してタンパク質可溶化プロセスを完了できる。
【0046】
最後に、植物はその複雑な細胞壁に消化が困難なリグノセルロース基質を含んでおり、そのために動物組織よりも消化が困難になっている。しかしながら、水溶性が高い成分が存在する結果として、本発明のいくつかのプロセスの間にタンパク質から液体への高い初期変換率が得られる。図5はタンパク質加水分解速度を大豆とアルファルファの乾草について比較している。これは、アルファルファ乾草よりも大豆乾草についてより高い可溶成分率と、両物質について同じような加水分解速度を示している。
【0047】
これらの植物物質の石灰処理はリシンおよびトレオニンに乏しい生成物を生じるので、単胃動物にとっての液体生成物の栄養価を下げることになる。
【0048】
本プロセスが植物からのタンパク質の可溶化に使われる本発明のいくつかの実施形態では、結果として得られる固体残渣中の繊維も、リグニンおよびアセチル基が除去されるために消化性が高まる。植物物質の石灰処理は二つの生成物を生じうる。タンパク質に富む液体生成物(アルカリ加水分解からの小さなペプチドおよびアミノ酸)と、ホロセルロースに富む固体残渣である。この固体残渣は、結晶性を減らして消化性を上げるよう処理することができる。こうして、本発明のいくつかのプロセスが植物消化プロセスと組み合わされたときに、予期しなかった共同効果が生じる。
【0049】
図6は、タンパク質含有物質中のタンパク質の可溶化プロセスを示している。このプロセスは石灰の回収は含んでいない。このプロセスにおいて、タンパク質含有物質と石灰は反応器に加えられる。ある個別的な実施形態では、生石灰(CaO)が加えられる。水和形である消石灰(Ca(OH))を生成する反応熱により、当該反応のさらなる熱の要求が軽減される。未反応の固体は向流洗浄され、未反応固体中にトラップされている可溶化されたタンパク質が回収される。反応器を出る液体生成物は可溶化タンパク質を含んでいる。蒸発器がほとんどすべての水分を除去することによって可溶化タンパク質を濃縮する。濃縮されたタンパク質がまだポンプ移送できるよう十分な水分が残ることが好ましい。
【0050】
好適な蒸発器としては、多効果蒸発器(multi−effect evaporator)または蒸気圧縮蒸発器(vapor−compression evaporator)が含まれる。蒸気圧縮は機械的なコンプレッサーまたはジェット排出器(jet ejector)を使って達成されうる。pHがアルカリ性なので、タンパク質分解から生じるいかなるアンモニアも揮発し、反応器に戻る水にはいる。しまいにはアンモニアレベルが受け容れられないレベルまで上昇しうる。その時点で、過剰なアンモニアを除去するためにパージ蒸気を使うことができる。パージされたアンモニアは酸を使って中和されうる。カルボン酸を使う場合(たとえば酢酸、プロピオン酸、酪酸)、中和されたアンモニアは非タンパク質窒素源として反芻動物に与えられることができる。無機酸を加えた場合には、中和されたアンモニアは肥料として使われうる。
【0051】
蒸発器を出る濃縮されたタンパク質スラリーは、過剰な石灰と反応させるために炭酸処理される。いくつかの用途では、輸送距離が短い場合であれば、この濃縮スラリーを飼料に直接加えてもよい。しかし、輸送距離が長く、保存性のよい生成物が必要とされる場合には、中和された濃縮スラリーを吹き付け乾燥して乾燥生成物を生成してもよい。この乾燥生成物は高濃度のカルシウムを含む。多くの動物は食餌にカルシウムを必要とするので、可溶化タンパク質中のカルシウムはカルシウムの必要性を満たす便利な方法となりうる。
【0052】
ここで図7を参照すると、二段階に分割された同様のプロセスが図解されている。このプロセスは、反芻動物と単胃動物の両方の飼料に好適なタンパク質の混合物を含むタンパク質混合物質に好適である。たとえば、鳥の死骸は羽毛(反芻動物に好適)および臓物(単胃動物に好適)を含む。本プロセスの第一段では、穏やかな条件を用いて易反応性タンパク質を可溶化し、これは次いで濃縮され、中和され、乾燥されうる。これらのタンパク質は単胃類に与えられうる。第二段はより過酷な条件を用いて難反応性タンパク質を可溶化し、これが濃縮され、中和され、乾燥されうる。これらのタンパク質は反芻動物に与えられうる。
【0053】
図8は図6と同様のプロセスを図解しているが、低カルシウム生成物を生じるために追加的なカルシウム回収ステップを設けている。カルシウムを回収するために、蒸発段が二段階になっている。第一の蒸発器では、既存の流れの中のタンパク質は溶液中に留まる。二酸化炭素が加えられて炭酸カルシウムが沈殿させられる。このステップの間、pHは好ましくは9程度である。加える二酸化炭素が多すぎると、pHが下がる結果となり、重炭酸カルシウム形成に有利となってしまう。重炭酸カルシウムは炭酸カルシウムよりずっと溶解度が高いので、これが起こるとカルシウム回収量は下がってしまう。炭酸カルシウムはフィルタを使って回収される。炭酸カルシウムは向流洗浄されて可溶性タンパク質が回収される。次いで第二の蒸発器が残っている水のほとんどを除去する。既存のスラリーがポンプ移送できるよう十分な水分が残されうる。最後に、スラリーは保存性のよい生成物を形成するために吹き付け乾燥されてもよい。
【0054】
図9は、図8を二段にしたバージョンを示しており、これは易反応性タンパク質と難反応性タンパク質の混合物を有するタンパク質源を処理するために使われうる。第一段は単胃類に好適な易反応性タンパク質を可溶化し、第二段は反芻動物に好適なタンパク質を可溶化する。
【0055】
図10は、易反応性タンパク質を処理するのに好適な一段の連続攪拌槽反応器(CSTR: continuous stirred tank reactor)を示している。固体から液体を絞り出すらせんコンベヤーを使って、固体が反応器から出る。
【0056】
図11は、多段CSTRを示す。示されているのは4段で、栓流反応器を近似している。この反応器の型は難反応性および植物性のタンパク質源に使うのに好適である。栓流挙動は、廃固体と一緒に出ていく反応した飼料の量を最小化する。この実施形態では、液体の流れは固体の流れに対して向流である。
【0057】
図12は液体の流れが固体の流れと並流である多段CSTRを示す。
【0058】
図13は液体の流れが固体の流れに対して交流である多段CSTRを示す。
【0059】
図14は、難反応性および植物性のタンパク質源に好適な本来の栓流反応器を示している。タンパク質は、図14に示したらせんコンベヤーまたは図示しないVラム(V−ram)ポンプのような適当な固体装置を使って反応器に加えられる。反応器は内容物を攪拌する「指」を回転させる中心軸を含んでいる。反応器内容物が非生産的に回るのを防ぐために反応器の壁には固定「指」が取り付けられている。水は固体の流れに対して向流的に流される。反応器の上部から出る水は可溶化されたタンパク質生成物を含む。それは固体をブロックするためのスクリーンを通って出る。鶏の羽毛、毛および植物のようないくつかのタンパク質源の繊維性のため、そのフィルタ処理は容易となる。反応器の下部の未反応の固体は、液体を固体から絞り出すらせんコンベヤーを使って除去される。この実施形態では、絞られた液体は、らせんコンベヤー側のスクリーンを通るのではなく反応器に流れ戻る。そのような構成の目的は、固体が固いかたまりとして出ていくようにすることにより、反応器の底部に加えられた水が、下方ではなく、優先的に上方に流れるようにすることである。出ていく固体が反応器にはいってくる水と接触するのは出ていく直前なので、これらの固体を向流洗浄する必要はない。
【0060】
図15は、図14に示したのと同様の栓流反応器を示しているが、出口らせんコンベヤーが反応器の中心軸につながっていない。これにより、混合速度とコンベヤー速度が独立して制御できる。
【0061】
図16は、図14に示したのと同様の栓流反応器を示しているが、固体はらせんコンベヤーではなくロックホッパーを通って出ていく。反応器に空気がはいるのを防ぐため、ロックホッパーはサイクル間で排気してもよい。
【0062】
図53は、タンパク質含有物質中のタンパク質の可溶化のためのプロセスを示している。まず、任意的な粉砕ステップで、タンパク質源がその表面積を増すために粉砕される。これにより反応ステップにおける反応速度が向上する。ひとたび反応器内でタンパク質が可溶化されたら、タンパク質は分解を始める。よって、反応ステップが速ければ分解の量を減らしうる。反応速度が速いと反応生成物濃度を上げ、回収を安価にすることにもなりうる。粉砕ステップを使う場合、それはハンマーミル、インライン・ホモジェナイザーまたはその他の好適な装置を使って達成されうる。
【0063】
次に、タンパク質は温度とpHを上げてアルカリと反応させられる。pHはたとえば約10ないし13の間でよく、約12でよい。この反応ステップではいかなる塩基を用いてもよいが、選択された諸実施形態では、塩基は酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニアである。酸化カルシウムと水酸化カルシウムは水にあまり溶けず、よって回収がより容易となりうる。これらはまたpHを約12に保つ緩衝作用をもつ。さらに、カルシウムは食物栄養素であり、最終タンパク質生成物から除去される必要がある。他の栄養素アルカリも最終タンパク質生成物中に残されてもよい。一般的な反応条件は、たとえば種々のタンパク質源についてここに記載されているものでありうる。
【0064】
反応器は攪拌槽でよい。反応器は1気圧で運用されてよいが、より速い反応速度を達成するため、特により高温では高めた圧力を用いてもよい。反応器温度を維持するために、プロセスの他の部分からの蒸気を、たとえば、直接、反応器中にパージすることによって使用しうる。
【0065】
反応の間、いくつかのアミノ酸はアンモニアに分解される。このアンモニアは通例気相になる。このアンモニアは硫酸のような適切な酸を用いて中和され、アンモニウム塩を形成しうる。これらのアンモニウム塩はその後肥料またはその他の用途に使用されうる。
【0066】
次に、固体と液体が、反応部を出る流れにおいて分離される。これは、固液分離器を使って達成されうる。回収された固体は、可溶化されていないタンパク質のような反応性の固体と骨や岩石のような不活性な固体との両方を含みうる。ほとんどの不活性固体は反応性の固体より密度が高いので、その性質を分離を助けるのに活用することもできる。このステップは、反応性固体の反復的な再循環を許容し、本プロセスの全体としての収率を改善する。このステップはまた、その存在が反応ステップおよび本プロセス全体の効率を下げかねない不活性固体の除去をも許容する。
【0067】
反応性固体と不活性固体を分離するのに使用されうる密度分離器としては、沈殿槽(settler)およびハイドロクロン(hydroclone)が含まれる。
【0068】
次に、任意的な保持ステップが行われてもよい。このステップでは、反応ステップからの、可溶化されたタンパク質を含んだ液体がある時間期間にわたって高められた温度に加熱され、その後冷却される。反応ステップ後には、液体が無傷のプリオンを含んでいることがありうる。これらのプリオンは可溶化したタンパク質をのちに消費する何らかの動物に、そしてまた人間にも健康上の危険を呈しうる。しかし、保持ステップでの加熱が、液中に存在するいかなるプリオンについても、すべてまたはかなりの部分を破壊するのに十分でありうる。この保持ステップは殺菌と似ているかもしれない。プリオンの種々の型について、適切な温度および保持時間はさまざまである。たいていの場合、プリオン破壊を達成するのに十分な多様な温度と保持時間の組み合わせがあるであろう。特定の実施形態では、保持ステップの条件は、所望のレベルのプリオン破壊を達成するよう、だが同時にアミノ酸分解を制限するよう選択されうる。たとえば、保持ステップの温度は125‐250°Cの間でありうる。保持時間は1秒ないし5時間の間でありうる。最も適切な保持ステップの条件を選択するため、タンパク質源に現れそうなプリオンを事前に同定してもよい。
【0069】
保持ステップの加熱は蒸気によってできる。システムは、保持ステップを出ていく液体からの熱がはいってくる液体を温めるのを助けるのに使えるようにする熱交換要素を含んでいてもよい。
【0070】
液体は次いで酸により中和されて、pHが2ないし9の間まで下げられる。このステップのために使用される酸はほとんどいかなる酸または酸源でもありうる。個別の実施例では、酸は二酸化炭素、リン酸、酢酸・プロピオン酸・酪酸のようなカルボン酸、乳酸、硫酸、硝酸ならびに塩酸でありうる。
【0071】
二酸化炭素は、特にアルカリがカルシウムを含んでいるときに酸源として使用されうる。二酸化炭素は安価で、カルシウム含有反応液の中和の際にpHに応じて炭酸カルシウムまたは重炭酸カルシウムを生成する。炭酸カルシウムと重炭酸カルシウムはいずれも、石灰がまを使って石灰に変換し戻されうる。この石灰は反応ステップで再使用される。
【0072】
二酸化炭素は気体なので、中和の際に液体を泡立たせることがある。この問題を回避するため、二酸化炭素を液層に移すのは、セルガード社(Celgard LLC)(米国ノースカロライナ)によって製造されている微孔性疎水性膜を使って行われてもよい。
【0073】
リン酸は、反応液がカルシウムを含むときのもう一つの特定の実施形態において使われる。形成されるリン酸カルシウムは骨形成において重要なミネラルだからである。よって、究極的なタンパク質製品への有用な追加となるのである。
【0074】
もう一つの実施形態では、何らかのアルカリを含む液を中和するために、カルボン酸および乳酸のような有機酸が使用されうる。有機酸は動物のエネルギー源であるので、最終的なタンパク質製品への有用な追加である。
【0075】
中和ののち、任意的な固液分離が行われうる。このステップは、酸中和が、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、硫酸カルシウムまたはリン酸カルシウムといった不溶性の塩を生じるときには、この上なく有用でありうる。これらの物質のいくつかは最終生成物において所望されるかもしれないが、いくつかは所望されないかもしれないし、最終生成物中での濃度を下げることが望ましいこともありうる。固液分離器の使用により、中和された液体から固体の全部または一部が除去されうる。好適な固液分離器としては、圧搾濾過器、回転ドラムフィルタおよびハイドロクロンが含まれうる。
【0076】
ある特定の実施形態では、カルシウムを含む反応液の炭酸処理を介した中和はpH約9で行われる。このことは、固液分離器を介しての高度に不溶性の炭酸カルシウムの形のカルシウムの実質的な除去を許容する。炭酸カルシウムのかなりの量が除去されたのち、さらにpHを下げるために炭酸処理またはその他の中和が続けられてもよい。
【0077】
中和および任意的な固体分離ののち、中和された液体は濃縮されうる。反応液は典型的には2‐6%の間の可溶化されたタンパク質を有する。この濃度は、保持ステップ、中和ステップおよび固体回収ステップによってそれほど影響されないと考えられる。濃縮後は、濃縮された液体は35‐65%の可溶化されたタンパク質を有しうる。
【0078】
濃縮は蒸発によって達成できる。たとえば、多効果蒸発、機械的な蒸気圧縮蒸発およびジェット排出器蒸気圧縮蒸発が中和された液体から水分を除去するために使用されうる。一般に、希薄なタンパク質溶液は泡立つが、濃縮されたタンパク質溶液は泡立たない傾向がある。結果として、少なくとも15%の可溶化されたタンパク質を含む液体を使って蒸発器を運用する場合には、泡立ちは軽減される。さらに、より希薄な液体については特に、泡消し剤を液体に加えてもよい。植物油は有効な泡消し剤であり、最終的なタンパク質製品にエネルギー成分を追加する。
【0079】
中和された液体を濃縮するためにフィルタ処理を用いてもよい。具体的には、希薄溶液を、逆浸透膜または密なナノ濾過膜のような適切な膜を通した水透過によって濃縮してもよい。濃度分極を最小化するため、高い透過速度および高い生成物濃度を達成するよう振動ディスクフィルタ(oscillatory disk filter)(たとえばVESP)が使用されうる。
【0080】
中和された液体の濃縮は凍結によって行ってもよい。氷の結晶が形成される際に、タンパク質はほぼ排除され、結果としてほとんど純粋な凍結した水と濃縮されたアミノ酸/ポリペプチドの分離が得られる。氷の結晶は、たとえば向流的に洗浄して、その表面から濃縮生成物を除去してもよい。
【0081】
中和された液体から、ジイソプロピルアミン、トリメチルアミン、メチルジエチルアミンおよびその他のアミンといったさまざまな非混合性アミン(immiscible ammine)を使って、水を抽出することもできる。
【0082】
濃縮ステップの間に除去された水は反応ステップに戻されてもよい。戻す前に、プロセス蒸気または本プロセスの他の諸部分からのその他の温かい流体との熱交換を介して加熱されてもよい。濃縮ステップからの水が反応ステップには熱すぎる場合には、より低温の流体と熱交換して、反応に加える前に適切な温度にしてもよい。
【0083】
濃縮された液体は任意的に乾燥されてもよい。乾燥は吹き付け乾燥器またはスクレーパー付きドラム乾燥器(scraped drum drier)といった標準的な装置を使って達成されうる。スクレーパー付きドラム乾燥器は、かさ密度の高い最終的な固体を生じうる。さらに、これらの乾燥器からの蒸気は回収して、反応器を加熱するなどプロセス熱のために使用してもよい。
【0084】
このように、図53のプロセスは、任意的な粉砕器と、反応器と、アンモニア捕集器と、固液分離器と、任意的な密度分離器と、任意的な保持槽と、中和槽と、もう一つの任意的な固液分離器と、濃縮槽と、任意的な乾燥器とを有するシステムにおいて実行されうる。これらの構成要素は、タンパク質源を処理して液体濃縮物または乾燥生成物にするのを許容するよう互いにつながれうる。戻しループを含めて、必要に応じてさらなる処理および/または再使用を許容するようにしてもよい。温度を調整し、プロセス熱の再使用を許容するための熱交換器を含めてもよい。
【0085】
本発明の条件、機械類ならびにシステムおよびプロセスのその他の構成要素は、変形のタンパク質可溶化プロセスおよびシステムを生じるために互いに入れ換えることもできることは容易に理解されるであろう。たとえば、あるシステムまたはプロセスのために記載された構成要素は、特定のタンパク質を消化する、所望の生成物組成を達成する、リサイクルおよび熱回収を助ける、および種々のシステム間の互換性を容易にするといったことのために、別の構成要素とともに使用されうる。
【実施例】
【0086】
以下の例は、本発明の選ばれた実施形態を解説し、さらに説明するために呈示されるものであって、本発明の範囲全体を文字通りに表すことを意図したものではない。これらの例に対する変形は当業者には明白であり、やはり本発明に包含される。
【0087】
これらの例において、式および実験の番号は、示されている例の内部での式および実験を参照するのみである。異なる例においては式および実験に付けられた番号は連続的でも同様でもない。
【0088】

〈例 1:一般的な方法および装置〉
今の諸例においては、以下の一般的な方法および式を用いた:
液体生成物および原材料における種々の化合物の濃度は二つの異なる手順により決定した。アミノ酸組成はHPLC測定により決定した(テキサスA&M大学のタンパク質化学研究所によって実行された)。ケルダール窒素およびミネラル決定は、標準的な諸手法を使ってテキサスA&M大学の外郭団体(Extension)である土壌、水および飼料試験研究所によって実行された。
【0089】
リグノセルロース材料の消化性の測定は、DNS法を使って3日(3−d)消化性試験によって行った。バイオマスは必要であれば十分なサイズに粉砕した。森林科学研究センターにあるいくつかのふるいサイズをもつトマス・ワイリー(Thomas−Wiley)実験室ミルを使った。
【0090】
物質のリグニン、セルロース、ヘミセルロース(ホロセルロース)、灰および湿気の含量はNREL法を使って決定した。
【0091】
必要なときには温度の測定および維持のための熱電対をもつ水浴および振動空気浴(shaking air bath)を使った。加熱はテープおよびバンド・ヒーターによっても達成された。冷却システムとしては水および氷浴を使った。
【0092】
一般に、これらの例における実験は、温度制御器および可変スピードモーターによって駆動される混合器をもつ1Lのオートクレーブ反応器の中で実行された(図17)。この反応器は、試料採取ポート(sampling port)を通じて試料を得るためにNで加圧された。懸濁された固体と液体との間の良好な接触を誘起するため、高い混合速度(〜1000rpm)が使用された。
【0093】
プロセス変数――温度、時間、原材料濃度(g材料乾燥質量/L)および水酸化カルシウム添加量(gCa(OH)/g材料乾燥質量)――のタンパク質加水分解への効果を探求するため、処理条件(いくつかの有機物について)を系統的に変えた。試料は反応器から種々の時刻に採取され、液層を残渣固体物質から分離するために遠心分離された。
【0094】
遠心分離した試料の変換率を有機材料の初期全ケルダール窒素(TKN)に基づいて求めるには、式1を使った。
【0095】
【数1】


液体生成物は、アミノ酸濃度と反応の変換率を得るため、2つの異なる方法を使って分析された。第一の方法は、修正ミクロケルダール法を使って液体試料の全窒素含量を決定した。窒素含量(TKN)を6.25倍することで粗タンパク質含量が推定される。第二の方法は、HPLCを使って試料中に存在する個々のアミノ酸の濃度を得た。この手順では、タンパク質とポリペプチドをアミノ酸に変換するために試料を塩酸で処理した(150°C、1.5hまたは100°C、24h)。この測定は全アミノ酸組成(Total Amino Acid Composition)と呼ばれる。最初のHClによる加水分解をしないHPLC決定が決定するのは、遊離アミノ酸組成(Free Amino Acid composition)である。
【0096】
さらなる測定には:液体生成物の最終pH、45°Cで蒸発させたあとの遠心分離した液体中の可溶性物質の質量および105°Cで乾燥させたあとの残渣固体の質量が含まれる。この最後の測定である残渣固体の質量は、最終的な混合物を水によるさらなる洗浄なしでスクリーンを通してフィルタ処理することにより決定された。残った固体は105°Cで乾燥された。乾燥質量は不溶性固体のみならず、残渣固体中に混じって保持されている可溶性固体をも含んでいた。
【0097】

〈例 2:アルファルファ乾草中のタンパク質可溶化〉
アルファルファ乾草は反芻動物の栄養に一般的に使われる。試料の消化性がより高いことは、より少ない試料で動物の必要性が満たされることを保証する。アルファルファ乾草の処理は二つの別個の生成物を生じる。液体生成物に見出される消化性の高い可溶性成分と、脱リグニンされた残渣固体である。
【0098】
アルファルファ乾草は、市販の最も安価な塩基である水酸化カルシウムで処理された。表3に、種々の状態のアルファルファの組成をまとめておく。

表3 種々の状態のアルファルファの組成(McDonald et al., 1995)
【0099】
【表3】


日干ししたアルファルファ乾草は米国テキサス州ブライアン(Bryan)の生産者協同組合から入手し、次いでトマス・ワイリー実験室ミル(米国ペンシルヴェニア州フィラデルフィアのアーサー・H・トマス社)を使って粉砕され、40メッシュのスクリーンを通してふるいにかけられた。出発物質を特徴付けるために含水量、全ケルダール窒素(タンパク質分率の目安)およびアミノ酸含量が決定された。
【0100】
生のアルファルファ乾草は乾燥物89.92%、水分10.08%だった(表4)。TKNは2.534%で、これは乾燥アルファルファ中の粗タンパク質濃度にして約15.84%に相当する(表5)。残りの84.16%が繊維、糖分、ミネラル、その他に対応する。生のアルファルファ乾草についてのアミノ酸組成を表6に与える。この出発物質はチロシンのレベルが低く、比較的バランスの取れたアミノ酸成分を含んでいた(表6)。

表4 生のアルファルファ乾草の含水量
【0101】
【表4】


表5 生のアルファルファ乾草のタンパク質および無機物含量
【0102】
【表5】


表6 空気乾燥したアルファルファ乾草のアミノ酸組成
【0103】
【表6】


実験1 温度効果
アルファルファ乾草中のタンパク質の可溶化に対する温度の効果を決定するため、石灰添加量およびアルファルファ濃度を一定に保って(それぞれ0.075g石灰/gアルファルファ、60g乾燥アルファルファ/L)異なる温度で実験を行った。調べられた実験条件および測定された変数を表7にまとめておく。

表7 アルファルファ乾草のタンパク質可溶化における温度の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0104】
【表7】


表8は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を種々の温度について時間の関数として示している。乾燥アルファルファについての平均TKN(2.53%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定した(表9)。

表8 実験1について、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(アルファルファ乾草)
【0105】
【表8】


表9 実験1について、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(アルファルファ乾草)
【0106】
【表9】


タンパク質加水分解の最終生成物は個々のアミノ酸であり、これは水酸基と反応し、石灰を消費し、pHを下げる。これはタンパク質変換率が高いところでより低いpHが得られていることを説明する(表7および表9)。
【0107】
あらゆる温度について同様の初期変換率は、アルファルファにおける可溶性成分の高い分率(約50%;表3参照)によって説明できる。それまでの部分よりも低い最終変換率は、異なる試料取り入れ方法によって説明される。早期の試料はみな内部温度にある試料採取ポートを通じて反応器から採取された。最終試料については、流体が35°Cまで冷やされ、窒素圧が解放され、固体がフィルタ処理されてから試料が採取された。最終試料について試料採取手順を変更したのは、より多くの変数を測定するためである。他の実験についてもこの同じ手順に従った。
【0108】
溶解度の高いアルファルファ成分は溶存固体中に存在している。表7は、75°Cでは、液体蒸発後に残る固体中のタンパク質濃度が約11%であることを示している。これは実際には生のアルファルファにおけるタンパク質含量よりも低いが、一連の処理ステップはタンパク質を消化性の高いアミノ酸に変換しており、これらのアミノ酸は他の消化性の高いアルファルファ成分と混合されて、最終生成物の栄養価を高める。
【0109】
図18は、タンパク質加水分解を、調査した種々の温度について時間の関数として呈示する(変換率の百分率)。変換率はより高い温度で高くなっている。100°Cについての変換率は115°Cで得られた変換率と同様である。したがって、低いほうの温度が好ましい。アミノ酸の分解が少なくなり、所要エネルギーが少なくなり、作業圧力が低くなるからである。
【0110】

実験2 石灰添加量の効果
アルファルファ乾草のタンパク質可溶化に対する石灰添加量の効果を決定するため、温度およびアルファルファ濃度定数を一定に保って(それぞれ75°C、40g乾燥アルファルファ/L)異なる石灰/アルファルファ比において実験を行った。調べられた実験条件および測定された変数を表10にまとめておく。

表10 アルファルファ乾草のタンパク質可溶化における石灰添加量の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0111】
【表10】


表11は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を種々の石灰添加量について時間の関数として示している。

表11 実験2について、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(アルファルファ乾草)
【0112】
【表11】


乾燥アルファルファについての平均TKN(2.53%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定し、表12に掲げた。

表12 実験2について、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(アルファルファ乾草)
【0113】
【表12】


ここでもまた、初期の変換率はあらゆる石灰添加量について同様であるが、これは、アルファルファに存在する高い可溶性成分のためである(約50%;表3参照)。この実験についての0.2g石灰/gアルファルファにおける最終変換率(150min)は、他が減っているのに対して増えており、他と異なっていた。0.2g石灰/gアルファルファの場合には、最終試料が試料採取ポートを通じて反応器から採取されたのに対し、他の添加量についての最終試料は、反応器を開けて試料を取り出すことによって採取されたのである。
【0114】
図19は、可溶化されたタンパク質(変換率の百分率)を、調査した種々の石灰添加量について時間の関数として呈示する。変換率はあらゆる石灰添加量について、石灰添加なしの実験についてさえ同様である。この振る舞いは、アルファルファ乾草における高い可溶成成分に関係している。
【0115】
石灰添加なしの実験では、水相中に可溶性タンパク質が存在しているが、水酸基が希薄で、固相でも固液界面でも反応が起こらなかった。存在している遊離アミノ酸の量も少なかった。これは加水分解反応がこれらの条件下ではより遅くなりそうだからである。最終pHは5.7であった。pHが酸性になったのはありそうなことである。バイオマスから解放された酸(たとえばアセチル基)およびタンパク質から解放されたアミノ酸のためである。石灰が使われなかったので、溶存固体の濃度はより低かった。他のすべての場合には、表10で、石灰は溶存固体の一部であった。
【0116】
図19は、石灰添加量がアルファルファ乾草のタンパク質可溶化に対して何ら有意な効果をもたないことを示している。アルカリ性加水分解より害の大きい傾向のあるタンパク質の酸性加水分解を避けるため、最低限の石灰添加量が推奨されうる。この石灰添加は、液体生成物における遊離アミノ酸のより高い濃度につながるであろう。

実験3 アルファルファ濃度の効果
アルファルファ乾草のタンパク質可溶化に対する初期アルファルファ濃度の効果を決定するため、温度および石灰添加量を一定に保って(それぞれ75°C、075g石灰/gアルファルファ)異なるアルファルファ濃度において実験を行った。調べられた実験条件および測定された変数を表13にまとめておく。

表13 タンパク質可溶化における初期アルファルファ濃度の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0117】
【表13】


表14は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を種々のアルファルファ濃度について時間の関数として示している。乾燥アルファルファについての平均TKN(2.53%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定し、表15に掲げた。

表14 実験3について、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(アルファルファ乾草)
【0118】
【表14】


表15 実験3について、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(アルファルファ乾草)
【0119】
【表15】


20gアルファルファ/Lでの実験についての最終変換率(150min)は、他が減っているのに対して増えており、他と異なっていた。20gアルファルファ/Lの場合には、最終試料が試料採取ポートを通じて採取されたのに対し、他の濃度についての最終試料は、反応器を開けて試料を取り出すことによって採取されたのである。
【0120】
図20は、タンパク質可溶化(変換率の百分率)を、調査した種々のアルファルファ濃度について時間の関数として呈示する。変換率はアルファルファ濃度が上がるにつれて上昇するが、60ないし80g/Lの間で最大値に達する。この点になると、石灰およびアルファルファの質量が非常に高いため、アルファルファが液相に接することが難しく、それが変換率を低下させた。80g/Lについての変換率は20g/Lについての変換率と同様である。また、40g/Lと60g/Lについての変換率は同様である。表13が示すように、溶存固体はアルファルファ濃度が高いほど高くなる。

実験4 統計的解析
アルファルファ乾草のタンパク質可溶化において調査した変数間に関係が存在するかどうかを決定するため、温度、石灰添加量、アルファルファ濃度を変数として使い、60分の時点でのTKN可溶化(変換率)を応答変数として使って、追加的な2要因実験が実行された。調査した条件を、各実験について得られた変換率とともに表16にまとめておく。

表16 2要因実験計画において調査した実験条件
【0121】
【表16】


前記応答関数を使い、イェーツ(Yates)・アルゴリズムが変換率の値に関して実行され、平均、変数の効果(effect)および調査した変数間の相互作用(interaction)が得られた。この情報を表17にまとめておく。測定のばらつきを決定するため、条件1および5は三重に繰り返された(表18)。

表17 イェーツ・アルゴリズムの結果(Milton and Arnold, 1990)
【0122】
【表17】


表18 標準偏差の計算および結果
【0123】
【表18】


表18では、分散(S)が調査された2つの条件の平均分散として計算された。次いで、変数の効果の標準偏差Sが、4つの値についての平均分散を用いて推定された(2要因における効果および相互作用は4つの計算の平均値である)。4自由度と99%信頼度が与えられているとして、tステューデント値は3.747である。すると、このt値にS(1.491)をかけることによって、イェーツ結果の列における有意でない効果の境界が与えられる(−5.59および5.59)。
【0124】
表17からすると、有意な効果は変数1からの効果(温度、E1=9.83>5.59)および変数3からの効果(アルファルファ濃度、E3=9.26>5.59)のみである。これは、実験1および3においてなされた観察と矛盾しない。要因計画法において得られた値から、有意でない変数相互作用の存在は、温度の効果とアルファルファ効果が加法的であることを含意している。両方の変数が高いときに最高の変換率を与えるのである。この解析はすぐにより高い温度および濃度に外挿することはできない(実験3から見られるとおり)。というのも、他の条件においては異なる諸現象が起こり得るからである。
【0125】
石灰添加量についてはアルファルファ乾草からのタンパク質の可溶化に対して有意な効果はなく(E2=2.32<5.59)、この変数は他の変数と相互作用しない(I12、I23<5.59)。したがって、石灰添加量は、タンパク質可溶化よりもタンパク質からアミノ酸への酸性加水分解を防ぐことにのみ基づくのでよい。変換率は液体生成物における窒素(タンパク質)の存在を表すのみであり、個々の加水分解されたアミノ酸を表すのではない。
【0126】
原材料および残渣固体の組成どうしの比較により、タンパク質可溶化のためのアルファルファの石灰処理の有効性についての情報が得られる。両方の物質についての組成を表19に示す。これらの結果は要因計画法の条件5について得られたものである(75°C、0.075g石灰/gアルファルファ、60gアルファルファ/L)。

表19 生のアルファルファ乾草および石灰処理後の残渣固体中に存在するタンパク質および無機物含量の比較
【0127】
【表19】


表19は、残渣固体のカルシウム濃度が生のアルファルファよりも大きいことを示している。この値の増加は処理のために加えられる石灰のためである。その石灰は完全には水に溶けないのである。カリウムおよびナトリウムについての値は石灰処理の間に減少するが、これはこれらの塩の高い溶解度のためである。残渣固体中に存在する窒素は石灰処理前に原材料について得られた値と同様である。これは、可溶分中の窒素の濃度が原材料中の濃度と同様であることを含意する。
【0128】
条件5において可溶化されたアルファルファの分率は次のように計算される:
可溶性分率
=1−{32.5g残渣固体−[(3.55g溶存固体/100mL液体)×200mL水分]}/53.4g初期アルファルファ
=0.524g可溶化/gアルファルファ
この計算は液体200mL中に含まれる溶存固体について補正している。この値(0.524g可溶化/gアルファルファ)を表20に報告する。

表20 条件5について測定された変数
【0129】
【表20】


実験5 アミノ酸分析
アルファルファ乾草を60minおよび24hにわたって次の推奨条件で石灰処理した:100°C、0.075g石灰/gアルファルファ、60gアルファルファ/L。アミノ酸分析は3つの異なる方法で実行された。
(1)遠心分離した液体生成物‐遊離アミノ酸分析。この分析は、試料の追加的なHCl加水分解なしに行われたものである。分析手順によってアミノ酸が分解されることはなかったが、この分析では可溶性ポリペプチドはとらえられない。
(2)遠心分離した液体生成物‐全アミノ酸分析。この分析は液体試料の24h HCl加水分解を用いて行われた。一部のアミノ酸は分析手順によって破壊されるか他のアミノ酸に変換されるかした。この分析では可溶性ポリペプチドが測定にかかる。
(3)遠心分離した液体から水分を蒸発させたのちの乾燥生成物。この試料は固体のため、HCl加水分解は必須であった。一部のアミノ酸(アスパラギン、グルタミン、トリプトファン)は酸によって破壊され、測定できなかった。
【0130】
表21および22は、それぞれ60minおよび24hで石灰処理されたアルファルファについての遊離アミノ酸と全アミノ酸の濃度を示している。表23は、両方の試料についてのタンパク質およびミネラルの含量を示す。

表21 60minで石灰加水分解されたアルファルファ乾草の遠心分離した液体生成物についての遊離アミノ酸と全アミノ酸の濃度
【0131】
【表21】


表22 24hで石灰加水分解されたアルファルファ乾草からの遠心分離した液体生成物についての遊離アミノ酸と全アミノ酸の濃度
【0132】
【表22】


表23 石灰処理されたアルファルファ乾草の遠心分離した液体中に存在するタンパク質およびミネラルの含量の比較
【0133】
【表23】


すべての実験について、遠心分離した液体はケルダール決定では測定されうるがアミノ酸分析では測定され得ない懸濁粒子状物質の非常に高い濃度を含んでいた。このことが、アミノ酸決定とケルダール分析を使って推定されたタンパク質濃度との間の相違(1.45対4.64および1.37対5.79 gタンパク質/L)を説明する。
【0134】
表21‐表23の比較は、窒素濃度は60minから24hで上昇するが、全アミノ酸濃度は比較的一定のままであるということを示す。よって、アルファルファ乾草の加水分解において長時間の処理は必要ない。
【0135】
最後に、生成物のアミノ酸組成を、さまざまな家畜の必要とされる必須アミノ酸と比較した。
【0136】
表24は、乾燥生成物および液体生成物のアミノ酸組成を示している(遊離アミノ酸および全アミノ酸の両方――表21)。60minでの石灰加水分解されたアルファルファ乾草のアミノ酸組成は種々の単胃類の家畜の必須アミノ酸必要量に鑑みてバランスがよくない。特にヒスチジン、トレオニン、メチオニン、リシンの値が低い。他のいくつかのアミノ酸は大半の動物について十分であるが、すべてではない(トレオニン、チロシン)。アルファルファ乾草の石灰加水分解は、プロリンとアスパラギンに非常に富む生成物を生じるが、これらは家畜の食餌においては必須アミノ酸ではない。

表24 生成物と、さまざまな家畜についての必須アミノ酸必要量とのアミノ酸分析(アルファルファ乾草)
【0137】
【表24】


二つの液体試料(遊離と全アミノ酸)の間の相違は、全アミノ酸決定におけるいくつかのアミノ酸(特にトリプトファン、アスパラギン、グルタミン)の酸分解によって説明できる。また、遠心分離した液体中の一部のタンパク質は石灰によって加水分解されなかったかもしれず、HPLC分析によって検出されなかった可溶性ポリペプチドとして存在していたかもしれない。液体試料中の全アミノ酸と乾燥生成物との間の相違は、液体試料(5minにわたる3500rpmでの遠心分離)中に存在する高濃度の懸濁物質によって説明される。この懸濁物質は全アミノ酸測定の間には決定されなかった。HCl加水分解の前の最初のステップが15000rpmでの遠心分離だからである。懸濁物質は乾燥生成物の重要な部分をなし、これがアミノ酸組成についての非常に異なる結果を説明する。
【0138】
アルファルファについての最高のタンパク質可溶化(68%)は、60分、0.075gCa(OH)/gアルファルファ、100°C、60g乾燥アルファルファ/Lを使って達成された。タンパク質可溶化は温度とともに増す。アルファルファの初期濃度が高ければ変換率も60ないし80gアルファルファ/Lの間の上限までは上昇する。
【0139】
アルファルファ諸成分の高い溶解度のため、可溶化されたタンパク質は高く、調査されたすべての場合について劇的な変化はなかった(43%から68%)。石灰添加量は調査された4つの変数のうちでは最小の効果を有するが、アルファルファ中に天然に存在している酸がアミノ酸を害することを防ぎ、最終生成物における遊離アミノ酸のより高い割合を得るために若干の石灰は必要とされる。
【0140】
最後に、生成物のアミノ酸組成は、さまざまな単胃類の家畜のための必須アミノ酸必要量と比べて貧弱である。生成物はヒスチジン(分析では過小評価されている)、トレオニン、メチオニン、リシンが少ない。アスパラギンとプロリンに特に富んでいるが、これらは動物の食餌において必須ではない。このタンパク質生成物は、反芻動物にこの上なく好適である。
【0141】
石灰処理はホロセルロース部分の消化性を上げ(Chang et al., 1998)、熱化学処理からの残渣固体に付加価値を与える。両生成物を反芻動物飼料として使うことは、出発材料に比べたとき、より効率的な消化を保証する。
【0142】

〈例 3:大豆乾草中のタンパク質可溶化〉
大豆は通常、いくつかの食品の生成のために収穫される。収穫過程の間に、未使用のくずが大量に生成される。
【0143】
さらに、いくつかの特別な気象条件(たとえば長い乾期、長い雨期)は大豆の生長を妨げる。収穫高が低いと、大豆収穫物が食品産業の代わりに動物飼料(大豆乾草)の生成に向けられる。
【0144】
大豆乾草の処理は二つの別個の生成物を生じる:消化性の高い可溶性部分と脱リグニンされた残渣固体である。より高い試料消化性は、より少ない試料で動物の必要性が満たされることを保証する。
【0145】
日干しされた大豆乾草(すなわち、刈り取ったダイズの葉、茎、豆)はテラボン(Terrabon)社から入手し、次いでトマス・ワイリー実験室ミル(米国ペンシルヴェニア州フィラデルフィアのアーサー・H・トマス社)を使って粉砕され、40メッシュのスクリーンを通してふるいにかけられた。出発物質を特徴付けるために含水量、全窒素(タンパク質分率の目安)およびアミノ酸含量が決定された。
【0146】
表25に、種々の状態の大豆の組成をまとめておく。

表25 種々の状態の大豆の組成(McDonald et al., 1995)
【0147】
【表25】


大豆乾草は乾燥物91.31%、水分8.69%だった(表26)。TKNは3.02%で、これは乾燥大豆乾草中の粗タンパク質濃度にして約19%に相当する(表27)。残りの81%が繊維、糖分、ミネラル、その他に対応する。生の大豆乾草についてのアミノ酸組成を表28に与える。

表26 空気乾燥した大豆乾草の含水量
【0148】
【表26】


表27 空気乾燥した大豆乾草のタンパク質および無機物含量
【0149】
【表27】


表28 空気乾燥した大豆乾草のアミノ酸組成
【0150】
【表28】


実験1 結果の再現性
大豆乾草中のタンパク質可溶化についての結果の再現性を決定するため、いくつかの実験を次の同一の条件で実行した:温度、石灰添加量、大豆乾草濃度(それぞれ100°C、0.05g石灰/g大豆乾草、60g乾燥大豆乾草/L)。調査した実験条件および測定された変数を表29にまとめておく。

表29 大豆乾草のタンパク質可溶化における結果の再現性を決定するための実験条件および測定された変数
【0151】
【表29】


表30は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を温度、石灰添加量、大豆乾草濃度の同一条件について時間の関数として示している。乾燥大豆乾草についての平均TKN(3.02%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定した(表31)。

表30 実験1について、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(大豆乾草)
【0152】
【表30】


表31 実験1について、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(大豆乾草)
【0153】
【表31】


図21は、大豆乾草のタンパク質加水分解を、同一の実験条件での4つの異なる実行について時間の関数として呈示する。事例間の変動は比較的小さく、分散は中くらいの値で増え、両端で減る傾向がある。温度挙動からは、150minでの値は最大変換率に近い。すべての事例についての変化率が比較的小さいからである。

実験2 温度効果
大豆乾草中のタンパク質の可溶化に対する温度の効果を決定するため、石灰添加量および大豆乾草濃度を一定に保って(それぞれ0.05g石灰/g大豆乾草、60g乾燥大豆乾草/L)異なる温度で実験を行った。調べられた実験条件および測定された変数を表32にまとめておく。

表32 大豆乾草のタンパク質可溶化における温度の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0154】
【表32】


表33は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を種々の温度について時間の関数として示している。乾燥大豆乾草についての平均TKN(3.02%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定した(表34)。

表33 実験2について、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(大豆乾草)
【0155】
【表33】


表34 実験2について、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(大豆乾草)
【0156】
【表34】


図22は、タンパク質加水分解(変換率の百分率)を、調査した種々の温度について時間の関数として呈示する。変換率はより高い温度で高くなっている。100°Cについての変換率は115°Cで得られた変換率と同様である。したがって、低いほうの温度が好ましい。アミノ酸の分解が少なくなり、所要エネルギーが少なくなり、作業圧力が低くなるからである。
【0157】
表32の分析により、ここでもまた、タンパク質の可溶化が増すにつれてpHが下がったことが示される。これは、より多くの石灰がアミノ酸生成物と反応するため、および変換率が上がるにつれて生成物のタンパク質百分率も上がるためである。
【0158】
75°Cでの変換率は100°Cおよび115°Cでの変換率とは統計的に異なっている。すべての場合について、反応速度は150minで下がる傾向がある。
【0159】

実験3 石灰添加量の効果
大豆乾草のタンパク質可溶化に対する石灰添加量の効果を決定するため、温度および大豆乾草濃度定数を一定に保って(それぞれ100°C、60g乾燥大豆乾草/L)異なる石灰/大豆乾草比において実験を行った。調べられた実験条件および測定された変数を表35にまとめておく。

表35 大豆乾草のタンパク質可溶化における石灰添加量の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0160】
【表35】


表36は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を種々の石灰添加量について時間の関数として示している。乾燥大豆乾草についての平均TKN(3.02%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定し、表37に掲げた。初期の変換率はあらゆる石灰添加量について同様であるが、これは、大豆乾草に存在する可溶性成分のためである。

表36 実験3について、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(大豆乾草)
【0161】
【表36】



表37 実験3について、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(大豆乾草)
【0162】
【表37】


図23は、可溶化されたタンパク質(変換率の百分率)を、調査した種々の石灰添加量について時間の関数として呈示する。変換率は石灰添加量が増えるにつれて上昇し、石灰添加なしの実験から0.05g/gの石灰添加量に変わるときに最大の効果をもたらす。石灰添加なしの場合には15minで「平衡」が達成され、100°Cでのさらなる処理をしても追加的なタンパク質可溶化は生じない。よって、効率的な大豆乾草中のタンパク質可溶化のためには、最小限の石灰添加量が要求される。石灰添加量0.05と0.1g/gの間の差は150minについてしか統計的に有意ではない。
【0163】
石灰なしの実験では、最終pHは5.9であった。pHが酸性になったのはありそうなことである。バイオマスから解放された酸(たとえばアセチル基)およびタンパク質から解放されたアミノ酸のためである。石灰が使われなかったので、溶存固体の濃度はより低かった。他のすべての場合には、表35で報告されているように、石灰は溶存固体の一部であった。

実験4 大豆乾草濃度の効果
タンパク質可溶化に対する初期大豆乾草濃度の効果を決定するため、温度および石灰添加量を一定に保って(それぞれ100°C、0.05g石灰/g大豆乾草)異なる大豆乾草濃度において実験を行った。調べられた実験条件および測定された変数を表38にまとめておく。

表38 タンパク質可溶化における初期大豆乾草濃度の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0164】
【表38】


表39は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を種々の大豆乾草濃度について時間の関数として示している。乾燥大豆乾草についての平均TKN(3.02%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定し、表40に掲げた。

表39 実験4について、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(大豆乾草)
【0165】
【表39】


表40 実験4について、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(大豆乾草)
【0166】
【表40】


図24は、タンパク質可溶化(変換率の百分率)を、調査した種々の大豆乾草濃度について時間の関数として呈示する。この図は、60minより短い時間については、タンパク質可溶化が大豆乾草濃度とともに変わらないことを示している。150minにおける値は以前の値と一貫しないので、おそらくは何らかの試料採取の問題を有している。表38から、溶存固体および最終生成物中に存在するタンパク質は、大豆乾草の濃度が上がるにつれて増える。
【0167】
原材料および残渣固体の組成どうしの比較により、タンパク質可溶化のための大豆乾草の石灰処理の有効性についての情報が得られる。両方の物質についての組成を表41に示す。これらの結果は、100°C、0.05g石灰/g大豆乾草、60g大豆乾草/Lについて得られたものである。

表41 生の大豆乾草中に存在するタンパク質および無機物含量と石灰処理後の残渣固体および遠心分離した液体との比較
【0168】
【表41】


表41は、残渣固体のカルシウム濃度が生の大豆乾草よりも大きいことを示している。この値の増加は処理のために加えられる石灰のためである。その石灰は完全には水に溶けないのである。他のミネラルについての値は石灰処理の間に減少するが、これはこれらの塩の高い溶解度のためである。残渣固体中に存在する窒素は石灰処理前に原材料について得られた値より33%小さい。
【0169】
遠心分離した液体は石灰のために非常に高いカルシウム濃度をもち、このことは最終生成物(遠心分離した液体の水分蒸発後)におけるカルシウム濃度が窒素含量よりも高くなるであろうことを含意する。最終生成物におけるタンパク質とカルシウムの比は次のようになる:
比=(0.1176×6.25)/0.2114=3.48gタンパク質/gCa
可溶化された大豆乾草の分率は次のように計算される:
可溶性分率
=1−{26.2g残渣固体−[(15.6g溶存固体/572mL液体)×200mL水分]}/55.9g初期大豆乾草
=0.450g可溶化/g大豆乾草
この計算は液体200mL中に含まれる溶存固体について補正している。固体は洗浄されなかったので、残った液体は溶存固体を含んでいるのである。この値(0.450g可溶化/g大豆乾草)を表42に報告する。

表42 100°C、0.05g石灰/g大豆乾草、60g大豆乾草/Lについて測定された変数
【0170】
【表42】


実験5 アミノ酸分析
大豆乾草を150minおよび24hで次の推奨条件で石灰処理した:100°C、0.05g石灰/g大豆乾草、60g大豆乾草/L。アミノ酸分析は3つの異なる方法で実行された。
(1)遠心分離した液体生成物‐遊離アミノ酸分析。この分析は、試料の追加的なHCl加水分解なしに行われたものである。分析手順によってアミノ酸が分解されることはなかったが、この分析では可溶性ポリペプチドはとらえられない。
(2)遠心分離した液体生成物‐全アミノ酸分析。この分析は試料の24h HCl加水分解を用いて行われた。一部のアミノ酸は分析手順によって破壊されるか他のアミノ酸に変換されるかした。この分析では可溶性ポリペプチドが測定にかかる。
(3)遠心分離した液体から水分を蒸発させたのちの乾燥生成物。この試料は固体のため、HCl加水分解は必須であった。一部のアミノ酸(アスパラギン、グルタミン、トリプトファン)は酸によって破壊され、測定できなかった。
【0171】
表43および44は、それぞれ150minおよび24hで石灰処理された大豆乾草についての遊離アミノ酸と全アミノ酸の濃度を示している。表45は、両方の試料についてのタンパク質およびミネラルの含量を示す。

表43 150minで石灰加水分解された大豆乾草の遠心分離した液体生成物についての遊離アミノ酸と全アミノ酸の濃度
【0172】
【表43】


表44 24hで石灰加水分解された大豆乾草の遠心分離した液体生成物についての遊離アミノ酸と全アミノ酸の濃度
【0173】
【表44】


表45 石灰処理された大豆乾草の遠心分離した液体中に存在するタンパク質およびミネラルの含量の比較
【0174】
【表45】


いずれの場合についても、全アミノ酸濃度はほぼ遊離アミノ酸濃度の約2倍である。このことは、アミノ酸の50%が小さなペプチドの形で存在していることを示している。
【0175】
すべての実験について、遠心分離した液体はケルダール決定では測定されうるがアミノ酸分析では測定され得ない懸濁粒子状物質の非常に高い濃度を含んでいた。このことが、アミノ酸決定とケルダール分析からの推定されたタンパク質濃度との間の相違(1.36対7.35および1.31対9.76 gタンパク質/L)を説明する。
【0176】
表43‐表45の比較は、窒素濃度は150minから24hで上昇するが、全アミノ酸濃度は比較的一定のままであるということを示す。よって、大豆乾草の加水分解において長時間の処理は必要ない。
【0177】
最後に、タンパク質生成物のアミノ酸組成を、さまざまな家畜の必須アミノ酸の必要と比較した。
【0178】
表46は、大豆乾草の石灰加水分解からのアミノ酸生成物は種々の単胃類の家畜の必要量に鑑みてバランスがよくないことを示している。特にヒスチジン、トレオニン、メチオニン、リシンの値が低い。他のいくつかのアミノ酸(チロシン、バリン)は大半の動物について十分であるが、すべてではない。大豆乾草の石灰加水分解はアスパラギンに非常に富む生成物を生じるが、これは家畜の食餌においては必須アミノ酸ではない。このタンパク質生成物は反芻動物に最も好適である。

表46 生成物と、さまざまな家畜についての必須アミノ酸必要量とのアミノ酸分析(大豆乾草)
【0179】
【表46】


二つの液体試料(遊離と全アミノ酸――表43と表44)の間の相違は、全アミノ酸決定におけるいくつかのアミノ酸(特にトリプトファン、アスパラギン、グルタミン)の酸分解によって説明できる。また、遠心分離した液体中の一部のタンパク質は石灰によって加水分解されなかったかもしれず、HPLC分析によって検出されなかった可溶性ポリペプチドとして存在していたかもしれない。液体試料中の全アミノ酸と乾燥生成物との間の相違は、液体試料(5minにわたる3500rpmでの遠心分離)中に存在する高濃度の懸濁物質によって説明される。この懸濁物質は全アミノ酸測定の間には決定されなかった。HCl加水分解の前の最初のステップが15000rpmでの遠心分離だからである。懸濁物質は乾燥生成物の重要な部分をなし、これがアミノ酸組成についての非常に異なる結果を説明する。
【0180】
最高のタンパク質可溶化(85%)は、0.05gCa(OH)/g大豆乾草、150分、100°C、40g乾燥大豆乾草/Lを使って達成された。この実験で調べられた変数の効果は次のようにまとめられる:
タンパク質可溶化は温度とともに増し、100°Cは115°Cと同じ結果を与える。推奨される温度は100°Cである。これはエネルギー必要量がより小さく、圧力容器が必要とされないからである。大豆乾草の初期濃度は60min未満の時間ではタンパク質可溶化において何ら重要な効果をもたない。効率的にタンパク質を可溶化するためには最小限の石灰添加量(少なくとも0.05gCa(OH)/g大豆乾草)が必要とされる。すべての場合について、タンパク質可溶化は時間とともに増し、最大値が得られるのは150minについてである。大豆乾草濃度は調査された4つの変数のうちでは最小の有意効果を有する。
【0181】
加水分解生成物とさまざまな単胃類家畜のための必須アミノ酸必要量とを比べると、これがバランスのよい生成物でないことが示される。必須アミノ酸でないアスパラギンの濃度が高くなっている。
【0182】
アルファルファ乾草の場合と同様、タンパク質生成物は反芻動物について最も好適である。石灰処理はホロセルロース部分の消化性を上げ(Chang et al., 1998)、熱化学処理からの残渣固体に付加価値を与える。両生成物を反芻動物飼料として使うことは、出発材料に比べたとき、より効率的な消化を保証する。
【0183】

〈例 4:鶏の臓物中のタンパク質可溶化〉
鶏の臓物はテキサスA&M家禽科学科から入手した。一般には臓物は骨、頭、くちばし、脚を含みうるが、今の場合には内臓(たとえば心臓、肺、腸、肝臓)のみを含んでいた。臓物は工業用ブレンダーで10minにわたってブレンドされ、プラスチックボトルに集められ、最終的にはのちの使用のために−4°Cで冷凍された。このブレンドされた物質の試料を使って、出発物質を特徴付けるために含水量、全窒素(タンパク質分率の目安)、灰分(ミネラル分率)およびアミノ酸含量が得られた。
【0184】
式1が、遠心分離した試料の変換率を臓物の初期全ケルダール窒素(TKN)に基づいて決定する:
【0185】
【数2】


式2が、遠心分離していない試料の変換率を臓物の初期全ケルダール窒素(TKN)に基づいて決定する:
【0186】
【数3】


式3は、初期臓物窒素のうちの損失TKNの分率を質量バランスを使って推定する:
【0187】
【数4】


生の臓物は乾燥物33.3%、水分66.7%だった(表47)。乾燥臓物の粗タンパク質濃度は約45%で、灰分は約1%であった。残りの54%は繊維および脂肪だった。

表47 生の臓物の含水量
【0188】
【表47】


実験1 プロセス変数の効果
実験1はAないしHとラベル付けされた8つの同様の実験を含んでいる。実験A、B、Cは100°C、20g乾燥臓物/L、0.1gCa(OH)/g乾燥臓物で試験された。これらの条件は、鶏の羽毛についての同種の反応を調査した以前の実験(Chang and Holtzapple, 1999)の最適結果から得られたものである。残りの実験(DないしH)は表48に示すように種々の操作条件で実行された。

表48 実験1で使われた実験条件(鶏の臓物)
【0189】
【表48】


表49は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を上記8つの実験について時間の関数として示している。乾燥臓物についての平均TKN(7.132%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定した。それを表50に掲げる。表50の変換率は図25‐28V.4.にグラフで呈示されている。

表49 実験1について、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(鶏の臓物)
【0190】
【表49】


表50 実験1について、全TKNから可溶性TKNへの変換分率(鶏の臓物―実験1)
【0191】
【表50】


図25‐28は、これらの条件では、固相の窒素から液相への変換は効率的ではなかった(45ないし55%)ことを示している。このことは、固相のタンパク質の多くは水酸化物と反応しない、あるいはアミノ酸が沈殿を形成して固相に戻ったことを含意する。もう一つの考慮は、原材料中の脂肪の存在である。脂肪は水酸化物を消費し、よってタンパク質加水分解を遅くする。
【0192】
図25‐28は、反応が接触時間の最初の10または15minの間に起こり、その後は変換率(濃度)は一定に留まることを示している。
【0193】
図25は、同じ実験条件を用いた種々の実験が匹敵する変化率を与えることを示している。図26は、原材料の種々の初期濃度について変換率が同様であることを示している。このことは、液相中のアミノ酸濃度は、出発点の臓物の濃度が高いほど高いということを意味している。
【0194】
図27は、石灰添加量が低いと変換率が低いことを示している。したがって、この反応は最小限の添加量を必要とする。0.075と0.1の石灰添加量について同様の結果が得られているので、最小の0.075gCa(OH)/g乾燥臓物を使うことにする。図28は、75°Cでは、反応は100°Cとほとんど同じくらいの速さであることを示している。低いほうの温度が好ましい。アミノ酸の分解が少ないからである。
【0195】

実験2 プロセスの最適化
実験2は、変換率がより高くなる(より効率的)条件を見出すことが目的であった。実験2は、IないしPとラベル付けされた全部で8つの実験を含む。反応は速く、15min以後は変換率は一定なので、この反応の代表的な条件を得るためには試料は一つしか必要とされない。表51は実験条件および液体試料中のTKN濃度を示している。

表51 実験2についての実験条件および結果(鶏の臓物―各実行について2つの試料)
【0196】
【表51】


表52は、実験IないしMについて、変換率は、式1を使うと(すなわち、固体の形で加えられたTKN当たりの液体のTKN)63%から84%までの範囲で変化することを示している。実験JないしMについては、変換率は、式2を使うと(すなわち、固体の形で加えられたTKN当たりの遠心分離していない試料中の液体のTKN)83%から87%までの範囲で変化している。実験JないしMについて式3は、75°Cでは初期臓物窒素の13%の損失を、100°Cでは初期臓物窒素の15%の損失を示している。失われた窒素がどこへ行くのかははっきりしない。気相に失われるのかもしれないし、反応器の金属表面に付着するのかもしれない。表51および表52は、最も高い諸変換率については、最終pHが実験1について、および実験2での他のすべての実行について得られるすべてのpHに比べて低いことを示している。実験2から、温度75°C、石灰添加量0.075gCa(OH)/g乾燥臓物を推奨してもよいであろう。

表52 実験2についての、全TKNから可溶性TKNへの変換分率(鶏の臓物)
【0197】
【表52】


実験3 最終生成物の分析
図29は、実験2の条件(石灰添加量0.075gCa(OH)/g乾燥臓物、温度75°C、臓物濃度40g乾燥臓物/L、時間1h)のもとで得られた2つの遠心分離した液体試料についてのアミノ酸スペクトルを示している。まず、追加処理なしの生の遠心分離した液体試料におけるアミノ酸組成をHPLC分析により決定した。第二に、遠心分離した液体試料を6N HClで1hにわたって処理し、こうしてタンパク質を対応するアミノ酸に加水分解した。両方の結果を比べることにより、石灰が鶏の臓物を個々のアミノ酸に加水分解していると結論してもよいであろう。2つの場合の結果は本質的に同一である。
【0198】
図30は、生の臓物と石灰処理後に残る固体残渣とについてアミノ酸スペクトルを比較している。これを行うために、残渣固体を105°Cで24hにわたって乾燥させ、タンパク質測定のための試料を採取した。この固体残渣の含水量が約80%なので、測定されたタンパク質は液相と固相の両方に由来している。残渣固体におけるアミノ酸含量が生の臓物におけるよりもずっと少ないのは、アミノ酸が液相に溶けたためである。
【0199】
図V.6に示した質量バランスとデータを使うと、原材料から「抽出された」各アミノ酸の量は50%から75%の範囲で変わる。しかし、これは固体に付着している液体中のタンパク質も含んでいる。付着した液体中に溶けているタンパク質を差し引けば、各アミノ酸の抽出の範囲は粗タンパク質の52%から76%になる。これは実験2で得られた結果と同様である。
【0200】
もう一つの重要な課題は、反応器操作条件での個々のアミノ酸の分解を判別することである。これを判別するためには、アミノ酸濃度を2つの異なる時刻において得る必要がある。図31は、遠心分離した液相中に30minの時点で存在するアミノ酸は2hの時点とほとんど同一であることを示している。図32は、出発点の臓物濃度を変えても、やはり、アミノ酸は30minと2hとで同じ濃度であることを示している。
【0201】
図33は、三つの異なる初期臓物濃度の結果を、同じ時間、温度、石灰添加量について比較している。これらの結果は、予想されるように、遠心分離した液相中のアミノ酸濃度は、原材料の初期濃度が高いほど高いことを示している。
【0202】
図34は、アミノ酸濃度を反応の最初の10minについて時間の関数として調べている。濃度はどのアミノ酸についても10min以後は安定化し、30minの値も匹敵する。このことは、実験1で結論されたように、反応が起こるのが接触の最初の10ないし30minであることを含意している。
【0203】
HPLCおよびケルダール法を使って実行された実験からは、窒素含量はいずれの場合においても同様であった(表53参照)。これらの結果は、全窒素含量への主たる寄与はアミノ酸(すなわち、鶏の臓物のタンパク質成分)からであることを含意している。

表53 図V.10の実験について、HPLC法とケルダール法とを用いた場合の窒素含量(g窒素/100g液体試料)の結果の比較
【0204】
【表53】


表54は、必須アミノ酸のためのさまざまな必要量を、表55に呈示されるさまざまな家畜の必要と比較するものである。表56は、さまざまな一般的な動物飼料の組成を示しており、これも表54と比較されうる。

表54 2つの実験:(a)75°C、0.075g Ca(OH)/g乾燥臓物、60g乾燥臓物/L、30min;(b) 50°C、0.100g Ca(OH)/g乾燥臓物、40g乾燥臓物/L、90minの液相中に存在するアミノ酸と種々の動物の食餌の必要量との比較
【0205】
【表54】


表55 成長期の家畜についての栄養必要量(Pond et al., 1995)
【0206】
【表55】


表56 家畜の食餌に使われる種々の飼料の組成(Pond et al., 1995)
【0207】
【表56】


表に掲げた結果は、50°Cでの実験については、可溶化されたタンパク質が成長期の必須アミノ酸必要量を満たすか上回ることを含意している。他方、75°C(変換率が最適になる条件)では、チロシンおよびリシンの数値が要求される必要量よりも低くなっている。
【0208】
タンパク質を15%(含水ベース)または45%(乾燥ベース)含む鶏の臓物は、100°C未満の温度でのCa(OH)による処理によりアミノ酸に富む生成物を得るのに使用できる。上記のプロセスのためには、低い温度要件のため、簡単な加圧しない容器を使うことができる。
【0209】
調査した温度、石灰添加量および臓物濃度のすべての条件について、反応30分より以後は変換率の有意な変化は起こらなかった。
【0210】
タンパク質変換率を最大にする(80%まで)最適条件は、0.075gCa(OH)/g乾燥臓物を75°Cで15min以上にわたって処理することである。初期臓物濃度は、変換率に対しても、生成物のアミノ酸スペクトルに対しても有意な効果はなかった。
【0211】
しかしながら、濃度の高い生成物を得、よって最終生成物を濃縮するためのエネルギー必要量を低減させるためには高い臓物濃度が推奨される。
【0212】
100°C未満で2時間までのすべての実験において、アミノ酸分解はほとんど観察されなかった。よって、100°C程度の温度で液体生成物を蒸発させても、ほとんど分解は起こらないはずである。
【0213】
50°Cでは、得られた必須アミノ酸のスペクトルは、成長期にある多くの家畜の要求される必要量を満たすか上回るかする。よって、鶏の臓物を石灰処理して得られるアミノ酸に富むこの固体生成物は、これらの動物のためのタンパク質補給品の役を果たしうる。75°Cで得られた生成物は必要とされるよりリシンおよびチロシンの量が少なく、よって効率的ではないであろう。
【0214】

〈例 5:鶏の臓物および羽毛中のタンパク質可溶化〉
畜殺産業による動物臓器の廃棄は重要な環境問題である。家禽産業は大量の廃棄物(臓物、羽毛および血)を生じ、畜殺場に集められる量はこれらの廃棄物を処理するための技術を開発するに足るほど多い。廃棄物が個別に集められる場合、血粉(補助飼料として使われる加熱乾燥された血液)、加水分解した羽毛粉、家禽ミールおよび脂肪に加工することができる。
【0215】
家禽の体重の5%が羽毛である。その高いタンパク質含量のため(乾燥重量の89.7%;表57)、羽毛は食料のための潜在的なタンパク質源であるが、丈夫なケラチン構造の完全な破壊が必要である(Dalev, 1994)。

表57 家禽臓物および鶏の羽毛の組成(Wisman et al., 1957およびDalev,1994)
【0216】
【表57】


家禽の臓物は鶏の羽毛よりずっと多くのヒスチジン、イソロイシン、リシン、メチオニンを含んでいる(鶏の臓物および羽毛の特性は表57ないし59に示されている)。よって、家禽の臓物および羽毛のミールを合わせれば、よりよいアミノ酸バランスをもつであろう(EI Boushy and Van der Poel, 1994)。羽毛/臓物プロセスは、羽毛のほうが臓物よりも分解または加水分解するのが困難であるという事実を取り入れうる。

表58 家禽臓物中で生存可能な微生物の量(Acker et al., 1959)
【0217】
【表58】


表59 家禽臓物の組成(Acker et al., 1959)
【0218】
【表59】


糞便の動物食餌への追加は成長に悪影響をもちうるためと(Acker et al., 1959)、公衆衛生への配慮のため、飼料の目的に使われる臓物は細菌量(表58)を減らすよう処理してもよい。臓物中には高レベルの灰分(カルシウムおよびリン)とビタミンが存在する。家禽臓物はビタミン、ミネラルおよび可能性としては未同定の成長因子の有意な源であるようである(Acker et al., 1959)。
【0219】
家禽副産物を処理する一つの方法は、レンダリング(rendering)である。これは5つの段階を含む:
・原材料の貯蔵
・調理(cooking)および乾燥(殺菌)
・凝縮
・脂肪抽出
・ミール処置
家禽の血液、羽毛および臓物、飼養所廃棄物(hatchery wastes)および鳥の死骸が反応器(調理器)に到着する仕方はさまざまである。調理器において加水分解および殺菌が行われるが、ここで材料は設定された温度および圧力に所与の時間の間加熱される。次いで、材料は生成物の品質を保つためにできるだけ低い温度で乾燥される。環境規制のため、蒸気の凝縮が必要である。乾燥後の最終生成物は粉砕され、ふるいにかけられる。最終的に、このようにして用意された生成物は16%を超える脂肪含量を有することがあるので、より低い10‐12%の脂肪含量を保証するために脂肪抽出(たとえば、穴のあいた上げ底を通して隣接するタンクにラードを排出するなど)が必要とされる。抽出された脂肪は、飼料のための添加物として、あるいはその他の目的に使用できる(El Boushy and Van der Poel, 1994)。
【0220】
殺菌は調理の際に行われる。乾燥は別個の乾燥器において達成される。使用された乾燥機には二つの異なる型がある:ディスク乾燥器とフラッシュ乾燥器である。フラッシュ乾燥器は、小さな設置面積、油またはガスによって行われる加熱、高品質最終生成物といった恩恵があり、最も一般的である(El Boushy and Van der Poel, 1994)。
【0221】
レンダリング・プロセスは、種々の廃棄物を処理し、あるいは種々の生成物を生成するために使うことができる。たとえば:
・鶏の羽毛のみを使った、羽毛粉(FM: feather meal)
・臓物(内臓、頭、脚、血)からの、家禽副産物粉または臓物粉
・家禽臓物と鶏の羽毛の混合物からの、混合家禽副産物粉(PBM: poultry by−product meal)
種々の処理条件を使っての羽毛粉および家禽副産物粉についての組成および栄養価を表60‐63に示す。

表60 家禽副産物粉の組成
【0222】
【表60】


表61 種々の工業プラントでのレンダリング・プロセスを使った臓物粉組成(McNaughton et al., 1977)
【0223】
【表61】


表62 種々の家禽廃棄物プロセスからの飼料のアミノ酸含量(El Boushy and Van der Poel, 1994)
【0224】
【表62】


表63 種々の家禽廃棄物のアミノ酸含量と利用能(El Boushy and Van der Poel, 1994)
【0225】
【表63】


羽毛粉は約85%の粗タンパク質を含んでおり、システイン、トレオニン、アルギニンに富むが、メチオニン、リシン、ヒスチジン、トリプトファンは欠乏している(El Boushy and Roodbeen, 1980)。合成アミノ酸またはこの後者の4アミノ酸に富むその他の物質を添加すれば生成物の品質が改善されるであろう。高圧では、鶏の羽毛は「べとべとになる(gum)」傾向があり、流動性の悪いミールを与える。
【0226】
臓物および羽毛はテキサスA&M家禽科学科から入手した。使われた臓物は骨、頭、くちばし、脚および内臓(たとえば心臓、肺、腸、肝臓)を含む。臓物は工業用ブレンダーで10minにわたってブレンドされ、プラスチックボトルに集められ、最終的にはのちの使用のために−4°Cで冷凍された。このブレンドされた物質の試料を使って、出発物質を特徴付けるために含水量、全窒素(タンパク質分率の目安)およびアミノ酸含量が得られた。羽毛は何度か水で洗浄され、周囲温度で空気乾燥され、105°で乾燥され、最後にトマス・ワイリー実験室ミル(米国ペンシルヴェニア州フィラデルフィアのアーサー・H・トマス社)を使って粉砕され、40メッシュのスクリーンを通してふるいにかけられた。実験は、温度制御器および可変スピードモーターによって駆動される混合器をもつ2つのオートクレーブ反応器(12Lおよび1L)の中で実行された。調査した条件は、鶏の羽毛および鶏の臓物の両方について以前に実験から確立されたものである。処理条件は、温度、原材料濃度(乾燥臓物+羽毛/L)、水酸化カルシウム添加量(gCa(OH)/g乾燥臓物+羽毛)および時間を含む。試料は反応器から異なる時点において採取され、次いで遠心分離して液相が残渣固体物質から分離された。
【0227】
図35で示されるプロセスについて、種々の中間生成物についてデータが集められるよう、一連のステップをたどった。
【0228】
生の臓物は乾燥物33.4%、水分66.6%だった。乾燥臓物の粗タンパク質濃度は−34%(臓物TKN5.40%)、灰分が−10%で、残りの56%が繊維および脂肪であった。固体の生の臓物のアミノ酸分析(表64)はすべてのアミノ酸について良好なバランスを示している。アミノ酸分析からの総タンパク質含量は26gタンパク質/100g乾燥臓物である(表65)。HPLC決定で使われる酸性加水分解の間に一部のアミノ酸が破壊されたことと、ケルダール(TKN)値がタンパク質含量を近似することを考えれば、これら2つの値は似通っている。

表64 生の臓物を乾燥させたものについてのアミノ酸分析
【0229】
【表64】


表65 生の臓物を乾燥させた試料についてのアミノ酸含量の決定
【0230】
【表65】


鶏の羽毛は乾燥物92%、水分8%だった。乾燥羽毛の粗タンパク質濃度は約95.7%(羽毛TKN15.3%)で、残りの4.3%が繊維および灰分であった。

実験1 全臓物加水分解
実験1は、完全な臓物の試料(骨、頭、くちばし、脚、内臓)のタンパク質可溶化を、以前に行われた(第V章)内臓のみを使った試料と比較するものである。実験1で使用された条件は、75°C、0.10g石灰/g臓物、40g乾燥臓物/Lであった。調査された実験条件および測定された変数を表66にまとめておく。

表66 骨、頭、くちばし、脚、内臓をもつ臓物試料のタンパク質可溶化を決定するための実験条件および測定された変数
【0231】
【表66】


表67は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を、この実験についての時間の関数として示している。乾燥臓物についての平均TKN(5.40%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定し、表68に掲げた。

表67 石灰加水分解後の生の臓物と生成物とのタンパク質およびミネラルの含量
【0232】
【表67】


表68 全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率
【0233】
【表68】


調査した条件では、固相中の窒素の液相への変換は60%の効率であった。この値は以前の例において同じ条件について得られた値よりも低いが、このことは、以前は存在していなかった骨、頭、くちばし、脚の存在によって説明できる。これらの部位はより高い割合の灰分、ミネラルおよび不溶成分を含み、これらが加水分解プロセスの効率を下げるのである。タンパク質加水分解は、以前の結果と同様に、30minと90minの間で変化はなかった。熱に敏感なアミノ酸の分解の可能性を避けるため、30minが推奨される時間である。加水分解の間には窒素の重要な損失は起こらなかった(遠心分離していない試料では96.2%が説明される)。
【0234】
石灰処理後の残渣固体においては、固体中のタンパク質の重要な減少(約50%)が達成され、生の臓物の33.7%から16.2%になる(アミノ酸分析から得られた13.3%の値と同様;表69)。また、アミノ酸および生の臓物中に存在するその他の可溶成分の可溶化のため乾燥固体の重量の58%減少がある。この残渣固体は安定で、強い臭いもなく、成長期にある動物の必須アミノ酸必要量を満たすか上回るバランスのよいアミノ酸含量をもつ(表70)。

表69 石灰処理後の残渣固体についてのアミノ酸含量の決定
【0235】
【表69】


表70 石灰処理後の残渣固体についてのアミノ酸分析
【0236】
【表70】


鶏の臓物の石灰による処理は、存在しているタンパク質を水に溶ける小さなペプチドおよび遊離アミノ酸に加水分解する。よって、固相から液相への60%のTKN変換は、液相におけるタンパク質回収の効率を表す。表71は、この遠心分離した液体についてのアミノ酸バランスを示す。

表71 遠心分離した液体試料(30min)についてのアミノ酸分析
【0237】
【表71】


生の臓物、遠心分離した液体生成物および残渣固体のアミノ酸含量を比較することで(表72)、遠心分離した液体および残渣固体におけるアミノ酸含量が生の臓物と同様であることが示される。このことは、すべてのアミノ酸の可溶化が同じような速度で起こり、調査した条件については特定のアミノ酸の破壊もほとんどなかったことを含意している。

表72 鶏の臓物の石灰処理の間の種々の物質についてのアミノ酸含量の比較
【0238】
【表72】


鶏の臓物の中程度の温度および時間での石灰による処理は、液相中に存在している微生物の量を減らす。液体媒体が細菌成長のためのあらゆる必要な栄養分を含むので、液体の高速蒸発は不可欠である。
【0239】
試料のアミノ酸分析(表73)は、ここでもまた、成長期にある動物の必須アミノ酸必要量を満たすか上回るかする非常にバランスのよい生成物を示している。ヒスチジンについてはわずかに低い値が得られている。

表73 さまざまな家畜についての必須アミノ酸必要量と比較した、原材料および生成物のアミノ酸分析
【0240】
【表73】


実験2 臓物および羽毛の加工
鶏の羽毛および臓物は組成が異なり、その主成分は石灰によるタンパク質加水分解の際に異なる振る舞いをする。ケラチンタンパク質は臓物中のタンパク質よりも加水分解が困難で、より長い時間またはより高い温度および石灰濃度を必要とする。畜殺場からの残留廃棄物はしばしば臓物と羽毛の混合物を含んでおり、この混合物の処理がタンパク質に富む生成物を得るための可能性となっている。二つの生成物が生じうる:一つはさまざまな単胃類家畜についてのアミノ酸必要量を満たしうるバランスのよいアミノ酸含量をもつものであり(臓物由来)、第二のものは反芻動物のためのものである(羽毛由来)。
【0241】
鶏の羽毛/臓物混合物の加水分解は、図35に示したプロセスを使って調べられた。混合物の初期処理は、主として臓物中に存在するタンパク質を加水分解して液体生成物および残渣固体を得るために行われた。液体生成物にCOを通気することでCaCOを沈殿させ(これは石灰に変換し戻せる)、液相中のCa濃度を下げた。この液体の最終的な蒸発で第一の、固体のアミノ酸に富む生成物が生じる。
【0242】
段階1の残渣固体は反応器に戻され、鶏の羽毛のタンパク質の加水分解を促進するために、より長時間(異なる条件で)、さらに石灰で処理される。段階1と同様のステップをたどって第二の生成物が得られる。
【0243】
実験A1、B1、C1は条件1を使い、実験A2、B2、C2は条件2を使った。
【0244】
実験2の間に調査した実験条件および測定された変数を表74にまとめておく。17.5g含水臓物/7g含水羽毛の比を使ったのは、それが畜殺場で生成される廃棄物における平常の値だからである。

表74 臓物/羽毛混合物のタンパク質可溶化を決定するための実験条件および測定された変数
【0245】
【表74】


表75は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量をこの実験について時間の関数として示している。平均TKNの乾燥臓物についての値(5.40%)と鶏の羽毛についての値(15.3%)から混合物の初期TKNとして10.6%が得られる。タンパク質加水分解の変換率を推定し、表76および表77に挙げた。表76は、まず臓物(条件1)、次に羽毛(条件2)に関しての変換率を考慮している。一方、表77は混合物の初期TKNに関する変換率を与えている。調査した条件では、固相中の窒素の液相への最高の変換率は60%であった。

表75 実験2についての、遠心分離した液相の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(臓物/羽毛混合物)
【0246】
【表75】


表76 実験2についての、臓物(A1、B1、C1)および羽毛(A2、B2、C2)TKNについての、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率
【0247】
【表76】


表77 実験2についての、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(臓物/羽毛混合物)
【0248】
【表77】


表76のデータによれば、温度を50°Cから75°Cに変えても変換率に対して何ら有意な効果は生じない。実験A1およびB1の結果は、30minに比べて60minでより高い変換率を示しているが、これはケラチンタンパク質は加水分解がより遅く、石灰に接触している間に反応し続けるので、期待されたことである。また、表68と表76を比べると、臓物/鶏の羽毛混合物の変換率について、臓物だけの場合と同様の結果が得られている。よって、混合物中に存在する臓物は臓物単独の場合と同じ速度で加水分解していることになる。実験A1およびB1において調査した温度では、鶏の羽毛の加水分解は臓物に比べて比較的遅い。タンパク質加水分解は、条件1については温度を75°Cから100°Cに変えることによって著しく増加する(実験C1)。この結果は、この条件で鶏の羽毛について期待されるより高い変換率、2hの鶏の羽毛加水分解について60%によって説明される(Chang and Holtzapple, 1999)。
【0249】
実験A2およびB2からの結果は、鶏の臓物との混合物中にある鶏の羽毛の最初の「事前処理」によって羽毛についての加水分解の変換率がわずかに上がること(17%から23.8%)、そして鶏の羽毛を完全に加水分解するためにはより高い温度またはより長い時間が必要とされうることを示している。実験C2からの結果は75°Cに比べて100°Cでのより高い変換率を示している。Chang and Holtzappleの研究から、さらに高い温度またはより長い反応時間を使ってさらにタンパク質の加水分解を増すことが可能である。
【0250】
表78‐80は、臓物/羽毛混合物の石灰処理プロセスの種々のステップからの試料の全窒素およびミネラル含量を示している。液体をpH〜6が達成されるまでCOで通気した後に、カルシウム含量のわずかな減少(8%)が得られる。この減少には窒素含量の同様の減少が伴う(表78)。これらの結果はCOによるカルシウム沈殿が調査した条件については非常に非効率的なプロセスであることを示している。

表78 実験A1およびA2について石灰加水分解後の生成物のタンパク質およびミネラル含量
【0251】
【表78】


表79 実験B1およびB2について石灰加水分解後の生成物のタンパク質およびミネラル含量
【0252】
【表79】


表80 実験C1およびC2について石灰加水分解後の生成物のタンパク質およびミネラル含量
【0253】
【表80】


表79は、二回目の石灰処理後には固体中のタンパク質含量が生の混合物の10.6%(TKN)から最終残渣固体の7.9%(TKN)へと約25%の減少を受けることを示している。また、総乾燥重量(可溶物)にも約35%の減少がある。この残渣固体は安定で、強い臭いもなく、比較的高いカルシウム濃度で(すべての場合について〜6%)、動物成長に必要とされるいくつかのアミノ酸に乏しいアミノ酸内容で、鶏の羽毛のみについて得られた残渣と同様である。
【0254】
残渣固体#1におけるカルシウム濃度が高いため、第二の石灰処理には加える石灰量はより少なくてもタンパク質加水分解変換率について同様の結果が得られる。すべてのミネラルの濃度が調査したすべての場合について比較される(表78‐80)。遠心分離した液体#1および#2における窒素含量は最高温度とともに上昇する。ミネラル含量(リン、カリウム、ナトリウム)は、液体#1から液体#2にかけて減少するが、これはより多くの塩が温度および時間とともに可溶化されるためである。
【0255】
表81‐83は、調査した条件において得られた種々の液体生成物についてアミノ酸内容を示す。実験A2およびB2については、鶏の羽毛の加水分解からの全アミノ酸濃度を決定するため、アミノ酸分析の前に、試料をHClで24hにわたって加水分解した。実験C2では比較のため、加水分解は実行しなかった。

表81 実験A1およびA2における遠心分離した液体試料についてのアミノ酸分析
【0256】
【表81】


表82 実験B1およびB2における遠心分離した液体試料についてのアミノ酸分析
【0257】
【表82】


表83 実験C1およびC2における遠心分離した液体試料についてのアミノ酸分析
【0258】
【表83】


表81‐83から、実験A1、B1、C1からの結果を比較してみると、すべての場合について同様のアミノ酸内容となっている。よって、加水分解速度に対する温度の効果は、種々の個別アミノ酸について同様である。温度は加水分解変換率を上げる(100°Cと75°Cの比較;表76および77参照)が、鶏の羽毛/臓物混合物の石灰処理におけるアミノ酸内容には影響しない。
【0259】
実験A1、B1、C1を鶏の臓物のみのアミノ酸内容(表71)と比較してみると、すべての場合について同様の結果となっている。鶏の臓物のアミノ酸内容とタンパク質加水分解は、混合物中に鶏の羽毛が存在することによって影響されず、これらの羽毛の加水分解は調査した条件においては比較的小さい。より高温でのプロリンの増加は、より高い温度を必要とすると思われる(臓物中の)結合組織および骨の加水分解によって説明できる。
【0260】
実験A2、B2、C2からの結果の比較は、実験A1、B1、C1よりも大きなアミノ酸内容の相違を示す。これらの相違は、調査した異なる温度について残渣固体#1に残った加水分解していない臓物の異なる量で説明できる。
【0261】
表84および表85は、さまざまな家畜の必須アミノ酸の必要量を種々の生成物と比較している。

表84 さまざまな家畜の必須アミノ酸の必要量と比較した原材料および生成物のアミノ酸分析(臓物/羽毛混合物 条件1)
【0262】
【表84】


表85 さまざまな家畜の必須アミノ酸の必要量と比較した原材料および生成物のアミノ酸分析(臓物/羽毛混合物 条件2)
【0263】
【表85】


鶏の羽毛/臓物混合物の第一の加水分解後に得られた液体生成物について、表に挙げた結果は、可溶化されたタンパク質が成長期にある動物の必須アミノ酸必要量を満たすまたは上回ることを含意している。この生成物についてはヒスチジンが限定(limiting)アミノ酸となる。
【0264】
他方、第二の加水分解(羽毛)後の生成物では、トレオニン、システイン+メチオニン、トリプトファンならびに特にリシンおよびヒスチジンについての値が必要量より低くなっており、これは単胃類の動物の栄養のためには貧弱な生成物となっている。しかし、反芻動物には好適である。

実験3 カルシウム回収およびリサイクル
アルカリ物質として水酸化カルシウムを使うことは、遠心分離した液において比較的高いカルシウム濃度を生じさせる。カルシウム塩のいくつかは溶解度が低いので、カルシウムは炭酸カルシウム、重炭酸カルシウムまたは硫酸カルシウム(セッコウ)として沈殿させることによって回収できる。
【0265】
炭酸カルシウムがその低溶解度(0.0093g/L;CaCOの溶解度積は8.7×19−9)のために好ましい。対照的に、CaSOの溶解度は1.06g/L、溶解度積は6.1×10−5である。また、炭酸カルシウムからCa(OH)を再生するのは硫酸カルシウムからよりも容易である。CaSO
は可溶性がより高い物質で、セッコウはリサイクルがより難しいので、沈殿としてCaCOを使うのがより効率的なプロセスである。
【0266】
遠心分離した液にCOを通気すると、炭酸(HCO)が形成される。炭酸は、pKa=6.37、pKa=10.25の弱い二塩基酸である。HCO、HCO、CO2−の間の平衡が生じ、混合物中の各成分の分率はpHの関数である。Ca(HCOは水溶性なので(166g/L水、溶解度積は1.08)、プロセスの沈殿効率もpHの関数である。
【0267】
CO通気によるカルシウム回収を測定および研究するため、鶏の羽毛および臓物の加水分解プロセスからの遠心分離した液体生成物はプラスチックボトルに集められ、のちの使用のために−4°Cで冷凍された。この遠心分離された液体物質(400mL)のある既知の体積を磁気攪拌棒(一定攪拌)をもつ三角フラスコに入れ、加圧容器からCOを通気した。pHが下がるにつれ、液体試料(〜10mL)が集められ、遠心分離された。全窒素およびカルシウム含量が澄んだ液体中で測定された。異なる初期pHをもつ試料を使って、このパラメータが沈殿効率にどのように影響するかを調べた。
【0268】
図36は、カルシウムおよび全窒素含量を次の二つの異なる試料についてpHの関数として示している:一方の試料は鶏の臓物の加水分解からのもので(C1)、他方の試料は鶏の羽毛の加水分解からのものである(C2)。いずれの場合にも、TKN濃度は一定に留まる。これはカルシウム沈殿の間に窒素が失われていないことを含意している。
【0269】
図36は、カルシウム濃度がpH〜9で最小値(カルシウム回収50ないし70%)まで減少し、さらに低いpHでは増加していることも示している。カルシウム濃度の上昇は、重炭酸カルシウムの溶解度が高く、低いpH(8以下)では炭酸塩から重炭酸塩および炭酸への変換が起こることから期待されたことである。図36に示した遠心分離した液体は初期pHが比較的高いものである(それぞれ10.2および11.1)。いずれの場合にも、炭酸の種類の間の平衡は、炭酸塩濃度が比較的高いゾーンにある(pKa=10.25)。
【0270】
他方、図37は、比較的低い初期pH(〜9.2)をもつ試料のカルシウムおよび全窒素含量を示している。集められた試料は炭酸と重炭酸塩の間の平衡ゾーンの十分内側にあるので、カルシウムは沈殿として回収できない(重炭酸カルシウムは可溶)。

実験4 鶏の廃棄物のアルカリ性条件下での保存
この例でこれまでに記述した鶏の臓物および羽毛を原材料に使って、もう一組の実験をした。実験は周囲温度の1L三角フラスコ内で、混合なしで実行された。不快臭を避けるため、フラスコはフード内に置いた。水酸化カルシウム添加量(gCa(OH)/g乾燥臓物+羽毛)を変えることでこの廃棄物混合物を保存するのに必要とされる石灰を決定した。強烈な悪臭(発酵生成物)の生成を調査の終点と見なしている。
【0271】
同じ条件で重複した複数の実験が実行された。試料は反応器から異なる時点で採取し、遠心分離して液相を固体物質から分離した。遠心分離した液体試料において全窒素含量およびpHを測定した。
【0272】
鶏の廃棄物の混合物の保存のために必要とされる石灰を決定し、廃棄物物質のタンパク質可溶化を調査するため、石灰添加量を変え、周囲温度で、混合は利用せずに、いくつかの実験を実行した。調査した実験条件および測定された変数を表86にまとめておく。

表86 鶏の羽毛および臓物混合物の保存の調査の間の実験条件
【0273】
【表86】


表87はpH変化を時間の関数として示し、一方、表88は遠心分離した液体の全窒素含量を示している。

表87 鶏の臓物および羽毛の混合物の保存調査の間の時間の関数としてのpH
【0274】
【表87】


表88 鶏の臓物および羽毛の混合物の保存調査の間の時間の関数としての全ケルダール窒素含量
【0275】
【表88】


タンパク質加水分解の変換率を推定し、表89および90に挙げた。表89は変換率を臓物窒素含量に対して考えているのに対し、表90は変換率を混合物の初期TKNに対して考えている。調査した諸条件では、窒素の固相から液相への最高変換率は〜30%であった。

表89 臓物に対する液相中での、時間の関数としての百分率(保存実験)
【0276】
【表89】


表90 全窒素に対する液相中での、時間の関数としての百分率(保存実験)
【0277】
【表90】


表89では、100%より高い値は長期保存研究のための鶏の羽毛タンパク質の可溶化を含意する。また、実験HとIを比較すると、高いタンパク質加水分解は高いpHと相関している。加水分解プロセス(表87)の間のpHの低下は、新たな遊離アミノ酸の生成に関係している。強烈な臭いが生じる前日には9に近い値が測定された。
【0278】
鶏の廃棄物混合物の保存の間pHをモニタリングすることは、安定な(非発酵性の)液を保存することに対する有望な代替である。得られた結果によれば、pH10.5という値を、細菌成長を避けるための過剰石灰追加の下限として使うことができる。
【0279】
石灰は比較的溶けにくい塩基であり、この低い溶解度のため、固液混合物中に穏やかなアルカリ性条件を生じる(pH〜12)。この比較的低いpHは、強塩基(たとえば水酸化ナトリウムなど)の場合に比べて望ましくない分解反応の可能性を減らす。石灰はまた、鶏の廃棄物混合物が保存されている間の、タンパク質の消化および液相への可溶化を促進する(表90)。
【0280】
鶏の臓物および羽毛は、100°C未満の温度でCa(OH)/gで処理することによってアミノ酸に富む生成物を得るために使用できる。上記のプロセスのためには、低い温度要件のため、簡単な加圧しない容器を使うことができる。
【0281】
鶏の羽毛/臓物混合物は、二通りのアミノ酸に富む生成物を得るのに使用できる。一方はバランスが取れていて(臓物)、第二のものはいくつかのアミノ酸が欠乏しているがタンパク質とミネラル分が高い。
【0282】
混合物の第一の石灰処理(50‐100°Cでの実行)については、実験から得られた必須アミノ酸のスペクトルは、多くの成長期にある家畜についての必要量を満たすか上回る。よって、鶏の臓物を石灰処理して得られるアミノ酸に富むこの固体生成物は、これらの動物のためのタンパク質補給品の役を果たしうる。
【0283】
混合物の第二の石灰処理(75‐100°Cでの実行)については、実験から得られた必須アミノ酸のスペクトルはいくつかのアミノ酸が欠乏している。よって、鶏の羽毛/臓物混合物の第二の石灰処理によって得られるアミノ酸に富むこの固体生成物は、反芻動物のための窒素およびミネラル源の役を果たしうる。
【0284】
遠心分離した液体生成物にCOを通気することによる炭酸カルシウムの沈殿は、50ないし70%のカルシウム回収を与える。プロセス中、重炭酸カルシウムでなく炭酸カルシウムが形成されるよう、高いpHが推奨される(>10)。一方、最終的なpH〜8.8ないし9.0は石灰再生のための高いカルシウム回収を保証する。CaSOは溶解度がより高い物質であり、セッコウはリサイクルがより難しいので、沈殿としてCaCOの使用がより効率的なプロセスである。最後に、鶏の羽毛中のケラチン質物質を含む鶏の加工廃棄物が石灰溶液によって加水分解および保存された。腐敗臭がないこと、液相へのタンパク質の連続的な加水分解、および鶏の廃棄物混合物の保存中のpHの連続的な監視の可能性のため、本プロセスは安定な(非発酵性)液を保存することに対する実現可能な代替となり、農場内での貯蔵の間死骸を保存する。
【0285】

〈例 6:牛の体毛中のタンパク質可溶化〉
米国農務省によれば、米国において毎年一人当たり188ポンドの赤肉および鳥肉が消費されており、このうち〜116ポンドが牛肉および豚肉からである。畜殺は大量の廃棄物を生じ、体毛は全重量の3ないし7%に相当する。廃棄物残余をもっとよく活用し、それを有用な製品に転じることが必要とされ、望まれている。
【0286】
含水状態での牛の体毛はテラボン社から入手して空気乾燥された。出発物質を特徴付けるため、含水量、全窒素(タンパク質分率の推定)およびアミノ酸含量が決定された。
【0287】
空気乾燥した体毛はこれらの実験のための出発物質として使われる。その乾燥物含量、化学組成およびアミノ酸バランスをそれぞれ表91、表92、表93に掲げる。

表91 空気乾燥した牛の体毛の乾燥物含量
【0288】
【表91】


表92 空気乾燥した牛の体毛のタンパク質およびミネラル含量
【0289】
【表92】


表93 空気乾燥した牛の体毛のアミノ酸組成
【0290】
【表93】


出発物質は、ヒスチジン、メチオニン、チロシン、フェニルアラニンのレベルが低い、比較的バランスのよいアミノ酸内容を含んでいる。灰分は非常に少なく(〜1%)、粗タンパク質含量は高い(〜92.1%)。初期含水量は6.15%である。

実験1 体毛濃度の効果
タンパク質の可溶化における初期体毛濃度の効果を決定するため、温度および石灰添加量を一定に保って(それぞれ100°Cおよび0.10g石灰/g空気乾燥体毛)種々の濃度で実験を実行した。調査した実験条件および測定された変数を表94にまとめておく。

表94 牛の体毛のタンパク質可溶化における初期体毛の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0291】
【表94】


表95は、種々の体毛濃度について、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を時間の関数として示している。空気乾燥した体毛についての平均TKN(14.73%)に基づいてタンパク質加水分解の変換率を推定し、表96に掲げる。

表95 実験1についての、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(牛の体毛)
【0292】
【表95】


表96 実験1についての、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(牛の体毛)
【0293】
【表96】


図38は、調査した種々の体毛濃度についての時間の関数としてのタンパク質可溶化(変換率の百分率)を呈示している。これは、体毛濃度がタンパク質加水分解(変換率)に対して何ら重要な効果をもたないこと、そして、鶏の羽毛という別のケラチン物質について得られた70%のオーダーの変換率を得るためには高めの石灰添加量または長めの処理期間が必要とされることを示している。
【0294】
表94が示すように、期待されるように、溶存固体は体毛濃度が高いほど高くなっている。いずれの場合についても最終pHは初期の12.0よりも低く、加水分解の間に石灰が消費されたことおよび石灰が最終的な混合物において固体として存在していなかったことを含意している。

実験2 石灰添加量の効果
空気乾燥した体毛のタンパク質の可溶化における石灰添加量の効果を決定するため、温度および体毛濃度を一定に保って(それぞれ100°Cおよび40g空気乾燥体毛/L)種々の石灰/体毛比で実験を実行した。調査した実験条件および測定された変数を表97にまとめておく。

表97 牛の体毛のタンパク質可溶化における石灰添加量の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0295】
【表97】


表98は、種々の石灰添加量について、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を時間の関数として示している。空気乾燥した体毛についての平均TKN(14.73%)に基づいてタンパク質加水分解の変換率を推定し、表99に掲げる。

表98 実験2についての、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(牛の体毛)
【0296】
【表98】


表99 実験2についての、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(牛の体毛)
【0297】
【表99】


図39は、調査した種々の石灰添加量について、時間の関数としてのタンパク質可溶化(変換率の百分率)を呈示している。これは、0.1g石灰/g空気乾燥体毛の場合を除くすべての石灰添加量について変換率が同様であることを示している。図38は、長い時間のところで変換率の差が大きくなり、調査したどの石灰添加量についても8hでも反応速度の低下が見られないことを示している。よって、処理期間を長くすることで変換率を上げることができ、本プロセスが効率的であるために必要とされる最小の石灰添加量。
【0298】
表97が示すように、期待されるように、溶存固体は石灰添加量が高いほど高くなっている(より高い液中のカルシウム塩およびより高い変換率)。最終pHは石灰添加量が増すにつれて高くなり、やはり加水分解の間に石灰が消費されたことおよび最終的なOH濃度(pH)が当該処理の効率に関係させられることを含意している。
【0299】
図39に示された振る舞いは、加水分解反応のための触媒としての水酸基の必要性に関連させることができる。石灰の低い溶解度はあらゆる処理において「一定の」石灰濃度を維持する(0.2ないし0.35g石灰/g空気乾燥体毛)が、プロセス中のその消費は石灰添加量が少なくなった反応を遅くし、あるいはより速く頭打ちにする。

実験3 より長期の処理の効果
タンパク質の可溶化における長期処理の効果を確立するため、次の二つの異なる条件で実験が実行された:100°C、0.2g石灰/g空気乾燥体毛、40g空気乾燥体毛/Lおよび100°C、0.35g石灰/g空気乾燥体毛、40g空気乾燥体毛/L。調査した実験条件および測定された変数を表100にまとめておく。

表100 牛の体毛のタンパク質可溶化におけるより長期の処理の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0300】
【表100】


表101は、種々の石灰添加量について、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を時間の関数として示している。空気乾燥した体毛についての平均TKN(14.73%)に基づいてタンパク質加水分解の変換率を推定し、表102に掲げる。

表101 実験3についての、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(牛の体毛)
【0301】
【表101】


表102 実験3についての、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(牛の体毛)
【0302】
【表102】


図40は、調査した二つの異なる条件についての時間の関数としてのタンパク質可溶化(変換率の百分率)を呈示している。これは、より長い時間の処理について変換率が互いに異なること、そして24ないし36時間の処理において反応が最高変換率に達することを示している。石灰の可用性と変換率との関係はこの長期処理の研究においてより顕著である。
【0303】
24時間に始まって非常に鼻につくアンモニア臭がある。このことは、これより長い期間でのアミノ酸分解を示唆する。この問題を軽減する一つの方法は、すでに液相に加水分解されたアミノ酸を、その後の処理ステップにおけるさらなるアルカリ性加水分解のための残渣固体から分離して回収することである。

実験4 空気乾燥した牛の体毛のアルカリ性加水分解の間のアンモニア測定(アミノ酸分解)
タンパク質可溶化および可溶性アミノ酸の分解における長期処理の効果をアンモニア測定によって決定した。実験3の前記2つの実験条件について、および100°C、0.2g石灰/g空気乾燥体毛、40g空気乾燥体毛/Lで5時間にわたって実行された実験の遠心分離した液体を使った追加的な実行について、アンモニア濃度を時間の関数として決定した。調査した実験条件および測定された変数を表103にまとめておく。

表103 より長い処理期間のアミノ酸分解に対する効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0304】
【表103】


表104‐106および図41‐43は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量および遊離アンモニア濃度を種々の実験条件について時間の関数として示している。

表104 実験A1についての、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量、アンモニア濃度および推定されたタンパク質窒素(牛の体毛)
【0305】
【表104】


表105 実験A2についての、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量、アンモニア濃度および推定されたタンパク質窒素(牛の体毛)
【0306】
【表105】


表106 実験A3についての、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量、アンモニア濃度および推定されたタンパク質窒素(牛の体毛)
【0307】
【表106】


図41および図42は、全タンパク質窒素濃度は時間の関数として増大し、処理時間24ないし36hで最大に達することを示している。遊離アンモニア濃度も時間の関数として増大し、アミノ酸の分解を示唆している。実験A1およびA2においては、体毛の液体へのさらなる加水分解がアミノ酸分解を上回り、期間24‐36hに至るまでタンパク質窒素の正味の向上を与えている。
【0308】
実験A3では固体の体毛は存在していない。よってタンパク質源は以前に可溶化されたタンパク質以外にはない。この場合、タンパク質窒素の減少は4h後に起こり、48hに続いた。これは、調査した種々の条件において分解を受けやすいいくつかのアミノ酸があることを含意している。

実験4A アミノ酸分解の調査
実験A2およびA3について、タンパク質加水分解物における個々のアミノ酸の安定性を決定するために、液体試料のアミノ酸組成を解析した。
【0309】
石灰加水分解された牛の体毛について、二つの異なるアミノ酸分析を実行した:
(1)遠心分離した液体生成物中の遊離アミノ酸。この分析は、試料の追加的なHCl加水分解なしに行われたものである。分析手順によってアミノ酸が分解されることはなかったが、この分析では可溶性ポリペプチドはとらえられない。
(2)遠心分離した液体生成物中の全アミノ酸。HPLC決定の前にHCl加水分解が実行された。一部のアミノ酸(アスパラギン、グルタミン、システイン、トリプトファン)は酸によって破壊され、測定できなかった。
【0310】
表107および表108は、全アミノ酸(HCl加水分解)、遊離アミノ酸およびTKN値を使っての推定されたアミノ酸を比較している。これらの表は、(遊離アミノ酸を全アミノ酸の列と比べることにより)体毛タンパク質は主として、遊離アミノ酸ではなく小さな可溶性ペプチドに加水分解されるということを示している。

表107 実験A2についてのタンパク質濃度の比較
【0311】
【表107】


表108 実験A3についてのタンパク質濃度の比較
【0312】
【表108】


表108は、0ないし4hの間での全アミノ酸濃度の上昇も示している。この実験(A3)は遠心分離した液体のみを用いて実行された(固体体毛なし)ため、増加する値は、液中に懸濁したポリペプチド粒子が存在し、これがさらに液体中で加水分解されることによって説明できる。液体は固体分離では3500rpmで遠心分離され、一方HPLC分析の前には15000rpmが使われる。
【0313】
表108は、推定されたタンパク質(TKN)と4hでの全アミノ酸濃度との間の非常によい一致を示している。この時点では、アミノ酸分解は比較的起こっていないといえ、液相中の「懸濁物質」の非常に高い変換率がある。表107での相違は、アミノ酸分析で説明に入れられないこの懸濁物質の存在によって説明できる。
【0314】
実験A2については、図44が遠心分離した液体中に存在する個々の遊離アミノ酸の濃度を時間の関数として示している。一方、図45は個々のアミノ酸の全濃度を時間の関数として示している。ヒスチジン濃度は、グリシンの非常に高濃度の前に溶出したので、測定できなかった。あるいは過小評価されている。よって、ピークは分離できない。
【0315】
図45は36hに至るまでの、アルギニン、トレオニン、セリン以外のすべてのアミノ酸濃度の上昇を示している。図44は同様の振る舞いを示しているが、濃度は、特にアルギニンとトレオニンについてより低くなっている。36時間の時点で、アミノ酸濃度は(アルギニン、トレオニン、セリンを除いて)頭打ちとなる。これは可溶化と分解のプロセスの間の平衡を示唆している。
【0316】
実験A3については(固体体毛加えず、遠心分離した液体のみ)、図45は、遠心分離した液体中に存在する個々の遊離アミノ酸の濃度を時間の関数として示している。一方、図46は個々のアミノ酸の全濃度を時間の関数として示している。
【0317】
図46では、遊離アミノ酸の濃度は24hに至るまで増加してそこで頭打ちになる。ここでもまた、アルギニン、トレオニン、セリンは例外で、アルギニンとトレオニンについては遊離アミノ酸としての非常に低い濃度になっている。
【0318】
図47は、0ないし4hの間でのすべての個々のアミノ酸濃度の上昇を示している。このことは、やはり、初期の遠心分離した液体中に懸濁粒子が存在し、これが0ないし4hの間に液相に加水分解されることを含意している。この初期傾向ののち、すべてのアミノ酸濃度が時間とともに低下し、長期処理について調査された条件のもとでのすべてのアミノ酸の分解を示唆している。アルギニン(4hで得られた濃度の16%が48hで存在)、トレオニン(同31%)、セリン(31%)は他のアミノ酸よりもよく分解する。
【0319】
体毛中に目立って存在するわけでないオルニチンおよびシトルリンの濃度が上がることは、それらが分解生成物である可能性を示唆している。
【0320】
表109は、実験A2について、各アミノ酸の重量百分率を時間の関数として示している。アミノ酸のほとんどについて、アルギニン、トレオニン、セリンを例外として、同様の含量が存在している。いくつかのアミノ酸の百分率が上昇しているのは、分解への抵抗がより高いことと他が減少することのためである。

表109 実験A2において存在する、初期物質と比較しての、時間の関数としての個々のアミノ酸
【0321】
【表109】


実験5 物質の二段階処理
以前の諸実験において観察されたアミノ酸分解は、加水分解プロセスの全体としての効率に影響する。この問題に対処する一つの方法は、すでに加水分解されたタンパク質を、一連の処理ステップにおけるその後のタンパク質(残渣固体)の可溶化については分離することである。この実験では、空気乾燥した体毛中のタンパク質の加水分解の効率およびアミノ酸分解における二段階プロセスの効果を決定するために二つの条件について調査した。調査した実験条件および測定された変数を表110にまとめておく。

表110 タンパク質可溶化における石灰添加量の効果を決定するための実験条件および測定された変数(牛の体毛 二段階処理)
【0322】
【表110】


表111は、種々の実験条件について、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を時間の関数として示している。空気乾燥した体毛についての平均TKN(14.73%)に基づいてタンパク質加水分解の変換率を推定し、表112に掲げる。図48は、時間の関数としての本プロセス(ステップ1+ステップ2)についての総合的な変換率を示している。

表111 実験5についての、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(牛の体毛)
【0323】
【表111】


表112 実験5についての、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(牛の体毛)
【0324】
【表112】


図48は、調査した二つの異なる条件について同様の変換率を示している。16hの処理では、全部で70%の初期窒素が液相において回収されている。全変換率は第二の処理の間に上昇し、一ステップ処理に比べて存在するアンモニアの濃度も低い(表113)。これはアミノ酸分解がより少ないことを示唆している。よって、石灰による残渣固体のさらなる処理はより多くの体毛を加水分解するが、第二のステップにおける窒素(タンパク質/アミノ酸)の濃度は最初の処理で得られたものの40%でしかない。これは水蒸発のために必要とされるエネルギーを増す。体毛の初期濃度は変換率に重要な効果をもたないので、半固体の反応により、より高い生成物濃度を得ることができる。

表113 二段階および一段階プロセスについての全ケルダール窒素およびアンモニア濃度
【0325】
【表113】


初期液体の8hでの分離は、影響されやすいアミノ酸(アルギニン、トレオニン、セリン)についての比較的高い濃度を保証する。初期タンパク質の約50%の変換率である。第二のステップではこれらのアミノ酸の濃度はより低く、全変換率はより高くなる。
【0326】
ステップ2のあとで未反応の残渣固体(7g窒素/100g乾燥固体をもつ初期体毛の約30%)はさらに処理して、液相における全部で80%のタンパク質回収を与える。このステップはおそらく24ないし36時間必要とするであろう。

実験6 生成物のアミノ酸組成とプロセス質量バランス
本節では、提案される2つの8hステップのプロセスと1つの16hステップの処理とについて得られた生成物の総合的な質量バランスおよびアミノ酸組成を呈示する。
【0327】
表113は、3つの遠心分離した液体生成物についての全ケルダール窒素とアンモニア濃度とを比較している。表114は、3つの残渣固体についての固体組成(窒素およびミネラル)を示す。図49は、二段階プロセスおよび一段階プロセスについての質量バランスを示す。諸固体の非均一性は濃度における非常に大きな変動を生じている。

表114 空気乾燥体毛とプロセスの残渣固体とのタンパク質およびミネラル含量
【0328】
【表114】


表115は、3つの異なる生成物および体毛についてアミノ酸組成を比較している。以前の諸実験から期待されるように、ステップ1はトレオニン、アルギニン、セリンについてのより高い値を与える。上に挙げたアミノ酸を例外として、ステップ1、ステップ2および一段階プロセスからの生成物の濃度は非常に似通っている。

表115 固体生成物と出発物質とに存在する個々のアミノ酸
【0329】
【表115】


最後に、表116では、生成物のアミノ酸組成をさまざまな単胃類の家畜の必要とされる必須アミノ酸と比較した。

表116 生成物のアミノ酸分析およびさまざまな家畜についての必須アミノ酸必要量
【0330】
【表116】


表116に示されるように、石灰加水分解された牛の体毛のアミノ酸組成は、種々の単胃類の家畜の必須アミノ酸必要量に関してバランスが取れていない。ヒスチジン(この分析では過小評価されている)、トレオニン、メチオニン、リシンについては特に低い値で、他のいくつかのアミノ酸は大半の動物には十分だが、全部ではない(チロシン、フェニルアラニン)。牛の体毛の石灰加水分解は、プロリンおよびグルタミン+グルタミン酸塩に非常に富む生成物を生じるが、これらは単胃類の家畜の食餌において必須アミノ酸ではない。このアミノ酸生成物は反芻動物に使うことができる。
【0331】
ステップ1の時間を短くすることで、セリンとトレオニンの濃度を上げることができる。
【0332】
92%(含水ベース)のタンパク質を含む空気乾燥した牛の体毛を使って、100°CでCa(OH)により処理することでアミノ酸に富む生成物を得ることができる。上記のプロセスのためには、低い温度要件のため、簡単な加圧しない容器を使うことができる。
【0333】
体毛濃度はタンパク質加水分解に何ら重要な効果をもたない。一方、鶏の羽毛という別のケラチン物質からも得られる約70%の変換率を得るためには、高い石灰添加量(0.1gCa(OH)/g体毛超)と長い処理期間(t>8h)が必要とされる。
【0334】
タンパク質可溶化は、石灰添加量に関しては、長期処理についてしか変化しない。これは、加水分解反応のための触媒として水酸基が必要とされることを示している。一方、プロセス中のその消費は石灰添加量が少なくなった反応を遅くし、あるいはより速く頭打ちにする。
【0335】
タンパク質変換率を最大にする(70%まで)最適条件は、0.35gCa(OH)/g空気乾燥体毛を100°Cで24時間以上にわたって処理することである。24時間に始まる非常に鼻につくアンモニア臭は、アミノ酸分解を示唆する。アルギニン、トレオニン、セリンがアルカリ性加水分解のもとで最も影響を受けやすいアミノ酸である。
【0336】
アミノ酸の分解は、すでに加水分解されたアミノ酸を液相に回収し、その後の処理ステップにおけるさらなるアルカリ性加水分解のための残渣固体を分離することによって最小化できる。8hでの初期液体(ステップ1)の分離は影響を受けやすいアミノ酸(アルギニン、トレオニン、セリン)についての比較的高い濃度を保証する。初期タンパク質の約50%の変換率である。第二の8hステップではこれらのアミノ酸はより低い濃度であり、全変換率(約70%)はより高くなる。
【0337】
ステップ2における窒素(タンパク質/アミノ酸)の濃度は最初の処理で得られたものの40%でしかない。これは水蒸発のために必要とされるエネルギーを増す。体毛の初期濃度は変換率に対して重要な効果をもたないので、半固体の反応によりより高い生成物濃度を得ることができる。
【0338】
この生成物のアミノ酸組成は種々の単胃類の家畜の必須アミノ酸必要量に比べると貧弱である。この生成物はトレオニン、ヒスチジン、メチオニン、リシンが少ない。アスパラギンとプロリンには特に富むが、これらは動物の食餌で必要とされていない。本プロセスによって得られる生成物は反芻動物飼料として価値があり、非常に高い消化性を有し、窒素含量が高く、きわめて水に溶けやすい。

〈例 7:エビの頭中のタンパク質可溶化〉
かなりの量のエビ加工副産物が毎年廃棄されている。商業的なエビ加工では、生きたエビの約25%(w/w)が食肉として回収される。固体廃棄物は約30‐35%の組織タンパク質を含む。他の主要成分は炭酸カルシウムとキチンである。キチンとキトサンの生産は現在のところ甲殻類の加工からの廃棄物に基づいている。キトサン生成に際しては、生産されるキトサン1kgにつき約3kgのタンパク質が無駄にされる(Gildberg and Stenberg, 2001)。
【0339】
キチンは広範に分布し、自然界に豊富なアミノ多糖であり、水、アルカリ、有機溶媒に不溶で、強酸にわずかに溶ける。キチンは甲殻類の外骨格の構造成分である。甲殻類の外骨格は乾燥重量で約15‐20%がキチンである。キチンは化学構造および構造ポリマーとしての生物学的機能という両方の点でセルロースに似ている(Kumar, 2000)。
【0340】
現在のところ、キチンを含む物質(カニの殻、エビのあらなど)は沸騰水酸化ナトリウム水溶液(4%w/w)中で1‐3h処理され、次いで希塩酸(1‐2N HCl)中で8‐10hにわたって脱石灰(炭酸カルシウム除去)される。次いでキチンは濃水酸化ナトリウム溶液(40‐50%)中で沸点下で脱アセチル化されてキトサンになる。
【0341】
冷凍の大型の有頭のショウナンエビ(white shrimps)は食品店から入手した。尾を取り除いて、残りの廃棄物(頭、触覚など)は工業用ブレンダーで10minにわたってブレンドされ、プラスチックボトルに集められ、最終的にはのちの使用のために−4°Cで冷凍された。このブレンドされた物質の試料を使って、出発物質を特徴付けるために含水量、全窒素(全重量のタンパク質推定値の〜16%+キチン分率の〜16.4%が窒素)、灰分(ミネラル分率)およびアミノ酸含量が得られた。
【0342】
エビの頭の廃棄物は乾燥物21.46%で、灰分は17.2g灰分/100g乾燥重量だった(表117および表118)。TKNは10.25%で、これは約64.1%の粗タンパク質およびキチン分率に対応する(表119)。残りの18%が脂質およびその他の成分に対応する。エビの頭の廃棄物についてのアミノ酸組成を表120に与える。

表117 エビの頭の廃棄物における含水量
【0343】
【表117】


表118 エビの頭の廃棄物における灰分
【0344】
【表118】


表119 エビの頭の廃棄物におけるタンパク質およびミネラル含量
【0345】
【表119】


表120 エビの頭の廃棄物のアミノ酸組成
【0346】
【表120】


出発物質はバランスのよいアミノ酸内容を含んでおり(表120)、ヒスチジンおよびメチオニンのレベルが比較的低くなっている。リン、カルシウム、カリウムの高いレベルのため、この物質は動物の食餌におけるミネラルのための価値のある源となる。

実験1 再現性
エビの頭の廃棄物中のタンパク質可溶化についての結果の再現性を決定するため、2つの実験を同一の条件(100°C、40g乾燥エビ/L、0.10g石灰/g乾燥エビ)で実行した。実験条件および測定された変数を表121にまとめておく。

表121 エビの頭の廃棄物のタンパク質可溶化における再現性を決定するための実験条件および測定された変数
【0347】
【表121】


表122は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を前記2つの実行について時間の関数として示している。乾燥したエビの頭の廃棄物についての平均TKN(10.25%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定し、表123に掲げた。変換率の値についての平均標準偏差は1.13すなわち平均結果(79.3%変換率)の1.5%である。

表122 実験1について、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(エビの頭の廃棄物)
【0348】
【表122】


表123 実験1について、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(エビの頭の廃棄物)
【0349】
【表123】


図49は、このタンパク質加水分解を、前記4つの異なる実行について時間の関数として呈示する。この図によれば、変換率は初期の5‐10min以後は一定に留まり、調査した条件のもとではタンパク質加水分解のプロセスはかなり再現性がある。反応器を閉じて加圧したのちに採取された時刻0minの試料については、このプロセスは8ないし12minかかる。

実験2 温度効果
エビの頭の廃棄物中のタンパク質の可溶化に対する温度の効果を決定するため、石灰添加量および材料濃度を一定に保って(それぞれ0.10g石灰/gエビ、40g乾燥エビ/L)異なる温度で実験を行った。実験条件および測定された変数を表124にまとめておく。

表124 エビの頭の廃棄物のタンパク質可溶化における温度の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0350】
【表124】


表125は、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を種々の温度について時間の関数として示している。エビの頭の廃棄物についての平均TKN(10.25%)に基づいて、タンパク質加水分解の変換率を推定し、表126に掲げた。

表125 実験2について、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(エビの頭の廃棄物)
【0351】
【表125】


表126 実験2について、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(エビの頭の廃棄物)
【0352】
【表126】


図51は、タンパク質加水分解(変換率の百分率)を、調査した種々の温度について時間の関数として呈示する。変換率は温度に依存しない(統計的に同じ値である)。低いほうの温度が好ましい。アミノ酸の分解が少なくなり、プロセスをこの温度に保のに必要とされるエネルギーも少なくなるからである。

実験3 石灰添加量の効果I
エビの頭の廃棄物のタンパク質の可溶化に対する石灰添加量の効果を決定するため、温度およびエビの濃度を一定に保って(それぞれ100°Cおよび40g乾燥エビ/L)種々の石灰/エビ比で実験を実行した。実験条件および測定された変数を表127にまとめておく。

表127 エビの頭の廃棄物のタンパク質可溶化における石灰添加量の効果を決定するための実験条件および測定された変数
【0353】
【表127】


表128は、種々の石灰添加量について、遠心分離した液体試料中の全窒素含量を時間の関数として示している。エビの頭の廃棄物についての平均TKN(10.25%)に基づいてタンパク質加水分解の変換率を推定した(表129)。

表128 実験3についての、遠心分離した液相中の、時間の関数としての全ケルダール窒素含量(エビの頭の廃棄物)
【0354】
【表128】


表129 実験3についての、全TKNから可溶性TKNへの変換率の百分率(エビの頭の廃棄物)
【0355】
【表129】


図52は、調査した種々の石灰添加量について、時間の関数としてのタンパク質可溶化(変換率の百分率)を呈示している。これは、石灰なしの実験を除くすべての石灰添加量について変換率が同様であることを示している。
【0356】
石灰なしの実験では、水相中に可溶タンパク質が存在しているが、水酸基が希薄で、加水分解反応および細胞分解(breakage)を遅くしているのである。石灰なしの実験についての最終pHは8.1であった。ありそうなことであるが、このアルカリ性のpHはエビ廃棄物から放免された炭酸カルシウムおよび重炭酸カルシウムによって引き起こされている。
【0357】
石灰の追加は、液相へのタンパク質の高速の加水分解を保証するために必要とされ、生成物における遊離アミノ酸の分率を高くすることも考えられる。また、石灰処理はキチンおよびキトサンを生成するための予備ステップと考えられるので、高いタンパク質回収はプロセス中の後続ステップのために要求される化学物質を減らすことに、そしてキチンまたはキトサン生成物のより高い品質に関係してくる。
【0358】
本プロセスから追加的な価値ある生成物を生じるために、懸濁固体からのカロテノイド(アスタキサンチン)の回収も考えられる。炭酸カルシウムとキチンは甲殻類の構造成分なので、混合物を漉して懸濁固体を遠心分離することでカロテノイドを回収しうる(Gildberg and Stenberg, 2001)。

実験4 アミノ酸分析
表130は、種々のプロセス条件についての加水分解生成物の全アミノ酸組成を示している。石灰添加量の多い実験におけるセリンおよびトレオニンならびにシステイン含量の比較的高い変動を例外として、最終生成物の組成は処理条件とともに変わっていない。以前の結果において示されたように、石灰なしの実験では加水分解生成物中でのタンパク質濃度が低くなる。

表130 エビの頭の廃棄物のタンパク質加水分解についての種々のプロセス条件に関する全アミノ酸組成
【0359】
【表130】


表131は、種々のプロセス条件について加水分解生成物の遊離アミノ酸組成を示している。組成の変動は全アミノ酸の場合より高くなっている。処理条件は影響を受けやすいアミノ酸に影響する。より強い条件(たとえばより長時間、より高温、より高い石灰添加量)は分解反応を加速して、特に遊離アミノ酸決定において異なる種々の組成を生じる。
【0360】
トリプトファンが遊離アミノ酸組成の約2%を表している一方、タウリンは4%近い。これらの値はそれらの全アミノ酸組成における濃度の推定値として使うことができる。

表131 エビの頭の廃棄物のタンパク質加水分解についての種々のプロセス条件に関する遊離アミノ酸組成
【0361】
【表131】


全アミノ酸の平均して40%が遊離アミノ酸として存在する。より長時間またはより強い条件について、比較的より高い分率が得られる。
【0362】
エビ廃棄物の熱化学処理は、遊離アミノ酸と小さな可溶性ペプチドの混合物を生じるので、潜在的な栄養製品となる。加水分解生成物は、高い分率の必須アミノ酸を含むので、単胃類動物のための高品質の栄養源となる。表132は、全アミノ酸組成とさまざまな家畜についての必要量との比較を示している。ヒスチジンはこの分析では過小評価されているので、未加工の廃棄物物質について計算された1.78g/100gの値を使うと、成長期にある動物の必須アミノ酸必要量を満たすか上回るかする高品質のタンパク質補給品が生成される。

表132 生成物のアミノ酸分析とさまざまな家畜についての必須アミノ酸必要量
【0363】
【表132】


〜20%の灰分に加えて、エビの頭の廃棄物は64%のタンパク質およびキチンを含んでおり、このいずれもいくつかの価値ある生成物を生じるのに使うことができる。この廃棄物の石灰を用いた熱化学処理は、動物飼料補給品として使えるよくバランスの取れたアミノ酸内容をもつタンパク質に富む物質を生じる。処理された混合物を漉して液体生成物を遠心分離することでカロテノイドが回収できる。最後に、炭酸カルシウムおよびキチンに富む残渣固体はよく知られたプロセスを通じてキチンおよびキトサンを生成するためにも使うことができる。
【0364】
調査した温度、石灰添加量、時間のすべての条件について、反応の30分以後は変換率の有意な変化は生じていない。これらの条件について、2hの処理まではほとんどアミノ酸分解は観察されなかった。
【0365】
石灰の追加は、液相へのより高い窒素変換率を得るために必要とされる。これは、キチンおよびキトサン生産のための残渣固体のさらなる処理のために要求される化学物質を減らすことにもなる。
【0366】
エビ廃棄物材料を石灰処理することによって得られる生成物は、単胃類動物のための必須アミノ酸必要量を満たすか超えるかするので、好適なタンパク質補給品となる。
【0367】
上記では本発明の例示的な実施形態のみが具体的に記載されているが、本発明の精神および意図された範囲から外れることなく本発明の修正および変形が可能であることは明らかであろう。

【図面の簡単な説明】
【0368】
【図1】タンパク質に富む物質のアルカリ性条件下での加水分解についてのステップごとの図である。
【図2】鶏の羽毛および動物の毛の加水分解を示すグラフである。各点は3つの値の平均±2の標準偏差を表す。
【図3】動物の毛および鶏の羽毛についての反応速度と変換率との関係を示すグラフである。
【図4】エビの頭および鶏の臓物のタンパク質加水分解についての変換率と時間との関係を示すグラフである。
【図5】大豆乾草およびアルファルファ乾草のタンパク質加水分解についての変換率と時間との関係を示すグラフである。
【図6】本発明のある実施形態に基づく、カルシウム回収のない一段可溶化プロセスの図解である。
【図7】本発明のある実施形態に基づく、カルシウム回収のない二段可溶化プロセスの図解である。
【図8】本発明のある実施形態に基づく、カルシウム回収のある一段可溶化プロセスの図解である。
【図9】本発明のある実施形態に基づく、カルシウム回収のある二段可溶化プロセスの図解である。
【図10】本発明のある実施形態に基づく、一段反応器の図解である。
【図11】本発明のある実施形態に基づく、多段向流反応器の図解である。
【図12】本発明のある実施形態に基づく、多段並流反応器の図解である。
【図13】本発明のある実施形態に基づく、多段交流反応器の図解である。
【図14】本発明のある実施形態に基づく、ミキサーおよび出口のスクリューコンベアーが一体になった栓流反応器の図解である。
【図15】本発明のある実施形態に基づく、ミキサーおよび出口のスクリューコンベアーが分離した栓流反応器の図解である。
【図16】本発明のある実施形態に基づく、ロックホッパーをもつ栓流反応器の図解である。
【図17】タンパク質加水分解研究のための実験構成の図解である。
【図18】アルファルファ乾草のタンパク質可溶化に対する温度の効果を示すグラフである。
【図19】アルファルファ乾草のタンパク質可溶化に対する石灰添加量の効果を示すグラフである。
【図20】タンパク質可溶化に対するアルファルファ乾草濃度の効果を示すグラフである。
【図21】大豆乾草の石灰を使ったタンパク質可溶化についての結果の再現性の調査を示すグラフである。
【図22】大豆乾草のタンパク質可溶化に対する温度の効果を示すグラフである。
【図23】大豆乾草のタンパク質可溶化に対する石灰添加量の効果を示すグラフである。
【図24】タンパク質可溶化に対する大豆乾草濃度の効果を示すグラフである。
【図25】臓物研究の再現性を示すグラフである。3つの実行は、同一の動作条件において行われた。
【図26】3つの異なる臓物濃度における変換率の比較を示すグラフである。
【図27】3つの異なる石灰添加量についての変換率の比較を示すグラフである。
【図28】2つの異なる温度についての変換率の比較を示すグラフである。
【図29】追加処理のない場合、および6N HCLによる処理がある場合についての、液体生成物のアミノ酸含量を示すグラフである。
【図30】原材料および乾燥した処理済み固体に存在するアミノ酸の比較を示すグラフである。反応器から取り出したときの処理済み固体はとても水分が多かったので(80%水分)、示されているアミノ酸のいくつかは残渣液体生成物から導かれている。
【図31】75°C、0.075g石灰/乾燥臓物、60g乾燥臓物/Lスラリーでの実験における、30分後および2時間後の液体相に存在するアミノ酸の比較を示すグラフである。
【図32】75°C、0.075g石灰/乾燥臓物、80g乾燥臓物/Lスラリーでの実験における、30分後および2時間後の液体相に存在するアミノ酸の比較を示すグラフである。
【図33】75°C、0.075g石灰/乾燥臓物で、3つの異なる初期臓物濃度(g乾燥臓物/Lスラリー)について、30分後の遠心分離した液体相におけるアミノ酸の比較を示すグラフである。
【図34】75°C、0.075g石灰/乾燥臓物、40g乾燥臓物/Lスラリーとして、異なる時刻における遠心分離した液体相に存在するアミノ酸の比較を示すグラフである。
【図35】原材料として羽毛および臓物を使ってアミノ酸に富む羽毛生成物を生成するための構成を示す図である。1は遠心分離していない液。2は石灰処理後の遠心分離した液。3は石灰処理後の残渣固体。4は二酸化炭素通気後の遠心分離した液。5は最終生成物である。
【図36】二酸化炭素通気による沈殿の間の、pHの関数としてのカルシウム濃度を示すグラフである(初期pH高)。
【図37】二酸化炭素通気による沈殿の間の、pHの関数としてのカルシウム濃度を示すグラフである(初期pH低)。
【図38】空気乾燥した体毛の濃度の、タンパク質可溶化に対する効果を示すグラフである。
【図39】空気乾燥した体毛のタンパク質可溶化に対する石灰添加量の効果を示すグラフである。
【図40】長期処理における、空気乾燥した毛のタンパク質可溶化に対する石灰添加量の効果を示すグラフである。
【図41】実験A1において、アンモニア、総ケルダール窒素および推定タンパク質窒素濃度を時間の関数として示すグラフである。
【図42】実験A2において、アンモニア、総ケルダール窒素および推定タンパク質窒素濃度を時間の関数として示すグラフである。
【図43】実験A3において、アンモニア、総ケルダール窒素および推定タンパク質窒素濃度を時間の関数として示すグラフである。
【図44】実験A2において、自由アミノ酸濃度を時間の関数として示すグラフである。
【図45】実験A2において、全アミノ酸濃度を時間の関数として示すグラフである。
【図46】実験A3において、自由アミノ酸濃度を時間の関数として示すグラフである。
【図47】実験A3において、全アミノ酸濃度を時間の関数として示すグラフである。
【図48】直列の2ステップを用いた体毛の加水分解について、タンパク質の液相への変換率の百分率を時間の関数として示すグラフである。
【図49】二段階および一段階の石灰処理プロセスの質量バランスを示す図である。
【図50】エビの頭の廃棄物のタンパク質可溶化の再現性を示すグラフである。
【図51】エビの頭の廃棄物のタンパク質可溶化に対する温度の効果を示すグラフである。
【図52】エビの頭の廃棄物のタンパク質可溶化に対する石灰添加量の効果を示すグラフである。
【図53】本発明のある実施形態に基づく、一段可溶化プロセスを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を可溶化する方法であって:
アルカリをタンパク質源に加えてスラリーを生成し、
前記タンパク質源に含まれるタンパク質の加水分解を許容するに十分な温度にスラリーを加熱して反応液を得、
該反応液から固体を分離し、
該反応液を酸または酸源で中和して中和液を得、
該中和液を濃縮して濃縮液および水を生成し、
その水を前記加熱ステップの前または加熱中のスラリーに戻す、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
タンパク質源を粉砕することをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリが酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリが、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選ばれる物質であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
加熱がアンモニアを生成し、該アンモニアを酸で中和することをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
分離された固体を前記タンパク質源に戻すことをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
分離された固体中の不活性な固体から反応性の固体を分離することをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
反応液中のプリオンのすべてまたは実質的にすべてを破壊するのに十分なよう、前記反応液をある時間期間にわたってある高められた温度に保持することをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記高められた温度が125‐250°Cの間であり、前記時間期間が1秒から5時間までの間であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記中和液から固体を分離することをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法であって、前記の分離された固体がアルカリを含み、該分離された固体を前記タンパク質源に加えることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記中和液を濃縮することが該中和液を蒸発させることをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記中和液を濃縮することが、該中和液をフィルタ処理することをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記中和液を濃縮することが、該中和液を凍結させることをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記中和液を濃縮することが、非混合性アミンを加えることをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記濃縮液を乾燥させることをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項17】
プロセス熱を生じ、プロセス熱を再利用することをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項18】
タンパク質を可溶化するためのシステムであって:
タンパク質源とアルカリを反応させて反応液を生成するはたらきをする加熱反応器と、
前記反応液から固体を分離するはたらきをする固液分離器と、
前記反応液に酸を加えて中和液を生成することを許容するはたらきをする中和槽と、
中和液を濃縮して濃縮液および水を生成するはたらきをする濃縮槽と、
前記濃縮槽からの水を前記加熱反応器まで通すはたらきをする導管と、
プロセス熱を交換するはたらきをする少なくとも一つの熱交換器、
とを有することを特徴とするシステム。
【請求項19】
タンパク質源を粉砕するはたらきをする粉砕器をさらに含むことを特徴とする、請求項18記載のシステム。
【請求項20】
前記加熱反応器が攪拌槽を有することを特徴とする、請求項18記載のシステム。
【請求項21】
前記加熱反応器からのアンモニアを捕集してその酸による中和を許容するはたらきをするアンモニア捕集器をさらに有することを特徴とする、請求項18記載のシステム。
【請求項22】
分離された固体を前記加熱反応器に戻すはたらきをする導管をさらに有することを特徴とする、請求項18記載のシステム。
【請求項23】
不活性な固体から反応性の固体を分離するはたらきをする密度分離器をさらに有することを特徴とする、請求項18記載のシステム。
【請求項24】
前記密度分離器が沈殿槽またはハイドロクロンを有することを特徴とする、請求項18記載のシステム。
【請求項25】
反応液中のプリオンのすべてまたは実質的にすべてを破壊するのに十分なよう、前記反応液をある時間期間にわたってある高められた温度に加熱する保持槽をさらに有することを特徴とする、請求項18記載のシステム。
【請求項26】
前記中和液から固体を分離するはたらきをする固液分離器をさらに含むことを特徴とする、請求項18記載のシステム。
【請求項27】
前記濃縮槽がさらに、多効果蒸発器、機械的な蒸気圧縮蒸発、ジェット排出器蒸気圧縮蒸発器、逆浸透膜、密なナノ濾過膜、冷凍器、アミン回収システムおよびそれらの任意の組み合わせよりなる群から選択される構成要素をさらに有することを特徴とする、請求項18記載のシステム。
【請求項28】
前記濃縮液を乾燥させるはたらきをする乾燥器をさらに有することを特徴とする、請求項18記載のシステム。
【請求項29】
請求項28記載のシステムであって、前記乾燥器が吹き付け乾燥器またはスクレーパー付きドラム乾燥器であることを特徴とするシステム。
【請求項30】
タンパク質を可溶化するためのシステムであって:
タンパク質源とアルカリを反応させて反応液を生成するはたらきをする反応手段と、
前記反応液から固体を分離するはたらきをする固液分離手段と、
前記反応液に酸を加えて中和液を生成することを許容するはたらきをする中和手段と、
中和液を濃縮して濃縮液および水を生成するはたらきをする濃縮手段と、
濃縮槽からの水を加熱反応器まで通すはたらきをする手段と、
プロセス熱を交換するはたらきをする少なくとも一つの熱交換手段、
とを有することを特徴とするシステム。
【請求項31】
タンパク質源を粉砕するはたらきをする粉砕手段をさらに含むことを特徴とする、請求項30記載のシステム。
【請求項32】
前記加熱反応手段からのアンモニアを捕集してその酸による中和を許容するはたらきをする捕集手段をさらに有することを特徴とする、請求項30記載のシステム。
【請求項33】
反応液中のプリオンのすべてまたは実質的にすべてを破壊するのに十分なよう、前記反応液をある時間期間にわたってある高められた温度に加熱するはたらきをする保持手段をさらに有することを特徴とする、請求項30記載のシステム。
【請求項34】
前記濃縮液を乾燥させるはたらきをする乾燥手段をさらに有することを特徴とする、請求項30記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【公表番号】特表2008−501510(P2008−501510A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515595(P2007−515595)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019497
【国際公開番号】WO2005/117602
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(506250631)ザ テキサス エイ・アンド・エム ユニヴァーシティ システム (6)
【Fターム(参考)】