説明

タンパク質活性のスクリーニング用タンパク質チップ

【課題】タンパク質機能の大規模研究に有用なタンパク質チップであって、高密度に詰め込まれた反応ウェルを備えている該チップを提供する。
【解決手段】1つのタンパク質サンプル中もしくは1つのタンパク質チップ上に存在するタンパク質の存在、量および/または機能を同時にアッセイするための、または該チップ上のタンパク質の各々に対するプローブ混合物中の各プローブの存在、相対的特異性および結合親和性をアッセイするための、タンパク質チップを使用する。また、高密度で小容量の化学反応のための該タンパク質チップの使用する。また、タンパク質チップ基材として有用なポリマーおよびタンパク質チップを製造する。更に、タンパク質チップ基材の誘導体化に有用な化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/201,921号(2000年5月4日出願)および米国仮特許出願第60/221,034号(2000年7月27日出願)の35 U.S.C. 119条(e)に基づく優先権の利益を請求するものであり、それら仮特許出願の各々は参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする。
【0002】
本発明は、交付番号DARPA/ONR R13164-41600099およびNIH(国立衛生研究所)RO1CA77808として政府の支援を受けてなされたものである。政府は本発明においてある一定の権利を有する。
【0003】
I.発明の分野
本発明は、タンパク質機能の大規模な研究に有用なタンパク質チップに関し、該チップは高密度に詰め込まれた反応ウェルを含んでいる。本発明は、タンパク質サンプル中またはタンパク質チップ上に存在するタンパク質の存在、量および/もしくは機能を同時にアッセイするため、またはチップ上の各々のタンパク質についてのプローブの混合物中の各プローブの存在、相対的特異性および結合親和性をアッセイするための、タンパク質チップの使用方法に関する。本発明はまた、高密度で少容量の化学反応のための上記タンパク質チップの使用方法に関する。また、本発明は、タンパク質チップ基材として有用なポリマー、ならびにタンパク質チップの製造方法に関する。本発明は更に、タンパク質チップ基材の誘導体化に有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0004】
II.発明の背景
ゲノム全体の配列決定によって、多数のオープンリーディングフレーム(ORF)が同定された。現在、mRNA発現パターンおよび遺伝子破壊表現型により遺伝子の機能を理解しようと相当な努力がなされている。こうした努力において大きな意義のある前進が可能になっているのは、一部には、遺伝子チップ技術を用いて1回の実験で何千もの遺伝子配列を分析することができるようになったためである。しかし、遺伝子機能に関する多くの情報が、コードされたタンパク質の生化学的活性の分析から得られる。
【0005】
現在、これらのタイプの分析は、研究者一人一人が1回に1つのタンパク質を調べることによってなされている。これは非常に時間がかかる方法である。何故ならば、1つのタンパク質をその生化学的活性に基づいて精製および同定するには何年も要する場合があるからである。ゲノム配列全体が入手できれば、そのゲノムによってコードされるあらゆるタンパク質についての生化学的アッセイが実施できるようになる。
【0006】
このためには、1つのタンパク質チップを用いて何百または何千ものタンパク質サンプルを分析することが有用であろう。そうしたアプローチは、大量のデータを生成および分析できるハイスループット実験に適している。当技術分野では多年にわたり、96ウェルまたは384ウェルを含むマイクロタイタープレートが知られている。しかし、これらのプレートは、その大きさ(少なくとも12.8cm×8.6cm)のために、タンパク質の大規模な分析には不適当であり、これはウェルの密度が十分に高くないからである。
【0007】
上記で述べたように、DNA合成およびハイブリダイゼーション反応で使用するための他のタイプのアレイが考案されており、例えばWO89/10977に記載のものが挙げられる。しかし、これらのアレイは、別個の量のタンパク質分析には不適当である。何故ならば、これらのアレイは平坦な表面上に構築され、特徴物間で交差汚染しやすいからである。
【0008】
平坦な表面上のオリゴヌクレオチドアレイ(Peaseら, 1994,「迅速なDNA配列分析用の光発生オリゴヌクレオチドアレイ(Light-generated oligonucleotide arrays for rapid DNA sequence analysis)」,PNAS 91:5022-5026)から、チャネル(channels)のアレイ(米国特許第5,843,767号)、チャネルによって連結されているウェルのアレイ(Cohenら, 1999,「プロテインキナーゼAのマイクロチップに基づく酵素アッセイ(A microchip-based enzyme assay for protein kinase A)」, Anal Biochem. 273:89-97)に及ぶ種々のアレイの製造にフォトリソグラフィー技法が応用されている。更に、半導体製造の分野では、微細加工(microfabrication)技法およびマイクロリソグラフィー技法が周知である。例えば、Moreau,「半導体リソグラフィー:原理、実践および材料(Semiconductor Lithography: Principals, Practices and Materials)」, Plenum Press, 1988を参照されたい。
【0009】
近年、出芽酵母サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)内で、生化学的ゲノミックスに有用である可能性のある多数のタンパク質を発現させるために考案された方法が開発された。ORFを、GALプロモーターを用い、かつタンパク質をポリヒスチジン(例えばHISX6)標識に融合させる発現ベクターにクローニングしている。したがって、この方法は、約2,000の酵母タンパク質融合体の調製およびその発現の確認にずっと用いられてきた(Heymanら, 1999, 「トポイソメラーゼI介在連結を用いた個々のオープンリーディングフレームのゲノム規模のクローニングおよび発現(Genome-scale cloning and expression of individual open reading frames using topoisomerase I-mediated ligation)」 Genome Res. 9:383-392)。組み換えストラテジーを用いて、酵母ORFの約85%が、CUP1プロモーター(銅により誘導可能)を含むベクター内でGSTコード領域とインフレームでクローニングされており、そうしてGST融合タンパク質を産生している(Martzenら, 1999,「遺伝子の、それらの産物の活性による同定のための生化学的ゲノミックスアプローチ(A biochemical genomics approach for identifying genes by the activity of their products)」 Science 286:1153-1155)。Martzenらは、融合タンパク質のコレクションを幾つかの生化学的活性(例えば、ホスホジエステラーゼ活性およびAppr-1-P-プロセッシング活性)についてスクリーニングするのにプーリング(pooling)ストラテジーを用い、それらの活性をコードする関連遺伝子を同定した。しかし、多数の個々のタンパク質サンプルを分析するためのストラテジーは記載されていない。
【0010】
したがって、先行技術のチップおよび方法と比較して費用および時間の面で有利となるようにウェルがチップ上に高密度に詰め込まれているタンパク質チップが必要とされている。
【0011】
本出願の第II節または他の節におけるいずれの参考文献の引用または照合も、そうした参考文献が本発明の先行技術として利用できることを認めるものとしてみなされるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO89/10977
【特許文献2】米国特許第5,843,767号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Peaseら, 1994,「迅速なDNA配列分析用の光発生オリゴヌクレオチドアレイ(Light-generated oligonucleotide arrays for rapid DNA sequence analysis)」,PNAS 91:5022-5026
【非特許文献2】Cohenら, 1999,「プロテインキナーゼAのマイクロチップに基づく酵素アッセイ(A microchip-based enzyme assay for protein kinase A)」, Anal Biochem. 273:89-97
【非特許文献3】Moreau,「半導体リソグラフィー:原理、実践および材料(Semiconductor Lithography: Principals, Practices and Materials)」, Plenum Press, 1988
【非特許文献4】Heymanら, 1999, 「トポイソメラーゼI介在連結を用いた個々のオープンリーディングフレームのゲノム規模のクローニングおよび発現(Genome-scale cloning and expression of individual open reading frames using topoisomerase I-mediated ligation)」 Genome Res. 9:383-392
【非特許文献5】Martzenら, 1999,「遺伝子の、それらの産物の活性による同定のための生化学的ゲノミックスアプローチ(A biochemical genomics approach for identifying genes by the activity of their products)」 Science 286:1153-1155
【発明の概要】
【0014】
III.発明の概要
本発明は、タンパク質機能の大規模研究に有用なタンパク質チップ、すなわち、固相支持体上のタンパク質の位置アドレス可能な(位置をアドレス可能である)アレイであって、高密度に詰め込まれた反応ウェルを備えている該タンパク質チップに関する。本発明はまた、少なくとも1つのサンプル中に存在するタンパクの存在、量および/または機能をアッセイするためのタンパク質チップの使用方法に関する。本発明はまた、高密度で小容量の化学反応のためのタンパク質チップの使用方法に関する。また、本発明は、タンパク質チップ基材として有用なポリマー、およびタンパク質チップの製造方法に関する。本発明は、タンパク質チップの誘導体化に有用な化合物に関する。
【0015】
1つの実施形態において、本発明は、限定するものではないが例えばスライドガラスのような平坦表面を備えるタンパク質チップを提供する。高密度タンパク質アレイは、例えばスライドガラス上に作製されていて、化学反応およびアッセイを行うことによりタンパク質の存在、量および/または機能の大規模な並行分析ができるようなものである。1つの特定の実施形態において、その平坦表面アレイは、3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)リンカーを介してその表面に結合されているタンパク質を有する。
【0016】
更に、別の特定の実施形態において、本発明は、高密度に詰め込まれたウェル(その中で化学反応およびアッセイを実施できる)を有するタンパク質チップを提供し、それによりタンパク質の存在、量および/または機能の大規模な並行分析ができるようにすることにより、当業界で公知の方法および装置の欠点や制限を克服している。
【0017】
1つずつ行うアッセイと比較した場合のアレイに対するアッセイの全般的な利点としては、多数のタンパク質−プローブ相互作用を同時に同定できること、およびそれらの相互作用の相対的親和性を測定できること、が挙げられる。プローブの複合的混合物をチップに適用することの利点としては、細胞内での環境により近い環境で相互作用を検出できること、および多くの可能性のあるリガンドを同時に評価できること、が挙げられる。
【0018】
1つの実施形態において、本発明は、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種の物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質から構成される上記アレイである。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、複数種の異なるタンパク質または該タンパク質の機能性ドメインを含む分子を固相支持体上に含んでなり、各々の異なるタンパク質または分子が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種の異なるタンパク質または分子が、生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも50%から構成される上記アレイである。
【0020】
更に別の実施形態において、本発明は、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、固相支持体が、セラミック、非晶質炭化ケイ素、不定形酸化物、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンおよびシリコーンエラストマーからなる群から選ばれる、上記アレイである。
【0021】
更に別の実施形態において、本発明は、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種の異なる物質が、3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシランリンカーを介して固相支持体に結合されている、上記アレイである。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、固相支持体の表面に複数のウェルを備えるアレイであって、ウェルの密度が少なくとも100ウェル/cm2である上記アレイである。
【0023】
また、本発明は、固相支持体の表面に複数のウェルを備えた位置アドレス可能なアレイの製造方法であって、固相表面に100ウェル/cm2を上回る密度となるように設計された微細加工鋳型からアレイを成型する工程を含む上記方法に関する。別の実施形態において、本発明は、固相支持体の表面に複数のウェルを備えた位置アドレス可能なアレイの製造方法であって、固相表面に100ウェル/cm2を上回る密度のウェルが形成されるように設計された微細加工鋳型から二次鋳型を成型し、その二次鋳型から少なくとも1つのアレイを成型する工程を含む上記方法である。
【0024】
更に別の実施形態において、本発明は、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なる物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質から構成される位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、プローブを上記アレイと接触させる工程、およびタンパク質/プローブ相互作用を検出する工程を含む上記方法である。
【0025】
更に別の実施形態において、本発明は、複数種の異なるタンパク質または該タンパク質の機能性ドメインを含む分子を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なるタンパク質または分子が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種のタンパク質および分子が、生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも50%から構成される位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、プローブを上記アレイと接触させる工程、およびタンパク質/プローブ相互作用を検出する工程を含む上記方法である。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、固相支持体が、セラミックス、非晶質炭化ケイ素、不定形酸化物、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンおよびシリコーンエラストマーからなる群から選ばれる位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、プローブを上記アレイと接触させる工程、およびタンパク質/プローブ相互作用を検出する工程を含む上記方法である。
【0027】
更に別の実施形態において、本発明は、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なる物質が固相支持体に3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシランリンカーを介して結合されている位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、プローブを上記アレイと接触させる工程、およびタンパク質/プローブ相互作用を検出する工程を含む上記方法である。
【0028】
更に別の実施形態において、本発明は、位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に固着させる工程(但し、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なる物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質から構成される)、プローブを上記アレイと接触させる工程、およびタンパク質/プローブ相互作用を検出する工程を含む上記方法である。
【0029】
1つの特定の実施形態において、本発明は、位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に固着させる工程(但し、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なる物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質から構成され、固相支持体がスライドガラスである)、プローブを上記アレイと接触させる工程、およびタンパク質/プローブ相互作用を検出する工程を含む上記方法である。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、複数種の異なるタンパク質または該タンパク質の機能性ドメインを含む分子を固相支持体上に固着させる工程(但し、各々の異なるタンパク質または分子が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なるタンパク質または分子が生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも50%から構成される)、プローブを上記アレイと接触させる工程、およびタンパク質/プローブ相互作用を検出する工程を含む上記方法である。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、複数種の異なるタンパク質または該タンパク質の機能性ドメインを含む分子を固相支持体上に固着させる工程(但し、各々の異なるタンパク質または分子が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なるタンパク質または分子が生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも50%から構成され、固相支持体がスライドガラスである)、プローブを上記アレイと接触させる工程、およびタンパク質/プローブ相互作用を検出する工程を含む上記方法である。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、位置アドレス可能なアレイの製造方法であって、固相表面に100ウェル/cm2を上回る密度のウェルが形成されるように設計された微細加工鋳型からアレイを成型する工程、ウェル内で、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に固着させる工程(但し、各々の異なる物質が固相支持体上の異なるウェル内に存在する)を含む上記方法である。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、位置アドレス可能なアレイの製造方法であって、固相表面に100ウェル/cm2を上回る密度のウェルが形成されるように設計された微細加工鋳型から二次鋳型を成型する工程、その二次鋳型から少なくとも1つのアレイを成型する工程、およびウェル内で、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体に固着させる工程(但し、各々の異なる物質が固相支持体上の異なるウェル内に存在する)、を含む上記方法である。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、位置アドレス可能なアレイの製造方法であって、固相表面に100ウェル/cm2を上回る密度のウェルが形成されるように設計された微細加工鋳型から二次鋳型を成型する工程、その二次鋳型から少なくとも1つのアレイを成型する工程、およびウェル内で、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固着させる工程(但し、各々の異なる物質が異なるウェル内に存在する)、を含む上記方法である。
【0035】
A.定義
本出願において用いられる「タンパク質」とは、全長タンパク質、タンパク質の部分、またはペプチドをいう。タンパク質は、生物(好ましくは細菌、酵母、昆虫細胞または哺乳動物細胞)における組換えによる過剰発現により調製することもできるし、大きなタンパク質の断片化により作製することもできるし、あるいは化学的に合成することもできる。
【0036】
本出願において用いられる「機能性ドメイン」とは、所望の機能活性をもたらすのに必要かつ十分なタンパク質のドメインである。機能性ドメインの例としては、特に、キナーゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、アセチラーゼ、転移酵素、または他の酵素の活性を示すドメインが挙げられる。機能性ドメインの他の例としては、DNA、RNA、タンパク質、ホルモン、リガンドまたは抗原に対する結合活性を示すそれらのドメインが挙げられる。
【0037】
本出願において用いられる「プローブ」とは、核酸(例えばDNAもしくはRNA)またはタンパク質に結合する任意の化学的試薬をいう。プローブの例としては、特に、別のタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、小分子基質、ならびにインヒビター、薬剤候補、受容体、抗原、ホルモン、ステロイド、リン脂質、抗体、補因子、サイトカイン、グルタチオン、免疫グロブリンのドメイン、糖鎖、マルトース、ニッケル、ジヒドロトリプシンおよびビオチンが挙げられる。
【0038】
チップ上の各タンパク質または各プローブは、好ましくは、固相支持体上の既知で予め決められている位置に置かれており、各タンパク質または各プローブの正体が固相支持体上のその位置から決定できるようになっている。更に、そのタンパク質またはプローブは、固相支持体上で位置アドレス可能なアレイを形成している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1a。図示された組換え法を用いて、119種の酵母プロテインキナーゼを、ガラクトース誘導型GAL10プロモーターの制御下でGST融合タンパク質を産生する高コピーURA3発現ベクター(pEGKG)にクローニングした。GST::キナーゼ構築物を大腸菌にレスキューし、各構築物の5’末端での配列を決定した。突然変異が見つかったら、全ての手順を繰り返した。図1b。記載されているようにして精製したGST::キナーゼ融合タンパク質のイムノブロット。3回の試みから、106種のキナーゼタンパク質が精製された。繰り返し試みたにもかかわらず、119種のGST融合体のうち最後の14種はイムノブロット分析で検出できなかった(例えば、星印をつけたレーンのMps1)。
【図2】図2a。キナーゼの研究に用いたタンパク質チップを、次のプロセス(概略的に図示されている)に従って作製した。ポリジメチルシロキサン(PDMS)をアクリル製のマスター鋳型に注いだ。硬化させた後、ウェルを備えた該チップを剥がし、スライドガラスに載せた。次に、該チップの表面を誘導体化し、次にタンパク質をウェルに結合させた。ウェルをまず1%BSAでブロックした後、キナーゼ、33P-γ-ATPおよび緩衝液を添加した。30℃にて30分間インキュベートした後、タンパク質チップを十分に洗浄し、X線フィルムおよびMolecular Dynamics PhosphorImager(解像度が50μm)の双方に暴露し、定量する。12種の基質について、それぞれのキナーゼアッセイを少なくとも2回繰り返し、残りの5種の基質については、そのアッセイを1回実施した。図2b。タンパク質チップの拡大図である。
【図3】タンパク質チップおよびキナーゼアッセイの結果。各チップの19位は、ネガティブ対照のシグナルを示す。B4位のMps1は、12種のキナーゼ反応の全てにおいて強いキナーゼ活性を示したが、ウエスタンブロットでは目に見えるシグナルは検出できなかった(図1b)。
【図4】図4a。プロテインキナーゼ反応の定量分析。キナーゼ活性は、Molecular Dynamics PhosphorImagerを用いて測定し、データをExcelスプレッドシートにエクスポートした。次に、そのデータをネガティブ対照に対して標準化することにより、キナーゼのシグナルを増大率(倍)(fold increases)に変換した。4つの反応における119種のキナーゼのシグナルをlogスケールで示す。増大率(倍)は1〜1000倍の範囲である。図4b。基質特異性を調べるために、次の式を用いて特異性指数(SI)を算出した:SIir=Fir/[(Fi1+Fi2+・・・+Fir)/r](式中、iは用いたキナーゼの正体を表わし、rは基質の正体を表わし、FirはGST単独の場合と比較した基質rについてのキナーゼiの増大率(倍)を表わす)。キナーゼの特性の幾つかの例は、SIが3より大きい場合に示される。
【図5】図5a。キナーゼのコアドメインの多重配列アライメントから得られた系統樹であり、ポリ(Tyr-Glu)キナーゼの機能特異性とアミノ配列との相関関係を示している。ポリ(Tyr-Glu)を基質として使用できるキナーゼは、配列比較系統樹の特定の領域にマッピングされることが多い。ポリ(Tyr-Glu)を効率的にリン酸化できるキナーゼは、影付きで示す。この基質を微弱にしか使用しない2種のキナーゼは、四角に示す。Rad53およびSte7(ポリ(Tyr-Glu)をリン酸化できなかった)はアスタリスクで示す。図示のように、これらのキナーゼの70%が4つの配列群(丸で囲まれている)に入っている。図5b。ウサギ筋肉のホスホリラーゼキナーゼ(PHK)28の構造。ポリ(Tyr-Glu)を基質として使用できるキナーゼに特に見い出される3つの塩基性残基およびメチオニン(Met)残基の位置を示している。アスパラギン(Asp)残基は通常、ポリ(Tyr-Glu)を使わないキナーゼに見い出される。
【図6】タンパク質チップの製造プロセスにおけるリソグラフィー工程の断面図。a.酸化物層の両面に2層のシリコンを有するシリコンウェハ。b.上面にレジスタントマスク層を有するシリコンウェハ。c.エッチングプロセスにより、表面がレジスタントマスクにより保護されていないシリコンを除去する。エッチングの深度は酸化物層の位置により調節する(すなさち、エッチングプロセスでは酸化物層は除去されない)。d.マスク層を取り除き、エッチングされたシリコンウェハを残す。e.タンパク質チップの材料を鋳型に塗布する。f.硬化させた後、タンパク質チップを鋳型から外す。タンパク質チップは鋳型の凹部(陰画)である像を有する。
【図7】タンパク質チップ上でのキナーゼ/インヒビターアッセイ。ヒト・プロテインキナーゼA(PKA)、ヒト・mapキナーゼ(MAPK)、3種の酵母PKA相同体(TPK1、TPK2およびTPK3)、ならびに2種の他の酵母プロテインキナーゼ(HSL1およびRCK1)を、各種濃度の特定のヒトPKAインヒビターPKIαまたはMAPKインヒビターSB202190を用いて、2種の基質(すなわち、PKAのタンパク質基質および一般に用いられるキナーゼ基質MBP)について試験した。図に示すように、PKIαは、双方のペプチドとMBPを基質として用いて、PKA活性を特異的に抑制できる。しかし、SB202190は、PKA活性に対して抑制作用を示さなかった。また、興味深い点として、PKIαが、試験した3種の酵母PKA相同体(TPK1、TPK2、TPK3)または他の2種の酵母プロテインキナーゼ(HSL1およびRCK1)を抑制しなかったことにも注目されたい。
【発明を実施するための形態】
【0040】
V.詳細な説明
本発明は、タンパク質機能の大規模な研究に有用なタンパク質チップ、すなわち固相支持体上のタンパク質の位置アドレス可能なアレイに関するものであり、そのタンパク質チップは、高密度に詰め込まれた反応ウェルを含む。位置アドレス可能なアレイは、目的の各プローブまたは各タンパク質が固相支持体上の既知で所定の位置に配置されて、各プローブまたは各タンパク質の正体が該アレイ上でのその位置から決定できるような構成を提供する。本発明はまた、少なくとも1つのサンプル中に存在するタンパク質の存在、量および/または機能をアッセイするためのタンパク質チップの使用方法に関する。本発明はまた、高密度で小容量の化学反応のためのタンパク質チップの使用方法に関する。また、本発明は、タンパク質チップ基材として有用なポリマー、ならびにタンパク質チップの製造方法に関する。本発明は更に、タンパク質チップ基材の誘導体化に有用な化合物に関する。
【0041】
1つの実施形態において、本発明は、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が該固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種の異なる物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質から構成される上記アレイである。1つの実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり100〜1,000種の異なる物質から構成される。別の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり1,000〜10,000種の異なる物質から構成される。別の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり10,000〜100,000種の異なる物質から構成される。更に別の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり100,000〜1,000,000種の異なる物質から構成される。更に別の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり1,000,000〜10,000,000種の異なる物質から構成される。更に別の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり10,000,000〜25,000,000種の異なる物質から構成される。更に別の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり少なくとも25,000,000種の異なる物質から構成される。更に別の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり少なくとも10,000,000,000種の異なる物質から構成される。更に別の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり少なくとも10,000,000,000,000種の異なる物質から構成される。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種の異なる物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質から構成され、かつ固相支持体がスライドガラスである上記アレイである。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種の異なる物質が1cm2当たり約30〜100種の異なる物質から構成される上記アレイである。1つの特定の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり30種の異なる物質から構成される。1つの特定の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり30〜50種の異なる物質から構成される。
別の特定の実施形態において、上記の複数種の異なる物質は、1cm2当たり50〜100種の異なる物質から構成される。
【0044】
種々の特定の実施形態において、本発明は、複数種の異なるタンパク質または該タンパク質の機能性ドメインを含む分子を固相支持体上に含んでなり、各々の異なるタンパク質または分子が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種の異なるタンパク質または分子が、生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも50%、75%、90%または95%から構成される上記アレイである。例えば、そのような生物は、真核生物でも原核生物でもよく、好ましくは、哺乳動物、ヒトまたはヒト以外の動物、霊長類、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ニワトリ、真菌(例えば酵母)、ショウジョウバエ(Drosophila)、線虫(C. elegans)などである。そのような目的の生物学的活性のタイプは、限定するものではないが、酵素活性(例えばキナーゼ活性、プロテアーゼ活性、ホスファターゼ活性、グリコシダーゼ、アセチラーゼ活性および他の化学基転移酵素活性)、核酸結合性、ホルモン結合性などとすることができる。
【0045】
A.タンパク質チップの製造 本発明のアレイに高密度のウェルを有するタンパク質チップは、好ましくは、慣用の微細加工技法またはマイクロリソグラフィー技法を用いて、型押しされ、ミリングまたはエッチング加工したマスター鋳型から成型される。好ましくは、慣用のマイクロリソグラフィー技法および材料が、マスター鋳型の製造に用いられる。マスター鋳型を製造したら、次にそのマスター鋳型を直接使用してタンパク質チップ自体を成型することができる。あるいはまた、マスター鋳型から二次または三次の鋳型を成型してもよく、これらの二次または三次の鋳型からタンパク質チップが成型される。
【0046】
マスター鋳型は、微細加工またはマイクロリソグラフィーに適するどのような材料からも製造でき、シリコン、ガラス、石英、ポリイミドおよびポリメチルメタクリレート(ルーサイト)が好ましい。マイクロリソグラフィーの場合、好ましい材料はシリコンウェハ(silicon wafers)である。
【0047】
適切なマスター鋳型、二次鋳型または三次鋳型が製造されたら、タンパク質チップを成型する。タンパク質チップは、成型に適するいずれの固相支持体にも成型することができ、多孔質または非多孔質の固相支持体が挙げられる。セラミック、非晶質炭化ケイ素、硬化するとSiO2の成型物を生じる不定形酸化物、ポリイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリスチレンが好ましい固相支持体であり、シリコーンエラストマー(silicone elastomeric)材料が最も好ましい。シリコーンエラストマー材料の中でも、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が最も好ましい固相支持体である。シリコーンエラストマー材料の利点は、それらの可撓性の性質のために、鋳型から外し易い点である。
【0048】
図6に、本発明によるタンパク質チップ上のウェルの高密度アレイを実現するのに有用な方法の一例を示す。シリコンの層の間に酸化物層が挟まれているシリコンウェハを用意する(図6a)。シリコン-オン-インシュレーター(silicon-on-insulator;SOI)ウェハとして知られているこれらのウェハは一般にウェハ供給会社(例えば、Belle Mead Research, Belle Mead, NJおよびVirginia Semiconductor, Fredericksburg, VA)から入手可能である。
【0049】
次に、そのシリコンウェハをパターニングし、エッチング工程によりエッチングする(図6b〜d)。埋設されている酸化物層は、非常に効果的なエッチングストップとして役立ち、ウェハ全体にわたり非常に均一なエッチング深度が得られる。エッチング深度はエッチング工程には依存せず、上部のシリコン層の厚みによってのみ決まる。
【0050】
湿式化学的エッチング工程(例えばKOHまたはテトラ-メチルヒドラジン(TMAH)を用いるもの)が利用できる。しかし、この技法は、シリコンウェハの結晶配向にわずかに依存する。したがって、反応性イオンエッチング(RIE)において希ガス(典型的にはSF6)を用いる技法が好ましい。RIEエッチング技法は、シリコン中に、シリコンウェハの結晶配向に依存しない高度に異方性のウェルを実現することができる。参考文献、G. Kovacs,「微細機械加工されたトランスデューサー資料集(Micromachined Transducers Sourcebook)」, Academic Press (1998)およびM. Madou,「微細加工の基礎(Fundamentals of Microfabrication)」, CRC Press (1997)にエッチング技法のバックグラウンドが載っている。
【0051】
1つのチップに対して両タイプのマイクロリソグラフィーを用いて、所望のウェル形状の組合せを得ることができる。湿式化学的エッチングは、U字形のウェルが得られる等方性の工程であるが、RIAは底部が四角形のウェルが得られる異方性の工程である。
【0052】
ウェハをエッチングしてマスター鋳型を得た後、それを用いてタンパク質チップを成型できる(図6e〜f)。これらの構造体をタンパク質チップとしてもよいし、あるいはそれら自体を、そこからタンパク質チップの更なる成型を行う二次もしくは三次鋳型としてもよい。
【0053】
したがって、1つの実施形態において、複数のウェルを固相支持体の表面上に含む位置アドレス可能なアレイの製造方法は、固相表面に100ウェル/cm2を上回る密度のウェルが形成されるように設計された微細加工鋳型からアレイを成型することを含む。別の実施形態において、複数のウェルを固相支持体の表面に含む位置アドレス可能なアレイの製造方法は、固相表面に100ウェル/cm2を上回る密度のウェルが形成されるように設計された微細加工鋳型から二次鋳型を成型し、その二次鋳型から少なくとも1つのアレイを成型することを含む。更に別の実施形態において、位置アドレス可能なアレイの製造方法は、上記の鋳型を液体成型材料で被覆し、成型物が固形になるまでその成型材料を硬化させることを含む。
液体成型材料は、好ましくはシリコーンエラストマー(silicone elastomer)であり、最も好ましくはポリジメチルシロキサンである。これらの位置アドレス可能なアレイのいずれにも、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を、各々の異なる物質が固相支持体上の異なるウェル内に見出されるように置くことができる。
【0054】
B.タンパク質チップの特徴
本発明のタンパク質チップは、物理的な大きさに限定されるものではなく、簡便ないずれの大きさのものであってもよい。現行の実験室装置と適合させるためには、標準的な顕微鏡用スライドかまたはそれより小さい大きさのタンパク質チップが好ましい。最も好ましいのは、2つのチップが1枚の顕微鏡用スライドに取り付けられるような大きさのタンパク質チップである。また、質量分析計のサンプルチャンバーに適合する大きさのタンパク質チップも好ましい。
【0055】
本発明のタンパク質チップにおけるウェルは、どのような形状であってもよく、例えば、矩形、正方形または楕円形が挙げられ、円形が好ましい。タンパク質チップにおけるウェルは四角形もしくは円形の底部、V字形の底部、またはU字形の底部を有することができる。四角形の底部はわずかに好ましい。何故ならば、好ましい反応性イオンエッチング(RIE)工程(異方性である)によって、底部が四角形のウェルが得られるからである。ウェル底部の形状は、特定のチップ上で均一である必要はないが、該チップ上で実施される特定のアッセイでの必要に応じて様々なものであり得る。
【0056】
本発明のタンパク質チップのウェルは、いずれの幅−深度比のものであってもよく、約10:1〜約1:10の幅−深度比が好ましい。本発明のタンパク質チップのウェルは、いずれの容積のものであってもよく、1pl〜5μlの容積を有するウェルが好ましく、1nl〜1μlの容積を有するウェルがより好ましい。ウェルの最も好ましい容積は100nl〜300nlである。非常に高密度のウェルを備えるタンパク質チップの場合、好ましいウェルの容積は10pl〜100nlである。
【0057】
本発明のタンパク質チップは、非常に様々なウェルの密度(ウェル/cm2)を有することができる。好ましいウェルの密度は約25ウェル/cm2〜約10,000,000,000,000ウェル/cm2である。レーザーミリングしたルーサイトのマスター鋳型から成型されるタンパク質チップでのウェルの密度は、通常、1ウェル/cm2〜2,500ウェル/cm2である。適切なミリング装置を使えば、直径が100μmと小さく100μm間隔のウェルが得られる。湿式化学的マイクロリソグラフィー技法によりエッチングされたマスター鋳型から成型されるタンパク質チップでは、ウェルの密度が通常50ウェル/cm2〜10,000,000,000ウェル/cm2である。湿式化学的エッチングでは、深さ10μmで10μm間隔のウェルを得ることができ、そしてまた、直径が10μm未満のウェルが得られる。RIEマイクロリソグラフィー技法によりエッチングされたマスター鋳型から成型されるタンパク質チップでは、ウェルの密度が通常100ウェル/cm2〜25,000,000ウェル/cm2である。RIEを光学的リソグラフィーと組み合わせれば、直径500nmで500nm間隔のウェルを作製することができる。
電子ビームリソグラフィーをRIEと組み合わせて用いれば、直径50nmで50nm間隔のウェルを作製することができる。この大きさおよびそれと等しい間隔を有するウェルでは、ウェルの密度が10,000,000,000,000ウェル/cm2のタンパク質チップが得られる。好ましくは、RIEを用いて、直径20μmで20μm間隔のウェルを作製する。この大きさで間隔もそれと等しいウェルでは、25,000,000ウェル/cm2の密度となろう。
【0058】
上記で記載した微細加工技法およびマイクロリソグラフィー技法は、ウェルの大きさが560μmまたは280μmで約1mm間隔であるシリコンウェハを湿式化学的にエッチングするのに成功裏に用いられている。ウェルと間隔のこの組合せにより、それぞれ約410,000ウェル/cm2および約610,000ウェル/cm2のアレイが得られる。ウェルの大きさと間隔が等しい場合、約3,190,000ウェル/cm2および12,750,000ウェル/cm2のタンパク質チップが得られる。
【0059】
1つの実施形態において、上記アレイは、固相支持体の表面に複数のウェルを含んでおり、ウェルの密度は少なくとも100ウェル/cm2である。別の実施形態において、上記のウェルの密度は100〜1000ウェル/cm2である。別の実施形態において、上記のウェルの密度は1000〜10,000ウェル/cm2である。別の実施形態において、上記のウェルの密度は10,000〜100,000ウェル/cm2である。更に別の実施形態において、上記のウェルの密度は100,000〜1,000,000ウェル/cm2である。更に別の実施形態において、上記のウェルの密度は1,000,000〜10,000,000ウェル/cm2である。更に別の実施形態において、上記のウェルの密度は10,000,000〜25,000,000ウェル/cm2である。更に別の実施形態において、上記のウェルの密度は少なくとも25,000,000ウェル/cm2である。更に別の実施形態において、上記のウェルの密度は少なくとも10,000,000,000ウェル/cm2である。更に別の実施形態において、上記のウェルの密度は少なくとも10,000,000,000,000ウェル/cm2である。
【0060】
C.タンパク質チップの利用
1つの実施形態において、本発明は、限定するものではないがスライドガラスのような平坦表面を含むタンパク質チップを提供する。高密度タンパク質アレイは、化学反応およびアッセイが実施できて、タンパク質(例えばプロテインキナーゼ)の存在、量および/または機能の大規模な平行分析が可能になるように、例えばスライドガラス上に作製することができる。タンパク質またはプローブは共有結合または非共有結合により固相支持体の平坦表面に結合させる。タンパク質またはプローブは、固相支持体の平坦表面に直接結合させてもよいし、あるいは固相支持体にリンカー分子または化合物を介して付着させてもよい。リンカーは、タンパク質またはプローブの固相支持体表面への付着を容易にするように固相支持体の表面を誘導体化するいずれかの分子または化合物とすることができる。リンカーは、タンパク質またはプローブを固相支持体表面に共有結合または非共有結合により結合させることができる。更に、リンカーは、無機分子でも有機分子でもよい。好ましいリンカーは、遊離アミンを有する化合物である。リンカーの中で最も好ましいものは3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)である。
【0061】
別の実施形態において、本発明のタンパク質チップには、平坦表面アレイと比較して幾つかの利点がある。すなわち、ウェルを用いることにより、ウェルの内容物についての交差汚染の可能性が解消または軽減される。平坦表面と比較したもう1つの利点は、ノイズに対するシグナル比(signal-to-noise ratios)が増大することである。ウェルにより、大容量の反応溶液をより高密度の配置で使用できるようになり、したがって、より大きなシグナルが可能になる。更に、ウェルにより、平坦表面アレイと比較してチップからの反応溶液の蒸発速度が低下し、したがって、より長い反応時間が可能になる。
【0062】
平坦表面と比較したウェルのもう1つの利点は、ウェルを使用すれば、チップ上の各ウェルについて固定かつ限定量のプローブを用いた関連研究が可能になるのに対し、平坦な表面を用いた場合には、通常、基材全体にわたりプローブが無差別に適用されてしまう点である。プローブ混合物中の1つのプローブが高い親和性を有するが特異性が低い場合、基材全体にわたってプローブ混合物が無差別に適用されることによって、タンパク質の多くがその高親和性のプローブで飽和されてしまうだろう。この飽和は、混合物中の他のタンパク質の検出を実質上制限する。ウェルを用いれば、チップ上の個々のウェルに限定量のプローブを適用できる。したがって、個々のタンパク質に適用されるプローブの量が制御でき、そのプローブは(異なるウェルに入っている)異なるタンパク質に対して個別のものとすることができる。
【0063】
上記のようにしてタンパク質チップが製造されたら、それを用いて、アッセイおよび他の化学反応を行うことができる。アッセイの場合、タンパク質またはプローブは通常、ウェルに配置するだろう。タンパク質またはプローブの存在または不在は、タンパク質チップにそれぞれプローブまたはタンパク質を適用することにより検出されるだろう。タンパク質−プローブ相互作用は、当技術分野で公知の種々の技法を用いて可視化でき、それらの技法の幾つかは下記で述べる。
【0064】
本発明において有用なタンパク質は、融合タンパク質(所定のドメインが種々の天然タンパク質の1つに結合されている)であってもよいし、または完全なままの状態の非融合タンパク質であってもよい。
【0065】
別の実施形態では、タンパク質含有細胞性物質(限定するものではないが、例えば小胞、エンドソーム、細胞内小器官(subcellular organelles)および膜断片)をタンパク質チップ(例えばウェル内)に配置することができる。別の実施形態では、細胞全体をタンパク質チップ(例えばウェル内)に配置する。さらなる実施形態では、タンパク質、タンパク質含有細胞性物質または細胞全体をタンパク質チップの固相支持体に付着させる。
【0066】
タンパク質は、タンパク質チップに配置する前に精製してもよいし、あるいは、該チップに配置している間に、特定のタンパク質に結合する試薬(予めタンパク質チップに配置されている)を用いて精製してもよい。部分精製されたタンパク質含有細胞性物質または細胞は、標準的な技法(例えば、アフィニティーまたはカラムクロマトグラフィー)または遠心分離サンプル(例えばP1またはP2画分)の単離により得ることができる。
【0067】
更に、タンパク質、タンパク質含有細胞性物質または細胞は、タンパク質チップに配置する前または配置する時点で、人工または天然の膜に埋設することができる。別の実施形態では、タンパク質、タンパク質含有細胞性物質または細胞は、タンパク質チップに配置する前または配置する時点で、細胞外マトリックス成分(例えばコラーゲンや基底板)に埋設することができる。本発明のタンパク質は、溶液の状態であってもよいし、固相支持体表面(例えばウェル内または平坦表面上)に結合されていてもよいし、あるいは固相支持体のウェルに配置されている基材(例えばビーズ)に結合させてもよい。
【0068】
タンパク質またはプローブのウェル内での配置は、バブルジェット式もしくはインクジェット式プリンターヘッドなどのいずれの供給手段を用いて行うことができる。マイクロピペットディスペンサーが好ましい。タンパク質またはプローブの配置は、手作業で行うか、またはその工程を機械に接続したコンピューターを用いて自動的に行うことができる。
【0069】
ウェルが内蔵されている(self-contained)ので、タンパク質またはプローブは固相支持体表面に付着または結合されている必要はなく、むしろタンパク質またはプローブは単にウェルに配置されているか、ウェル内に配置されている基材(例えばビーズ)に結合されていればよい。他の基材としては、限定するものではないが、ニトロセルロース粒子、ガラスビーズ、プラスチックビーズ、磁性粒子およびラテックス粒子が挙げられる。あるいはまた、タンパク質またはプローブは、ウェル内の固相支持体表面に共有結合または非共有結合により結合される。
タンパク質またはプローブは、(ウェル内の)固相支持体表面に直接結合されてもよいし、またはリンカー分子もしくは化合物を介して固相支持体に付着されてもよい。リンカーは、タンパク質またはプローブの固相支持体表面への付着を容易にするように固相支持体表面を誘導体化するいずれの分子または化合物とすることもできる。リンカーは、タンパク質またはプローブを共有結合により固相支持体表面に結合させることができるか、あるいはリンカーは、非共有結合性の相互作用により結合させることができる。更に、リンカーは、無機または有機分子とすることもできる。好ましいリンカーは、遊離アミンを有する化合物である。
リンカーの中で最も好ましいものは、3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)である。
【0070】
ウェル表面に非共有結合により結合されているタンパク質またはプローブは、ウェル表面への付着を達成するために種々の分子相互作用を利用することができ、例えば、水素結合、ファンデルワールス結合、静電的、または金属キレート配位結合が挙げられる。更に、DNA−DNA、DNA−RNAおよび受容体−リガンドの相互作用が、非共有結合による結合を利用する相互作用のタイプである。受容体−リガンド相互作用の例としては、抗体と抗原、DNA結合タンパク質とDNA、酵素と基質、アビジン(またはストレプトアビジン)とビオチン(またはビオチン化分子)との間の相互作用、ならびに脂質結合タンパク質とリン脂質の膜もしくは小胞との相互作用が挙げられる。例えば、タンパク質は、ウェルの表面に付着されている基質に対して親和性を有する融合タンパク質ドメインと共に発現できる。融合タンパク質結合に対する好適な基質としては、トリプシン/アンヒドロトリプシン、グルタチオン、免疫グロブリンドメイン、マルトース、ニッケルまたはビオチンおよびその誘導体が挙げられ、それらはそれぞれウシ膵臓トリプシンインヒビター、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、抗原、マルトース結合タンパク質、ポリ-ヒスチジン(例えばHisX6タグ)およびアビジン/ストレプトアビジンに結合する。
【0071】
D.タンパク質チップ上でのアッセイ
1つの実施形態において、タンパク質チップは、化学発光もしくは蛍光を生じる標準的な酵素アッセイを用いることによるアッセイに用いられる。種々のタンパク質および分子修飾の検出は、例えば光ルミネセンス、非タンパク質基質を用いる蛍光、酵素的発色、質量分析シグネチャーマーカー(signature marker)およびオリゴヌクレオチドタグの増幅(例えばPCRによるもの)を用いて行うことができる。したがって、タンパク質/プローブ相互作用は、特に、化学発光、蛍光、放射性標識または原子間力顕微鏡法(atomic force microscopy)により検出できる。またアレイ中の特定の要素に結合するプローブは直接質量分析によっても同定できる。例えば、非分解的な方法(プローブをアレイの要素から解離させる)により溶液中に放出されるプローブは、質量分析によって同定できる(例えばWO 98/59361を参照)。別の例では、アレイ要素の酵素消化により溶液中に放出されるペプチドまたは他の化合物を質量分析により同定できる。
【0072】
アッセイの種類は幾つかの大まかなカテゴリーに分かれる。第1の例として、アレイ上の各ウェルは、その結合を検出および定量しようとする1つのプローブに暴露される。これらのアッセイの結果は、限定するものではないが以下の方法を含む方法により可視化される:1)放射性標識したリガンド、続いてオートラジオグラフィーおよび/またはホスホイメージャー(phosphoimager)による分析を用いること;2)ハプテンを結合させ、次いでそれを蛍光標識または酵素標識した抗体または高親和性ハプテンリガンド(例えばビオチンまたはストレプトアビジン)により検出すること;3)質量分析;4)原子間力顕微鏡法;5)蛍光偏光法;6)ローリングサークル型増幅検出方法(Hatchら, 1999,「固相表面に固定されたDNAのローリングサークル型増幅および多重突然変異検出へのその適用(Rolling circle amplification of DNA immobilized on solid surfaces and its application to multiplex mutation detection)」, Genet. Anal. 15(2):35-40);7)競合的PCR(Finiら, 1999,「マイクロプレートルミノメーターを用いるパルボウイルスB19 DNAの検出および定量のための化学発光競合PCRの開発(Development of a chemiluminescence competitive PCR for the detection and quantification of parvovirus B19 DNA using a microplate luminometer)」, Clin Chem. 45(9):1391-6;Kruseら, 1999,「半ネスティド競合PCRアッセイを用いるトランスフォーミング増殖因子-β1(TGF-β1)遺伝子発現の検出および定量的測定(Detection and quantitative measurement of transforming growth factor-beta 1(TGF-beta 1) gene expression using a semi-nested competitive PCR assay)」, Cytokine 11(2):179-85;GuenthnerおよびHart, 1998,「マイクロプレートに基づく検出系を用いるHIV-1についての定量的で競合的なPCRアッセイ(Quantitative, competitive PCR assay for HIV-1 using a microplate-based detection system)」, Biotechniques 24(5):810-6);8)比色法;および9)生物学的アッセイ(例えばウイルス力価についてのもの)。
【0073】
第2の例として、アレイ上の各ウェルは、その結合を検出および定量しようとする複数種のプローブに同時に暴露される(幾つかの供給源からプローブをプールすることを含む)。これらのアッセイの結果は、限定するものではないが以下の方法を含む方法により可視化される:1)質量分析;2)原子間力顕微鏡法;3)赤外もしくは蛍光標識した化合物またはタンパク質;4)増幅可能なオリゴヌクレオチド、ペプチドまたは分子の質量標識;ならびに5)タンパク質酵素活性の刺激もしくは阻害。本発明のアレイには位置のアドレス可能な性質があるために、情報はプローブの混合物から収集される。すなわち、規定のタンパク質をタンパク質チップ上の既知の位置に配置することにより、結合したプローブが結合する相手についての情報が判る。そのように望まれる場合、次に、結合を示すアレイ上の位置を個々のプローブでプロービングして、目的の特定の相互作用を同定することができる。
【0074】
有用な情報はまた、例えば、タンパク質チップを細胞抽出物と共にインキュベートすることによっても得ることができ、その場合、チップ上の各ウェルは、目的の酵素活性をアッセイするための反応混合物を含み、複数の異なる酵素活性および/または基質活性がアッセイされて、それによって、特定の酵素活性の細胞性レパートリーが同定および測定される。同様にして、タンパク質チップは、細胞全体または形質膜の調製物と共にインキュベートして、例えば膜関連タンパク質もしくは分子の発現または細胞表面タンパク質もしくは分子の結合特性についてアッセイすることができる。タンパク質チップ上の特定の位置に結合する細胞、細胞上のマーカーまたは細胞によって分泌される物質は、当技術分野で公知の技法を用いて検出できる。例えば、抗原のアレイを含むタンパク質チップは、B細胞またはT細胞を用いてスクリーニングでき、その場合、その抗原は、合成抗原、組織特異的抗原、疾患特異的抗原、病原体の抗原、および自己組織の抗原からなる群から選ばれる。リンパ球により認識される抗原または抗原決定基は、アレイ上のどの位置で抗原による細胞の活性化が起こるのかを確定することにより決定できる。リンパ球の活性化は、種々の手段によりアッセイでき、例えば、限定するものではないが、抗体の合成を検出すること、3H-チミジンの取込みを検出もしくは測定すること、標識した抗体で細胞表面分子をプロービングして抗原認識および活性化により誘導または抑制される分子(例えばIgD、C3b受容体、IL-2受容体、トランスフェリン受容体、膜クラスII MHC分子、CD23、CD38、PCA-1分子、HLA-DR)を同定すること、および発現および/または分泌されるサイトカインを同定することが挙げられる。
【0075】
別の例において、特定の細胞型についてのマイトジェンは、細胞を、推定のマイトジェンのアレイを含むタンパク質チップと共にインキュベートすることにより測定でき、位置アドレス可能なアレイを細胞集団と接触させ(但し、そのアレイは、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、各々の異なる物質は固相支持体上の異なる位置に存在し、異なる物質の密度は1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質である);そして細胞においてマイトジェン活性が誘導される固相支持体上での位置を検出するステップを含む。細胞分裂は、例えば細胞による3H-チミジンの取込みを検出もしくは測定することによりアッセイできる。細胞は同じ細胞型(すなわち、均質な集団)のものであってもよいし、または異なる細胞型のものであってもよい。
【0076】
更に別の例において、タンパク質チップ上でのタンパク質の細胞取込みおよび/またはタンパク質のプロセッシングは、例えば、放射性標識したタンパク質基質を用い、放射性基質濃度の低下または細胞による放射性基質の取込みを測定することによりアッセイできる。これらのアッセイは、診断目的または治療目的で使用できる。当業者であれば、種々のタイプの細胞相互作用を検出するための多くの適切なアッセイを理解できる。
【0077】
したがって、幾つかのクラスのプローブ(例えば、既知のプローブの混合物、細胞抽出物、細胞内小器官、細胞膜調製物、細胞全体など)を用いることにより、細胞活性の大規模または網羅的な分析が提供できる。特に、1種または数種のスクリーンが、細胞型または細胞、組織、器官もしくは系の生理学的状態の「フットプリント」の同定の基礎をなし得る。例えば、(形態学上または機能上)異なる細胞型は、タンパク質チップにより測定される細胞活性または発現のパターンにより区別できる。またこのアプローチは、例えば細胞周期の異なる段階、疾患状態、生理学的状態の変化(例えば低酸素症)、治療(例えば薬物治療)の前もしくは後での生理学的状態、代謝状態、分化もしくは発生の段階、環境的刺激(例えば光、熱)に対する応答、細胞−細胞相互作用、細胞特異的遺伝子および/もしくはタンパク質の発現、ならびに疾患特異的遺伝子および/もしくはタンパク質の発現を測定するのに使用できる。
【0078】
酵素反応を行い、本発明のタンパク質チップを用いて酵素活性を測定することができる。1つの特定の実施形態では、チップ上のタンパク質(1つまたは複数)の酵素活性をモジュレートする化合物を同定できる。例えば、酵素活性レベルの変化が、タンパク質チップのウェル内での化合物もしくは化合物の混合物と酵素反応混合物とのインキュベーションにより検出および定量され、この場合、(例えば酵素活性により蛍光性になる基質から)シグナルが生じる。化合物の存在と不在との差異に注目する。更に、異なるタンパク質の酵素活性に対する化合物の効果の違いは、タンパク質チップ内およびチップ間で、サンプルに対するそれらの相対的効果を比較することによって容易に検出される。
【0079】
上記で詳述した本発明の高密度タンパク質チップを用いる種々のストラテジーを用いて、タンパク質の種々の物理的および機能的特性を決定することができる。例えば、上記のタンパク質チップは、抗体でプロービングすることにより存在するタンパク質の存在および量を評価するのに使用できる。1つの実施形態において、GST融合タンパク質のポリジメチルシロキサン(PDMS)チップをプロービングして、タンパク質の存在および/またはその活性レベルを測定することができる。タンパク質は、発光法、化学発光法、蛍光法または化学蛍光法などの標準的な検出アッセイを用いて検出できる。例えば、目的のタンパク質に対する一次抗体は、蛍光標識した二次抗体により認識され、次にそれを、蛍光産物を光源で励起させてその後の蛍光を検出する機器(例えばMolecular Dynamicsスキャナー)で測定する。より高い感度のためには、目的のタンパク質に対する一次抗体は、アルカリホスファターゼや西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素にコンジュゲートしている二次抗体により認識される。発光基質(化学発光法の場合)または蛍光発生性(fluorogenic)基質(化学蛍光法の場合)の存在下で、酵素で開裂させると、例えばMolecular Dynamicsスキャナーを用いて検出および定量できる高度に発光性または蛍光性の産物が生じる。あるいはまた、蛍光標識した二次抗体のシグナルを、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートしている三次抗体を用いて増幅させることができる。
【0080】
また、プロテインキナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、グリコシダーゼ、アセチラーゼまたは他の官能基転移酵素の基質の同定も、本発明のタンパク質チップで行うことができる。例えば、非常に様々な異なるプローブをタンパク質チップに付着させて、特定の酵素に対する基質として作用するそれらの能力についてアッセイする(例えばプロテインキナーゼによりリン酸化されるそれらの能力についてアッセイする)。キナーゼ活性の検出方法としては、限定するものではないが、放射性標識(例えば33P-ATPおよび35S-γ-ATP)またはホスホアミノ酸に結合する蛍光抗体プローブの使用が挙げられる。例えば、1つのアッセイでは放射性標識したリンがタンパク質に取り込まれると、キナーゼ活性があることが示され、一方、別のアッセイでは、放射性標識したリンの媒体への放出が測定でき、それによってホスファターゼ活性が示される。別の例では、プロテアーゼ活性が、標準的なアッセイ(例えば質量分析、ペプチド断片に対する放射性標識した抗体、または蛍光タグ付けした基質からの蛍光シグナルの喪失)を用いて、プロテアーゼ活性により生じ媒体へ放出されるペプチド断片を同定することにより検出できる。こうして、官能基転移酵素の活性は、幾つかのアプローチおよび多くの独立した検出手段を用いて容易にアッセイでき、それらは当業者には理解されるだろう。
【0081】
タンパク質チップは、該チップ上で特定の活性(例えば特定のキナーゼ活性、プロテアーゼ活性、核酸結合特性、ヌクレオチド加水分解、ホルモン結合性およびDNA結合性)を有するタンパク質を同定するのに使用できる。したがって、チップは、所望の活性の存在を示すプローブでプロービングできる。例えば、DNA結合性が目的の活性である場合、候補のDNA結合タンパク質を含むチップをDNAでプロービングする。
【0082】
タンパク質のアレイのタンパク質リガンドもしくは核酸リガンドである(天然または合成の)プローブの探索は、タンパク質チップ上で並行して行うことができる。プローブは、細胞、タンパク質含有細胞性物質、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、小分子基質、薬剤候補、受容体、抗原、ステロイド、リン脂質、抗体、免疫グロブリンドメイン、グルタチオン、マルトース、ニッケル、ジヒドロトリプシンまたはビオチンであってよい。あるいは、プローブは、酵素の基質またはインヒビターであってもよい。例えば、プローブは、キナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、グリコシダーゼ、アセチラーゼおよび他の官能基転移酵素からなる群から選ばれる酵素の基質またはインヒビターであってよい。チップ上のタンパク質を核酸またはタンパク質のプローブと組み合わせてインキュベートした後、結合した核酸またはタンパク質のプローブを、質量分析により同定すればよい(Lakeyら, 1998, “Measuring protein-protein interactions(タンパク質−タンパク質相互作用の測定)”, Cuur Opin Struct Biol. 8:119-23)。
【0083】
病原体(例えばウイルス、細菌、真菌又は寄生虫などの感染性疾患原因)に由来する標的タンパク質の正体、または回復期にある患者もしくは回復期にない患者の免疫応答における抗原として作用する異常細胞(例えば新生物細胞、罹患細胞もしくは損傷細胞)に由来する標的タンパク質の特性を、本発明のタンパク質チップを用いて判定することができる。例えば、患者から単離されたリンパ球は、タンパク質チップ上に病原体のタンパク質のアレイを含むタンパク質チップをスクリーニングするのに使用できる。通常、これらのスクリーニングは、位置アドレス可能なアレイを複数種のリンパ球と接触させ(但し、そのアレイは、固相支持体上に複数種の可能性のある抗原を含んでおり、かつ、各々の異なる抗原は固相支持体上の異なる位置に存在し、異なる抗原の密度は、1cm2当たり少なくとも100種の異なる抗原である)、リンパ球の活性化が生じている固相支持体上での位置を検出することを含む。1つの特定の実施形態では、リンパ球をアレイ上の病原体のタンパク質と接触させ、その後、抗原もしくは抗原の混合物によるB細胞もしくはT細胞の活性化をアッセイして、病原体から誘導された標的抗原を同定する。
【0084】
あるいはまた、タンパク質チップは、例えば可能性のある抗原のアレイをスクリーニングして患者のB細胞および/またはT細胞の標的を同定することにより、免疫応答の特性決定するのに使用できる。例えば、B細胞を可能性のある抗原(例えば抗原決定基を有する分子)のアレイと共にインキュベートして、体液による免疫の抗原標的を同定することができる。抗原の供給源は、例えば、自己組織、(例えば病原性微生物の)既知もしくは未知の抗原のコレクション、組織特異的もしくは疾患特異的な抗原のコレクション、または合成の抗原由来であってよい。
【0085】
別の実施形態において、患者から単離したリンパ球を用いて、患者自身の組織から誘導したタンパク質のアレイを含むタンパク質チップをスクリーニングすることができる。そのようなスクリーニングは、自己免疫の基質またはアレルギーの原因となるタンパク質を同定し、それによって自己免疫またはアレルギー反応を診断し、かつ/または可能性のある標的薬剤の候補を同定することができる。
【0086】
別の実施形態において、本発明のタンパク質チップは、B細胞またはT細胞を活性化できる物質を同定するのに使用できる。例えば、リンパ球をチップ上の試験分子もしくは試験タンパク質のアレイと接触させ、リンパ球の活性をアッセイして、B細胞もしくはT細胞またはリンパ球亜群(例えば細胞障害性T細胞)を総合的に活性化できる物質を同定する。
【0087】
抗原認識によるB細胞の活性化の誘導は、種々の手段によりアッセイできる。アッセイとしては、限定するものではないが、抗体の合成、H-チミジンの取込み、標識した抗体の新たに発現もしくは抑制された細胞表面分子への結合、およびB細胞活性化の指標となる因子(例えばサイトカイン)の分泌の検出または測定が挙げられる。同様に、本発明のタンパク質チップを用いるスクリーニングにおけるT細胞の活性化は、種々のアッセイにより調べることができる。例えば、クロム(51Cr)放出アッセイは、抗原の認識およびその後の細胞障害性T細胞の活性化を検出できる(例えば、Palladinoら, 1987, Cancer Res. 47:5074-9;Blachereら, 1993, J. Immunotherapy 14:352-6を参照)。
【0088】
抗体調製物の特異性は、本発明のタンパク質チップを使用して調べることができ、該使用は、位置アドレス可能なアレイを抗体調製物と接触させ(但し、そのアレイは可能性のある複数種の抗原を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる抗原は固相支持体上の異なる位置に存在し、異なる抗原の密度は1cm2当たり少なくとも100種の異なる抗原である)、抗体調製物中の抗体による結合が起こる固相支持体上での位置を検出することを含む。抗体調製物は、限定するものではないが、Fabフラグメント、抗血清、およびポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体もしくは合成抗体であってよい。例えば、抗血清は、疾患特異的抗原のコレクション、組織特異的抗原のコレクションまたは他の同定済みの抗原のコレクションをスクリーニングし、どの抗原が認識されるかを判定することにより特性決定できる。1つの特定の実施形態において、類似または関連する抗原を含むタンパク質チップアレイは、モノクローナル抗体を用いてスクリーニングし、該アレイ上のどの抗原にモノクローナル抗体が結合するかを判定することにより特異性の程度を評価する。
【0089】
特定の細胞活性の標的の正体(identity)は、タンパク質チップを複合的タンパク質混合物(例えば細胞抽出物)で処理し、タンパク質の活性を測定することによりアッセイできる。例えば、異なるキナーゼのアレイを含むタンパク質チップは、化合物(例えば薬剤)で処理した細胞からの細胞抽出物と接触させ、キナーゼ活性についてアッセイすることができる。別の例では、異なるキナーゼのアレイを含むタンパク質チップは、特定の細胞分化段階(例えば多能性期)にある細胞または特定の代謝段階(例えば有糸分裂期)にある細胞からの細胞抽出物と接触させ、キナーゼ活性についてアッセイできる。そうしたアッセイから得られた結果(例えば薬剤の存在下もしくは不在下にある細胞同士、または幾つかの分化段階にある細胞同士、または異なる代謝段階にある細胞同士を比較しての結果)から、異なる条件間での細胞における生理学的変化に関する情報を得ることができる。
【0090】
あるいはまた、特定の細胞活性の標的の正体は、多数の異なるタンパク質(例えばペプチドライブラリー)を含んでいる本発明のタンパク質チップを複合的タンパク質混合物(例えば細胞抽出物)で処理し、チップ上のタンパク質の改質についてアッセイすることによりアッセイできる。例えば、異なるタンパク質のアレイを含むタンパク質チップは、化合物(例えば薬剤)で処理した細胞からの細胞抽出物と接触させ、例えばキナーゼ、プロテアーゼ、グリコシダーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼまたは他の転移酵素の活性についてアッセイできる。別の例では、異なるタンパク質のアレイを含むタンパク質チップは、特定の細胞分化段階(例えば多能性期)にある細胞または特定の代謝段階(例えば有糸分裂期)にある細胞からの細胞抽出物と接触させることができる。そうしたアッセイから得られた結果(例えば薬剤の存在下または不在下での細胞同士、幾つかの分化段階にある細胞同士、または異なる代謝段階にある細胞同士を比較した結果)から、これらの条件下で細胞に及ぼす生理学的作用に関する情報を得ることができる。
【0091】
上記タンパク質チップは、生物学的な目的の特定の分子(限定するものではないが、可能性のあるリガンド分子の受容体、ウイルス受容体、およびオーファン受容体のリガンドが挙げられる)に結合するプローブを同定するのに有用である。
【0092】
上記タンパク質チップはまた、タンパク質チップ上のタンパク質へのDNA結合
またはRNA結合の検出、および結合特異性の判定にも有用である。更に、RNA結合タンパク質またはDNA結合タンパク質の特定のクラス(例えば亜鉛フィンガータンパク質)が、上記タンパク質チップを用い、これらのタンパク質のアレイを核酸配列を用いてスクリーニングして結合特異性および結合強度を測定することにより調べることができる。
【0093】
同様の生物学的事象の機能、リガンド結合性または酵素活性が異なっているタンパク質の正体は、本発明のタンパク質チップを用いて分析できる。例えば、異なる対立遺伝子に由来するタンパク質アイソフォームの違いは、それらの活性について相互にアッセイされる。
【0094】
上記の高密度タンパク質チップは、薬剤の発見、薬剤の作用様式の分析、薬剤の特異性、および薬剤毒性の予測に使用できる。例えば、薬剤に結合するタンパク質の正体およびそれらの相対的親和性は、異なるアッセイ条件下でチップ上のタンパク質を薬剤または薬剤候補と共にインキュベートし、アレイ上のどこで薬剤が結合されているのかを調べ、各々の異なるタンパク質により結合されている薬剤の量を測定することによって薬剤特異性を判定することによりアッセイできる。あるいはまた、結合アッセイではなく生物学的活性をアッセイするバイオアッセイを、それと同じチップ上で、あるいは同一の第2のチップ上で行うことができる。したがって、本発明のタンパク質チップを用いるこれらのタイプのアッセイは、薬剤特異性の研究、薬剤の可能性のある副作用の予測、および薬剤の分類に有用である。更に、本発明のタンパク質チップは、薬剤候補の複合的ライブラリーのスクリーニングに適する。具体的には、チップ上のタンパク質を薬剤候補のライブラリーと共にインキュベートし、次に、結合している成分を(例えば質量分析により)同定して、タンパク質の特定のサブセットに優先的に結合する、またはチップ上の幾つかのタンパク質又は全てのタンパク質に結合する全てのライブラリー成分の同時同定が可能になる。更に、アレイ上の異なるタンパク質に対する薬剤候補の相対親和性が測定できる。
【0095】
更に、本発明のタンパク質チップは、前もって確認されている相互作用、酵素活性または生物学的応答の可能性のあるインヒビター、触媒、モジュレーターまたはエンハンサーの存在下でプロービングできる。このようにして、例えば、薬剤の結合の遮断、またはウイルスもしくは生理学的作用物質の特定のカテゴリーのタンパク質への破壊が、本発明のタンパク質チップを用いて分析できる。
【0096】
本発明のタンパク質チップは、複合的タンパク質混合物(例えば細胞全体、細胞抽出物、または組織ホモジネート)による複数の標的の改質に及ぼす薬剤の作用を調べるのに使用できる。薬剤の基本的な作用は、1つ以上のタンパク質チップを薬剤処理した細胞、組織または抽出物でスクリーニングすることにより分析でき、それにより、次にその薬剤処理した状態についての「シグネチャー(signature)」を得ることができ、未処理状態の「シグネチャー」と比較した場合、例えば効力、毒性および副作用についての予測値とすることができる。更に、薬剤の時間依存的作用は、例えばその薬剤を細胞、細胞抽出物、組織ホモジネートまたは生物全体に添加し、薬剤処理した細胞または抽出物を種々の処理時点にてタンパク質チップに適用することによりアッセイできる。
【0097】
ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングは、ライブラリーを本発明のタンパク質チップと共にインキュベートすることにより実施できる。陽性クローンの結合は、当業界で公知の種々の方法(例えば質量分析)により測定でき、それによって、目的のクローンを同定した後で、その目的のクローンをコードするDNAを標準的方法により同定することができる(例えば、Amesら, 1995, J. Immunol. Methods 184:177-86;Kettleboroughら, 1994, Eur. J. Immunol. 24:952-8;Persicら, 1997, Gene 187:9-18を参照)。このようにして、上記チップは、チップ上の特定のタンパク質に結合する表面成分を有する細胞の選択に有用である。あるいはまた、ファージディスプレイライブラリーをチップに結合させて、該ライブラリーの位置アドレス可能なアレイが作製されるようにしてもよく、その後で、そのアレイはプローブの各種混合物で繰り返しスクリーニングすることができる。
【0098】
本発明はまた、本発明のアッセイレジュメを実施するためのキットを提供する。1つの特定の実施形態において、本発明のキットは、1つ以上の本発明のアレイを含む。そのようなキットは更に、1つ以上の容器内に、タンパク質もしくは分子の生物学的活性のアッセイに有用な試薬、プローブとタンパク質もしくは分子との相互作用のアッセイに有用な試薬、目的の生物学的活性を有するタンパク質もしくは分子の生物学的活性のアッセイに有用な試薬、および/または1種以上のプローブ、タンパク質もしくは他の分子を含んでなる。タンパク質もしくは分子の生物学的活性のアッセイまたはプローブとタンパク質もしくは分子との相互作用のアッセイに有用な試薬は、タンパク質チップ上の各ウェルまたは指定のウェルに含まれ得る。そのような試薬は、溶液または固体の状態であってよい。
試薬としては、タンパク質もしくは分子と目的のアッセイを実施するのに必要なプローブのいずれか一方を含んでいてもよく、また両者が含まれていてもよい。
【0099】
1つの実施形態において、キットは、1以上のタンパク質チップ(すなわち、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種の異なる物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質から構成されている)と、1つ以上の容器内に、1種以上のプローブ、試薬または他の分子を含んでいる。アレイの物質は、固相支持体上のウェルの表面に結合させることができる。別の実施形態において、キット中のタンパク質チップは、既に固相支持体のウェルに結合させてあるタンパク質又はプローブを有することができる。更に別の実施形態では、キット中のタンパク質チップは、タンパク質もしくは分子の生物学的活性のアッセイ、またはプローブとタンパク質もしくは分子(既に固相支持体のウェルに結合させてある)との相互作用のアッセイに有用な試薬もしくは反応混合物を含むことができる。更に別の実施形態において、試薬は、固相支持体のウェルに結合されているのではなく、ウェル内に収容することができる。更に別の実施形態において、試薬は固相支持体のウェルに結合されているのではなく、1つ以上の容器内に収容することができ、固相支持体のウェルに添加することができる。更に別の実施形態において、上記キットは更に、タンパク質もしくは分子の生物学的活性をアッセイするための溶液状の反応混合物を入れている1つ以上の容器を含む。さらに別の実施形態において、上記キットは、プローブ、目的のタンパク質もしくは分子、および/または1つ以上のアッセイを実施するのに有用な他の試薬が結合できる基材(例えばビーズ)を提供し、その後で、プローブ、タンパク質または他の試薬が結合しているその基材をチップのウェルに入れることができる。
【0100】
別の実施形態において、上記キット中の1つ以上のタンパク質チップは、目的の生物学的活性を有するタンパク質を、該固相支持体のウェルに結合されている状態で含む。別の実施形態において、上記キット中の1つ以上のタンパク質チップは、生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも50%、75%、90%または95%を、固相支持体のウェルに結合されている状態で含む。1つの特定の実施形態において、上記キット中の1つ以上のタンパク質チップは、生物のゲノム中の全ての発現されたキナーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、アセチラーゼ、他の官能基転移酵素、核酸結合タンパク質、ホルモン結合タンパク質またはDNA結合タンパク質の少なくとも50%、75%、90%または95%を、固相支持体のウェルに結合されている状態で含む。
【0101】
E.タンパク質チップと共に有用なタンパク質
全長タンパク質、全長タンパク質の部分、およびペプチド(生物における組換え体の過剰発現から調製されたものでも、長めのタンパク質の断片化により作製されたものでも、化学的に合成されたものでもよい)を本発明において使用して、タンパク質チップを作製する。タンパク質が過剰発現される生物としては、限定するものではないが、細菌、酵母、昆虫、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ネコ、イヌ、ブタ、ウシおよびウマ)が挙げられる。更に、種々の天然または合成のタンパク質の1つに所定のドメインが結合している融合タンパク質が利用できる。本発明において用いられるタンパク質は、タンパク質チップのウェルに結合または固着させる前に精製してもよいし、あるいは、タンパク質チップのウェルに予め結合または固着させてある試薬の使用により結合させている間に精製してもよい。これらの試薬としては、通常タンパク質に特異的に結合するもの、またはタンパク質の特定の基に結合するものが挙げられる。
タンパク質は、タンパク質チップへ結合させる前または結合させる時点に、人工または天然の膜(例えばリポソーム、膜小包)に包埋することができる。あるいはまた、タンパク質は、タンパク質チップのウェルに送達されてもよい。
【0102】
本発明のタンパク質チップに用いられるタンパク質は、好ましくは、当業界で公知の方法により発現される。Invitrogen社(Carlsbad, CA, カタログNo. K800-01)のInsectSelect系は、高品質のタンパク質の発現を簡素化し、ウイルスストックを作製し増幅しなくても済む、非溶解性の単一ベクター昆虫発現系であり、これが好ましい発現ベクターである。この系における好ましいベクターは、pIB/V5-His TOPO TAベクター(カタログNo. K890-20)である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の産物を、製造元により記載されているプロトコールを用いて、このベクターに直接クローニングすることができ、次に、そのタンパク質を、N末端ヒスチジン(His)標識(発現されたタンパク質を精製するのに使用できる)を用いて発現させる。
【0103】
BAC-TO-BAC(商標)系は、Lifetech(Rockville, MD)から入手可能な昆虫細胞におけるもう1つの真核性発現系であり、これも好ましい発現系である。相同組換えを用いる場合とは違って、BAC-TO-BAC(商標)系は、大腸菌における部位指定転位に基づいて組換えバキュロウイルスを生じる。遺伝子発現は、非常に活性なポリヘドリンプロモーターにより駆動され、したがって、感染させた昆虫細胞における細胞性タンパク質の25%以下となり得る。
【実施例】
【0104】
VI.実施例I:タンパク質チップを用いた酵母プロテインキナーゼの分析
A.緒言
以下の実施例により、本発明のタンパク質チップの製造およびタンパク質チップの使用方法の様々な態様を例示する。本発明のタンパク質チップ技術は、多数のサンプルの迅速な分析に適し、したがって、このアプローチをほぼ全ての酵母プロテインキナーゼの分析に適用した。プロテインキナーゼは、タンパク質のリン酸化を触媒し、細胞周期の調節、シグナル伝達、DNA複製、遺伝子転写、タンパク質翻訳およびエネルギー代謝などの基本的な細胞機能の調節において重要な役割を担っている。完全なゲノム配列が入手できれば、生物によってコードされる全てのプロテインキナーゼを分析し、それらのin vitro基質を決定することが可能になる。
【0105】
酵母のゲノムは配列決定されており、長さが100コドンを超える約6200のオープンリーディングフレームを含む。これらのうちの122がプロテインキナーゼをコードすると推定される。これらのプロテインキナーゼ遺伝子のうち24種はこれまで研究されていなかった。2種のヒスチジンプロテインキナーゼを除いて、全ての酵母プロテインキナーゼがSer/Thrファミリーのメンバーである。チロシンキナーゼファミリーのメンバーは存在しないが、セリン/トレオニンおよびチロシンをリン酸化する7種のプロテインキナーゼが報告されている
【0106】
本発明のタンパク質チップ技術の開発により、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に由来するほぼ全てのプロテインキナーゼの生化学的活性のハイスループット分析を、本明細書に記載されているようにして行なった。用いたタンパク質チップは、顕微鏡用スライドガラスの上面に置いたシリコーンエラストマーシートの300nl容ウェルの使い捨てアレイとした。このウェルは高密度で小サイズであるために、多くの個々のサンプルのハイスループットのバッチ処理および同時分析が可能になり、ほんの少量のタンパク質しか必要としない。本発明のタンパク質チップを用いて、サッカロミセス・セレビシエのキナーゼタンパク質(全部で119種の異なるキナーゼ)をグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)に融合させ、酵母内で過剰発現させ、精製し、17種の異なる基質をリン酸化する能力についてアッセイした。これまでに特性決定されていなかった24種のキナーゼのうちの18種を含む被験キナーゼのほぼ全部(93%)が、1種以上の基質について、対照よりも少なくとも5倍高い活性を示した。32種のキナーゼが1種以上の基質の選択的リン酸化を示した。27種のキナーゼは、ポリ(Tyr-Glu)を容易にリン酸化した。これまでは、これらのキナーゼのうち5種だけが二重機能性キナーゼ(すなわち、Ser/ThrとTyrの双方をリン酸化する)として分類されていたので、これらの発見から、チロシン残基をリン酸化できるキナーゼについての知見を大きく拡げた。興味深いことに、これらの二重特異性のキナーゼは、触媒領域の近傍に存在する共通するアミノ酸残基を有することが多い。これらの結果から、本発明のタンパク質チップ技術は、タンパク質の生化学的活性のハイスループットスクリーニング、ならびにプロテオーム全体の分析に有用であることが示される。
【0107】
B.方法
1.細胞培養、構築物およびタンパク質精製
Hudsonら9の組換え法を用いて、122種の酵母プロテインキナーゼ遺伝子のうち119種を高コピーURA3発現ベクター(pEG(KG))(ガラクトース誘導型GAL10プロモーター10の制御下でGST融合タンパク質を産生する)にクローニングした。簡単に説明すると、各ORFの末端に相補的なプライマーをResearch Geneticsから購入した。これらのプライマーの末端は、共通する20bpの配列を含んでいる。第2ラウンドのPCRにおいて、これらの産物の末端を、上記ベクターに相同な配列を付加することにより修飾した。末端にそのベクター配列を含むPCR産物を該ベクターと共にpep4酵母株(幾つかの酵母プロテアーゼを欠く)10に形質転換し、Uraコロニーを選択した。プラスミドを大腸菌にレスキューし、制限酵素消化よって確認し、該ベクターに相補的なプライマーを用いてベクター挿入物の連結点まで及ぶDNA配列を決定した。GST::Cla4構築物では、アミノ末端コード領域のポリ(A)ストレッチにフレームシフト突然変異が見られた。3つの独立したクローンは、リーディングフレームを維持している正しいものを見つける必要があった。これらの遺伝子のうち5つでは、2種の重複PCR産物が得られ、酵母細胞に導入した。キナーゼタンパク質の精製のために、確認したプラスミドをpep4酵母株に再導入した。
【0108】
96ウェルフォーマットを用いてサンプルを調製するために、0.75mlの細胞をラフィノースを含有する培地中でO.D.(600)が約0.5になるまで、2ml容ウェルを含むボックス内で増殖させた。各株について2ウェルずつ用いた。ガラクトースを最終濃度4%まで添加して、タンパク質発現を誘導し、細胞を4時間インキュベートした。同じ株の培養物を合わせて1つにし、500μlの溶解緩衝液で1回洗浄し、200μlの溶解緩衝液に再懸濁し、100μlの冷却ガラスビーズを含む96×0.5mlのプレート(Dot Scientific, USA)に移した。細胞を、4℃でボルテックス処理を繰り返すことにより該ボックス内で溶解させ、これらの株から、96ウェルフォーマットでグルタチオンビーズおよび標準的プロトコール20を用いてGST融合タンパク質を精製した。5種の精製されたGST::キナーゼタンパク質(Swel、Ptk2、Pkh1、Hog1、Pbs2)の純度は、それら精製タンパク質のクーマシー染色パターンを、抗GST抗体を用いたイムノブロット分析により得られたパターンと比較することにより求めた。結果から、精製されたタンパク質が90%を上回る純度であることが示された。Hog1の活性型を精製するために、上記の誘導の最後の5分間に細胞を0.4M NaClでチャレンジした。プロテインキナーゼの活性は、−70℃で少なくとも2ヶ月は安定であり、キナーゼ活性の喪失はほとんど、あるいは全くなかった。
【0109】
2.チップの製造およびタンパク質の結合
チップを、シリコーンエラストマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(Dow Chemical, USA)から製造したが、それらは微細加工鋳型に対して成型された。液状のPDMSを該鋳型に注ぎ、硬化させた後(65℃で少なくとも4時間)、再使用可能な鋳型から可撓性のシリコーンエラストマーのアレイシートを剥がした。PDMSはマイクロリソグラフィーにより作製された構造体に対して容易に成型されうるが、本明細書に記載されているキナーゼアッセイのためには、アクリル系のシートから作製した、コンピューター制御レーザーミリング装置(Universal Laser Systems, USA)でパターニングした鋳型で十分だった。
【0110】
30種を超える各種アレイを試験した。試験した変数は、ウェルの幅と深さ(幅は100μm〜2.5mm、深さは100μm〜1mm)、ウェル間の間隔(100μm〜1mm)、構成(矩形のアレイ、または最も密に詰め込まれているもの)、およびウェルの形状(四角形vs丸形)とした。レーザーでミリングしたアクリル系鋳型を使用することにより、様々なパラメーターの多数のひな型を実現するための迅速で安価な方法が得られた。
【0111】
ウェルへのタンパク質の結合を最大にする条件を決定するために、PDMSを、5M H2SO4、10M NaOH、過酸化水素または3-グリシドオキシプロピルメトキシシランリンカー(GPTS)(Aldrich, USA)のいずれかで処理した11,12。GPTS処理により、未処理のPDMSまたは別のやり方で処理されたPDMSと比較して、ウェルへのタンパク質の吸着が最大になった。簡単に述べると、100%EtOHで室温にて3回洗浄した後、チップを1%GPTS溶液(95%EtOH、16mM HOAc)に室温で1時間、振盪しながら浸漬した。95%EtOHで3回洗浄した後、チップを減圧下で135℃で2時間硬化させた。硬化させたチップは乾燥アルゴン中で数ヶ月間は保存できる12。タンパク質をチップに結合させるために、タンパク質溶液をウェルに添加し、氷上で1〜2時間インキュベートした。冷HEPES緩衝液(10mM HEPES、100mM NaCl, pH 7.0)で3回濯いだ後、ウェルをBSAの1%PBS溶液(Sigma, USA)で氷上で1時間より長くブロッキングした。GPTSを使用したので、第1級アミン基を含む試薬は避けた。
【0112】
処理したPDMSに結合できるタンパク質の濃度を決定するために、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抗マウスIg(Amersham, USA)を酵素の連続希釈液を用いてチップに結合させた。PBSで十分に洗浄した後、結合した抗体を、増強化学発光(ECL)検出法(Amersham, USA)を用いて検出した。最大8×10-9μg/μm2のタンパク質が表面に結合でき、本発明者らの免疫染色法による検出には、最低でも8×10-13μg/μm2が必要である。
【0113】
3.イムノブロッティング、キナーゼアッセイおよびデータの獲得
イムノブロット分析は記載34されているようにして実施した。GST::プロテインキナーゼは、33P-γ-ATPを用いてin vitroキナーゼ活性13について試験した。自動リン酸化アッセイでは、GST::キナーゼは、GPTS処理したPDMSに直接結合させ、in vitro反応を、適当な緩衝液中の33P-γ-ATPを用いて行った。基質反応において、基質はGPTSを介してウェルに結合させ、ウェルはHEPES緩衝液で洗浄し、1%BSAでブロッキングした後で、キナーゼ、33P-γ-ATPおよび緩衝液を添加した。全体の反応容量は、反応当たり0.5μl以下に維持した。30℃で30分間インキュベートした後、チップを十分に洗浄し、X線フィルムおよびMolecular Dymanics PhosphorImager(解像度が50μmで、定量用である)の双方に暴露した。12種の基質については、各キナーゼアッセイを少なくとも2度繰り返し、残りの5種については、アッセイは一度行った。
【0114】
基質特異性を調べるために、次の式を用いて特異性指数(SI)を算出した:SIir=Fir/[(Fi1+Fi2+・・・+Fir)/r](式中、iは用いたキナーゼのIDを表わし、rは基質のIDを表わし、FirはGST単独の場合と比較した基質rに対するキナーゼiの増大率(倍)を表わす)。
【0115】
4.キナーゼの配列アライメントおよび系統樹
107種のプロテインキナーゼのコアキナーゼ触媒ドメインの配列に基づく多重配列アライメントを、CLUSTAL Wアルゴリズム35により、Gonnet250スコアリング用マトリックス36を用いて作製した。キナーゼの触媒ドメインの配列は、SWISS-PROT37、PIR38およびGenBank39のデータベースから入手した。触媒ドメインが判っていないキナーゼ(DBF4/YDR052CおよびSLIN1/YIL147C)では、可能性の高いキナーゼ配列を、FASTAアルゴリズム40,41を用いて設定されたデータにおける他のキナーゼ配列とのアライメントから、BLOSUM50スコアリング用マトリックス42を用いて推定した。11種のコア触媒サブドメイン43に対応するタンパク質サブ配列は上記のアライメントから抽出し、PROTPARS44プログラムを用いてコンピューターにより系統樹を構築した(図5a)。
【0116】
5.タンパク質チップのデータの機能的グルーピング
実験データに基づくプロテインキナーゼ同士のおおよその機能的相関関係を可視化するために、キナーゼを、12種の異なる基質をリン酸化する能力(2000年8月17日現在のウェブサイトhttp://bioinfo.mbb.yale.edu/genome/yeast/chipで入手可能なデータ)に基づいて、分類体系的に順序付けした。基質の各々に対する107種のプロテインキナーゼの−/+活性に対応するプロフィールを記録し、[0,1]で打切り値とした。マトリックスは、実験プロフィール間のペアワイズハミング距離から導き、無根系統樹をFitch-Margoliashの最小二乗推定法45を用いて、PHYLIPソフトウェアパッケージ44のFITCHプログラム34で実行されているようにして算出した。それぞれの場合、データセットの体系化における固有のバイアスをなくすために、分類群の入力順序は無作為にし、最適なカテゴリーは、系統樹構造の全体的な再配列により得た。
【0117】
C.結果
1.酵母キナーゼのクローニングおよびタンパク質の精製
組換え特異的クローニング法を用いて、高コピー発現ベクター(pEG(KG))(ガラクトース誘導型GAL10プロモーター10の制御下でGST融合タンパク質を産生するもの)における122種の酵母プロテインキナーゼ遺伝子のコード領域全体のクローニングを試みた(図1a)。GST::キナーゼ構築物を大腸菌にレスキューし、各構築物の5’末端における配列を決定した。この方法を用いて、122種の酵母キナーゼ遺伝子のうち119種がインフレームでクローニングされた。クローニングされなかった3種のキナーゼ遺伝子は非常に大きいものである(4.5〜8.3kb)。
【0118】
GST::キナーゼ融合タンパク質を酵母内で過剰産生させ、50mlの培養物からグルタチオンビーズおよび標準的プロトコール11を用いて精製した。Hog1の場合、酵母細胞を高塩で処理して、誘導の少なくとも最後の5分間で該酵素を活性化した。残りのキナーゼでは、合成培地(URA-/ラフィノース)を用いた。抗GST抗体を用いて119種の融合体全てのイムノブロット分析をしたところ、酵母株のうち105種が検出可能なGST::融合タンパク質を産生し、多くの場合、その融合体は全長であることが明らかになった。出発培養物1ml当たり最大1μgの融合タンパク質が得られた(図1b)。しかし、119種のGST::キナーゼサンプルのうち14種はイムノブロット分析では検出されなかった。おそらく、これらのタンパク質は、使用したpep4プロテアーゼ欠損株において安定に過剰産生されていないか、あるいは、これらのタンパク質は本発明者らの方法を用いて精製されない不溶性の凝集物を形成している可能性がある、と考えられる。この方法はうまくいったが、培養物50mlを用いたGST融合タンパク質の精製は時間がかかる方法であり、何千ものサンプルの調製には適用できない。したがって、96ウェルフォーマットで細胞を増殖させる方法を開発した(「方法」を参照)。この方法を用いて、119種のGST融合体を調製し、6時間で精製した。出発培養物1ml当たり、上記の50ml法と比較して約2倍高い収率となった。
【0119】
2.タンパク質チップの設計
タンパク質チップは、119種の酵母プロテインキナーゼのハイスループット生化学アッセイを実施するように開発した(図2)。これらのチップは、使い捨て用シリコーンエラストマーポリジメチルシロキサン(PDMS)上のウェルのアレイからなる11。ウェルのアレイにより、少容量の異なるプローブが1つのチップ上に高密度に充填されるが、その後のバッチ式処理の間は物理的に隔離されたままとすることができる。タンパク質は、リンカー3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)12を用いて共有結合によりウェルに結合させた。最大8×10-9μg/μm2のタンパク質が表面に結合できる(「方法」を参照)。
【0120】
プロテインキナーゼアッセイのために、タンパク質チップ技術を、標準的なサンプル取扱い/記録装置に適合するように設定した。放射性同位体による標識化(33P)を用いて、後述するキナーゼアッセイ、および手作業によるローディング、種々のアレイ構造を試験した。以下のチップは、最良の結果をもたらした:直径1.4mmで深さ300μm(約300nl)の丸形ウェルで、ピッチが1.8mmの10×14個
の矩形のアレイ構造。これらのアレイの12枚のマスター鋳型を製造し、プロテインキナーゼ分析用に多数のアレイを繰り返し成型した。チップを顕微鏡用スライドガラスの上面に載せ(図2a);このアレイを標準的な顕微鏡用スライドガラスの1/3をわずかに多めに被覆し、典型的にはスライドガラス当たり2つのアレイを使用した(図2b)。タンパク質を各ウェル内に入れるために手作業によるピペット法を用いたが、自動化法も使用可能である。さらに、このタンパク質チップの構造は、他の標識方法(例えばリンタンパク質に対する蛍光標識した抗体によるもの)およびその後の免疫蛍光の検出と共に用いることができる。
【0121】
3.タンパク質チップを用いた大規模キナーゼアッセイ
119種のGTS::キナーゼの全てを、33P-γ-ATPを用いる17種の異なるアッセイおよび17種の異なるチップにおいて、in vitroキナーゼアッセイ13について試験した。各チップは、次のような異なる基質を用いてアッセイした:1)自己リン酸化、2)ウシ・ヒストンH1(一般的なキナーゼ基質)、3)ウシ・カゼイン(一般的な基質)、4)ミエリン塩基性タンパク質(一般的な基質)、5)Ax12 C末端GST(Ax12は出芽に関与する膜貫通リンタンパク質)14、6)Rad9(DNA損傷チェックポイントに関与するリンタンパク質)15、7)Gic2(出芽に関与するリンタンパク質)16、8)Rad1(染色体対合にとって重要な減数分裂リンタンパク質)17、9)Mek1(染色体の対合にとって重要な減数分裂タンパク質キナーゼ)18、10)ポリ(チロシン−グルタミン酸1:4)(ポリ(Tyr-Glu);チロシンキナーゼの基質)19、11)Ptk2(小分子輸送タンパク質)20、12)Hsl1(細胞周期の調節に関与するプロテインキナーゼ)21、13)Swi6(G1/Sの調節に関与するホスホ転写因子)22、14)Tub4(微小細の核形成に関与するタンパク質)23、15)Hog1(浸透調節に関与するプロテインキナーゼ)24、16)Hog1(該キナーゼの非活性型)、および17)GST(対照)。自己リン酸化アッセイでは、キナーゼを処理済みのPDMSウェルに直接結合させ、33P-γ-ATPを添加した。基質反応では、基質をウェルに結合させ、次にキナーゼおよび33P-γ-ATPを添加した。
反応が完了したら、スライドを洗浄し、リン酸化シグナルを得て、高解像度ホスホイメージャーを用いて定量した。図3に例を示す。キナーゼ活性を同定するために、定量したシグナルを、GST対照に対する増大率(倍)に変換し、更なる分析のためにプロットした(図4a)。
【0122】
図4aに示すように、大部分(93.3%)のキナーゼが、少なくとも1種の基質に対し、バックグラウンドと比較して5倍以上の活性を示した。予想どおり、Hrr25、Pbs2およびMek1はそれらの既知の基質25-27であるSwi6(GST対照よりも400倍高い)、Hog1(10倍高い)およびRed1(10倍高い)をそれぞれをリン酸化した。
このアッセイの結果から、ヒスチジンキナーゼ(Sln1、Yil1042c)およびリン脂質キナーゼ(例えばMec1)を含むこれまで研究されていなかった24種の推定プロテインキナーゼのうち18種が、幾つかの一般的でないキナーゼと同様に、1種以上の基質をリン酸化することが実証された。
【0123】
基質特異性を調べるために、特定のキナーゼの活性を、全ての基質に対するその活性の平均に対して更に標準化した。いくつかの例を図4bに示す。全てのデータは、で入手可能である。32種のキナーゼが特定の基質に対して基質特異性を示し、その際の特異性指数(SI:「方法」を参照)は2以上であり、同様に、大部分の基質は、特定のプロテインキナーゼまたは一連のプロテインキナーゼによって優先的にリン酸化される。例えば、Ax12(酵母細胞の出芽に関与するタンパク質)のC末端は、他のタンパク質よりもDbf20、Kin2、Yak1およびSte20によって優先的にリン酸化される。興味深いことに、従来の研究では、Ste20はAx12と同様に出芽途中にある芽の先端に存在することが判っており、ste20Δ/cla4ts突然変異体は、出芽もできず、十分に分極化されたアクチンのパッチもしくはケーブルを形成することもできない28。もう1つの例は、リンタンパク質であるGic2(これも出芽に関与する)16である。Ste20およびSkm1はGic2を強くリン酸化する(図4b)。従来の研究から、Cdc42がGic2、Cla429、Ste20およびSkm1と相互作用することが示唆された。本発明者らの結果から、Cdc42がSte20および/またはSkm1をリクルートすることによってGic2のリン酸化を促進するように機能する可能性が出てきた。
【0124】
4.酵母は多くの二重特異性キナーゼを含む
特に関心が持たれるのは、二重特異性キナーゼ、すなわち、Ser/Thrおよびチロシンの双方をリン酸化する酵素である。配列分析に基づくと、2種を除く全ての酵母プロテインキナーゼがプロテインキナーゼのSer/Thrファミリーに属する。しかし、本研究の時点で、7種のプロテインキナーゼ(Mps1、Rad53、Swe1、Ime2、Ste7、Hrr25およびMck1)は二重特異性キナーゼであることが報告された19。本発明者らは、Swe1、Mps1、Ime2およびHrr25がポリ(Tyr-Glu)を容易にリン酸化することを確認したが、Ste7、Rad53またはMck1についてはチロシンキナーゼ活性は検出されなかった。Mck1は本発明者らのアッセイのいずれにおいても強い活性を示さなかった。しかし、Ste7およびRad53は他のアッセイでは非常に活性である。したがって、それらがポリ(Tyr-Glu)をリン酸化できないことから、それらが全般的に非常に弱いチロシンキナーゼであるか、あるいは少なくともポリ(Tyr-Glu)基質には弱いことが示される。後者の可能性と一致して、他の研究者らは、ポリ(Tyr-Glu)がRad53にとって非常に不十分な基質であること見い出した(参考文献19;D. Stern, pers. comm.)。興味深いことに、本発明者らは、23種の他のキナーゼもまた、ポリ(Tyr-Glu)を基質として効率的に使用することを見い出し、このことは、酵母にはin vitroで二重特異性キナーゼとして作用できる少なくとも27種のキナーゼが存在することを示している。それらのうちの1種であるRim1は、近年、そのin vivo基質のTyr残基をリン酸化することが示され、Ime2については、それが真の二重特異性キナーゼであることが示された30。つまり、この実験では、二重特異性キナーゼとして作用できるキナーゼの数がほぼ3倍になり、そのようなキナーゼとして分類されたものの中には問題があることも提示された。
【0125】
5.ポリ(Tyr-Glu)キナーゼの機能特異性とアミノ酸配列との相互関係
酵母プロテインキナーゼの大規模分析により、プロテインキナーゼ同士の機能的な関係の比較が可能になる。本発明者らは、ポリ(Tyr-Glu)をリン酸化するキナーゼの多くがそれらのアミノ酸配列において互いに関連があることを見い出した。ポリ(Tyr-Glu)キナーゼの70%が、樹状図(キナーゼはそれらの保存さ
れたプロテインキナーゼドメインの配列類似性に基づいて互いに系統付けられている)の異なる4つのグループに分けられる(図5a)。アミノ酸配列を更に調べたところ、基質としてポリ(Tyr-Glu)を使用しないキナーゼと比較してポリ(Tyr-Glu)クラスのキナーゼの方に専ら見い出される4種のアミノ酸が明らかになる(3つはリシンで1つはメチオニン)。1つの残基(アスパラギン)は主に基質としてポリ(Tyr-Glu)を容易に使用しないキナーゼに存在した(図5b)。残基の大部分は分子の触媒位置の近傍に存在し(図5b)31、それらが基質の認識においてある役割を担っていることを示唆している。
【0126】
D.考察
1.プロテインキナーゼの大規模分析
この研究は、新規なタンパク質チップ技術を用いて、17種の異なる基質に対する119種のキナーゼの活性を特性決定した。特定のタンパク質が特定のプロテインキナーゼにとって好ましい基質であり、逆に特定のプロテインキナーゼが特定のタンパク質にとって好ましく、多くのプロテインキナーゼが特定の基質にとって好ましいことが判った。これらの研究の1つの懸念は、目的とする酵素以外のキナーゼが調製物中に混入している可能性があることである。これは厳密には除外することはできないが、本発明者らのサンプルのうち5種のクーマシー染色および抗GSTを用いたイムノブロット染色による分析では、GST融合体ではない本発明者らのサンプル中に検出可能なバンドは見られない(「方法」を参照)。
【0127】
in vitroアッセイは、in vitroにおける特定のキナーゼの基質がin vivoで同じキナーゼによってリン酸化されることを保証しないいことに注目することが重要である。その代わり、これらの実験から、特定のタンパク質が特定のキナーゼの基質となり得、そのため、更なる分析が可能になることが示される。これに関して、これらのアッセイは、候補の相互作用を検出するツーハイブリッド研究と類似している。このプロセスが通常in vivoでも起こるのか否かを判定するためには、更なる実験が必要である。
【0128】
基質の多くがin vivoでの真の基質である可能性がある、という考え方と一致しているのは、本発明者らのアッセイにおいて、3種のキナーゼ(Hrr25、Pbs2およびMek1)がそれらの既知の基質をリン酸化するという知見である。更に、キナーゼの多く(例えばSte20)がそれらのin vitroでの基質(例えばAx12)と共に局在している。したがって、本発明者らのin vitroアッセイにおいて基質をリン酸化するキナーゼの多くがおそらくin vivoでもそのようにリン酸化するであろうことが予想される。
【0129】
本発明者らのアッセイでは上記キナーゼの大部分が活性であったが、幾つかは活性ではなかった。おそらく、これらの後者のキナーゼの本発明者らの調製物は、十分な量のアクチベーターがなかったか、あるいは活性化条件下で精製されなかったと考えられる。例えば、Cdc28は、本発明者らのアッセイでは活性ではなく、その活性化サイクリンを欠いていたと思われる。Hog1の場合、細胞は高塩で処理してその酵素を活性化した。本発明者らのキナーゼ調製物のほぼ全部が活性を示さなかったので、それらの調製物中の酵素の少なくとも幾つかが適切に活性化されていたか、かつ/または必須の補因子を含んでいたと予測される。これらの酵素がそれらの本来の生物において過剰発現されることが、活性な酵素を得ることに大成功するのに大きく関与していると考えられる。
【0130】
タンパク質チップ上でのアッセイを用いて、ポリ(Tyr-Glu)を利用する多くのキナーゼが同定された。多くのキナーゼの大規模分析により、ポリ(Tyr-Glu)キナーゼの機能特異性と特定のアミノ酸配列とを互いに関連付ける新規なアプローチが可能になる。ポリ(Tyr-Glu)をリン酸化するキナーゼの残基の多くが塩基性残基を含む。これが予期できるのは、キナーゼ残基とGlu残基との間に静電的相互作用がある場合である。しかし、幾つかの他の残基の役割、例えば、ポリ(Tyr-Glu)をリン酸化するキナーゼに対するMet残基の役割や、ポリ(Tyr-Glu)をリン酸化そないキナーゼに対するAsnの役割などは明らかではない。これらのキナーゼの残基は、それ以外の機構によって基質特異性を付与するのかもしれない。それでも、他の基質の分析は、全てのプロテインキナーゼについての機能特異性とキナーゼ配列との更なる相関関係を可能にするはずである。
【0131】
2.タンパク質チップ技術
多数のサンプルの迅速な分析に加えて、本明細書に記載されているタンパク質チップ技術は、慣用の方法と比較して重要な利点を有する。1)チップによるアッセイは、高いシグナル−ノイズ比を有する。本発明者らは、このタンパク質チップを用いて示されるシグナル−ノイズ比が、従来のマイクロタイターディッシュアッセイで見られるもの(データは示さず)よりもずっと良好である(10倍以上)ことを見い出した。おそらく、これは、33P-γ-ATPがマイクロタイターディッシュほどにはPDMSを結合しない、という事実によるものと考えられる。2)必要とされる物質の量が非常に少なくて済む。反応物の容量は、384ウェルマイクロタイターディッシュで用いられる量の1/20〜1/40である。各反応において、20ng未満のプロテインキナーゼが使用された。3)タンパク質チップを用いる酵素アッセイは感度が非常に高い。イムノブロット分析ではたった105種の融合体だけが検出可能であったが、112種が、少なくとも1種の基質について、バックグラウンドと比較して5倍を上回る酵素活性を示した。例えば、Mps1は、イムノブロット分析ではこの融合タンパク質を検出することはできなかったが、キナーゼアッセイの多くでは一貫して最大の活性を示す(図1bおよび3aを参照)。
4)最後に、このチップは安価である。各アレイにつき、材料の費用は8セント未満である。微細加工された鋳型もまた、製造が容易で、かつ安価である。
【0132】
プロテインキナーゼの分析に加え、このタンパク質チップ技術は、ATPおよびGTPの結合アッセイ、ヌクレアーゼアッセイ、ヘリカーゼアッセイ、タンパク質−タンパク質相互作用アッセイなどの多種多様な他のアッセイにも適用できる。近年、別の研究において、Phizickyとその共同研究者達は、ずっと弱いCUP1プロモーター下で酵母タンパク質をGST融合体として発現させた。それらのクローンの質は立証されていないが、それらは、この融合タンパク質を含む酵母株のプールを用いて生化学的活性を同定できた。本発明者らのタンパク質チップアプローチの利点は、全てのサンプルが1回の実験で分析できることである。更に、この研究では、サンプルを隔離するという利点を持つウェルを使用したが、別のアッセイには平坦なPDMSチップおよびスライドガラスも使用できる。これらには、標準的なピニングツール(pinning tool)マイクロアレイと共に使用できる、という利点がある。この技術はまた、目的の遺伝子産物の酵素活性を抑制もしくは活性化する化合物をスクリーニングできるハイスループットな薬剤スクリーニングを容易にするのにも適用できる。これらのアッセイは、タンパク質レベルで行うことができるので、結果はより直接的であり、タンパク質の分子機能に大きな意味を持つ。
【0133】
一般に利用可能なサンプル処理・記録装置を用いた特定のプロテインキナーゼアッセイのためのタンパク質チップ技術を構成した。この目的のために、アレイの大きさは、微細加工したシリコーンエラストマー構造体と共に容易に利用可能な大きさと比較して相対的に大きなままとした32。本発明者らはマイクロリソグラフィーにより製造した鋳型を用いて、本明細書において報告したものよりも特徴サイズが2桁小さいPDMS構造体を成型したが、その他の研究者達は、微細加工された構造体においてミクロン以下の特徴サイズを報告している33。これらの結果から、微細加工されたタンパク質チップのウェル密度は、数桁分も容易に増大させることができることが示される。本明細書において報告されているタンパク質チップ技術は拡大縮小が容易に可能である。
【0134】
結論として、タンパク質の生化学的活性のハイスループットスクリーニングのための、安価で使い捨てのタンパク質チップ技術が開発された。有用性は、17種の各種の基質のリン酸化についてアッセイされたサッカロミセス・セレビシエ由来の119種のキナーゼの分析により実証された。これらのタンパク質チップは、何百ものタンパク質サンプルの同時測定を可能にする。このチップ技術に基づく微細加工されたウェルのアレイの使用により、ウェルの密度を数桁分だけ容易に高くすることができる。適切なサンプル処理・測定技術を開発すれば、これらのタンパク質チップは、数千〜数百万ものサンプルの同時アッセイに適用できる。
【0135】
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22. Madden, K., Sheu, Y.-J., Baetz, K., Andrews, B.,およびSnyder, M. SBF cell cycle regulator as a target of the yeast PKC-MAP kinase pathway(酵母PKC-MAPキナーゼ経路の標的としてのSBF細胞周期調節物質). Science 275, 1781-1784 (1997).
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VII.実施例II:タンパク質チップを用いた酵母プロテインキナーゼ活性の分析
A.緒言
以下の実施例では、プロテインキナーゼ活性をアッセイするための本発明のタンパク質チップを用いた異なる方法を提供する3つのプロトコールを示すが、それらはそれらは単に説明のためにすぎない。
【0136】
1.プロテインキナーゼ活性のアッセイ方法
i.自己リン酸化活性
(1)タンパク質チップを、100%EtOHで室温で3回洗浄した。次に、そのチップを、リンカーGPTS(95%EtOH中の1%溶液)で室温で1時間振盪してコーティングした。100%EtOHで3回洗浄した後、チップを減圧下で130℃で1.5時間乾燥した。
【0137】
(2)GST::酵母プロテインキナーゼ(ウェル当たり1種のキナーゼ)を、少なくとも1時間インキュベートすることによりタンパク質チップのウェルに結合させた。チップを更に1%BSAでブロッキングした。
【0138】
(3)キナーゼ緩衝液および33P-γ-ATPプローブを各ウェルに加え、30℃で30分間インキュベートした。リン酸化反応が完了した後、チップを十分に洗浄した。
【0139】
(4)特異的な33P-γ-ATPシグナル(自己リン酸化を示す)を検出し、ホスホイメージャーで定量した。
【0140】
ii.キナーゼ活性−プロトコールI
(1)タンパク質チップを、100%EtOHで室温で3回洗浄した。次に、そのチップを、リンカーGPTS(95%EtOH中の1%溶液)で室温で1時間振盪してコーティングした。100%EtOHで3回洗浄した後、チップを減圧下で130℃で1.5時間乾燥した。
【0141】
(2)基質(例えばGST::酵母タンパク質)を、1時間以上インキュベートすることによりチップに結合させた。チップを更に1%BSAでブロッキングし、チップを洗浄した。
【0142】
(3)異なるプロテインキナーゼを、タンパク質チップの各ウェルに、キナーゼ緩衝液および33P-γ-ATPと共に加え、30℃で30分間インキュベートした。リン酸化反応が完了した後、チップを十分に洗浄した。
【0143】
(4)特異的な33P-γ-ATPシグナル(プロテインキナーゼプローブによる基質タンパク質のリン酸化を表わす)を検出し、ホスホイメージャーで定量した。
【0144】
iii.キナーゼ活性−プロトコールII
(1)タンパク質チップを、100%EtOHで室温で3回洗浄した。次に、そのチップを、リンカーGPTS(95%EtOH中の1%溶液)で室温で1時間振盪してコーティングした。100%EtOHで3回洗浄した後、チップを減圧下で130℃で1.5時間乾燥した。
【0145】
(2)基質(例えばGST::酵母タンパク質)を、1時間以上インキュベートすることによりチップに結合させた。チップを更に1%BSAでブロッキングし、チップを洗浄した。
【0146】
(3)異なるプロテインキナーゼを、タンパク質チップの各ウェルに、キナーゼ緩衝液および33P-γ-ATPと共に加え、30℃で30分間インキュベートした。リン酸化反応が完了した後、チップを十分に洗浄した。チップをヨードアセチル-LC-ビオチンと共に、暗所にて室温で一夜インキュベートした。
【0147】
(4)洗浄した後、チップを蛍光標識アビジンでプロービングして、リン酸化シグナルを検出した。
【0148】
(5)次に、チップを、Axon Genepix 4000Aスキャナー(約300〜400ミクロンに焦点深度を増大させたレンズに変更した)でスキャンした。この変更により、スライド(例えば本発明のPDMSマイクロアレイ)上に載っている表面のスキャンが可能になる(あるいは、焦点面から外れていてもよい)。変更を加えたAxon Genepix 4000Aスキャナーを用いて、アレイをスキャンして、蛍光シグナルを得て定量した。
【0149】
VIII.実施例III:タンパク質チップを用いたタンパク質−タンパク質相互作用の分析
目的のタンパク質(「プローブタンパク質」)を、標準的なプロトコールを用いて、標識した融合タンパク質として大腸菌から組換え発現させて精製する。標的タンパク質を各ウェルが異なる標的タンパク質を含むようにチップのウェルに結合させる。精製したプローブタンパク質をチップの各ウェルに導入し、数時間以上インキュベートする。チップを洗浄し、a)プローブタンパク質に対する抗体またはb)融合タンパク質の標識に対する抗体のいずれかでプロービングする。抗体は、Cy3またはCy5などの蛍光標識で標識するか、あるいは、第1の抗体を検出する蛍光標識した二次抗体を用いて検出する。
【0150】
次の実施例は、単に説明のためにすぎないが、本発明のタンパク質チップを用いてプロテアーゼ、ヌクレアーゼまたはGタンパク質受容体についてアッセイする方法を提供する。タンパク質−タンパク質相互作用は、通常、以下の方法または同様の方法を用いてアッセイできる。
【0151】
A.プロテアーゼ活性の分析
プロテアーゼ活性は、次のようにしてアッセイする。まず、種々のアミノ酸の組合せからなり、C末端またはN末端に質量分析用標識を結合させてあるタンパク質プローブを調製する。この際の唯一の条件は、標識の分子量を、タンパク質の全ての標識された分解産物が検出できるように十分に大きなものにしなくてはならないことである。タンパク質プローブを、タンパク質チップに結合させたプロテアーゼと37℃で接触させる。37℃で適当な時間にわたりインキュベートし、アセトニトリルおよびフルオロ酢酸で洗浄した後、タンパク質分解性生成物を質量分析により検出することによってプロテアーゼ活性を測定する。このアッセイにより、タンパク質溶解活性とタンパク質チップに結合したプロテアーゼの特異性の双方に関する情報が得られる。
【0152】
プロテアーゼ活性分析のためのもう1つの迅速なアッセイは、既知配列のタンパク質をチップに結合させることである。基質タンパク質は、チップに結合されていない方の末端で蛍光標識する。目的のプロテアーゼと共にインキュベートすると、タンパク質分解により蛍光標識が喪失して、蛍光の低下がプロテアーゼ活性の存在および程度を示すようになっている。タンパク質基質がチップのウェルに入っているビーズに結合されている同じタイプのアッセイも行うことができる。
【0153】
B.ヌクレアーゼ活性の分析
ヌクレアーゼ活性は、タンパク質プローブ/基質を核酸プローブ/基質で置き換える以外は上記でプロテアーゼ活性について記載されているのと同様にして評価される。そのようにして、ヌクレアーゼ活性により放出される蛍光タグ付け核酸断片が蛍光により検出できるか、あるいは、その核酸断片は質量分析により直接検出できる。
【0154】
C.Gタンパク質を結合させた受容体の分析
もう1つのタイプのアッセイにおいて、Gタンパク質結合受容体を結合する化合物が同定される。最初に、Gタンパク質受容体をGST融合タンパク質としてクローニングし、その際、GSTタンパク質は、Gタンパク質のC末端に結合される。何故ならば、そのC末端は一般に、プローブ特性の決定には関与しないからである。Gタンパク質::GST融合タンパク質をウェルに、好ましくはグルタチオンと結合させることにより結合させる。次に、Gタンパク質受容体をコンビナトリアル化学ライブラリーまたはペプチドライブラリーのような化合物の混合物と共にインキュベートする。洗浄した後、結合したプローブを(例えば25%アセトニトリル/0.05%トリクロロ酢酸の添加により)溶出させる。次に、溶出した物質をMALDI質量分析計にローディングし、結合したプローブの性質を同定する。
【0155】
IX.実施例IV:タンパク質チップを用いた特異的インヒビターによるプロテインキナーゼ抑制の分析
以下の説明は、単に例示の目的にすぎないが、プロテインキナーゼをプロテインキナーゼインヒビターに対する感度について調べるための本発明のタンパク質チップの使用方法を提供する。タンパク質−タンパク質相互作用は通常、以下の方法または類似の方法によりアッセイできる。
【0156】
基質を、タンパク質チップ上のGPTS処理マイクロウェルの表面に室温で1時間結合させ、次に1%BSAおよび100mM Tris(pH 7.5)でブロッキングし、TBS緩衝液で3回洗浄した。キナーゼおよび各種濃度のキナーゼインヒビターを、33P-γ-ATPの存在下でマイクロウェルに加えた。リン酸化反応を30℃で30分間行った。反応が完了した後、タンパク質チップを室温でTBS緩衝液で十分に洗浄し、次に乾燥させた。タンパク質チップをX線フィルムまたはホスホイメージャーに暴露することにより、リン酸化シグナルを得た。
【0157】
ヒト・プロテインキナーゼA(PKA)、ヒト・mapキナーゼ(MAPK)、3種の酵母PKA相同体(TPK1、TPK2およびTPK3)、ならびに2種の他の酵母プロテインキナーゼ(HSL1およびRCK1)を、2種の基質(すなわちPKAのタンパク質基質および一般に用いられるキナーゼ基質であるMBP)について、各種濃度のPKIα(特異的なヒトPKAインヒビター)またはSB202190(MAPKインヒビター)を用いて試験した。図7に示すように、PKIαは、両者のペプチドおよびMBP基質に対するPKA活性を特異的に抑制した。しかし、PKIαは試験した3種の酵母PKA相同体(TPK1、TPK2、TPK3)も他の2種の酵母プロテインキナーゼ(HSL1およびRCK1)も抑制しなかった。更に、SB202190はPKA活性を抑制しなかった。
【0158】
X.実施例V:ガラス表面でのキナーゼアッセイ
1.スライドガラス(Fisher, USA)を28〜30%の水酸化アンモニウムに室温(「RT」)で一夜、振盪しながら浸漬した。
【0159】
2.そのスライドを超純水で4回、それぞれ5分間すすぎ、次に大容量の100
%エタノール(「EtOH」)で濯いで、水を完全に除去した。次に、スライドを95%エタノールで3回濯いだ。
【0160】
3.スライドを1% 3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(GPST)溶液(95% EtOH中)、16mM酢酸(「HOAc」)に、振盪しながら室温で1時間浸漬した。スライドを95%エタノールで室温で3回濯いだ。
【0161】
4.スライドを135℃で2時間、減圧下で硬化させた。冷却した後、スライドは、使用するまで、アルゴン中で数ヶ月間保存した。
【0162】
5.約10μlの各タンパク質基質(40%グリセロール中)を、氷上の96ウェルPCRプレートに並べた。手動式のスポッティング装置(V&P Scientific, USA)を用いて、約3nlの各サンプルをGPTS処理スライドガラスにスポットした。1つの実施形態では、768のサンプルを1つのスライドに室温でスポットする。スライドを、覆いがかかっている清潔なチャンバー内で室温で1時間インキュベートした。
【0163】
6.スライドを10mlのブロック用緩衝液(100mM グリシン、100nM Tris、pH 8.0、50nM NaCl)で室温で1時間ブロックした。スライドをTBS緩衝液(50mM Tris, pH 8.0、150mM NaCl)で3回洗浄し、1500rpmで5分間遠心乾燥した。
【0164】
7.スライド上の基質表面を、HybriWell Sealing System(Schleicher & Schuell,ドイツ)で被覆し、プロテインキナーゼおよび標識試薬としての33P-γ-ATPを含有する40μlのキナーゼ混合物を氷上の基質に添加した。
【0165】
8.反応物を、加湿チャンバー内で30℃で30分間インキュベートした。スライドからシールを剥がし、スライドを大容量の50mM EDTA含有PBS緩衝液に浸漬した。スライドを、同じ緩衝液で更にで3回×15分間、室温で洗浄した。次に、洗浄したスライドをキムワイプで乾燥した。
【0166】
9.シグナルを得るために、スライドをホスホイメージャースクリーンに暴露し、データをImageQuantソフトウェアを用いて解析した。
【0167】
XI.引用した参考文献
本明細書中で引用した全ての参考文献は、それぞれ個々の刊行物、特許または特許出願があらゆる目的で参照によりその全体が組み入れられる、と具体的かつ個々に示されているのと同程度に、あらゆる目的で参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0168】
当業者であれば理解するように、本発明の多くの改変および種々の変法が、その精神および範囲から逸脱することなしに可能である。本明細書に記載されている特定の実施形態は単なる例にすぎず、本発明は、添付の請求の範囲ならびにそのような請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲によってのみ限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種の異なる物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質から構成される、上記アレイ。
【請求項2】
複数種の異なる物質が、1cm2当たり100〜1,000種の異なる物質から構成される、請求項1に記載のアレイ。
【請求項3】
複数種の異なる物質が、1cm2当たり1,000〜10,000種の異なる物質から構成される、請求項1に記載のアレイ。
【請求項4】
複数種の異なる物質が、1cm2当たり10,000〜100,000種の異なる物質から構成される、請求項1に記載のアレイ。
【請求項5】
複数種の異なる物質が、1cm2当たり100,000〜1,000,000種の異なる物質から構成される、請求項1に記載のアレイ。
【請求項6】
複数種の異なる物質が、1cm2当たり1,000,000〜10,000,000種の異なる物質から構成される、請求項1に記載のアレイ。
【請求項7】
複数種の異なる物質が、1cm2当たり10,000,000〜25,000,000種の異なる物質から構成される、請求項1に記載のアレイ。
【請求項8】
複数種の異なる物質が、1cm2当たり少なくとも25,000,000種の異なる物質から構成される、請求項1に記載のアレイ。
【請求項9】
複数種の異なる物質が、1cm2当たり少なくとも10,000,000,000種の異なる物質から構成される、請求項1に記載のアレイ。
【請求項10】
複数種の異なる物質が、1cm2当たり少なくとも10,000,000,000,000種の異なる物質から構成される、請求項1に記載のアレイ。
【請求項11】
固相支持体がスライドガラスである、請求項1に記載のアレイ。
【請求項12】
各々の異なる物質が、固相支持体の表面の異なるウェル内に存在する、請求項1に記載のアレイ。
【請求項13】
異なるウェル内の各々の異なる物質が、固相支持体の表面に結合されている、請求項12に記載のアレイ。
【請求項14】
異なるウェル内の各々の異なる物質が、固相支持体の表面に結合されていない、請求項12に記載のアレイ。
【請求項15】
異なるウェル内の各々の異なる物質が、溶液の状態である、請求項12に記載のアレイ。
【請求項16】
各ウェルが、タンパク質または分子の生物学的活性をアッセイするための試薬を含む、請求項12に記載のアレイ。
【請求項17】
複数種の異なるタンパク質または該タンパク質の機能性ドメインを含む分子を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なるタンパク質または分子が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種のタンパク質または分子が、生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも50%から構成される、上記アレイ。
【請求項18】
複数種のタンパク質または分子が、生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも75%から構成される、請求項17に記載のアレイ。
【請求項19】
複数種のタンパク質または分子が、生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも90%から構成される、請求項17に記載のアレイ。
【請求項20】
生物が細菌、酵母、昆虫および哺乳動物からなる群から選ばれる、請求項17に記載のアレイ。
【請求項21】
目的の生物学的活性を有する発現タンパク質が、キナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、グリコシダーゼ、アセチラーゼ、他の官能基転移酵素、核酸結合タンパク質、ホルモン結合タンパク質、およびDNA結合タンパク質からなる群から選ばれる、請求項17に記載のアレイ。
【請求項22】
タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、固相支持体が、セラミック、非晶質炭化ケイ素、不定形酸化物、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンおよびシリコーンエラストマーからなる群から選ばれる、上記アレイ。
【請求項23】
固相支持体がシリコーンエラストマーである、請求項22に記載のアレイ。
【請求項24】
固相支持体がポリジメチルシロキサンである、請求項23に記載のアレイ。
【請求項25】
タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在する位置アドレス可能なアレイであって、複数種の異なる物質が、固相支持体に3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシランリンカーを介して結合されている、上記アレイ。
【請求項26】
固相支持体の表面に複数のウェルを備えたアレイであって、ウェルの密度が少なくとも100ウェル/cm2である上記アレイ。
【請求項27】
ウェルの密度が100〜1,000ウェル/cm2である、請求項26に記載のアレイ。
【請求項28】
ウェルの密度が1,000〜10,000ウェル/cm2である、請求項26に記載のアレイ。
【請求項29】
ウェルの密度が10,000〜100,000ウェル/cm2である、請求項26に記載のアレイ。
【請求項30】
ウェルの密度が100,000〜1,000,000ウェル/cm2である、請求項26に記載のアレイ。
【請求項31】
ウェルの密度が1,000,000〜10,000,000ウェル/cm2である、請求項26に記載のアレイ。
【請求項32】
ウェルの密度が10,000,000〜25,000,000ウェル/cm2である、請求項26に記載のアレイ。
【請求項33】
ウェルの密度が少なくとも25,000,000ウェル/cm2である、請求項26に記載のアレイ。
【請求項34】
ウェルの密度が少なくとも10,000,000,000ウェル/cm2である、請求項26に記載のアレイ。
【請求項35】
ウェルの密度が少なくとも10,000,000,000,000ウェル/cm2である、請求項26に記載のアレイ。
【請求項36】
タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質がウェル内に存在し、かつ、各々の異なる物質が異なるウェル内に存在する、請求項26に記載のアレイ。
【請求項37】
異なるウェル内の各々の異なる物質が固相支持体の表面に結合されている、請求項36に記載のアレイ。
【請求項38】
異なるウェル内の各々の異なる物質が、共有結合により固相支持体の表面に結合されている、請求項37に記載のアレイ。
【請求項39】
異なるウェル内の各々の異なる物質が、リンカーを介して共有結合により固相支持体の表面に結合されている、請求項38に記載のアレイ。
【請求項40】
リンカーが3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシランである、請求項39に記載のアレイ。
【請求項41】
異なるウェル内の各々の異なる物質が、非共有結合により固相支持体の表面に結合されている、請求項36に記載のアレイ。
【請求項42】
異なるウェル内の各々の異なる物質が、固相支持体の表面に結合されていない、請求項36に記載のアレイ。
【請求項43】
異なるウェル内の各々の異なる物質が溶液の状態である、請求項36に記載のアレイ。
【請求項44】
各ウェルが、タンパク質または分子の生物学的活性をアッセイするための試薬を含んでいる、請求項26に記載のアレイ。
【請求項45】
ウェルの容積が1pl〜5μlである、請求項26に記載のアレイ。
【請求項46】
ウェルの容積が1nl〜1μlである、請求項26に記載のアレイ。
【請求項47】
ウェルの容積が100nl〜300nlである、請求項26に記載のアレイ。
【請求項48】
ウェルの底部が四角形、丸形、V字形またはU字形である、請求項26に記載のアレイ。
【請求項49】
固相支持体の表面に複数のウェルを備えた位置アドレス可能なアレイの製造方法であって、
固相表面に100ウェル/cm2を上回る密度のウェルが形成されるように設計された微細加工鋳型からアレイを成型する工程
を含む上記方法。
【請求項50】
固相支持体の表面に複数のウェルを備えた位置アドレス可能なアレイの製造方法であって、
(a)固相表面に100ウェル/cm2を上回る密度のウェルが形成されるように設計された微細加工鋳型から二次鋳型を成型する工程、および
(b)その二次鋳型から少なくとも1つのアレイを成型する工程
を含む上記方法。
【請求項51】
アレイの成型工程が更に、
(a)前記鋳型を液体成型材料で被覆する工程、および
(b)成型物が固体になるまで、その成型材料を硬化させる工程
を含む、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
ウェルの密度が100〜1,000ウェル/cm2である、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
ウェルの密度が1,000〜10,000ウェル/cm2である、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
ウェルの密度が10,000〜100,000ウェル/cm2である、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
ウェルの密度が100,000〜1,000,000ウェル/cm2である、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
ウェルの密度が1,000,000〜10,000,000ウェル/cm2である、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
ウェルの密度が10,000,000〜25,000,000ウェル/cm2である、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
ウェルの密度が25,000,000ウェル/cm2よりも高い、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
ウェルの密度が10,000,000,000ウェル/cm2よりも高い、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
ウェルの密度が10,000,000,000,000ウェル/cm2よりも高い、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
アレイがシリコーンエラストマーから成型される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項62】
アレイがポリジメチルシロキサンから成型される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項63】
液体成型材料がシリコーンエラストマーである、請求項51に記載の方法。
【請求項64】
液体成型材料がポリジメチルシロキサンである、請求項51に記載の方法。
【請求項65】
タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なる物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質からなる位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、
(a)プローブを上記アレイと接触させる工程、および
(b)タンパク質/プローブ相互作用を検出する工程
を含む上記方法。
【請求項66】
複数種の異なるタンパク質または該タンパク質の機能性ドメインを含む分子を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なるタンパク質または分子が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なるタンパク質または分子が、生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも50%から構成される位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、
(a)プローブを上記アレイと接触させる工程、および
(b)タンパク質/プローブ相互作用を検出する工程
を含む上記方法。
【請求項67】
タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、固相支持体が、セラミックス、非晶質炭化ケイ素、不定形酸化物、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンおよびシリコーンエラストマーからなる群から選ばれる、位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、
(a)プローブを上記アレイと接触させる工程、および
(b)タンパク質/プローブ相互作用を検出する工程
を含む上記方法。
【請求項68】
タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なる物質が固相支持体に3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシランリンカーを介して結合されている位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、
(a)プローブを上記アレイと接触させる工程、および
(b)タンパク質/プローブ相互作用を検出する工程
を含む上記方法。
【請求項69】
プローブが酵素の基質またはインヒビターである、請求項65〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
プローブが、キナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、グリコシダーゼ、アセチラーゼ、および他の官能基転移酵素からなる群から選ばれる酵素の基質またはインヒビターである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
プローブが、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、小分子基質、薬剤候補、受容体、抗原、ステロイド、リン脂質、抗体、グルタチオン、免疫グロブリンのドメイン、マルトース、ニッケル、ジヒドロトリプシン、およびビオチンからなる群から選ばれる、請求項65〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
タンパク質/プローブ相互作用の検出が質量分析による、請求項65〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
タンパク質/プローブ相互作用の検出が、化学発光法、蛍光法、放射性標識法および原子間力顕微鏡法からなる群から選ばれる方法による、請求項65〜68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、
(a)タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に固着させる工程であって、但し、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なる物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質から構成される、該工程
(b)プローブを上記アレイと接触させる工程、および
(c)タンパク質/プローブ相互作用を検出する工程
を含む上記方法。
【請求項75】
固相支持体がスライドガラスである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
位置アドレス可能なアレイの使用方法であって、
(a)複数種の異なるタンパク質または該タンパク質の機能性ドメインを含む分子を固相支持体上に固着させる工程であって、但し、各々の異なるタンパク質または分子が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種のタンパク質または分子が生物のゲノム中の同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも50%から構成される、該工程
(b)プローブを上記アレイと接触させる工程、および
(c)タンパク質/プローブ相互作用を検出する工程
を含む上記方法。
【請求項77】
固相支持体がスライドガラスである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
位置アドレス可能なアレイの製造方法であって、
(a)固相支持体上に100ウェル/cm2を上回る密度のウェルが形成されるように設計された微細加工鋳型からアレイを成型する工程、および
(b)ウェル内で、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に固着させる工程であって、但し、各々の異なる物質が固相支持体上の異なるウェル内に存在する、該工程
を含む上記方法。
【請求項79】
位置アドレス可能なアレイの製造方法であって、
(a)固相支持体上に100ウェル/cm2を上回る密度のウェルが形成されるように設計された微細加工鋳型から二次鋳型を成型する工程、
(b)その二次鋳型から少なくとも1つのアレイを成型する工程、および
(c)ウェル内で、タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に固着させる工程であって、但し、各々の異なる物質が固相支持体上の異なるウェル内に存在する、該工程
を含む上記方法。
【請求項80】
リンパ球を活性化する抗原の同定方法であって、
(a)位置アドレス可能なアレイを複数種のリンパ球と接触させる工程であって、但し、該アレイが複数種の可能性のある抗原を固相支持体上に含んでなり、各々の異なる抗原が固相支持体上の異なる位置に存在し、異なる抗原の密度が1cm2当たり少なくとも100種の異なる抗原である該工程、および
(b)リンパ球の活性化が起こっている固相支持体上での位置を検出する工程
を含む上記方法。
【請求項81】
リンパ球が患者に由来する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
抗原が、病原体の抗原、自家組織の抗原、組織特異的抗原、疾患特異的抗原、および合成抗原からなる群から選ばれる、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
リンパ球の活性化が、抗体合成を測定することにより検出される、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
リンパ球の活性化が、リンパ球による3H-チミジンの取込みを測定することにより検出される、請求項80に記載の方法。
【請求項85】
リンパ球の活性化が、リンパ球の活性化により誘導または抑制される細胞表面分子の発現を測定することにより検出される、請求項80に記載の方法。
【請求項86】
リンパ球の活性化が、リンパ球の活性化により誘導される分泌型分子の発現を測定することにより検出される、請求項80に記載の方法。
【請求項87】
リンパ球の活性化が、51クロムの放出を測定することにより検出される、請求項80に記載の方法。
【請求項88】
抗体調製物の特異性の判定方法であって、
(a)位置アドレス可能なアレイを抗体調製物と接触させる工程であって、但し、該アレイが複数種の可能性のある抗原を固相支持体上に含んでなり、各々の異なる抗原が固相支持体上の異なる位置に存在し、異なる抗原の密度が1cm2当たり少なくとも100種の異なる抗原である該工程、および
(b)該抗体調製物中の抗体による結合が起こっている固相支持体上での位置を検出する工程
を含む上記方法。
【請求項89】
抗体調製物が、抗血清、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
抗体調製物が、Fab断片、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体または合成抗体を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
抗体の結合が、前記抗体調製物中の抗体に結合する蛍光標識した二次抗体に前記アレイを接触させ、未結合の二次抗体を除去し、該アレイ上の結合標識を検出することにより検出される、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
マイトジェンの同定方法であって、
(a)位置アドレス可能なアレイを細胞の集団と接触させる工程であって、但し、該アレイがタンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、異なる物質の密度が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質である該工程、および
(b)細胞内でマイトジェン活性が誘導されている固相支持体上での位置を検出する工程
を含む上記方法。
【請求項93】
下記(a)および(b)を含むキット。
(a)固相支持体の表面に複数のウェルを備えた1以上のアレイであって、但し、該ウェルの密度が少なくとも100ウェル/cm2である該アレイ、および
(b)1つ以上の容器中の、1種以上のプローブ、試薬または他の分子
【請求項94】
1つ以上の容器が、タンパク質の生物学的活性をアッセイするのに有用な試薬を含む、請求項93に記載のキット。
【請求項95】
1つ以上の容器が、プローブとタンパク質との間の相互作用をアッセイするのに有用な試薬を含む、請求項93に記載のキット。
【請求項96】
試薬が溶液の状態である、請求項94または95に記載のキット。
【請求項97】
試薬が固体の状態である、請求項94または95に記載のキット。
【請求項98】
試薬が前記アレイの各ウェル内に収容されている、請求項94または95に記載のキット。
【請求項99】
試薬が前記アレイの選択されたウェル内に収容されている、請求項94または95に記載のキット。
【請求項100】
1つ以上の容器が、タンパク質または分子の生物学的活性をアッセイするための溶液状の反応混合物を収容している、請求項93に記載のキット。
【請求項101】
1つ以上の容器が、前記生物学的活性をアッセイするための1種以上の基質を収容している、請求項100に記載のキット。
【請求項102】
下記(a)および(b)を含むキット。
(a)タンパク質、該タンパク質の機能性ドメインを含む分子、細胞全体、およびタンパク質含有細胞性物質からなる群から選ばれる複数種の異なる物質を固相支持体上に含んでなり、かつ、各々の異なる物質が固相支持体上の異なる位置に存在し、複数種の異なる物質が1cm2当たり少なくとも100種の異なる物質から構成される、1つ以上の位置アドレス可能なアレイ、および
(b)1つ以上の容器中の、1種以上のプローブ、試薬または他の分子
【請求項103】
前記物質が、固相支持体上のウェルの表面に結合されている、請求項102に記載のキット。
【請求項104】
前記物質がタンパク質であり、かつ該タンパク質が、生物において同タイプの生物学的活性を有する全ての発現タンパク質の少なくとも50%である、請求項103に記載のキット。
【請求項105】
前記物質がタンパク質または該タンパク質の機能性ドメインを含む分子であり、かつ、該タンパク質または該分子が、キナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、グリコシダーゼ、アセチラーゼ、核酸結合タンパク質およびホルモン結合タンパク質からなる群から選ばれる、請求項104に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−17711(P2011−17711A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180401(P2010−180401)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【分割の表示】特願2001−580434(P2001−580434)の分割
【原出願日】平成13年5月4日(2001.5.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(500114601)イエール ユニバーシティー (4)
【Fターム(参考)】