説明

タンパク質発現ベクター

【課題】本発明は、従来のベクターでは発現させることが困難であったタンパク質も効率的に発現することができる発現ベクター、該発現ベクターを導入して得られる形質転換体、該発現ベクターを用いたタンパク質製造方法等を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、目的タンパク質を発現させるための発現ベクターであって、転写因子ATF2(Activating transcription factor 2)タンパク質の全部又は一部をコードするDNAと、前記目的タンパク質が前記ATF2タンパク質の全部又は一部と融合タンパク質として発現されるように、目的タンパク質をコードするDNAを挿入するための挿入部位と、を含む発現ベクターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の組換えタンパク質の発現方法では発現が困難であったタンパク質を効率的に発現することができる発現ベクター、該発現ベクターを導入して得られる形質転換体、該発現ベクターを用いたタンパク質の製造方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大腸菌をはじめとする細菌類において、種々の外来タンパク質を効率的に発現させる系が確立されている。これらの系を用いて発現されるタンパク質は、その用途から、可溶性で活性をもつタンパク質であることが望まれる。
しかし、発現させるタンパク質によっては、その高次構造形成がうまくいかず不溶性になってしまう場合、フォールディング異常によって、立体構造の異なった異常タンパク質が多く作られてしまう場合や、そもそも難溶性又は凝集性のタンパク質である場合など、可溶化し難い場合がある。そして、これらの不溶性のタンパク質や異常タンパク質は、宿主菌体内で封入体と呼ばれる凝集体として存在することが知られている。
【0003】
発現させるタンパク質の可溶性を高めるために、そのタンパク質を様々なタンパク質(タグ)と融合タンパク質として発現させる方法が開発されている。例えば、チオレドキシンタグを用いることにより、通常より大量の可溶性タンパク質の製造が可能となることが知られている(例えば、特許文献1参照)。またグルタチオン・S・トランスフェラーゼ(GST)を融合タグとして用いる方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらの方法を用いても、発現が困難な遺伝子、微量しか産生されないタンパク質は少なくなかった。
また、封入体が形成された場合には、封入体に含まれる融合タンパク質を可溶化して精製することで、発現した融合タンパク質を得ることができる。しかし、精製にはこのタグを効率よく認識できる抗体が必要となる場合が多い。融合タンパク質の可溶性を高め、且つ、効率よく認識できる抗体が存在するタグを見出すのは容易ではない。
【0004】
発現させたタンパク質を効率的に精製する方法として、タンパク質の発現にあたりヒスチジンタグを融合させる方法も知られている。この方法によって発現させたヒスチジンタグ融合タンパク質は、ニッケル等のいくつかの金属との親和性を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製ができる。そして、このように精製されたヒスチジン融合タンパク質より、プロテアーゼを用いて目的タンパク質を分離することができる。しかし、この方法においても目的タンパク質中にプロテアーゼに対する切断部位を有する場合、融合タンパク質がニッケルとの結合を妨害する場合、又は精製条件が活性に影響を及ぼす場合などがあり、必ずしも機能的とはいえない(特許文献3)。
【0005】
また、発現した融合タンパク質を検出又は精製する目的で、融合タンパク質のうち目的タンパク質ではない方のタンパク質に対する抗体を用いることがある。しかし、そのタンパク質を認識する優れた抗体が少なく、十分な検出や精製、応用技術などの構築が難しい場合があるという問題があった。
このため、従来の発現ベクターでは得ることが難しいタンパク質を十分に得ることができるベクターが望まれていた。
【0006】
さらに、従来の発現ベクターでは、ポリペプチドを発現させることが困難な場合が多かった。例えば、免疫抗原として、タンパク質の部分配列である約100残基からなるポリペプチドを用いる場合がある。しかし、従来の発現系は、このようなポリペプチドを発現し得る条件には当てはまらない場合も多かった。このため、免疫に十分な量と性状をもつポリペプチドを得ることができないという問題があった。
【特許文献1】特許第2513978号
【特許文献2】特表平1−503441号公報
【特許文献3】特表平11−503617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、従来のベクターでは発現させることが困難であったタンパク質も効率的に発現することができ、且つ精製が容易なタンパク質を発現する発現ベクター、該発現ベクターを導入して得られる形質転換体、該発現ベクターを用いたタンパク質製造方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、転写因子ATF2(activating transcription factor 2、以下「ATF2」とする)タンパク質の全部又は一部をコードするDNAを含むベクターを用い、目的タンパク質と転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部との融合タンパク質を発現させることによって、従来のベクターでは発現させることが困難であったタンパク質も効率よく発現させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
〔1〕目的タンパク質を発現させるための発現ベクターであって、転写因子ATF2(Activating transcription factor 2)タンパク質の全部又は一部をコードするDNAと、前記目的タンパク質が前記ATF2タンパク質の全部又は一部と融合タンパク質として発現されるように、目的タンパク質をコードするDNAを挿入するための挿入部位と、を含む発現ベクター;
〔2〕前記目的タンパク質をコードするDNAを挿入することにより、該目的タンパク質と前記ATF2タンパク質の全部又は一部とが融合タンパク質として発現される、上記〔1〕に記載の発現ベクター;
〔3〕さらに、前記融合タンパク質において前記ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質とをつなぐリンカーペプチドをコードするDNAを含む、上記〔2〕に記載の発現ベクター;
〔4〕前記リンカーペプチドをコードするDNAが、配列番号13、14又は39に記載の塩基配列からなる、上記〔3〕に記載の発現ベクター;
〔5〕さらに、精製用タグタンパク質をコードするDNAを含む、上記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の発現ベクター;
〔6〕前記精製用タグタンパク質をコードするDNAが、配列番号15又は16に記載の塩基配列からなる、上記〔5〕に記載の発現ベクター;
〔7〕前記ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNAが、配列番号1から6のいずれかに記載の塩基配列からなるDNAである、上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の発現ベクター;
〔8〕pBMR(寄託番号NITE P-522)として寄託された発現ベクター;
〔9〕さらに、前記目的タンパク質をコードするDNAを含む、上記〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載の発現ベクター;
〔10〕上記〔9〕に記載の発現ベクターを導入して得られる形質転換体;
〔11〕配列番号1から6のいずれかに記載の塩基配列からなるDNA;
〔12〕配列番号7から12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
〔13〕上記〔12〕に記載のポリペプチドに結合する抗体;
〔14〕クローン番号ATF2-00158(寄託番号FERM P-21570)として寄託されたハイブリドーマ細胞株;
〔15〕上記〔14〕に記載の細胞株により産生される上記〔13〕に記載の抗体;
〔16〕次の(a)〜(c)の工程を含む目的タンパク質の製造方法。
(a)請求項10に記載の形質転換体を培地中で培養する工程
(b)工程(a)により培養物中に生産された融合タンパク質を培養物から採取する工程、及び
(c)工程(b)により採取された融合タンパク質を、ATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質とに切断する工程
〔17〕前記工程(b)において、前記ATF2タンパク質に対する抗体を用いたカラム又は免疫沈降によって、前記融合タンパク質の採取を行う、上記〔16〕の記載の方法;
〔18〕次の(d)〜(f)の工程を含む目的タンパク質の製造方法。
(d)請求項10に記載の形質転換体を培地中で培養する工程
(e)工程(d)により培養物中に生産された融合タンパク質を、ATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質とに切断する工程、及び
(f)工程(e)により得られた目的タンパク質を精製する工程
〔19〕前記工程(f)において、前記工程(e)で得られたATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質との混合物から、前記ATF2タンパク質に対する抗体を用いたカラム又は免疫沈降によって前記ATF2タンパク質の全部又は一部を除去することにより、前記目的タンパク質の精製を行う、上記〔18〕に記載の方法;
〔20〕次の(g)〜(h)の工程を含む融合タンパク質の製造方法。
(g)請求項10に記載の形質転換体を倍地中で培養する工程、及び
(h)工程(g)により培養物中に生産された融合タンパク質を培養物から採取する工程
〔21〕前記工程(h)において、前記ATF2タンパク質に対する抗体を用いたカラム又は免疫沈降によって、前記融合タンパク質の採取を行う、上記〔20〕に記載の方法;
〔22〕前記抗体が上記〔13〕又は〔15〕に記載の抗体である、上記〔17〕、〔19〕又は〔21〕に記載の方法;
〔23〕転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質との融合タンパク質の検出方法であって、上記〔13〕又は〔15〕に記載の抗体を用いて、融合タンパク質に含まれる転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部を認識する工程を含む、方法;
〔24〕転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質との融合タンパク質の精製方法であって、上記〔13〕又は〔15〕に記載の抗体を用いて、前記融合タンパク質に含まれる転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部を認識し、前記融合タンパク質を精製する工程を含む、融合タンパク質の精製方法;
〔25〕転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質とを含む融合タンパク質をコードするDNA;
〔26〕前記ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNAと、前記目的タンパク質をコードするDNAとの間にリンカーDNAを含む、上記〔25〕に記載のDNA;
〔27〕前記リンカーDNAが配列番号13、14又は39に記載の塩基配列からなる、上記〔26〕に記載のDNA;
〔28〕前記目的タンパク質をコードするDNAのカルボキシ末端に精製用タグタンパク質をコードするDNAを含む、上記〔25〕から〔27〕のいずれかに記載のDNA;
〔29〕前記精製用タグタンパク質をコードするDNAが配列番号15又は16に記載の塩基配列からなる、上記〔28〕に記載のDNA;
〔30〕前記ATF2タンパク質の全部又は一部の配列が配列番号1から6のいずれかに記載の塩基配列からなる、上記〔25〕から〔29〕のいずれか1項に記載のDNA;
〔31〕転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質とを含む融合タンパク質、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発現ベクターを用いることにより、これまで発現させることが困難であったタンパク質を効率よく発現することができる。さらに、本発明の発現ベクターによれば、目的タンパク質は、ATF2タンパク質の全部又は一部との融合タンパク質として得られるので、抗ATF2タンパク質抗体を用いて容易に精製することができる。本発明の発現ベクターによれば、治療、診断又は他の研究用途等を目的とする組換えタンパク質を大量に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の「発現ベクター」とは、所望の目的タンパク質を発現させるための発現ベクターであって、転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNAを含む発現ベクターのことをいい、転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNAを含んでいれば、いずれの発現ベクターも含まれる。本発明の「発現ベクター」は、目的タンパク質をコードするDNAを挿入することによって、目的タンパク質と転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部との融合タンパク質を効率よく発現する。
従って、本発明の発現ベクターは、転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質とが融合タンパク質として発現できるように、目的タンパク質をコードするDNAを挿入するための挿入部位を有する。挿入部位は、各種制限酵素が切断する制限部位とすることができる。
【0012】
本発明の発現ベクターに用いるATF2は、DNA結合タンパク質として知られている。ATF2遺伝子は、DNA結合タンパク質のロイシンジッパーファミリーのタンパク質である転写因子をコードする。ATF2タンパク質は、八塩基パリンドローム構造であるcAMP応答配列(CRE)と結合する。このタンパク質は、c-Junとホモ二量体又はヘテロ二量体を形成して、CRE依存性転写を刺激する。このタンパク質はまた、生体外においてヒストンH2BとH4を特異的にアセチル化するヒストンアセチル基転移酵素(HAT)でもあることが知られている。
【0013】
本発明の「転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部」のうち、「転写因子ATF2タンパク質の全部」は、配列番号38に示されるヒト転写因子ATF2タンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質のほかに、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるものを含み、目的タンパク質と融合タンパク質として発現させた場合に、目的タンパク質を効率よく発現させる。また、かかる効果を奏する限り、配列番号38に示されるアミノ酸配列に対して、その一部が欠損したもの、その一部が他のアミノ酸と置換したもの、及び他のアミノ酸が付加又は挿入されたものも含まれる。
【0014】
また、本発明の「転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部」のうち、本発明の「転写因子ATF2タンパク質の一部」とは、ATF2タンパク質の一部を含むものであればいずれのものでも良いが、例えば、1〜200アミノ酸残基の部分配列であり、好ましくは、10〜150塩基長、さらに好ましくは15塩基長〜129塩基長の部分配列である。本発明の「転写因子ATF2タンパク質の一部」も、目的タンパク質と融合タンパク質として発現させた場合に、目的タンパク質を効率よく発現させる効果を奏する。
本発明の「転写因子ATF2タンパク質の一部」としては、例えば、図7の「ヒト転写因子ATF2タンパク質の全部」を示すATF2全長配列(配列番号38)の226番目のアミノ酸を、ATF2タグ用ポジション番号の1番目とした場合に、そのアミノ酸配列のATF2タグ用ポジション番号1番目から129番目(配列番号7)、29番目から129番目(配列番号8)、51番目から129番目(配列番号9)、95番目から129番目(ただし95番目をメチオニンとする)(配列番号10)、29番目から95番目(配列番号11)、29番目から50番目(配列番号12)を含むものであることが望ましい。これらのペプチドは、ATF2の部分配列内に含まれるエピトープ配列を参考に、本発明者らがデザインしたものである。以降、配列番号7から12に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを、それぞれ順に「ATF2部分ペプチド1〜6」と呼ぶことがある。
【0015】
本発明の発現ベクターに含まれる「転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNA」としては、例えば、配列番号38に記載のタンパク質をコードする塩基配列や、配列番号7から12の部分配列をコードする配列番号1から6のいずれかに記載の塩基配列からなるDNAが挙げられ、いずれも目的タンパク質との融合タンパク質としてヒト転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部を発現する。以降、配列番号1から6に記載のATF2タンパク質の一部をコードする塩基配列からなるDNAを、それぞれ順に「ATF2部分DNA1〜6」と呼ぶことがある。
さらに、本発明の「転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNA」には、本発明の転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNAと、相同性の高いDNAが含まれる。例えば、配列番号1から配列番号6に示す塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAと、高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが挙げられる。このようなDNAとしては、配列番号1から配列番号6に示す塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA等が挙げられる。また、本発明の「「転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNA」」としては、ヒトに由来するものが好適に用いられるが、例えば、ヒト転写因子ATF2タンパク質に対する異種生物種での相同遺伝子、ファミリー遺伝子群、変異遺伝子等の全部又は一部も含まれる。
ここでいう高ストリンジェントな条件としては、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、ナトリウム濃度が10mM〜300mM、好ましくは20mM〜100mM、であり、温度が25℃〜70℃、好ましくは42℃〜55℃での条件をいう。ハイブリダイゼーションは、公知の方法、例えば、環境温度の高低の調整などでアニーリングにより行うことができる。
【0016】
本発明の発現ベクターは、転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNAを含む発現ベクターであれば特に限定されない。例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等のいずれであってもよい。
プラスミドDNAとしては、例えば、本発明の発現ベクターを導入する宿主細胞が大腸菌である場合は、大腸菌用ベクターであるpETベクター(Novagen社製)、pRSETベクター(Invitrogen社製)、pCYBベクター(NEW ENGLAMD Bio Labs社製)、pBRベクター、pUCベクター等が挙げられる。宿主細胞が酵母である場合は、酵母用ベクターであるpESP-1発現ベクター(STRATAGENE社製)、pAUR123ベクター(TAKARA社製)、pYES2ベクター(Invitrogen社製)、YEp13ベクター、YEp24ベクター、YCp50ベクター等が挙げられる。宿主細胞が枯草菌である場合には枯草菌用ベクターであるpUB110ベクター、pTP5ベクター等が挙げられる。ファージDNAとしてはλファージが挙げられる。
さらに、動物細胞を宿主とする場合には、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。例えば、動物細胞用ベクターであるpMAM-neo発現ベクター (CLONTECH社製)、pCDNA4/TOベクター(Invitrogen社製)、pBK-CMVベクター(STRATAGENE社製)等が挙げられる。また、宿主細胞が昆虫細胞である場合は、昆虫細胞用ベクターであるpBacPAKベクター(CLONTECH社製)、pAcUW31ベクター(CLONTECH社製)、pAcP(+)IE1ベクター(Novagen社製)等が挙げられる。
【0017】
本発明の発現ベクターは、転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNAに加え、複製開始点、選択マーカー、プロモーター等を含んでもよく、必要に応じてエンハンサー、ターミネーター、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、リンカーDNA等を含んでもよい。
本発明の発現ベクターに含まれる複製開始点として、大腸菌用ベクターに対しては、例えばColE1、R因子、F因子由来のものを用いることができる。酵母用ベクターに対しては、例えば2μm DNA、ARS1由来のものを用いることができる。動物細胞用ベクターに対しては、例えばSV40、アデノウイルス由来のものを用いることができる。また、いずれの細菌でも使用可能とするため、複数の複製開始点を含むように、本発明の発現ベクターを構築してもよい。
【0018】
本発明のベクターに含まれるプロモーターとしては、大腸菌用ベクターに対しては、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等を用いることができる。酵母用ベクターに対しては、gal1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等を用いることができる。動物細胞用ベクターに対しては、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター等を用いることができる。
【0019】
本発明のベクターに含まれる選択マーカーとしては、大腸菌用ベクターに対しては、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子等を用いることができる。酵母用ベクターに対しては、Leu2、Trp1、Ura3遺伝子等を用いることができる。動物細胞用ベクターに対しては、ネオマイシン耐性遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いることができる。
【0020】
また、本発明の発現ベクターには、融合タンパク質の検出及び精製のためのタグタンパク質をコードするDNAを組み込むこともできる。
本発明の「精製用タグタンパク質」とは融合タンパク質又は目的タンパク質の検出及び精製に用いるタグをいい、検出や精製方法が確立されているタンパク質が好適である。精製用タグタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合プロテイン、ヒスチジン(His6)、ヒスチジン-グリシン-ヒスチジン配列をコードするDNAや、配列番号15又は16に記載の塩基配列からなるDNA等が挙げられる。
【0021】
本発明におけるATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質との「融合タンパク質」とは、ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDANと、目的タンパク質をコードするDNAとが1つのプロモーターによって転写されたRNAから得られるタンパク質をいう。ここで、ATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質とが、直接結合していてもよく、リンカーペプチドを介して結合していてもよい。
【0022】
リンカーペプチドとしては、当業者に知られている化学的又は酵素的方法により、選択的に開裂又は消化することができるものを用いることができ、例えば、メチオニンを含むペプチド、Asn-Glyを含むペプチドとすれば、それぞれ臭化シアン、ヒドロキシルアミンなどで開裂することができる。また、蛋白加水分解酵素、例えばトリプシン、エンテロキナーゼ、第Xa因子、コラゲナーゼ及びトロンビンにより酵素的に開裂される配列を有するぺプチド(配列番号39がコードするペプチド)とすることもできる。配列番号13又は14に記載の塩基配列がコードするペプチドも好適に用いられる。
リンカーペプチドを用いる場合、本発明の発現ベクターには、ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNAと目的タンパク質をコードするDNAの間にリンカーDNAを配置する。「リンカーDNA」とは、二つのDNA断片の結合部位に挿入されたオリゴデオキシヌクレオチドをいい、リンカーペプチドをコードするものである。
【0023】
本発明のリンカーDNAは、開裂部位の提供以外の目的にも用いることができる。例えば、リンカーペプチドは、融合タンパク質において目的タンパク質とそれ以外の部分との間の立体障害を阻止するのに充分な長さの単純なアミノ酸配列である場合もある。
前記のリンカーDNAが必要であるか否かは、目的タンパク質の構造的特徴や生成した融合タンパク質が開裂しなくても有用であるか否かにより異なる。従って、この発明の融合タンパク質をコードするDNAは、リンカーDNAを含まない場合がある。例えば、そのアミノ又はカルボキシル末端において、目的タンパク質をコードするDNA配列と転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNA配列とが、直接融合したDNAである場合もある。
【0024】
上述のような本発明の発現ベクターとしては、例えば、配列番号2に記載された塩基配列からなるDNAを含むpBMR(寄託番号NITE P-522)として寄託された発現ベクターも含まれる。pBMRは、ATF2タンパク質の部分配列の下流に、リンカーとしてトロンビン消化部位をコードするDNA(配列番号39)が挿入され、さらに精製用タグタンパク質としてHis-Gly-HisをコードするDNA(GTGTCCGTG)を含むベクターである。
【0025】
さらに、本発明は、上述した発現ベクターに、目的タンパク質をコードするDNAを含むものも包含する。
本発明の「目的タンパク質」とは、発現の目的となるタンパク質をいい、その長さ又は転写後修飾の有無に関わらず、任意のアミノ酸の連鎖を意味する。また本発明の「目的タンパク質」には、ポリペプチド、ペプチド断片を含み、天然、合成又は組換えのいずれであってもよい。
例えば、通常の発現系では回収することができないタンパク質であっても、本発明においては発現の対象とすることができるタンパク質が挙げられる。例えば、ジンクフィンガータンパク質143(ZNF143)、転移関連遺伝子2(metastasis associated 1 family, member 2 (MTA2))、核受容体サブファミリー4グループAメンバー1(NR4A1)、シグナル伝達体及び転写活性化因子3(STAT3)、high mobility group AT-hook 2タンパク質(HMGA2)、KIN、EMG1、nuclear factor I/B(NFIB)等が本発明のベクターにより目的タンパク質として好適に発現される。
【0026】
本発明の「形質転換体」とは、目的タンパク質をコードするDNAを含む本発明の発現ベクターを宿主中に導入して得られる形質転換体をいう。宿主としては、融合タンパク質遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属に属する細菌;サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母;サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ヒトGH3、ヒトFL細胞等の動物細胞;あるいはSf9、Sf21等の昆虫細胞が挙げられる。
【0027】
宿主への発現ベクターの導入は、宿主の種類に応じて公知の方法で行うことができる。例えば、ヒートショック法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、リポフェクション法、カチオンリポポリアミン法、リポソーム法、アグロバクテリウム法等が挙げられる。また、上記の各宿主細胞への遺伝子導入は、組換えベクターによらない方法、例えばパーティクルガン法なども用いることができる。
【0028】
本発明の「ポリペプチド」は、転写因子ATF2配列の全部又は一部であるポリペプチドのことをいい、例えば、配列番号7から12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。これらのポリペプチドに対して実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドのほか、このポリペプチドに対して、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは95%以上相同性であるものを含む。また、転写因子ATF2の部分配列の一部が欠損したもの、その一部が他のアミノ酸と置換したもの、及び他のアミノ酸が付加又は挿入されたものも含まれる。
【0029】
本発明の「抗体」とは、ヒト転写因子ATF2配列の部分配列である配列番号7から12のいずれかに記載のポリペプチドを認識する抗体をいい、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれでもよい。また、クローン番号ATF2-00158(寄託番号FERM P-21570)として寄託された細胞株により産生されるモノクローナル抗体を含む。当該モノクローナル抗体は、ATF2部分ペプチド1を抗原とするモノクローナル抗体である。
【0030】
本発明の抗体は従来知られているいずれの製造方法を用いても製造することができる。モノクローナル抗体は、転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部、好ましくは配列番号7から12のいずれかに記載のポリペプチドを抗原として用い、通常のハイブリドーマの技術により製造することができる。ポリクローナル抗体は、宿主動物、例えば、マウスやラット等に本発明のタンパク質等を接種し血清を回収するといった通常の方法により製造することができる。
【0031】
本発明の「ハイブリドーマ細胞株」とは、転写因子ATF2配列の全部又は一部のタンパク質を認識する抗体を産生し得る細胞株をいい、クローン番号ATF2-00158(寄託番号FERM P-21570)として寄託されたものを含む。
【0032】
本発明の「目的タンパク質の製造方法」は、(a)培地中で本発明の形質転換体を培養する工程と、(b)それにより生産された融合タンパク質を培養物から採取する工程と、(c)採取された融合タンパク質を、転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質とに分離する工程を含む。
ここで、工程(b)においては、ATF2タンパク質に対する抗体を用いたカラム又は免疫沈降によって、融合タンパク質を採取することができる。
また、本発明の「目的タンパク質の製造方法」の別の態様は、(d)培地中で本発明の形質転換体を培養する工程と、(e)それにより生産された融合タンパク質を、ATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質とに分離する工程と、(f)得られた目的タンパク質を精製する工程を含む。
ここで、工程(e)においては、ATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質の混合物が得られるので、工程(f)においては、例えば、ATF2タンパク質に対する抗体を用いたカラム又は免疫沈降によって混合物からATF2タンパク質を除去することにより、目的タンパク質を精製することができる。
本発明の「融合タンパク質の製造方法」は、(g)培地中で本発明の形質転換体を培養し、(h)それにより生産された融合タンパク質を培養物から採取する工程を含む。
工程(h)においても、工程(b)と同様にATF2タンパク質に対する抗体を用いたカラム又は免疫沈降によって、融合タンパク質を採取することができる。
【0033】
本発明の形質転換体の培養(工程(a)、(d)又は(g))は、その形質転換体の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
培地としては、大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主細胞とした形質転換体を培養する場合、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、該生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、トリプトン、肉エキス、コーンスチープリカー等が用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
【0034】
培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、16〜37℃で6〜62時間程度行う。培養期間中、pHは7.0〜7.5に保持することがある。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行うことができる。培養中はベクターの選択マーカーに応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を培地に添加してもよい。また、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、インドール酢酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地、DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。培養は、通常、5%CO2存在下、37℃で1〜30日行う。培養中はベクターの選択マーカーに応じてカナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0035】
培養後、融合タンパク質は培養物中に産生される。本発明の「培養物」とは培地又は宿主細胞をいう。
本発明の融合タンパク質の培養物からの採取(工程(b))は、通常用いられる方法に従って行うことができる。例えば、融合タンパク質が菌体内又は細胞内に産生される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより該融合タンパク質を抽出する。また、融合タンパク質が菌体外又は細胞外に産生される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。
工程(b)の後、ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質との切断の前に、融合タンパク質を精製する工程を行ってもよい。
融合タンパク質の精製は、当業者に公知のいずれの方法を使用してもよい。タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から融合タンパク質を単離精製することができる。
例えば、融合タンパク質を前記のタグ(ヒスチジン等)によって担体に結合させて回収し、イミダゾールで溶出することにより融合タンパク質のまま担体から遊離させることも可能である。
【0036】
融合タンパク質の精製には、本発明の抗体を用いてもよい。例えば、転写因子ATF2タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いた抗体カラムや免疫沈降法により、融合タンパク質を精製する方法がある。また、目的タンパク質や精製タグに対する抗体を用いることもできる。抗体カラムの作製法としては、特に限定されず、通常の方法によって、本発明のモノクローナル抗体を直接的又は間接的に固相支持体へ固定化させれば良い。免疫沈降法は、当業者には公知のいずれの方法を使用してもよい。例えば、抗原(例えば融合タンパク質)、抗体、二次抗体結合セファロースビーズ(例えばSepharose 4B)を用いることができる。また、セファロースビーズに代えて、磁性ビーズやセファロース、アガロース等のほか、磁性ビーズやセファロース、アガロース等の担体にプロテインAやプロテインG等がカップリングされているものを使用することもできる。
【0037】
本発明の転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質との切断は、当業者に公知のいずれの方法を使用してもよい。本発明の融合タンパク質は、例えば、本発明の転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質の間に挿入されたリンカーペプチド部位で切断することができる。また、融合タンパク質を担体に結合させたまま、プロテアーゼで消化することによって、目的タンパク質のみを担体から遊離させることもできる。
本発明に係る目的タンパク質の製造方法では、融合タンパク質をATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質とに切断してから、目的タンパク質を精製してもよい。
ATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質との切断は、上述した方法に従うことができ、目的タンパク質の精製は、当業者に公知のいずれの方法を使用してもよい。切断後、ATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質との混合物から、目的タンパク質を精製する方法は、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。
例えば、本発明に係る転写因子ATF2タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いた抗体カラムや免疫沈降法により、混合物からATF2タンパク質の全部又は一部を除去することができる。抗体カラムの作製法、免疫沈降法は、記述の方法に従って行うことができる。
本発明の抗体を用いた融合タンパク質又は目的タンパク質の検出方法としては、当業者に公知のいずれの方法を使用してもよい。例えば、酵素免疫測定法(ELISAやEIAなど)、蛍光標識免疫測定法、放射免疫測定(ラジオイムノアッセイ、RIA)、発光免疫測定法、免疫比濁法、ラテックス凝集反応法、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応、粒子凝集反応、ウェスタンブロット法、表面プラズモン共鳴法などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
(本発明に係る発現ベクターの構築)
1.pET21b(Novagen社Cat No.69016-3)のHis・tagの除去及びHis-Gly-His配列をコードする塩基配列の導入
プライマーPst21F(配列番号17)とプライマーXho21R(配列番号18)の組み合わせでpET21bを鋳型としてPCRを実施した。緩衝液 5μL、dNTP 5μL、硫酸マグネシウム 2μL鋳型DNA 1μL、各プライマー水溶液 15pmol及びTaqポリメラーゼ 1μLを混合し、水を加え全量50μLとし、94℃で2分間の加熱後、94℃で10秒の加熱、50℃で30秒の冷却及び68℃で30秒間の保温からなる工程を1サイクルとしてこの工程を40サイクル繰返す条件でPCRの操作を行った。pET21bベクターマップの4303-139領域-CTCGAG(XhoIサイト)(約1.1kb)の増幅を電気泳動にて確認後、制限酵素PstIとXhoIで消化した(37℃、5時間)。この消化産物を制限酵素PstIとXhoIで消化したpET21b(159-4308領域)とDNAリガーゼを用いて連結した。これにより、pET21bの140-157領域、すなわちHis・tag配列をコードする18塩基;CACCACCACCACCACCAC(配列番号37)が欠失したプラスミドが調製される(プラスミドA)。
【0039】
2.His-Gly-His配列をコードする塩基配列の導入
プライマーHind21F(配列番号19)とプライマーMlu21R(配列番号20)の組み合わせでpET21bを鋳型としてPCRを実施した。XhoIサイト-His-Gly-Hisをコードする9塩基(GTGTCCGTG)の順で塩基が付加したpET21bベクターマップの166-1069領域(約0.9kb)の増幅を電気泳動にて確認後、制限酵素MluIとXhoIで消化した(37℃、5時間)。この消化産物が精製用タグとして機能するように、制限酵素MluIとXhoIで消化したプラスミドAとDNAリガーゼを用いて連結した。
このプラスミドを大腸菌DH5αに形質転換し陽性クローンからプラスミドを調製し、pET21bHGHとした。pET21bHGHをNdeIとBamHIで制限酵素消化した(37℃、5時間)。
【0040】
3.ATF2をコードする塩基配列の導入
ATF2部分DNA1(Homo sapiens Activating transcription factor 2 (ATF2)の226-354領域をコードするDNA)に5’末端にNdeIサイト(CATATG)が付加するようにデザインしたオリゴヌクレオチド(配列番号21)と3’末端にリンカーとしてアミノ酸LVPRGSからなるトロンビン消化部位をコードする塩基配列、BamHIサイト(GGATCC)の順で付加するようにデザインしたオリゴヌクレオチド配列番号22を用いて、部分DNA1を鋳型としてPCRを実施した。
PCRにより得られた産物はNdeIとBamHIで制限酵素消化した(37℃、5時間)。そして先に得られたpET21bHGHと混合しDNAリガーゼを用いて連結した。
【0041】
4.本発明に係る発現ベクターの構築
このようにして作製したプラスミドを大腸菌DH5α株に形質転換しコロニーを得た。これらコロニーをLB培地+Amp50にて増殖させ、アルカリSDS法にてプラスミドを抽出した。このプラスミドの塩基配列をDNAシークエンサーにて確認し、本発明に係る発現ベクターの構築とした。
【実施例2】
【0042】
(ヒト転写因子MTA2、NR4A1、NFIB及びPAX8の発現)
ATF2部分DNA1の下流に導入する目的タンパク質をコードするDNAとして、ヒト転写因子MTA2遺伝子の部分配列(配列番号23)、不溶性として発現が認められたヒト転写因子NR4A1遺伝子の部分配列(配列番号24)、他にヒト転写因子であるNFIB及びPAX8遺伝子の部分配列(それぞれ配列番号25、26)を用いた。これらの4種類の目的タンパク質(配列番号23〜26に記載の塩基配列がコードするペプチド)は、Thioredoxin reductase(以下、TRXとする。)タグによって、可溶性タンパク質としての発現が認められている。
【0043】
これらの目的タンパク質をコードするDNAをPCRにて増幅し、図1に示すように、5’末端、3’末端にそれぞれ付加したBamHI、HindIIIサイトを用いて、作製したプラスミドベクターのATF2部分DNA1の下流にDNAリガーゼを用いて連結した。
配列の導入の成否は塩基配列解析により決定した。こうして得られた発現用プラスミドを大腸菌Rosetta-gamiTM(DE3)に形質転換し、形質転換体を作製した。
一方、比較例として、配列番号23〜26に記載のDNAを、pET21bのマルチクローニングサイトに挿入した発現用プラスミド、又は、TRXタグを付加し配列番号23及び24に記載のDNAを挿入した発現用プラスミドを有する形質転換体を、1.5mLのLB+Amp50培地にて9-12時間培養を行い(前培養)、この培養液200μLを10mLのLB+Amp50培地に添加し(2%植菌)、37℃で4時間培養を行なった(なお、pET21bを使用した場合、目的タンパク質は、pET21b由来のT7タグ(11残基)との融合タンパク質として発現される)。
培養開始から4時間後、イソプロピルβ-チオガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度0.3mMとなるように添加し発現誘導を行なった。IPTG添加後、さらに3時間培養し(37℃)培養を終了した(培養方法1)。
発現タンパク質の調製は大腸菌の培養液を5000rpm、4℃、10分の遠心分離で集菌し、滅菌水などで洗浄した。対照実験として外来タンパク質を発現しない形質転換体(Rosetta-gamiTM(DE3)/pET21b)を実験系に加えた。これら菌体を菌体破砕用緩衝液(8M尿素、100mMリン酸二水素ナトリウム、10mMトリス塩酸 (pH 8.0))500μLに懸濁し、1時間振とう撹拌することで全タンパク質を抽出した。必要に応じて超音波破砕機による菌体破砕を実施した。その後、懸濁液を15000rpm、4℃、15分の遠心分離にて溶液部分と残渣部分に分け、溶液部分のタンパク質濃度を算出し5μg/レーンの条件でSDS-PAGEを実施した(DRC社 Perfect NT Gel 15-25%、泳動条件500V、50mA、60min)。
その結果、ATF2部分DNA1を付加した場合は、すべての目的タンパク質の発現が観察された(図2)。2種の部分配列においてTRXタグの付加時と同等ないしそれ以上の結果がみられ、本発明に係るベクターの有効性が示された。T7タグを付加した場合、目的タンパク質の発現が観察されたもの(レーン1,9)もあったが、観察されないもの(レーン4,7)もあった。
【0044】
図2の各レーンの矢印が示すタンパク質を表1に示す。
【表1】

【実施例3】
【0045】
(プラスミドベクターの構築及びタンパク質発現の確認)
ATF2の部分配列内に含まれるエピトープ配列を参考にデザインしたATF2部分ペプチド1〜6について、目的タンパク質の発現への影響について検討した。
対照としては、TRXタグを用いた。
検討にあたり、ATF2部分DNA又はTRXタグの下流には、上記したNR4A1の部分DNA配列を融合した。それぞれに調製した発現用プラスミドを用いて大腸菌Rosetta-gamiTM(DE3)の形質転換体を得た。各融合タンパク質の発現確認は培養方法1に従い、SDS-PAGEによって検出を行なった。その結果、すべてにおいて発現の促進が観察された(図3)。その中でATF部分ペプチド2を発現するベクター(pBMR)を以下の実験に用いた。
【0046】
図3の各レーンの矢印が示すタンパク質を表2に示す。
【表2】

【実施例4】
【0047】
(タンパク質発現の確認)
発現検討
先に検討したATF2部分ペプチド2を用いて、種々のペプチド配列(図4下表に示すペプチドをコードするDNAを配列番号27乃至36及び40に示す)に対する発現を評価した。方法は培養方法1とSDS-PAGEを用いた。
結果を実施例2の結果とともに(図4)にまとめた。鎖長や等電点の違い、また由来種に左右されず発現が確認され、従来のタグ(TRX)で可溶化できなかった目的タンパク質も可溶化できる場合があることがわかった。
【実施例5】
【0048】
(発現タンパク質に対する抗体認識の確認)
ATF2部分ペプチドに対してはこの配列を認識するモノクローナル抗体を取得している(寄託番号FERM P-21570として寄託された細胞株により産生されるモノクローナル抗体。以下、実施例において「抗ATF2抗体」というときはこの抗体を指す。)。そこで実施例3記載の6種類のATF2部分ペプチド又はTRXタグの下流にNR4A1の配列を融合し、融合タンパク質の調製、発現させた融合タンパク質に対しウェスタンブロッティングによる検出を試みた。
【0049】
方法は以下のように行なった。
(融合タンパク質の調製)
湿菌体1gを実施例2に記載の菌体破砕用緩衝液に懸濁し、60分間振とうすることで破砕した。遠心分離(48300G、4℃、15分)にて残渣を取り除き、上清を得た。その上清を融合タンパク質に付加した精製タグを介してニッケルキレート樹脂に吸着させ、その後、酸性pHにより溶出させた。得られた溶出画分は1.75M尿素を含むリン酸緩衝生理食塩水にて透析をし、サンプルとした。
(ウェスタンブロッティング)
各融合タンパク質を40-500ng/レーンとなるように濃度を調整しSDS-PAGEを実施した。メタノールで活性化したPVDFメンブレンをTransfer buffer(4.79mM Tris、3.86mMグリシン、0.128mM SDS)に10分間振とうしながら浸したものを用い、BIORAD社のTRANS-BLOT SD SEMI-DRY TRANSFER CELLにて14V、最高アンペア、120分でPVDFメンブレンへの転写を行なった。
転写したPVDFメンブレンをTBS-T(2.48mM Tris-HCl、137mM 塩化ナトリウム、0.27mM 塩化カリウム、0.05%Tween20 (pH7.4))で10分間振とうして平衡化し5%のスキムミルクを含むTBS-Tでブロッキング(30分〜1時間)した。
その後、PVDFをTBS-Tで十分に洗浄し、サンプラテック社のスクリーナブロッターミニ56を用いて、抗ATF2抗体(バイオマトリックス研究所)と抗NR4A1抗体(バイオマトリックス研究所)をそれぞれ1μg/mLの濃度に調整し、レーン1から12までの奇数レーン及び13から17には抗ATF2抗体を、レーン1から12までの偶数レーン及び18から22には抗NR4A1抗体を、それぞれ1次抗体として反応させた(37℃で1時間)。反応後、2次抗体として15000倍に希釈したHRP標識したanti-mouse IgG1, IgG2a, IgG2b (いずれもBETHYL社)の等量混合液をブロッキングしながら30分作用させた。検出にはミリポア社のImmobilon TM western chemiluminescent HRP substrateで発色させ、富士フイルム社のLAS3000を用いて検出を行なった。
【0050】
ウェスタンブロッティングの結果、レーン7(15),9(14),16,17において抗ATF2抗体を用いた明瞭な検出シグナルが得られた(図5)。一方でレーン3,5において抗検出シグナルが得られなかった。これらのことから、抗ATF2抗体の抗原認識部位は用いたATF2部分配列の29-50領域にあることが考えられた。
【0051】
図5の各レーンのタンパク質を表3に示す。
【表3】

【実施例6】
【0052】
(ATF2部分ペプチドと目的タンパク質との融合タンパク質の免疫沈降−ウェスタンブロッティングによる検出)
GEヘルスケア社などで販売されているプロテインGセファロース担体30μLに対し、100μg/mLに調整した抗ATF2抗体溶液を3μL混合し、4℃で1時間撹拌しながら反応させた。その後、遠心分離と上清除去により担体をTBS-Tにより洗浄した。このようにして得られた担体に対して実施例4記載のATF2部分ペプチド1、2、5、6又はTRXタグの下流にNR4A1を融合し、濃度を100μg/mLに調整したタンパク質溶液を添加し、それぞれ溶液量をTBS-Tを用いて1mLとして4℃で1時間撹拌しながら反応させた。
反応後、遠心分離と上清除去により担体を洗浄し、30μLのSDS-PAGE用サンプル調製溶液に懸濁し95℃で10分間加熱処理した。加熱後、遠心分離で担体を沈殿させ、上清を試料としSDS-PAGEを実施した(DRC社 Perfect NT Gel 15-25%、泳動条件500V、50mA、60min)。ウェスタンブロッティングについては実施例4記載の方法に準拠した。抗ATF2抗体により検出を実施した結果、図6に示したように、レーン2,3,4,5において使用した抗原由来のシグナルが得られた。このことからATF2部分ペプチド1、2、5及び6に含まれるエピトープ部位を認識し免疫沈降が生じたことが確認された。
【0053】
図6の各レーンのタンパク質を表4に示す。
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るベクターへの目的タンパク質の挿入を示す説明図である。
【図2】本発明の融合タンパク質発現ベクターによるヒト転写因子MTA2、NR4A1、NFIB及びPAX8の発現を検討したSDS-PAGE分析結果を示した図である(実施例2)。
【図3】種々のATF2部分DNAを含む発現ベクターによるヒト転写因子NR4A1の発現を検討したSDS-PAGE分析結果を示した図である(実施例3)。
【図4】ATF2部分DNA1及びATF2部分DNA2を含む発現ベクターによる種々の目的タンパク質の発現を検討した結果を示した図である(実施例2及び実施例4)。
【図5】種々のATF2部分DNAを含む発現ベクターによるヒト転写因子NR4A1の発現を検討したウェスタンブロッティング分析結果を示した図である(実施例5)。
【図6】種々のATF2部分DNAを含む発現ベクターによるヒト転写因子NR4A1の発現を検討した免疫沈降-ウェスタンブロッティング分析結果を示した図である(実施例6)。
【図7】ATF2部分ペプチド1〜6の関係を示した図である。
【配列表フリーテキスト】
【0055】
配列番号1は、ATF2部分DNA1である。
配列番号2は、ATF2部分DNA2である。
配列番号3は、ATF2部分DNA3である。
配列番号4は、ATF2部分DNA4である。
配列番号5は、ATF2部分DNA5である。
配列番号6は、ATF2部分DNA6である。
配列番号7は、ATF2部分ペプチド1である。
配列番号8は、ATF2部分ペプチド2である。
配列番号9は、ATF2部分ペプチド3である。
配列番号10は、ATF2部分ペプチド4である。
配列番号11は、ATF2部分ペプチド5である。
配列番号12は、ATF2部分ペプチド6である。
配列番号13は、リンカーペプチドをコードするDNAである。
配列番号14は、リンカーペプチドをコードするDNAである。
配列番号15は、精製タグをコードするDNAである。
配列番号16は、精製タグをコードするDNAである。
配列番号17は、PCR用プライマーである。
配列番号18は、PCR用プライマーである。
配列番号19は、PCR用プライマーである。
配列番号20は、PCR用プライマーである。
配列番号21は、ATF2部分DNA1の5’末端にNdeIサイトを付加するためにデザインしたDNAである。
配列番号22は、ATF2部分DNA1の3'末端にリンカーペプチド(トロンビン消化部位)とBamHIサイトを付加するためにデザインしたDNAである。
配列番号23は、MTA2タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号24は、NR4A1タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号25は、NFIBタンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号26は、PAX8タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号27は、ZNF143タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号28は、KHSRPタンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号29は、EBNA2タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号30は、STAT3タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号31は、APEX1タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号32は、E2F2タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号33は、HMGA2タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号34は、NCOA6タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号35は、NRIP1タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号36は、EMG1タンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。
配列番号37は、ヒスチジンタグである。
配列番号38は、ATF2タンパク質の全長アミノ酸配列である。
配列番号39は、トロンビン消化部位をコードするDNAである。
配列番号40は、KINタンパク質の部分ペプチドをコードするDNAである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的タンパク質を発現させるための発現ベクターであって、
転写因子ATF2(Activating transcription factor 2)タンパク質の全部又は一部をコードするDNAと、
前記目的タンパク質が前記ATF2タンパク質の全部又は一部と融合タンパク質として発現されるように、目的タンパク質をコードするDNAを挿入するための挿入部位と、
を含む発現ベクター。
【請求項2】
前記目的タンパク質をコードするDNAを挿入することにより、該目的タンパク質と前記ATF2タンパク質の全部又は一部とが融合タンパク質として発現される、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
さらに、前記融合タンパク質において前記ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質とをつなぐリンカーペプチドをコードするDNAを含む、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記リンカーペプチドをコードするDNAが、配列番号13、14又は39に記載の塩基配列からなる、請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項5】
さらに、精製用タグタンパク質をコードするDNAを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項6】
前記精製用タグタンパク質をコードするDNAが、配列番号15又は16に記載の塩基配列からなる、請求項5に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNAが、配列番号1から6のいずれかに記載の塩基配列からなるDNAである、請求項1から6のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項8】
pBMR(寄託番号NITE P-522)として寄託された発現ベクター。
【請求項9】
さらに、前記目的タンパク質をコードするDNAを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターを導入して得られる形質転換体。
【請求項11】
配列番号1から6のいずれかに記載の塩基配列からなるDNA。
【請求項12】
配列番号7から12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリペプチドに結合する抗体。
【請求項14】
クローン番号ATF2-00158(寄託番号FERM P-21570)として寄託されたハイブリドーマ細胞株。
【請求項15】
請求項14に記載の細胞株により産生される請求項13に記載の抗体。
【請求項16】
次の(a)〜(c)の工程を含む目的タンパク質の製造方法。
(a)請求項10に記載の形質転換体を培地中で培養する工程
(b)工程(a)により培養物中に生産された融合タンパク質を培養物から採取する工程、及び
(c)工程(b)により採取された融合タンパク質を、ATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質とに切断する工程
【請求項17】
前記工程(b)において、前記ATF2タンパク質に対する抗体を用いたカラム又は免疫沈降によって、前記融合タンパク質の採取を行う、請求項16の記載の方法。
【請求項18】
次の(d)〜(f)の工程を含む目的タンパク質の製造方法。
(d)請求項10に記載の形質転換体を培地中で培養する工程
(e)工程(d)により培養物中に生産された融合タンパク質を、ATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質とに切断する工程、及び
(f)工程(e)により得られた目的タンパク質を精製する工程
【請求項19】
前記工程(f)において、前記工程(e)で得られたATF2タンパク質の全部又は一部と、目的タンパク質との混合物から、前記ATF2タンパク質に対する抗体を用いたカラム又は免疫沈降によって前記ATF2タンパク質の全部又は一部を除去することにより、前記目的タンパク質の精製を行う、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
次の(g)〜(h)の工程を含む融合タンパク質の製造方法。
(g)請求項10に記載の形質転換体を倍地中で培養する工程、及び
(h)工程(g)により培養物中に生産された融合タンパク質を培養物から採取する工程
【請求項21】
前記工程(h)において、前記ATF2タンパク質に対する抗体を用いたカラム又は免疫沈降によって、前記融合タンパク質の採取を行う、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が請求項13又は15に記載の抗体である、請求項17、19又は21に記載の方法。
【請求項23】
転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質との融合タンパク質の検出方法であって、請求項13又は15に記載の抗体を用いて、融合タンパク質に含まれる転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部を認識する工程を含む、方法。
【請求項24】
転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質との融合タンパク質の精製方法であって、請求項13又は15に記載の抗体を用いて、前記融合タンパク質に含まれる転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部を認識し、前記融合タンパク質を精製する工程を含む、融合タンパク質の精製方法。
【請求項25】
転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質とを含む融合タンパク質をコードするDNA。
【請求項26】
前記ATF2タンパク質の全部又は一部をコードするDNAと、前記目的タンパク質をコードするDNAとの間にリンカーDNAを含む、請求項25に記載のDNA。
【請求項27】
前記リンカーDNAが配列番号13、14又は39に記載の塩基配列からなる、請求項26に記載のDNA。
【請求項28】
前記目的タンパク質をコードするDNAのカルボキシ末端に精製用タグタンパク質をコードするDNAを含む、請求項25から27のいずれかに記載のDNA。
【請求項29】
前記精製用タグタンパク質をコードするDNAが配列番号15又は16に記載の塩基配列からなる、請求項28に記載のDNA。
【請求項30】
前記ATF2タンパク質の全部又は一部の配列が配列番号1から6のいずれかに記載の塩基配列からなる、請求項25から29のいずれか1項に記載のDNA。
【請求項31】
転写因子ATF2タンパク質の全部又は一部と目的タンパク質とを含む融合タンパク質。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−75090(P2010−75090A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246573(P2008−246573)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(503442709)株式会社 バイオマトリックス研究所 (11)
【Fターム(参考)】