説明

ターゲット供給装置

【課題】ターゲット物質を効率よく加熱し、融点以上の温度を維持する。
【解決手段】ターゲット供給装置は、ターゲット物質を内部に収容したリザーバと、リザーバの内部に配置されたヒータであって、リザーバの内部に収容されたターゲット物質を加熱して溶融させるヒータと、ヒータに電流を供給するヒータ電源と、リザーバの内部において溶融したターゲット物質を外部に出力するターゲット出力部と、を含んでいてもよい。リザーバの周囲を外部から遮蔽する遮蔽部材であって、ターゲット出力部から出力されたドロップレットが通過する貫通孔を有する遮蔽部材をさらに含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外(EUV)光を生成するために、レーザ光に照射されるターゲットを供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、たとえば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光を生成する極端紫外光生成装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflective optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
極端紫外光生成装置としては、ターゲット物質にレーザビームを照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)方式の装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(Discharge Produced Plasma)方式の装置と、軌道放射光を用いたSR(Synchrotron Radiation)方式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7122816号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係るターゲット供給装置は、ターゲット物質を内部に収容したリザーバと、リザーバの内部に配置されたヒータであってリザーバの内部に収容されたターゲット物質を加熱して溶融させるヒータと、ヒータに電流を供給するヒータ電源と、リザーバの内部において溶融したターゲット物質を外部に出力するターゲット出力部と、を含んでいても良い。
【0006】
また、本開示の他の観点に係るターゲット供給装置は、ターゲット物質を内部に収容したリザーバと、リザーバの外部に配置された赤外線ヒータであってリザーバの内部に収容されたターゲット物質を放射熱によって溶融させる赤外線ヒータと、赤外線ヒータに電流を供給するヒータ電源と、リザーバの内部において溶融したターゲット物質を外部に出力するターゲット出力部と、を含んでいても良い。
【0007】
また、本開示の他の観点に係るターゲット供給装置は、ターゲット物質を内部に収容したリザーバと、リザーバの外部に配置された誘導加熱ヒータであってリザーバの内部に収容されたターゲット物質を誘導加熱によって溶融させる誘導加熱ヒータと、誘導加熱ヒータに高周波電流を供給する高周波電源と、リザーバの内部において溶融したターゲット物質を外部に出力するターゲット出力部と、を含んでいても良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、LPP方式のEUV光生成装置の概略構成図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係るターゲット供給装置が適用されたEUV光生成装置を示す一部断面図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係るターゲット供給装置を示す一部断面図である。
【図4】図4は、第2の実施形態に係るターゲット供給装置を示す一部断面図である。
【図5】図5は、第3の実施形態に係るターゲット供給装置を示す一部断面図である。
【実施形態】
【0009】
内容
1.概要
2.用語の説明
3.EUV光生成装置の全体説明
3.1 構成
3.2 動作
4.ターゲット供給装置の実施形態
4.1 第1の実施形態
4.1.1 構成
4.1.2 動作
4.2 第2の実施形態
4.3 第3の実施形態
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.概要
本開示の各実施形態においては、EUV光生成装置においてターゲット物質として使用される金属を溶融させ、融点以上の温度を維持するために、リザーバの内部のターゲット物質を直接加熱する。リザーバを加熱することによってターゲット物質を加熱する場合に比べて、ターゲット物質を直接加熱することによって、ターゲット物質を効率よく加熱して溶融させ、融点以上の温度を維持することができる。
【0012】
2.用語の説明
本願において使用する用語を説明する。
「チャンバ」は、EUV光の生成が行われる空間を大気から隔絶するためのチャンバである。
「ドロップレット発生器」は、EUV光を生成するために用いられるスズ等のターゲット物質を液滴の状態でチャンバ内に供給する装置である。
「レーザシステム」は、ターゲット物質を励起してプラズマ化するためのレーザ光を発生するシステムである。レーザ光のエネルギーによってターゲット物質が励起されてプラズマ化される。
「EUV集光ミラー」は、プラズマ化されたターゲット物質から放射されるEUV光を集光反射して、チャンバ外に出力するミラーである。
【0013】
3.EUV光生成装置の全体説明
3.1 構成
図1に、例示的なLPP方式のEUV光生成装置(極端紫外光生成装置)1の概略構成を示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザシステム3と共に用いてもよい(EUV光生成装置1及びレーザシステム3を含むシステムを、以下、EUV光生成システム(極端紫外光生成システム)11と称する)。図1に示し、かつ以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置1は、チャンバ2を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能であってもよい。EUV光生成装置1は、ターゲット供給装置(例えばドロップレット発生器26)を更に含んでもよい。ターゲット供給装置は、例えばチャンバ2の壁に取り付けられていてもよい。ターゲット供給装置が供給するターゲットの材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又はそれらのうちのいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0014】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられていてもよい。その貫通孔をレーザシステム3によって発生したパルスレーザ光32が通過してもよい。チャンバ2には、レーザシステム3によって発生したパルスレーザ光32が透過する少なくとも1つのウィンドウ21が設けられていてもよい。チャンバ2の内部には例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1の焦点、及び第2の焦点を有する。EUV集光ミラー23の表面には例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されていてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマ発生位置(プラズマ生成領域25)又はその近傍に位置し、その第2の焦点が露光装置の仕様によって規定される所望の集光位置(中間焦点(IF)292)に位置するように配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には、パルスレーザ光33が通過することができる貫通孔24が設けられていてもよい。
【0015】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御システム5を含むことができる。また、EUV光生成装置1は、ターゲットセンサ4を含むことができる。ターゲットセンサ4は、ドロップレットターゲット27の存在、軌道、位置の少なくとも1つを検出してもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有していてもよい。
【0016】
更に、EUV光生成装置1は、チャンバ2内部と露光装置6内部とを連通する接続部29を含んでもよい。接続部29内部には、アパーチャ(aperture)が形成された壁291を設けてもよい。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置してもよい。
【0017】
更に、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御装置34、レーザ光集光ミラー22、ドロップレットターゲット27を回収するターゲット回収部28などを含んでもよい。レーザ光進行方向制御装置34は、パルスレーザ光の進行方向を制御するために、パルスレーザ光の進行方向を規定する光学素子と、この光学素子の位置または姿勢を調整するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0018】
3.2 動作
図1を参照すると、レーザシステム3から出射されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御装置34を経てパルスレーザ光32としてウィンドウ21を透過してチャンバ2内に入射してもよい。パルスレーザ光32は、少なくとも1つのレーザビーム経路に沿ってチャンバ2内に進み、レーザ光集光ミラー22で反射して、パルスレーザ光33として少なくとも1つのドロップレットターゲット27に照射されてもよい。
【0019】
ドロップレット発生器26は、ドロップレットターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出射してもよい。ドロップレットターゲット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスが照射される。パルスレーザ光が照射されたドロップレットターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマからEUV光251が生成される。EUV光251は、EUV集光ミラー23によって反射されるとともに集光されてもよい。EUV集光ミラー23に反射されたEUV光252は、中間焦点292を通って露光装置6に出力されてもよい。なお、1つのドロップレットターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0020】
EUV光生成制御システム5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括してもよい。EUV光生成制御システム5はターゲットセンサ4によって撮像されたドロップレットターゲット27のイメージデータ等を処理してもよい。EUV光生成制御システム5は、例えば、ドロップレットターゲット27を出力するタイミングの制御およびドロップレットターゲット27の出力方向の制御の内の少なくとも1つを行ってもよい。EUV光生成制御システム5は、例えば、レーザシステム3のレーザ発振タイミングの制御、パルスレーザ光32の進行方向の制御、及びパルスレーザ光33の集光位置の制御の内の少なくとも1つを行ってもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御を追加することもできる。
【0021】
4.ターゲット供給装置の実施形態
4.1 第1の実施形態
4.1.1 構成
図2は、第1の実施形態に係るターゲット供給装置が適用されたEUV光生成装置を示す一部断面図である。図2に示すように、チャンバ2の内部には、レーザ光集光光学系22aと、EUV集光ミラー23と、ターゲット回収部28と、EUV集光ミラーホルダ41と、プレート42及び43と、レーザダンパ44と、レーザダンパ支持部材45とが設けられてもよい。
【0022】
チャンバ2には、プレート42が固定され、プレート42には、プレート43が固定されてもよい。EUV集光ミラー23は、EUV集光ミラーホルダ41を介してプレート42に固定されてもよい。
【0023】
レーザ光集光光学系22aは、軸外放物面ミラー221と、平面ミラー222と、それらのミラーのホルダとを含んでもよい。軸外放物面ミラー221及び平面ミラー222は、パルスレーザ光がプラズマ生成領域25に集光するように、それぞれのホルダを介してプレート43に固定されてもよい。
レーザダンパ44は、レーザダンパ支持部材45を介してチャンバ2に固定され、パルスレーザ光の光路上に設置されてもよい。ターゲット回収部28は、ドロップレットターゲット27の軌道上において、プラズマ生成領域25よりもドロップレット進行方向下流側(図中下側)の位置に設置されてもよい。
【0024】
チャンバ2には、ウィンドウ21と、ドロップレット発生器(ターゲット供給装置)26とが取り付けられてもよい。ドロップレット発生器26の詳細については後で説明する。ターゲット物質としては、加熱されて溶融した金属等が用いられてもよいが、各実施形態においては、融点が232℃であるスズ(Sn)が用いられる場合を一例として説明する。
【0025】
チャンバ2の外部には、ビームデリバリーシステム34aと、EUV光生成制御システム5とが設けられてもよい。ビームデリバリーシステム34aは、高反射ミラー341及び342と、それらのミラーのホルダと、筐体とを含んでもよい。EUV光生成制御システム5は、EUV光生成制御装置51と、ドロップレット制御装置52と、圧力調節器53と、パルス電圧生成器55とを含んでもよい。
【0026】
次に、ドロップレット発生器26の構成を詳細に説明する。
図3は、第1の実施形態に係るターゲット供給装置を示す一部断面図である。図3に示すように、ドロップレット発生器26は、リザーバ61と、ノズル62と、電極63と、投げ込みヒータ64aと、電気絶縁部材65と、引出電極66とを含んでもよい。リザーバ61及びノズル62は、一体的に形成されてもよいし、別個に形成されてもよい。このドロップレット発生器26は、オンデマンドでドロップレットターゲット27を生成する装置であってもよい。なお、ターゲット供給装置は、ドロップレット発生器26に限られず、液体状のターゲット物質を連続噴流(continuous jet)の状態で出力するものでもよい。
【0027】
リザーバ61は、合成石英(SiO)又はアルミナ(AlO)等の電気絶縁体によって構成されてもよい。また、リザーバ61は、モリブデン(Mo)金属等の導電体、又はシリコンカーバイト(SiC)等の半導体で構成されてもよい。ノズル62も、同様に、合成石英又はアルミナ等の電気絶縁体、モリブデン金属等の導電体、又はシリコンカーバイト等の半導体で構成されてもよい。リザーバ61は、スズ等のターゲット物質を貯蔵している。
【0028】
リザーバ61内には、投げ込みヒータ64aがターゲット物質とともに収容されていてもよい。投げ込みヒータ64aは、電流によってジュール熱を発生する抵抗素子を含んでも良い。投げ込みヒータ64aがターゲット物質を加熱することにより、ターゲット物質が溶融し、その溶融状態が維持されるようにしてもよい。
また、ドロップレット発生器26は、リザーバ61内のターゲット物質の温度を検出するための温度センサ72aを含んでもよい。投げ込みヒータ64a及び温度センサ72aは、ターゲット物質との反応性が低い物質、例えばシリコンカーバイトによってコーティングされていてもよい。
【0029】
ドロップレット発生器26のノズル62付近には、さらに、フレキシブルヒータ64b及び温度センサ72bが設けられていてもよい。フレキシブルヒータ64b及び温度センサ72bは、リザーバ61の外部に設けられていてもよい。フレキシブルヒータ64bはノズル62付近の形状に密着できるものが好ましい。フレキシブルヒータ64bに換えて、ノズル62付近の形状に合わせて、小型のヒータを多数配置してもよい。あるいは、ノズル62付近の形状を既存のヒータが密着しやすい構造としてもよい。
【0030】
ノズル62には、ドロップレットターゲット27を出力するための貫通孔(オリフィス)が形成されている。ノズル62を介して、チャンバ2内のプラズマ生成領域25に向けてドロップレットターゲット27を出力してもよい。
【0031】
ノズル62には、引出電極66を保持する電気絶縁部材65が取り付けられてもよい。電気絶縁部材65は、ノズル62と引出電極66との間を電気的に絶縁する。引出電極66は、ノズル62に形成されたオリフィスから液体状のターゲット物質に静電気力を作用させるために、ノズル62の出口側の面に対向して配置されてもよい。引出電極66には、ドロップレットターゲット27を通過させるために、たとえば中心部に貫通孔67が形成されている。
【0032】
圧力調節器53は、必要な場合に、図示しない不活性ガスボンベから供給される不活性ガスの圧力を調整して、液体状のターゲット物質をノズル62の先端まで押し出すようにしてもよい。ドロップレット制御装置52は、EUV光生成制御装置51から指示されるタイミングでドロップレットターゲット27が生成されるように、圧力調節器53及びパルス電圧生成器55を制御してもよい。
【0033】
パルス電圧生成器55の一方の出力端子に接続された配線は、液体状のターゲット物質に接触している電極63に接続されている。また、パルス電圧生成器55の他方の出力端子に接続された配線は、引出電極66に接続されている。パルス電圧生成器55は、ドロップレット制御装置52の制御の下で、液体状のターゲット物質を引き出すためのパルス信号を生成する。
【0034】
例えば、パルス電圧生成器55は、基準電位V2(たとえば0V)と基準電位と異なる所定の電位V1との間でパルス状に変化するパルス信号を生成してもよい。パルス電圧生成器55は、このパルス信号を、電極63を介して液体状のターゲット物質に印加してもよい。また、パルス電圧生成器55は、電位V2を引出電極66に印加してもよい。
【0035】
これにより、液体状のターゲット物質と引出電極66との間に、パルス電圧(V1−V2)が印加される。あるいは、ノズル62が金属製である場合には、パルス電圧生成器55は、ノズル62と引出電極66と間にパルス電圧(V1−V2)を印加してもよい。この場合、パルス電圧生成器55の一方の出力端子に接続された配線は電極63に代えてノズル62に接続されてもよい。
【0036】
ドロップレット発生器26のリザーバ61、ノズル62、電気絶縁部材65、及び、引出電極66は、カバー81と、カバー81に取り付けられた蓋86とによって構成される遮蔽容器に封入されてもよい。カバー81には、ノズル62から出力されたドロップレットターゲット27を通過させるための貫通孔83が形成されている。カバー81は、プラズマ生成領域25において生成されるプラズマから放出される荷電粒子が、電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物に到達するのを抑制する。
【0037】
ここで、カバー81は、導電性を有する材料(例えば、金属材料)を含むことにより導電性を有し、ワイヤ等の接続部材によって、又は、直接的に、チャンバ2の導電性構造部材(例えば、外壁)に電気的に接続されている。チャンバ2の導電性構造部材は、パルス電圧生成器55の基準電位(0V)に電気的に接続されており、さらに、接地されるようにしてもよい。
リザーバ61は、蓋86を介してカバー81に取り付けられている。蓋86の材料としては、例えば、ムライト等の電気絶縁材料を用いることができる。
【0038】
引出電極66の配線は、蓋86に設けられた中継端子90aを介して、パルス電圧生成器55に接続されてもよい。
また、液体状のターゲット物質にパルス信号を印加する電極63の配線は、蓋86に設けられた中継端子90bを介して、パルス電圧生成器55に接続されてもよい。投げ込みヒータ64aの配線は、蓋86に設けられた中継端子90cを介して、ヒータ電源58aに接続されてもよい。温度センサ72aの配線は、蓋86に設けられた中継端子90dを介して、温度制御器59aに接続されてもよい。
また、フレキシブルヒータ64b及び温度センサ72bの配線は、蓋86に設けられた中継端子90eを介して、ヒータ電源58b及び温度制御器59bにそれぞれ接続されてもよい。
【0039】
カバー81の内面には、リザーバ61からの熱放射を反射するための反射部82が形成されている。反射部82は赤外線に対して反射率の高い材料によるコーティングでもよい。
また、カバー81とリザーバ61との間の空間は、貫通孔83を介してチャンバ2内の空間と繋がっており、チャンバ2内と同様の低圧状態に維持されている。
【0040】
4.1.2 動作
ヒータ電源58a及び58bが投げ込みヒータ64a及びフレキシブルヒータ64bにそれぞれ電流を流すことによって、投げ込みヒータ64a及びフレキシブルヒータ64bにおいてジュール熱が発生する。このジュール熱がターゲット物質に熱伝導することにより、ターゲット物質が加熱される。温度制御器59a及び59bは、温度センサ72a及び72bからそれぞれ出力される検出信号を受信し、ヒータ電源58a及び58bが投げ込みヒータ64a及びフレキシブルヒータ64bに流す電流値をそれぞれ制御する。リザーバ61内のターゲット物質の温度は、ターゲット物質の融点以上に制御される。
【0041】
第1の実施形態によれば、リザーバ61内に投げ込みヒータ64aが配置されるので、投げ込みヒータ64aによってターゲット物質が直接加熱される。従って、リザーバ61を加熱することによってターゲット物質を間接的に加熱する場合に比べて、効率良くターゲット物質を加熱することができる。
【0042】
また、カバー81の内面に赤外線の反射率の高い反射部82がコーティングされているので、リザーバ61の内部において加熱されたターゲット物質の熱エネルギーが、熱放射によってカバー81の外部に放出されることが抑制される。
また、カバー81とリザーバ61との間の空間が、チャンバ2内と同様の低圧状態に維持されている。従って、リザーバ61内のターゲット物質の熱エネルギーが、カバー81とリザーバ61との間の空間のガスを介した熱伝導によってカバー81の外部に放出されることも抑制される。
従って、第1の実施形態によれば、ターゲット物質を効率よく加熱して、溶融状態を維持することができる。
【0043】
図2を再び参照し、EUV光生成制御装置51は、ドロップレット制御装置52にドロップレット出力信号を出力し、レーザシステム3にパルスレーザ光出力信号を出力してもよい。
ドロップレット制御装置52は、ドロップレット出力信号に従って、パルス電圧生成器55にドロップレット生成信号を出力する。パルス電圧生成器55は、ドロップレット生成信号に従って、パルス状の電圧をリザーバ61内のターゲット物質に印加する。これによって、リザーバ61内のターゲット物質と引出電極66との間に静電気力が発生し、ノズル62の先端部からターゲット物質が引き出されて、帯電したドロップレットターゲット27が生成される。ドロップレットターゲット27は、ドロップレット発生器26からプラズマ生成領域25に向けて出力される。
【0044】
レーザシステム3は、パルスレーザ光出力信号に従って、パルスレーザ光を出力する。レーザシステム3から出力されるパルスレーザ光は、ビームデリバリーシステム34aの高反射ミラー341及び342によって反射されて、レーザ光集光光学系22aに入射してもよい。レーザ光集光光学系22aに入射したパルスレーザ光は、軸外放物面ミラー221及び平面ミラー222によって反射されて、プラズマ生成領域25に到達したドロップレットターゲット27に集光されてもよい。
【0045】
このように、ドロップレットターゲット27がプラズマ生成領域25に到達するタイミングで、パルスレーザ光がドロップレットターゲット27に照射される。これにより、ターゲット物質がプラズマ化して、このプラズマからEUV光が放射される。放射されたEUV光は、EUV集光ミラー23によってIF(中間集光点)292に集光されて、露光装置に入射してもよい。
【0046】
4.2 第2の実施形態
図4は、第2の実施形態に係るターゲット供給装置を示す一部断面図である。
第2の実施形態は、リザーバ61内に投げ込みヒータが収容される代わりに、リザーバ61とカバー81との間の空間に、赤外線ヒータ64cが配置されている点で第1の実施形態と異なる。
【0047】
赤外線ヒータ64cは、例えばハロゲンランプによって構成されていてもよい。赤外線ヒータ64cの配線は、蓋86に設けられた中継端子90cを介して、ヒータ電源58cに接続されてもよい。
【0048】
蓋86には、放射温度計72cが固定されていてもよい。高温のターゲット物質は、その材料及び温度に応じた波長及び強度を有する赤外線又は可視光線を放射している。放射温度計72cは、リザーバ61内部のターゲット物質が発生する赤外線又は可視光線を検出し、その波長及び強度に応じた検出信号を出力する。放射温度計72cは、温度を測定する対象物に向けて開口した光ファイバーを含むファイバー式の温度計であってもよい。放射温度計72cの配線は、温度制御器59cに接続されてもよい。
【0049】
赤外線ヒータ64cは、ヒータ電源58cから電力を供給されて赤外線を発生する。温度制御器59cは、放射温度計72cから出力される検出信号を受信し、ヒータ電源58cが赤外線ヒータ64cに流す電流を制御する。リザーバ61は、赤外線の透過率が高くターゲット物質との反応性が低い物質、例えば石英ガラス(SiO)等によって構成されることが望ましい。
【0050】
第2の実施形態によれば、リザーバ61とカバー81との間の空間に、赤外線ヒータ64cが配置されている。従って、リザーバ61を透過する赤外線によってリザーバ61内のターゲット物質を直接加熱することができる。また、赤外線ヒータ64cは、リザーバ61内のターゲット物質には直接触れないので、ターゲット物質との反応性の低い材料を赤外線ヒータ64cにコーティングしなくてもよい。
【0051】
また、カバー81の内面に赤外線の反射率の高い反射部82をコーティングすることにより、リザーバ61内のターゲット物質から放射される赤外線だけでなく、赤外線ヒータ64cから放射される赤外線も反射することができる。従って、ターゲット物質を効率よく加熱して、溶融状態を維持することができる。
【0052】
また、第2の実施形態において、放射温度計72cは、ターゲット物質に接触することなくターゲット物質の温度を検出することができる。従って、放射温度計72cは、ターゲット物質との反応性の低い材料でコーティングしなくてもよい。
その他の点は第1の実施形態と同様である。
【0053】
4.3 第3の実施形態
図5は、第3の実施形態に係るターゲット供給装置を示す一部断面図である。
第3の実施形態は、リザーバ61内に投げ込みヒータが収容される代わりに、リザーバ61とカバー81との間の空間に、誘導加熱ヒータを構成するコイル64dが配置されている点で第1の実施形態と異なる。
【0054】
コイル64dは、リザーバ61の周囲に巻き付けられた導電体によって構成されてもよい。コイル64dの両端に接続された配線は、蓋86に設けられた中継端子90cを介して、高周波加熱用電源58dに接続されてもよい。
コイル64dは、高周波加熱用電源58dから高周波電流を供給される。この高周波電流は、周期的に変化する磁界をコイル64dの内側に発生させる。この磁界によって、ターゲット物質を構成する金属において渦電流が発生し、この渦電流によってターゲット物質においてジュール熱が発生する。
【0055】
蓋86には、放射温度計72dが固定されていてもよい。放射温度計72dは、リザーバ61内部のターゲット物質が発する赤外線又は可視光線を検出し、その波長及び強度に応じた検出信号を出力する。放射温度計72dは、温度を測定する対象物に向けて開口した光ファイバーを含むファイバー式の温度計であってもよい。放射温度計72dの配線は、温度制御器59dに接続されてもよい。
温度制御器59dは、放射温度計72dから出力される検出信号を受信し、高周波加熱用電源58dがコイル64dに流す高周波電流の電流値を制御する。
【0056】
第3の実施形態によれば、リザーバ61とカバー81との間の空間に、誘導加熱ヒータのコイル64dが配置されている。従って、誘導加熱によってリザーバ61内のターゲット物質を直接加熱することができる。また、コイル64dは、リザーバ61内のターゲット物質には直接触れないので、ターゲット物質との反応性の低い材料をコイル64dにコーティングしなくてもよい。
【0057】
また、第3の実施形態において、放射温度計72dは、ターゲット物質に接触することなくターゲット物質の温度を検出することができる。従って、放射温度計72dは、ターゲット物質との反応性の低い材料でコーティングしなくてもよい。
その他の点は第1の実施形態と同様である。
【0058】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0059】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0060】
1…EUV光生成装置、2…チャンバ、3…レーザシステム、4…ターゲットセンサ、5…EUV光生成制御システム、6…露光装置、11…EUV光生成システム、21…ウィンドウ、22…レーザ光集光ミラー、22a…レーザ光集光光学系、23…EUV集光ミラー、24…貫通孔、25…プラズマ生成領域、26…ドロップレット発生器、27…ドロップレットターゲット、28…ターゲット回収部、29…接続部、31、32、33…パルスレーザ光、34…レーザ光進行方向制御装置、34a…ビームデリバリーシステム、41…EUV集光ミラーホルダ、42、43…プレート、44…レーザダンパ、45…レーザダンパ支持部材、51…EUV光生成制御装置、52…ドロップレット制御装置、53…圧力調節器、55…パルス電圧生成器、58a、58b、58c…ヒータ電源、58d…高周波加熱用電源、59a、59b、59c、59d…温度制御器、61…リザーバ、62…ノズル、63…電極、64a…投げ込みヒータ、64b…フレキシブルヒータ、64c…赤外線ヒータ、64d…コイル、65…電気絶縁部材、66…引出電極、67…貫通孔、72a、72b…温度センサ、72c、72d…放射温度計、81…カバー、82…反射部、83…貫通孔、86…蓋、90a、90b、90c、90d、90e…中継端子、221…軸外放物面ミラー、222…平面ミラー、251…EUV光、252…EUV光、291…壁、292…中間焦点、341、342…高反射ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質を内部に収容したリザーバと、
前記リザーバの内部に配置されたヒータであって、前記リザーバの内部に収容されたターゲット物質を加熱して溶融させる前記ヒータと、
前記ヒータに電流を供給するヒータ電源と、
前記リザーバの内部において溶融したターゲット物質を外部に出力するターゲット出力部と、
を含むターゲット供給装置。
【請求項2】
前記ヒータは電流によってジュール熱を発生する抵抗素子を含む、請求項1記載のターゲット供給装置。
【請求項3】
前記リザーバの周囲を外部から遮蔽する遮蔽部材であって、前記ターゲット出力部から出力されたドロップレットが通過する貫通孔を有する前記遮蔽部材をさらに含む、請求項1記載のターゲット供給装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材の内面に、前記リザーバよりも赤外線の反射率が高い反射部が形成されている、請求項3記載のターゲット供給装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材の内部の圧力は、大気に対して低圧である、請求項3記載のターゲット供給装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材の内部は、前記貫通孔を介して、大気に対して低圧であるチャンバ内に連通している、請求項3記載のターゲット供給装置。
【請求項7】
ターゲット物質を内部に収容したリザーバと、
前記リザーバの外部に配置された赤外線ヒータであって、前記リザーバの内部に収容されたターゲット物質を放射熱によって溶融させる前記赤外線ヒータと、
前記赤外線ヒータに電流を供給するヒータ電源と、
前記リザーバの内部において溶融したターゲット物質を外部に出力するターゲット出力部と、
を含むターゲット供給装置。
【請求項8】
前記リザーバの赤外線の透過率は、前記ターゲット物質の赤外線の透過率より高い、請求項7記載のターゲット供給装置。
【請求項9】
ターゲット物質を内部に収容したリザーバと、
前記リザーバの外部に配置された誘導加熱ヒータであって、前記リザーバの内部に収容されたターゲット物質を誘導加熱によって溶融させる前記誘導加熱ヒータと、
前記誘導加熱ヒータに高周波電流を供給する高周波電源と、
前記リザーバの内部において溶融したターゲット物質を外部に出力するターゲット出力部と、
を含むターゲット供給装置。
【請求項10】
前記誘導加熱ヒータは、前記リザーバの周囲に巻き付けられたコイルを含む、請求項9記載のターゲット供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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