説明

ターゲット材料

【課題】ガンマ線を発生させるターゲット材料としての炭素を高密着性を持って均一に形成すること。
【解決手段】少なくとも一対の電極(13,14)および前記電極(13,14)間に配置された絶縁部材(18)により形成された空間(19)に、ターゲット基板(13)を配置し且つ表面層形成用粉体としてのグラファイト化された炭素粒子を収容して、前記電極(13,14)間に前記表面層形成用粉体を往復動させる電圧を印加することにより、前記ターゲット基板(13)表面に炭素の表面層が形成されたターゲット材(3)を製造する場合に、アモルファスの炭素粒子を不活性ガス雰囲気中で2500K以上の高温に加熱することでグラファイト化された炭素粒子により構成されたことを特徴とするガンマ線発生用のターゲット材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素により構成されたターゲット材を製造するターゲット材製造方法、前記ターゲット材を有するガンマ線源装置およびターゲット材を製造するターゲット材製造装置に関する。
本発明により作成されたターゲット材は、イオンビーム等の荷電粒子線を照射して、ガンマ線を発生させるターゲット材として使用可能であり、物理、半導体、電子工学、化学、生物等の基礎科学実験分野、とりわけ、宇宙天体核物理学や元素合成の分野におけるガンマ線発生用のターゲット材に好適に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用の放射線撮影装置や工業用の非破壊検査装置、あるいは、X線顕微分析装置等において、ガンマ線(X線)を使用するガンマ線源装置が使用されている。前記ガンマ線源装置では、金属ターゲット(標的部材)に電子や陽電子等の荷電粒子を照射した場合に発生する制動放射のガンマ線(X線)を使用することが知られている。前記ガンマ線は、使用されるターゲット材により出力される波長(エネルギー)が異なる。
このようなガンマ線源装置として、特許文献1(特開2000−314800号公報)記載の技術が従来公知である。
【0003】
特許文献1(特開2000−314800号)には、ターゲット材料として、原子番号1〜100の中から適当なものが選ばれ、金属、合成樹脂でもよく、常温で液体もしくは気体であって常温未満の低温度で凝固した物質を使用してもよいことが記載されている。
【0004】
この他にも、加速器の荷電粒子ビームを用いる星の起源、進化や宇宙天体核物理学や元素合成等を研究する科学実験において、濃縮同位体炭素12と炭素13のターゲットが必要不可欠である。これらのターゲットを、宇宙天体核物理学等の超精密実験で使用する場合は、次の要求(1)〜(3)を満足する必要がある。
(1)ターゲットの材料が、より高純度であること。
(2)ターゲットの膜が、必要な厚さで一様に作成されていること。
(3)大強度ビーム電流と長時間照射によって蒸発、剥離、破損のなく、安定であること。
【0005】
【特許文献1】特開2000−314800号公報(「0029」)
【特許文献2】特開平6−158350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(従来技術の問題点)
従来、基板上にターゲット材の層が被膜されたターゲット材を作製する方法として、金属メッキ法や、真空蒸着法、スプレー塗装法が一般的である。しかし、金属メッキ法では、被膜可能な材料に制約があるとともに、メッキの廃液処理や大電力が必要になるため、設備が大規模化する問題がある。
また、真空蒸着法では、ターゲット材を加熱して蒸着させる方法であるが、蒸着された物質が活性が高く、残留ガス等と反応して不純物が含まれる問題があったり、蒸着された膜の付着力が弱いという問題もある。また、点蒸発源であるため、一様性が悪いという問題もある。
さらに、スプレー塗装法では、均一、緻密に成膜することが難しく、密着性も弱いという問題もある。
【0007】
また、貴重で高価な炭素同位体は、メタンガスまたはアモルファス粉末(フレーク状の破片)の形で入手可能であり、炭素フォイルは通常、メタンガスを熱分解する熱分解法で作成される。しかしながら、熱分解法で作成される炭素フォイルの膜厚は、100μg/cm〜2000μg/cmと幅があり、一様に形成することが困難であるという問題がある。また、熱分解法で作成される炭素フォイルは、ビーム照射に対してフォイルの発生熱(約1000K程度)により短時間で破損する問題がある。
この熱による破損を緩和するために熱伝導率の高い金フォイルをバッキング膜として使用し、金フォイルの表面に熱分解法による粉末または、アモルファス粉末を電子やレーザービームで加熱して蒸着させる高温蒸着法やスパッタ方の蒸着法で蒸着することで作成することも行われている。
【0008】
しかし、この方法では、前述のように、蒸着法であるため、バッキング膜と炭素フォイル(炭素膜)との密着性が悪く、そのため蒸着膜の膜厚は、最大でも80μg/cmが限度であり、且つ、一様性が悪く、収率(出発物質に対する生成物質の割合)も10%以下で効率が悪い問題がある。
収率を高めるために、高圧プレス成型器でディスク状のターゲットの作製を試みたが、全く固まらず、ターゲットの作製はできなかった。
【0009】
現時点では、炭素膜が形成されたターゲットを作成する方法としては、前記蒸着法しかなく、新たな方法の出現が期待されている。
これに応じて、本願発明者が発明し、出願を行った特許文献2(特開平6−158350号公報)には、基体の被膜方法に関する技術が記載されており、一対の電極と電極間に配置された絶縁部材との間の空間に、基板を配置すると共に被膜材料の粒子を収容し、電極間に電圧を印加して粒子を往復動させることで、被膜材料の粒子が基板表面にたたき込まれて成膜される。よって、この方法を使用して、ガンマ線を出力するためのターゲット材を作成することが考えられる。
ここで、物性の検査等を行う際にガンマ線を出力する場合に、前記ターゲット材料として使用する材料によっては、ガンマ線を出力しにくかったり、強度の強い荷電粒子線を照射する必要がある場合がある。前記ターゲット材料として、比較的入手しやすい天然の炭素を使用する場合、炭素は、天然の状態では炭素12(12C)が約98.9%、炭素13(13C)が約1.1%、炭素14(14C)が極微量存在し、これらが混在すると、高精度のデータが収集できないという問題がある。
【0010】
図3は従来の炭素13の成膜方法で成膜した場合の説明図である。
しかしながら、炭素13を使用して、前記特許文献2記載の方法で成膜した場合、すなわち、図3に示すように、電極としての平板状の導電性基板01と、中空円筒状の絶縁部材02とにより囲まれた空間に炭素13の粉体を収容して電圧を印加し、炭素13の粉体を往復動させた場合、炭素13の被膜03が、絶縁部材02と導電性基板01との境界部に多く付着して、被膜03が均一に形成されないことが本発明者の実験により確認された。
【0011】
本発明は、前述の事情に鑑み、ターゲット材料としての高濃縮度の同位体炭素を高い密着性を持って均一に形成することを第1の技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(本発明)
前記技術的課題を解決するために、請求項1記載の発明のガンマ線発生用のターゲット材料は、
少なくとも一対の電極および前記電極間に配置された絶縁部材により形成された空間に、ターゲット基板を配置し且つ表面層形成用粉体としての炭素粒子を収容して、前記電極間に前記表面層形成用粉体を往復動させる電圧を印加することにより、前記ターゲット基板表面に炭素の表面層が形成されたターゲット材を製造する場合に、アモルファスの炭素粒子を不活性ガス雰囲気中で2500K以上の高温に加熱することでグラファイト化された炭素粒子により構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、グラファイト化された炭素粒子を使用するので、ターゲット基板表面にターゲット材料としての炭素を高い密着性を持って均一に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(実施例)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1のガンマ線源装置の説明図である。
図1において、実施例1のガンマ線源装置1は、排気装置Pにより内部が排気された装置筐体1aを有する。前記装置筐体1a内部には、荷電粒子線源の一例としての陽電子線源装置2が配置されている。前記陽電子線源装置2から出力された陽電子線2aは、ガンマ線発生用ターゲット材3に照射される。前記ターゲット材3は、ターゲット基板3aと、ターゲット基板3a表面に形成された表面層3bとを有する。前記ターゲット材3は、図示しない移動装置により、装置筐体1a内で移動可能に構成されており、同じ位置に陽電子線2aが照射され続けることで破損することを低減するために照射される位置を変更可能である。なお、実施例1では、ターゲット材3の基板3aは、ガンマ線に影響を与えにくい金(Au)により構成されており、表面層3bはガンマ線を発生させやすい炭素13(13C)により構成されている。
前記陽電子線2aが照射されたターゲット材3の表面層3bでは、制動放射のガンマ線4が放出され、発生したガンマ線4は装置筐体1の窓材6を通じて外部に出力される。なお、前記窓材6としては、ガンマ線4の透過率が高い材料で構成可能であり、例えば、ベリリウムやアルミニウム等により構成できる。
【0016】
図2は本発明の実施例1のターゲット材製造装置の全体説明図である。
図2において、本発明の実施例1のガンマ線発生用のターゲット材製造装置11は、板状のベース12を有する。前記ベース12上には、第1電極部材13が支持されており、前記第1電極部材13の上方には、第1電極部材13に対向して第2電極部材14が配置されている。なお、実施例1では、前記第1電極部材13として、前記ターゲット材3のターゲット基板3aを使用することで、第1電極部材13とターゲット基板3aとを共通化(兼用)した。また、実施例1では、ターゲット基板3a(バッキング層)として、金(Au)を使用した。さらに、実施例1では、前記電極部材13,14間の距離は10mm(=1cm)に設定されているが、前記距離は設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。
前記一対の電極部材13,14には、電源装置Eが接続されている。前記一対の前記電極部材13,14の内側には中空円筒状(リング状)の絶縁部材18が挟持されている。前記一対の電極部材13,14および絶縁部材18により囲まれた空間により粉体Fが収容される粉体収容空間19が構成されている。なお、実施例1では、前記絶縁部材18は、内周が直径25cmのリング状に形成されているが、直径は設計等に応じて任意に変更可能である。また、前記絶縁部材18として、ガラスが使用されているが、材料は特に限定されず、任意の絶縁性の部材(セラミック、樹脂等)を採用可能である。
【0017】
前記ベース12の端部には、支柱21が支持されており、支柱21の先端部には第2電極部材14側に延びるアーム22がネジ止めされている。前記アーム22の先端部には、軸部材23が上下方向に移動可能に支持されている。軸部材23の下端には前記第2電極部材14の上面に接触する板状の押圧部材24が支持されている。前記軸部材23には、前記押圧部材24とアーム22との間にスプリング26が装着されており、押圧部材24を常時下方に付勢する。したがって、前記押圧部材により第2電極部材14は第1電極部材13側に押圧され、粉体Fが外部に漏出しないように粉体収容空間19が密閉される。
実施例1では、前記粉体収容空間19は、真空排気されず、室温の大気圧下に配置されている。そして、前記電源装置Eにより、電極部材13,14間に12kV程度の直流電圧(即ち、電界強度は12kV/cm)と、交流電圧が重畳されて印加される。なお、前記電圧は、12kVに限定されず、炭素の膜が成膜可能な任意の電圧、例えば、3kV〜30kV程度の間の値に設定可能である。
【0018】
また、実施例1では、前記粉体収容空間19には、粉体Fとして、ターゲット材3の表面層3bを形成するための表面層形成粒子が収容されており、実施例1では、前記表面層形成粒子Fは、グラファイト化された炭素13(13C)により構成されている。なお、炭素13に限定されず、炭素12(13C)も使用可能である。
前記グラファイト化された炭素13は、以下の方法により作成する。まず、天然の炭素を遠心分離法、レーザー拡散法または電磁同位体分離法等の従来公知の同位体の分離方法により、炭素13を濃縮度99%以上にする。次に、この分離された濃縮同位体炭素13を、不活性ガスの一例としての窒素(N)ガスの1気圧の雰囲気中で、常温から昇温して、2500K〜3500Kで3時間以上加熱する。加熱して得られた炭素13の粉体を、瑪瑙乳鉢で粉砕して数10μm程度の微粉体とし、この微粉体を使用する。
【0019】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のガンマ線発生用のターゲット材製造装置11において、3000Kで加熱した炭素13を使用すると、ターゲット基板3a表面に炭素13の表面層3bが均一に形成されることが実験により確認された。このとき、遠心分離で得られた状態の炭素13と、加熱後の炭素13とを、X線回折法により測定すると、同位体が分離された状態の炭素13は、アモルファス(非晶質)カーボンであるのに対し、2500K以上で加熱後の炭素13は、グラファイト結晶に転換していることがわかった。
【0020】
したがって、実施例1のガンマ線発生用ターゲット材製造装置11では、炭素13をグラファイト化し、グラファイト化された炭素13を使用することで、均一な表面層3bを形成することができる。また、作製された炭素膜は、密着性が高く、且つ、貴重で高価な炭素試料の純度を低下せず、損失がなく(高収率で)、必要な厚さで成膜できる。そして、従来よりも厚い厚さで成膜できる。さらに、ターゲット材製造装置11は、室温で実行可能であり、ターゲット基板3aの加熱等も伴わないため、ターゲット基板3aの変形や変質が発生しないと共に、炭素膜成膜後すぐに取り出すことができる。したがって、実施例1のガンマ線源装置1では、均一な厚みで、密着性、耐久性が非常に高く、荷電粒子ビーム照射により膜厚が減少しない炭素13の表面層3bを有するターゲット材3を使用して、安定したガンマ線を発生させることができる。
【0021】
(成膜実験)
(実験例1)
実験例1では、アモルファス粉末を2500K〜3500Kの高温度処理により、フレーク状のアモルファス炭素13を、グラファイト結晶化し、グラファイト化された粉末を瑪瑙乳鉢で、平均粒径40μmの微粉体化した。この微粉体を、厚さ0.2mmの金のバッキング膜を電極基板13として、実施例1のターゲット材製造装置11で16kVの直流高電圧を印加して、炭素13の成膜を行った。その結果、ターゲット基板(第1電極基板)3a表面に収量がほぼ100%で高密着性をもった一様な炭素膜が成膜されたターゲットが作製された。ターゲット材製造装置11を3時間の作動させた場合の炭素膜の厚さは、アモルファスカーボンの6倍の500μm/cmであった。この炭素13膜の一様性は、どの場所にもよらず、最大で2%以内であった。実験の結果、炭素膜の厚さは最大で5000μg/cmまで作製できた。
(実験例2)
実験例2では、炭素13に換えて、炭素12にした以外は、同様の条件、同様の装置でターゲットを作製した。
【0022】
(比較例1)
比較例1では、高温度処理無しの濃縮同位体アモルファス炭素粉末を厚さ0.2mmの金バッキング膜表面に電子ビーム蒸着法により、厚さ80μg/cmの炭素膜を成膜してターゲットを作製した。
(比較例2)
比較例2では、高温度処理無しの濃縮同位体アモルファス炭素粉末を、実施例1のターゲット材製造装置11で、実験例1と同様にして作製した膜厚〜100μg/cm以下のターゲットを作製した。
【0023】
前記実験例1、2および比較例1、2のターゲットを静電型加速器にセットし、エネルギー3.2MeV、Ne、3μA、ビームスポット径3.5mmのイオンビームを各ターゲットに照射した。比較例1では、照射開始から45分で炭素層が金のバッキング膜から剥離した。比較例2では、照射開始から2時間後に小さな割れが発生し、次第に全体に広がり、最後は剥離した。
実験例1,2では、共に、25時間照射したが、剥離や膜厚減少、変形は全く発生せず、安定していた。なお、実験例1,2で、炭素膜の厚さを厚くして複数形成したが、厚みにかかわらず、同様に破損等せず、安定していた。
なお、メタンガスを熱分解して作製される市販の炭素フォイル(比較例3)は、同じ照射条件の場合、20分以内で破損した。
【0024】
(グラファイト化実験)
次に、高温度処理を実行する温度と、グラファイト化との関係を検証する実験を行った。
(実験条件)
分離された濃縮同位体のアモルファス炭素のフレーク500mgを、真空高温焼結炉の坩堝に入れて、窒素ガス雰囲気で、5時間加熱した。加熱温度は、2000K(比較例3)、2500K(実験例3)、3000K(実験例4)、3500K(実験例5)で実験を行った。
各温度で作製された粉末をX線スペクトル(X線回折法)で分析すると、比較例3では表れなかったが、実験例3〜5では、グラファイト結晶を示すスペクトルが観測された。この高温処理した粉末を瑪瑙乳鉢で粉砕して、実施例1のターゲット材製造装置11を使用して成膜すると、均一に成膜できた。
【0025】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H06)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、常温大気圧下でガンマ線発生用ターゲット材製造装置11を稼働させたが、これに限定されず、粉体収容空間19を加熱または冷却したり、真空排気あるいは高圧ガス封入等任意に変更可能である。すなわち、真空圧、大気圧、高圧状態のいずれでも、ターゲット材3を作製可能である。なお、このとき、温度や圧力、粉体のサイズ等により放電条件が変わるため、放電せず且つ粒子の往復動が行われる電圧を電源装置で印加することが必要となる。
【0026】
(H02)前記実施例において、ターゲット基板3aとして、金(Au)を例示したが、これに限定されず、例えば、タンタルや銅等の金属材料を使用することも可能である。また、アルミナ(酸化アルミニウム)等のセラミックス等を使用することも可能であるが、この場合は、セラミック等が絶縁性であるため、第1電極部材13と共通化できず、第1電極部材13の表面側にセラミックス製のターゲット基板を配置する必要がある。なお、ターゲット基板3aとしては、発生したガンマ線が透過する性能が高いものが好ましいことはいうまでもない。また、ターゲット基板3aと電極13とを共通化したが、別体とし、電極13の内側にターゲット基板3aを配置して、ターゲット基板3a表面に表面層3bを形成することも可能である。
【0027】
(H03)前記実施例において、装置のサイズや印加する電圧は、実施例に例示した値に限定されず、設計に応じて変更可能である。このとき、電極間の間隔と、電圧は、放電条件や粉体の往復動と関連するため、放電せず且つ往復動可能な電圧および電極間間隔に設定することができる。また、印加する電圧は直流電圧に交流電圧が重畳された電圧に限定されず、交流電圧あるいは直流電圧のみ、あるいはパルス状の電圧とすることも可能である。
(H04)前記実施例において、めのう乳鉢で粉砕した粉体を例示したが、これに限定されず、任意の方法で往復動可能な程度の大きさ(比重等により異なるが、500μm以下程度が好ましい)にすることが可能である。また、製造された球状粒子の径は、粉体Fのサイズによるところがあるため、製造された球状粒子の径のばらつきを少なくするために、粉体Fのサイズも揃えることが望ましい。
【0028】
(H05)前記実施例において、荷電粒子線源として陽電子線源を例示したが、これに限定されず、炭素13からガンマ線を発生可能な荷電粒子線源であれば、レーザ光源装置や電子銃、イオンビーム発生装置等の荷電粒子線源を使用可能である。
(H06)前記実施例において、アモルファスの炭素12、炭素13をグラファイト化する際の温度、使用ガス、圧力、時間は、例示した条件に限定されず、炭素12,炭素13がアモルファスからグラファイトの状態にできる任意の数値に変更可能である。例えば、使用ガスは不活性ガスとして希ガスを使用することが可能であり、真空状態とすることも可能である。また、圧力も1気圧よりも高圧、低圧とすることが可能であり、時間もグラファイト化するのに十分な時間に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の実施例1のガンマ線源装置の説明図である。
【図2】図2は本発明の実施例1のガンマ線発生用ターゲット材製造装置の全体説明図である。
【図3】図3は従来の炭素13の成膜方法で成膜した場合の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1…ガンマ線源装置、
2…荷電粒子線源、
2a…荷電粒子、
3…ガンマ線発生用のターゲット材、
3a,13…ターゲット基板、
3b…表面層、
11…ガンマ線発生用のターゲット材製造装置、
13,14…電極、
18…絶縁部材、
19…空間、
E…電源装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の電極および前記電極間に配置された絶縁部材により形成された空間に、ターゲット基板を配置し且つ表面層形成用粉体としての炭素粒子を収容して、前記電極間に前記表面層形成用粉体を往復動させる電圧を印加することにより、前記ターゲット基板表面に炭素の表面層が形成されたターゲット材を製造する場合に、アモルファスの炭素粒子を不活性ガス雰囲気中で2500K以上の高温に加熱することでグラファイト化された炭素粒子により構成されたことを特徴とするターゲット材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−241638(P2008−241638A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86142(P2007−86142)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(504151365)大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 (125)
【Fターム(参考)】