説明

タービンおよびこれを用いたガスタービン

【課題】 静翼構造の内周側から空気が流入しようとする燃焼ガスに見合う量だけ供給されるようにし、過剰空気量による性能損を抑制できるタービンを提供する。
【解決手段】 軸線方向Lに交互に配置されている動翼構造25および静翼構造23と、燃焼ガス流路Gよりも内側に位置する動翼構造25および静翼構造23の間に形成された回転静止間空洞53と、静翼構造23の内周側部分に形成された供給空洞51に設けられた固定供給孔55から回転静止間空洞53に圧縮空気を供給し、燃焼ガス流路Gを通る燃焼ガスの回転静止間空洞53への流入を抑制する圧縮空気供給部45と、を備えるタービン7であって、供給空洞51には、回転静止間空洞53内の温度に応じて開閉する追加供給孔75が備えられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンおよびこれを用いたガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは燃焼器の燃焼ガスをタービンで膨張させて動力を得るもので、タービンには高温の燃焼ガスが供給される。また、燃焼ガスが高温になるほどエネルギー効率が向上するので、一層燃焼ガスの高温化が進展している。
このため、燃焼ガスが通る燃焼ガス通路に位置する動翼、静翼等は耐熱性能の高い高価な材料で形成されるとともにあまり高温とならないように冷却されている。
動翼、静翼等を冷却する冷熱源としては、圧縮機の中途から抽気される圧縮空気が用いられるのが通常である。この圧縮空気が、たとえば、静翼の内部を流れ静翼を冷却する。
【0003】
一方、動翼と静翼との間の間隙は、燃焼ガス流路の内側にも連続して存在しているので、燃焼ガスがこの部分に巻き込まれることになる。燃焼ガスが内側に流入すると、キャビティ温度が高くなり、比較的耐熱性の低い材料で構成されているロータディスク、翼根部及び翼溝部等が破損する恐れがある。
このため、たとえば、特許文献1に示されるように冷却後の圧縮空気を動翼と静翼との間の間隙の内側から供給し、燃焼ガスの進入を抑制している。特許文献1を含め従来のものは、動翼と静翼との間の間隙に圧縮空気を供給する供給孔が固定して設置されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−9410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この圧縮空気が多くなると、燃焼ガス通路に侵入する仕事をしない空気量が多くなるので、タービンの性能が損なわれることになる。このため、供給される圧縮空気量は必要最小量とするのが好ましいが、圧縮空気量を制御しない場合では運用条件(大気温度、負荷等)の変化によって圧縮機からタービンまでの各場所での負荷バランスが変化するので、圧縮空気の供給量と必要流量との差(マージン)が変動する。
【0006】
圧縮空気の供給量は、最悪の運用条件(すなわち、供給量/必要流量が最も小さくなる運用条件)の時でも燃焼ガスの進入を阻止できる(すなわち、供給量と必要流量とがバランスする)ように設定されるので、通常の運用条件では圧縮空気は必要流量よりも多く供給、すなわち、過剰供給される。これにより燃焼ガス通路に侵入する仕事をしない空気量が多くなるので、タービンの性能が損なわれる。
【0007】
また、燃焼ガス流路の内側に存在する動翼と静翼との間の間隙における温度を計測し、それが一定になるように圧縮空気の供給量自体を制御することも考えられるが、これはシステムが複雑となるし、制御位置が温度の検出位置と離れていることによるタイムラグも大きいので、信頼性が不十分で、制御が不調となる恐れがある。制御が不調となると、たとえば、動翼と静翼との間の間隙に燃焼ガスが流入することになるので、タービンの損傷につながる恐れがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、静翼構造の内周側から供給される空気が流入しようとする燃焼ガスに見合う量だけ供給されるようにし、過剰空気量による性能損を抑制できるタービンおよびこれを用いたガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明にかかるタービンは、軸線方向に交互に配置されている動翼構造および静翼構造と、燃焼ガス流路よりも内側に位置する該動翼構造および該静翼構造の間に形成された回転静止間空洞と、前記静翼構造の内周側部分に形成された空洞に設けられた第一供給孔から前記回転静止間空洞に気体を供給し、前記燃焼ガス流路を通る燃焼ガスの前記回転静止間空洞への流入を抑制する気体供給構造と、を備えるタービンであって、前記空洞には、前記回転静止間空洞内の温度に応じて開閉する第二供給孔が備えられていることを特徴とする。
【0010】
第一供給孔から回転静止間空洞に気体、たとえば、圧縮空気を供給し、燃焼ガス流路を通る燃焼ガスの回転静止間空洞への流入を抑制している。運用条件が変化し、燃焼ガスの流入しようとする量が供給される気体に対して多くなると、気体による抑制が不十分となるので、燃焼ガスが回転静止間空洞に流入することになる。このため、回転静止間空洞内の熱量が増加するので、回転静止間空洞内の温度が高くなる。
空洞には、回転静止間空洞内の温度に応じて、すなわち、温度の高低に対応して開閉する第二供給孔が備えられているので、回転静止間空洞内の温度が高くなると、それに応じて第二供給孔が開くことになる。第二供給孔が開くと、空洞内の気体が第一供給孔に加えて第二供給孔からも回転静止間空洞内へ供給されるので、空洞から気体を供給する供給面積を増加させることができる。これにより回転静止間空洞内へ供給される気体の量を増加させることができる。
【0011】
回転静止間空洞内へ供給される気体の量が増加すると、運用条件の変動によって増加した燃焼ガスの流入を抑制することができる。
燃焼ガスの流入が抑制されると、回転静止間空洞内の温度が高い状態から低下するので、それに応じて第二供給孔が閉じることになる。第二供給孔が閉じると、空洞内の気体が第一供給孔からのみ回転静止間空洞内へ供給されるので、回転静止間空洞内へ供給される気体の量が元の状態に戻される。
この場合、燃焼ガスの流入しようとする量が供給される気体に対して多くなる状態が継続していると、上述の作用が繰り返されることになる。一方、運用条件が変化し、燃焼ガスの流入しようとする量が第一供給孔から供給される気体に対して多くなる状態が解消されていると、気体が第一供給孔から供給される状態が継続される。
【0012】
このように、回転静止間空洞内へ流入しようとする燃焼ガスの量が第一供給孔から供給される気体に対して多くなり、回転静止間空洞内の温度が高くなると、第二供給孔が開き、回転静止間空洞内へ供給される気体の量を増加させるようにしているので、運用条件の変動による燃焼ガスの流入量が変化してもそれが回転静止間空洞内へ悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
また、第一供給孔による圧縮空気の供給量は、最悪の運用条件(すなわち、供給量/必要流量が最も小さくなる運用条件)の時でも燃焼ガスの進入を阻止できる(すなわち、供給量=必要流量となる)ように設定する必要がなくなるので、気体の過剰供給を抑制することができ、タービンの性能が損なわれるのを抑制することができる。
【0013】
なお、第一供給孔の供給面積は、燃焼ガスが最も小さくなる運用条件で、燃焼ガスの流入が防止できる大きさとし、第二供給孔の最大供給面積は、第一供給孔の供給面積を加えた供給面積が、燃焼ガスが最も大きくなる運用条件で、燃焼ガスの流入が防止できる大きさとなるように設定されるのが望ましい。
【0014】
また、本発明にかかるタービンでは、前記気体供給構造は、面部が前記空洞の壁面に沿って摺動可能に設置された板状体であり、前記第二供給孔がその板厚方向に貫通するように形成されている供給板と、前記壁面に、それを貫通するように形成された開口部と、前記回転静止間空洞内の温度に応じて前記供給板を前記壁面に沿って移動させ、前記第二供給孔と前記開口部とを選択的に重なり合わす移動部材と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
供給板は、開口部が形成された壁面に面部が摺動するように設置されているので、供給板が壁面に沿って摺動すると、供給板の第二供給孔が壁面の開口部と選択的に重なり合うことになる。第二供給孔と開口部とが重なり合うと、空洞の内部と外部とが連通する、すなわち、第二供給孔が開くことになる。一方、第二供給孔と開口部とが重なり合わないようにされると、第二供給孔は壁面で、開口部は供給板で覆われるので、空洞の内部と外部とが連通しなくなる、すなわち、第二供給孔は閉じられることになる。
移動部材が回転静止間空洞内の温度に応じて供給板を壁面に沿って摺動させるので、この温度によって第二供給孔を開閉することができる。これにより、気体の過剰供給を抑制することができ、タービンの性能が損なわれるのを抑制することができる。
【0016】
また、本発明にかかるタービンでは、前記移動部材は、形状記憶合金製のバネとされ、該バネは前記回転静止間空洞に連通する収納部に設置されていることを特徴とする。
【0017】
バネは形状記憶合金によって形成されているので、温度によって形状が変化し、バネ定数が変化する。すなわち、一般に、低温では柔らかく(弱く)、高温では硬い(強い)特性が得られます。
一方、収納部は回転静止間空洞に連通されているので、収納部は回転静止間空洞と同じ雰囲気、すなわち、温度となる。バネは収納部に設置されているので、バネには回転静止間空洞の温度がそのまま作用することになる。
したがって、回転静止間空洞内の温度によって供給板をバネの作用する方向に移動させることができる。
【0018】
また、本発明にかかるガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、該圧縮機から供給される圧縮空気と燃料とを燃焼し、燃焼ガスを生成する燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスによって回転させられる上記のいずれかのタービンと、を備えていることを特徴とする。
【0019】
上記のタービンを備えることにより、燃焼ガスに混入する気体の過剰供給が抑制できるので、タービンの性能が損なわれるのを抑制することができる。これにより、高効率なガスタービンを提供することができる。
【0020】
また、本発明にかかるガスタービンは、前記圧縮機で圧縮した圧縮空気の一部を前記静翼構造の冷却媒体として用い、前記静翼構造を冷却した後の冷却媒体を前記気体として用いることを特徴とする。
【0021】
圧縮機で圧縮した圧縮空気の一部を用いて静翼構造を冷却し、さらにそれを回転静止間空洞へ侵入する燃焼ガスを抑制するために用いるので、無駄の少ないシステムとすることができる。
また、圧縮機から抽気された圧縮空気は静翼構造を冷却する際に加温されるので、燃焼ガスの温度を低下させることが抑制され、効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、空洞から回転静止間空洞に気体を供給するために第一供給孔に加えて回転静止間空洞内の温度に応じて開閉する第二供給孔が備えられているので、運用条件の変動による燃焼ガスの流入量が変化してもそれが回転静止間空洞内へ悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
また、第一供給孔による圧縮空気の供給量は、最悪の運用条件の時でも燃焼ガスの進入を阻止できるように設定する必要がなくなるので、気体の過剰供給を抑制することができ、タービンの性能が損なわれるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の一実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかるガスタービン1の上半部を示す概略断面図である。図2は本実施形態にかかる静翼の内周側端部を示す部分断面図である。図3は、本実施形態にかかる圧縮空気供給部を示す部分断面図である。図4は、図3と同様の部分を示し、圧縮空気供給部の別の状態を示す部分断面図である。図5は、図4のX視図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、空気を圧縮する圧縮機3と、圧縮機3により圧縮された空気を用いて燃料を燃焼させる燃焼器5と、燃焼器5からの燃焼ガスが導かれるタービン7とを備えている。圧縮機3、燃焼器5およびタービン7を含むガスタービン1を構成する機器は、ケーシング9によって覆われている。
【0024】
圧縮機3、燃焼器5、タービン7等の中心部を貫通するようにロータ11が位置しており、圧縮機3側の端部が図示しない軸受部により回転自在に支持される一方、タービン7側の端部が図示しない軸受部により回転自在に支持されている。
圧縮機3は、図示しない空気取入口から取り込んだ空気を圧縮するものである。圧縮機3は外周側がケーシングに固定して取り付けられた静翼13と、内周側がロータ11に固定して取り付けられた動翼15とが、軸線方向Lに交互に配設されてなり、その外側に複数の抽気マニホールド19が設けられている。
【0025】
燃焼器5は、周方向に略等間隔に空けて複数備えられている。各燃焼器5は、圧縮機3と圧縮空気供給通路21によって連結されている。燃焼器5は、圧縮空気供給通路21から供給される圧縮空気と別途供給される燃料とを混合・燃焼させて高温高圧の燃焼ガスを生成する。
各燃焼器5の下流側は、リング状の通路に接続され、該通路からタービン7に略リング状に形成された燃焼ガス流路Gへ燃焼ガスを供給する。
【0026】
タービン7は、静翼構造23と動翼構造25とが回転軸方向Lに交互に設けられている。動翼構造25は、ロータ11の周囲に固定されディスクプレート27と、ディスクプレート27の外周に沿って略等間隔に空けて固定して取り付けられた複数の動翼29とで構成されている。
隣り合うディスクプレート27には、相互に近接するように軸線方向Lに突起した円筒部分31が備えられている。円筒部分31間には、ロータ11側と燃焼ガス通路G側とをシールするシール33が取付けられている。
【0027】
静翼構造23には、外輪35と、静翼37と、内輪39と、保持環41と、シール部材43と、圧縮空気供給部(気体供給構造)45と、が備えられている。(図1および図2参照)
外輪35は、リング状をし、ケーシング9の内周側に導入室47を形成する翼環49に固定して取付けられている。内輪39は、リング状をし、内周側には、軸線方向Lに間隔を空けて半径方向に延在する一対の突起部50を備えている。静翼37は、略等間隔で放射状に配置され、その外周端が外輪35に、内周端が内輪39に保持されている。
【0028】
外輪35、静翼37および内輪39は、周方向に分割されたセグメント単位に作られ、静翼環49に組み付けられる。セグメントは、たとえば、円周を6分割、あるいは8分割するように構成されている。もちろん、これに限定されるものではなく、適宜な構成とされてよい。
外輪35、静翼37および内輪39は燃焼ガスに接するので、ディスクプレート27、保持環41およびロータ11に比べて耐熱性の高い材料で形成されている。外輪35、静翼37および内輪39は、ブロック材からの削り出しによって一体に形成するようにしてもよいし、別個に作って溶接等で接合するようにしてもよい。
【0029】
保持環41は、断面が外周側に向かって開放された略コ字形状をしたリング部材であり、内輪39の内周側の突起部50にボルトで固定されている。保持環41は、周方向に分割されたセグメント単位に作られている。したがって、保持環41は円弧状をし、両端部には仕切板41aが備えられている。セグメントは、内輪39の回転方向の長さと一致させてもよいし、一致させなくてもよい。セグメントの分割数は、適宜選択されるが、本実施形態では、円周を6分割したものとして説明する。
内輪39と保持環41とで、断面が略矩形状をした供給空洞(空洞)51が形成されている。
供給空洞51は、圧縮機3の中間段から抽気され、抽気マニホールド19、導入室47を経由して、静翼構造23、特に、静翼37を通って冷却に用いられた圧縮空気(気体、冷却媒体)CAを受け入れる。
保持環41の内周側には、ディスクプレート27の円筒部分31との間でシール構造を構成するシール部材43が取付けられている。
【0030】
動翼構造25のディスクプレート27と静翼構造23の保持環41との間、言い換えると、燃焼ガス流路Gよりも内周側に位置する静翼構造23と動翼構造25との間には、リング状の空間である回転静止間空洞53が形成されている。
圧縮空気供給部45は、保持環41の内周側で、回転静止間空洞53に面する側に備えられている。
保持環41の回転静止間空洞53に面した部分には、供給空洞51と回転静止間空洞53とを連通させる略円弧形状をした開口部分67が設けられている。
【0031】
圧縮空気供給部45について、図3〜図5に基づいて説明する。
圧縮空気供給部45には、固定供給孔(第一供給孔)55と、カバープレート57と、塞ぎ板(供給板)59と、バネ室(収納部)61と、押しバネ(移動部材:バネ)63と、バランサバネ65とが備えられている。
固定供給孔55は、保持環55の下面を貫通するように設置されており、周方向に適宜間隔を空けて複数備えられている。
固定供給孔55は運転中には圧縮空気CAを供給空洞51から回転静止間空洞53に向けて常時供給するようにされている。
固定供給孔55の供給面積は、燃焼ガスが最も小さくなる運用条件で、燃焼ガスの流入が防止できる大きさとされている。
【0032】
カバープレート57は、略円弧状の板部材であり、供給空洞51の開口部分67およびバネ室61を覆うように取付けられている。
カバープレート57には、回転静止間空間53と供給空間81とを連通するように円弧状の開口スリット(開口部)69が略全幅に亘り備えられている。また、カバープレート57における開口スリット69の内周側で、バネ室61が設置される位置に対応する部分には、回転静止間空洞53とバネ室61とを連通するバネスリット71が周方向の略全幅に亘り備えられている。
なお、開口スリット69およびバネスリット71は、必要な部分にのみ備えるようにしてもよい。
【0033】
塞ぎ板59は、略円弧状の板部材である。塞ぎ板59は内周側がカバープレート57と保持環41とで挟持され、半径方向(軸線方向Lに垂直な方向)に摺動可能に保持されている。塞ぎ板59と保持環41との間はフェイスシール73によってシールされている。
塞ぎ板59の半径方向略中間位置には、貫通した複数の追加供給孔(第二供給孔)75が周方向に適宜間隔を空けて複数備えられている。
図4に示される状態となった追加供給孔75の最大供給面積は、固定供給孔55の供給面積を加えた供給面積が、燃焼ガスが最も大きくなる運用条件で、回転静止間空洞53への燃焼ガスの流入が防止できる大きさとなるように設定されている。
追加供給孔75の形状は、加工のし易さから円形とされているが、これに限らず矩形等任意の形状としてよい。たとえば、矩形のように周方向の幅が一定のものとすれば、後述する供給量の調整時、調整量の変化がリニアにできるので、調整しやすくなる。
また、複数でなく一個のスリット状としてもよい。
【0034】
バネ室61は、保持環41の回転静止間空洞53に面した内周側部分に設けられた略直方体形状の空洞で、回転静止間空洞53側はカバープレート57で覆われている。
バネ室61は、周方向に間隔を空けて複数備えられている。バネ室61は、バネスリット71を経由して回転静止間空洞53と連通されているので、その温度は回転静止間空洞53の雰囲気温度と略同一となる。
【0035】
バネ室61には、塞ぎ板59の内周側を支持する押しバネ63が設置されている。
押しバネ63は、形状記憶合金製のコイルバネである。押しバネ63は、温度によって形状が変化し、バネ定数が低温では柔らかく(弱く)、高温では硬く(強く)なるように変化する。
バランサバネ65は、塞ぎ板59の外周側を押える一定のバネ定数を備えたコイルバネであり、周方向に間隔を空けて複数備えられている。
【0036】
塞ぎ板59は、押しバネ63とバランサバネ65とのバネ力がつりあったところに位置することになる。
押しバネ63のバネ定数は、温度によって変化するので、たとえば、バネ室61の雰囲気温度が上昇すると、押しバネ63のバネ定数が高くなるので、そのバネ力はバランサバネ63のバネ力よりも大きくなり塞ぎ板59を外周側に移動させることになる。
【0037】
押しバネの特性は、次のようにして設定する。ディスクプレート27、保持環41、ロータ11等に用いた材料を勘案し、回転静止間空洞53における許容温度範囲を設定する。回転静止間空洞53の温度が、その許容温度範囲よりも小さい時、塞ぎ板59は図3に示されるように追加供給孔75と開口スリット69とが重なり合わない位置に位置し、一方、許容温度範囲を超えると、図4に示されるように追加供給孔75と開口スリット69とが重なり合う位置に位置するようにする。あるいは、併せて追加供給孔75の位置、大きさを調整するようにしてもよい。
【0038】
供給空洞51は隔壁77によって開口部分67を有する供給空間81が区切られている。供給空間81には、供給スリット79を通して圧縮空気CAが供給される。
圧縮空気の圧力は回転静止間空洞53に比べて高いので、塞ぎ板59はカバープレート57に押し付けられる。したがって、図3に示される追加供給孔75と開口スリット69とが係合しない位置関係にあると、圧縮空気は開口スリットから漏れることはない。
また、フェイスシール73は、この高圧力によって塞ぎ板59側および半径方向の内周側に押し付けられるので、圧縮空気がバネ室61、すなわち、回転静止間空洞53に漏れることはない。
【0039】
以上説明した構造を持つガスタービン1は、圧縮機3の図示しない空気取入口から取り込まれた空気が複数の静翼13と動翼15を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、燃焼器5に送られる。燃焼器5は、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給されることで燃焼し、高温・高圧の燃焼ガスを生成する。
そして、この燃焼器5で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、タービン7を構成する複数の静翼37と動翼29を通過することでロータ11を駆動回転し、たとえば、このロータ11に連結された発電機に回転動力を付与することで発電を行う。
【0040】
このとき、圧縮機3では圧縮空気の一部が抽気され、抽気された圧縮空気CAは抽気マニホールド19からタービン7の導入室47へ搬送されている。この圧縮空気CAは導入室47から静翼環49を経由して静翼構造23、特に、静翼37の内部を流され、これらを冷却する。そして、この圧縮空気CAは供給空洞51へ流入する。
【0041】
供給空洞51へ流入した圧縮空気CAは、固定供給孔55から回転静止間空洞53へ噴出され、燃焼ガス流路Gを通る燃焼ガスの回転静止間空洞53への流入を抑制する。
運用条件が変化し、燃焼ガスの流入しようとする量が固定供給孔55から供給される圧縮空気に対して多くなると、圧縮空気による抑制が不十分となるので、燃焼ガスが回転静止間空洞53に流入することになる。このため、回転静止間空洞53内の熱量が増加するので、回転静止間空洞55内の温度が高くなる。
【0042】
回転静止間空洞53内の温度が高くなり許容温度範囲の下限を超えると、バネスリット71を介して回転静止間空洞53と連通しているバネ室61の温度が同様に高くなる。これにより、押しバネ63のバネ定数が大きくなるので、押しバネ63のバネ力は大きくなる。押しバネ63のバネ力が大きくなると、バランサバネ65のバネ力とバランスする(たとえば、図4に示される位置)まで塞ぎ板59を外周側に押上げることになる。
塞ぎ板59が図3の状態から外周側に移動すると、追加供給孔75が開口スリット69と係合し、供給空間81と回転静止間空洞53とを連通するようになる。
【0043】
供給空間81と回転静止間空洞53とが連通すると、供給空洞51から供給スリット79を通って供給空間81に供給された圧縮空気CAが回転静止間空洞53に噴出されることになる。
供給空洞51内の圧縮空気CAが固定供給孔55に加えて追加供給孔75からも回転静止間空洞53内へ供給されるので、供給空洞51から圧縮空気を供給する供給面積を増加させることができる。これにより回転静止間空洞53内へ供給される圧縮空気の量を増加させることができる。
【0044】
回転静止間空洞53内へ供給される圧縮空気の量が増加すると、運用条件の変動によって増加した燃焼ガスの流入を抑制することができる。
燃焼ガスの流入が抑制されると、回転静止間空洞53内の温度が高い状態から低下する。その温度低下が、バネスリット71を介してバネ室61の温度を低下させる。これにより、上記とは逆に押しバネ63のバネ定数が小さくなるので、押しバネ63のバネ力は小さくなる。押しバネ63のバネ力が小さくなると、バランサバネ65のバネ力によって塞ぎ板59は内周側に押され、内周側に移動する。
塞ぎ板59が図3の状態まで移動すると、追加供給孔75が開口スリット69と係合しなくなるので、追加供給孔75はカバープレート57で、開口スリット69は塞ぎ板59で覆われる。すなわち、供給空間81と回転静止間空洞53とが連通しなくなるので、追加供給孔75が閉じられたことになる。
【0045】
追加供給孔75が閉じられると、供給空洞51内の圧縮空気が固定供給孔55からのみ回転静止間空洞53内へ供給されるので、回転静止間空洞53内へ供給される圧縮空気の量が元の状態に戻される。
この場合、燃焼ガスの流入しようとする量が供給される圧縮空気に対して多くなる状態が継続していると、上述の作用が繰り返されることになる。一方、運用条件が変化し、燃焼ガスの流入しようとする量が固定供給孔55から供給される圧縮空気に対して多くなる状態が解消されていると、圧縮空気が固定供給孔55から供給される状態が継続される。
【0046】
このように、回転静止間空洞53内へ流入しようとする燃焼ガスの量が固定供給孔55から供給される圧縮空気に対して多くなり、回転静止間空洞53内の温度が高くなると、追加供給孔75が開き、回転静止間空洞53内へ供給される圧縮空気の量を増加させるので、運用条件の変動による燃焼ガスの流入量が変化してもそれが回転静止間空洞53内へ悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
また、固定供給孔55による圧縮空気の供給量は、最悪の運用条件(すなわち、供給量/必要流量が最も小さくなる運用条件)の時でも燃焼ガスの進入を阻止できる(すなわち、供給量=必要流量となる)ように設定する必要がなくなるので、圧縮空気の過剰供給を抑制することができ、タービン7の性能が損なわれるのを抑制することができる。
【0047】
なお、以上説明した本実施形態におけるガスタービン1は、これに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
たとえば、本実施形態では、バネ室61、すなわち、押しバネ63を内周側に設置しているが、これを外周側に設置するようにしてもよい。
このようにすると、燃焼ガスの流入による温度変化を一層早く把握して対処することができる。
【0048】
また、塞ぎ板59の周方向長さは円周の六分の一とされているが、これに限定されないのは当然である。
たとえば、もっと細かくすると、部分的な温度変動に対応して、細かく対処することができる。
【0049】
さらに、本実施例では、塞ぎ板59を半径方向に移動させるようにしているが、これは周方向に移動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態が適用されるガスタービンの上半部を示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる静翼構造の内周側端部を示す部分縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる圧縮空気供給部を示す部分断面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる圧縮空気供給部の別の状態を示す部分縦断面図である。
【図5】図4のX視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ガスタービン
3 圧縮機
5 燃焼器
7 タービン
23 静翼構造
25 動翼構造
45 圧縮空気供給部
51 供給空洞
53 回転静止間空洞
55 固定供給孔
59 塞ぎ板
61 バネ室
63 押しバネ
69 開口スリット
75 追加供給孔
G 燃焼ガス流路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に交互に配置されている動翼構造および静翼構造と、
燃焼ガス流路よりも内側に位置する該動翼構造および該静翼構造の間に形成された回転静止間空洞と、
前記静翼構造の内周側部分に形成された空洞に設けられた第一供給孔から前記回転静止間空洞に気体を供給し、前記燃焼ガス流路を通る燃焼ガスの前記回転静止間空洞への流入を抑制する気体供給構造と、
を備えるタービンであって、
前記空洞には、前記回転静止間空洞内の温度に応じて開閉する第二供給孔が備えられていることを特徴とするタービン。
【請求項2】
前記気体供給構造は、
面部が前記空洞の壁面に沿って摺動可能に設置された板状体であり、前記第二供給孔がその板厚方向に貫通するように形成されている供給板と、
前記壁面に、それを貫通するように形成された開口部と、
前記回転静止間空洞内の温度に応じて前記供給板を前記壁面に沿って移動させ、前記第二供給孔と前記開口部とを選択的に重なり合わす移動部材と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載されたタービン。
【請求項3】
前記移動部材は、形状記憶合金製のバネとされ、該バネは前記回転静止間空洞に連通する収納部に設置されていることを特徴とする請求項2に記載されたタービン。
【請求項4】
空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、
該圧縮機から供給される圧縮空気と燃料とを燃焼し、燃焼ガスを生成する燃焼器と、
該燃焼器からの燃焼ガスによって回転させられる請求項1から請求項3のいずれかに記載のタービンと、
を備えていることを特徴とするガスタービン。
【請求項5】
前記圧縮機で圧縮した圧縮空気の一部を前記静翼構造の冷却媒体として用い、
前記静翼構造を冷却した後の冷却媒体を前記気体として用いることを特徴とする請求項4記載のガスタービン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−47142(P2009−47142A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216660(P2007−216660)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】