説明

タービンロータのシュラウド検査用処理装置

【課題】 タービンロータのシュラウドに対する浸透探傷液の塗布及び当該探傷液の洗浄を人手によらずに行うことができるようにする。
【解決手段】 タービンロータAに沿って延びるガイドバー20に可動部材21を移動可能に設ける。この可動部材21には、シュラウドDの外周面に浸透探傷液を吹き付ける浸透探傷液噴射ノズル(図示せず)、及び浸透探傷液を引き延ばして均一にするために、シュラウドDの外周面に圧縮空気を吹き付ける引き延ばし用エアノズル(図示せず)を設ける。タービンロータAに沿って延びるガイドバー22Bに可動部材21Bを移動可能に設ける。この可動部材21Bには、浸透探傷液を洗い流すための洗浄液を吹き付ける洗浄液噴射ノズル(図示せず)、及び洗浄液が付着したシュラウドDの外周面に空気を吹き付けて乾燥させる乾燥空気用エアノズル(図示せず)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電等において用いられるタービンロータのシュラウドの非破壊検査を実施するにあたり、その検査に必要なシュラウドの外周面に対する浸透探傷液の塗布及び塗布された浸透探傷液の洗浄を行うためのタービンロータのシュラウド検査用処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電等において用いられるタービンロータAは、図10に示すように、水平に配置された軸体Bと、この軸体Bの外周に基端部が固定された多数のブレードCとを備えている。ブレードCは、軸体Bの外周の軸線方向へ互いに離れた各段にそれぞれ多数宛て配置されている。同一段に配置された各ブレードCの先端部には、図11に示すように、シュラウドDが固定されている。シュラウドDは、軸体Bの軸線を中心として環状に形成されている。したがって、同一段に配置された各ブレードCは、シュラウドDを介して互いに連結される。これによって、同一段に配置された各ブレードCが補強されている。
【0003】
シュラウドDは、同一段に配置されたブレードCを互いに連結して補強するという重要な部材である。しかも、タービンロータAが発電中に回転しているときには、シュラウドDに大きな力が作用する。そこで、タービンロータAの保守、点検時には、シュラウドDの探傷検査が行われている。
【0004】
シュラウドDの探傷検査を行う場合には、まずシュラウドDの外周面に浸透探傷液が塗布される。塗布から所定時間経過後、シュラウドDの外周面に洗浄液が吹き付けられる。これにより、シュラウドDの外周面に塗布された浸透液が洗い流される。シュラウドDの外周面に傷がある場合には、浸透探傷液が傷の内部に浸透している。この傷内に浸透した浸透探傷液は洗い流されることがなく、傷内に残る。その結果、シュラウドDに傷がある場合には、浸透探傷液の洗浄後にシュラウドDの外周面に傷を表す模様が浮かび上がる。このような模様が現われるか否かを目視することによってシュラウドDの探傷検査が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、シュラウドDの探傷検査に必要な浸透探傷液の塗布、及び洗浄液の吹き付けは、作業者の手作業によって行われていた。しかし、原子力発電に用いられるタービンロータAは、その外径(シュラウドDの外径)が大きく、しかもブレードの段数も多い。このため、浸透探傷液の塗布及び洗浄作業は、作業者に多大の労力を強いるものであり、かつ、作業時間も長く掛かることから、作業者の疲労が大きいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、この発明の第1の態様は、軸体、この軸体の外周の軸線方向へ離れた各段に周方向に沿って多数宛て設けられたブレード、及び同一段に設けられた各ブレードの先端部に固定された環状をなすシュラウドを備えたタービンロータの各段のシュラウドに対して非破壊検査を行う際に、上記シュラウドの外周面に対する浸透探傷液の塗布と上記シュラウドに塗布された浸透探傷液を洗浄するための洗浄液の吹き付けとを行うためのタービンロータのシュラウド検査用処理装置であって、上記タービンロータを回転自在に支持する支持部と、上記タービンロータを回転駆動する回転駆動源と、上記タービンロータに対しその径方向に隣接して配置された保持部と、この保持部に上記タービンロータの軸線方向へそれぞれ移動可能に設けられた第1、第2可動部材と、上記第1可動部材に設けられ、上記シュラウドの外周面に浸透探傷液を塗布する塗布手段と、上記第2可動部材に設けられ、上記塗布手段によって上記シュラウドの外周面に塗布された浸透探傷液を洗浄するために、上記シュラウドの外周面に洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルと、上記第1、第2可動部材をそれぞれ上記タービンの軸線方向へ移動させる第1、第2移動手段とを備えたことを特徴としている。
この場合、上記第1可動部材には、上記シュラウドの外周面に向かって空気を噴射して、上記シュラウドの外周面に塗布された浸透探傷液を引き延ばしてその分布を均一にする引き延ばし用エアノズルが設けられ、上記第2可動部材には、上記洗浄液が付着した上記シュラウドの外周面に乾燥用空気を吹き付けて上記シュラウドの外周面を乾燥させる乾燥用エアノズルが設けられていることが望ましい。
上記第1移動手段が、長手方向を上記タービンロータの軸線方向に向けて配置され、上記第1可動部材が移動可能に設けられた第1ガイド部材と、上記第1可動部材を移動させる第1移動源とを有し、上記ガイド部材の一端部が上記保持部に回動可能に設けられ、他端部が上記保持部に上記タービンロータの径方向へ位置調節可能に設けられており、上記第2移動手段が、長手方向を上記タービンロータの軸線方向に向けて配置され、上記第2可動部材が移動可能に設けられた第2ガイド部材と、上記第2可動部材を移動させる第2移動源とを有し、上記ガイド部材の一端部が上記保持部材に回動可能に設けられ、他端部が上記保持部に上記タービンロータの径方向へ位置調節可能に設けられていることが望ましい。
また、この発明の第2の態様は、軸体、この軸体の外周の軸線方向へ離れた各段に周方向に沿って多数宛て設けられたブレード、及び同一段に設けられた各ブレードの先端部に固定された環状をなすシュラウドを備えたタービンロータの各段のシュラウドに対して非破壊検査を行う際に、上記シュラウドの外周面に対する浸透探傷液の塗布と上記シュラウドに塗布された浸透探傷液を洗浄するための洗浄液の吹き付けとを行うためのタービンロータのシュラウド検査用処理装置であって、上記タービンロータを回転自在に支持する支持部と、上記タービンロータを回転駆動する回転駆動源と、上記タービンロータに対しその径方向に隣接して配置された保持部と、この保持部に設けられ、上記各シュラウドの外周面に上記浸透探傷液をそれぞれ塗布する複数の塗布手段と、上記保持部に上記塗布手段と同数設けられ、上記塗布手段によって上記シュラウドの外周面にそれぞれ塗布された浸透探傷液を洗浄するために、上記各シュラウドの外周面に洗浄液をそれぞれ噴射する複数の洗浄液噴射ノズルとを備えたことを特徴としている。
この場合、上記タービンロータの段数をnとしたとき、上記塗布手段及び上記洗浄液噴射ノズルが、n/2個又は(n/2+1)個だけ設けられていることが望ましい。
上記保持部には、上記シュラウドの外周面に向かって空気を噴射して、上記シュラウドの外周面に塗布された浸透探傷液を引き延ばす引き延ばし用エアノズルと、上記洗浄液が付着した上記シュラウドの外周面に乾燥用空気を吹き付けて、上記シュラウドの外周面を乾燥させる乾燥用エアノズルとが上記塗布手段と同数宛設けられていることが望ましい。
上記塗布手段、上記洗浄液噴射ノズル、上記引き延ばし用エアノズル及び上記乾燥用エアノズルが上記保持部に上記タービンロータの軸線方向及び径方向へ位置調節可能に設けられていることが望ましい。
第1、第2の態様に係る発明においては、上記タービンロータの軸線方向へ移動可能に配置された第3可動部材と、この第3可動部材に設けられ、上記シュラウドの外周面を撮影する撮影手段と、この撮影手段によって撮影された画像を録画する録画手段と、上記第3可動部材を上記タービンロータの軸線方向へ移動させる第3移動手段とをさらに備えていることが望ましい。
上記撮影手段が撮影している上記シュラウドの上記タービンロータの軸線方向及び周方向の位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段によって検出された位置を画像信号に変換して上記録画手段に出力し、上記撮影手段によって撮影された画像中に位置を示す画像を加えて録画させる位置画像出力手段とをさらに備えていることが望ましい。
上記保持部が上記タービンロータの軸線方向へ移動可能に設けられ、上記保持部には、上記タービンロータの軸線方向への移動に追随して上記保持部を上記タービンロータの軸線方向へ移動させる追従手段が設けられていることが望ましい。
上記追従手段が、基端部が上記保持部に固定され、先端部が上記タービンロータの軸線方向に隣接する二つの段にそれぞれ配置されたブレード間に挿入された支柱と、この支柱の先端部に上記タービンロータの軸線とほぼ直交する軸線を中心としてそれぞれ回転可能に設けられた一対のローラとを有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有する第1、第2の態様に係る発明によれば、タービンロータのシュラウドに対する浸透探傷液の塗布及び洗浄を処理装置が行うので、作業者はシュラウド検査用処理装置の操作だけを行えばよい。したがって、作業者の疲労を大幅に軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
まず、図1〜図9に基づいて第1の態様に係る発明の一実施の形態を説明するに、図1はこの発明の第1の態様に係るシュラウド検査用処理装置の概略構成を示す平面図である。この処理装置は、一対の支持台(支持部)1,1と、塗布洗浄ユニット2と、撮影ユニット3と、制御ユニット4とを備えている。
【0009】
一対の支持台1,1は、水平に配置されたタービンロータAの軸体Bの軸線方向における一端部(図1において左端部。以下、左右は図1における左右を意味するものとする。また、以下においては図1の下側を手前側と称し、上側を後側と称する。)と右端部とをそれぞれ回転自在に支持している。支持台1,1に支持されたタービンロータAは、モータ等の回転駆動源(図示せず)によって回転駆動される。
【0010】
塗布洗浄ユニット2は、タービンロータAのシュラウドDの外周面に浸透探傷液を塗布するとともに、浸透探傷液の塗布から所定時間経過した後、シュラウドDの外周面に洗浄液を吹き付けてそこに付着した浸透探傷液を洗い流すためのものであり、タービンロータAの真下に配置されている。ただし、塗布洗浄ユニット2は、タービンロータAの軸線方向における一端から他端までの全てのシュラウドDに対し一工程で塗布及び洗浄を行うことなく、一工程では全シュラウドDのうちの左側に配置された半分のシュラウドDに対してだけ塗布及び洗浄を行い、他の工程で右側に配置された残りの半分のシュラウドDに対して塗布、洗浄を行うようになっている。そのために、塗布洗浄ユニット2は、左側の半分の各シュラウドDに対して塗布、洗浄を行った後、配置替えされる。塗布洗浄ユニット2の配置替えは、図1に示すように、塗布洗浄ユニット2を実線で示す位置からタービンロータAのブレードCが配置された部分の中心点Oを中心として想像線で示す点対称な位置へ移動することによって行われる。なお、このような配置替えは、後述する撮影ユニット3及び観察制御ユニット4についても同様に行われる。塗布洗浄ユニット2が全シュラウドDのうちの半分だけしか塗布及び洗浄を行わないので、塗布洗浄ユニット2の長さは、タービンロータAのブレードCが設けられた部分の長さの半分より若干長いだけの長さに設定されている。
【0011】
図2及び図3に示すように、塗布洗浄ユニット2は、ユニット本体たる水受けパン(保持部)11を有している。水受けパン11は、上部が開放された深さの浅い長方形の容器状に形成されている。水受けパン11の長さは、タービンロータAのブレードCが設けられた部分の長さの半分より若干長く設定されている。水受けパン11の幅は、後述する洗浄液噴射ノズル28BからシュラウドDの外周面に吹き付けられた洗浄液がシュラウドDから滴り落ちるとき、その滴り落ちる洗浄液をほとんど受け止めることができるのは勿論のこと、シュラウドDにぶつかって飛散する洗浄液をも受け止めることができるような幅に設定されている。
【0012】
このように構成された水受けパン11は、タービンロータAの左側半分の真下に位置するようにして水平な床面F上に配置されている。より詳細に述べると、水受けパン11は、その長手方向をタービンロータAの軸線L方向に向けるとともに、幅方向の中央が前後方向において軸線Lと一致するように配置されている。しかも、水受けパン11は、その左端部がタービンロータAの最も左側に配置されたブレードCより若干左側に位置し、かつ右端部がタービンロータAの中心点Oより若干右側に位置するように配置されている。水受けパン11は、床面F上に設けられた薄い平板5上にローラ12を介して載置されている。これにより、水受けパン11がタービンロータAの軸線L方向へ移動可能になっている。
【0013】
水受けパン11には、追従手段Sが設けられている。追従手段Sは、タービンロータAが回転に伴ってその軸線方向へ移動したとき、その移動に追随して水受けパン11をタービンロータAの軸線方向へ移動させるためのものであり、次のように構成されている。すなわち、水受けパンの右端面には、支柱13(図2においては省略されている。)が立設固定されている。この支柱13の上端部には、一対の挟持バー14,14が軸線L方向へ位置調節可能に固定されている。各挟持バー14,14の先端部には、当接部材15,15が設けられている。各当接部材15,15は、同一段に配置されたブレードCの径方向における中間部の一側部と他側部とにそれぞれ軸線Lを中心として環状に設けられたタービンロータAの側壁に摺動可能に接触させられている。したがって、支持台1,1によって支持されたタービンロータAがその回転に伴って軸線L方向へ移動したときには、水受けパン11がタービンロータAの移動に追随して軸線L方向へ移動する。これにより、タービンロータAに対する水受けパン11、ひいては塗布洗浄ユニット2の相対位置が常に一定に維持されている。
【0014】
水受けパン11の長手方向の一端部と他端部とには、第1、第2支柱16,17が立設固定されている。第1支柱16の上端部には、ベースプレート18の左端部が、軸線Lと直交する方向を向く水平な軸線を中心として回動可能に連結されている。第2支柱17の上端部には、ベースプレート18の右端部が上下方向へ位置調節可能に連結され、ナット19,19によって固定されている。したがって、ナット19,19を緩めてベースプレート18の右端部の上下方向の位置を調節することにより、ベースプレート18の傾斜角度αを調節することができる。ベースプレート18の傾斜角度αは、軸線L方向に隣接する任意の二つのシュラウドDn,Dn+1の外周面を結ぶ線と軸線Lとのなす傾斜角度をβnとしたとき、次の式を満たすように設定されている。
α≒{β1+β2+…+β(N/2)}/(N/2)
N;シュラウドDの全数。
つまり、ベースプレート18の傾斜角度αは、傾斜角度βnの平均値とほぼ等しく設定されているのである。ベースプレート18を角度αで傾斜させることにより、ベースプレート18と各段のシュラウドDとの間の距離をある程度一定にしている。
【0015】
図2に示すように、ベースプレート18の幅方向における手前側の半分には、シュラウドDの外周面に浸透探傷液を塗布するための塗布ユニット2Aが設けられている。一方、ベースプレート18の幅方向における後側の半分には、シュラウドDの外周面に洗浄液を吹き付けてシュラウドDの外周面に塗布された浸透探傷液を洗い流すための洗浄ユニット2Bが設けられている。
【0016】
まず塗布ユニット2Aについて説明すると、図3〜図6に示すように、ベースプレート18には、前後方向に離れた一対のガイドバー(第1ガイド部材)20,20が着脱可能に設けられている。ガイドバー20は、ベースプレート18と平行にその一端部から他端部まで延びており、一端部及び他端部がベースプレート18にそれぞれ固定されている。したがって、ガイドバー20の一端部は、水受けパン11にベースプレート18を介して回動可能に連結され、ガイドバー20の他端部は、水受けパン11にベースプレート18を介してタービンロータAの径方向へ位置調節可能に連結されている。よって、ガイドバー20の傾斜角度は、ベースプレート18の傾斜角度αを変更すると、それに応じて変化する。しかも、ガイドバー20とタービンロータAの各段に配置された各シュラウドDとの上下方向の各間隔がほぼ一定になるよう、ガイドバー20は、各段に配置された各シュラウドDにほぼ沿うように湾曲して形成されている。
【0017】
一対のガイドバー20には、可動部材(第1可動部材)21がガイドバー20の長手方向へ移動可能に設けられている。可動部材21には、ベースプレート18と直交する方向に延びる一対の連結軸22,22の上端部が回動可能に連結されている。
【0018】
ベースプレート18には、ボールねじ23がその軸線を中心として回動可能に、かつその軸線方向へ移動不能に設けられている。ボールねじ23は、一対のガイドバー20,20に対し前後方向にはそれらの中間に位置し、上下方向にはそれらの下方に位置するように配置されている。しかも、ボールねじ23は、ベースプレート18と平行に配置されている。つまり、軸線Lに対して角度αだけ傾斜した状態で配置されている。ボールねじ23には、ボールナット24が螺合されている。このボールナット24には、連結軸22,22がその長手方向へ移動可能に挿通されている。これにより、ボールナット24の回転が阻止されるとともに、ボールナット24が可動部材21に対しボールねじ23の長手方向へ一体に移動するように連結されている。したがって、ベースプレート18に設けられたステッピングモータ等の回動駆動源25によってボールねじ23を回転駆動すると、ボールナット24がボールねじ23に沿って移動するとともに、可動部材21がガイドバー20に沿って移動する。これから明かなように、回転駆動源25、ボールねじ23、ボールナット24及び連結軸22によって可動部材(第1可動部材)21を移動させるための第1移動手段が構成されている。ここで、ガイドバー20の各部の傾斜角度がボールねじ23の傾斜角度αと異なっているので、可動部材21がガイドバー20に沿って移動すると、その移動に伴ってボールナット24に対する可動部材21の姿勢、及びボールナット24と可動部材21との間隔が変化する。前者の変化に対応するために、連結軸22の上端部が可動部材21に回動可能に連結されており、後者の変化に対応するために、連結軸22がボールナット24に移動可能に挿通されているのである。また、仮にボールねじ23が軸線Lと平行に配置されていると、ボールねじ23とガイドバー20の各部との傾斜角度が過度に大きくなり、可動部材21がボールナット24の移動に円滑に追随することができなくなるおそれがある。そこで、ベースプレート18を軸線Lに対して角度αだけ傾斜させ、ベースプレート18にボールねじ23を設けたのである。
【0019】
図4〜図6に示すように、可動部材21の前後方向の一側部には、油圧又は空圧シリンダ26(図2及び図3には図示を省略)が設けられている。シリンダ26は、その軸線LsをタービンロータAの軸線Lと直交させて配置されている。シリンダ26に設けられたロッド26aの上端部には、支持板27が固定されている。支持板27には、浸透探傷液噴射ノズル(塗布手段)28と引き延ばし用エアノズル29とが設けられている。噴射ノズル28には、浸透探傷液供給源(図示せず)が電磁開閉弁30を介して接続されている。したがって、電磁開閉弁30を開弁させると、噴射ノズル28の噴射口28aから浸透探傷液が霧状になって噴射される。一方、エアノズル29には、空気供給源(図示せず)が電磁開閉弁31を介して接続されている。したがって、電磁開閉弁31を開弁させると、エアノズル29の噴射口29aから空気が噴出する。
【0020】
両ノズル28,29の噴射口28a,29aは、図5に示すように、シュラウドDの外周面と対向するように配置されている。したがって、電磁開閉弁30を開くと、噴射口28aからシュラウドDの外周面に浸透探傷液が吹き付けられる。つまり、浸透探傷液がシュラウドDの外周面に塗布される。これから明かなように、この発明では、浸透探傷液のシュラウドDに対する吹き付けをも塗布と称している。一方、電磁開閉弁31を開くと、圧縮空気がシュラウドDの外周面に吹き付けられる。しかも、噴射口29aは、シュラウドDの探傷検査時におけるタービンロータAの回転方向(図4及び図5の矢印方向)に関し、噴射ノズル28の噴射口28aより所定距離だけ前方に配置されている。したがって、噴射口29aから噴射された空気は、直接にはシュラウドDの外周面に付着した浸透探傷液上に吹き付けられる。これによって、浸透探傷液が引き延ばされ、シュラウドDの外周面上にほぼ均一な厚さをもって塗布される。なお、噴射口28a,29aは、シリンダ26の軸線Lsに関して適度な間隔で配置されており、各噴射口28a,29aとシュラウドDの外周面との間の距離は、シリンダ26のロッド26aを前進後退させることによって適宜に調節することができる。
【0021】
洗浄ユニット2Bは、第1可動部材たる可動部材21に代えて第2可動部材たる他の可動部材が用いられ、噴射ノズル28に代えて洗浄液をシュラウドDの外周面に噴射するための洗浄液噴射ノズルが用いられ、エアノズル29に代えてシュラウドDに吹き付けられた洗浄液を吹き飛ばすとともに乾燥させるための乾燥用エアノズルが用いられている点を除き、塗布ユニット2Aと同様に構成されている。そこで、洗浄ユニット2Bの各構成要素については、塗布機構2Aの対応する構成要素に付された符号(数字)に符号Bを付加するに留め、各構成要素についての詳細な説明は省略する。例えば、洗浄液噴射ノズル及び乾燥用エアノズル(いずれも図示せず)には、符号28B,29Bをそれぞれ付して以後の説明を進めるものとする。なお、洗浄ユニット2Bにおいては、回転駆動源25B、ボールねじ23B、ボールナット24B及び連結軸22Bによって可動部材(第2可動部材)21Bを移動させるための第2移動手段が構成されている。
【0022】
洗浄ユニット2Bは、塗布ユニット2Aが浸透探傷液の塗布を開始してから所定時間経過した後に起動される。すなわち、洗浄ユニット2Bは、シュラウドDの外周面に傷が形成されている場合において、浸透探傷液が塗布後に傷内に入り込むことができる時間が経過した後に、起動される。したがって、洗浄ユニット2Bは、傷内に浸透した浸透探傷液を洗い流すことなく、シュラウドDの外周面に塗布された浸透探傷液だけを洗い流すことができる。なお、この実施の形態では、塗布ユニット2Aによる浸透探傷液の塗布開始後、10分経過してから洗浄ユニット2Bが起動されるようになっており、塗布ユニット2Aによる塗布作業途中に洗浄ユニット2Bが起動されている。洗浄ユニット2Bは、塗布ユニット2Aによる塗布作業の終了後に起動させてもよい。
【0023】
図7及び図8に示すように、上記撮影ユニット3は、基台41を有している。この基台41は、床面F上に移動可能に設置されており、支持台1,1に支持されたタービンロータAの左側の部分と対向するようにしてタービンロータAの手前側に配置されている。基台41には、軸線Lと平行に延びる一対のガイド軸42,42が設けられている。このガイド軸42,42には、可動部材(第3可動部材)43がガイド軸42の長手方向へ移動可能に設けられている。
【0024】
基台41には、軸線Lと平行に延びるボールねじ44がその軸線を中心として回動可能に、かつ位置固定して設けられている。ボールねじ44は、一対のガイド軸42,42間のほぼ中央に配置されている。ボールねじ44には、ボールナット(図示せず)が螺合されている。このボールナットは、可動部材43に固定されている。したがって、ボールねじ44をステッピングモータ等の回転駆動源45によって回転させると、可動部材43が軸線Lと平行に移動する。これから明かなように、回転駆動源45、及びボールねじ44によって第3移動手段が構成されている。
【0025】
可動部材43の上面には、軸線を軸線Lと直交する水平方向に向けた雌ねじ部材46がその軸線を中心として回動可能に、かつ移動不能に設けられている。この雌ねじ部材46には、ねじ軸47が螺合されている。ねじ軸47は、可動部材43に回動不能に、かつ前後方向へ移動可能連結されている。したがって、ステッピングモータ等の回転駆動源48によって雌ねじ部材46を回転させると、ねじ軸47が前後方向へ移動する。ねじ軸47のタービンロータA側の端部には、支持軸49が立設固定されている。この支持軸49の先端部には、CCDカメラ等の撮影手段50が設けられている。撮影手段50は、シュラウドDの外周面を撮影するためのものであり、軸線Lとほぼ同一高さに位置するように設置されている。撮影手段50によって撮影された画像は、後述する制御ユニット4のテーブル61上に載置されたモニター51によって画像表示されるとともに、デジタルビデオデスク(DVD)等の録画手段(図示せず)によって録画されるようになっている。
【0026】
制御ユニット4は、支持台1,1上に載置されたタービンロータAを回転させるための回転駆動手段、上記塗布洗浄ユニット2、及び撮影ユニット3を制御するためのものであり、基台41の左方に配置されたテーブル61を有している。テーブル61の上には、制御手段たるコンピュータ62が設けられている。コンピュータ62は、タッチパネル62aからなる入力手段を有している。タッチパネル62aには、処理装置を運転するのに必要なボタン等の各種のボタン(図示せず)が画像表示されている。例えば、タービンロータAの支持台1,1上への載置、並びに塗布洗浄ユニット2及び撮影ユニット3のセットが完了したことを入力するためのセット完了ボタン、処理装置を起動するための起動ボタン、及び後述する記録ボタン等である。
【0027】
セット完了ボタンに触れた後、起動ボタンに触れると、処理装置がコンピュータ62によって制御され、塗布ユニット2AによるシュラウドDの外周面に対する浸透探傷液の塗布、洗浄ユニット2Bによる浸透探傷液の洗浄及び乾燥、並びに撮影ユニット3によるシュラウドDの外周面の撮影及録画が自動的に行われる。
【0028】
すなわち、セット完了ボタン及び起動ボタンに順次触れると、まずタービンロータA用の回転駆動手段が起動され、タービンロータAが回転駆動される。タービンロータAの回転速度は、その回転駆動源に設けられた回転エンコーダ等の回転速度検出手段の検出信号に基づきコンピュータ62によって演算される。タービンロータAの回転速度が所定時間、所定の回転速度に維持されると、つまりタービンロータAの回転速度が一定の速度で安定すると、塗布機構2Aの回転駆動源25が回転駆動され、可動部材21がその初期位置(図2に示された可動部材21Bと左右方向において同一位置)から右方へ移動させられる。噴射ノズル28及びエアノズル29の各噴射口28a,29aが最初の(最も左側の)シュラウドDと対向するまで可動部材21が移動すると、回転駆動源25が停止させられる。可動部材21の移動距離は、回転駆動源25に設けられた回転エンコーダ等の回転速度検出手段(図示せず)の検出信号に基づきコンピュータ62によって演算される。
【0029】
各噴射口28a,29aが最初のシュラウドDと対向すると、電磁開閉弁30,31が開弁され、噴射口28a,29aから浸透探傷液及び空気がそれぞれ噴射される。電磁開閉弁30が開弁してからタービンロータAが1回転すると、電磁開閉弁30が閉弁される。その後、タービンロータAが噴射口28a,29a間の距離の分だけさらに回転すると、電磁開閉弁31が閉弁される。これによって、最初のシュラウドDに対する浸透探傷液の吹き付け(塗布)及び引き延ばしが終了する。
【0030】
次に、噴射口28a,29aが第2番目のシュラウドDと対向するまで可動部材21が移動させられる。可動部材21の停止後、再び電磁開閉弁30,31が開弁させられ、第2番目のシュラウドDに対する浸透探傷液の吹き付け及び引き延ばしが実行される。同様にして第(N/2)番目(最後)までの各シュラウドDに対する浸透探傷液の吹き付け及び引き延ばしが実行される。そして、最後のシュラウドDに対する吹き付け及び引き延ばしが完了すると、可動部材21が初期位置に戻される。この結果、塗布ユニット2Aが元の状態に戻る。
【0031】
塗布ユニット2Aが起動されてから、つまりシュラウドDに対する浸透探傷液の塗布が開始してから上記所定時間経過後、洗浄ユニット2Bが起動される。まず、噴射ノズル28B及びエアノズル29Bの各噴射口28Ba,29Baが最初のシュラウドDと対向するまで可動部材21Bが初期位置から右方へ移動させられる。可動部材21Bの移動距離は、コンピュータ62により回転駆動源25Bの回転量に基づいて演算される。その後、電磁開閉弁30B,31Bが開弁させられる。その結果、洗浄液がシュラウドDに吹き付けられて、浸透探傷液がシュラウドDから洗い流される。浸透探傷液を洗い流した洗浄液の大部分は、シュラウドDから滴り落ちて水受けパン11に受け止められる。洗浄液の一部は、シュラウドDの外周面に付着したまま残る。この付着した洗浄液の一部は、噴射口29Baから噴射される空気によって吹き飛ばされる。吹き飛ばされた洗浄液は、水受けパン11によって受け止められる。シュラウドDに付着した洗浄液の他の一部は、空気の吹き付けによって蒸発する。これによって、シュラウドDの外周面が乾燥される。シュラウドDの外周面の乾燥は、タービンロータAの1回転中に行ってもよく、複数回転させることによって行ってもよい。なお、水受けパン11に受け止められた浸透探傷液を含む洗浄液は、排水口11aから排水処理装置(図示せず)に送られて清浄に処理された後、下水等に排出される。第(N/2)番目(最後の)のシュラウドDに対する洗浄ユニット2Bによる洗浄液の吹き付け及び乾燥が終了すると、電磁開閉弁30B,31Bが閉弁させられるとともに、可動部材21Bが初期位置に戻される。これによって洗浄ユニット2Bが元の状態に戻る。
【0032】
次に、撮影ユニット3が起動され、最初のシュラウドDから第(N/2)番目のシュラウドDまでの各外周面の撮影及び録画が行われる。撮影、録画に際しては、まず可動部材43が初期位置から図7の右方へ移動させられる。勿論、可動部材43の移動距離は、コンピュータ62により回転駆動源45の回転数に基づいて演算される。撮影手段50が最初のシュラウドDと対向する位置に達すると、可動部材43が停止させられる。次に、回転駆動源48によって撮影手段50が最初のシュラウドDの外周面に対して所定の位置まで接近移動させられる。この場合の撮影手段50の移動距離も、コンピュータ62により回転駆動源48の回転数に基づいて演算される。その後、撮影手段50による撮影及び録画手段による録画が行われる。撮影手段50によって撮影された画像は、モニター51によって画像表示される。モニター51によって表示される画像には、モニター51によって画像表示されているシュラウドDの段数、及びブレードCの番号を表す画像が含まれる。勿論、段数及び番号を表示する画像も、撮影手段50によって撮影された画像と同時に録画手段によって録画される。したがって、録画手段によって録画させた画像を再生するときには、表示中のシュラウドDの段数及び周方向の位置が分かる。なお、シュラウドDの段数は、コンピュータ62により回転駆動源48の回転数に基づいて演算され、ブレードCの番号は、コンピュータ62によりタービンロータAの回転駆動源の回転数に基づいて演算される。
【0033】
撮影手段50による撮影中には、検査員がシュラウドDの外周面に傷があるか否かを目視によって検査する。検査員が傷を発見してタッチパネル62a上の記録ボタンに触れると、傷の発生を表す表示、例えば「傷の発生」という文字がモニター51に表示される。勿論、傷の発生を表示する画像は、録画手段によって録画される。全て(N/2個)のシュラウドDの検査及び撮影が終了したら、撮影手段50及び可動部材43が初期位置まで戻される。
【0034】
その後、塗布洗浄ユニット2、撮影ユニット3及び制御ユニット4が前述したように配置替えされ、上記と同様にしてタービンロータAの右側に位置する残りの半分のシュラウドDに対する浸透探傷液の吹き付け及び引き延ばし、洗浄液の吹き付け及び乾燥、並びに撮影及び録画が実行される。
【0035】
この発明の処理装置によれば、浸透探傷液の吹き付け(塗布)及び洗浄を人手によらずに行うことができ、作業者は処理装置を操作するだけでよい。したがって、作業者の疲労を大幅に軽減することができる。特に、この実施の形態の処理装置では、浸透探傷液の吹き付けの後に圧縮空気を吹き付けることによって浸透探傷液を引き延ばしているので、浸透探傷液をシュラウドDの外周面に均一に分布させることができる。また、乾燥用空気を吹き付けることによって洗浄液を乾燥させているので、洗浄液の吹き付け後、短時間のうちにシュラウドDの検査及び撮影を開始することができ、それによって検査に要する時間を短縮することができる。さらに、全画像データを保存することにより、検査記録の透明性を向上させることができる。
【0036】
なお、第1の態様に係る発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、浸透探傷液を噴射ノズル28によって吹き付けているが、図9に示すように、支持板27に支持部材33を設け、この支持部材33の上端部に塗布ロール(塗布手段)34を回転自在に設け、この塗布ロール34をシュラウドDの外周面に押圧接触させることによってシュラウドDの外周面に浸透探傷液を塗布してもよい。
【0037】
次に、この発明の第2の態様に係る一実施の形態について図12〜図16を参照して説明する。なお、この実施の形態も、上記タービンロータAのシュラウドDに浸透探傷液を塗布するとともに、塗布された浸透探傷液を洗浄するものであり、タービンロータAの軸体Bが図示しない左右一対の支持台(支持部)によって水平に支持されているものとする。
【0038】
図12及び図13に示すように、タービンロータAの下方に位置する床面F上には、タービンロータAと平行に延びる一対のレールR,Rが設けられている。このレールR,R上には、水受けパン(保持部)101がレールRの長手方向へ移動可能に設けられている。これにより、タービンロータAの軸線方向における水受けパン101のタービンロータAに対する位置を調節することができるようになっている。水受けパン101のその他の構成及び配置は、上記実施の形態の水受けパン11と同様である。
【0039】
水受けパン101には、複数の基台102が設けられている。基台102は、タービンロータAのブレードCの全段数をnとした場合において、段数nが偶数であるときには(n/2)個設け、段数nが奇数であるときには(n/2+1)個設けるのが望ましい。この実施の形態では、段数nが偶数であるので、基台102が(n/2)個設けられている。
【0040】
各基台102は、タービンロータAの左側半分の真下に位置するようにして一直線上に並び、かつ互いに離間して配置されている。各基台102は、水受けパン101にタービンロータAの軸線方向へ位置調節可能に設けられている。そして、各基台102は、それぞれの位置を調節することにより、タービンロータAの左側に位置する各シュラウドDと上下に対向するように位置決めされた後、各基台102と水受けパン101との間に設けられた固定手段(図示せず)によって水受けパン101に固定されている。各基台102の高さは、互いに対向する基台102とシュラウドDとの各間隔がほぼ一定になるように設定されている。
【0041】
水受けパン101は、次の構成を有する追従手段S′によりタービンロータAの軸線方向への移動に追随して同方向へ移動するようになっている。すなわち、全基台102のうち、最も右側に位置する基台102には、支柱103がブラケット104を介して立設固定されている。支柱103の上端部は、左からn/2段目のブレードCと(n/2+1)段目のブレードCとの間に入り込んでいる。図14に示すように、支柱103の上端部には、一対のローラ105,105が回転可能に設けられている。各ローラ105は、その回転軸線がタービンロータAの軸線Lと直交するよう、その軸線を上下方向に向けて配置されており、タービンロータAの軸線方向へ位置調節可能に設けられている。一方の(図14において左側に位置する)ローラ105は、タービンロータAのn/2段目に設けられた円板と称する部位(図示せず)に接するように位置調節され、他方のローラ105は、(n/2+1)段目の円板と称される部位(図示せず)に接するように位置調節されている。したがって、タービンロータAが回転駆動されると、各ローラ105,105がタービンロータAの円板部と称される部位上を転動する。これにより、タービンロータAがその回動に伴って軸線L方向へ移動したときに、水受けパン101がタービンロータAの移動に追随して移動し、各基台102のシュラウドDに対する相対位置が一定に維持されている。
【0042】
各基台102の上面には、軸線を上下方向に向けたシリンダ機構106がそれぞれ設けられている。シリンダ機構106のロッド106aの上端面は、シュラウドDの外周面と対向しており、そこには支持板107が設けられている。この支持板107の両端部には、支柱108がそれぞれ立設固定されている。
【0043】
一方の支柱(図16において右側の支柱)108には、浸透液噴射ノズル(塗布手段)109及び引き延ばし用エアノズル110がブラケット111を介して設けられている。浸透液噴射ノズル109及び引き延ばし用エアノズル110は、シュラウドDの外周面と対向し、かつシュラウドDの周方向へ互いに離間して配置されている。しかも、タービンロータAが図16の矢印方向へ回転駆動されるものとしたとき、浸透液噴射ノズル109がエアノズル110に対して回転方向の手前側に位置するように配置されている。浸透液噴射ノズル109及び引き延ばし用エアノズル110は、基台102を移動させることによってタービンロータAの軸線方向に対する位置調節が行われ、シリンダ機構106のロッド106aを前進、後退させることによってタービンロータAの径方向に対する位置調節が行われる。なお、浸透液噴射ノズル109は、浸透探傷液の供給源(図示せず)に接続され、引き延ばし用エアノズル110は、エア供給源(図示せず)に接続されている。
【0044】
他方の支柱(図16において左側の支柱)108には、洗浄液噴射ノズル112及び乾燥用エアノズル113がブラケット114を介して設けられている。洗浄液噴射ノズル112及び乾燥用エアノズル113は、シュラウドDの外周面と対向し、かつシュラウドDの周方向へ互いに離間して配置されている。しかも、洗浄液噴射ノズル112がエアノズル113に対してタービンロータAの回転方向の手前側に位置するように配置されている。洗浄液噴射ノズル112及び乾燥用エアノズル113は、基台102を移動させることによってタービンロータAの軸線方向への位置調節が行われ、シリンダ機構106のロッド106aを前進、後退させることによってタービンロータAの径方向への位置調節が行われる。なお、洗浄液噴射ノズル112は、洗浄液の供給源(図示せず)に接続され、乾燥用エアノズル113は、エア供給源(図示せず)に接続されている。
【0045】
この実施の形態のシュラウド検査用処理装置は、上記構成に加え、撮影ユニット及び制御ユニットを有している。撮影ユニット及び制御ユニットは、上記実施の形態の撮影ユニット3及び制御ユニット4と同様に構成されている。そこで、撮影ユニット及び制御ユニットについての説明は省略する。
【0046】
上記構成の処理装置を用いてシュラウドDの外周面に浸透探傷液を塗布し、その後浸透探傷液を洗浄する場合には、各基台102の位置調節を行うとともに、シリンダ機構106のロッド106aを前進後退させることにより、各ノズル109,110;112,113がシュラウドDの外周面に対して適宜の間隔をもって対向するように調節する。その後、タービンロータAを図16の矢印方向へ回転させつつ、浸透液噴射ノズル109及び引き延ばし用エアノズル110から浸透探傷液及び圧縮空気をそれぞれ噴射させてシュラウドDに吹き付ける。このとき、所定時間を確保するため、洗浄液噴射ノズル112及び乾燥用エアノズルからの噴射は停止させておく。タービンロータAが少なくとも1回転以上回転したら、浸透液噴射ノズル109及び引き延ばし用エアノズル110からの噴射を停止させる一方、洗浄液噴射ノズル112及び乾燥用エアノズルから洗浄液及び圧縮空気をそれぞれ噴射させ、シュラウドDに吹き付ける。その後、撮影ユニット及び制御ユニットによって各シュラウドDの外周面の撮影を行うとともに、その画像を記録する。このようにしてタービンロータAの左側に位置するシュラウドDの検査が完了したら、上記の実施の形態と同様に、処理装置をタービンロータAの中心に関して対称な位置に配置し、タービンロータAの右側に位置するシュラウドDの検査を行う。
【0047】
この実施の形態の処理装置においては、浸透液噴射ノズル109、引き延ばし用エアノズル110、洗浄液噴射ノズル112及び乾燥用エアノズル113をそれぞれ複数宛用い、浸透探傷液、引き延ばし用エア、洗浄液及び乾燥用エアの吹き付けを複数のシュラウドDに対して同時に行っているので、それらの吹き付け作業の能率を向上させることができる。特に、この実施の形態のように、ノズル109,110,112,113を(n/2)個設けた場合には、タービンロータAの全てのシュラウドDのうち、タービンロータAの軸線方向における一端部に配置された半分を同時に処理することができる、処理作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の第1の態様に係る一実施の形態の概略構成を示す平面図である。
【図2】同実施の形態の塗布洗浄ユニットを示す平面図である。
【図3】図2のX−X線に沿う断面である。
【図4】可動部材とボールナットとが最も接近した状態を示す図2のY−Y線に沿う拡大断面図である。
【図5】可動部材とボールナットとが最も離間した状態を示す図4と同様の断面図である。
【図6】図5のX矢視図である。
【図7】同実施の形態の撮影ユニット及び制御ユニットを示す正面図である。
【図8】同撮影ユニット及び制御ユニットを示す平面図である。
【図9】この発明の第1の態様に係る他の実施の形態の要部を示す図5と同様の断面図である。
【図10】この発明に係る処理装置の処理対象たるタービンロータの一例を示す斜視図である。
【図11】図10のX部分の拡大図である。
【図12】この発明の第2の態様に係る一実施の形態の要部を示す平面図である。
【図13】図12のX−X線に沿う断面図である。
【図14】図13のX円部の拡大図である。
【図15】図14のX矢視図である。
【図16】図13のY矢視図である。
【符号の説明】
【0049】
A タービンロータ
B 軸体
C ブレード
D シュラウド
S 追従手段
S′ 追従手段
1 支持台(支持部)
11 水受けパン(保持部)
21 可動部材(第1可動部材)
21B 可動部材(第2可動部材)
22、22B 連結軸
23、23B ボールねじ
24、24B ボールナット
25、25B 回転駆動源
28 洗浄液噴射ノズル(塗布手段)
29 引き延ばし用エアノズル
34 塗布ロール
43 可動部材(第3可動部材)
44 ボールねじ
45 回転駆動源
50 撮影手段
101 水受けパン(保持部)
109 浸透液噴射ノズル(塗布手段)
110 引き延ばし用エアノズル
112 洗浄液噴射ノズル
113 乾燥用エアノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体、この軸体の外周の軸線方向へ離れた各段に周方向に沿って多数宛て設けられたブレード、及び同一段に設けられた各ブレードの先端部に固定された環状をなすシュラウドを備えたタービンロータの各段のシュラウドに対して非破壊検査を行う際に、上記シュラウドの外周面に対する浸透探傷液の塗布と上記シュラウドに塗布された浸透探傷液を洗浄するための洗浄液の吹き付けとを行うためのタービンロータのシュラウド検査用処理装置であって、
上記タービンロータを回転自在に支持する支持部と、上記タービンロータを回転駆動する回転駆動源と、上記タービンロータに対しその径方向に隣接して配置された保持部と、この保持部に上記タービンロータの軸線方向へそれぞれ移動可能に設けられた第1、第2可動部材と、上記第1可動部材に設けられ、上記シュラウドの外周面に浸透探傷液を塗布する塗布手段と、上記第2可動部材に設けられ、上記塗布手段によって上記シュラウドの外周面に塗布された浸透探傷液を洗浄するために、上記シュラウドの外周面に洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルと、上記第1、第2可動部材をそれぞれ上記タービンの軸線方向へ移動させる第1、第2移動手段とを備えたことを特徴とするタービンロータのシュラウド検査用処理装置。
【請求項2】
上記第1可動部材には、上記シュラウドの外周面に向かって空気を噴射して、上記シュラウドの外周面に塗布された浸透探傷液を引き延ばしてその分布を均一にする引き延ばし用エアノズルが設けられ、上記第2可動部材には、上記洗浄液が付着した上記シュラウドの外周面に乾燥用空気を吹き付けて上記シュラウドの外周面を乾燥させる乾燥用エアノズルが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のタービンロータのシュラウド検査用処理装置。
【請求項3】
上記第1移動手段が、長手方向を上記タービンロータの軸線方向に向けて配置され、上記第1可動部材が移動可能に設けられた第1ガイド部材と、上記第1可動部材を移動させる第1移動源とを有し、上記ガイド部材の一端部が上記保持部に回動可能に設けられ、他端部が上記保持部に上記タービンロータの径方向へ位置調節可能に設けられており、上記第2移動手段が、長手方向を上記タービンロータの軸線方向に向けて配置され、上記第2可動部材が移動可能に設けられた第2ガイド部材と、上記第2可動部材を移動させる第2移動源とを有し、上記ガイド部材の一端部が上記保持部材に回動可能に設けられ、他端部が上記保持部に上記タービンロータの径方向へ位置調節可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタービンロータのシュラウド検査用処理装置。
【請求項4】
軸体、この軸体の外周の軸線方向へ離れた各段に周方向に沿って多数宛て設けられたブレード、及び同一段に設けられた各ブレードの先端部に固定された環状をなすシュラウドを備えたタービンロータの各段のシュラウドに対して非破壊検査を行う際に、上記シュラウドの外周面に対する浸透探傷液の塗布と上記シュラウドに塗布された浸透探傷液を洗浄するための洗浄液の吹き付けとを行うためのタービンロータのシュラウド検査用処理装置であって、
上記タービンロータを回転自在に支持する支持部と、上記タービンロータを回転駆動する回転駆動源と、上記タービンロータに対しその径方向に隣接して配置された保持部と、この保持部に設けられ、上記各シュラウドの外周面に上記浸透探傷液をそれぞれ塗布する複数の塗布手段と、上記保持部に上記塗布手段と同数設けられ、上記塗布手段によって上記シュラウドの外周面にそれぞれ塗布された浸透探傷液を洗浄するために、上記各シュラウドの外周面に洗浄液をそれぞれ噴射する複数の洗浄液噴射ノズルとを備えたことを特徴とするタービンロータのシュラウド検査用処理装置。
【請求項5】
上記タービンロータの段数をnとしたとき、上記塗布手段及び上記洗浄液噴射ノズルが、n/2個又は(n/2+1)個だけ設けられていることを特徴とする請求項4に記載のタービンロータのシュラウド検査用処理装置。
【請求項6】
上記保持部には、上記シュラウドの外周面に向かって空気を噴射して、上記シュラウドの外周面に塗布された浸透探傷液を引き延ばす引き延ばし用エアノズルと、上記洗浄液が付着した上記シュラウドの外周面に乾燥用空気を吹き付けて、上記シュラウドの外周面を乾燥させる乾燥用エアノズルとが上記塗布手段と同数宛設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載のタービンロータのシュラウド検査用処理装置。
【請求項7】
上記塗布手段、上記洗浄液噴射ノズル、上記引き延ばし用エアノズル及び上記乾燥用エアノズルが上記保持部に上記タービンロータの軸線方向及び径方向へ位置調節可能に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のタービンロータのシュラウド検査用処理装置。
【請求項8】
上記タービンロータの軸線方向へ移動可能に配置された第3可動部材と、この第3可動部材に設けられ、上記シュラウドの外周面を撮影する撮影手段と、この撮影手段によって撮影された画像を録画する録画手段と、上記第3可動部材を上記タービンロータの軸線方向へ移動させる第3移動手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタービンロータのシュラウド検査用処理装置。
【請求項9】
上記撮影手段が撮影している上記シュラウドの上記タービンロータの軸線方向及び周方向の位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段によって検出された位置を画像信号に変換して上記録画手段に出力し、上記撮影手段によって撮影された画像中に位置を示す画像を加えて録画させる位置画像出力手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載のタービンロータのシュラウド検査用処理装置。
【請求項10】
上記保持部が上記タービンロータの軸線方向へ移動可能に設けられ、上記保持部には、上記タービンロータの軸線方向への移動に追随して上記保持部を上記タービンロータの軸線方向へ移動させる追従手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のタービンロータのシュラウド検査用処理装置。
【請求項11】
上記追従手段が、基端部が上記保持部に固定され、先端部が上記タービンロータの軸線方向に隣接する二つの段にそれぞれ配置されたブレード間に挿入された支柱と、この支柱の先端部に上記タービンロータの軸線とほぼ直交する軸線を中心としてそれぞれ回転可能に設けられた一対のローラとを有していることを特徴とする請求項10に記載のタービンロータのシュラウド検査用処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−200470(P2006−200470A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14397(P2005−14397)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(391037814)株式会社東京エネシス (24)
【Fターム(参考)】