説明

タービン翼の振動計測装置及び振動計測方法

【課題】プローブ設置により生じる外乱を減少させ、タービン翼の振動モードの判別が可能となる振動計測装置及び振動計測方法の提供。
【解決手段】作動ガスを受けて回転するタービンインペラ3の端面3aに向けてレーザー光を投光すると共に反射した上記レーザー光を受光する光学プローブ50を有し、該光学プローブ50の受光結果に基づいてタービンインペラ3の振動を計測する振動計測装置100であって、端面3aにおいて、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの腹に対応する位置に設けられた第1光学プローブ50A1及び50A2と、端面3aにおいて、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの節に対応する位置に設けられた第2光学プローブ50B1及び50B2とを有する構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転中のタービン翼の振動を非接触で計測する光学プローブを備えるタービン翼の振動計測装置及び振動計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、タービンの性能評価において、運転中のタービン翼の振動を計測することがなされている。下記特許文献1には、歪みゲージをタービン翼に貼付することなく光学的にタービン翼の振動を計測することで、高温の作動ガスに曝されるタービン翼の振動を、特性変化を生じさせることなく計測する振動計測装置が開示されている。
【0003】
この振動計測装置は、内部に配設された光ファイバーの先端にレンズ及び保護ガラスを備えた光学プローブをタービンのハウジングを貫通させて、その先端をタービン翼の端面に対向配置する。そして、投光用の光ファイバーからタービン翼に向けて投光したレーザー光の反射光を受光用の光ファイバーを介して検知してタービン翼の振動を計測する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2874310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記振動計測装置は、タービン翼の振動を局所的に計測するものであるため、タービン翼全体の振動状態(振動モード)が、1次の振動モードであるか2次の振動モードであるかの判別が困難であるという問題がある。
【0006】
通常は、1次固有振動数n1(Hz)と2次固有振動数n2(Hz)とは、n1<n2の関係にあり、事前のハンマリング等により計測しておくことが可能である。そして、タービン翼の上流側に作動ガスの流れを妨げるような障害物がなければ、1次の固有振動モードが現れる回転数N1(rps)と、2次の固有振動モードが現れる回転数N2(rps)とは、下記の式(1)で表される。
N1=n1 N2=n2 …(1)
ここで、n1<n2なので、タービンの回転数Nt(rps)がN1とき1次の固有振動モードが、N2のとき2次の固有振動モードが見られる。したがって、Ntが分かれば何次の振動モードであるかを判別することが従来の方法でも可能であった。
【0007】
しかしながら、タービン翼の上流側に円周方向等間隔にN個配置された部品が存在する場合、1次の固有振動モードは、下記の式(2)で表された回転数Nt1(rps)であっても現れる。
Nt1=n1/N …(2)
この時、Nとn1、n2の関係によっては、N1とN2とが同じになってしまう場合がある。したがって、従来の方法では、Ntから何次の固有振動モードであるかを判別することが困難であるという問題がある。
【0008】
なお、計測データの信頼性向上のために、光学プローブを複数個配置する必要が多々ある。通常考えられる方法として、光学プローブは、円周方向に等間隔に配置される。しかし、等間隔に配置すると、上記の式(2)で示したような現象により、光学プローブを設置したことで振動モードの計測結果に影響を与える。これは、計測の信頼性の面で問題となる。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、タービン翼の振動モードの判別が可能となる振動計測装置及び振動計測方法の提供を目的とし、さらには、該振動計測装置及び振動計測方法の計測の信頼性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、作動ガスを受けて回転するタービン翼の端面に向けてレーザー光を投光すると共に反射した上記レーザー光を受光する光学プローブを有し、該光学プローブの受光結果に基づいて上記タービン翼の振動を計測するタービン翼の振動計測装置であって、上記端面において、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの腹に対応する位置に設けられた第1光学プローブと、上記端面において、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの節に対応する位置に設けられた第2光学プローブとを有するという構成を採用する。
この構成において、第1光学プローブで、従来行っていた翼振動の計測を行い、本発明により新規設置した第2光学プローブにて振動モードの判別のための計測を行う。
すなわち、第2光学プローブにおいて、1次の振動モードでは腹に相当する部位なので大きな振幅が計測されるのに対し、2次の振動モードでは節に相当する部位なので振幅がほとんど計測されない。このため、第1光学プローブで腹を検知し第2光学プローブが腹を検知している時は1次の振動モードと、第1光学プローブで腹を検知し第2光学プローブが節を検知している時は2次の振動モードと判断できる。
【0011】
また、本発明では、上記第1光学プローブ及び上記第2光学プローブは複数設けられており、各光学プローブは、上記タービン翼の回転軸周りの周方向において互いに異なる位置に設けられているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、上記のように光学プローブを複数設けると、軸方向において設置スペースを確保することが困難であるため、周方向にずれた位置に光学プローブを配置する。
【0012】
本発明では、上記タービン翼の周りには上記作動ガスを導くノズルベーンが等間隔で複数設けられており、上記光学プローブは、上記周方向において不等間隔で設けられているという構成を採用する。
タービン翼の周りにノズルベーンが等間隔で複数配置されている場合に、周方向において光学プローブを等間隔で配置すると、上記の式(2)で示したように、光学プローブ自体がタービン翼の振動を励起(共振)する原因となって外乱を与えてしまう虞がある。本発明では、この共振を回避するため光学プローブを周方向に不等間隔で配置する。
【0013】
また、本発明では、上記タービン翼の周りには上記作動ガスを導くノズルベーンが等間隔で複数設けられており、上記光学プローブの個数と上記ノズルベーンの個数とは素数関係となっているという構成を採用する。
タービン翼の周りにノズルベーンが等間隔で複数配置されている場合に、周方向において光学プローブの個数とノズルベーンの個数とが倍数で配置されると固有振動数との関係で、光学プローブ自体がタービン翼の振動を励起(共振)する原因となって外乱を与えてしまう虞がある。本発明では、この共振を回避するため光学プローブの個数とノズルベーンの個数とを素数関係となるようにする。
【0014】
また、本発明では、作動ガスを受けて回転するタービン翼の端面に向けてレーザー光を投光すると共に反射した上記レーザー光を受光する光学プローブを有し、該光学プローブの受光結果に基づいて上記タービン翼の振動を計測するタービン翼の振動計測方法であって、上記端面において、1次の振動モード及び2次の振動モードでの腹及び節の位置を予め求める工程と、上記端面において、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの腹に対応する位置に設けられた第1光学プローブを用いて上記タービン翼の振動を計測する工程と、上記端面において、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの節に対応する位置に設けられた第2光学プローブを用いて上記タービン翼の振動を計測する工程とを有するという手法を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの節に対応する位置に設けられた第2光学プローブを設置したことにより、従来の方法では困難であった、同一回転数における1次固有振動モードと、2次固有振動モードの判別が可能となる。また、これらの光学プローブを、円周方向不等間隔やノズルベーンの数と素数関係で設置する方法を採用することで、通常考えられる等間隔で配置した場合と比較して、光学プローブ設置による計測結果への影響を減少させる。
したがって、本発明により、計測の信頼性が向上し、且つ、タービン翼の振動モード判別が可能となる振動計測装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における振動計測装置の光学プローブが設けられた可変容量型ターボチャージャを示す全体構成図である。
【図2】図1における矢視K図である。
【図3】図2における線視X1及び線視X2における断面図である。
【図4】図2における線視Y1及び線視Y2における断面図である。
【図5】本発明の実施形態におけるタービンインペラの振動モードを示す図である。
【図6】本発明の実施形態における振動計測装置の計測結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態における振動計測装置の光学プローブが設けられた可変容量型ターボチャージャを示す全体構成図である。図2は、図1における矢視K図である。図3は、図2における線視X1及び線視X2における断面図である。図4は、図2における線視Y1及び線視Y2における断面図である。図5は、本発明の実施形態におけるタービンインペラの振動モードを示す図である。図6は、本発明の実施形態における振動計測装置の計測結果を示す図である。
図に示すように本実施形態における振動計測装置100の光学プローブ50が設けられる供試体は、可変容量型ターボチャージャTである。
【0018】
可変容量型ターボチャージャTは、ベアリングハウジング1a、タービンハウジング1b及びコンプレッサハウジング1cからなるハウジング1を有している。
ベアリングハウジング1a内には、図1中水平方向に延びるタービン軸2が図示しないベアリングを介して回転自在に軸支されている。そして、このタービン軸2の一端側(図示の例では左端側)にはタービンインペラ(タービン翼)3が一体的に連結され、他端側(図示の例では右端側)にはコンプレッサインペラ4が一体的に連結されている。なお、タービンインペラ3はタービンハウジング1b内に配置され、コンプレッサインペラ4はコンプレッサハウジング1c内に配置されるように構成されている。
【0019】
タービンハウジング1bは、タービンインペラ3の径方向外側に設けられるタービンスクロール流路5を有すると共に、タービン軸2の軸心方向で、且つ、そのタービン軸2と反対側に開口する、作動ガスの排気口であるタービンハウジング出口6を有している。また、タービンハウジング1b内のタービンインペラ3の径方向外側には略環状を呈する、可変ノズルユニットNが設置されている。
【0020】
タービンスクロール流路5は、タービンインペラ3を囲んで略環状に形成されていると共に、このタービンスクロール流路5は、作動ガスを導入するためのガス流入口5Aと連通されている。また、タービンスクロール流路5及びタービンハウジング出口6間に形成される空間(流路)には、可変ノズルユニットNの後述するノズルベーン12が配置されるように構成されている。
【0021】
コンプレッサハウジング1cには、タービン軸2の軸心方向で、且つ、そのタービン軸2と反対側に開口する吸気口7が形成されている。また、ベアリングハウジング1aとコンプレッサハウジング1cとの間には、空気を圧縮して昇圧するディフューザ流路8がコンプレッサインペラ4の径方向外側で略環状に形成されている。このディフューザ流路8は、コンプレッサインペラ4の設置箇所を介して吸気口7と連通されている。
さらに、コンプレッサハウジング1cは、コンプレッサインペラ4の径方向外側で略環状に形成されるコンプレッサスクロール流路9が形成されていていると共に、このコンプレッサスクロール流路9は、ディフューザ流路8と連通されている。なお、コンプレッサスクロール流路9は、図示しない内燃機関の吸気口と連通されている。
【0022】
可変ノズルユニットNには、タービンスクロール流路5及びタービンハウジング出口6間に形成される空間(流路)に、シュラウドリング10及びノズルリング11間の周囲に所定の等間隔を保って設けられた複数のノズルベーン12が支軸13を介して回動自在に設けられている。そして、各ノズルベーン12の支軸13は、それぞれ同期用伝達リンク14に接続されていて、これら同期用伝達リンク14は、回動自在に設けられている駆動リング15に連結されている。
【0023】
上記駆動リング15は、駆動軸16の一端側に連結された駆動用伝達リンク17に連結されている。駆動軸16は、ベアリングハウジング1aに設けられた軸受18に貫通して軸支されている。そして、この駆動軸16の他端側には、ベアリングハウジング1aの外側に位置するアクチュエータAと駆動レバー19を介して連結されている。
【0024】
この可変容量型ターボチャージャTおいて、図示しない内燃機関の排気口から排出された作動ガスはタービンスクロール流路5に導入される。そして、その導入された作動ガスは、シュラウドリング10及びノズルリング11間を流通し、タービンインペラ3を回転駆動させ、タービンハウジング出口6から排出される。タービンインペラ3が回転駆動するとタービン軸2で連結されたコンプレッサインペラが回転駆動し、圧縮空気を生成する。
【0025】
他方、アクチュエータAの動作は、駆動レバー19を介して駆動軸16を回転させ、その駆動軸16の端部に設けられた駆動用伝達リンク17を介して駆動リング15を回転駆動させる。この駆動リング15が回転駆動することにより、各同期用伝達リンク14を介して各ノズルベーン12の角度を同期して傾動(可変)させ、シュラウドリング10及びノズルリング11間の開口面積(開度)が変化させられる。そして、この開口面積の変化により、タービンインペラ3に供給される作動ガスの流量が調節される。
【0026】
光学プローブ50は、作動ガスを受けて回転駆動するタービンインペラ3に向けて投光したレーザー光の反射光を検知してタービンインペラ3の振動を計測するものであり、レーザー光を導く光ファイバーケーブル51を備える。光ファイバーケーブル51は、レーザー光を投光する投光用の光ファイバー(投光部)と、反射光を受光する受光用の光ファイバー(受光部)とを備える。投光用の光ファイバー及び受光用の光ファイバーは、タービンインペラ3の端面3aに対向する先端部51aにおいて露出している。この光学プローブ50は、タービンインペラ3のラジアル方向(半径方向)に直線的に延び、タービンハウジング1bを貫通して、タービンスクロール流路5を横切り、タービンインペラ3の端面3a近傍まで延在している。
【0027】
投光用の光ファイバーは不図示のレーザー発振機に接続されており、レーザー発振機から伝送されたレーザー光は、タービンインペラ3の端面3aに向けて投光される。そして、タービンインペラ3の端面3aで反射したレーザー光は、受光用の光ファイバーで受光され伝送される。受光用の光ファイバーで伝送された反射光は、光電変換器で電気信号に変換されて、振動計測装置100のPC(Personal Computer)によって解析される。タービンインペラ3が振動していると、タービンインペラ3の端面3aの変形によって反射したパルス状のレーザー光の受光タイミングに微小なズレが生じるので、その変化量を計測することによって、タービンインペラ3の振動レベル(振幅)計測が可能となる。また、振動レベルをFEM(Finite Element Method)を用いて数値解析することで、タービンインペラ3に作用する応力を計測することが可能となる。
【0028】
ここで、本実施形態における特徴的な構成を説明する前に、図5を参照して、タービンインペラ3の振動モードについて説明する。なお、図5において、振動が大きい領域(腹)は薄い色調で、逆に振動が小さい領域(節)は濃い色調で示す。
図5に示すように、1次の振動モードでは端面3aに腹が1つ現れ、次数が上がるごとに腹の数が増えている。ここで、1次の振動モードと2次の振動モードとの違いに着目すると、1次の振動モードでは腹が現れている領域に、2次の振動モードでは節が現れていることが分かる。
【0029】
そこで、本実施形態の振動計測装置100は、端面3aにおいて、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの腹に対応する位置に設けられた第1光学プローブ50A1及び50A2(図3参照)と、端面3aにおいて、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの節に対応する位置に設けられた第2光学プローブ50B1及び50B2(図4参照)の計4つの光学プローブ50を用いて、タービンインペラ3の振動モードを振動の腹と節が現れる位置の違いを検知し、タービンインペラ3の振動が1次の振動モードであるか2次の振動モードであるかを判断する構成となっている。
【0030】
タービンインペラ3の腹や節の位置は、例えばFEM解析等によって予め求めることができる。なお、これらの位置は、解析時の図面値と、実物の寸法との微小な違いにより、厳密に一致しない可能性がある。しかし、1次の振動モードと2次の振動モードとを判断するに際しては、腹の位置あるいは節の位置が微小にずれていても、その位置に設けられた光学プローブ50によってこれらの振動の傾向を計測可能であれば、腹や節の位置が厳密に一致しなくても振動モードの判断は可能となる。
【0031】
第1光学プローブ50A1(50A2)は、図3に示すように、タービンインペラ3の出口側角部に対応する位置の端面3aに向けて取り付けられている。
一方、第2光学プローブ50B1(50B2)は、図4に示すように、端面3aにおいて、第1光学プローブ50A1及び50A2が取り付けられた位置からコンプレッサ側に軸方向でずれた位置に取り付けられている。
なお、本実施形態のように可変容量型ターボチャージャTが小型の場合に、光学プローブ50を複数設けると、軸方向において設置スペースを確保することが困難であるため、図2に示すように、タービンインペラ3の回転軸周りの周方向において互いにずらした位置に光学プローブ50(50A1、50A2、50B1、50B2)を配置している。
【0032】
本実施形態のようにタービンインペラ3の周りにノズルベーン12が等間隔で複数(本実施形態では14個)配置されている場合に、周方向において光学プローブ50を等間隔(90度ピッチ)で配置すると、光学プローブ50自体がタービンインペラ3の振動を励起(共振)する原因となってしまう虞がある。すなわち、タービンインペラ3が一回転すると、翼一枚が14個のノズルベーン12とそれぞれ対向し、一周期あたり14回の振動が加わる。また、タービンインペラ3が一回転すると、翼一枚が4個の光学プローブ50と対向し、一周期あたり4回の振動が加わる。これらの振動が、固有振動数との関係で倍数の関係になると、タービンインペラ3が共振して外乱が生じてしまう。
【0033】
このため、本実施形態では、周方向において光学プローブ50(50A1、50A2、50B1、50B2)を不等ピッチ(不等間隔)となるように配置している。光学プローブ50は、光学プローブ50A1と光学プローブA2と間のピッチが角度θ1で、光学プローブ50A1と光学プローブB1と間のピッチが角度θ2で、光学プローブ50B1と光学プローブB2と間のピッチは角度θ3で配置されている。本実施形態では、角度θ1及び角度θ3が30度の角度に、角度θ2が40度の角度に設定されている。
【0034】
続いて、上記構成の振動計測装置100を用いて得られたタービンインペラ3の振動の計測結果の一例について、図6を参照して説明する。図6において、縦軸は翼の振幅を、横軸はタービンインペラ3の回転数を示す。また、図6において、細い実線は光学プローブ50A1の計測結果を、細い点線は光学プローブ50A2の計測結果を、太い実線は光学プローブ50B1の計測結果を、太い点線は光学プローブ50B2の計測結果を示す。
【0035】
図6に示すように、回転数を上げていくと、ラインL1までは各光学プローブ50から出力される振幅は略一定である。なお、このときの振動モードは、光学プローブA1及び光学プローブA2での振幅の値が高く、光学プローブB1及び光学プローブB2での振幅の値が低いため、2次の振動モードであると判断できる。
しかし、ラインL1を超えてラインL2までの間においては、光学プローブA1及び光学プローブA2での振幅の値が高いままで、光学プローブB1及び光学プローブB2での振幅の値が増加して、高い値を示している。すなわち、ラインL1からラインL2の範囲で、タービンインペラ3の振動モードが1次に変化していると判断できる。
【0036】
したがって、本実施形態によれば、第1光学プローブ50A1及び50A2、第1光学プローブ50B1及び50B2を設けることで、タービンインペラ3の振動モードを、振動の腹と節が現れる位置の違いを検知して判断できる。すなわち、振動が小さい節と節との間には振動が大きい腹に対応する領域があり、2次の振動モードでは、1次の振動モードで腹に対応する領域に節が現れる。このため、第1光学プローブ50A1及び50A2で腹を検知し第2光学プローブ50B1及び50B2が腹を検知している時は1次の振動モードと、第1光学プローブ50A1及び50A2で腹を検知し第2光学プローブ50B1及び50B2が節を検知している時は2次の振動モードと判断できる。
したがって、本実施形態は、従来の方法では困難であった、同一回転数における1次固有振動モードと、2次固有振動モードの判別ができる振動計測装置100が得られる。
【0037】
また、本実施形態では、各光学プローブ50を、タービンインペラ3の回転軸周りの周方向において互いに異なる位置に設けることで、設置スペースを確保することができる。さらに、タービンインペラ3の周りにノズルベーン12が等間隔で複数配置されている場合に、周方向において光学プローブ50を等間隔で配置すると、光学プローブ50自体がタービンインペラ3の振動を励起(共振)する原因となって外乱を与えてしまう虞があるため、本実施形態では、各光学プローブ50を周方向に不等間隔で配置し、共振による外乱を回避する。したがって、タービンインペラ3の振動を正確に計測することができる。
【0038】
なお、共振を回避するために、等間隔で配置されたノズルベーン12の個数と、光学プローブ50の個数とを素数関係にするという構成を採用してもよい。この構成によれば、これらの振動が、固有振動数との関係で倍数の関係になることがないため、周方向において光学プローブ50を等間隔で配置することができる。例えば、ノズルベーン12を13個設けた場合は、光学プローブ50を2個設ける構成が採用できる。
【0039】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
2…タービン軸(回転軸)、3…タービンインペラ(タービン翼)、3a…端面、12…ノズルベーン、50…光学プローブ、50A1,50A2…第1光学プローブ、50B1,50B2…第2光学プローブ、100…振動計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動ガスを受けて回転するタービン翼の端面に向けてレーザー光を投光すると共に反射した前記レーザー光を受光する光学プローブを有し、該光学プローブの受光結果に基づいて前記タービン翼の振動を計測するタービン翼の振動計測装置であって、
前記端面において、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの腹に対応する位置に設けられた第1光学プローブと、
前記端面において、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの節に対応する位置に設けられた第2光学プローブとを有することを特徴とするタービン翼の振動計測装置。
【請求項2】
前記第1光学プローブ及び前記第2光学プローブは複数設けられており、
各光学プローブは、前記タービン翼の回転軸周りの周方向において互いに異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のタービン翼の振動計測装置。
【請求項3】
前記タービン翼の周りには前記作動ガスを導くノズルベーンが等間隔で複数設けられており、
前記光学プローブは、前記周方向において不等間隔で設けられていることを特徴とする請求項2に記載のタービン翼の振動計測装置。
【請求項4】
前記タービン翼の周りには前記作動ガスを導くノズルベーンが等間隔で複数設けられており、
前記光学プローブの個数と前記ノズルベーンの個数とは素数関係となっていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のタービン翼の振動計測装置。
【請求項5】
作動ガスを受けて回転するタービン翼の端面に向けてレーザー光を投光すると共に反射した前記レーザー光を受光する光学プローブを有し、該光学プローブの受光結果に基づいて前記タービン翼の振動を計測するタービン翼の振動計測方法であって、
前記端面において、1次の振動モード及び2次の振動モードでの腹及び節の位置を予め求める工程と、
前記端面において、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの腹に対応する位置に設けられた第1光学プローブを用いて前記タービン翼の振動を計測する工程と、
前記端面において、1次の振動モードでの腹に対応する位置で、且つ、2次の振動モードでの節に対応する位置に設けられた第2光学プローブを用いて前記タービン翼の振動を計測する工程とを有することを特徴とするタービン翼の振動計測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate