説明

タービン翼

本発明は、蒸気タービン発電所(10)特に再熱器(38)付き蒸気タービン発電所(10)における蒸気タービン発電所(10)の起動段階中に、特に蒸気タービン発電所(10)の無負荷運転中に、高圧タービン(14)の蒸気質量流量を増大する方法に関し、発電機(20)と電力系統との同期前に、蒸気タービン発電所(10)の発電機(20)が少なくとも1個の電気負荷(46)に接続される。本発明はまた、発電機(20)と、高圧蒸気タービン(14)と、蒸気タービン発電所(10)の起動段階中に発電機(20)と電力系統との同期前に高圧タービン(14)の蒸気質量流量を増大するために発電機(20)に接続される少なくとも1個の電気負荷(46)とを有している蒸気タービン発電所(10)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン発電所特に再熱器付き蒸気タービン発電所における蒸気タービン発電所の起動段階中に、特に蒸気タービン発電所の無負荷運転中に、高圧蒸気タービンの蒸気質量流量を増大する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料式発電所の始動時ないし起動時、まず発電所のボイラが最低負荷(通常30〜40%負荷)で運転される。この起動段階中に発生される生(主)蒸気は、(いわゆる)バイパス運転において一般にまず蒸気タービンを迂回される。再熱器付き発電所において、その生蒸気は高圧バイパス装置を介して導かれ、より低い温度レベルに注水冷却され、そして再熱器の低温側入口管に導かれる。再熱器の高温側出口管から出る(再熱)蒸気は、中圧バイパス装置を介して導かれ、注入水による冷却後に復水器に導かれる。再熱器における高い圧力レベル(通常約20〜30バール)によって、燃焼ガスが供給される再熱器伝熱管の効果的な冷却が保証される。
【0003】
蒸気タービン発電所の高圧タービンが上述したバイパス運転から定格回転数に加速されるとき、再熱器の入口管における高い圧力は高圧タービンの出口に、特に熱機始動時ないし暖機始動時(所謂ホットスタート時)に、定格負荷運転時よりかなり高い温度を生じさせる。その原因は、高圧タービンにおける小さな蒸気質量流量による僅かな温度低下ないし通風運転にある。タービン発電機設備がまだ電力系統に電力を供給しないので、その無負荷運転時の蒸気質量流量は回転数制御上の理由から増大することはできない。この運転段階においてタービンは軸受と発電機における損失出力しか発生せず、その損失出力は設備の大きさに応じて通常2〜5MWである。電力系統との同期後にはじめて、その出力が増大される。
【0004】
そのように同期前に生ずる高い温度のために、高圧タービンの排気部位および再熱器の入口管の配管は、高い温度に耐え、特に始動時と停止時に大きく変動する温度にも耐えるように設計されねばならない。これは、目下のところ、タービンおよび再熱器の入口管の配管の設計において比較的コスト的に有利な材料の利用によって可能である。現在、一般には最大約565℃の生蒸気温度はそれに伴って約最大500℃の高圧排気温度を生ずる。その生蒸気温度を将来の設備における熱機始動時に最大約700℃に高めると、それに伴って一時的に約580℃〜600℃の排気温度が生ずる。従って、生蒸気温度をそのように最大約700℃に高めるためには、高圧蒸気タービンの排気部位および再熱器の入口管に非常に高価な材料特に10%Cr鋼を利用することが必要となる。
【0005】
他の公知の方式は適切な冷却を追求している。即ち、例えば過去において、始動のために高圧タービン排気室を復水器に直結するいわゆる始動配管も採用された。その場合、始動時および無負荷運転時に高圧タービン排気圧力を低下することによって、膨張域距離が延長され、高圧タービンにおける通風運転が防止される。しかしそのために、補助的に比較的大きな配管および注水冷却装置が必要である。また、別の始動構想を追求することも知られている。即ち、例えば燃焼ガスをボイラ内のフラッパ弁を介して再熱器伝熱管を迂回させることが知られている。これにより、その再熱器伝熱管は冷却される必要がなく、再熱器の入口管の非常に低い圧力に対して蒸気タービンの始動が可能となる。他の始動構想において、高圧タービンはまず排気運転され、電力系統との同期後にはじめて接続される。
【0006】
全体として、上述した冷却方式および始動構想は、耐熱材料を必要とし正に高価で経費のかかる方式と見なされ、このために、電力系統との同期前に生ずる高い高圧タービン出口温度を低減するための改善された方式が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、蒸気タービン発電所の起動段階中に電力系統との同期前に生ずる高い高圧タービン出口温度が、大きな経費を要することなくできるだけコスト的に有利に低減される方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明に基づいて、特に再熱器を有する蒸気タービン発電所の起動段階中に、特にその無負荷運転中に、蒸気質量流量を増大する冒頭に述べた形式の方法において、蒸気タービン発電所の発電機がその発電機の電力系統との同期前に少なくとも1個の電気負荷に接続されることによって解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に基づく方法によって、無負荷運転出力が電気回路側で人為的に高められ、それに伴って、電力系統との同期前にはやくも蒸気質量流量が相応して増大される。即ち、本発明に基づいて特に蒸気タービン発電所の高圧タービンが増大された蒸気質量流量により、発電機が既に早期に励磁され、電力系統との同期前でも発電機に電気負荷が接続されるほどのより大きな出力を発生する。この発生電力は好適には抵抗の形態の電気負荷に供給され、この電気負荷は相応して冷却されねばならない。電力系統との同期前に本発明に基づく方法に伴って既に増大された蒸気質量流量は、特に高圧タービンが無負荷運転において僅かしか通風運転されず、従って、特に無負荷運転と定格負荷運転との間の温度差がさほど大きく現れないので、高圧タービンの排気部位および再熱器の入口管の配管が、非常に高い生蒸気温度の場合でもコスト的に有利な材料で設計できるように作用する。
【0010】
本発明に基づく方法の有利な実施態様において、電気抵抗の形態の電気負荷は、この電気負荷を冷却するために、好適には、蒸気タービン発電所の給水タンク内に配置されている。これは、ここでは比較的低温で流れる復水が脱気のために必要とされる通常5〜10バールの圧力に対応して飽和温度まで加熱されねばならない点において有利である。即ち、再熱器の入口管から過度に多量の蒸気質量流量が取り出される必要がなく、再熱器伝熱管の冷却のためにより多量の蒸気質量流量が利用できる。これに伴って現れるエネルギが利用でき、これによって、最終的に燃料節約が達成される。
【0011】
本発明に基づく方法の他の有利な実施態様において、電気負荷が蒸気タービン発電所の復水器の復水溜め内に配置されている。復水器の復水溜め(ホットウェル)内への電気負荷の配置は、中圧バイパス装置を介して導かれる蒸気質量流量が相応して減少するので、復水器の熱出力に影響を与えない。あるいはまた、電気負荷の冷却は蒸気タービン発電所の冷却水内への電気負荷の配置によっても得られ、その冷却のために主冷却水並びに副冷却水を利用することができる。
【0012】
また本発明は本発明に基づく方法が実施される蒸気タービン発電所に関し、この蒸気タービン発電所は、発電機と、高圧タービンと、蒸気タービン発電所の起動段階中に発電機と電力系統との同期前に高圧タービンの蒸気質量流量を増大するために発電機に接続される少なくとも1個の電気負荷とを有している。その電気負荷は、蒸気タービン発電所の給水タンク内に、蒸気タービン発電所の復水器の復水溜め内に、あるいは蒸気タービン発電所の冷却水内に配置されていると好適である。
【0013】
以下図を参照して本発明に基づく蒸気タービン発電所の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に基づく蒸気タービン発電所の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に基づく蒸気タービン発電所10の構成を概略的に示している。この蒸気タービン発電所10は特にボイラ12、高圧タービン14、中圧タービン16、低圧タービン18、発電機20、復水溜め24付き復水器22ならびに給水タンク26を有しており、この給水タンク26は脱気器、生蒸気配管28および脱気支援管30を備えている。
【0016】
蒸気タービン発電所10の始動時ないし起動時、ボイラ12はまず最小負荷(通常30〜40%負荷)で運転され、その際の発生蒸気は通常まず高圧蒸気タービン14を迂回される(バイパス運転)。このバイパス運転は高圧タービン14の蒸気入口部位に配置された非常止め弁32ないし調整弁34の閉鎖によって実現される。その場合、生蒸気は高圧バイパス装置36を介して導かれ、より低い温度レベルに注水冷却され、そして再熱器38に、詳しくはまず再熱器38の低温側入口管40に導かれる。再熱器38の高温側出口管42から出た蒸気は中圧バイパス装置44を介して導かれ、注水による冷却後に復水器22に導かれる。その場合、再熱器38における高い圧力レベル(通常約20〜30バール)によって、燃焼ガスに曝される再熱器伝熱管の効果的な冷却が保証される。
【0017】
バイパス運転から非常止め弁32ないし調整弁34の開放により高圧蒸気タービン14が定格回転数に加速されると、再熱器の入口管40における高い圧力が高圧タービン14の出口に、特に熱機始動時ないし暖機始動時には、定格負荷運転時よりもかなり高い温度を生じさせる。その理由は、高圧タービン14における小さな蒸気質量流量による僅かな温度低下ないし通風運転にある。タービン発電機設備がまだ電力系統に電力を供給しないので、その無負荷運転時の蒸気質量流量は回転数制御上の理由から増大することはできない。電力系統との同期後にはじめて、電力従って蒸気質量流量は増大できるが、その場合、蒸気とタービン構造部品との温度差が過剰に大きくなってはならない。これは、高圧タービン14の排気部位および再熱器の入口管40にとって、それらが大きく増大され激しく変動する温度に曝されることを意味する。その温度は事情によっては高圧タービン14の排気部位および再熱器の入口管40の設計に対して高価な材料の利用を必要とする。
【0018】
特に高価な耐熱材料の利用を回避できるようにするために、本発明に基づいて発電機20に電気抵抗46の形態の少なくとも1個の電気負荷が入り切り可能に接続されている(図1における破線参照)。その1個あるいは複数の抵抗46はそれを冷却するために本発明に基づいて給水タンク26、復水器復水溜め24あるいは冷却水の中に配置することができる。発電機20と電力系統との同期前に本発明に基づいて発電機20が早期に励磁されると、1個あるいは複数の抵抗46が接続できる。そのようにして、同期前に既に無負荷運転出力が電気回路側で人為的に高められ、それに伴って蒸気質量流量が増大される。これは、特に高圧タービン14において無負荷運転における膨張域距離が延長され、ないしは、蒸気が僅かしか換気されず、従って、非常に高い生蒸気温度の場合でも特に無負荷運転と定格負荷運転との間における温度差がさほど大きく現れないので、排気部位および再熱器の入口管40の配管はコスト的に有利な材料で設計することができる。
【0019】
給水タンク26内に電気抵抗46を配置する場合、確実に脱気するために、再熱器38の入口管40から少量の蒸気が脱気支援管30を介して給水タンク26に供給されるだけで済むので、再熱器38の伝熱管はより強く冷却される。
【0020】
いまや無負荷運転中に高圧タービン14を貫流するより大きな蒸気質量流量はエンタルピーをより大きく低減し、これによって、高圧タービン排気温度がより低くなる。例えば無負荷運転出力を5MWから15MWへ増大すると、(生蒸気温度が700℃、再熱器20の入口管40における圧力が20バールと仮定した場合)高圧タービン排気温度を580℃から510℃に低減させる。
【符号の説明】
【0021】
10 蒸気タービン発電所
14 高圧タービン
20 発電機
22 復水器
24 復水溜め
26 給水タンク
46 電気負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン発電所(10)の起動段階中に蒸気タービン発電所(10)の高圧タービン(14)の蒸気質量流量を増大する方法であって、
蒸気タービン発電所(10)の発電機(20)が、その発電機(20)と電力系統との同期前に少なくとも1個の電気負荷(46)に接続されることを特徴とする蒸気タービン発電所の起動段階中に蒸気タービン発電所の高圧タービンの蒸気質量流量を増大する方法。
【請求項2】
電気負荷(46)が蒸気タービン発電所(10)の給水タンク(26)内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電気負荷(46)が蒸気タービン発電所(10)の復水器(22)の復水溜め(24)内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
電気負荷(46)が蒸気タービン発電所(10)の冷却水内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
発電機(20)と、高圧タービン(14)と、蒸気タービン発電所(10)の起動段階中に発電機(20)と電力系統との同期前に高圧タービン(14)の蒸気質量流量を増大するために発電機(20)に接続される少なくとも1個の電気負荷(46)とを有していることを特徴とする蒸気タービン発電所。
【請求項6】
電気負荷(46)が蒸気タービン発電所(10)の給水タンク(26)内に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の蒸気タービン発電所。
【請求項7】
電気負荷(46)が蒸気タービン発電所(10)の復水器(22)の復水溜め(24)内に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の蒸気タービン発電所。
【請求項8】
電気負荷(46)が蒸気タービン発電所(10)の冷却水内に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の蒸気タービン発電所。

【図1】
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【公表番号】特表2010−514985(P2010−514985A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544384(P2009−544384)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064237
【国際公開番号】WO2008/080854
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】