説明

ターンテーブル式噴射機

【課題】 対象物の大きさ、形状などの多様化に対応させ、かつ噴射物が対象物以外に付着することによる弊害を低減させるように改良したターンテーブル式噴射機を提供する。
【解決手段】 間欠回転駆動する作業テーブル3と、作業テーブル3の周方向に等間隔毎に周設され、対象物(ワークW)を保持しつつ自転させる複数の対象物セット部4と、作業テーブル3の中央開口部3fを通って昇降する昇降ベース6bと、昇降ベース6b上に配置され、対象物セット部4の対象物のうち一つに対する噴射物の噴射方向Fを持つ噴射ガン5を、噴射方向Fに移動自在にする噴射ガン移動機構9と、を備え、作業テーブル3が一時停止する状態において噴射位置Tに達した対象物に対して、噴射ガン5を所定距離まで移動させた状態で昇降させながら噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品としての対象物に噴射物を噴射するために使用するターンテーブル式噴射機に関する。
【背景技術】
【0002】
物品としてのワーク表面の塗装作業に使用される装置として、回転制御される回転テーブルを間欠駆動させ、この回転テーブルの周方向に等角度間隔に並べられたワークを自転させながら当該ワークを周方向の所定位置で一時停止させ、この位置でスプレーガンによってワーク表面に塗料を塗布するようにしたロータリ式塗装装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005―125161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この先行技術におけるスプレーガンは、回転テーブルのワークの中心軸線に沿った方向である上下方向に移動してワーク表面の上下面や側面を塗装するようにしたものであるが、この種の塗装機は作業効率を高めるために特定(単一種類)のワークに対して最適な塗装が得られるように設定されている。しかし、塗装するワークが少量で形状が異なるワークの塗装を行うときや、塗装するワークの形状が複雑なときには、スプレーガンを上下動させただけでは、当該スプレーガンとワーク表面との距離の違いによってワーク表面に塗布される塗料の塗布量にバラツキが生じることによる品質低下などがあり、これらを解消するための提案が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、物品としての対象物の大きさ、形状などの多様化に対応させるとともに、噴射ガンから噴射される噴射物が対象物以外に付着することによる弊害を低減させるように改良したターンテーブル式噴射機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のターンテーブル式噴射機は、所定角度で一定方向に間欠回転駆動する円板状の作業テーブルと、該作業テーブルの周縁寄りのその周方向に前記所定角度で等間隔毎に周設され、対象物を保持しつつ自転させる複数の対象物セット部と、周設される前記対象物セット部の内方域における前記作業テーブルの中央開口部を通って昇降する昇降ベースと、該昇降ベース上に配置され、前記作業テーブル上の前記対象物セット部に保持される前記対象物の一つに対する噴射物の噴射方向を持つ噴射ガンと、を備え、前記作業テーブルが間欠回転駆動時に一時停止した状態において、複数の前記対象物セット部のうち一つの位置を噴射位置とし、その噴射位置で回転する対象物に前記噴射ガンが噴射物を噴射するとともに、前記昇降ベースとその昇降ベース上に配置される前記噴射ガンとの間には、噴射物が噴射される前記対象物に向かって前記噴射ガンを移動するための噴射ガン移動機構を備え、前記噴射ガンは前記噴射ガン移動機構によって、前記対象物の形状に対して噴射に最適な位置に移動して噴射物を噴射することを特徴とする。
【0007】
上記構成とすることにより、対象物セット部に載せられた対象物が周方向に移動し、噴射位置に達した状態で噴射物を対象物に噴射する際に、対象物の大きさや形態に対応して当該対象物と噴射ガンとの間の噴射距離を最適に調整して噴射物を噴射することができるので、対象物の多様化に対応できる。しかも、噴射距離を例えば、送りねじ機構によって調整するように構成すれば、噴射ガンの昇降中でも噴射距離を調整させることができるターンテーブル式噴射機を提供できる。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明のターンテーブル式噴射機の前記噴射ガンは単一のものであり、前記噴射方向を斜め上方から斜め下方の間で変更自在となしたことを特徴とすることにより、噴射ガンの昇降中に噴射方向を変更できるので、対象物の外面としての上面、側面、下面に対して適切に噴射物を噴射することができる。しかも、噴射方向の変更は斜め上方から斜め下方の間で可能であるため、対象物の複雑な外面形状に対応させた噴射方向にも調整できる。さらに、例えば噴射ガンを定位置で停止させた状態において噴射方向を斜め上方と斜め下方との間で首振りさせながら対象物に噴射物を噴射することもできる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明のターンテーブル式噴射機の前記噴射ガン移動機構は前記昇降ベース上に配設される固定ベースを有し、該固定ベースは前記作業テーブルの中央開口部を通り抜けできない大きさで形成され、当該固定ベース上には、案内レールと該案内レールを移動自在となすスライダからなる直動ガイドを介して前記噴射方向にそって移動自在にする移動ベースが設けられ、前記噴射ガンは、そのガン先端の噴出口を前記固定ベースおよび前記移動ベースの外縁よりも前記対象物セット部寄りの外側に位置させたことを特徴とすることにより、噴射ガンから対象物に向かって噴射される噴射物以外に、噴出口から余分に落ちる噴射物を作業テーブルの表面側だけとすることができる。この結果、噴射ガン移動機構の構成部品(案内レール、スライダなど)に余分な噴射物を付着させないようにでき、噴射ガンの移動機能が良好に維持される。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明のターンテーブル式噴射機の前記対象物セット部は回転支軸を有し、該回転支軸は前記作業テーブルに設ける軸受部材で回転自在に支持され、この回転支軸は前記作業テーブルの下側に延出され、その延出部には、ゴム製からなる円板状の従動回転円板体が装着され、前記対象物セット部が前記噴射位置に達した状態で、前記従動回転円板体の外周に圧接する駆動回転部材を有する回転駆動源が設けられることを特徴とすることにより、対象物セット部が噴射位置に達して従動回転円板体が駆動回転部材に接触する際の衝撃も小さく対象物の載置位置が変位したりすることもなく、しかも、駆動回転部材との間の滑りも発生しにくく対象物の自転に好適である。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明のターンテーブル式噴射機の前記対象物セット部は前記対象物を載置する載置ベース板を有し、該載置ベース板の平面投影面積は、前記対象物セット部の前記回転支軸を保持する前記軸受部材の平面投影面積よりも大きくしたことを特徴とすることにより、載置ベース板に載せられて保持される対象物に対して噴射される噴射物のうちの一部が当該対象物から載置ベース板上に落ちても、この噴射物は軸受部材にまで達しないため、軸受部材の回転機能に影響を与えないから噴射時の対象物自転機能が損なわれないので、対象物の自転が安定し噴射品質の安定化に有益となる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明のターンテーブル式噴射機において、前記噴射ガンの前記噴射方向の前方には、霧状噴射物を捕集するフィルタ部が配設されたことを特徴とすることにより、霧状噴射物が周囲に飛散するのを防止でき、良好な作業環境を維持できる。また、前記フィルタ部は、霧状噴射物を捕集するフィルタ部材が装着されたフィルタユニットを取り替え自在となしたことを特徴とすることにより、フィルタ部のメンテナンス性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るターンテーブル式噴射機の一部断面側面図である。
【図2】同上ターンテーブル式噴射機の平面図である。
【図3】対象物セット部の拡大断面図である。
【図4】従動回転円板体と駆動プーリとの接触状態の模式図である。
【図5】単一の噴射ガンの首振り機構の側面図である。
【図6】一対の噴射ガンの側面図である。
【図7】ロックレバーの取付個所の断面図である。
【図8】送りねじ機構の側面図である。
【図9】制御装置と各構成品との接続関係のブロック図である。
【図10】フィルタ部を設けたターンテーブル式噴射機の概略側面図である。
【図11】同上ターンテーブル式噴射機の概略平面図である。
【図12】フィルタ部のフィルタユニットの正面図である。
【図13】同上フィルタユニットの平面図である。
【図14】フィルタユニットの装着状態の概略平面図である。
【図15】同上フィルタユニットの取り替え状態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明に係るターンテーブル式塗装機(ターンテーブル式噴射機)の一部断面側面図、図2はターンテーブル式塗装機の平面図である。図1、図2において、ターンテーブル式塗装機1は、例えば、物品としてのワークW(対象物)の外面W1に、その外面W1を保護したり加飾、あるいは殺菌、消毒するための噴射物を噴射するものである。
【0015】
ターンテーブル式塗装機1は、機枠2上部に設けられる所定角度で一定方向に間欠回転駆動する円板状の作業テーブル3と、該作業テーブル3の周縁寄りのその周方向に所定角度で等間隔毎に周設されるワークセット部4(対象物セット部)と、ワークWに対し噴射物の一例としての塗料を塗布するスプレーガン5(噴射ガン)を昇降移動させるスプレーガン昇降機構6(噴射ガン昇降機構)を有している。
【0016】
作業テーブル3は円板状に形成されるテーブル本体3aからなり、該テーブル本体3aの中央側の下面と機枠2上部における受板2a上面との間に、軸受部材としての環状のテーブル軸受部材3bが介装されている。そして、このテーブル軸受部材3bによって作業テーブル3を回転自在となしている。
【0017】
また、作業テーブル3はテーブル回転駆動機構7によって回転駆動される。このテーブル回転駆動機構7は、テーブル本体3aの下面に設けられる固定ギヤ7aと、機枠2側に固定される回転駆動源としての第一駆動モータ7bの駆動軸7cに固定される駆動ギヤ7dとを有し、該駆動ギヤ7dと固定ギヤ7aが噛合されている。そして、第一駆動モータ7bの回転によって一定方向に作業テーブル3が回転駆動される。また、テーブル軸受部材3bは、受板2aの中央に形成される段差部2a1に外径側が保持された状態で環状の押え部材2a2によって、その外径側の上側を押え付けるようにして保持固定されている。また、テーブル軸受部材3bの内径側は固定ギヤ7aの内径側に装着される環状の内径保持リング7a1によって保持固定され、この内径保持リング7a1が固定ギヤ7aと連結されている。
【0018】
また、作業テーブル3には、当該作業テーブル3を所定角度で一定方向に間欠回転駆動するための位置決め用の複数の検出板3dが設けられている。この検出板3dは、作業テーブル3のテーブル本体3aの下面の周縁において、その周方向に周設される。その個数はワークセット部4の個数と対応(同数)させている。
【0019】
そして、作業テーブル3を間欠回転駆動させ、ワークWに対してスプレーガン5による塗料を塗布するために、任意に設定する塗布位置T(噴射位置)で作業テーブル3が一時停止するように、フォトセンサ3eが設けられている。このフォトセンサ3eは光の特性を利用したものであり図示しない発光素子と受光素子との間に検出板3dが移動してくると検知信号を出力するものである。
【0020】
つぎに、作業テーブル3のテーブル本体3aの周方向に複数周設されるワークセット部4としては、テーブル本体3aの周縁寄りのその周方向に所定角度で等間隔毎に、本例では8個所に設けられる。
【0021】
このワークセット部4は、テーブル本体3aの周方向に複数形成される凹部3cに嵌め入れられ、軸受部材としてのベアリング4aを有する。詳しくは図3に示すように、全体が環状に形成され、円筒部4b1の上端には内フランジ部4b2が形成されるとともに、円筒部4b1の下端には外フランジ部4b3が形成される固定部材4bを介してベアリング4aを固定している。すなわち、ベアリング4aは凹部3c内に一部分(下側)が嵌め入れられる。この状態で固定部材4bの内フランジ部4b2によってベアリング4aの上側の外周縁側を押えるようにして、外フランジ部4b3をテーブル本体3aに固定する形態である。
【0022】
そして、ベアリング4aの中央の軸孔4cには、回転支軸4dが挿通固定されている。この回転支軸4dの上端側にはワーク保持部4eが着脱自在に設けられる。
【0023】
このワーク保持部4eは円板状に形成する載置ベース板としてのワーク受部4fを有している。このワーク受部4fの平面投影面積はベアリング4aの平面投影面積よりも大きく形成される。このベアリング4aを平面からみるとワーク受部4fで覆い隠されることとなる。これによってスプレーガン5から噴射される塗料を遮蔽し、ベアリング4aに対する塗料の付着が防止されることにより、その回転機能の低下が損なわれないようにしている。
【0024】
ワーク受部4fの上面には、ワークWの凹部W2が嵌り込む突部4gが形成されている。この突部4gはワーク受部4fに対してワークWを共回りさせるとともに、ワークWを芯ぶれさせないように保持する機能を有している。このワークWの形態としては図示するように筒状形態のものであるも、他にワークWとして果物(リンゴ、ミカンなど)や、他の食品である菓子類(例えば和菓子である饅頭)を挙げることができる。これらのワークWの場合には、突部4gに、ワークWの形態に対応させたアタッチメント4mを各々製作し、当該アタッチメント4mを着脱自在となして装着してワークWの載置個所として使用することとなる。
【0025】
また、ワークセット部4はワークWを自転させるためのワークセット回転駆動機構4kを有している。このワークセット回転駆動機構4kは、作業テーブル3の下側に延出される。回転支軸4dの延出部としての下端側に従動回転円板体4hを装着している。この従動回転円板体4hは円板状に形成され、その材質を弾性部材としてのゴム製となしている。
【0026】
そして、複数のワークセット部4が周方向に回転し、任意位置に設定される塗装位置Tに、その一つが達した状態で、従動回転円板体4hを回転させるようにしている。この具体例としては、従動回転円板体4hに接触して圧接する駆動回転部材としての単一の駆動プーリ2bが機枠2側に設けられている。この駆動プーリ2bは回転軸2cを有する回転駆動源としての第二駆動モータ2dに連結されている。この第二駆動モータ2dはモータベース2d1に固定され、該モータベース2d1を機枠2の受板2aに、塗装位置Tに位置する従動回転円板体4hに向かう矢印X方向でスライド自在となすよう取付けている。
【0027】
また、従動回転円板体4hと駆動プーリ2bとの圧接による動力伝達状態としては、図4(a)に示すように、作業テーブル3の回転中心C1と駆動プーリ2bの回転中心C2を結ぶ直線上における塗装位置Tに、従動回転円板体4hの回転中心C3が到達した状態で最大の動力伝達を行うように、モータベース2d1(図3参照)を矢印X方向にスライド位置調整となして、その圧接状態が設定されている。
【0028】
この設定は、従動回転円板体4hが弾性部材としてのゴム製で構成されているため、駆動プーリ2bに従動回転円板体4hが近づいてくると、弾性変形前の従動回転円板体4hの外径寸法は最大径状態であるため、回転方向の上流側の駆動プーリ2bの円錐面2eに接触する初期接触状態、すなわち、図4(a)の破線で図示する従動回転円板体4h外周と駆動プーリ2bの円錐面2eとの接触状態として、図4(b)の(ロ)に示すように、従動回転円板体4hの弾性変形量は小さく(動力伝達率小)、これがさらに圧接状態に近づくにしたがって、すなわち、図4(a)の実線で図示する従動回転円板体4h外周と駆動プーリ2bの円錐面2eとの接触状態として、図4(b)の(ハ)に示すように、弾性変形量が大きく(動力伝達率大)なり塗装位置Tで最大となる。なお、図4(b)の(イ)は、従動回転円板体4h外周と駆動プーリ2bの円錐面2eとが接触する前の様態を示すものである。
【0029】
このように、ワークWの自転に関わる従動回転円板体4hの回転は、塗装位置Tに達した瞬間ではなく、塗装位置Tに近づく段階からその回転がスムーズに上昇するので、ワークセット部4が塗装位置Tに達して従動回転円板体4hが駆動プーリ2bに接触する際の衝撃も小さくワークWの載置位置が変位したりすることもなく、しかも、駆動プーリ2bとの間の滑りも発生しにくくワークWの自転に好適である。また、駆動プーリ2bは略V字溝を形成する円錐面2eを有するので、従動回転円板体4hの材質がゴム製の本例の場合でも、従動回転円板体4h外周の板厚方向の弾性変形によっても駆動プーリ2bの略V字溝から外れにくい利点を有する。また、この駆動プーリ2bと従動回転円板体4hとを入替えて構成することもでき、また、第二駆動モータ2dに連結する駆動プーリ2bに替えて従動回転円板体4hと同様に形成する回転駆動部材(図示せず)を使用することもでき、この場合には、両部材の材質をゴム製としたり、一方を金属若しくは機械的強度を有する合成樹脂性としても良い。
【0030】
図1に戻り、スプレーガン昇降機構6は、周設される複数のワークセット部4の内方域における作業テーブル3を通る昇降機構6aを有している。該昇降機構6aは昇降移動する昇降ベース6bと、該昇降ベース6bに連結される直動アクチュエータとしての空圧を使用したシリンダ6cを含んでいる。
【0031】
昇降ベース6bは周設されるワークセット部4の内方域における作業テーブル3のテーブル本体3aの中央側に形成される上下方向に貫通形成される中央開口部3f内を通過可能に、金属板材によって方形板状に形成される。この昇降ベース6bにシリンダ6cのロッド6dが連結されている。シリンダ6cは機枠2に固定される取付板2fに固定されている。
【0032】
また、シリンダ6cによる昇降ベース6bの昇降時に、その昇降方向の直進性を確保するために直進ガイド6eを設けている。この直進ガイド6eは、取付板2fに固定するガイドブッシュ6fにガイドバー6gを挿通させ、当該ガイドバー6gの上端を昇降ベース6bに連結固定している。
【0033】
また、昇降機構6aは昇降ベース6bの最上位点P1と最下位点P2をワークWの上下方向の長さに対応するように位置決め機構8により設定可能となしている。この位置決め機構8は、図1に示すように、ガイドバー6gに、該ガイドバー6gの昇降に応じて昇降する検知片8aが設けられる。一方で昇降方向に沿って設けられる支持棒8bには、フォトセンサ8cが最上位点P1、最下位点P2の位置に対応して取付けられている。このフォトセンサ8cは上下移動体8d側に設けるセットスクリュウ(図示せず)などの締結手段で支持棒8bに固定したり、また、支持棒8b側に、ラチェットの歯(図示せず)を形成するとともに、この歯にかみ合うラチェットの爪(図示せず)を上下移動体8d側に設けてラチェット機構を構成し、このラチェット機構を用いてフォトセンサ8cを上下方向でスライド自在及び任意位置固定自在に設けることもできる。この支持棒8bの上端は取付板2fに連結固定されるとともに、その下端は機枠2に連結固定されている。また、最上位点P1と最下位点P2との間の任意位置としての少なくとも1個所以上の中間点P3にもフォトセンサ8cを配設することができる。このフォトセンサ8cも光の特性を利用したものであり図示しない発光素子と受光素子との間に検知片8aが移動してくると検知信号を出力するものである。
【0034】
スプレーガン昇降機構6におけるスプレーガン5は、昇降ベース6b上に配置される。そして、ワークセット部4のワークWのうち一つに対する塗料の噴射方向Fを持たせている。また、この噴射方向Fに対して前後に移動自在にするスプレーガン移動機構9を備えている。
【0035】
スプレーガン移動機構9は昇降ベース6b上に固定される金属板材によって方形板状に形成する固定ベース9mを有し、該固定ベース9mは昇降ベース6bを通すために形成される作業テーブル3の中央開口部3fを通り抜けできない大きさで形成される。この固定ベース9m上には一対の案内レール9aが並列状態で固定されている。この案内レール9aには、移動自在に複数(本例では2個)のスライダ9bが装着されている、このスライダ9bに連結される金属板材によって方形板状に形成する移動ベース9cを有している。
【0036】
この移動ベース9cにはスプレーガン5を装着するための固定ブロック9dが設けられている。この固定ブロック9dに装着するスプレーガン5としては単一部品を使用している。また、このスプレーガン5は、そのガン先端の噴出口5aを移動ベース9cの外縁9c1および固定ベース9mの外縁9m1よりもワークセット部4寄りの外側に位置させている。
【0037】
また、単一部品としてのスプレーガン5の固定ブロック9dへの装着態様としては、図5に示すように、該固定ブロック9dに設ける首振り機構10を介して装着することができる。この首振り機構10は回転位置決め軸10aを有するステッピングモータ10bを使用することができる。このステッピングモータ10bは、パルス信号により、そのモータで決まったパルス角の分だけ角度が動くモータであり、パルス信号により位置制御ができるものである。しかも、パルス数に応じて一定の回転角度で停止できるものである。この首振り機構10によりスプレーガン5は、その噴射方向Fを斜め上方から斜め下方の間で変更自在となすことができる。
【0038】
また、スプレーガン5の他の例としては、図6に示すように、予め噴射方向Fを斜め上方にしたスプレーガン5と噴射方向Fを斜め下方にした上下一対のスプレーガン5を固定ブロック9dに装着することもできる。
【0039】
本例のように自動塗装のスプレーガン5においては、作動用空気の供給停止によって塗料の噴射をON/OFFする自動スプレーガンが使用されている。この自動スプレーガンにおいては、作動用空気の供給停止によって図示は省略するも、エアピストンがニードル弁を動かし、ニードル弁の前後移動により塗料の流通を入り切りするものである。
【0040】
また、移動ベース9cには、回動可能にロックレバー9eが取付けられる。図7に示すように、ロックレバー9eは、レバー本体9fから延びる支持軸9gの下部に締め付け用のおねじ部9hを有している。この支持軸9gは移動ベース9cを貫通させるようにして、そのおねじ部9hを、固定ベース9mに形成される連結溝9j内を移動自在となしている係合部材9kに螺合させている。
【0041】
この連結溝9jは、凸字形の断面形状の溝であり、移動ベース9c側で支持軸9gが貫通する溝幅に対して下方に開口する溝幅を広くする形態の溝である。そして、ロックレバー9eの回動操作で係合部材9kを連結溝9jの幅広側の溝面に引き寄せて締め付けることによって、移動ベース9cが固定ベース9mに対して締め付け固定される。
【0042】
また、図8に示すように、移動ベース9cには、送りねじ機構11を接続することもできる。この送りねじ機構11は、ナット部材11aが移動ベース9cに固定される。ナット部材11aには送りねじ軸11bが挿通螺合される。この送りねじ軸11bに連結され、固定ベース9mに固定される回転駆動源としての第三駆動モータ11cを有している。
【0043】
ターンテーブル式塗装機の作用について説明する。先ず、作業テーブル3の間欠回転駆動としては、図1、図2、図9に示すように、テーブル回転駆動機構7の第一駆動モータ7bを制御装置12により駆動制御させ、作業テーブル3を一定方向に回転させる。この作業テーブル3の回転により当該作業テーブル3に設けられるワークセット部4が周方向にそれぞれ移動する。
【0044】
この状態でワークセット部4と対応して同数で設けられている検出片3dがフォトセンサ3eの位置に達すると、フォトセンサ3eが検知信号を出すこととなる。
【0045】
この検知信号に基づいて制御装置12により第一駆動モータ7bの駆動を停止する制御が行われることによって作業テーブル3の回転が止められる。そして、ワークWの載せ替えや塗装時間などを考慮した予め設定される一定時間が過ぎると、制御装置12により第一駆動モータ7bの駆動を再駆動させて作業テーブル3を再び回転させる。このような作動制御を繰り返すことによって作業テーブル3が間欠回転駆動される。
【0046】
上記の制御装置12は、マイコンが使用される。このマイコンの構成は周知であるため詳しい説明は省略するが、I/Oポートと、CPU、ROM及びRAMを備えて、これらがバスで接続されたものである。記憶部として機能するROM及びRAMのうち、ROMには演算等に必要な制御のための公知の各種プログラムが格納されている。
【0047】
次に、ワークWの塗装工程としては、制御装置12よって間欠回転駆動するように制御される作業テーブル3において、そのワークセット部4の載置ベース板としてのワーク受部4fに、塗装工程の初期セット時には順次、未塗装のワークWを載せていき、塗装工程が連続する状態では、既に塗料が塗布されているワークWを降ろし、新たな未塗装のワークWを載せていく。このワークWの載せ替え位置としては、図2に示すように、塗装位置Tよりも回転方向の下流側であって、塗装位置Tに達するまでの間の任意位置に設けることができる。
【0048】
そして、ワークセット部4に載せられたワークWが周方向に移動し、塗装位置Tに達したことを、フォトセンサ3eからの検知信号に基づいて制御装置12が判断すると、予め塗装位置T側に向かって塗料の噴射方向Fがセットされているスプレーガン5から塗料の噴射が実行される。この時のスプレーガン5はロックレバー9eによる移動ベース9cの拘束を解除した状態で、ワークWの大きさや形態に対応して当該ワークWとスプレーガン5との間の塗布距離を最適に調整するように移動させた後、その位置でロックレバー9の操作によってスプレーガン5が位置決めされている状態で塗布することもできる。
【0049】
また、このような手動による位置決めに対し、図8に示すように、送りねじ機構11を有することにより、スプレーガン5による塗料の噴射時に、制御装置12によって送りねじ機構11の第三駆動モータ11cを駆動制御することにより、ワークWとスプレーガン5との間の塗布距離を予め調整したり、あるいは、この距離を自動調整しながら塗布することもできる。
【0050】
このスプレーガン5による塗料の噴射は、ワークセット部4に載せられたワークWが自転する状態で行われる。このワークWの自転は、当該ワークセット部4が塗装位置Tに達すると、第二駆動モータ2dによって駆動されている駆動プーリ2bに従動回転円板体4hが圧接状態で接触することとなり、駆動プーリ2bの回転がワークセット部4のワーク受部4f(載置ベース板)に伝わって、該ワーク受部4fに載せられているワークWが自転することとなる。
【0051】
また、この塗装状態において、スプレーガン5は制御装置12により制御されるスプレーガン昇降機構6のシリンダ6cによって昇降される。この昇降制御はワークWの上下方向の長さに対応して予めスプレーガン5の昇降における最下位点P2、最上位点P1が設定されていることにより、この昇降範囲で上下往復動させたり、上昇動や下降動などの一方向へ移動させながら塗布工程が行われる。また、中間点P3を設定することにより、さらにスプレーガン5の移動形態を変化させることができる。例えば、中間点P3と最下位点P2若しくは最上位点P1との間で移動(往復、一方向移動を含む)させることもできる。
【0052】
また、このスプレーガン5の上下方向の移動は、位置決め機構8の検知片8aが最下位点P2、最上位点P1、中間点P3に達したことを、フォトセンサ8cからの検知信号に基づいて制御装置12が判断して移動制御している。
【0053】
また、スプレーガン5は制御装置12によって首振り機構10のステッピングモータ10bを駆動制御することにより、昇降時の移動中に噴射方向Fを斜め上方としたり、斜め下方とするように変更しながらワークWに塗料を塗布することができる。この首振り機構10の使用によって、例えば中間点P3でスプレーガン5を定位置で停止させた状態で、この首振り機構10により塗料の噴射方向Fを斜め上方と斜め下方との間の移動させながらワークWに塗料を塗布することもできることとなる。
【0054】
スプレーガン5は、そのガン先端の噴出口5aをスプレーガン移動機構9の固定ベース9mおよび移動ベース9cの外縁よりもワークセット部4寄りの外側に位置させていることにより、スプレーガン5からワークWに向かって噴射される塗料以外に、噴出口5aから垂れ落ちる塗料を作業テーブル3のテーブル本体3aの表面側だけとすることができる。この結果、スプレーガン移動機構9の構成部品(案内レール9a、スライダ9bなど)に余分な塗料を付着させないようにでき、スプレーガン移動機構9の移動機能を損なうことなく好適となる。
【0055】
また、スプレーガン5からワークWに向かって噴射される塗料のうち未着塗料としての霧状塗料(霧状噴射物)を捕集し、清浄化した空気を排気するためのフィルタ部13を設けることもできる。このフィルタ部13は、図10、図11に示すように、スプレーガン5から塗装位置TのワークWに向かって噴射される塗料の噴射方向Fの前方側に配設される。このフィルタ部13は、スプレーガン5に向かって前面側が開放され、中空ボックス状の本体部13aからなり、その本体部13aの前面開放側には霧状塗料を捕集するフィルタユニット13bが配設されるとともに、霧状塗料を本体部13a内に吸引させるためのファンモータ13cによって回転作動する吸引ファン13dが配設されている。
【0056】
このフィルタ部13は吸引ファン13dの吸引作用によって、スプレーガン5からワークWに向かって噴射される塗料のうちオーバースプレー分の未着塗料としての霧状塗料を吸引し、フィルタユニット13bのフィルタ部材13eに霧状塗料を接触させるようにして捕集するものである。また、フィルタ部材13eとしては、通気性を有する不織布、発泡ウレタンシート、HEPAフィルタなどを挙げることができる。
【0057】
このフィルタ部13のフィルタユニット13bの具体的な構造としては、図12に示すように、一対のフィルタ枠体13fを、一辺側においてヒンジ部材13gによって扉状に開け閉めさせ、その2体のフィルタ枠体13fの間にフィルタ13eを挟んで構成している。そして、このフィルタユニット13bは、図13、図14に示すように、中空ボックス状の本体部13aにおける前面開放側に設けられるスライド装着溝13hに上下スライドさせて、出し入れするように着脱自在に装着される。
【0058】
なお、スプレーガン5に塗料を供給する供給タンク14は、フレキシブル性を備える供給チューブ14aでスプレーガン5と接続されており、かかる供給タンク14は機枠2の受板2aから立設される支柱14bによって保持されている(図10、図11参照)。
【0059】
以上の説明ではターンテーブル式塗装機を例示したが、塗装機に限らず、所定の噴射物を噴射する噴射装置に、この発明を適用することができる。例えば、ワークWに対して塗料ではなく合成油等の防錆剤を噴射する噴射装置、あるいは食品であれば防腐剤を噴射する噴射装置、もしくはワークWに殺菌剤、消毒剤を噴射する噴射装置をはじめ、所定のワークWに対し、液体又は粉体、粒体等の噴射物を噴射する噴射装置にこの発明を適用することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明しているが、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ターンテーブル式塗装機(噴射機)
2b 駆動プーリ
2d 第二駆動モータ(回転駆動源)
3 作業テーブル
4 ワークセット部(対象物セット部)
4a ベアリング(軸受部材)
4h 従動回転円板体
4f ワーク受部(載置ベース板)
5 スプレーガン(噴射ガン)
6 スプレーガン昇降機構(噴射ガン昇降機構)
6b 昇降ベース
9 スプレーガン移動機構(噴射ガン移動機構)
9a 案内レール
9b スライダ
9c 移動ベース
9m 固定ベース
13 フィルタ部13
13b フィルタユニット
13e フィルタ部材
13f フィルタ枠体
F 噴射方向
W ワーク(対象物)
T 塗装位置(噴射位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度で一定方向に間欠回転駆動する円板状の作業テーブルと、
該作業テーブルの周縁寄りのその周方向に前記所定角度で等間隔毎に周設され、対象物を保持しつつ自転させる複数の対象物セット部と、
周設される前記対象物セット部の内方域における前記作業テーブルの中央開口部を通って昇降する昇降ベースと、
該昇降ベース上に配置され、前記作業テーブル上の前記対象物セット部に保持される前記対象物の一つに対する噴射物の噴射方向を持つ噴射ガンと、を備え、
前記作業テーブルが間欠回転駆動時に一時停止した状態において、複数の前記対象物セット部のうち一つの位置を噴射位置とし、その噴射位置で回転する対象物に前記噴射ガンが噴射物を噴射するとともに、
前記昇降ベースとその昇降ベース上に配置される前記噴射ガンとの間には、噴射物が噴射される前記対象物に向かって前記噴射ガンを移動するための噴射ガン移動機構を備え、
前記噴射ガンは前記噴射ガン移動機構によって、前記対象物の形状に対して噴射に最適な位置に移動して噴射物を噴射することを特徴とするターンテーブル式噴射機。
【請求項2】
前記噴射ガンは単一のものであり、前記噴射方向を斜め上方から斜め下方の間で変更自在となしたことを特徴とする請求項1に記載のターンテーブル式噴射機。
【請求項3】
前記噴射ガン移動機構は前記昇降ベース上に配設される固定ベースを有し、該固定ベースは前記作業テーブルの中央開口部を通り抜けできない大きさで形成され、当該固定ベース上には、案内レールと該案内レールを移動自在となすスライダからなる直動ガイドを介して前記噴射方向にそって移動自在にする移動ベースが設けられ、前記噴射ガンは、そのガン先端の噴出口を前記固定ベースおよび前記移動ベースの外縁よりも前記対象物セット部寄りの外側に位置させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のターンテーブル式噴射機。
【請求項4】
前記対象物セット部は回転支軸を有し、該回転支軸は前記作業テーブルに設ける軸受部材で回転自在に支持され、この回転支軸は前記作業テーブルの下側に延出され、その延出部には、ゴム製からなる円板状の従動回転円板体が装着され、
前記対象物セット部が前記噴射位置に達した状態で、前記従動回転円板体の外周に圧接する駆動回転部材を有する回転駆動源が設けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のターンテーブル式噴射機。
【請求項5】
前記対象物セット部は前記対象物を載置する載置ベース板を有し、該載置ベース板の平面投影面積は、前記対象物セット部の前記回転支軸を保持する前記軸受部材の平面投影面積よりも大きくしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のターンテーブル式噴射機。
【請求項6】
前記噴射ガンの前記噴射方向の前方には、霧状噴射物を捕集するフィルタ部が配設されたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のターンテーブル式噴射機。
【請求項7】
前記フィルタ部は、霧状噴射物を捕集するフィルタ部材が装着されたフィルタユニットを取り替え自在となしたことを特徴とする請求項6に記載のターンテーブル式噴射機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−41926(P2011−41926A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193098(P2009−193098)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(501467810)株式会社マルヒ (2)
【Fターム(参考)】