ダイオードとその製造方法
【課題】重金属を利用することなく、異なる種類の結晶欠陥が混在したダイオードを提供すること。
【解決手段】ダイオード10は、半導体基板20と、半導体基板20の第1主面20aに形成されているカソード電極30と、半導体基板20の第2主面20bに形成されているアノード電極70を備えている。半導体基板20は、酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域90Aと、複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域80Aを有する。
【解決手段】ダイオード10は、半導体基板20と、半導体基板20の第1主面20aに形成されているカソード電極30と、半導体基板20の第2主面20bに形成されているアノード電極70を備えている。半導体基板20は、酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域90Aと、複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域80Aを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードに関する。本発明は特に、パワーデバイスに逆並列に接続されるフリーホイールダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオードは、様々な電気回路に用いられており、その作用は広範囲に及んでいる。例えば、負荷に供給する電力を制御するためのインバータ回路には、ブリッジ接続したパワーデバイスのそれぞれにダイオードが逆並列に接続されている。この種のダイオードは、フリーホイールダイオード(Free Wheel Diode:以下、FWDという)と呼ばれており、パワーデバイスが負荷電流をON/OFF制御したときにその負荷電流を転流させている。
【0003】
近年、ハイブリッド車両及び電気車両に搭載されるモータを制御するインバータ回路では、低スイッチング損失及び高サージ耐圧が求められている。これらの要求に応えるために、FWDのリバースリカバリー特性の改善が進められている。具体的には、半導体基板内に結晶欠陥を形成することによって、低スイッチング損失に寄与するリバースリカバリー電荷(Qrr)の低減と、サージ電圧の抑制に寄与するリカバリー電流のソフト化が進められている。
【0004】
特許文献1〜3には、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥と荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥の双方を半導体基板内に混在させることにより、FWDのリバースリカバリー特性を改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第99/09600号パンフレット
【特許文献2】特開平6−35010号公報
【特許文献3】特開2004−88012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、結晶欠陥のエネルギー準位は、電子と正孔の再結合中心であるとともに、高電界が加わったときには(逆バイアス状態)、電子と正孔の発生中心でもある。このため、結晶欠陥が半導体基板内に多量に形成されると、逆バイアス状態において、リーク電流の増加を招いてしまう。重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥は、電子と正孔を発生する度合い(電子と正孔の発生確率ともいう)が低いので、リーク電流を抑制することができる。しかしながら、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥は、電子と正孔の再結合の度合い(電子と正孔の再結合確率ともいう)が温度に依存して変動し易いという問題を有する。一方、荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥では、電子と正孔の再結合確率が温度に依存しないという特徴を有する。特許文献1〜3では、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥と荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥の双方が半導体基板内に混在しているので、リーク電流の増加を抑えながら、リバースリカバリー電荷(Qrr)の低減と、リカバリー電流のソフト化を実現することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3では、重金属(例えば、白金)を利用して結晶欠陥が形成されている。重金属をドーピングする処理工程では、汚染を防止するために、一般的な半導体製造設備とは別に、専用の設備を必要とする。このため、重金属の利用は、製造コストを大幅に増大させるという問題がある。
【0008】
本明細書で開示される技術は、重金属を利用することなく、異なる種類の結晶欠陥が混在したダイオードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、結晶欠陥のエネルギー準位に着目した。重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥は、伝導帯エネルギー端(Ec)から約0.23eV低いレベルに再結合中心エネルギー準位を有する。一方、荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥は、複数の原子空孔が結合した複空孔欠陥であり、伝導帯エネルギー端(Ec)から約0.40eV低いレベルに再結合中心エネルギー準位を有する。相対的に、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥は浅いエネルギー準位を有し、荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥は深いエネルギー準位を有する。
【0010】
本発明者らの検討の結果、電子と正孔の再結合確率及び発生確率は、結晶欠陥のエネルギー準位に依存することが分かってきた。図1に、単一トラップと仮定したときの結晶欠陥のエネルギー準位と電子と正孔の再結合確率及び発生確率の関係を示す。図1に示されるように、結晶欠陥のエネルギー準位が浅い場合(例えば、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥)は、電子と正孔の発生確率が低くなり、リーク電流の発生が抑えられる。しかしながら、電子と正孔の再結合確率は、温度に依存して変動する。一方、結晶欠陥のエネルギー準位が高い場合(例えば、荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥)は、電子と正孔の再結合確率は温度に依存しないという特徴を有する。このように、電子と正孔の再結合確率及び発生確率は、結晶欠陥のエネルギー準位に依存することが分かってきた。すなわち、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥と同等の浅いエネルギー準位の結晶欠陥を形成すれば、重金属を利用することなく、異なる種類の結晶欠陥を混在させたダイオードを具現化することができる。
【0011】
本明細書で開示されるダイオードは、半導体基板と、半導体基板の第1主面に形成されているカソード電極と、半導体基板の第2主面に形成されているアノード電極を備えている。半導体基板は、酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域と、複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域を有する。本明細書で開示されるダイオードでは、酸素・空孔欠陥が形成されていることを特徴としている。酸素・空孔欠陥は、伝導帯端(Ec)から約0.17eV低いレベルにエネルギー準位を有しており、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥のエネルギー準位とほぼ同等である。したがって、酸素・空孔欠陥は、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥を代替することが可能である。酸素・空孔欠陥を利用すれば、重金属を利用することなく、異なる種類の結晶欠陥を混在させたダイオードを具現化することができる。
【0012】
本明細書で開示されるダイオードでは、酸素・空孔欠陥の濃度が、半導体基板内にピーク値を有しないことが好ましい。ここでいうピーク値とは、半導体基板の厚み方向において極大値を有しないことである。したがって、酸素・空孔欠陥の濃度が、厚み方向に沿って単調に増加又は減少するような場合は、ピーク値を有しないと評価される。より好ましくは、酸素・空孔欠陥の濃度が、半導体基板の第1主面から第2主面まで一定であることが望ましい。これらの態様によると、リーク電流の増加を抑えながら、リバースリカバリー電荷(Qrr)を大幅に低減することができる。
【0013】
本明細書で開示されるダイオードでは、第1領域の酸素・空孔欠陥の濃度が、少なくとも1×1013cm-3以上であるのが望ましい。この濃度以上であれば、意図的に酸素を導入することによって形成された酸素・空孔欠陥であると評価できる。
【0014】
本明細書では、酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域と複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域とを有する半導体基板を備えたダイオードの製造方法を提供することができる。このダイオードの製造方法は、半導体基板内に酸素を導入する酸素導入工程と、その半導体基板の所定深さに向けて荷電粒子を照射する荷電粒子照射工程とを備える。酸素導入工程を実施することにより、半導体基板内に酸素・空孔欠陥の濃度の高い領域を形成することができる。さらに、荷電粒子照射工程では、荷電粒子を局所深さに照射する。これにより、半導体基板内には、酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域と、複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域が形成される。
【0015】
酸素導入工程は、半導体基板の一方の主面に酸化膜を形成する第1工程と、酸化膜が残存する状態で半導体基板を熱処理する第2工程とを有することが好ましい。簡易なプロセスで半導体基板内に酸素を導入することができる。
【0016】
第1工程では、酸化膜を形成するときの温度が1100〜1200℃に設定されており、その酸化時間が10〜500分に設定されているのが望ましい。第2工程では、熱処理の温度が1150℃以上に設定されているのが望ましい。これにより、高濃度の酸素を半導体基板内に導入することができる。
【0017】
酸素導入工程では、半導体基板内の酸素濃度が厚さ方向の全域で増加するのが望ましい。これにより、半導体基板内に酸素・空孔欠陥の濃度の高い領域を確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書で開示される技術によると、重金属を利用することなく、浅いエネルギー準位の結晶欠陥と深いエネルギー準位の結晶欠陥が混在したダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】結晶欠陥のエネルギー準位と電子・正孔の再結合/発生確率の関係を示す。
【図2】実施例のダイオードの要部断面図を模式的に示す。
【図3】実施例のダイオードの製造工程の概略を示す。
【図4】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(1)。
【図5】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(2)。
【図6】エピタキシャル層に導入される酸素濃度の計算値を示す。
【図7】エピタキシャル層に導入される酸素濃度の実測値を示す。
【図8】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(3)。
【図9】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(4)。
【図10】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(5)。
【図11】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(6)。
【図12】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(7)。
【図13】実施例のダイオードの不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。
【図14】1つの変形例のダイオードの不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。
【図15】他の1つの変形例のダイオードの不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で開示される技術の特徴を整理しておく。
(第1特徴)ダイオードは、n+型のカソード領域と、n型の電界抑止領域と、n−型の電圧保持領域と、p+型のアノード領域を備えた縦型のPINダイオードである。
(第2特徴)酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域は、電圧保持領域に位置している。
(第3特徴)酸素・空孔欠陥の濃度は、少なくとも1×1013cm-3以上である。この濃度以上であれば、意図的に酸素を導入することによって形成された酸素・空孔欠陥であると評価できる。
(第4特徴)複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域は、電圧保持領域とアノード領域のpn接合界面近傍に位置している。さらに、この第2領域のピーク値は、電圧保持領域とアノード領域のpn接合界面近傍のうちの電圧保持領域側に位置しているのが望ましい。より好ましくは、この第2領域は、アノード領域に位置していないのが望ましい。
(第5特徴)第4特徴において、複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い追加の第2領域が、電界抑止領域と電圧保持領域の界面近傍に位置している。
(第6特徴)酸素・空孔欠陥の再結合中心エネルギー準位は、伝導帯エネルギー端から0.15eV〜0.25eVの範囲内に形成された電子トラップ準位である。
(第7特徴)複空孔欠陥の再結合中心エネルギー準位は、伝導帯エネルギー端から0.35eV〜0.55eVの範囲内に形成された電子トラップ準位である。
【実施例】
【0021】
図2に、ダイオード10の要部断面図を模式的に示す。後述の製造方法でも説明するように、図2は、素子領域のみを図示しており、素子領域の周囲に設けられている終端領域は図示されていない。ダイオード10は、シリコン単結晶の半導体基板20と、半導体基板20の第1主面20aに形成されているカソード電極30と、半導体基板20の第2主面20bに形成されているアノード電極70を備えている。ダイオード10は、所謂縦型のPINダイオードに属する。
【0022】
図2に示されるように、半導体基板20は、カソード領域42と、そのカソード領域42上に形成されている電界抑止領域44と、電界抑止領域44上に形成されている電圧保持領域50と、電圧保持領域50上に形成されているアノード領域60を備えている。カソード領域42と電界抑止領域44は、電圧保持領域50よりもn型の不純物を高濃度に含んでおり、n型不純物導入領域40ともいう。カソード領域42は、カソード電極30に接触している。電圧保持領域50は、n型不純物導入領域40とアノード領域60を隔てており、n型の不純物を低濃度に含んでおり、その不純物濃度はn型不純物導入領域40よりも薄い。アノード領域60は、p型の不純物を高濃度に含んでおり、アノード電極70に接触している。
【0023】
次に、ダイオード10の製造方法を説明する。図3に、ダイオード10の製造工程の概略を示す。以下、図3の製造工程の概略を参照にしながら、ダイオード10の要部断面図を用いて製造工程を説明する。まず、図4に示されるように、n型の下地基板140(後に、n型不純物導入領域40となる)を準備する。一例として、下地基板140の不純物濃度は、約1×1015cm-3である。次に、エピタキシャル成長技術を利用して、下地基板140上にn−型のエピタキシャル層150(後に、電圧保持領域50及びアノード領域60となる)を結晶成長させる。一例として、エピタキシャル層150の厚みは約100μmであり、その不純物濃度は約1×1014cm-3である。
【0024】
次に、図5に示されるように、熱酸化技術を利用して、酸化雰囲気下でエピタキシャル層150上にシリコン酸化膜52を形成する。この熱酸化工程は、雰囲気温度が1100〜1200℃に設定されているとともに、熱酸化時間が10〜500分に設定されているのが望ましい。この条件の熱酸化工程によって、エピタキシャル層150の表層部には、固溶限濃度にまで酸素が溶け込む。次に、熱処理技術を利用して、不活性ガス雰囲気下でエピタキシャル層150の表層部に固溶限濃度にまで溶け込んだ酸素をエピタキシャル層150の深部に向けて拡散させる。この熱処理工程は、雰囲気温度が1150℃以上であるのが望ましい。この条件の熱処理工程によって、少なくとも後述するヘリウム照射工程でヘリウムが照射される飛程位置よりも深い位置にまで酸素を拡散させることができる。具体的には、導入される酸素濃度の目標値は、深さが10μmで1×1017cm-3以上、より好ましくは深さが20μmで1×1017cm-3以上であるのが望ましい。
【0025】
図6に、熱酸化工程及び熱処理工程でエピタキシャル層150に導入される酸素の計算値を示す。図7に、熱酸化工程及び熱処理工程でエピタキシャル層150に導入される酸素の実測値を示す。縦軸が酸素濃度であり、横軸がエピタキシャル層150の表面からの深さである。
【0026】
図6では、計算値1と計算値2が熱酸化工程のみを実施したと想定した場合の結果である。計算値1の熱酸化工程は、雰囲気温度が1100℃であり、熱酸化時間が49分間である。計算値2の熱酸化工程は、雰囲気温度が1200℃であり、熱酸化時間が10分間である。計算値3〜5は、熱酸化工程と熱処理工程の両方を実施したと想定した場合の結果である。計算値3の熱酸化工程は、雰囲気温度が1100℃であり、熱酸化時間が49分間である。計算値4の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が180分間である。計算値5の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が440分間である。なお、計算値3〜5では、熱処理工程の雰囲気温度が1150℃、熱処理時間が328分間で固定である。
【0027】
図6に示されるように、熱酸化工程と熱処理工程の両方を組合せた計算値3〜5はいずれも、エピタキシャル層150内に目標値を超えた酸素を導入することが可能であることが示唆される。なお、計算値1と計算値2を比較すると、熱酸化工程での酸素導入が同等であることが示唆される。
【0028】
次に、図6の計算値は、図7の実測値によって確認されている。図7では、実測値11と実測値12が熱酸化工程のみを実施した場合の結果である。実測値11の熱酸化工程は、雰囲気温度が1100℃であり、熱酸化時間が49分間である。実測値12の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が49分間である。実測値13〜15は、熱酸化工程と熱処理工程の両方を実施した場合の結果である。実測値13の熱酸化工程は、雰囲気温度が1100℃であり、熱酸化時間が49分間である。実測値14の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が180分間である。実測値15の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が440分間である。なお、実測値13〜15では、熱処理工程の雰囲気温度が1150℃、熱処理時間が328分間(不活性ガスに窒素を使用)で固定である。また、図7では、参考のために、熱酸化工程の熱酸化時間を長期化した例も併せて検討している。実測値16と実測値17が長期間の熱酸化工程のみを実施した場合の結果である。実測値16の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が440分間である。実測値17の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が615分間である。
【0029】
なお、実測値11〜14の熱酸化工程は酸素ガスと水素ガスを利用するパイロ酸化であり、実測値15と実測値16の熱酸化工程は酸素ガスと窒素ガスを利用するドライ酸化であり、実測値17の熱酸化工程は酸素ガスと希釈された窒素ガスを利用する窒素希釈ドライ酸化である。これらの酸化方法の相違によって、シリコン酸化膜52に含有する酸素濃度が異なる。しかしながら、いずれの場合も、シリコン酸化膜53に含有する酸素濃度は、エピタキシャル層150の固溶限濃度よりも十分に濃いことから、これらの酸化方法の相違はエピタキシャル層150に導入される酸素濃度に影響を及ぼさないと推察される。
【0030】
図7に示されるように、図6の計算値とほぼ同等の結果が得られることが確認された。熱酸化工程と熱処理工程の両方を実施する手法は、エピタキシャル層150に酸素を高濃度に導入する手法として有用であることが確認された。また、実測値13〜15と実測値11,12,16,17を比較すると、熱酸化工程と熱処理工程の両方を組合せる手法は、深さ方向の酸素濃度の傾きが緩やかであり、深い位置にまで高濃度の酸素を導入可能であることが確認された。
【0031】
なお、上記の熱酸化工程及び熱処理工程の処理条件は特に限定されないが、エピタキシャル層150及び下地基板140の厚さ方向の全域で酸素濃度が上昇するのが望ましい。より好ましくは、エピタキシャル層150及び下地基板140内の酸素濃度が略均一となるように拡散させるのが望ましい。このように、シリコン酸化膜52を利用して酸素を導入すると、エピタキシャル層150及び下地基板140内の酸素濃度にピークが現われない。一例では、エピタキシャル層150及び下地基板140の酸素濃度は、約1×1017cm-3〜約3×1017cm-3に調整されるのが望ましい。なお、イオン注入技術を利用して、熱処理工程に先立って酸素イオンをエピタキシャル層150及び下地基板140内に導入してもよい。
【0032】
次に、図8に示されるように、フォトレジスト技術及びエッチング技術を利用して、素子領域のシリコン酸化膜52を除去する。次に、イオン注入技術を利用して、エピタキシャル層150の表層部にボロンを導入する。ボロンを導入した後に、熱拡散技術を利用して、導入したボロンを活性化させ、アノード領域60を形成する。このイオン注入工程及び熱拡散工程により、エピタキシャル層150のうちのアノード領域60以外の領域が電圧保持領域50となる。一例では、アノード領域60の不純物のピーク濃度は約1×1017cm-3であり、その厚みは約2μmである。
【0033】
次に、図9に示されるように、蒸着技術又はスパッタ技術を利用して、アノード領域60上にアノード電極70を形成する。一例では、アノード電極70の材料にはアルミニウムが用いられる。
【0034】
次に、図10に示されるように、研磨技術を利用して、下地基板140を研磨し、所望の厚みに調整し、n型不純物導入領域40を形成する。一例では、n型不純物導入領域40の厚みは約30μmである。
【0035】
次に、図11に示されるように、イオン注入技術を利用して、下地基板140の裏層部にリンを導入する。リンを導入した後に、レーザーアニール技術を利用して、導入したリンを活性化させ、カソード領域42を形成する。このイオン注入工程及びレーザーアニール工程により、n型不純物導入領域40のうちのカソード領域42以外の領域が電界抑止領域44となる。一例では、カソード領域42は、不純物のピーク濃度が約1×1020cm-3であり、その厚みが約0.2μmである。
【0036】
次に、図12に示されるように、ヘリウム照射技術を利用して、質量3のヘリウムをn型不純物導入領域40側から照射する。飛程位置は、図示しないエネルギー吸収用のアルミ箔の厚みを調整することにより、電圧保持領域50とアノード領域60のpn接合界面近傍のうちの電圧保持領域50側に設定されている。次に、ポストアニール処理を実施し、酸素・空孔欠陥及び複空孔欠陥を形成する。最後に、蒸着技術又はスパッタ技術を利用して、カソード電極30を形成する。一例では、カソード電極30の材料にアルミニウムが用いられている。これらの工程を経て、図2に示されるダイオード10が製造される。
【0037】
図13に、ダイオード10の不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。破線80は、ヘリウムの照射によって形成された複空孔欠陥の濃度を示している。破線90は、導入された酸素が空孔と結合した酸素・空孔欠陥の濃度を示している。ダイオード10は、酸素・空孔欠陥90の濃度が複空孔欠陥80の濃度よりも高い第1領域90Aと、複空孔欠陥80の濃度が酸素・空孔欠陥90の濃度よりも高い第2領域80Aを備えている。第1領域90Aは、n型不純物導入領域40と、さらに電圧保持領域50のうちのn型不純物導入領域40側の一部に位置している。第2領域80Aは、アノード領域60と、さらに電圧保持領域50のうちのアノード領域60側の一部に配置されている。また、図13に示されるように、第1領域90Aは、導入された酸素が空孔と結合して酸素・空孔欠陥90が形成された領域であるとともに、ヘリウムの照射によって複空孔欠陥80が形成された領域でもある。第1領域90Aは、酸素・空孔欠陥と複空孔欠陥の双方が形成されているけれども、酸素・空孔欠陥90の濃度が複空孔欠陥80の濃度よりも高くなった領域である。一方、第2領域80Aは、ヘリウムの照射によって複空孔欠陥80が形成された領域であるとともに、導入された酸素が空孔と結合して酸素・空孔欠陥90が形成された領域でもある。第2領域80Aは、複空孔欠陥と酸素・空孔欠陥の双方が形成されているけれども、複空孔欠陥80の濃度が酸素・空孔欠陥90の濃度よりも高くなった領域である。
【0038】
酸素・空孔欠陥90は、伝導帯エネルギー端(Ec)から約0.17eV低いレベルにエネルギー準位を有しており、比較的に浅いエネルギー準位に属する。このため、図1で説明したように、酸素・空孔欠陥90は、電子と正孔の発生確率が低い。したがって、多量に形成したとしても、リーク電流の増加が抑えられる。特に、ダイオード10では、酸素・空孔欠陥90が半導体基板20の全体に亘って形成されており、この結果、リーク電流の増加を抑えながら、リバースリカバリー電荷(Qrr)が大幅に低減されている。しかしながら、酸素・空孔欠陥90における電子と正孔の再結合確率は、温度に依存して変動する。ダイオード10ではさらに、電圧保持領域50とアノード領域60のpn界面近傍にヘリウム照射によって形成された複空孔欠陥80が形成されている。複空孔欠陥80は、伝導帯エネルギー端(Ec)から約0.40eV低いレベルにエネルギー準位を有しており、比較的に深いエネルギー準位に属する。このため、複空孔欠陥80は、電子と正孔の再結合確率が温度に依存しないという特徴を有する。ダイオード10では、複空孔欠陥80が形成されているので、酸素・空孔欠陥90の電子と正孔の再結合確率に係る温度依存性を補償することができる。さらに、ダイオード10では、複空孔欠陥80のピーク値が、電圧保持領域50とアノード領域60のpn界面近傍に局所的に形成されているので、リカバリー電流のソフト化に寄与することができる。このように、ダイオード10は、浅いエネルギー準位の酸素・空孔欠陥90と深いエネルギー準位の複空孔欠陥80が混在しているので、リーク電流の増加を抑えながら、リバースリカバリー電荷(Qrr)の低減と、リカバリー電流のソフト化を実現することができる。
【0039】
図14に、1つの変形例の不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。この変形例のダイオードは、ヘリウム照射で形成される複空孔欠陥80が狭い範囲に形成されていることを特徴としている。特に、複空孔欠陥80が、電圧保持領域50内に形成されており、電圧保持領域50とアノード領域60のpn接合界面には形成されていないことを特徴としている。この変形例のダイオードは、例えば、質量4のヘリウムをカソード領域40側から照射することで形成することができる。この変形例のダイオードでは、逆バイアス時に最も電界が高くなる電圧保持領域50とアノード領域60のpn接合界面に複空孔欠陥80が形成されていないので、リーク電流の増加が大幅に抑えられる。さらに、より局所的に電子と正孔の再結合が働くので、リカバリー電流のソフト化をより向上させることができる。
【0040】
図15に、他の1つの変形例の不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。この変形例のダイオードは、ヘリウム照射で形成される複空孔欠陥80が狭い範囲に形成されているとともに、1つの複空孔欠陥80aがアノード領域60側に形成されており、他の1つの複空孔欠陥80bが電界抑止領域44側に形成されていることを特徴としている。この変形例のダイオードでは、他の1つの複空孔欠陥80bが電界抑止領域44と電圧保持領域50の接合界面に形成されているので、リカバリー電流のテイル時間を短縮させることができる。さらに、複空孔欠陥80bが深いエネルギー準位であることから、リカバリー電流のテイル時間の短縮効果が高温下でも維持される。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0042】
20:半導体基板
20a:第1主面
20b:第2主面
30:カソード電極
70:アノード電極
80:複空孔欠陥
80A:第2領域
90:酸素・空孔欠陥
90A:第1領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードに関する。本発明は特に、パワーデバイスに逆並列に接続されるフリーホイールダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオードは、様々な電気回路に用いられており、その作用は広範囲に及んでいる。例えば、負荷に供給する電力を制御するためのインバータ回路には、ブリッジ接続したパワーデバイスのそれぞれにダイオードが逆並列に接続されている。この種のダイオードは、フリーホイールダイオード(Free Wheel Diode:以下、FWDという)と呼ばれており、パワーデバイスが負荷電流をON/OFF制御したときにその負荷電流を転流させている。
【0003】
近年、ハイブリッド車両及び電気車両に搭載されるモータを制御するインバータ回路では、低スイッチング損失及び高サージ耐圧が求められている。これらの要求に応えるために、FWDのリバースリカバリー特性の改善が進められている。具体的には、半導体基板内に結晶欠陥を形成することによって、低スイッチング損失に寄与するリバースリカバリー電荷(Qrr)の低減と、サージ電圧の抑制に寄与するリカバリー電流のソフト化が進められている。
【0004】
特許文献1〜3には、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥と荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥の双方を半導体基板内に混在させることにより、FWDのリバースリカバリー特性を改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第99/09600号パンフレット
【特許文献2】特開平6−35010号公報
【特許文献3】特開2004−88012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、結晶欠陥のエネルギー準位は、電子と正孔の再結合中心であるとともに、高電界が加わったときには(逆バイアス状態)、電子と正孔の発生中心でもある。このため、結晶欠陥が半導体基板内に多量に形成されると、逆バイアス状態において、リーク電流の増加を招いてしまう。重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥は、電子と正孔を発生する度合い(電子と正孔の発生確率ともいう)が低いので、リーク電流を抑制することができる。しかしながら、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥は、電子と正孔の再結合の度合い(電子と正孔の再結合確率ともいう)が温度に依存して変動し易いという問題を有する。一方、荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥では、電子と正孔の再結合確率が温度に依存しないという特徴を有する。特許文献1〜3では、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥と荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥の双方が半導体基板内に混在しているので、リーク電流の増加を抑えながら、リバースリカバリー電荷(Qrr)の低減と、リカバリー電流のソフト化を実現することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3では、重金属(例えば、白金)を利用して結晶欠陥が形成されている。重金属をドーピングする処理工程では、汚染を防止するために、一般的な半導体製造設備とは別に、専用の設備を必要とする。このため、重金属の利用は、製造コストを大幅に増大させるという問題がある。
【0008】
本明細書で開示される技術は、重金属を利用することなく、異なる種類の結晶欠陥が混在したダイオードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、結晶欠陥のエネルギー準位に着目した。重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥は、伝導帯エネルギー端(Ec)から約0.23eV低いレベルに再結合中心エネルギー準位を有する。一方、荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥は、複数の原子空孔が結合した複空孔欠陥であり、伝導帯エネルギー端(Ec)から約0.40eV低いレベルに再結合中心エネルギー準位を有する。相対的に、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥は浅いエネルギー準位を有し、荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥は深いエネルギー準位を有する。
【0010】
本発明者らの検討の結果、電子と正孔の再結合確率及び発生確率は、結晶欠陥のエネルギー準位に依存することが分かってきた。図1に、単一トラップと仮定したときの結晶欠陥のエネルギー準位と電子と正孔の再結合確率及び発生確率の関係を示す。図1に示されるように、結晶欠陥のエネルギー準位が浅い場合(例えば、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥)は、電子と正孔の発生確率が低くなり、リーク電流の発生が抑えられる。しかしながら、電子と正孔の再結合確率は、温度に依存して変動する。一方、結晶欠陥のエネルギー準位が高い場合(例えば、荷電粒子の照射を利用して形成される結晶欠陥)は、電子と正孔の再結合確率は温度に依存しないという特徴を有する。このように、電子と正孔の再結合確率及び発生確率は、結晶欠陥のエネルギー準位に依存することが分かってきた。すなわち、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥と同等の浅いエネルギー準位の結晶欠陥を形成すれば、重金属を利用することなく、異なる種類の結晶欠陥を混在させたダイオードを具現化することができる。
【0011】
本明細書で開示されるダイオードは、半導体基板と、半導体基板の第1主面に形成されているカソード電極と、半導体基板の第2主面に形成されているアノード電極を備えている。半導体基板は、酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域と、複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域を有する。本明細書で開示されるダイオードでは、酸素・空孔欠陥が形成されていることを特徴としている。酸素・空孔欠陥は、伝導帯端(Ec)から約0.17eV低いレベルにエネルギー準位を有しており、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥のエネルギー準位とほぼ同等である。したがって、酸素・空孔欠陥は、重金属の拡散を利用して形成される結晶欠陥を代替することが可能である。酸素・空孔欠陥を利用すれば、重金属を利用することなく、異なる種類の結晶欠陥を混在させたダイオードを具現化することができる。
【0012】
本明細書で開示されるダイオードでは、酸素・空孔欠陥の濃度が、半導体基板内にピーク値を有しないことが好ましい。ここでいうピーク値とは、半導体基板の厚み方向において極大値を有しないことである。したがって、酸素・空孔欠陥の濃度が、厚み方向に沿って単調に増加又は減少するような場合は、ピーク値を有しないと評価される。より好ましくは、酸素・空孔欠陥の濃度が、半導体基板の第1主面から第2主面まで一定であることが望ましい。これらの態様によると、リーク電流の増加を抑えながら、リバースリカバリー電荷(Qrr)を大幅に低減することができる。
【0013】
本明細書で開示されるダイオードでは、第1領域の酸素・空孔欠陥の濃度が、少なくとも1×1013cm-3以上であるのが望ましい。この濃度以上であれば、意図的に酸素を導入することによって形成された酸素・空孔欠陥であると評価できる。
【0014】
本明細書では、酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域と複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域とを有する半導体基板を備えたダイオードの製造方法を提供することができる。このダイオードの製造方法は、半導体基板内に酸素を導入する酸素導入工程と、その半導体基板の所定深さに向けて荷電粒子を照射する荷電粒子照射工程とを備える。酸素導入工程を実施することにより、半導体基板内に酸素・空孔欠陥の濃度の高い領域を形成することができる。さらに、荷電粒子照射工程では、荷電粒子を局所深さに照射する。これにより、半導体基板内には、酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域と、複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域が形成される。
【0015】
酸素導入工程は、半導体基板の一方の主面に酸化膜を形成する第1工程と、酸化膜が残存する状態で半導体基板を熱処理する第2工程とを有することが好ましい。簡易なプロセスで半導体基板内に酸素を導入することができる。
【0016】
第1工程では、酸化膜を形成するときの温度が1100〜1200℃に設定されており、その酸化時間が10〜500分に設定されているのが望ましい。第2工程では、熱処理の温度が1150℃以上に設定されているのが望ましい。これにより、高濃度の酸素を半導体基板内に導入することができる。
【0017】
酸素導入工程では、半導体基板内の酸素濃度が厚さ方向の全域で増加するのが望ましい。これにより、半導体基板内に酸素・空孔欠陥の濃度の高い領域を確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書で開示される技術によると、重金属を利用することなく、浅いエネルギー準位の結晶欠陥と深いエネルギー準位の結晶欠陥が混在したダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】結晶欠陥のエネルギー準位と電子・正孔の再結合/発生確率の関係を示す。
【図2】実施例のダイオードの要部断面図を模式的に示す。
【図3】実施例のダイオードの製造工程の概略を示す。
【図4】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(1)。
【図5】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(2)。
【図6】エピタキシャル層に導入される酸素濃度の計算値を示す。
【図7】エピタキシャル層に導入される酸素濃度の実測値を示す。
【図8】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(3)。
【図9】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(4)。
【図10】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(5)。
【図11】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(6)。
【図12】実施例のダイオードの製造過程における要部断面図を示す(7)。
【図13】実施例のダイオードの不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。
【図14】1つの変形例のダイオードの不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。
【図15】他の1つの変形例のダイオードの不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で開示される技術の特徴を整理しておく。
(第1特徴)ダイオードは、n+型のカソード領域と、n型の電界抑止領域と、n−型の電圧保持領域と、p+型のアノード領域を備えた縦型のPINダイオードである。
(第2特徴)酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域は、電圧保持領域に位置している。
(第3特徴)酸素・空孔欠陥の濃度は、少なくとも1×1013cm-3以上である。この濃度以上であれば、意図的に酸素を導入することによって形成された酸素・空孔欠陥であると評価できる。
(第4特徴)複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域は、電圧保持領域とアノード領域のpn接合界面近傍に位置している。さらに、この第2領域のピーク値は、電圧保持領域とアノード領域のpn接合界面近傍のうちの電圧保持領域側に位置しているのが望ましい。より好ましくは、この第2領域は、アノード領域に位置していないのが望ましい。
(第5特徴)第4特徴において、複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い追加の第2領域が、電界抑止領域と電圧保持領域の界面近傍に位置している。
(第6特徴)酸素・空孔欠陥の再結合中心エネルギー準位は、伝導帯エネルギー端から0.15eV〜0.25eVの範囲内に形成された電子トラップ準位である。
(第7特徴)複空孔欠陥の再結合中心エネルギー準位は、伝導帯エネルギー端から0.35eV〜0.55eVの範囲内に形成された電子トラップ準位である。
【実施例】
【0021】
図2に、ダイオード10の要部断面図を模式的に示す。後述の製造方法でも説明するように、図2は、素子領域のみを図示しており、素子領域の周囲に設けられている終端領域は図示されていない。ダイオード10は、シリコン単結晶の半導体基板20と、半導体基板20の第1主面20aに形成されているカソード電極30と、半導体基板20の第2主面20bに形成されているアノード電極70を備えている。ダイオード10は、所謂縦型のPINダイオードに属する。
【0022】
図2に示されるように、半導体基板20は、カソード領域42と、そのカソード領域42上に形成されている電界抑止領域44と、電界抑止領域44上に形成されている電圧保持領域50と、電圧保持領域50上に形成されているアノード領域60を備えている。カソード領域42と電界抑止領域44は、電圧保持領域50よりもn型の不純物を高濃度に含んでおり、n型不純物導入領域40ともいう。カソード領域42は、カソード電極30に接触している。電圧保持領域50は、n型不純物導入領域40とアノード領域60を隔てており、n型の不純物を低濃度に含んでおり、その不純物濃度はn型不純物導入領域40よりも薄い。アノード領域60は、p型の不純物を高濃度に含んでおり、アノード電極70に接触している。
【0023】
次に、ダイオード10の製造方法を説明する。図3に、ダイオード10の製造工程の概略を示す。以下、図3の製造工程の概略を参照にしながら、ダイオード10の要部断面図を用いて製造工程を説明する。まず、図4に示されるように、n型の下地基板140(後に、n型不純物導入領域40となる)を準備する。一例として、下地基板140の不純物濃度は、約1×1015cm-3である。次に、エピタキシャル成長技術を利用して、下地基板140上にn−型のエピタキシャル層150(後に、電圧保持領域50及びアノード領域60となる)を結晶成長させる。一例として、エピタキシャル層150の厚みは約100μmであり、その不純物濃度は約1×1014cm-3である。
【0024】
次に、図5に示されるように、熱酸化技術を利用して、酸化雰囲気下でエピタキシャル層150上にシリコン酸化膜52を形成する。この熱酸化工程は、雰囲気温度が1100〜1200℃に設定されているとともに、熱酸化時間が10〜500分に設定されているのが望ましい。この条件の熱酸化工程によって、エピタキシャル層150の表層部には、固溶限濃度にまで酸素が溶け込む。次に、熱処理技術を利用して、不活性ガス雰囲気下でエピタキシャル層150の表層部に固溶限濃度にまで溶け込んだ酸素をエピタキシャル層150の深部に向けて拡散させる。この熱処理工程は、雰囲気温度が1150℃以上であるのが望ましい。この条件の熱処理工程によって、少なくとも後述するヘリウム照射工程でヘリウムが照射される飛程位置よりも深い位置にまで酸素を拡散させることができる。具体的には、導入される酸素濃度の目標値は、深さが10μmで1×1017cm-3以上、より好ましくは深さが20μmで1×1017cm-3以上であるのが望ましい。
【0025】
図6に、熱酸化工程及び熱処理工程でエピタキシャル層150に導入される酸素の計算値を示す。図7に、熱酸化工程及び熱処理工程でエピタキシャル層150に導入される酸素の実測値を示す。縦軸が酸素濃度であり、横軸がエピタキシャル層150の表面からの深さである。
【0026】
図6では、計算値1と計算値2が熱酸化工程のみを実施したと想定した場合の結果である。計算値1の熱酸化工程は、雰囲気温度が1100℃であり、熱酸化時間が49分間である。計算値2の熱酸化工程は、雰囲気温度が1200℃であり、熱酸化時間が10分間である。計算値3〜5は、熱酸化工程と熱処理工程の両方を実施したと想定した場合の結果である。計算値3の熱酸化工程は、雰囲気温度が1100℃であり、熱酸化時間が49分間である。計算値4の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が180分間である。計算値5の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が440分間である。なお、計算値3〜5では、熱処理工程の雰囲気温度が1150℃、熱処理時間が328分間で固定である。
【0027】
図6に示されるように、熱酸化工程と熱処理工程の両方を組合せた計算値3〜5はいずれも、エピタキシャル層150内に目標値を超えた酸素を導入することが可能であることが示唆される。なお、計算値1と計算値2を比較すると、熱酸化工程での酸素導入が同等であることが示唆される。
【0028】
次に、図6の計算値は、図7の実測値によって確認されている。図7では、実測値11と実測値12が熱酸化工程のみを実施した場合の結果である。実測値11の熱酸化工程は、雰囲気温度が1100℃であり、熱酸化時間が49分間である。実測値12の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が49分間である。実測値13〜15は、熱酸化工程と熱処理工程の両方を実施した場合の結果である。実測値13の熱酸化工程は、雰囲気温度が1100℃であり、熱酸化時間が49分間である。実測値14の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が180分間である。実測値15の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が440分間である。なお、実測値13〜15では、熱処理工程の雰囲気温度が1150℃、熱処理時間が328分間(不活性ガスに窒素を使用)で固定である。また、図7では、参考のために、熱酸化工程の熱酸化時間を長期化した例も併せて検討している。実測値16と実測値17が長期間の熱酸化工程のみを実施した場合の結果である。実測値16の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が440分間である。実測値17の熱酸化工程は、雰囲気温度が1150℃であり、熱酸化時間が615分間である。
【0029】
なお、実測値11〜14の熱酸化工程は酸素ガスと水素ガスを利用するパイロ酸化であり、実測値15と実測値16の熱酸化工程は酸素ガスと窒素ガスを利用するドライ酸化であり、実測値17の熱酸化工程は酸素ガスと希釈された窒素ガスを利用する窒素希釈ドライ酸化である。これらの酸化方法の相違によって、シリコン酸化膜52に含有する酸素濃度が異なる。しかしながら、いずれの場合も、シリコン酸化膜53に含有する酸素濃度は、エピタキシャル層150の固溶限濃度よりも十分に濃いことから、これらの酸化方法の相違はエピタキシャル層150に導入される酸素濃度に影響を及ぼさないと推察される。
【0030】
図7に示されるように、図6の計算値とほぼ同等の結果が得られることが確認された。熱酸化工程と熱処理工程の両方を実施する手法は、エピタキシャル層150に酸素を高濃度に導入する手法として有用であることが確認された。また、実測値13〜15と実測値11,12,16,17を比較すると、熱酸化工程と熱処理工程の両方を組合せる手法は、深さ方向の酸素濃度の傾きが緩やかであり、深い位置にまで高濃度の酸素を導入可能であることが確認された。
【0031】
なお、上記の熱酸化工程及び熱処理工程の処理条件は特に限定されないが、エピタキシャル層150及び下地基板140の厚さ方向の全域で酸素濃度が上昇するのが望ましい。より好ましくは、エピタキシャル層150及び下地基板140内の酸素濃度が略均一となるように拡散させるのが望ましい。このように、シリコン酸化膜52を利用して酸素を導入すると、エピタキシャル層150及び下地基板140内の酸素濃度にピークが現われない。一例では、エピタキシャル層150及び下地基板140の酸素濃度は、約1×1017cm-3〜約3×1017cm-3に調整されるのが望ましい。なお、イオン注入技術を利用して、熱処理工程に先立って酸素イオンをエピタキシャル層150及び下地基板140内に導入してもよい。
【0032】
次に、図8に示されるように、フォトレジスト技術及びエッチング技術を利用して、素子領域のシリコン酸化膜52を除去する。次に、イオン注入技術を利用して、エピタキシャル層150の表層部にボロンを導入する。ボロンを導入した後に、熱拡散技術を利用して、導入したボロンを活性化させ、アノード領域60を形成する。このイオン注入工程及び熱拡散工程により、エピタキシャル層150のうちのアノード領域60以外の領域が電圧保持領域50となる。一例では、アノード領域60の不純物のピーク濃度は約1×1017cm-3であり、その厚みは約2μmである。
【0033】
次に、図9に示されるように、蒸着技術又はスパッタ技術を利用して、アノード領域60上にアノード電極70を形成する。一例では、アノード電極70の材料にはアルミニウムが用いられる。
【0034】
次に、図10に示されるように、研磨技術を利用して、下地基板140を研磨し、所望の厚みに調整し、n型不純物導入領域40を形成する。一例では、n型不純物導入領域40の厚みは約30μmである。
【0035】
次に、図11に示されるように、イオン注入技術を利用して、下地基板140の裏層部にリンを導入する。リンを導入した後に、レーザーアニール技術を利用して、導入したリンを活性化させ、カソード領域42を形成する。このイオン注入工程及びレーザーアニール工程により、n型不純物導入領域40のうちのカソード領域42以外の領域が電界抑止領域44となる。一例では、カソード領域42は、不純物のピーク濃度が約1×1020cm-3であり、その厚みが約0.2μmである。
【0036】
次に、図12に示されるように、ヘリウム照射技術を利用して、質量3のヘリウムをn型不純物導入領域40側から照射する。飛程位置は、図示しないエネルギー吸収用のアルミ箔の厚みを調整することにより、電圧保持領域50とアノード領域60のpn接合界面近傍のうちの電圧保持領域50側に設定されている。次に、ポストアニール処理を実施し、酸素・空孔欠陥及び複空孔欠陥を形成する。最後に、蒸着技術又はスパッタ技術を利用して、カソード電極30を形成する。一例では、カソード電極30の材料にアルミニウムが用いられている。これらの工程を経て、図2に示されるダイオード10が製造される。
【0037】
図13に、ダイオード10の不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。破線80は、ヘリウムの照射によって形成された複空孔欠陥の濃度を示している。破線90は、導入された酸素が空孔と結合した酸素・空孔欠陥の濃度を示している。ダイオード10は、酸素・空孔欠陥90の濃度が複空孔欠陥80の濃度よりも高い第1領域90Aと、複空孔欠陥80の濃度が酸素・空孔欠陥90の濃度よりも高い第2領域80Aを備えている。第1領域90Aは、n型不純物導入領域40と、さらに電圧保持領域50のうちのn型不純物導入領域40側の一部に位置している。第2領域80Aは、アノード領域60と、さらに電圧保持領域50のうちのアノード領域60側の一部に配置されている。また、図13に示されるように、第1領域90Aは、導入された酸素が空孔と結合して酸素・空孔欠陥90が形成された領域であるとともに、ヘリウムの照射によって複空孔欠陥80が形成された領域でもある。第1領域90Aは、酸素・空孔欠陥と複空孔欠陥の双方が形成されているけれども、酸素・空孔欠陥90の濃度が複空孔欠陥80の濃度よりも高くなった領域である。一方、第2領域80Aは、ヘリウムの照射によって複空孔欠陥80が形成された領域であるとともに、導入された酸素が空孔と結合して酸素・空孔欠陥90が形成された領域でもある。第2領域80Aは、複空孔欠陥と酸素・空孔欠陥の双方が形成されているけれども、複空孔欠陥80の濃度が酸素・空孔欠陥90の濃度よりも高くなった領域である。
【0038】
酸素・空孔欠陥90は、伝導帯エネルギー端(Ec)から約0.17eV低いレベルにエネルギー準位を有しており、比較的に浅いエネルギー準位に属する。このため、図1で説明したように、酸素・空孔欠陥90は、電子と正孔の発生確率が低い。したがって、多量に形成したとしても、リーク電流の増加が抑えられる。特に、ダイオード10では、酸素・空孔欠陥90が半導体基板20の全体に亘って形成されており、この結果、リーク電流の増加を抑えながら、リバースリカバリー電荷(Qrr)が大幅に低減されている。しかしながら、酸素・空孔欠陥90における電子と正孔の再結合確率は、温度に依存して変動する。ダイオード10ではさらに、電圧保持領域50とアノード領域60のpn界面近傍にヘリウム照射によって形成された複空孔欠陥80が形成されている。複空孔欠陥80は、伝導帯エネルギー端(Ec)から約0.40eV低いレベルにエネルギー準位を有しており、比較的に深いエネルギー準位に属する。このため、複空孔欠陥80は、電子と正孔の再結合確率が温度に依存しないという特徴を有する。ダイオード10では、複空孔欠陥80が形成されているので、酸素・空孔欠陥90の電子と正孔の再結合確率に係る温度依存性を補償することができる。さらに、ダイオード10では、複空孔欠陥80のピーク値が、電圧保持領域50とアノード領域60のpn界面近傍に局所的に形成されているので、リカバリー電流のソフト化に寄与することができる。このように、ダイオード10は、浅いエネルギー準位の酸素・空孔欠陥90と深いエネルギー準位の複空孔欠陥80が混在しているので、リーク電流の増加を抑えながら、リバースリカバリー電荷(Qrr)の低減と、リカバリー電流のソフト化を実現することができる。
【0039】
図14に、1つの変形例の不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。この変形例のダイオードは、ヘリウム照射で形成される複空孔欠陥80が狭い範囲に形成されていることを特徴としている。特に、複空孔欠陥80が、電圧保持領域50内に形成されており、電圧保持領域50とアノード領域60のpn接合界面には形成されていないことを特徴としている。この変形例のダイオードは、例えば、質量4のヘリウムをカソード領域40側から照射することで形成することができる。この変形例のダイオードでは、逆バイアス時に最も電界が高くなる電圧保持領域50とアノード領域60のpn接合界面に複空孔欠陥80が形成されていないので、リーク電流の増加が大幅に抑えられる。さらに、より局所的に電子と正孔の再結合が働くので、リカバリー電流のソフト化をより向上させることができる。
【0040】
図15に、他の1つの変形例の不純物濃度の分布と結晶欠陥の分布を示す。この変形例のダイオードは、ヘリウム照射で形成される複空孔欠陥80が狭い範囲に形成されているとともに、1つの複空孔欠陥80aがアノード領域60側に形成されており、他の1つの複空孔欠陥80bが電界抑止領域44側に形成されていることを特徴としている。この変形例のダイオードでは、他の1つの複空孔欠陥80bが電界抑止領域44と電圧保持領域50の接合界面に形成されているので、リカバリー電流のテイル時間を短縮させることができる。さらに、複空孔欠陥80bが深いエネルギー準位であることから、リカバリー電流のテイル時間の短縮効果が高温下でも維持される。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0042】
20:半導体基板
20a:第1主面
20b:第2主面
30:カソード電極
70:アノード電極
80:複空孔欠陥
80A:第2領域
90:酸素・空孔欠陥
90A:第1領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオードであって、
半導体基板と、
前記半導体基板の第1主面に形成されているカソード電極と、
前記半導体基板の第2主面に形成されているアノード電極、を備えており、
前記半導体基板は、
酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域と、
複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域と、を有するダイオード。
【請求項2】
酸素・空孔欠陥の濃度は、半導体基板内にピーク値を有しない請求項1に記載のダイオード。
【請求項3】
酸素・空孔欠陥の濃度は、半導体基板内で一定である請求項2に記載のダイオード。
【請求項4】
前記第1領域の酸素・空孔欠陥の濃度は、1×1013cm-3以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイオード。
【請求項5】
酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域と複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域とを有する半導体基板を備えたダイオードの製造方法であって、
前記半導体基板内に酸素を導入する酸素導入工程と、
前記半導体基板の所定深さに向けて荷電粒子を照射する荷電粒子照射工程と、を備えているダイオードの製造方法。
【請求項6】
前記酸素導入工程は、
半導体基板の一方の主面に酸化膜を形成する第1工程と、
前記酸化膜が残存する状態で半導体基板を熱処理する第2工程と、を有する請求項5に記載のダイオードの製造方法。
【請求項7】
前記第1工程では、前記酸化膜を形成するときの温度が1100〜1200℃に設定されており、その酸化時間が10〜500分に設定されており、
前記第2工程では、熱処理の温度が1150℃以上に設定されている請求項6に記載のダイオードの製造方法。
【請求項8】
前記酸素導入工程では、前記半導体基板内の酸素濃度が厚さ方向の全域で増加する請求項5〜7のいずれか一項に記載のダイオードの製造方法。
【請求項1】
ダイオードであって、
半導体基板と、
前記半導体基板の第1主面に形成されているカソード電極と、
前記半導体基板の第2主面に形成されているアノード電極、を備えており、
前記半導体基板は、
酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域と、
複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域と、を有するダイオード。
【請求項2】
酸素・空孔欠陥の濃度は、半導体基板内にピーク値を有しない請求項1に記載のダイオード。
【請求項3】
酸素・空孔欠陥の濃度は、半導体基板内で一定である請求項2に記載のダイオード。
【請求項4】
前記第1領域の酸素・空孔欠陥の濃度は、1×1013cm-3以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイオード。
【請求項5】
酸素・空孔欠陥の濃度が複空孔欠陥の濃度よりも高い第1領域と複空孔欠陥の濃度が酸素・空孔欠陥の濃度よりも高い第2領域とを有する半導体基板を備えたダイオードの製造方法であって、
前記半導体基板内に酸素を導入する酸素導入工程と、
前記半導体基板の所定深さに向けて荷電粒子を照射する荷電粒子照射工程と、を備えているダイオードの製造方法。
【請求項6】
前記酸素導入工程は、
半導体基板の一方の主面に酸化膜を形成する第1工程と、
前記酸化膜が残存する状態で半導体基板を熱処理する第2工程と、を有する請求項5に記載のダイオードの製造方法。
【請求項7】
前記第1工程では、前記酸化膜を形成するときの温度が1100〜1200℃に設定されており、その酸化時間が10〜500分に設定されており、
前記第2工程では、熱処理の温度が1150℃以上に設定されている請求項6に記載のダイオードの製造方法。
【請求項8】
前記酸素導入工程では、前記半導体基板内の酸素濃度が厚さ方向の全域で増加する請求項5〜7のいずれか一項に記載のダイオードの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−146673(P2011−146673A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169360(P2010−169360)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
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