説明

ダイカスト用離型剤

【課題】金型内面に形成した離型剤を目視で確認できることを課題とする。
【解決手段】金型の内面に付着させて使用されるダイカスト用離型剤であり、蛍光剤を発色剤として含むことを特徴とするダイカスト用離型剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特にダイカスト鋳造における成形品の離型を目的に金型に塗布されて使用されるダイカスト用離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、ダイカスト鋳造では、金型製品部キャビティの潤滑を行うため、型開き後に離型剤を吹き付けて、金型表面の潤滑を行ない、アルミニウム等の溶湯の金型への溶着(焼付け)等を低減し、連続鋳造を可能にしている。
【0003】
このダイカスト鋳造工程において、金型表面への離型剤等の塗布は、優れた鋳造性を得るために必要な工程の一つである。また、離型剤の品質や付着性の良し悪しで製品(鋳造物)の品質が左右されるのも事実である。
【0004】
ところで、従来、離型剤を金型に塗布して離型皮膜を形成させる段階において、離型皮膜が金型に確実に塗布されているかどうかを確認する手段が確立していなかった。従って、技術者の独自のノウハウや製品状態を観察することで、離型剤の塗布条件を選択するのが現状であり非常に難しい分野であった。しかし、離型剤が金型に付着しているかどうかを簡単に目視観察できるようになれば、優れた鋳造を行うための離型剤塗布条件の最適化がより容易に行えると考えられる。
【0005】
下記特許文献1は、少なくともジメチルシリコーンオイルとペインタブル性シリコーンオイルとを混合したことを特徴とする離型剤組成物に関する。
【特許文献1】特開2003−48218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のダイカスト法では、離型剤を金型に吹き付ける等の手段で塗布させ、金型製品キャビティの潤滑、型開き後の離型効果を可能にしている。この時、離型剤の塗布量が適切でない場合、期待する潤滑効果、離型効果が現われない。ここで、離型剤が不足すると、かじり、焼き付け、湯周り不良等が生じる。また、離型剤が過剰の場合、オイルマーク、巣、膨れ、ピンボール、油境が生じる。このようなことから、それらの不良を少しでも低減する離型剤が金型等へ均一に行き渡っているかの確認が必要となってくる。
【0007】
この発明はこうした事情を考慮してなされたもので、離型剤の付着状態を簡単に目視確認しえるダイカスト用離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のダイカスト用離型剤は、金型の内面に付着させて使用されるダイカスト用離型剤であり、光顔料を発色剤として含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、離型剤の付着状態を簡単に目視確認しえるダイカスト用離型剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明について更に詳しく説明する。
この発明に係る離型剤は、吹き付け等により金型の内面に付着される。離型剤等が金型の内面全体に又は均一に付着しているかどうかは、例えばブラックライトを用いることにより確認することができる。即ち、離型剤等が金型内面に多量に付着していればブラックライトによる強い発光が見られ、少量なら発光も弱くなる。
【0011】
なお、離型剤の付着状況の他に、製品の割れを確認する際にもこの発明の離型剤は有効である。即ち、製品に割れが存在すると、その部分に油が流れ込み、油が溜まる。従って、割れの部分は他の部分に比べて強く光ることになる。
【0012】
この発明に係る離型剤はダイカスト法に適用することを前提として開発されたものであり、このダイカスト法を用いることによって最良の効果を発揮する。しかし、本発明に係る離型剤は、ダイカスト法のみならず、その他の鍛造、押し出し成形、圧延プレス成形、インジェクション成形、スクイズキャスティングでも有利に使用することができる。
【0013】
この発明において、顔料としては、例えばチバスペシャリティー・ケミカルズ社製の商品名:ERN−P,チバスペシャリティー・ケミカルズ社製の商品名:EBF,チバスペシャリティー・ケミカルズ社製の商品名:ユビテックスOBが挙げられる。この発明の離型剤には、光顔料以外に、鉱物油、合成油、その他の添加剤を含有させることができる。ここで、前記鉱物油又は合成油は潤滑剤成分を運ぶ媒体として働く。また、前記鉱物油又は合成油の種類は特に限定されない。前記鉱物油としては、例えばスピンドル油系、マシン油系が挙げられる。
【0014】
この発明に係る離型剤は、加熱板に対して吹きつけ、この時発生する蒸気を閉じた型空間へ送り込む。これにより、キャビティ、ランナー、オーバーフローの表面上に離型剤被膜が均一に形成され、連続鋳造を可能にする。前記加熱板の温度は特に限定されず、ダイカストの条件に応じて選択される。この温度は一般的には150〜300℃の範囲の温度で使用することができ、発光の効果としては装置始動時100〜250℃の範囲が効果的である。温度が250℃を越えると、離型剤の金型への付着量が低下するので、発光効果が低下する可能性がある。
【0015】
この発明において、発光の強度に影響する因子としては、光顔料の添加濃度、離型剤の塗布量、金型表面温度が挙げられる。添加濃度としては、0.1%以上にすることが好ましい。この理由は、濃度が0.1%未満では発光を検知することが困難であるからである。また、離型剤の塗布量は多いほどよいが、ダイキャスト装置によって変わる。更に、離型剤の塗布は1回のみならず、複数回塗布して塗布量を増やしてもよい。金型表面温度は低い程よく、250℃以下が好ましい。
【0016】
(作用)
この発明では、光顔料を含んだ離型剤を金型に付着させた場合、ブラックライト等を照射することにより離型剤の付着状況を確認できる。例えば、装置始動時には油膜不足の早期発見が可能となる。それにより、装置各部分において油膜不足から生じる摩擦、摩耗を防ぐことができ、装置の寿命延長が可能になる。
【0017】
(実施形態1)
以下、この発明の実施形態1について説明する。
本実施形態1に係るダイカスト用離型剤は、基油A(商品名:スピンドル油、コスモ石油社製):85.9重量%、基油B(商品名:ブライトストック、JOMO社製):6重量%、油脂(菜種油):1重量%、シリコーン油(商品名:Release agentTN、旭化成ワッカーシリコーン(株)製):6重量%、有機モリブデン1重量%、光顔料(商品名:ユビテックスOB、チバスペシャリティー・ケミカルズ社製)0.1重量%からなる。
【0018】
こうした組成の離型剤を、下記の試験条件によりダイカストマシンで金型部分の条件に類似した付着量装置(熱した加熱板に離型剤を吹き付けるもの)を用いて、上記離型剤をスプレーにより熱した加熱板に吹き付けた。
【0019】
(試験条件)
板温度:250℃
光顔料の濃度:0.1%
吹き付け量:0.1cc
スプレー圧:0.3MPa
実施形態1に係る離型剤を上記加熱板に吹き付けた後、ブラックライトを加熱板にあてて離型剤の付着状況を目視により確認した。その結果、離型剤を吹き付けた加熱板からかろうじて発光を感知することができた。
【0020】
このように、上記実施形態例1に係る離型剤によれば、光顔料を組成に加えることにより、離型剤の付着状態を簡単に目視で確認することができる。
なお、上記実施形態の離型剤において、基油Aを76重量%、光顔料を10重量%とした以外は、実施例1と同じ組成とした離型剤についても同様な試験をしたところ、離型剤が付着された板は強く発光し、離型剤の付着状況をいっそう容易に目視で確認できた。
【0021】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2について説明する。
本実施形態2に係るダイカスト用離型剤は、実施形態1の離型剤の組成と同じである。本実施形態2では、板の温度を150℃,200℃、離型剤の吹き付け量を0.1cc,3ccとした以外は、実施形態1と同様にして離型剤の上記板への付着状況を確認した。
【0022】
その付着状況を目視により観察したところ、以下のような結果が得られた。板温度150℃,吹き付け量0.1cc及び板温度200℃,吹き付け量0.1ccの場合は、離型剤が付着された加熱板にブラックライトをあてた時、加熱板のほぼ中央部分が発光され、温度の違いによる発光領域の差はあまりないことが確認できた。また、板温度150℃,吹き付け量3cc、及び板温度200℃、吹き付け量3ccの場合は、両者のケースとも加熱板全面が発光されていることを確認できた。これらの結果により、板温度を変化させた状態では発光状態はさほど変化しないが、吹き付け量を増すことにより発光部分の領域が大きく広がることが確認できた。
【0023】
この発明によれば、光顔料を含んだ潤滑剤を金型内面に形成することにより、ブラックライト等を用いて離型剤の付着状況を確認できる。従って、例えば装置始動時には油膜不足の早期発見が可能になることが明らかである。それにより、装置の各部分において油膜不足から生じる摩擦、摩耗を防ぐことができ、装置の寿命延長が可能になる。
【0024】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の内面に付着させて使用されるダイカスト用離型剤であり、光顔料を発色剤として含むことを特徴とするダイカスト用離型剤。
【請求項2】
前記光顔料の濃度は0.1%以上であることを特徴とする請求項1記載のダイカスト用離型剤。

【公開番号】特開2006−68751(P2006−68751A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252055(P2004−252055)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(304028645)株式会社青木科学研究所 (10)
【Fターム(参考)】