説明

ダイズペプチド含有焼き菓子

【課題】ダイズペプチドを含有しても、サクサクとした食感に優れ、かつダイズペプチド由来の臭味及び異味が低減された焼き菓子を提供すること。
【解決手段】ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有してなる、焼き菓子。ダイズペプチド含有焼き菓子の原料として、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を用いることで、サクサクとした食感が向上し、また、ダイズペプチド由来の臭味及び異味を低減された焼き菓子を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含む焼き菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイズはアミノ酸組成の良い良質なタンパク源であり、近年の健康志向ブームからダイズ利用食品への関心が高まっている。そのため菓子分野でも手軽にダイズ由来の栄養成分を摂取できるようにしたダイズ粉末或いはダイズタンパク質を用いた製品が求められており、その製法がいくつか開示されている。
【0003】
従来技術としては、分離ダイズタンパク質と小麦粉の配合比が各々30〜70:70〜30(重量比)からなる混合物100重量部に対し、少なくとも卵白及び全卵の何れか一方が10〜30重量部、及び膨化剤0.2〜3重量部の割合で混合した物を、送風条件下、マイクロ波加熱処理することを特徴とする膨化食品の製造方法が知られている(特許文献1参照)。また、ダイズタンパク質及び凝固剤を含む小麦粉ドウを焼成することを特徴とする焼き菓子の製造方法が知られている(特許文献2参照)。さらに、小麦粉、卵、乳といったアレルゲンと成り得るものを含まず、ダイズタンパク質を主要原料とすることを特徴とする焼き菓子の製造方法が知られている(特許文献3参照)。
【0004】
また、ダイズタンパク質を分解して得られるダイズペプチドは、同一組成のアミノ酸混合物と比べ腸管吸収が優れていることから、医療用食品、栄養飲料などに利用されており、例えば、ダイズペプチド、コラーゲンペプチド及びグルタミンを含有する体脂肪減少促進用食品組成物、具体的にはクッキーが開示されている(特許文献4参照)。
【0005】
一方、ダイズタンパク質が強い吸水性を有するために、ダイズタンパク質を含有する焼き菓子は、生地の成形性や風味、食感に劣るものとなりやすいが、特許文献5では、ダイズタンパク質を含有する焼き菓子の生地に架橋タピオカデンプン及びトレハロースを添加することで、得られる焼き菓子の品質の改良を行っている。
【特許文献1】特開平1−144936号公報
【特許文献2】特開平11−169063号公報
【特許文献3】特開2006−61029号公報
【特許文献4】特開2002−20312号公報
【特許文献5】特許第3424502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に拠って、ダイズタンパク質やダイズペプチドを含有した焼き菓子を製造することは可能であり、また、特許文献5を参照して、さらに品質の良好な焼き菓子を製造することも可能である。しかしながら、得られる製品は、サクサクとした食感や、ダイズ由来の臭味や異味を軽減することについて未だ十分ではなく、さらなる改良が望まれている。
【0007】
本発明の課題は、ダイズペプチドを含有しても、サクサクとした食感に優れ、かつダイズペプチド由来の臭味及び異味が低減された焼き菓子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ダイズペプチド含有焼き菓子の原料として、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を用いることで、焼き菓子のサクサクとした食感が向上し、また、ダイズペプチド由来の臭味及び異味を低減することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
即ち、本発明は、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有してなる、焼き菓子に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の焼き菓子は、ダイズペプチドを含有しても、サクサクとした食感に優れ、かつ、ダイズペプチド由来の臭味及び異味が低減されるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の焼き菓子は、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(以下、サーモリシン加水分解物という)を含有することに大きな特徴を有する。
【0012】
本発明におけるサーモリシン加水分解物は、ダイズタンパク質をサーモリシンにより加水分解することにより得られる。
【0013】
ダイズタンパク質は、ダイズ植物に由来するタンパク質であれば特に限定されないが、ダイズ植物の種子に由来するタンパク質であることが好ましい。
【0014】
従って、本発明においては、ダイズ植物そのものやダイズ植物の種子そのもの、あるいは該植物や該種子の破砕物又は粉砕物等を、ダイズタンパク質として用いてもよいが、好ましくはダイズ植物中の全成分からタンパク質成分を分離、精製したもの、より好ましくはダイズ植物の種子中の全成分からタンパク質成分を分離、精製したものが用いられる。このように分離、精製して得られたダイズタンパク質は、ダイズ植物又はダイズ植物の種子中に含まれる実質的に全種類のタンパク質を含むものでもよく、また、一部の種類のタンパク質を含むものであってもよい。
【0015】
ダイズタンパク質としては、市販品も好適に用いられ得、例えば、日清コスモフーズ(株)、ADMファーイースト(株)、昭和産業(株)、不二製油(株)、(株)光洋商会等の製造業者又は供給業者から容易に入手可能である。
【0016】
なお、本明細書において、ダイズ植物の種子とは、ダイズ種子と通常呼ばれる構造物全体を指すのみならず、例えば、脱皮ダイズ種子、脱脂ダイズ種子(粉末)、ダイズ種子全体より得られる雪花菜(オカラ)等でもあり得る。
【0017】
サーモリシン(EC3.4.24.27)は、Bacillus thermoproteolyticusという耐熱性菌によって生産される耐熱性のプロテアーゼである。サーモリシンは一般に、大きな側鎖をもった疎水性のアミノ酸残基(例えば、イソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン等)のアミノ基側のペプチド結合を切断することが知られている。
【0018】
サーモリシンは、市販品も好適に用いられ得、大和化成(株)等の製造業者から容易に入手可能である。また、本発明においては、サーモリシンと同等のペプチド切断特性(切断配列特異性等)を有するプロテアーゼとして当該分野で公知のプロテアーゼを、サーモリシンとして用いることができる。
【0019】
なお、本発明では、ダイズタンパク質を加水分解する際に、本発明の効果を損なわない範囲で、サーモリシン以外の他のプロテアーゼを使用してもよい。他のプロテアーゼとしては、特に限定されず、例えば、パパイン、ブロメライン、トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチン、スブリチン等が挙げられる。これらは、1種類又は2種以上を組み合わせてサーモリシンと併用してもよい。
【0020】
ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解する場合に用いられる反応条件は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。例えば、市販のサーモリシンを使用する場合には、その使用説明書に従って使用することができる。具体的な例としては、水等の溶媒に、ダイズタンパク質濃度が、好ましくは0.1〜30%(w/v)、より好ましくは1〜10%(w/v)程度となるようにダイズタンパク質又はダイズタンパク質を含む原料を懸濁し、この懸濁液に、好ましくは0.001〜3%(w/v)、より好ましくは0.01〜0.125%(w/v)程度となるようにサーモリシンを加えて加水分解反応を行う態様が挙げられる。反応温度としては、30〜80℃が好ましく、40〜70℃がより好ましく、50〜60℃がさらに好ましい。また、反応時間としては、2〜30時間が好ましく、3〜24時間がより好ましく、10〜20時間がさらに好ましく、12〜18時間がさらに好ましい。反応液のpHとしては、サーモリシンの至適pHであるpH7.0〜8.5付近であることが好ましい。
【0021】
反応の停止手段についても、特に制限はなく、公知の手段を用いることができる。かかる手段としては、例えば、加熱処理等が挙げられる。具体的には、上記反応物を80〜100℃程度の温度で好ましくは3〜20分間、より好ましくは5〜15分間加熱処理すればよく、85℃で15分間の加熱処理や100℃で5分間の加熱処理により、反応物中に含まれるサーモリシンを失活させることができる。
【0022】
上記のような加水分解反応により得られるサーモリシン加水分解物は、必要に応じて、当業者に公知の任意の方法によりさらに処理され得る。例えば、ろ過等の処理により、該加水分解物中の大きな固体粒子を取り除くことが好ましい。ろ過条件等は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。例えば、ろ紙が目詰まりを起こしやすい場合等には、ろ過助剤等も好適に用いられ得る。
【0023】
また、前記加水分解物を減圧濃縮し、次いで凍結乾燥することにより、粉末化することもできる。減圧濃縮及び凍結乾燥の際に使用される条件や機器類は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。このようにして粉末化された加水分解物は、そのまま又は水等の溶媒に溶かして、用いることができる。
【0024】
サーモリシン加水分解物は、ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解することにより生じた多種多様なペプチドを実質的に全て含んだ状態であってもよいし、又は、そのような多種多様なペプチドを、公知の方法で、さらに分画、精製して得られる一部分であってもよい。しかし簡便には、ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解して得られる、多種多様なペプチドを実質的に全て含んだ状態でそのまま用いる。
【0025】
本発明におけるサーモリシン加水分解物の平均分子量は、好ましくは300〜10000である。該平均分子量は、より高い効果を得る観点から、より好ましくは400〜5000であり、さらに好ましくは500〜3500であり、さらにより好ましくは550〜3200である。サーモリシン加水分解物の平均分子量は、当業者に公知の任意の方法によりに測定され得、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定され得る。本明細書において、GPC法により測定される平均分子量は「ピーク平均分子量」を意味し、「ピーク平均分子量」とは、クロマトグラムのピークトップ(最も強い強度のピーク)の溶出時間に対応する分子量を意味する。
【0026】
なお、本発明では、サーモリシン加水分解物として、市販品である「コラプラスTMN」(平均分子量:711、ロート製薬社製)を用いることができる。
【0027】
「コラプラスTMN」は、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物であり、細胞におけるコラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進する機能を有するペプチドであるが(WO 2007/049400号公報参照)、詳細な理由は不明なるも、焼き菓子に含有させることで、焼き菓子にサクサクとした食感を与えることができ、さらにペプチド自体の苦味や異味の少なさから、ダイズ由来の臭味や異味を低減することができると推定される。
【0028】
本発明の焼き菓子中のサーモリシン加水分解物の含有量は、ダイズ由来の栄養成分の摂取量、及び成形性の観点から、0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜20重量%がより好ましく、5〜10重量%がさらに好ましい。
【0029】
本発明における焼き菓子としては、サーモリシン加水分解物、及び穀物粉を含む原料を焼成して得られる焼き菓子が挙げられる。穀物粉としては、小麦(小麦胚芽を含む)、大麦、ライ麦等の麦類;米、うるち米、もち米、発芽玄米等の米類;ダイズ等の豆類;とうもろこし、そば、あわ、きび、ひえ等の穀物を製粉することにより得られる粉が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いてもよいが、これらの中では小麦粉、又は米粉を穀物粉の主成分として用いることが好ましい。なお、本明細書において、穀物粉の「主成分」とは、穀物粉中の含有量が50重量%以上である成分のことをいう。
【0030】
本発明の焼き菓子中の穀物粉の合計含有量は、30〜95重量%が好ましく、40〜90重量%がより好ましい。
【0031】
これらの穀物粉を含む原料を焼成して得られる焼き菓子の中でも、穀物粉の主成分として小麦粉、及び油脂類を含む原料を焼成して得られる焼き菓子(態様1)、穀物粉の主成分として米粉を含む原料を焼成して得られる焼き菓子(態様2)等が好ましい。具体的には、態様1としては、クッキー、ビスケット、クラッカー、シリアル、ウエハース、パイ等が、態様2としては、煎餅、おかき、あられ等が例示される。なお、小麦粉及び油脂類を含む原料にさらに米粉等の穀物粉を加えて得られる焼き菓子や、米粉を含む原料にさらに小麦粉等の穀物粉を加えて得られる焼き菓子もまた、本発明に含まれる。
【0032】
態様1の焼き菓子中の穀物粉の合計含有量は、30〜95重量%が好ましく、40〜90重量%がより好ましい。
【0033】
油脂類としては、バター、ラード、マーガリン、ショートニング、米油、綿実油、コーン油、ダイズ油、オリーブ油、ヒマワリ油、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、落花生油、椰子油、菜種油、パーム油、ナッツ油等が挙げられ、好ましくはマーガリン、ショートニング、バター、コーン油等が用いられ得る。態様1の焼き菓子中の油脂類の含有量は、1〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましい。
【0034】
さらに、態様1の焼き菓子には他の公知の成分を用いることができ、通常、甘味料、卵(液卵、凍結卵、乾燥卵などの加工卵なども含む)、牛乳(脱脂粉乳なども含む)、水、塩などが、当業者に公知の方法で、適宜用いられ得る。
【0035】
甘味料としては、公知のもののいずれも用いられ得る。この糖類としては、例えばブドウ糖(グルコース)、乳糖(ラクトース)、果糖(フルクトース)などの単糖類;蔗糖、グラニュー糖、麦芽糖、トレハロース、マルトース、イソマルトースなどの二糖類;マルトテトラオース、マルトトリオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、ラクトオリゴ糖、ガラクトシルラクトース、ラクトシュクロースなどのオリゴ糖類;グルコーゲン、デキストリン、デンプン(小麦デンプンなど)、てんさい糖などの多糖類;ソルビトールなど糖アルコール類;ステビア、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムなどの高甘味度甘味料;などを例示できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0036】
態様2の焼き菓子中の米粉の含有量は、50〜99.9重量%が好ましく、80〜95重量%がより好ましい。
【0037】
さらに、態様2の焼き菓子には他の公知の成分を用いることができ、通常、水、塩、片栗粉、澱粉、糖類、油脂類、しょうゆ、みりんなどが、当業者に公知の方法で、適宜用いられ得る。
【0038】
また、態様1及び2の焼き菓子には、香りや味、成形性の観点から、香料、フレーバー、乳化剤、膨張剤、凝固剤、着色剤、防腐剤、安定剤等の添加剤が含まれてもよい。
【0039】
香料としては、バニラ、ココア、ミルク、レモンなどが例示できる。
【0040】
乳化剤としては、レシチン、モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤が例示できる。またこれらの添加剤はそれぞれ1種単独でも2種以上組み合わせても利用することができる。
【0041】
膨張剤としては、食品業界で汎用されている、例えば重曹、炭酸水素アンモニウム、イーストなど及びこれらを含むものを例示することができる。
【0042】
凝固剤はカルシウムやマグネシウム等アルカリ土類金属塩(例、塩化物、硫酸塩など)を使用でき、塩田にがりのような複数の塩が含まれるものでもよい。凝固剤はその他、グルコノデルタラクトン(GDL)も用いることができる。
【0043】
さらに必要に応じて、栄養価増強を目的として各種ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6 、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、葉酸、パントテン酸など)、ミネラル類(カルシウム、鉄、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、リン、クロールなどの塩類)、タンパク質、食感や味を良くするために、ドライフルーツ(ストロベリー、ブルーベリー、アプリコット、レーズン、プルーン、オレンジピール、バナナチップなどの全粒、粉砕物、切断物等)、ナッツ類(アーモンド、ピーナッツ、マカダミアナッツ、カシューナッツ、クルミ、ピスタチオ、へーゼルナッツ、ゴマ、ひまわりの種、かぼちゃの種、松の実などの全粒、粉砕物、切断物等)、チョコレート(ビターチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、ココアパウダーなど)、チーズなどを添加してもよく、これらは、それぞれ1種単独でも2種以上組み合わせてもよい。なお、前記タンパク質としては、特に限定はなく、ダイズタンパク質やサーモリシン加水分解物以外のダイズペプチドであってもよい。
【0044】
本発明の焼き菓子は、公知の方法により得ることができ、例えば、態様1の焼き菓子は、油脂類、小麦粉、ダイズペプチド及びその他の成分を含む原料を混合して生地を作製、成形した後、焼き菓子の種類によって焼成温度や時間は異なるが、例えば、好ましくは130〜200℃で2〜25分間、より好ましくは150〜180℃で13〜15分間、焼成することにより得られる。態様2の焼き菓子は、米粉、ダイズペプチド及びその他の成分を含む原料を混合して生地を作製、成形した後、焼き菓子の種類によって焼成温度や時間は異なるが、例えば、好ましくは40〜75℃で30〜60分間、より好ましくは50〜60℃で50〜60分間、焼成することにより得られる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0046】
〔ダイズペプチドの分子量〕
ダイズペプチドを25mM Tris-HCl緩衝液(150mM NaCl含有、pH7.5)に溶解し、1mg/mLの被験溶液を調製する。HPLCカラム Superdex peptide HR(10mm I.D.×30cm,Amersham Biosciences社製)を同じ緩衝液で平衡化し、このカラムに被験溶液を100μL注入する。カラムの流速は0.5mL/分、カラム温度は室温、ペプチドの検出は214nmで行い、溶出時間から分子量分布及びピーク平均分子量を推定する。なお、分子量既知のペプチド標品として、Cytochrome C(シグマ社製、分子量12327)、Aprotinin(シグマ社製、分子量6518)、Hexaglycine(シグマ社製、分子量360)、Triglycine(シグマ社製、分子量189)、及びGlycine(シグマ社製、分子量75)を用いた。
【0047】
実施例1 サーモリシン加水分解物含有クッキーの作製
表1に示す原材料を用いて、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有するクッキーを作製した。始めにマーガリンを良く混練し、還元糖(ソルビトール)を加え混合した。次に全卵を少しずつ添加しながら混ぜ合わせ、小麦粉とサーモリシン加水分解物(商品名:コラプラスTMN、ロート製薬社製)を加えて生地を作った。その後、成形生地を170℃で13分間焼成してクッキーを作製した。生地中のサーモリシン加水分解物含有量は5重量%であった。
【0048】
比較例1 ダイズタンパク質含有クッキーの作製
サーモリシン加水分解物(コラプラスTMN)の代わりに、ダイズタンパク質(商品名:プロファム、ADMファーイースト社、平均分子量:数十万)を使用する以外は、実施例1と同様にして、クッキーを作製した。
【0049】
比較例2 ダイズペプチド粉末含有クッキーの作製
サーモリシン加水分解物(商品名:コラプラスTMN)の代わりに、ダイズタンパク質の三種のプロテアーゼ(メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、カルボキシルプロテアーゼ)分解物である市販ダイズペプチド粉末を使用する以外は、実施例1と同様にして、クッキーを作製した。
【0050】
【表1】

【0051】
試験例1〔官能試験〕
実施例1及び比較例1、2のクッキーについて、パネラー5人により、食感(サクサクとした食感)、味(臭味や異味が少ない)及び総合評価の三項目について官能評価を行った。パネラーには3例のうち、一番良かったものを項目毎に選択してもらい、その回答数を合計した。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
以上よりダイズペプチドのサーモリシン加水分解物(商品名:コラプラスTMN)を配合することにより、サクサクとした食感が向上した焼き菓子を提供することができる。また他社ダイズペプチド含有の焼き菓子と比較して、ペプチド由来の臭味及び異味を抑えた焼き菓子を実現することも可能となった。
【0054】
以下に示す配合表に基づき、常法に従って、原料を混合、成型後、焼成することにより、本発明の焼き菓子を作製することができる。
【0055】
配合例1〜8 サーモリシン加水分解物含有クッキーの作製
表3に示す原材料を用い、当業者に公知の方法に従って、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(コラプラスTMN)を含有するクッキーを作製する。
【0056】
【表3】

【0057】
配合例9〜13 サーモリシン加水分解物含有ウエハースの作製
表4に示す原材料を用い、当業者に公知の方法に従って、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(コラプラスTMN)を含有するウエハースを作製する。
【0058】
【表4】

【0059】
配合例14〜18 サーモリシン加水分解物含有パイの作製
表5に示す原材料を用い、当業者に公知の方法に従って、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(コラプラスTMN)を含有するパイを作製する。
【0060】
【表5】

【0061】
配合例19〜24 サーモリシン加水分解物含有クラッカーの作製
表6に示す原材料を用い、当業者に公知の方法に従って、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(コラプラスTMN)を含有するクラッカーを作製する。
【0062】
【表6】

【0063】
配合例25〜29 サーモリシン加水分解物含有煎餅の作製
表7に示す原材料を用い、当業者に公知の方法に従って、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(コラプラスTMN)を含有する煎餅を作製する。
【0064】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、ダイズペプチドを含有しているにもかかわらず、サクサクとした食感に優れ、かつダイズペプチド由来の臭味及び異味が低減された焼き菓子が提供される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を含有してなる、焼き菓子。
【請求項2】
ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物の含有量が0.01〜50重量%である、請求項1記載の焼き菓子。
【請求項3】
焼き菓子が、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物、及び穀物粉を含む原料を焼成して得られる、請求項1又は2記載の焼き菓子。
【請求項4】
穀物粉が小麦粉を主成分として含有する、請求項3記載の焼き菓子。
【請求項5】
穀物粉が米粉を主成分として含有する、請求項3記載の焼き菓子。

【公開番号】特開2009−131220(P2009−131220A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311035(P2007−311035)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】