ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料及びその製造方法
【課題】放電プラズマ焼結法を利用することにより、製造過程でのダイヤモンド粒子のダメージを少なくし、品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明によるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法は、融点が10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属粉末粒子とダイヤモンド粉末粒子との混合体を、低融点金属粒子の融点以上であって高融点金属粒子の融点未満の温度で焼結することに特徴を有する。
【解決手段】本発明によるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法は、融点が10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属粉末粒子とダイヤモンド粉末粒子との混合体を、低融点金属粒子の融点以上であって高融点金属粒子の融点未満の温度で焼結することに特徴を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法及びその方法により製造された複合材料に関し、より詳細には、融点に10 ℃〜200 ℃の差を有する2種類の金属粒子とダイヤモンド粒子との混合体を焼結法によって複合化するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超LSIの高集積化・高速化に伴って超LSIを用いた小型電子機器における内部発熱の問題はより深刻になり、温度上昇による超LSIチップ自体の誤動作が深刻な問題となりつつある。例えばノートパソコンの場合、筐体はA4サイズ、B5サイズ、さらにはより小型化が進んでいるが、同時にCPUのクロック周波数やハードディスクドライブの回転数は増加しており、発熱量が増大している。デジタルカメラの分野では、CCDの画素数向上や動画撮影機能を充実させながらも消費電力の低減が図られているため、単位体積あたりの発熱密度はほぼ一定である。しかしながら、本体の体積自体も小さくなる傾向にあるため放熱面積が小さくなり、結果として温度上昇率の増加を招いている。この様な背景から、高熱伝導材料の開発が切望されている。
【0003】
最近、下記特許文献1および2に示されるように、700 W/mKの高熱伝導率を有する炭素繊維強化型Al基複合材料が開発された。ただし、700 W/mKは炭素繊維の長手方向の熱伝導率であり、炭素繊維と垂直方向の熱伝導率は20〜50
W/mKと極端に低い。高熱伝導性ジョイントとしては有効だが、材料全体としての放熱特性は銀や銅を下回る。
【0004】
これに対して発明者は、上記の問題を解決する3次元的に均一な高熱伝導性を有する材料として、現存する材料中最も高い熱伝導率(2000
W/mK)を有するダイヤモンド粒子を、比較的高い熱伝導率を有するアルミニウム(Al)および銅(Cu)中に分散した、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料に注目した。この材料は過去に、ダイヤモンド粒子のプリフォームの隙間に吸引含浸法で溶融Cuを導入して作製された例(ダイヤモンド粒子の体積分率55
%で420 W/mKの熱伝導率)、および、超高圧・超高温プレスを用いて、ダイヤモンド粉とCu粉の混合粉末を4〜5
GPaの加圧下において1423 Kで成形した例(ダイヤモンド体積分率50
%〜80 %で226〜742 W/mKの熱伝導率)が報告されているが、いずれもダイヤモンド粒子を多く含有する割には高熱伝導率が得られておらず、熱伝導率の実測値はMaxwell−Euckenの式による計算値の40%〜60%程度しか満足していない。
【0005】
ここで、Maxwell−Euckenの式による計算値とは、次式
(数式1)
λ={2λ1+λ2+2V(λ2−λ1)}・λ1/{2λ1+λ2−V(λ2−λ1)
(但し、λは複合材料の熱伝導率、λ1はマトリックス金属(この場合Cu)の熱伝導率、λ2 は分散粒子(この場合ダイヤモンド)の熱伝導率、Vは複合材料中の分散粒子(この場合ダイヤモンド)の体積分率(Vol.%)である。)
により計算して得られた値である。
【0006】
上記のように計算値の40 %〜60
%程度しか満足していない理由は、従来の吸引含浸成形及び超高圧・超高温プレス成形というプロセシング技術に起因するものと思われる。すなわち、ダイヤモンド粒子と銅マトリックスとを密着させようとするあまり、溶融状態(1200
℃>温度>1150 ℃)のCuとダイヤモンド粒子とが長時間(>15分)直接接触するため、成形中にダイヤモンド粒子が劣化し、ダイヤモンド粒子そのものの熱伝導率が低下する。発明者はダイヤモンド粒子の表面に予めマトリックスとなる金属を被覆しておき、該金属被覆ダイヤモンド粒子を焼結することで比較的良好な焼結体が得られることを確認している。しかしながら、大幅な製造コストの増加や製造プロセスの複雑化に加え、厚い金属被覆を均一に施すことは困難である。
【0007】
【特許文献1】特開2005−200676号公報
【特許文献2】特開2006−307358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そもそも複合材料の発想は、あまり熱伝導性は良くない(熱伝導率が10〜400 W/mK)が、柔らかく柔軟性を有する金属(Cu、Al、Mg等)中に、硬いが、そのマトリックス金属の熱伝導率を遥かに凌ぐ高い熱伝導率を有する粒子(熱伝導率が1000〜2000 W/mK)を分散させて、高い熱伝導率を有しつつ加工性に富む材料を作ろうとするのが目的である。しかしながら、高い熱伝導率を有する分散粒子は値段の高いものが多く、粒子体積分率(複合材料中で粒子がしめる体積の割合)は低い値のほうが良い。それ以外にも、高い熱伝導率を有する分散粒子は硬くて脆い物が多い。従って、分散粒子を入れすぎた場合、CuやAlのように粘りのある材料をマトリックス金属として選んでも、複合化したときに脆くなる。可能であれば高熱伝導率と粘りを両立したいため、少ない粒子体積分率で高熱伝導率を確保することが必要になる。ところが、従来の吸引含浸法や超高温・超高圧プレス成形法のように、複合化処理中に粒子が高温に長時間さらされるとダメージを受けて劣化するため、複合材料の高熱伝導率確保のため、粘りをやや犠牲にしてでも多くの粒子を埋め込まねばならない。その結果、複合材料のコスト高や脆化を招くことになる。
【0009】
本発明は、かかる従来の吸引含浸法や超高温・超高圧プレス成形法により形成されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の上記のような問題点に鑑み成されたものであって、その目的とするところは、放電プラズマ焼結法を利用することによって、製造過程での粒子のダメージを少なくし、ダイヤモンド粒子へ予備処理(金属被覆等)を施すことなく品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を簡便に製造する方法を提供することである。本発明の他の目的は、製造過程でのダイヤモンド粒子の熱伝導性の低下を少なくし、ダイヤモンド粒子とマトリックスの密着性に優れた、高熱伝導性を有するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、融点が10℃〜200
℃異なる2種類の金属粉末粒子とダイヤモンド粉末粒子の混合体を使用し、低融点金属粒子の融点と高融点金属粒子の融点との中間温度に加熱することにより低融点金属粒子のみを熔融せしめ、成形中に生じる金属の固液共存状態を利用したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法を提供することである。具体的には、液相をポア内に充填しながら放電プラズマ焼結する時の条件、特に、恒温保持温度および恒温保持時間を制御することにより、品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造する方法およびダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明によれば、融点が10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属粉末粒子とダイヤモンド粉末粒子との混合体を用い、該2種類の金属粉末粒子のそれぞれの融点の間の温度で混合体を焼結することを特徴とするダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法が提供される。この発明によれば、ダイヤモンドの粒子体積分率が低くても熱伝導率の高いダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を短時間で製造できる。焼結方法としては、直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することが好ましい。
【0012】
上記発明において、融点が10
℃〜200 ℃異なる2種類の金属粒子とダイヤモンド粒子の混合体を所定量、1kPa〜1.5 GPaの圧力を加えた状態で、100 Pa以下の真空雰囲気下で、0.1 ℃/s(0.1 K/s)〜8.3 ℃/s(8.3 K/s)の昇温速度で昇温して、低融点金属粒子の融点〜高融点金属粒子の融点の範囲で恒温保持するように10秒〜7200秒(120分)の間、所定の電圧及び電流の直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することが好ましい。
【0013】
上記発明において、ダイヤモンド粉末粒子の体積分率は、5 Vol.%〜85Vol.%であってもよく、好ましくは、10 Vol.%〜80 Vol.%、より好ましくは、15 Vol.%〜75 Vol.%であるとよい。また、上記発明において、ダイヤモンド粒子の直径は、1μm〜3000μmであってもよく、好ましくは、10μm〜500μm、より好ましくは20μm〜400μmであるとよい。なお、ダイヤモンド粒子の直径の上限が、後述する実施例と比較して、極めて大きくなっているが、購入価格が高額であることを考慮しなければ、技術的には使用可能な数値である。
【0014】
また、上記発明において、金属粉末粒子の直径は、1μm〜3000μmであってもよく、好ましくは、10μm〜500μm、より好ましくは20μm〜400μmであるとよい。なお、金属粉末粒子の直径の上限が、後述する実施例と比較して、極めて大きくなっているが、技術的には使用可能な数値である。
【0015】
また、上記発明において、融点の10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属粉末粒子の混合粉末において、融点の低い方の金属粉末粒子(低融点金属粒子)の占める体積分率は、1 Vol.%〜90 Vol.%であってもよく、好ましくは、1 Vol.%〜67 Vol.%、より好ましくは1 Vol.%〜50 Vol.%であるとよい。更に、上記発明において、恒温保持する時間が、好ましくは、20秒〜5400秒(90分)であってもよく、より好ましくは、60秒〜2700秒であるとよい。
【0016】
更にまた、上記発明において、所定の真空雰囲気は、0〜10 Paであるとより好ましい。また、前記昇温速度は、好ましくは、0.5
℃/s(0.5 K/s)〜2.5 ℃/s(2.5 K/s)であってもよく、より好ましくは、0.83 ℃/s(0.83 K/s)〜2.0 ℃/s(2.0 K/s)であるとよい。上記発明において、金属粒子が純銅粉末粒子と銅合金粉末粒子の混合粉末である場合、所定の圧力が、好ましくは1 kPa〜1.5 GPaであり、より好ましくは、2.5 kPa〜500 MPaである。上記発明において、金属粉末粒子が純アルミニウム粉末粒子とアルミニウム合金粉末粒子の混合粉末粒子である場合、所定の圧力が、1 kPa〜1.2 GPaであり、より好ましくは、2.5 kPa〜400 MPaである。
【0017】
また、上記発明において、金属粉末粒子が純銅粉末と銅合金粉末の混合粉末である場合、恒温保持する温度が、好ましくは、銅合金粉末粒子の融点以上、純銅粒子の融点(1083 ℃)未満であり、より好ましくは、銅合金粉末粒子の融点直上である。また、上記発明において、金属粉末粒子が純アルミニウム粉末とアルミニウム合金粉末の混合粉末である場合、恒温保持する温度は、好ましくはAl合金粉末の融点以上、純Al粒子の融点(660 ℃)未満であり、より好ましくは、Al合金粉末粒子の融点直上である。
【0018】
また、上記発明において、用いる2種類の金属粉末粒子の融点の差は、10 ℃〜200 ℃である。その理由は、融点の差が上記範囲よりも小さいと、固液共存状態を得るのが困難になるためである。また、融点の差が上記範囲よりも大きいと、高融点金属粒子の塑性変形が不活発な状態で低融点金属粒子が液化するため、液体状態の低融点金属が高融点金属粒子同士の隙間やダイヤモンド粒子と高融点金属粒子の隙間を埋め尽くせず、ポアの残存をもたらし、結果として成形体の熱伝導率の低下をもたらすためである。上記金属粉末粒子の融点の差は、好ましくは20 ℃〜150 ℃であり、更に好ましくは、30 ℃〜100 ℃である。
【0019】
請求項9に記載の発明によれば、融点が10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属から構成される金属基を有し、ダイヤモンド体積分率が10 Vol.%で熱伝導度が234 W/mKからダイヤ体積分率が60 Vol.%で熱伝導度が805 W/mKの範囲の特性を有するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料が提供される。
【0020】
ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料は、用いる金属粉末粒子が銅と銅合金の混合体の場合、より好ましくは、ダイヤモンド体積分率が18.0Vol.%で熱伝導度が417 W/mKからダイヤ体積分率が50 Vol.%で熱伝導度が689 W/mKの範囲の特性を有し、最も好ましくは、ダイヤモンド体積分率が19.8 Vol.%で熱伝導度が431 W/mKからダイヤ体積分率が43.3
Vol.%で熱伝導度が654W/mKの範囲の特性を有する。
【0021】
また、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料は、用いる金属粉末粒子がアルミニウムとアルミニウム合金の混合体の場合、より好ましくは、ダイヤモンド体積分率が20.0 Vol.%で熱伝導度が285 W/mKからダイヤ体積分率が50.0
Vol.%で熱伝導度が506 W/mKの範囲の特性を有し、最も好ましくは、ダイヤモンド体積分率が21.3 Vol.%で熱伝導度が311 W/mKからダイヤ体積分率が41.1
Vol.%で熱伝導度が420 W/mKの範囲の特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照して本発明によるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法について説明する。まず、図1[A]に示すように、高融点金属粒子1、高融点金属粒子1より10 ℃〜200 ℃融点の低い低融点金属粒子2、及び、ダイヤモンド粒子3の混合体を所定量を用意する。ここで、用いるダイヤモンド粒子3の体積分率は、好ましくは、5 Vol.%〜85 Vol.%である。その理由は、体積分率が上記範囲より多いと、成形中に銅がダイヤモンド粒子間隙を埋め尽くす量に達せず、材料中にポアを残存することとなる為であり、また、上記範囲より少なすぎると、成形後の材料中のダイヤモンド粒子体積分率が極端に低下し、材料の高熱伝導率が得られないためである。
【0023】
ダイヤモンド粒子3のより好ましい体積分率は10
Vol.%〜80 Vol.%である。この体積分率はマトリックス金属が銅の場合及びアルミニウムの場合でも同じである。ダイヤモンド粒子3の最も好ましい体積分率は15 Vol.%〜75 Vol.%である。その理由は、この範囲内であれば、ダイヤモンド粒子の体積分率が大きすぎるときに生ずると考えられる、昇温中に低温域で荷重を付加した場合に発生しやすいダイヤモンド粒子3そのものの破損を防げるからである。また、ダイヤモンド粒子3の体積分率が小さすぎるときに生ずると考えられる、成形中での、ダイヤモンド粒子3の材料中での分散の均一性の乱れも防ぐことが出来るからである。
【0024】
ダイヤモンド粒子3の直径は、好ましくは、1μm〜3000μmである。その理由は、ダイヤモンド粒子3の直径が上記範囲よりも小さいと、銅とダイヤモンドとの界面の増加による熱伝導効率の低下を招くからであり、また上記範囲より大きすぎると、材料中でのダイヤモンド粒子3同士の接触や、成形中の金属粒子の塑性変形によるダイヤモンド粒子間隙への充填が不足することにより、材料中へのポアや未接合部分の残存を来たすこととなるからである。ダイヤモンド粒子3のより好ましい直径は、10μm〜500μmであり、更に好ましくは、20μm〜400μmである。その理由は、この範囲にすると、高温域における短時間でのダイヤモンドの劣化を防止でき、銅とダイヤモンドとの界面の増加による熱伝導効率の低下を防止でき、また、昇温中において低温域で荷重を付加した場合のダイヤモンドの破損を阻止できるからである。更に、市場で容易に入手可能なことも理由である。
【0025】
高融点金属粒子1および低融点金属粒子2の直径は、好ましくは、1μm〜3000μmである。その理由は、高融点金属粒子1および低融点金属粒子2の直径が上記範囲よりも小さいと、金属粒子の比表面積の増加により、金属粒子表面上に存在する酸化膜の絶対量が増え、それが材料中に残存することにより熱伝導効率の低下を招くからであり、また上記範囲より大きすぎると、材料中に多量のポアの残存をもたらし、材料の熱伝導効率の低下を招くからである。高融点金属粒子1および低融点金属粒子2のより好ましい直径は、10μm〜500μmであり、更に好ましくは、20μm〜400μmである。その理由は、この範囲にすると、金属酸化被膜の多量の残存や、ポアの残存による材料の熱伝導率の低下を防止できるからである。更に、市場で容易に入手可能なことも理由である。
【0026】
このように形成された高融点金属粒子1、低融点金属粒子2、及び、ダイヤモンド粒子3の混合体を所定量、図2[B]及び[C]に示される円筒状のグラファイト(又は導電性セラミック)製のダイ5内で下パンチ6及び上パンチ7の間に装入する。このようにして所定量の高融点金属粒子1、低融点金属粒子2、及び、ダイヤモンド粒子3の混合体が装入されたダイ5及び下パンチ6、上パンチ7を、図2[A]に示されるように、パルス通電加圧装置10の真空チャンバー11内で一対の通電加圧電極12の間に、上パンチ6及び下パンチ7の外端が通電加圧電極12の対応する端部にそれぞれ接触するように、セットする。
【0027】
このパルス通電加圧装置10は、放電プラズマ焼結法又はパルス通電加圧焼結法(プラズマ活性化焼結法又は放電焼結法とも呼ばれる)の原理を応用した加圧焼結装置であるが、市販の放電プラズマ焼結装置(例えば、SPSシンテックス(株)製、DR.Sinter)を使用してもよい。セットした語、真空チャンバー11内を所定の真空度の雰囲気に保ち、パルス通電加圧接合装置10の加圧装置15により一対の通電加圧電極12を介して所定量の混合粉末に所定の範囲の圧力を加えた状態の下で、電源装置16から通電電極に所定の電圧、電流の直流パルス電流(直流電流と直流パルス電流の重畳電流でも良い)を流す。
【0028】
上記所定の真空状態とは、好ましくは、100 Pa以下の真空度、より好ましくは、10 Pa以下の真空度を言う。その理由は、真空状態が100 Paを超えると、金属粉末粒子表面の急速酸化が起こり、粉末粒子の塑性流動や粒子同士の接合を阻害し、成形後の強度低下を招く恐れがあるからである。また、10 Pa以下の真空度を保つことにより、マトリックスとしての銅または銅合金の酸素吸収による脆化をほとんど防止でき、成形体としての変形能の低下を避けることができるからである。
【0029】
所定の圧力とは、使用する金属粉末粒子の種類によっても異なるが、高融点金属粒子として銅を用いた場合、好ましくは1 kPa〜1.5 GPaで、アルミニウムを用いた場合、好ましくは1 kPa〜1.2 GPaである。その理由はいずれも圧力が上記範囲より低いと成形後の材料中に未接合部分が残存することとなるからであり、また、上記範囲より高すぎるとカーボン(グラファイト)又は導電性セラミックダイの破損、もしくは、材料のパンチとダイとの間の隙間への侵入が起こるからである。アルミニウムの好ましい上限値が銅の好ましい上限値より小さいのは、アルミニウムは加工硬化したときの耐力が、銅よりも小さいためである。圧力のより好ましい値は、銅を用いた場合、2.5 kPa〜500 MPaであり、アルミニウムを用いた場合、2.5 kPa〜400 MPaである。
【0030】
更に、直流電圧は、好ましくは、0.1 V〜10.0 Vであり、直流パルス電流は金属粉末粒子の種類及び直径並びに粒子の焼結に必要な昇温速度によって異なるが、銅或いはアルミニウムの場合、好ましくは、1 A〜30000 Aである。その理由は、その電流値が上記範囲より低すぎると、放電不十分による材料中の未接合部分の残存が発生することになるからであり、その範囲より高すぎると材料製造中の金属粉末粒子の大量溶融によるポアの材料中への残存やダイヤモンド粒子の劣化による熱伝導率の低下を来たすこととなるからである。電流のより好ましい値は、50 A〜25000 Aである。
【0031】
上記のように直流パルス電流を流すと、金属粉末粒子とダイヤモンド粉末粒子の混合体は昇温し始める。温度が所定の値になったら、その温度(恒温保持温度)を所定の時間(恒温保持時間)保持するように、通電電極を通して流すパルス電流を調節する。粒子の温度は粒子に近接して設けた温度センサによって測定しても、公知の間接的に測定する温度センサでもよい。
【0032】
昇温速度は、用いる金属粒子の種類によって異なるが、銅、或いは、アルミニウムである場合、好ましくは、0.1 K/s〜8.3 K/sである。その理由は、その昇温速度が上記範囲より低すぎると、放電不十分により粒子表面が充分活性化されず、接合強度の低下や材料中の未接合部分の残存が発生することになるからであり、高すぎると材料製造中の金属粒子の大量熔融によるポアの材料中への残存やダイヤモンド粒子の劣化による熱伝導率の低下をきたすこととなるからである。より好ましい昇温速度は、0.5 K/s〜2.5 K/sである。
【0033】
また、上記恒温保持温度は、用いる金属粒子の種類によって異なるが、好ましくは、低融点金属粒子の融点よりも高く、高融点金属粒子の融点より低い温度範囲、より好ましくは、低融点金属粒子の融点直上である。その理由は、温度がこの範囲より低いと、低融点金属粒子及び高融点金属粒子が両方共に溶融しないため、成形中の低融点金属粒子のみの溶融による固液共存状態が実現できず、材料のかさ密度の低下を招くためである。また、温度がこの範囲より高いと、低融点金属粒子及び高融点金属粒子が両方共に溶融し、パンチとダイとの隙間への溶融金属の侵入や、ダイヤモンド粒子の不均一分散等が起こるからである。
【0034】
また、用いる金属粒子が純銅と銅合金の混合粉末である場合には、真空度、圧力、昇温速度は前記の範囲でよいが、恒温保持温度範囲は、好ましくは銅合金粉末の融点以上純銅粉末の融点(1083 ℃)未満であり、より好ましくは、銅合金粉末の融点直上である。ここで、最低温度に変化が無いのは、銅合金粉末の融点以上であり純銅粉末の融点(1083 ℃)未満の温度範囲では、固液共存状態の固相率は純銅粉末と銅合金粉末の混合比によってのみ変化し、温度によっては変化しないためである。したがって、同じ固相率であるならダイヤモンドの劣化しにくい、より低温側、すなわち、銅合金粉末の融点直上が最善となるためである。
【0035】
一方、用いる金属粒子がアルミニウム及びアルミニウム合金である場合には、真空度、圧力、昇温速度は前記の範囲でよいが、恒温保持温度範囲は、好ましくはAl合金粉末の融点以上純Al粉末の融点(660 ℃)未満であり、より好ましくは、Al合金粉末の融点直上である。成形が完了した後、通電を停止し、加圧装置による加圧を解除する。
【0036】
金属粒子として銅を用いた上記恒温保持温度の範囲を限定したより詳細な理由は以下の通りである。ダイヤモンドの融点は3727 ℃であるが、銅の融点が1083 ℃であり、銅合金の融点は1083 ℃より低くなる。本発明の目的は、2種類の金属粒子をマトリックス金属として用い、成形中の固液共存状態を利用してポア中に溶融金属を充填し、かさ密度の高い緻密な成形体を得ることにある。したがって、成形中には、低融点の銅合金粉末のみが溶融し液相となり、高融点の純銅粉末は溶融しないで固相の状態を保つという固液共存状態が実現されねばならない。
【0037】
よって、銅の融点(1083 ℃)以上の温度では、純銅粉末、銅合金粉末共に溶融し、全体が液相となってしまう。一方銅合金粉末の融点以下の温度では、純銅粉末、銅合金粉末共に溶融せず全体が固相のままである。したがって、固液共存状態を実現するためには銅合金粉末の融点以上、純銅粉末の融点(1083 ℃)以下の温度範囲で成形せねばならない。またさらに、ダイヤモンド粒子の劣化の防止を勘案すれば、固液共存状態が実現できる温度範囲でも、より低温であることが好ましく、最も好ましい成形温度は銅合金粉末の融点直上の温度となる。
【0038】
また、マトリックスとしてアルミニウムを用いた上記温度範囲を限定したより詳細な理由は以下のとおりである。ダイヤモンドの融点は3727 ℃であるが、Alの融点が660℃であり、Al合金の融点は660 ℃より低くなる。本発明の目的は、2種類の金属粒子をマトリックス金属として用い、成形中の固液共存状態を利用してポア中に溶融金属を充填し、かさ密度の高い緻密な成形体を得ることにある。したがって、成形中には、低融点のAl合金粉末のみが溶融し液相となり、高融点の純Al粉末は溶融しないで固相の状態を保つという固液共存状態が実現されねばならない。
【0039】
よって、Alの融点(660 ℃)以上の温度では、純Al粉末、Al合金粉末共に溶融し、全体が液相となってしまう。一方Al合金粉末の融点以下の温度では、純Al粉末、Al合金粉末共に溶融せず全体が固相のままである。したがって、固液共存状態を実現するためにはAl合金粉末の融点以上、純Al粉末の融点(1083 ℃)未満の温度範囲で成形せねばならない。またさらに、ダイヤモンド粒子の劣化の防止を勘案すれば、固液共存状態が実現できる温度範囲でも、より低温であることが好ましく、最も好ましい成形温度はAl合金粉末の融点直上の温度となる。
【0040】
上記放電プラズマ焼結は次のような過程を経て進行し、最終製品であるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料が得られる。すなわち図1[B]に示されるように、所定の圧力を加えた状態で、直流パルス電流を流すと、金属粉末粒子同士の隙間及び金属粒子とダイヤモンド粒子との隙間で火花放電しながら焼結が進行する。火花放電の生じた場所は局所的高温状態となるため、金属粉末粒子の表面部分で局所的な、溶融、蒸発、凝縮が繰り返し起こり、接合部分の塑性変形とあいまって、急速に接合が進行する。これに加えて、低融点金属粒子は金属粒子そのものが溶融し、高融点金属粒子同士の隙間及び高融点金属粒子とダイヤモンド粒子の隙間に侵入し、ポアを充填する。そのため、かさ密度の極めて高い成形体を得ることが可能となる。そして、最終的には図1[C]に示されるような、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料8が得られる。
【0041】
放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度600 ℃、保持時間10分間という条件で作製したダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料の、かさ密度とダイヤモンド粒子体積分率の関係を示せば、図3のグラフのようになる。
【0042】
放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度600 ℃、保持時間35分間という条件で作製した、種々のダイヤモンド粒子体積分率を有する、ダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料の走査電子顕微鏡写真を示せば図4のようなる。
【0043】
放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度600℃、保持時間35分間という条件で作製した、55 Vol.%のダイヤモンド粒子を含有するダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料の、ダイヤモンド粒子/Alマトリックス界面近傍の走査電子顕微鏡写真を示せば図5のようなる。
【0044】
放電プラズマ焼結法を用いて保持温度600 ℃、保持時間35分間という条件で作製したダイヤモンド粒子分散型アルミニウム基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値を比較して示すと図6のグラフのようになる。
【0045】
放電プラズマ焼結法を用いて保持温度900 ℃、保持時間35分間という条件で作製したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値を比較して示すと図7のグラフのようになる。
【0046】
[実施例1]
0.429gの純Al粉末粒子、0.047gのAl−5%Mg(5056タイプ)合金粉末粒子、及び、0.207gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.5 K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2 Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は600 ℃(873 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は700 A、恒温保持中の電流は500 Aであった。
【0047】
[実施例2]
0.372gの純Al粉末粒子、0.040gのAl−5%Mg(5056タイプ)合金粉末粒子、及び、0.293gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.5 K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2 Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は600℃(873 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は700 A、恒温保持中の電流は500 Aであった。
【0048】
[実施例3]
0.315gの純Al粉末粒子、0.034gのAl−5%Mg(5056タイプ)合金粉末粒子及び0.373gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.5K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2
Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は600℃(873 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は700 A、恒温保持中の電流は500 Aであった。
【0049】
[実施例4]
1.430gの純銅粉末粒子、0.151gのCu−30%Zn(260タイプ)合金粉末粒子、及び、0.207gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7 K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2 Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は950℃(1223 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は1400 A、恒温保持中の電流は1000 Aであった。
【0050】
[実施例5]
1.240gの純銅粉末粒子、0.131gのCu−30%Zn(260タイプ)合金粉末粒子、及び、0.293gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7 K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2 Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は950℃(1223 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は1400 A、恒温保持中の電流は1000 Aであった。
【0051】
[実施例6]
1.050gの純銅粉末粒子、0.111gのCu−30%Zn(260タイプ)合金粉末粒子、及び、0.373gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7 K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2 Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は950℃(1223 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は1400 A、恒温保持中の電流は1000 Aであった。
【0052】
上記純Al粉末粒子、Al−5%Mg(5056タイプ)合金粉末粒子及びダイヤモンド粉末粒子の混合体を使用した実施例1で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は25.5 Vol.%であり、実施例2で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は36.1 Vol.%であった。実施例3で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は、45.5 Vol.%であった。これらの複合材料の室温における熱伝導率を測定した結果、前者の熱伝導率は280 W/mKであり、中者の熱伝導率は355 W/mKであり、後者の熱伝導率は403 W/mKであった。
【0053】
実施例1、2及び3によれば、Maxwell−Euckenの式による計算値の80%以上の熱伝導率を有する複合材料を得ることが出来る。また、純銅粉末粒子、Cu−30%Zn(260タイプ)合金粉末粒子、及び、のダイヤモンド粉末粒子の混合体を使用した実施例4、5及び6で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は、それぞれ、25.3 Vol.%、34.9 Vol.%及び45.2 Vol.%であり、それらの熱伝導率は、それぞれ、473 W/mK、539 W/mK及び641 W/mKであった。実施例4、5及び6によれば、これも実施例1、2及び3の純Al粉末粒子、Al−5%Mg(5056タイプ)合金粉末粒子、及び、ダイヤモンド粉末粒子の混合体を用いた場合と同様に、Maxwell−Euckenの式による計算値の80%以上の熱伝導率を有する複合材料を得ることが出来る。
【0054】
一方従来材の場合、吸引含浸法で製造されたダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料では、粒子体積分率55 Vol.%で熱伝導率が420 W/mKである。また、超高温・超高圧プレス法で製造されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料でも、粒子体積分率60 Vol.%で熱伝導率が540 W/mKであり、粒子体積分率65 Vol.%で熱伝導率が573 W/mKである。したがって、実施例6で製造された複合材料の方が、従来材よりも小さい粒子体積分率で高い熱伝導率を有し、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料としては優れていることがわかる。このように、本発明によれば安価で品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造することが出来る。また、耐摩耗性の優れた複合材料を安価に製造できる。
【0055】
本発明の産業上の利用可能な分野としては、下記のものが挙げられる。例えば、(1) 電子機器における、超LSIチップ、LSIを実装した回路基盤、表示素子におけるバックライト、バッテリー等の放熱用冷却フィン、(2) PCハードディスク用冷却フィン、(3) デジタルカメラ用冷却フィン等である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の金属基複合材料の焼結過程を説明する模式図であり、[A]は高融点金属粒子、低融点金属粒子、及びダイヤモンド粒子の拡大断面図、[B]は焼結開始前の状態を示す焼結型の断面図であり、[C]は焼結後の状態を示す焼結型の断面図である。
【図2】[A]は本発明の金属基複合材料の焼結方法を実施する放電プラズマ焼結装置の概略説明図、[B]は焼結型の縦断面図、[C]は焼結型の横断面図である。
【図3】放電プラズマ焼結法を用いて、873K(600℃)で、2100秒(35分間)成形したダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料のかさ密度とダイヤモンド体積分率の関係を示すグラフである。
【図4】放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度873 K、保持時間2100秒という条件で作製した、種々のダイヤモンド粒子体積分率を有する、ダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図5】放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度873 K、保持時間2100秒という条件で作製した、ダイヤモンド粒子体積分率が55.0%である、ダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料のAl/ダイヤモンド界面近傍の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6】ダイヤモンド粒子分散型アルミニウム基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値の比較を示すグラフである。
【図7】ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値の比較を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1…高融点金属粒子
2…低融点金属粒子
3…ダイヤモンド粒子
4…熱伝対
5…ダイ
6…下パンチ
7…上パンチ
8…ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料
10…パルス通電加圧装置
11…真空チャンバー
12…通電加圧電極
15…加圧装置
16…電源装置
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法及びその方法により製造された複合材料に関し、より詳細には、融点に10 ℃〜200 ℃の差を有する2種類の金属粒子とダイヤモンド粒子との混合体を焼結法によって複合化するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超LSIの高集積化・高速化に伴って超LSIを用いた小型電子機器における内部発熱の問題はより深刻になり、温度上昇による超LSIチップ自体の誤動作が深刻な問題となりつつある。例えばノートパソコンの場合、筐体はA4サイズ、B5サイズ、さらにはより小型化が進んでいるが、同時にCPUのクロック周波数やハードディスクドライブの回転数は増加しており、発熱量が増大している。デジタルカメラの分野では、CCDの画素数向上や動画撮影機能を充実させながらも消費電力の低減が図られているため、単位体積あたりの発熱密度はほぼ一定である。しかしながら、本体の体積自体も小さくなる傾向にあるため放熱面積が小さくなり、結果として温度上昇率の増加を招いている。この様な背景から、高熱伝導材料の開発が切望されている。
【0003】
最近、下記特許文献1および2に示されるように、700 W/mKの高熱伝導率を有する炭素繊維強化型Al基複合材料が開発された。ただし、700 W/mKは炭素繊維の長手方向の熱伝導率であり、炭素繊維と垂直方向の熱伝導率は20〜50
W/mKと極端に低い。高熱伝導性ジョイントとしては有効だが、材料全体としての放熱特性は銀や銅を下回る。
【0004】
これに対して発明者は、上記の問題を解決する3次元的に均一な高熱伝導性を有する材料として、現存する材料中最も高い熱伝導率(2000
W/mK)を有するダイヤモンド粒子を、比較的高い熱伝導率を有するアルミニウム(Al)および銅(Cu)中に分散した、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料に注目した。この材料は過去に、ダイヤモンド粒子のプリフォームの隙間に吸引含浸法で溶融Cuを導入して作製された例(ダイヤモンド粒子の体積分率55
%で420 W/mKの熱伝導率)、および、超高圧・超高温プレスを用いて、ダイヤモンド粉とCu粉の混合粉末を4〜5
GPaの加圧下において1423 Kで成形した例(ダイヤモンド体積分率50
%〜80 %で226〜742 W/mKの熱伝導率)が報告されているが、いずれもダイヤモンド粒子を多く含有する割には高熱伝導率が得られておらず、熱伝導率の実測値はMaxwell−Euckenの式による計算値の40%〜60%程度しか満足していない。
【0005】
ここで、Maxwell−Euckenの式による計算値とは、次式
(数式1)
λ={2λ1+λ2+2V(λ2−λ1)}・λ1/{2λ1+λ2−V(λ2−λ1)
(但し、λは複合材料の熱伝導率、λ1はマトリックス金属(この場合Cu)の熱伝導率、λ2 は分散粒子(この場合ダイヤモンド)の熱伝導率、Vは複合材料中の分散粒子(この場合ダイヤモンド)の体積分率(Vol.%)である。)
により計算して得られた値である。
【0006】
上記のように計算値の40 %〜60
%程度しか満足していない理由は、従来の吸引含浸成形及び超高圧・超高温プレス成形というプロセシング技術に起因するものと思われる。すなわち、ダイヤモンド粒子と銅マトリックスとを密着させようとするあまり、溶融状態(1200
℃>温度>1150 ℃)のCuとダイヤモンド粒子とが長時間(>15分)直接接触するため、成形中にダイヤモンド粒子が劣化し、ダイヤモンド粒子そのものの熱伝導率が低下する。発明者はダイヤモンド粒子の表面に予めマトリックスとなる金属を被覆しておき、該金属被覆ダイヤモンド粒子を焼結することで比較的良好な焼結体が得られることを確認している。しかしながら、大幅な製造コストの増加や製造プロセスの複雑化に加え、厚い金属被覆を均一に施すことは困難である。
【0007】
【特許文献1】特開2005−200676号公報
【特許文献2】特開2006−307358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そもそも複合材料の発想は、あまり熱伝導性は良くない(熱伝導率が10〜400 W/mK)が、柔らかく柔軟性を有する金属(Cu、Al、Mg等)中に、硬いが、そのマトリックス金属の熱伝導率を遥かに凌ぐ高い熱伝導率を有する粒子(熱伝導率が1000〜2000 W/mK)を分散させて、高い熱伝導率を有しつつ加工性に富む材料を作ろうとするのが目的である。しかしながら、高い熱伝導率を有する分散粒子は値段の高いものが多く、粒子体積分率(複合材料中で粒子がしめる体積の割合)は低い値のほうが良い。それ以外にも、高い熱伝導率を有する分散粒子は硬くて脆い物が多い。従って、分散粒子を入れすぎた場合、CuやAlのように粘りのある材料をマトリックス金属として選んでも、複合化したときに脆くなる。可能であれば高熱伝導率と粘りを両立したいため、少ない粒子体積分率で高熱伝導率を確保することが必要になる。ところが、従来の吸引含浸法や超高温・超高圧プレス成形法のように、複合化処理中に粒子が高温に長時間さらされるとダメージを受けて劣化するため、複合材料の高熱伝導率確保のため、粘りをやや犠牲にしてでも多くの粒子を埋め込まねばならない。その結果、複合材料のコスト高や脆化を招くことになる。
【0009】
本発明は、かかる従来の吸引含浸法や超高温・超高圧プレス成形法により形成されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の上記のような問題点に鑑み成されたものであって、その目的とするところは、放電プラズマ焼結法を利用することによって、製造過程での粒子のダメージを少なくし、ダイヤモンド粒子へ予備処理(金属被覆等)を施すことなく品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を簡便に製造する方法を提供することである。本発明の他の目的は、製造過程でのダイヤモンド粒子の熱伝導性の低下を少なくし、ダイヤモンド粒子とマトリックスの密着性に優れた、高熱伝導性を有するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、融点が10℃〜200
℃異なる2種類の金属粉末粒子とダイヤモンド粉末粒子の混合体を使用し、低融点金属粒子の融点と高融点金属粒子の融点との中間温度に加熱することにより低融点金属粒子のみを熔融せしめ、成形中に生じる金属の固液共存状態を利用したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法を提供することである。具体的には、液相をポア内に充填しながら放電プラズマ焼結する時の条件、特に、恒温保持温度および恒温保持時間を制御することにより、品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造する方法およびダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明によれば、融点が10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属粉末粒子とダイヤモンド粉末粒子との混合体を用い、該2種類の金属粉末粒子のそれぞれの融点の間の温度で混合体を焼結することを特徴とするダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法が提供される。この発明によれば、ダイヤモンドの粒子体積分率が低くても熱伝導率の高いダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を短時間で製造できる。焼結方法としては、直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することが好ましい。
【0012】
上記発明において、融点が10
℃〜200 ℃異なる2種類の金属粒子とダイヤモンド粒子の混合体を所定量、1kPa〜1.5 GPaの圧力を加えた状態で、100 Pa以下の真空雰囲気下で、0.1 ℃/s(0.1 K/s)〜8.3 ℃/s(8.3 K/s)の昇温速度で昇温して、低融点金属粒子の融点〜高融点金属粒子の融点の範囲で恒温保持するように10秒〜7200秒(120分)の間、所定の電圧及び電流の直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することが好ましい。
【0013】
上記発明において、ダイヤモンド粉末粒子の体積分率は、5 Vol.%〜85Vol.%であってもよく、好ましくは、10 Vol.%〜80 Vol.%、より好ましくは、15 Vol.%〜75 Vol.%であるとよい。また、上記発明において、ダイヤモンド粒子の直径は、1μm〜3000μmであってもよく、好ましくは、10μm〜500μm、より好ましくは20μm〜400μmであるとよい。なお、ダイヤモンド粒子の直径の上限が、後述する実施例と比較して、極めて大きくなっているが、購入価格が高額であることを考慮しなければ、技術的には使用可能な数値である。
【0014】
また、上記発明において、金属粉末粒子の直径は、1μm〜3000μmであってもよく、好ましくは、10μm〜500μm、より好ましくは20μm〜400μmであるとよい。なお、金属粉末粒子の直径の上限が、後述する実施例と比較して、極めて大きくなっているが、技術的には使用可能な数値である。
【0015】
また、上記発明において、融点の10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属粉末粒子の混合粉末において、融点の低い方の金属粉末粒子(低融点金属粒子)の占める体積分率は、1 Vol.%〜90 Vol.%であってもよく、好ましくは、1 Vol.%〜67 Vol.%、より好ましくは1 Vol.%〜50 Vol.%であるとよい。更に、上記発明において、恒温保持する時間が、好ましくは、20秒〜5400秒(90分)であってもよく、より好ましくは、60秒〜2700秒であるとよい。
【0016】
更にまた、上記発明において、所定の真空雰囲気は、0〜10 Paであるとより好ましい。また、前記昇温速度は、好ましくは、0.5
℃/s(0.5 K/s)〜2.5 ℃/s(2.5 K/s)であってもよく、より好ましくは、0.83 ℃/s(0.83 K/s)〜2.0 ℃/s(2.0 K/s)であるとよい。上記発明において、金属粒子が純銅粉末粒子と銅合金粉末粒子の混合粉末である場合、所定の圧力が、好ましくは1 kPa〜1.5 GPaであり、より好ましくは、2.5 kPa〜500 MPaである。上記発明において、金属粉末粒子が純アルミニウム粉末粒子とアルミニウム合金粉末粒子の混合粉末粒子である場合、所定の圧力が、1 kPa〜1.2 GPaであり、より好ましくは、2.5 kPa〜400 MPaである。
【0017】
また、上記発明において、金属粉末粒子が純銅粉末と銅合金粉末の混合粉末である場合、恒温保持する温度が、好ましくは、銅合金粉末粒子の融点以上、純銅粒子の融点(1083 ℃)未満であり、より好ましくは、銅合金粉末粒子の融点直上である。また、上記発明において、金属粉末粒子が純アルミニウム粉末とアルミニウム合金粉末の混合粉末である場合、恒温保持する温度は、好ましくはAl合金粉末の融点以上、純Al粒子の融点(660 ℃)未満であり、より好ましくは、Al合金粉末粒子の融点直上である。
【0018】
また、上記発明において、用いる2種類の金属粉末粒子の融点の差は、10 ℃〜200 ℃である。その理由は、融点の差が上記範囲よりも小さいと、固液共存状態を得るのが困難になるためである。また、融点の差が上記範囲よりも大きいと、高融点金属粒子の塑性変形が不活発な状態で低融点金属粒子が液化するため、液体状態の低融点金属が高融点金属粒子同士の隙間やダイヤモンド粒子と高融点金属粒子の隙間を埋め尽くせず、ポアの残存をもたらし、結果として成形体の熱伝導率の低下をもたらすためである。上記金属粉末粒子の融点の差は、好ましくは20 ℃〜150 ℃であり、更に好ましくは、30 ℃〜100 ℃である。
【0019】
請求項9に記載の発明によれば、融点が10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属から構成される金属基を有し、ダイヤモンド体積分率が10 Vol.%で熱伝導度が234 W/mKからダイヤ体積分率が60 Vol.%で熱伝導度が805 W/mKの範囲の特性を有するダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料が提供される。
【0020】
ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料は、用いる金属粉末粒子が銅と銅合金の混合体の場合、より好ましくは、ダイヤモンド体積分率が18.0Vol.%で熱伝導度が417 W/mKからダイヤ体積分率が50 Vol.%で熱伝導度が689 W/mKの範囲の特性を有し、最も好ましくは、ダイヤモンド体積分率が19.8 Vol.%で熱伝導度が431 W/mKからダイヤ体積分率が43.3
Vol.%で熱伝導度が654W/mKの範囲の特性を有する。
【0021】
また、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料は、用いる金属粉末粒子がアルミニウムとアルミニウム合金の混合体の場合、より好ましくは、ダイヤモンド体積分率が20.0 Vol.%で熱伝導度が285 W/mKからダイヤ体積分率が50.0
Vol.%で熱伝導度が506 W/mKの範囲の特性を有し、最も好ましくは、ダイヤモンド体積分率が21.3 Vol.%で熱伝導度が311 W/mKからダイヤ体積分率が41.1
Vol.%で熱伝導度が420 W/mKの範囲の特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照して本発明によるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法について説明する。まず、図1[A]に示すように、高融点金属粒子1、高融点金属粒子1より10 ℃〜200 ℃融点の低い低融点金属粒子2、及び、ダイヤモンド粒子3の混合体を所定量を用意する。ここで、用いるダイヤモンド粒子3の体積分率は、好ましくは、5 Vol.%〜85 Vol.%である。その理由は、体積分率が上記範囲より多いと、成形中に銅がダイヤモンド粒子間隙を埋め尽くす量に達せず、材料中にポアを残存することとなる為であり、また、上記範囲より少なすぎると、成形後の材料中のダイヤモンド粒子体積分率が極端に低下し、材料の高熱伝導率が得られないためである。
【0023】
ダイヤモンド粒子3のより好ましい体積分率は10
Vol.%〜80 Vol.%である。この体積分率はマトリックス金属が銅の場合及びアルミニウムの場合でも同じである。ダイヤモンド粒子3の最も好ましい体積分率は15 Vol.%〜75 Vol.%である。その理由は、この範囲内であれば、ダイヤモンド粒子の体積分率が大きすぎるときに生ずると考えられる、昇温中に低温域で荷重を付加した場合に発生しやすいダイヤモンド粒子3そのものの破損を防げるからである。また、ダイヤモンド粒子3の体積分率が小さすぎるときに生ずると考えられる、成形中での、ダイヤモンド粒子3の材料中での分散の均一性の乱れも防ぐことが出来るからである。
【0024】
ダイヤモンド粒子3の直径は、好ましくは、1μm〜3000μmである。その理由は、ダイヤモンド粒子3の直径が上記範囲よりも小さいと、銅とダイヤモンドとの界面の増加による熱伝導効率の低下を招くからであり、また上記範囲より大きすぎると、材料中でのダイヤモンド粒子3同士の接触や、成形中の金属粒子の塑性変形によるダイヤモンド粒子間隙への充填が不足することにより、材料中へのポアや未接合部分の残存を来たすこととなるからである。ダイヤモンド粒子3のより好ましい直径は、10μm〜500μmであり、更に好ましくは、20μm〜400μmである。その理由は、この範囲にすると、高温域における短時間でのダイヤモンドの劣化を防止でき、銅とダイヤモンドとの界面の増加による熱伝導効率の低下を防止でき、また、昇温中において低温域で荷重を付加した場合のダイヤモンドの破損を阻止できるからである。更に、市場で容易に入手可能なことも理由である。
【0025】
高融点金属粒子1および低融点金属粒子2の直径は、好ましくは、1μm〜3000μmである。その理由は、高融点金属粒子1および低融点金属粒子2の直径が上記範囲よりも小さいと、金属粒子の比表面積の増加により、金属粒子表面上に存在する酸化膜の絶対量が増え、それが材料中に残存することにより熱伝導効率の低下を招くからであり、また上記範囲より大きすぎると、材料中に多量のポアの残存をもたらし、材料の熱伝導効率の低下を招くからである。高融点金属粒子1および低融点金属粒子2のより好ましい直径は、10μm〜500μmであり、更に好ましくは、20μm〜400μmである。その理由は、この範囲にすると、金属酸化被膜の多量の残存や、ポアの残存による材料の熱伝導率の低下を防止できるからである。更に、市場で容易に入手可能なことも理由である。
【0026】
このように形成された高融点金属粒子1、低融点金属粒子2、及び、ダイヤモンド粒子3の混合体を所定量、図2[B]及び[C]に示される円筒状のグラファイト(又は導電性セラミック)製のダイ5内で下パンチ6及び上パンチ7の間に装入する。このようにして所定量の高融点金属粒子1、低融点金属粒子2、及び、ダイヤモンド粒子3の混合体が装入されたダイ5及び下パンチ6、上パンチ7を、図2[A]に示されるように、パルス通電加圧装置10の真空チャンバー11内で一対の通電加圧電極12の間に、上パンチ6及び下パンチ7の外端が通電加圧電極12の対応する端部にそれぞれ接触するように、セットする。
【0027】
このパルス通電加圧装置10は、放電プラズマ焼結法又はパルス通電加圧焼結法(プラズマ活性化焼結法又は放電焼結法とも呼ばれる)の原理を応用した加圧焼結装置であるが、市販の放電プラズマ焼結装置(例えば、SPSシンテックス(株)製、DR.Sinter)を使用してもよい。セットした語、真空チャンバー11内を所定の真空度の雰囲気に保ち、パルス通電加圧接合装置10の加圧装置15により一対の通電加圧電極12を介して所定量の混合粉末に所定の範囲の圧力を加えた状態の下で、電源装置16から通電電極に所定の電圧、電流の直流パルス電流(直流電流と直流パルス電流の重畳電流でも良い)を流す。
【0028】
上記所定の真空状態とは、好ましくは、100 Pa以下の真空度、より好ましくは、10 Pa以下の真空度を言う。その理由は、真空状態が100 Paを超えると、金属粉末粒子表面の急速酸化が起こり、粉末粒子の塑性流動や粒子同士の接合を阻害し、成形後の強度低下を招く恐れがあるからである。また、10 Pa以下の真空度を保つことにより、マトリックスとしての銅または銅合金の酸素吸収による脆化をほとんど防止でき、成形体としての変形能の低下を避けることができるからである。
【0029】
所定の圧力とは、使用する金属粉末粒子の種類によっても異なるが、高融点金属粒子として銅を用いた場合、好ましくは1 kPa〜1.5 GPaで、アルミニウムを用いた場合、好ましくは1 kPa〜1.2 GPaである。その理由はいずれも圧力が上記範囲より低いと成形後の材料中に未接合部分が残存することとなるからであり、また、上記範囲より高すぎるとカーボン(グラファイト)又は導電性セラミックダイの破損、もしくは、材料のパンチとダイとの間の隙間への侵入が起こるからである。アルミニウムの好ましい上限値が銅の好ましい上限値より小さいのは、アルミニウムは加工硬化したときの耐力が、銅よりも小さいためである。圧力のより好ましい値は、銅を用いた場合、2.5 kPa〜500 MPaであり、アルミニウムを用いた場合、2.5 kPa〜400 MPaである。
【0030】
更に、直流電圧は、好ましくは、0.1 V〜10.0 Vであり、直流パルス電流は金属粉末粒子の種類及び直径並びに粒子の焼結に必要な昇温速度によって異なるが、銅或いはアルミニウムの場合、好ましくは、1 A〜30000 Aである。その理由は、その電流値が上記範囲より低すぎると、放電不十分による材料中の未接合部分の残存が発生することになるからであり、その範囲より高すぎると材料製造中の金属粉末粒子の大量溶融によるポアの材料中への残存やダイヤモンド粒子の劣化による熱伝導率の低下を来たすこととなるからである。電流のより好ましい値は、50 A〜25000 Aである。
【0031】
上記のように直流パルス電流を流すと、金属粉末粒子とダイヤモンド粉末粒子の混合体は昇温し始める。温度が所定の値になったら、その温度(恒温保持温度)を所定の時間(恒温保持時間)保持するように、通電電極を通して流すパルス電流を調節する。粒子の温度は粒子に近接して設けた温度センサによって測定しても、公知の間接的に測定する温度センサでもよい。
【0032】
昇温速度は、用いる金属粒子の種類によって異なるが、銅、或いは、アルミニウムである場合、好ましくは、0.1 K/s〜8.3 K/sである。その理由は、その昇温速度が上記範囲より低すぎると、放電不十分により粒子表面が充分活性化されず、接合強度の低下や材料中の未接合部分の残存が発生することになるからであり、高すぎると材料製造中の金属粒子の大量熔融によるポアの材料中への残存やダイヤモンド粒子の劣化による熱伝導率の低下をきたすこととなるからである。より好ましい昇温速度は、0.5 K/s〜2.5 K/sである。
【0033】
また、上記恒温保持温度は、用いる金属粒子の種類によって異なるが、好ましくは、低融点金属粒子の融点よりも高く、高融点金属粒子の融点より低い温度範囲、より好ましくは、低融点金属粒子の融点直上である。その理由は、温度がこの範囲より低いと、低融点金属粒子及び高融点金属粒子が両方共に溶融しないため、成形中の低融点金属粒子のみの溶融による固液共存状態が実現できず、材料のかさ密度の低下を招くためである。また、温度がこの範囲より高いと、低融点金属粒子及び高融点金属粒子が両方共に溶融し、パンチとダイとの隙間への溶融金属の侵入や、ダイヤモンド粒子の不均一分散等が起こるからである。
【0034】
また、用いる金属粒子が純銅と銅合金の混合粉末である場合には、真空度、圧力、昇温速度は前記の範囲でよいが、恒温保持温度範囲は、好ましくは銅合金粉末の融点以上純銅粉末の融点(1083 ℃)未満であり、より好ましくは、銅合金粉末の融点直上である。ここで、最低温度に変化が無いのは、銅合金粉末の融点以上であり純銅粉末の融点(1083 ℃)未満の温度範囲では、固液共存状態の固相率は純銅粉末と銅合金粉末の混合比によってのみ変化し、温度によっては変化しないためである。したがって、同じ固相率であるならダイヤモンドの劣化しにくい、より低温側、すなわち、銅合金粉末の融点直上が最善となるためである。
【0035】
一方、用いる金属粒子がアルミニウム及びアルミニウム合金である場合には、真空度、圧力、昇温速度は前記の範囲でよいが、恒温保持温度範囲は、好ましくはAl合金粉末の融点以上純Al粉末の融点(660 ℃)未満であり、より好ましくは、Al合金粉末の融点直上である。成形が完了した後、通電を停止し、加圧装置による加圧を解除する。
【0036】
金属粒子として銅を用いた上記恒温保持温度の範囲を限定したより詳細な理由は以下の通りである。ダイヤモンドの融点は3727 ℃であるが、銅の融点が1083 ℃であり、銅合金の融点は1083 ℃より低くなる。本発明の目的は、2種類の金属粒子をマトリックス金属として用い、成形中の固液共存状態を利用してポア中に溶融金属を充填し、かさ密度の高い緻密な成形体を得ることにある。したがって、成形中には、低融点の銅合金粉末のみが溶融し液相となり、高融点の純銅粉末は溶融しないで固相の状態を保つという固液共存状態が実現されねばならない。
【0037】
よって、銅の融点(1083 ℃)以上の温度では、純銅粉末、銅合金粉末共に溶融し、全体が液相となってしまう。一方銅合金粉末の融点以下の温度では、純銅粉末、銅合金粉末共に溶融せず全体が固相のままである。したがって、固液共存状態を実現するためには銅合金粉末の融点以上、純銅粉末の融点(1083 ℃)以下の温度範囲で成形せねばならない。またさらに、ダイヤモンド粒子の劣化の防止を勘案すれば、固液共存状態が実現できる温度範囲でも、より低温であることが好ましく、最も好ましい成形温度は銅合金粉末の融点直上の温度となる。
【0038】
また、マトリックスとしてアルミニウムを用いた上記温度範囲を限定したより詳細な理由は以下のとおりである。ダイヤモンドの融点は3727 ℃であるが、Alの融点が660℃であり、Al合金の融点は660 ℃より低くなる。本発明の目的は、2種類の金属粒子をマトリックス金属として用い、成形中の固液共存状態を利用してポア中に溶融金属を充填し、かさ密度の高い緻密な成形体を得ることにある。したがって、成形中には、低融点のAl合金粉末のみが溶融し液相となり、高融点の純Al粉末は溶融しないで固相の状態を保つという固液共存状態が実現されねばならない。
【0039】
よって、Alの融点(660 ℃)以上の温度では、純Al粉末、Al合金粉末共に溶融し、全体が液相となってしまう。一方Al合金粉末の融点以下の温度では、純Al粉末、Al合金粉末共に溶融せず全体が固相のままである。したがって、固液共存状態を実現するためにはAl合金粉末の融点以上、純Al粉末の融点(1083 ℃)未満の温度範囲で成形せねばならない。またさらに、ダイヤモンド粒子の劣化の防止を勘案すれば、固液共存状態が実現できる温度範囲でも、より低温であることが好ましく、最も好ましい成形温度はAl合金粉末の融点直上の温度となる。
【0040】
上記放電プラズマ焼結は次のような過程を経て進行し、最終製品であるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料が得られる。すなわち図1[B]に示されるように、所定の圧力を加えた状態で、直流パルス電流を流すと、金属粉末粒子同士の隙間及び金属粒子とダイヤモンド粒子との隙間で火花放電しながら焼結が進行する。火花放電の生じた場所は局所的高温状態となるため、金属粉末粒子の表面部分で局所的な、溶融、蒸発、凝縮が繰り返し起こり、接合部分の塑性変形とあいまって、急速に接合が進行する。これに加えて、低融点金属粒子は金属粒子そのものが溶融し、高融点金属粒子同士の隙間及び高融点金属粒子とダイヤモンド粒子の隙間に侵入し、ポアを充填する。そのため、かさ密度の極めて高い成形体を得ることが可能となる。そして、最終的には図1[C]に示されるような、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料8が得られる。
【0041】
放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度600 ℃、保持時間10分間という条件で作製したダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料の、かさ密度とダイヤモンド粒子体積分率の関係を示せば、図3のグラフのようになる。
【0042】
放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度600 ℃、保持時間35分間という条件で作製した、種々のダイヤモンド粒子体積分率を有する、ダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料の走査電子顕微鏡写真を示せば図4のようなる。
【0043】
放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度600℃、保持時間35分間という条件で作製した、55 Vol.%のダイヤモンド粒子を含有するダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料の、ダイヤモンド粒子/Alマトリックス界面近傍の走査電子顕微鏡写真を示せば図5のようなる。
【0044】
放電プラズマ焼結法を用いて保持温度600 ℃、保持時間35分間という条件で作製したダイヤモンド粒子分散型アルミニウム基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値を比較して示すと図6のグラフのようになる。
【0045】
放電プラズマ焼結法を用いて保持温度900 ℃、保持時間35分間という条件で作製したダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値を比較して示すと図7のグラフのようになる。
【0046】
[実施例1]
0.429gの純Al粉末粒子、0.047gのAl−5%Mg(5056タイプ)合金粉末粒子、及び、0.207gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.5 K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2 Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は600 ℃(873 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は700 A、恒温保持中の電流は500 Aであった。
【0047】
[実施例2]
0.372gの純Al粉末粒子、0.040gのAl−5%Mg(5056タイプ)合金粉末粒子、及び、0.293gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.5 K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2 Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は600℃(873 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は700 A、恒温保持中の電流は500 Aであった。
【0048】
[実施例3]
0.315gの純Al粉末粒子、0.034gのAl−5%Mg(5056タイプ)合金粉末粒子及び0.373gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.5K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2
Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は600℃(873 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は700 A、恒温保持中の電流は500 Aであった。
【0049】
[実施例4]
1.430gの純銅粉末粒子、0.151gのCu−30%Zn(260タイプ)合金粉末粒子、及び、0.207gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7 K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2 Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は950℃(1223 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は1400 A、恒温保持中の電流は1000 Aであった。
【0050】
[実施例5]
1.240gの純銅粉末粒子、0.131gのCu−30%Zn(260タイプ)合金粉末粒子、及び、0.293gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7 K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2 Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は950℃(1223 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は1400 A、恒温保持中の電流は1000 Aであった。
【0051】
[実施例6]
1.050gの純銅粉末粒子、0.111gのCu−30%Zn(260タイプ)合金粉末粒子、及び、0.373gのダイヤモンド粉末粒子の混合体を用意し、汎用型グラファイトダイセット中にセットした。この状態で試料部分の寸法と形状は、直径10 mm、高さ5 mmの円盤状である。このように汎用型グラファイトダイセット中にセットされた前記混合体に対して、放電プラズマ焼結装置(SPSシンテックス(株)製SPS1020)を用いて、昇温速度1.7 K/s、恒温保持時間2100秒(s)、真空度2 Paの条件で、放電プラズマ焼結を行なった。この場合、恒温保持温度は950℃(1223 K)の条件で行なった。測温はK型熱伝対をグラファイトダイ中に挿入し、試料表面から5 mmの位置のダイ温度を測定することにより行なった。加圧力は50 MPaとした。また、パルスの電圧は2.5 Vで、昇温時における直流パルス電流は1400 A、恒温保持中の電流は1000 Aであった。
【0052】
上記純Al粉末粒子、Al−5%Mg(5056タイプ)合金粉末粒子及びダイヤモンド粉末粒子の混合体を使用した実施例1で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は25.5 Vol.%であり、実施例2で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は36.1 Vol.%であった。実施例3で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は、45.5 Vol.%であった。これらの複合材料の室温における熱伝導率を測定した結果、前者の熱伝導率は280 W/mKであり、中者の熱伝導率は355 W/mKであり、後者の熱伝導率は403 W/mKであった。
【0053】
実施例1、2及び3によれば、Maxwell−Euckenの式による計算値の80%以上の熱伝導率を有する複合材料を得ることが出来る。また、純銅粉末粒子、Cu−30%Zn(260タイプ)合金粉末粒子、及び、のダイヤモンド粉末粒子の混合体を使用した実施例4、5及び6で製造したダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の粒子体積分率は、それぞれ、25.3 Vol.%、34.9 Vol.%及び45.2 Vol.%であり、それらの熱伝導率は、それぞれ、473 W/mK、539 W/mK及び641 W/mKであった。実施例4、5及び6によれば、これも実施例1、2及び3の純Al粉末粒子、Al−5%Mg(5056タイプ)合金粉末粒子、及び、ダイヤモンド粉末粒子の混合体を用いた場合と同様に、Maxwell−Euckenの式による計算値の80%以上の熱伝導率を有する複合材料を得ることが出来る。
【0054】
一方従来材の場合、吸引含浸法で製造されたダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料では、粒子体積分率55 Vol.%で熱伝導率が420 W/mKである。また、超高温・超高圧プレス法で製造されたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料でも、粒子体積分率60 Vol.%で熱伝導率が540 W/mKであり、粒子体積分率65 Vol.%で熱伝導率が573 W/mKである。したがって、実施例6で製造された複合材料の方が、従来材よりも小さい粒子体積分率で高い熱伝導率を有し、ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料としては優れていることがわかる。このように、本発明によれば安価で品質の優れたダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料を製造することが出来る。また、耐摩耗性の優れた複合材料を安価に製造できる。
【0055】
本発明の産業上の利用可能な分野としては、下記のものが挙げられる。例えば、(1) 電子機器における、超LSIチップ、LSIを実装した回路基盤、表示素子におけるバックライト、バッテリー等の放熱用冷却フィン、(2) PCハードディスク用冷却フィン、(3) デジタルカメラ用冷却フィン等である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の金属基複合材料の焼結過程を説明する模式図であり、[A]は高融点金属粒子、低融点金属粒子、及びダイヤモンド粒子の拡大断面図、[B]は焼結開始前の状態を示す焼結型の断面図であり、[C]は焼結後の状態を示す焼結型の断面図である。
【図2】[A]は本発明の金属基複合材料の焼結方法を実施する放電プラズマ焼結装置の概略説明図、[B]は焼結型の縦断面図、[C]は焼結型の横断面図である。
【図3】放電プラズマ焼結法を用いて、873K(600℃)で、2100秒(35分間)成形したダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料のかさ密度とダイヤモンド体積分率の関係を示すグラフである。
【図4】放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度873 K、保持時間2100秒という条件で作製した、種々のダイヤモンド粒子体積分率を有する、ダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図5】放電プラズマ焼結法を用いて、保持温度873 K、保持時間2100秒という条件で作製した、ダイヤモンド粒子体積分率が55.0%である、ダイヤモンド粒子分散型Al基複合材料のAl/ダイヤモンド界面近傍の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6】ダイヤモンド粒子分散型アルミニウム基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値の比較を示すグラフである。
【図7】ダイヤモンド粒子分散型銅基複合材料の熱伝導率の、ダイヤモンド体積分率依存性の実験値と理論値の比較を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1…高融点金属粒子
2…低融点金属粒子
3…ダイヤモンド粒子
4…熱伝対
5…ダイ
6…下パンチ
7…上パンチ
8…ダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料
10…パルス通電加圧装置
11…真空チャンバー
12…通電加圧電極
15…加圧装置
16…電源装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属粉末粒子(低融点金属粒子と高融点金属粒子)とダイヤモンド粉末粒子との混合体を用い、
前記低融点金属粒子の融点以上であって前記高融点金属粒子の融点未満の温度で前記混合体を焼結することを特徴とするダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項2】
直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項3】
100 Pa以下の真空雰囲気下で、
1 kPa〜1.5 GPaの圧力を加え、
直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流し、
0.1 ℃/s〜8.3 ℃/sの昇温速度で昇温し、
前記低融点金属粒子の融点以上であって前記高融点金属粒子の融点未満の温度で焼結することを特徴とする請求項1〜2いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記ダイヤモンド粉末粒子の体積分率が5 Vol.%〜85Vol. %である請求項1〜3いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記ダイヤモンド粉末粒子の直径が1μm〜3000μmであり、
前記金属粉末粒子の直径が1μm〜3000μmである請求項1〜4いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記2種類の金属粉末粒子の混合体において、
前記低融点金属粒子の体積分率が1 Vol.%〜90 Vol.%である請求項1〜5いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記2種類の金属粉末粒子が純アルミニウム粉末粒子と純アルミニウムよりも10 ℃〜200 ℃融点の低いアルミニウム合金粉末粒子であり、
焼結温度が前記アルミニウム合金粉末粒子の融点以上であって前記純アルミニウム粉末粒子の融点未満である請求項1〜6いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記2種類の金属粉末粒子が純銅粉末粒子と純銅よりも10 ℃〜200 ℃融点の低い銅合金粉末粒子であり、
焼結温度が前記銅合金粉末粒子の融点以上であって前記純銅粉末粒子の融点未満である請求項1〜6いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項9】
融点が10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属から構成される金属基を有し、
ダイヤモンドの体積分率が10 Vol.%〜60 Vol.%であり、
熱伝導度が234 W/mK〜805 W/mKであるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料。
【請求項10】
前記金属基が純アルミニウムとアルミニウム合金とから構成される請求項9に記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料。
【請求項1】
融点が10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属粉末粒子(低融点金属粒子と高融点金属粒子)とダイヤモンド粉末粒子との混合体を用い、
前記低融点金属粒子の融点以上であって前記高融点金属粒子の融点未満の温度で前記混合体を焼結することを特徴とするダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項2】
直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流して焼結することを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項3】
100 Pa以下の真空雰囲気下で、
1 kPa〜1.5 GPaの圧力を加え、
直流パルス電流又は直流パルス電流と直流電流の重畳電流を流し、
0.1 ℃/s〜8.3 ℃/sの昇温速度で昇温し、
前記低融点金属粒子の融点以上であって前記高融点金属粒子の融点未満の温度で焼結することを特徴とする請求項1〜2いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記ダイヤモンド粉末粒子の体積分率が5 Vol.%〜85Vol. %である請求項1〜3いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記ダイヤモンド粉末粒子の直径が1μm〜3000μmであり、
前記金属粉末粒子の直径が1μm〜3000μmである請求項1〜4いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記2種類の金属粉末粒子の混合体において、
前記低融点金属粒子の体積分率が1 Vol.%〜90 Vol.%である請求項1〜5いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記2種類の金属粉末粒子が純アルミニウム粉末粒子と純アルミニウムよりも10 ℃〜200 ℃融点の低いアルミニウム合金粉末粒子であり、
焼結温度が前記アルミニウム合金粉末粒子の融点以上であって前記純アルミニウム粉末粒子の融点未満である請求項1〜6いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記2種類の金属粉末粒子が純銅粉末粒子と純銅よりも10 ℃〜200 ℃融点の低い銅合金粉末粒子であり、
焼結温度が前記銅合金粉末粒子の融点以上であって前記純銅粉末粒子の融点未満である請求項1〜6いずれかに記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料の製造方法。
【請求項9】
融点が10 ℃〜200 ℃異なる2種類の金属から構成される金属基を有し、
ダイヤモンドの体積分率が10 Vol.%〜60 Vol.%であり、
熱伝導度が234 W/mK〜805 W/mKであるダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料。
【請求項10】
前記金属基が純アルミニウムとアルミニウム合金とから構成される請求項9に記載のダイヤモンド粒子分散型金属基複合材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−91605(P2009−91605A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261590(P2007−261590)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(505301941)SPSシンテックス株式会社 (10)
【出願人】(508114454)地方独立行政法人 大阪市立工業研究所 (60)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(507103994)株式会社マイクロブライト (3)
【上記2名の代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(505301941)SPSシンテックス株式会社 (10)
【出願人】(508114454)地方独立行政法人 大阪市立工業研究所 (60)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(507103994)株式会社マイクロブライト (3)
【上記2名の代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
【Fターム(参考)】
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