説明

ダイヤル式シフト装置

【課題】 変速機のレンジ切り替え操作を容易かつ確実に行うことができるダイヤル式シフト装置を提供する。
【解決手段】 操作パネル10上のダイヤル型のツマミ11への一回動操作毎に、変速機21のレンジを一段切り替えるべく、ツマミ11の回転位置と変速機21のレンジとの関係が浮動関係である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動変速機を搭載した車両に好適なダイヤル式シフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機を搭載した車両において、その変速機のレンジ切り替えを行うためのダイヤル式シフト装置を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3441362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の構成においては、レンジ切り替えを行うダイヤル型のツマミは回転式のスイッチと連係しており、ツマミを回動させる際には狙ったシフト位置を飛び越えないよう注意を要することとなるため、このような点の改善が要望されている。
そこでこの発明は、変速機のレンジ切り替え操作を容易かつ確実に行うことができるダイヤル式シフト装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、操作パネル(例えば実施例の操作パネル10)上のダイヤル型のツマミ(例えば実施例のツマミ11)への一回動操作毎に、変速機(例えば実施例の変速機21)のレンジを一段切り替えるべく、前記ツマミの回転位置と前記変速機のレンジとの関係が浮動関係であることを特徴とする。
【0005】
この構成によれば、ツマミの回転位置によらずに変速機のレンジを切り替えることで、ツマミを所定量以上回動させないよう注意する必要がなくなる。また、ツマミの回転位置と変速機のレンジとが浮動関係にあることで、例えば車両の状態に応じて変速機をPレンジに切り替える、あるいはPレンジから復帰させる等のレンジ切り替えを行うことが可能となる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記ツマミが、常に原点復帰することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ツマミの一回動操作が把握し易くなる。
【0008】
請求項3に記載した発明は、前記ツマミが、その回転軸に沿う方向での移動を組み合わせた操作が可能であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載した発明は、前記ツマミが、その回転軸と交差する方向での移動を組み合わせた操作が可能であることを特徴とする。
【0010】
上記各構成によれば、変速機のレンジをLレンジ、Rレンジ、及びPレンジに切り替える際の二段階操作を再現することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、変速機のレンジ切り替え操作を容易かつ確実に行うことができる。また、車両の状態に応じた変速機のレンジ切り替え制御を行うことができる。
請求項2に記載した発明によれば、変速機のレンジ切り替え操作をより一層容易かつ確実に行うことができる。
請求項3,4に記載した発明によれば、ツマミを変速機の全レンジに対応した操作子として利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1において、符号10は操作パネルを示し、自動車等の車両の車室内におけるセンターコンソール上(あるいはインストルメントパネル上)に設けられる。
操作パネル10上には、自動変速機(オートマチックトランスミッション、以下、単に変速機という)10のレンジ切り替えを行うためのダイヤル型のツマミ11、及びPレンジ(パーキングレンジ)への切り替えを行うためのPボタン12が設けられる。
【0013】
ツマミ11は、その原点位置から左又は右回りに所定角度の回転操作(回動操作)が可能とされるもので、かつスプリング等により付勢されることで常に原点位置への復帰が可能とされている。また、ツマミ11は、その回転軸に沿う方向での押し込み操作(又は引き出し操作)が可能とされており、かつ回転軸方向に押し込んだ状態での回動操作(すなわち二段階操作)が可能とされている。
【0014】
このようなツマミ11及びPボタン12の操作に伴い、操作パネル10からは、変速機21のレンジ切り替え制御を行うコントロールユニット14に向けて所定の指令信号が出力される。ここで、コントロールユニット14には、操作パネル10からの指令信号の他に、車両の各種の状態に応じた検知信号が入力されるようになっている。
【0015】
具体的には、コントロールユニット14には、操作パネル10からの指令信号の他に、エンジン22の始動又は停止状態に応じた検知信号、車速センサ15からの検知信号、ブレーキスイッチ16からのON/OFF信号、ドアスイッチ17からのON/OFF信号、及びイグニッションスイッチ18からのON/OFF信号がそれぞれ入力され、これら各信号に基づいて、変速機21のレンジ切り替え制御が行われるようになっている。
【0016】
車室内における例えば操作パネル10の直上には、変速機21の現在のレンジを表示するための表示部13が設けられる。この表示部13上には、その左側から右側に向かって、Pレンジ(パーキングレンジ)、Rレンジ(リバースレンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)、Dレンジ(ドライブレンジ)、及びLレンジ(ローレンジ)を示す表示が順に配列されている。
【0017】
ここで、ツマミ11は常に原点位置へ復帰するものであり、該ツマミ11の回転位置と変速機21のレンジとは連係しておらず、したがってツマミ11の回転位置と変速機21のレンジとは互いに浮動関係にあるといえる。
【0018】
そして、変速機21のレンジ切り替えの前提として、ツマミ11の右回りへの一回動操作がなされると、表示部13の左側から右側への表示順で変速機21のレンジが一段切り替わり、ツマミ11の左回りへの一回動操作がなされると、表示部13の右側から左側への表示順で変速機21のレンジが一段切り替わるようになっている。
【0019】
また、上述の如くツマミ11の一回動操作がなされ、かつ該ツマミ11が原点復帰した後に、さらに上記同様にツマミ11の一回動操作がなされると、該回動操作に応じて変速機21のレンジがさらに一段切り替わるようになっている。
【0020】
次に、下記表1,2を参照して、ツマミ11及びPボタン12の操作、並びに車速センサ15からの検知信号等に応じてなされる変速機21のレンジの切り替えについて説明する。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
まず、車速センサ15が車速≠0(車両走行状態等)であることを検知している場合において、変速機21がDレンジにあるときにツマミ11を左回りに回転(以下、単に左回転という)させると(押し込んだ状態での左回転も含む)、変速機21のレンジがNレンジに切り替わり、ツマミ11を単に右回転させると、該回転操作が無効として扱われ、ツマミ11を押し込んだ状態で右回転させると(すなわち二段階操作を行うと)、変速機21のレンジがLレンジに切り替わる。
【0024】
また、上記車速≠0の場合において、変速機21がNレンジにあるときにツマミ11を左回転させると(押し込んだ状態での左回転も含む)、該回転操作が無効として扱われ、ツマミ11を右回転させると(押し込んだ状態での右回転も含む)、変速機21のレンジがDレンジに切り替わる。
【0025】
同様に、上記車速≠0の場合において、変速機21がRレンジにあるときにツマミ11を左回転させると(押し込んだ状態での左回転も含む)、該回転操作が無効として扱われ、ツマミ11を右回転させると(押し込んだ状態での右回転も含む)、変速機21のレンジがNレンジに切り替わる。
【0026】
さらに、上記車速≠0の場合において、変速機21がLレンジにあるときにツマミ11を左回転させると(押し込んだ状態での左回転も含む)、変速機21のレンジがDレンジに切り替わり、ツマミ11を右回転させると(押し込んだ状態での右回転も含む)、該回転操作が無効として扱われる。
【0027】
ここで、上記車速≠0の場合において、変速機21がR,N,D,Lの各レンジにあるときにPボタン12を押しても、その押操作が無効として扱われる。
【0028】
一方、車速センサ15が車速=0(車両停止状態)であることを検知している場合において、変速機21のレンジがD,L,Rの各レンジにあるときにツマミ11を左又は右回転させると(押し込んだ状態での左又は右回転も含む)、該各回転操作が上記車速≠0の場合における各回転操作と同様に作用する。
【0029】
また、上記車速=0の場合において、変速機21がNレンジにあるときにツマミ11を単に左回転させると、その回転操作が無効として扱われ、ツマミ11を押し込んだ状態で左回転させると(すなわち二段階操作を行うと)、変速機21のレンジがPレンジに切り替わり、右回転させると(押し込んだ状態での右回転も含む)、変速機21のレンジがDレンジに切り替わる。
【0030】
ここで、上記車速=0の場合において、変速機21がR,N,D,Lの各レンジにあるときにPボタン12を押すと、変速機21のレンジがPレンジに切り替わる。同様に、変速機21がR,N,D,Lの各レンジにあるときに車両のドアが開く(ドアスイッチ17がONになる)、あるいはイグニッションスイッチ18がOFFになると、変速機21のレンジがPレンジに切り替わる。
【0031】
またここで、上記車速=0の場合において、変速機21がPレンジにあるときにPボタン12を押すと、変速機21のレンジがNレンジに切り替わる(Pレンジから復帰する)。同様に、エンジン22始動状態においてブレーキスイッチ16がONになると(ブレーキペダルを踏み込むと)、変速機21のレンジがNレンジに切り替わる。なお、エンジン22停止状態においては、エンジン22始動時にブレーキペダルの踏み込みを要することから、ブレーキスイッチ16がONになっても変速機21のレンジが切り替わらないようになっている。
【0032】
以上説明したように、上記実施例におけるダイヤル式シフト装置は、操作パネル10上のダイヤル型のツマミ11への一回動操作毎に、変速機21のレンジを一段切り替えるべく、ツマミ11の回転位置と変速機21のレンジとの関係が浮動関係であるものである。
【0033】
この構成によれば、ツマミ11の回転位置によらずに変速機21のレンジを切り替えることで、ツマミ11を所定量以上回動させないよう注意する必要がなくなる。すなわち、変速機21のレンジ切り替え操作を容易かつ確実に行うことができる。
また、ツマミ11の回転位置と変速機21のレンジとが浮動関係にあることで、例えば車両の状態に応じて変速機21をPレンジに切り替える、あるいはPレンジから復帰させる等のレンジ切り替えを行うことが可能となる。すなわち、車両の状態に応じた変速機21のレンジ切り替え制御を行うことができる。
【0034】
また、上記ダイヤル式シフト装置においては、ツマミ11が、常に原点復帰することで、該ツマミ11の一回動操作が把握し易くなるため、変速機21のレンジ切り替え操作をより一層容易かつ確実に行うことができる。
【0035】
さらに、上記ダイヤル式シフト装置においては、ツマミ11が、その回転軸に沿う方向での移動を組み合わせた操作が可能であることで、変速機21のレンジをLレンジ、Rレンジ、及びPレンジに切り替える際の二段階操作を再現することが可能となるため、ツマミ11を変速機21の全レンジに対応した操作子として利便性を向上させることができる。
【0036】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えばツマミ11は、回転軸に沿う方向での移動(押し込み又は引き出し)ではなく、回転軸と交差する方向(例えば操作パネル10面に沿う方向)での移動(上下又は左右等への移動)を組み合わせた操作が可能なものであってもよい。
【0037】
具体的には、例えば車速=0で変速機21がNレンジにあるときに、ツマミ11を上方に移動させた状態で左回転させると(すなわち二段階操作を行うと)、変速機21のレンジがPレンジに切り替わり、変速機21がDレンジにあるときに、ツマミ11を下方に移動させた状態で右回転させると、変速機21のレンジがLレンジに切り替わるのである。
【0038】
また、ツマミ11の中央にPボタン12を配置することでこれらを一体化した構成としてもよい。
さらに、Pボタン12を無くし、例えば車速=0で変速機21がRレンジにあるときに、ツマミ11に所定の二段階操作がなされたときに、変速機21のレンジがPレンジに切り替わるようにしてもよい。
そして、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施例におけるダイヤル式シフト装置の構成図である。
【符号の説明】
【0040】
10 操作パネル
11 ツマミ
21 変速機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネル上のダイヤル型のツマミへの一回動操作毎に、変速機のレンジを一段切り替えるべく、前記ツマミの回転位置と前記変速機のレンジとの関係が浮動関係であることを特徴とするダイヤル式シフト装置。
【請求項2】
前記ツマミが、常に原点復帰することを特徴とする請求項1に記載のダイヤル式シフト装置。
【請求項3】
前記ツマミが、その回転軸に沿う方向での移動を組み合わせた操作が可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダイヤル式シフト装置。
【請求項4】
前記ツマミが、その回転軸と交差する方向での移動を組み合わせた操作が可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダイヤル式シフト装置。


【図1】
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