説明

ダイレクトドライブモータ

【課題】剛性の向上、及び固定時の利便性の向上を図ることを可能とするダイレクトドライブモータを提供する。
【解決手段】静止状態に維持される固定子(ステータ)2と、当該固定子に対して回転可能に配置された回転子(ロータ)4と、前記固定子を固定して支持部材36に取り付けられるベース部材(ハウジングベース)6と、前記回転子に固定されて当該回転子とともに回転可能な出力軸(モータ軸)8と、前記ベース部材と前記出力軸との間に介在されて当該出力軸を当該ベース部材に対して回転可能に支持する軸受(クロスローラ軸受)10を備えたダイレクトドライブモータであって、前記支持部材に取り付けられた状態において当該支持部材と接する一連の連続面26a,26bを、少なくとも1つ前記ベース部材に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトドライブモータに関し、特に、当該ダイレクトドライブモータの剛性の向上、及び固定時の利便性の向上を図るためのモータハウジング構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクトドライブモータ(以下、DDモータという)は、ギアやベルト、及びローラなどの伝達機構を介在させることなく、回転体に回転力をダイレクトに伝達し、当該回転体を被回転体に対して所定方向へ回転させる駆動方式(モータ負荷直結型の駆動方式)を採用した電動機であり、搭載される機械装置の用途などに応じて従来から各種のタイプが知られている(特許文献1参照)。例えば、DDモータは、回転体(回転子)と被回転体(固定子)との相対的な位置関係によってアウターロータ型とインナーロータ型とに大別することができる。
【0003】
図4(a)にはアウターロータ型DDモータの構成例が示されており、かかるDDモータ50は、円筒状を成す出力軸(以下、モータ軸という)52と、その軸心部を囲んで配設された環状のベース部材(同、ハウジングベースという)54を備えている。この場合、モータ軸52とハウジングベース54は、転がり軸受(一例として、クロスローラ軸受)56を介して連結されており、モータ軸52がハウジングベース54に対して相対回転することができるように構成されている。
また、DDモータ50は、モータ軸52の回転角度をフィードバック制御する駆動制御系(例えば、割出制御機構)58を備えている。図4(a)に示す構成においては、割出制御機構58として、ハウジングベース54に固定された円筒状を成す固定子(以下、ステータという)60と、当該ステータ60の内周に対向するようにモータ軸52に固定された回転子(同、ロータという)62と、当該ロータ62の回転角度を検出するためのレゾルバ64とが設けられている。
【0004】
ステータ60は、ハウジングベース54の外周縁からその全周に亘ってモータ軸52の延出方向(図4(a)の上方向)へ立ち上がるように突設された円筒部(以下、ステータ取付部という)54aに固定(一例として、締結固定)されている。また、ステータ60は、配線(リード線)64によってコネクタ66と結線されており、当該配線64は、ハウジングベース54に穿孔された貫通孔54hを通して一端側がステータ60(具体的には、ステータ60に巻回されたコイル60c)に接続され、他端側がコネクタ66に接続されている。なお、コネクタ66は、例えば図示しない電源装置(例えば、商用電源など)に接続されており、当該電源装置からの電力を配線64を介してステータ60に対して供給している。
【0005】
ハウジングベース54には、コネクタ66を配設するとともに、配線64をコネクタ66を介してDDモータ50の外部へ引き出すための配線引出部70が設けられている。この場合、配線引出部70は、対向する壁部70a,70bが天部70cを介して連続される構造を成しており、ステータ取付部54aの所定部位(ハウジングベース54の貫通孔54hと近接する部位)を切り欠き、その周縁から拡径方向へ突設されている。その際、図4(b)に示すように、壁部70a,70bが所定の位相差で略放射状に平行を成して位置付けられるとともに、天部70cがこれらの壁部70a,70bの端部(モータ軸52の延出方向の端部)にそれぞれ連続して位置付けられている。これにより、配線引出部70は、壁部70a,70bと天部70cで囲まれた空間の当該天部70cの反対側が開放状態となるとともに、当該空間が貫通孔54hと連通する構造体(いわゆる樋のような構造体)となっている。
【0006】
そして、かかるDDモータ50を機械装置に搭載する場合、当該DDモータ50は、当該機械装置に設けられた支持部材に対して水平置き、あるいは垂直置きされる場合のいずれにおいても、ハウジングベース54の取付面54sを当該支持部材の平面S(図4(b))と接触させるようにボルトなどを用いて固定される。その際、配線引出部70は、図4(b)に示すように壁部70a,70bが平面Sに接するのに対し、天部70cが平面Sと対向する(すなわち、接することがない)ように位置付けられ、これにより、当該平面S、配線引出部70の壁部70a,70b及び天部70cで囲まれた領域に、ハウジングベース54の貫通孔54hと連通し、DDモータ50の外部に露出される開放空間70sが形成されている。
【特許文献1】特開2006−094595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような構成を成すDDモータ50においては、ステータ60のコイル60cに接続された配線64は、ハウジングベース54の貫通孔54hを通して開放空間70sに配設されたコネクタ66まで引き出される。その際、図4(a)に示すように、配線64は、ハウジングベース54の取付面54sとは反対側から当該取付面54s側へ貫通孔54hを通し、配線引出部70の開放側へ引き出されている。
【0008】
このため、配線64のコイル60cへの接続は、ステータ60のハウジングベース54への固定後に行う必要があり、DDモータ50の周囲に他の部材が近接して配設されている場合などは、配線64をコイル60cへスムーズに接続することができない場合がある。なお、配線64をコイル60cへ接続した状態でステータ60をハウジングベース54へ固定させることも可能ではあるが、DDモータ50が大型の場合にはステータ60の重量が10kg〜20kg、あるいはそれ以上となることもあり、当該ステータ60をハウジングベース54へ固定する際に、配線64をステータ60とステータ取付部54aとの間に挟み込み、損傷させてしまう虞がある。
【0009】
また、ハウジングベース54は、貫通孔54hと開放空間70sとが連通されているため、支持部材の平面Sと接触する取付面54sが完全な環状となっておらず、一部欠落した環状を成している。したがって、ハウジングベース54、具体的にはその取付面54sは、その欠落部分の剛性が他の部分と比べて劣るため、ハウジングベース54がDDモータ50の重量や回転時の振動を受けた際、取付面54sの欠落部分を拡張させるように歪んで(撓んで)しまう場合がある。この場合、その歪み(撓み)の大きさによってはステータ取付部54aに固定されたステータ60のロータ62に対する位置が変化し、当該ロータ62を安定して回転させることができなくなってしまう虞がある。なお、上述したように大型のDDモータ50はステータ60の重量が大きいため、このような不具合を招きやすい。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、剛性の向上、及び固定時の利便性の向上を図ることを可能とするダイレクトドライブモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明に係るダイレクトドライブモータは、静止状態に維持される固定子と、当該固定子に対して回転可能に配置された回転子と、前記固定子を固定して支持部材に取り付けられるベース部材と、前記回転子に固定されて当該回転子とともに回転可能な出力軸と、前記ベース部材と前記出力軸との間に介在されて当該出力軸を当該ベース部材に対して回転可能に支持する軸受を備えている。かかるダイレクトドライブモータにおいて、前記ベース部材は、前記支持部材に取り付けられた状態において当該支持部材と接する一連の連続面を少なくとも1つ有している。
このような構成によれば、ダイレクトドライブモータの自重や回転時の振動などを連続面の全体に分散して作用(応力分散)させることができるため、かかる自重や振動などによってベース部材に歪み(撓み)が生ずることが有効に防止され、当該ベース部材、ひいてはダイレクトドライブモータの剛性を効果的に高めることができる。
【0012】
この場合、前記ベース部材は、前記出力軸と同心の環状を成しており、前記連続面は、当該ベース部材の前記支持部材への取付側の最外周縁に形成することが好ましい。
これにより、支持部材との接触面積を最大限に確保することができ、連続面による応力分散効果を高めることができる。
【0013】
また、前記固定子には、電源からの電力を供給するための配線が接続されており、前記ベース部材には、当該配線を外部へ引き出すための配線引出部が少なくとも1つ設けられている。
この場合、前記配線引出部は、1つの底部と当該底部から対向して立ち上がる2つの壁部を少なくとも備えており、これらの底部及び壁部は、当該底部を前記支持部材への取付側に位置付けて前記ベース部材から突設されている。
これにより、底部と壁部とで囲まれた領域は、当該底部の反対側がダイレクトドライブモータの外部に開放された状態となるため、固定子に接続させるための配線の引き回しを非常にスムーズに行うことができる。
【0014】
なお、前記配線引出部の底部及び壁部は、当該ベース部材の外周縁から略放射方向に沿って外側あるいは内側へ突設させればよい。
また、前記配線引出部の底部は、前記ベース部材の連続面と平行を成して当該ベース部材から突設させるとともに、当該配線引出部の壁部は、前記底部から同一方向へ同一寸法で立ち上げればよい。
これにより、ダイレクトドライブモータの使用条件や使用目的、あるいはその大きさや形状などに応じて、配線引出部の構成を任意に変更することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のダイレクトドライブモータによれば、その剛性の向上を図ることができるとともに、固定時の利便性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るダイレクトドライブモータ(以下、DDモータという)について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明に係るDDモータは、各種の機械装置に搭載される大小様々な駆動装置(回転電動機)として適用することができるが、本実施形態においては、例えば電気自動車用のホイールモータなど、比較的大型で高トルク、高出力のDDモータを想定する。
【0017】
図1(a)、及び図2(a),(b)には、本実施形態に係るDDモータが示されており、当該DDモータは、静止状態に維持される固定子(以下、ステータという)2と、当該ステータ2に対して回転可能に配置された回転子(同、ロータという)4と、ステータ2を固定して支持部材(例えば、機械装置側の基台など)36に取り付けられるベース部材(以下、ハウジングベースという)6と、ロータ4に固定されて当該ロータ4とともに回転可能な出力軸(同、モータ軸という)8と、ハウジングベース6とモータ軸8との間に介在されてモータ軸8をハウジングベース6に対して回転可能に支持する軸受10を備えている。
【0018】
この場合、ハウジングベース6、モータ軸8、ロータ4、そしてステータ2は、いずれも環状構造を成しており、これら4つの部材が同心状に、モータ軸8を最も内側としてロータ4、ステータ2の順に軸心Cに対して外側へ配置されているとともに、当該モータ軸8、ロータ4及びステータ2がハウジングベース6の上に配置されている。
【0019】
ハウジングベース6は、略円板状のベース部6aと、軸心C部分が貫通し、当該軸心Cを囲むようにベース部6aから凸状に突出した軸心部6bを備えた構造体となっている。
また、ハウジングベース6(具体的には、ベース部6a)の外周縁には、その全周に亘って軸心C方向に沿って、ハウジングベース6の支持部材36への取付側とは反対側(図1(a)の上側)へ突出された円筒部(以下、ステータ取付部という)6cが設けられており、当該ステータ取付部6cにステータ2が締結部材(一例として、ボルト)B1によって締結されている。これにより、ステータ2がハウジングベース6に対して位置決め固定されている。
【0020】
ステータ2は、複数の歯列(図示しない)が形成されて熊手状に内側に突出した磁極を円周方向に等間隔で複数個有する電磁石を備えて円筒状に構成されており、隣接する磁極相互ではその歯列が所定ピッチだけ位相をずらして配設されている。なお、各電磁石には、ボビン40に素線(図示しない)が多重に巻回されて成るステータコイル(図示しない)が締結部材(一例として、ボルト)B2によって締結固定されている。この場合、ステータ2には、電源からの電力を供給するための配線(図示しない)が接続されており、当該配線を通じて前記ステータコイルに対して電力が供給されるようになっている。
【0021】
これに対し、ロータ4は、その外径寸法がステータ2の内径寸法よりも小さな円筒状を成し、その外周部に鉄心の歯(図示しない)が均一に突設されており、当該鉄心の歯は前記ステータ2の電磁石の磁極に形成された歯列とは異なるピッチで形成されている。
そして、これらのステータ2とロータ4とは、上述したようにロータ4がステータ2よりも軸心Cに対して内側に配置されているとともに、その際、ステータ2の電磁石とロータ4の歯が僅かなギャップを隔てて対向するように位置付けられている。
【0022】
なお、ロータ4は、内外周面に異形段部を有する円筒状のモータ軸8の外周部に一体的に固定されており、そのモータ軸8の内周部に嵌着された軸受10を介して回転自在にハウジングベース6の軸心部6bに支持されている。この場合、ロータ4は、モータ軸8の外周段部に圧入されて締結部材(一例として、ボルト)B3で締結固定され、軸心Cに対してステータ2の内側に周面を対向させて配設されている。
【0023】
また、軸受10は、その外輪10aがモータ軸8の内周段部に嵌め込まれ、当該内周段部を成す円周面と軸心C方向の平面の2つの面に接触した状態で、環状の固定部材12を介して締結部材(一例として、ボルト)B4で締結固定されている。さらに、軸受10の内輪10bは、ハウジングベース6の軸心部6bの異形段部の中段に嵌め込まれ、当該異形段部を成す円周面と軸心C方向の平面の2つの面に接触した状態で、環状の固定部材14を介して締結部材(一例として、ボルト)B5で締結固定されている。これにより、モータ軸8及びロータ4が軸受10によって回転自在に支持され、これらをハウジングベース6及びステータ2に対して回転させることができる。
【0024】
なお、本実施形態においては、図1(a)に示すように、転動体をクロスローラ10cとしたクロスローラ軸受が軸受10として適用されているが、軸受構成はこれに限定されず、例えば転動体を玉やころ(円筒ころ、円錐ころ、球面ころなど)とした玉軸受やころ軸受を適用してもよい。その際、これらの転動体は、環状を成す保持器のポケットに1つずつ所定間隔(一例として、等間隔)で配し、当該ポケット内で回転自在に保持された状態で軌道面間に組み込んでもよい。これにより、各転動体は所定間隔を保った状態で、その転動面が相互に接触することなく、前記軌道面間を転動することができ、結果として、当該各転動体が相互に接触して摩擦が生じることによる回転抵抗の増大や、焼付きなどを防止することができる。保持器としては、転動体の種類に応じて任意のタイプを適用すればよく、例えば転動体を玉とした場合、波型の合わせタイプや冠型などのタイプを適用することができ、転動体を各種のころとした場合、もみ抜き型、くし型及びかご型などのタイプを適用することができる。
【0025】
また、本実施形態において、DDモータには、ロータ4ひいてはモータ軸8を高精度に位置決めするため、高分解能の回転検出器であるレゾルバ16が設けられている。
この場合、レゾルバ16は、静止状態に維持される固定子(以下、レゾルバステータという)18a,18bと、レゾルバステータ18a,18bと僅かなギャップを隔てて対向配置され、当該レゾルバステータ18a,18bに対して回転可能な回転子(以下、レゾルバロータという)20a,20bを備えており、軸受10の上方のモータ軸8内側空間Aに配設されている。
【0026】
かかるレゾルバステータ18a,18bは、複数のステータポール28a,28bが円周方向に等間隔に形成された環状の成層鉄心を有し、各ステータポール28a,28bにレゾルバコイル30a,30bが巻回された構造を成しており、ハウジングベース6の軸心部6bの上部に環状の固定部材22を介して締結部材(一例として、ボルト)B6で締結固定されている。
これに対し、レゾルバロータ20a,20bは、中空環状の成層鉄心により構成されており、モータ軸8の内面段部に締結部材(一例として、ボルト)B7で締結固定されている。
なお、レゾルバ16の配設位置は、ロータ4(モータ軸8)の回転状態を検出することが可能であれば特に限定されず、モータ軸8やハウジングベース6の形状などに応じて任意の位置へ配設することができる。例えば、レゾルバ16を軸受10の下方に配設した構成などとしてもよい。
【0027】
このような構成によれば、ロータ4が回転すると、これとともにモータ軸8及びレゾルバロータ20a,20bも回転し、レゾルバステータ18a,18bとの間のリラクタンスを連続的に変化させる。かかるリラクタンスの変化をレゾルバステータ18a,18bにより検出することで、レゾルバロータ20a,20b(すなわち、モータ軸8やロータ4)の位置や角度などを検知することができる。
【0028】
そして、レゾルバ制御回路(図示しない)によって、レゾルバステータ18a,18bが検出したリラクタンスの変化を電気信号(デジタル信号)に変換するとともに、当該電気信号に基づいて、単位時間当たりのレゾルバロータ20a,20bの位置や角度などの変動量を演算処理することで、レゾルバロータ20a,20bが固定されたモータ軸8の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測することが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態においては、レゾルバ16が複数(一例として、2つ)構成となっており、一方のレゾルバ16(一例として、レゾルバステータ18aとレゾルバロータ20a)には、軸心Cに対して偏心させた内周を有する円環状のレゾルバロータ20aが備えられている。このため、ロータ4の回転に伴ってレゾルバロータ20aが回転すると、レゾルバステータ18aとの間の距離を円周方向に連続して変化させ、両者の間のリラクタンスがレゾルバロータ20aの位置により連続的に変化する。その際、かかるレゾルバ16(レゾルバステータ18aとレゾルバロータ20a)は、レゾルバロータ20aの1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分が1周期となる単極レゾルバ信号を出力しており、いわゆるABS(Absolute)型の単極レゾルバとして構成されている。
【0030】
これに対し、他方のレゾルバ16(一例として、レゾルバステータ18bとレゾルバロータ20b)は、突極状の複数の歯が円周方向に等間隔で形成されたレゾルバロータ20bを備えており、当該レゾルバロータ20bの1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分が多周期となる多極レゾルバ信号を出力しており、いわゆるINC(Increment)型の多極レゾルバとして構成されている。
このように、レゾルバ16をABS型とINC型の複数構成とすることで、モータ軸8の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)をより高精度に計測することを可能としている。
【0031】
なお、ステータ2とロータ4、軸受10、及びレゾルバ16の相対的な位置関係は、図1(a)に示す関係には限定されず、DDモータの大きさや形状などに応じて任意に設定することができる。例えば、ステータ2とロータ4、軸受10、及びレゾルバ16を軸心C方向に沿って一直線上(例えば、上下や左右など)に並べて配設してもよい。
【0032】
このような構成を成すDDモータは、ハウジングベース6が支持部材36に取り付けられることで、当該支持部材36に対して位置決め固定される。この場合、図1(b)、及び図2(a),(b)に示すように、ハウジングベース6には、ステータ取付部6cの外周縁から拡径方向へ、貫通孔24hが穿孔された複数(一例として、4つ)の取付片24が所定間隔(一例として、略等間隔)で突設されている。そして、各貫通孔24hを支持部材36(図1(a))に穿孔された締結穴(図示しない)と連通させるようにハウジングベース6を位置付け、当該貫通孔24hから締結部材(一例として、ボルト(図示しない))を挿通して支持部材36に対して締結することで、ハウジングベース6を当該支持部材36に取り付けることができる。これにより、DDモータを支持部材36に対して位置決め固定することができる。
【0033】
なお、上述した本実施形態においては、DDモータの構成部材(ステータ2、ロータ4、ハウジングベース6、レゾルバ16など)の固定を締結部材(一例として、ボルト)による締結として説明したが、その固定方法は締結に限定されず、例えば、接着や嵌合、あるいは加締めなどであってもよいし、複数の方法を任意に組み合わせて固定してもよい。
【0034】
本実施形態において、ハウジングベース6は、支持部材36に取り付けられた状態において、当該支持部材36の取付面36sと接する一連の連続面を少なくとも1つ有している。図1(a),(b)、及び図2(a)には、ハウジングベース6のベース部6aの支持部材36への取付側(図1(a)の下側)に、軸心Cと同心を成す2つの環状の条部を連続面26a,26bとして形成した構成が例示されている。この場合、連続面26aは、ベース部6aの最外周縁にその近接部位よりも支持部材36への取付側へ僅かに凸出するように形成されているのに対し、連続面26bは、ベース部6aの内外径寸法の略中間部位に、その近接部位よりも支持部材36への取付側へ連続面26aと同一寸法で凸出するように形成されている。
なお、連続面26a,26bの凸出寸法は、ハウジングベース6が支持部材36に取り付けられた状態において、当該連続面26a,26bがいずれも支持部材36の取付面36sと接することが可能となるように設定すればよい。このため、取付面36sが平坦面でない場合などは、連続面26a,26bの凸出寸法は同一寸法でなくともよい。
【0035】
このようにハウジングベース6に連続面26a,26bを形成することで、当該ハウジングベース6が支持部材36に取り付けられ、DDモータを当該支持部材36に位置決め固定した状態においては、これらの連続面26a,26bが当該支持部材36の取付面36sと接触する。ここで、DDモータの自重や回転時の振動などは、ハウジングベース6から連続面26a,26bを介して支持部材36の取付面36sに作用されるとともに、当該取付面36sからの応力として連続面26a,26bに対しても作用する。その際、かかる応力は、連続面26a,26bが一連の環状を成しているため、当該連続面26a,26bの特定部位に偏ることなく、その全体に対して均等に作用される。
【0036】
すなわち、DDモータの自重や回転時の振動などを連続面26a,26bの全体に分散して作用(応力分散)させることができるため、これらによってハウジングベース6に歪み(撓み)が生ずることが有効に防止され、当該ハウジングベース6、ひいてはDDモータの剛性を効果的に高めることができる。したがって、ステータ取付部6cに固定されたステータ2のロータ4に対する位置を常に安定させることができ、ロータ4(端的には、DDモータ)を長期に亘って安定して回転させ続けることが可能となる。このような効果は、ステータ2の重量がより大きくなる大型のDDモータであるほど高まる。
【0037】
なお、かかる連続面の数は、図1(a),(b)、及び図2(a)に示すような2つには限定されず、1つのみであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、連続面の形成位置は、ハウジングベース6を支持部材36に取り付けた状態で当該支持部材36の取付面36sと接触可能な位置であれば、特に限定されない。例えば、ハウジングベース6のベース部6aの最外周縁や最内周縁、あるいはこれらの中間部位など、任意の部位に形成することができる。
【0038】
ただし、上述した応力分散効果を考慮すれば、支持部材36の取付面36sとの接触面積をできるだけ大きく確保するため、少なくともベース部6aの最外周縁には連続面を形成することが好ましい。したがって、連続面を1つのみ形成する場合には、当該連続面をハウジングベース6のベース部6aの最外周縁に形成すればよい。なお、連続面をハウジングベース6のベース部6aの最外周縁よりも内側に形成する場合には、当該連続面の径寸法を軸受10の外径寸法(外輪10aの外径寸法)以上に設定することが好ましい。
【0039】
また、連続面の形態(大きさや形状など)は、当該連続面が中途で途切れることなく、連続している限り特に限定されず、例えば図1(b)、及び図2(a)に示す連続面26aのように取付片24の領域まで拡張されていてもよいし、連続面26bのようにその一部が他の部位より縮径されていてもよい。
さらに、複数の連続面を形成し、これらの連続面で囲まれた領域に複数の放射状の条部(リブ)を形成した構成としてもよい。この場合、リブは、連続面と連続させてもよいし、連続させなくともよい。また、リブを連続面とともに支持部材36の取付面36sと接触させてもよいし、接触させなくともよい。このように、連続面に加えてリブを形成することで、上述した応力分散効果が高められ、ハウジングベース6、並びにDDモータの剛性をさらに高めることができる。
【0040】
また、本実施形態において、ハウジングベース6には、ステータ2(具体的には、ステータコイル)に対して電源(例えば、商用電源やバッテリー装置など)からの電力を供給するために接続された配線を、DDモータの外部へ引き出すための配線引出部が少なくとも1つ設けられている。
この場合、配線引出部32は、図1(a)〜(d)に示すように、1つの底部32aと当該底部32aから対向して立ち上がる2つの壁部32b,32cを少なくとも備えており、これらの底部32a及び壁部32b,32cは、当該底部32aを支持部材36への取付側(同図(a)の下側)に位置付けてハウジングベース6から突設されている。その際、底部32a及び壁部32b,32cの肉厚は、ハウジングベース6の他の部位(ベース部6aやステータ取付部6cなど)の肉厚と略同一あるいはそれ以上に設定されている。
【0041】
配線引出部32をこのような構成とすることで、ハウジングベース6を支持部材36に取り付け、当該支持部材36に対して位置決め固定した場合、配線引出部32は、その底部32aが支持部材36への取付側(図1(a)の下側)に位置付けられるため、当該底部32aと壁部32b,32cとで囲まれた領域は、その上方がDDモータの外部に開放された状態となる。したがって、ステータ2に接続させるための配線の引き回しを非常にスムーズに行うことができる。なお、配線引出部32の開放領域(底部32aと壁部32b,32cとで囲まれた領域)には、ステータ2に接続された配線を電源に接続させるためのコネクタ38を配設することができ、この場合には、当該コネクタ38を介してステータ2に接続された配線を電源まで引き出すことができる。
【0042】
そのため、DDモータを支持部材36に対して位置決め固定した後であっても、ステータ2への配線の接続を容易に行うことができるとともに、接続させた配線をDDモータの外部へ容易に引き出すことができる。すなわち、ステータ2へ配線を接続させる前にDDモータを支持部材36に対して固定することができるため、予めステータ2へ配線を接続させた状態でかかる固定作業を行う場合のように、当該配線の引き回しを考慮する必要がない。このため、DDモータの固定作業を非常にスムーズに行うことが可能となる。
また、ステータ2へ配線を接続させた後にDDモータを支持部材36に対して固定する場合であっても、配線の引き回しを非常にスムーズに行うことができるため、かかるDDモータの固定作業が容易となり、配線の損傷などを防止することができる。
【0043】
なお、配線引出部32は、底部32a及び壁部32b,32cの肉厚をハウジングベース6の他の部位(ベース部6aやステータ取付部6cなど)の肉厚以上に設定しているため、当該底部32aと壁部32b,32cとで囲まれた領域の上方をDDモータの外部に開放された状態とした場合であっても、ハウジングベース6の剛性を充分に確保することができる。
また、ハウジングベース6には、配線引出部32の底部32aと壁部32b,32cとで囲まれた領域と連通する軸心C方向への貫通孔6hがベース部6aに穿孔されており、ステータ2へ接続される配線は、当該貫通孔6hを通して、配線引出部32からDDモータの外部へ引き出される。本実施形態においては、上述したようにハウジングベース6には連続面26a,26bが形成されており、当該連続面26a,26bによりハウジングベース6(ベース部6a)の剛性を高めることができるため、かかる貫通孔6hを穿孔したとしてもハウジングベース6全体の剛性を十分確保することができる。
さらに、ステータ2への配線接続の終了後は、底部32aと壁部32b,32cとで囲まれた領域の上方を板状の蓋材34(図1(a),図2(b))で閉塞させてもよい。
【0044】
ここで、配線引出部32の構成は、DDモータの使用条件や使用目的、あるいはDDモータの大きさや形状などに応じて任意の構成とすることができる。
例えば、図1(a)〜(d)には、底部32a及び壁部32b,32cをハウジングベース6(具体的には、ステータ取付部6c)の外周縁から略放射方向に沿って外側(拡径方向)へ突設させた配線引出部32の構成が一例として示されている。その際、配線引出部32の底部32aは、ハウジングベース6の連続面26a,26bと平行を成して当該ハウジングベース6のステータ取付部6cから突設されているとともに、当該配線引出部32の壁部32b,32cは、底部32aから同一方向(支持部材36への取付方向とは反対の方向(図1(a)の上方向))へ同一寸法(一例として、ステータ取付部6cの立上寸法と略同寸)で立ち上げられている。
【0045】
図1(a)〜(d)に示す構成においては、配線引出部32の底部32a及び壁部32b,32cをハウジングベース6(ステータ取付部6c)の外周縁から略放射方向に沿って外側(拡径方向)へ突設させているが、配線引出部32は、底部及び壁部をハウジングベース6(ステータ取付部6c)の外周縁から略放射方向に沿って内側(縮径方向)へ突設させた構成としてもよい。この場合、配線引出部32の底部をハウジングベース6(具体的には、ベース部6a)とは別体を成して突設させてもよいし、ベース部6aを配線引出部32の底部と兼用させる構成としてもよい。ベース部6aを配線引出部32の底部との兼用構成とした場合、配線引出部32は、壁部のみをハウジングベース6(ステータ取付部6c)の外周縁から略放射方向に沿って内側(縮径方向)へ突設させればよい。
【0046】
また、配線引出部32は、図1(c)に示すように壁部32b,32cが底部32aの周方向端部に連続するとともに、当該端部からいずれも略直角を成してステータ取付部6cの立上寸法と略同寸で立ち上げられた構成としてもよいし、図3(a)に示すように壁部32b,32cをステータ取付部6cの立上寸法よりも大寸で立ち上げた構成としてもよい。
そして、配線引出部32は、図1(d)に示すように壁部32b,32cが平行を成して底部32aから立ち上げられた構成としてもよいし、図3(b)に示すように壁部32b,32cを徐々に離間するように立ち上げた構成、あるいは徐々に近接するように立ち上げた構成(図示しない)としてもよい。
【0047】
この他にも、配線引出部32は、図1(a),(b)に示すようにハウジングベース6に対して1つだけ設けた構成としてもよいし、2つ以上設けた構成としてもよい。また、配線引出部32は、図1(c),(d)に示すように底部32a及び壁部32b,32cを平坦状としてもよいし、中途に1つあるいは複数の段差を有する段差状や、湾曲状を成していてもよい。さらに、1つの配線引出部を2つ以上の底部や、3つ以上の壁部で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイレクトドライブモータの構成を示す図であって、(a)は、全体構成を示す縦断面図、(b)は、ハウジングベースの全体構成を支持部材への取付側から示す斜視図、(c)は、配線引出部を同図(b)の矢印1cの方向から示す概略図、(d)は、配線引出部を同図(b)の矢印1dの方向から示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態に係るダイレクトドライブモータの構成を示す図であって、(a)は、全体構成を支持部材への取付側から示す斜視図、(b)は、全体構成を支持部材への反取付側から示す斜視図。
【図3】配線引出部の変形例を示す図であって、(a)は、壁部をステータ取付部の立上寸法よりも大寸で立ち上げた構成を示す概略図、(b)は、壁部を徐々に離間するように立ち上げた構成を示す概略図。
【図4】従来のダイレクトドライブモータの構成を示す図であって、(a)は、全体構成を示す縦断面図、(b)は、配線引出部の構成を支持部材への反取付側から示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0049】
2 ステータ(固定子)
4 ロータ(回転子)
6 ハウジングベース(ベース部材)
8 モータ軸(出力軸)
10 軸受(クロスローラ軸受)
26a,26b 連続面
36 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止状態に維持される固定子と、当該固定子に対して回転可能に配置された回転子と、前記固定子を固定して支持部材に取り付けられるベース部材と、前記回転子に固定されて当該回転子とともに回転可能な出力軸と、前記ベース部材と前記出力軸との間に介在されて当該出力軸を当該ベース部材に対して回転可能に支持する軸受を備えたダイレクトドライブモータであって、
前記ベース部材は、前記支持部材に取り付けられた状態において当該支持部材と接する一連の連続面を少なくとも1つ有していることを特徴とするダイレクトドライブモータ。
【請求項2】
前記ベース部材は、前記出力軸と同心の環状を成しており、前記連続面は、当該ベース部材の前記支持部材への取付側の最外周縁に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項3】
前記固定子には、電源からの電力を供給するための配線が接続されており、前記ベース部材には、当該配線を外部へ引き出すための配線引出部が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項4】
前記配線引出部は、1つの底部と当該底部から対向して立ち上がる2つの壁部を少なくとも備えており、これらの底部及び壁部は、当該底部を前記支持部材への取付側に位置付けて前記ベース部材から突設されていることを特徴とする請求項3に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項5】
前記配線引出部の底部及び壁部は、当該ベース部材の外周縁から略放射方向に沿って外側あるいは内側へ突設されていることを特徴とする請求項4に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項6】
前記配線引出部の底部は、前記ベース部材の連続面と平行を成して当該ベース部材から突設されているとともに、当該配線引出部の壁部は、前記底部から同一方向へ同一寸法で立ち上げられていることを特徴とする請求項4又は5に記載のダイレクトドライブモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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