説明

ダウエルバー、ダウエルバーユニット、及びダウエルバーの埋設工法

【課題】ソケットと鋼棒との間の段差及びソケットと鋼棒との間の軸心のずれを解消して、コンクリート打設、固化後の雨水浸入、発錆の防止、コンクリートのクラック発生防止、荷重伝達能力の低下及び耐久性の低下を防止する。
【解決手段】構造体51の接続端面から内部にかけて埋設固定される第1の埋設ユニット2は、接続端面に外側端面を露出した状態で埋設固定され且つ軸方向全長に渡る雌螺子部4を有した円管状のソケット3とソケットに螺着される雄螺子部10aを一端に有した第1の鋼棒10と防水接着剤15とを備え、他方の構造体52、53の接続端面から内部にかけて埋設固定される第2の埋設ユニット20は、ソケットの外側開口内に一端の雄螺子部を螺着された状態で他方の構造体の内部に埋設固定される第2の鋼棒21と、防水接着剤22とを備え、ソケットの外周には、内側端部から軸方向中央部に向けて外径が漸増するテーパー部5が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数のコンクリート舗装版の側端面同士を隣接して配置することによって路盤上に構築される空港舗装や道路舗装等の現場打ちコンクリート舗装において、温度変化による膨張収縮や外部応力等によってコンクリート舗装版間の位置関係が相対的に変位することにより段差が発生する不具合を解消するために使用される荷重伝達手段としてのダウエルバーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
空港の滑走路、誘導路及びエプロン、道路等のコンクリート構造物、或は建築物等のコンクリートやアスファルト製の大型構造物は、所要形状を有した舗装版等の構造体を現場打ちコンクリート舗装によって、路盤、地盤上に複数連設することにより構築される。このような複数の大型構造体は、目地を介して隣接配置することにより、構造体が受ける外的要因、例えば温度変化による膨張収縮、地盤等の変動等に対応することが可能となる。
例えば空港の滑走路を構築する際には、例えば幅7.5m、長さ100m、所定厚(例えば、35mm)を有したCRC(連続鉄筋コンクリート)、NC(無筋コンクリート)舗装版を現場の基層部(路盤等)上に複数個隣接して配列する作業が行われる。即ち、現場の基層部上に矩形の型枠を配置した上で、型枠内にコンクリート等の材料を打設した後で硬化させる舗装版製造工程を舗装版毎に順次実施することによって複数の舗装版を隣接配置した大型構造物(滑走路)を完成する。
これらの大型構造物を構成する個々の舗装版等の構造体は、温度変化等による膨張収縮や、航空機、車両等の重量物の通過により加わる外部応力等によって、隣接し合う構造体の接続端面間に位置ずれ、変位が発生し易い。接続端面間に発生する位置ずれ等が上下方向に発生すると、構造体間の接続部上部に縦方向への段差が発生し、舗装版上を通過する航空機、車両等によって段差部が破損し易くなったり、段差の存在に起因した事故等が発生する恐れがある。
【0003】
このため、従来から舗装版と舗装版との継ぎ目には、荷重伝達の機能を備えた金属棒材を両接続端面と直交するように貫通させて各舗装版内に埋設するようにしている。このような金属棒材はダウエルバーと称され、隣接し合う2つの舗装版の接続端面を貫通するように両舗装版に跨って埋設固定されることにより、2つの舗装版の接続端面が縦方向に相対的に変位しようとしたときに、一方の相対的な変位により発生する荷重をダウエルバーを介して他方へ伝達することにより、両舗装版を同一方向へ等距離だけ縦方向変位させるようにしている。ダウエルバーは、接合面の横方向に沿って所定の配置で複数本配設される。
また、従来のダウエルバーとしては、上記の如き単なる一本の金属棒から成るタイプだけではなく、施工時の利便などを考慮して、例えば2本の金属棒の各一端部に雌ねじ部と雄ねじ部等から成る連結部を夫々設けて連結時に一本の金属棒となるようにしたタイプ等々、種々提案されている(例えば、特許文献1乃至4)。
【0004】
図9はこのような従来のダウエルバー(ソケット付きダウエルバー)をコンクリート構造体内に埋設した状態を示す断面図であり、図10(a)及び(b)はダウエルバーの構成説明図であり、図11は従来のダウエルバーの欠点を説明するための横断面図である。
ダウエルバー100は、路盤120上に隣接して設置され且つ接続端面121a、122a、123a同士が相対的に変位するコンクリート構造体121、122、123間の荷重伝達手段であり、一方の構造体121の接続端面121aから内部にかけて水平に埋設固定される第1の埋設ユニット101と、他方の構造体122、123の各接続端面122a、123aから内部にかけて水平に埋設固定される第2の埋設ユニット110と、を有する。各構造体は、平面形状が矩形の図示しない型枠内にコンクリートを打設し硬化させることにより形成される。
第1の埋設ユニット101は、一方の構造体の接続端面121aに露出した状態で埋設固定され且つ内面に軸方向に延びる雌螺子部103を有した円管状のソケット102と、ソケットの一端開口102a内に一端の雄螺子部105aを螺着された状態で溶着され且つ一方の構造体121内部に埋設固定される第1の鋼棒105と、を備えている。
第2の埋設ユニット110は、ソケット102の他端開口102bに一端の雄螺子部115aを螺着された状態で他方の構造体122、123の各接続端面122a、123aから夫々内部にかけて埋設固定される第2の鋼棒115と、を備えている。
【0005】
具体的には、ソケット102の雌螺子部103のネジピッチと、第1及び第2の鋼棒の雄螺子部105a、115aのネジピッチは鋼棒の径が38mmの場合には4.5mmであり、ネジ山の高さは約3.5mmである。また、ソケット102の他端側内周面の約9mmの範囲102cは、雌螺子が形成されていない平坦面となっており、第2の鋼棒115の雄螺子部115aを螺着した際に、平坦面102cと第2の鋼棒115の雄螺子部115a外周との間に1mm程度の隙間が生じている。このため、各構造体121、122、123の接続端面間(目地部分)から雨水等が浸入した場合に、ソケット端部の平坦面102cに雨水等が滞水するばかりでなく、ソケット内部に雨水等が浸透し易くなり、経時的に鋼棒やソケットに腐食が生じ、耐久性を著しく低下させる原因となる。特に、従来のソケットの雌螺子部と各鋼棒の雄螺子部のネジピッチが大きいことに起因して、ソケットの雌螺子部と各鋼棒の雄螺子部との間に大きな隙間が生じているため、雨水がソケット内全体に浸透し、腐食を助長する結果となる。
なお、図9、図11中の符号130は複数本の鉄骨を組み付けて溶着することにより形成したチェアーであり、路盤120上に設置したチェアー130上に第1の埋設ユニット101を水平に支持し、第1の埋設ユニット101のソケット102の外側端面を型枠の側板135の内側面に密着させた状態でコンクリートを打設し固化させることにより一方の構造体121が完成する。型枠を除去すると、構造体の接続端面121aにはソケットの他端面が露出した状態となっている。
型枠を除去した後、第2の埋設ユニット110を構成する第2の鋼棒115の雄螺子部115aをソケットの他端開口102b内に螺着してから、別途設置した他の型枠内に他の構造体122、123を構成するコンクリートを打設し、一方の構造体121の接続端面121aと隣接させる。
【0006】
しかし、ソケット102の一端開口102a内に第1の鋼棒105を螺着してからソケットと第1の鋼棒との間を全周に渡って溶接して連結しているため、周方向各部における溶接量のバラツキの影響によって、ソケットの軸心と第1の鋼棒の軸心が一致しない状態となることが多々ある(図11)。ソケットと第1の鋼棒の軸心がずれた偏心構造の第1の埋設ユニット101をチェアー130上にセットした際には、図示したようにソケット端面が型枠の側板135の内側面と密着し難くなる。この状態でコンクリートを型枠内に打設し固化させると、ソケットの外側面とコンクリート構造体の接続端面121aとが面一にならないため、接続端面121aと対向するように他の構造体122、123を隣接配置した場合に、各構造体の接続端面間に隙間が形成され、ソケット内へ雨水が帯水、浸透し易くなる。また、構造体の接続端面と第1の埋設ユニットとが直交していないことにより、荷重伝達能力の低下をもたらす。
特に、従来のソケット102は、鋼棒を切削によって管体状に加工した上で内面に雌螺子部を形成することにより製造されるか、或いは金型を用いた鋳物として製造されていたため、寸法精度が安定せず、鋼棒を螺着、溶着したときの軸心の不一致を助長する要因となっている。
【0007】
また、ソケット102と第1の鋼棒105の接続部に8.5mm程度の段差106があり、コンクリート内においてこの段差部に応力集中する構造となっている。このため、経時的に段差部106からコンクリートにクラックC(図9)が形成され易くなり、構造体の破壊、劣化を早める原因となる。即ち、構造体に対して大きな荷重が作用した場合や構造体が収縮・膨張した場合に、応力集中(コンクリート断面に対する鋼棒の断面積が極度に変化することによる応力集中)が生じ、構造体を損傷させる可能性が大きい。特に、構造体の厚みが小さい場合や、路盤の劣化・エロージョンが生じた場合にはこれが顕著となり、コンクリート構造体のひび割れの原因ともなる。
また、第1の埋設ユニット101の設置に際しては、チェアー130を用いるが、チェアーの鉄筋量が比較的多いため、コンクリート構造体にひび割れを誘発させる原因となる。また、チェアーは鋼材を溶接によって結合することにより製造されるため、寸法精度が低く、チェアー上に設置されるダウエルバーの設置精度も悪くなる。また、重量物であるチェアーを現場に搬入し、設置する手間は作業員の労苦を増大させる原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−182008公報
【特許文献2】特開平10−195810号公報
【特許文献3】特許第3160839号
【特許文献4】特開2001−159103公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように従来のダウエルバーにあっては、ソケットの雌螺子部103及び第1の鋼棒の雄螺子部115aのネジピッチ、ネジ山の高さが大きく、雌螺子部と雄螺子部間のクリアランスが大きいため、ソケットの他端開口102bに第1の鋼棒の雄螺子部を螺着した際に螺子山間に隙間が生じることとなる。この場合、車両や航空機の荷重が作用した際に、荷重がダイレクトにダウエルバーに伝達されず、ある程度の変位が生じた後に伝達されることとなり、構造体に過度の荷重(応力)が作用する可能性がある。また、構造体内に埋設されるソケットと鋼棒との間に大きな段差があるため、コンクリートにクラックが形成され易くなる。また、ソケット内に鋼棒を螺着してから溶接によって両者を固定していたため、溶接時にソケットと鋼棒の軸心ずれが発生し、この軸ずれによる変形が雨水浸入(発錆)や荷重伝達能力の低下、耐久性の低下を招いていた。更に、コンクリート打設前の段階において、第1の埋設ユニットを型枠の側板と直交した状態で固定する際に鋼材から成るチェアーを使用するため、チェアーの搬入、設置作業時の労力が増大し、更にコンクリートの硬化時或いは硬化後におけるコンクリートの収縮時にはチェアーがクラック形成の原因となりやすい。
本発明が解決しようとする課題は、例えば飛行場の滑走路を構築するために複数のコンクリート舗装版を端面同士を対向させて路盤上に連設配置する際に、温度変化等に起因した舗装版の膨張収縮や、荷重等の外部応力等によってコンクリート舗装版間の位置関係が相対的に変位することにより、舗装版間の接続端面間に縦方向の段差が発生することを防止するソケット付きのダウエルバーにおいて、ソケットと鋼棒との間の段差、及びソケットと鋼棒との間の軸心のずれを解消して、コンクリート打設、固化後の雨水浸入、発錆の防止、コンクリートのクラック発生防止、荷重伝達能力の低下及び耐久性の低下を防止することを目的としている。また、第1の埋設ユニットを型枠に組み付ける際にチェアーを使用しないことにより、施工性を高めると共に、チェアーを原因としたクラック発生等を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係るダウエルバーは、路盤上に隣接して設置され、且つ接続端面同士が相対的に変位する2つのコンクリート構造体間の荷重伝達手段としてのダウエルバーであって、前記ダウエルバーは、一方の前記構造体の接続端面から内部にかけて水平に埋設固定される第1の埋設ユニットと、他方の前記構造体の接続端面から内部にかけて水平に埋設固定される第2の埋設ユニットと、を有し、前記第1の埋設ユニットは、前記一方の構造体の接続端面に外側端面を露出した状態で埋設固定され且つその内部に軸方向全長に渡る雌螺子部を有した円管状のソケットと、該ソケットの内側開口内に螺着される雄螺子部を一端に有した第1の鋼棒と、該ソケットと該第1の鋼棒との間隙に充填された状態で両者を接着固定する防水接着剤と、を備え、前記第2の埋設ユニットは、前記ソケットの外側開口内に一端の雄螺子部を螺着された状態で他方の構造体の内部に埋設固定される第2の鋼棒と、該ソケットと該第2の鋼棒との間隙に充填された状態で両者を接着固定する防水接着剤と、を備えており、前記ソケットの外周には、内側端部から軸方向中央部に向けて外径が漸増するテーパー部が形成されていることを特徴とする。
従来ソケットと鋼棒との接合には溶接が用いられていたが、ソケットと鋼棒との軸心不一致等の不具合をもたらすため、本発明では防水機能を有した接着剤によって両部材を水密的に固定することとした。また、ソケットと鋼棒との段差を可能な限り少なくしてクラック発生を防止するために、ソケットの内側端部から軸方向中央部に向けてテーパー部を形成した。ソケット内部の雌螺子部を軸方向全長に渡って形成したので、雨水がソケット内部に浸入する余地がなくなる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ソケットは、炭素鋼管から構成されていることを特徴とする。
ソケットを鋼棒よりも剛性の高い素材、例えば炭素鋼管から構成したので、薄肉でありながら十分な強度を確保することができる。
請求項3の発明は、請求項1、又は2において、前記第1の鋼棒の雄螺子部の先端部は、前記ソケット外周のテーパー部の軸方向中央寄りの終端部を越えた位置までソケット内に没入していることを特徴とする。
テーパー部が終端する部位を越えた位置にまで第1の鋼棒の先端部が没入しているので、ソケットの強度を第1の鋼棒によって十分に補強することが可能となる。
請求項4の発明に係るダウエルバーユニットは、請求項1乃至3に記載のダウエルバーと、前記ソケットの外側開口内に螺合する雄螺子を外周に有した略円筒状の雄螺子部材と、該雄螺子部材の外側端面の軸心に、或いは/及び、該軸心から偏心した位置に形成された螺子穴と、該螺子穴内に螺着されるボルト部材と、該ボルト部材に締結されるナットと、を備えたことを特徴とする。
ダウエルバーを型枠に固定する際に、雄螺子部材、ボルト部材及びナットを用いるので、格別の支持手段を別設する必要がなくなり、施工性が高まると共に、構造体内に埋設される金属部材の量が低減し、構造体の耐久性を向上することができる。また、雄螺子部材、ボルト部材、及びナットは、転用できるため、ダウエルバー設置の低廉化が可能となる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載のダウエルバーユニットを用いたダウエルバーの埋設工法であって、路盤上に型枠を立設する工程と、前記第1の埋設ユニットを構成する前記ソケットの外側開口内に前記雄螺子部材を螺着する工程と、前記型枠を構成する側板に設けた貫通孔と前記雄螺子部材の螺子穴が連通するように前記第1の埋設ユニットを構成するソケットの外側端面を前記側板の内側面に添設し、該側板の外側から前記貫通孔を介して前記螺子穴内に前記ボルト部材を螺着してから該側板外側面から突出した該ボルト部材にナットを螺着することにより前記第1の埋設ユニットを前記側板に対して略水平に固定する工程と、前記型枠内にコンクリートを打設して固化させることによりコンクリート構造体を構築する工程と、前記コンクリートの固化後に、前記ナットと前記ボルト部材を取り外してから前記型枠を除去する工程と、前記ソケット外側開口から前記雄螺子部材を除去する工程と、を備えたことを特徴とする。
型枠を構成する側板に貫通孔を形成できる場合には、雄螺子部材、ボルト部材、ナットを用いたこの工法を実施できる。
請求項6に係るダウエルバーユニットは、請求項1乃至3に記載のダウエルバーと、該ダウエルバーを構成する前記第1の埋設ユニットのソケットを支持する側板の内側面に一端面を固定されて突設された角柱部材と、外周面に前記ソケットの雌螺子部を螺合する雄螺子部を有し且つ軸心部に前記角柱部材を嵌合させる角柱状の中空部を有した雄螺子部材と、を備えたことを特徴とする。
角柱部材とは、三角柱、四角柱、その他の多角柱を含むものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至3に記載のダウエルバーを用いた埋設工法であって、側板の内側面に角柱部材の一端部を固定した型枠を用意する工程と、路盤上に前記型枠を立設する工程と、前記角柱部材の外面に、外周面に雄螺子部を有し且つ軸心部に角柱状の中空部を有した雄螺子部材の該中空部を嵌合させる工程と、前記第1の埋設ユニットを構成する前記ソケットの外側開口内に前記雄螺子部材を螺着させることにより前記第1の埋設ユニットを前記側板に対して略水平に固定する工程と、前記型枠内にコンクリートを打設して固化させることによりコンクリート構造体を構築する工程と、前記コンクリートの固化後に、前記角柱部材と共に前記型枠を除去する工程と、前記ソケット外側開口内から前記雄螺子部材を除去する工程と、を備えたことを特徴とする。
また、この四角部材、雄螺子部材は、繰り返し使用可能であり、他の構造体の構築作業に転用できるため、コストの低減が可能となる。
型枠を構成する側板に貫通孔を形成できない場合には、この工法を実施できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば飛行場の滑走路、道路等のコンクリート構造物を構築するために複数のコンクリート舗装版の端面同士を対向させて路盤上に連設配置する際に、温度変化等による舗装版の膨張収縮や、荷重等の外部応力等によってコンクリート舗装版間の位置関係が上下(縦)方向へ相対的に変位することを防止して、隣接し合うコンクリート舗装版の接続面(目地)に上下方向の段差が形成される不具合を解消することができる。
また、本発明に係るダウエルバーの埋設工法にあっては、従来工法とは異なり、鉄筋量の局部的な増大をもたらすチェアーを使用しないため、施工時の作業性を大幅に高めるだけでなく、コンクリート構造体の耐久性を高めることができる。
また、型枠に削孔が可能な場合と不可能な場合に分けて設置方法を変えた点も特徴的である。
また、本発明のダウエルバーは、コンクリート舗装版等のコンクリート構造体に限らず、2つの構造体間にまたがって埋設される荷重伝達手段としてのダウエルバーに使用することができる。
また、構造体のサイズに対応して、ダウエルバーのサイズ、形状、使用個数を種々変更可能であるため、あらゆるタイプの構造体に適用して、構造体間の相対変位に起因した段差の発生を防止し、構造体間に発生するストレスに起因した構造体の破損を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係るダウエルバーの外観斜視図、その分解斜視図、及びダウエルバーをコンクリート構造体に埋設した状態を示す断面図である。
【図2】(a)はダウエルバーの要部分解断面図、(b)は第1の埋設ユニットに対して第2の埋設ユニットを組み付ける手順を説明する縦断面図であり、(c)はダウエルバーをコンクリート構造体内に埋設した状態を示す要部縦断面図である。
【図3】本発明のダウエルバーユニットの構成を示す分解図である。
【図4】(a)(b)は構造体(舗装版)を新設する際の製造(設置)手順を示した図である。
【図5】第1の構造体を基層部上に完成した後で、順次他の構造体を構築する手順を説明した図である。
【図6】(a)は側板に第1の埋設ユニットを固定した状態を示す断面図であり、(b)はその分解斜視図であり、(c)は雄螺子部材の変形例の構成説明図である。
【図7】側板に対して第1の埋設ユニットを固定し、コンクリート中に埋設する工法を説明する図であり、(a)は側板に対して第1の埋設ユニットを組み付ける手順を示す分解斜視図であり、(b)は組み付け状態を示す断面図であり、(c)は雄螺子部材の外側端面図であり、(d)は他の実施形態に係る雄螺子部材の端面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るダウエルバーの組付け手順を示す分解斜視図であり、(b)は組付け状態を示す断面図であり、(c)は雄螺子部材の要部構成を示す説明図である。
【図9】従来のダウエルバー(ソケット付きダウエルバー)をコンクリート構造体内に埋設した状態を示す断面図である。
【図10】(a)及び(b)は従来のダウエルバーの構成説明図である。
【図11】従来のダウエルバーの欠点を説明するための横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係るダウエルバーの外観斜視図、その分解斜視図、及びダウエルバーをコンクリート構造体に埋設した状態を示す断面図であり、図2(a)はダウエルバーの要部分解断面図、(b)は第1の埋設ユニットに対して第2の埋設ユニットを組み付ける手順を説明する縦断面図であり、(c)はダウエルバーをコンクリート構造体内に埋設した状態を示す要部縦断面図である。
ダウエルバー1は、路盤50上に隣接して設置され、且つ接続端面51a、52a、53a同士が相対的に変位するコンクリート構造体51、52、53間の荷重伝達手段であり、一方の構造体51の接続端面51aからその内部にかけて水平に埋設固定される第1の埋設ユニット2と、他方の構造体52、53の各接続端面52a、53aからその内部にかけて水平に埋設固定される第2の埋設ユニット20と、を有する。各構造体は、平面形状が矩形の型枠内にコンクリートを打設し硬化させることにより形成される。
第1の埋設ユニット2は、一方の構造体51の接続端面51aに外側端面3aを露出した状態で埋設固定され且つその内部に軸方向全長に渡る雌螺子部4を有した円管状のソケット3と、ソケット3の内側開口3b’内に螺着される雄螺子部10aを一端に有した第1の鋼棒10と、ソケット3と第1の鋼棒10との間隙に充填された状態で両者を接着固定する防水接着剤15と、を備えている。なお、例えばソケット3の軸方向長は85mm、最大直径は48.6mmであり最小直径は42mm、最大肉厚は5.3mmであり最小肉厚は2mm、内径は38mmであり、第1の鋼棒10の直径は38mmである。これに対して従来のダウエルバーのソケットは、全長を85mmとした場合に、その直径は約55mm、内径は38mm、肉厚は約8.5mmである。
【0017】
第2の埋設ユニット20は、ソケット3の外側開口3a’内に一端の雄螺子部21aを螺着された状態で隣接する他の各構造体52、53の内部に埋設固定される第2の鋼棒21と、ソケット3と第2の鋼棒21との間隙に充填された状態で両者を接着固定する防水接着剤22と、を備えている。
ソケット3の外周には、内側端面3bから軸方向中央部に向けて外径が漸増するテーパー部5が形成されている。テーパー部5の外側端部5bは肉厚が最も薄くなっており、第1の鋼棒10の外周面との間の段差を可能な限り小さくしている(2mm程度)。テーパー部のテーパー率は、例えば1:10程度とする。例えば、ソケット3の全長を90mmとした場合、テーパー部の軸方向長は40mm程度とする。
ソケット3は、鋼棒よりも剛性が高い素材から成る管材、例えば炭素鋼管(例えば、JFEスチール株式会社製、高温配管用炭素鋼管)を所要長に切断してから、その内部に雌螺子部4を切削加工によって形成し、更にテーパー部5を切削形成したものである。このため、5.3〜2mmの薄肉でありながら十分な機械的強度を維持することができる。
また、図2に示すように第1の鋼棒10の雄螺子部10aの先端部は、ソケット外周のテーパー部5の軸方向中央寄りの終端部5aを越えた位置までソケット内に没入した状態で防水接着剤22により固定、防水されている。このため、ソケット3を第1の鋼棒10が補強する構成とすることができる。
防水接着剤22としては、例えばヘンケル社製「Loctite」を用いる。
【0018】
次に、図3は本発明のダウエルバーユニットの構成を示す分解図である。
このダウエルバーユニット30は、ダウエルバー1と、ソケット3の外側端面3a’内に螺合する雄螺子を外周に有した略円筒状の雄螺子部材31と、雄螺子部材の外側端面から軸心に沿って形成された螺子穴32と、螺子穴内に螺着されるボルト部材35と、ボルト部材35に締結されるナット36、ワッシャー(或いはスプリングワッシャー)37と、を備えている。雄螺子部材31と、ボルト部材35と、ナット36、ワッシャー(或いはスプリングワッシャー)37は、路盤50上に直立状態に配置された型枠60の側板61に対して第1の埋設ユニット2を水平に固定するための手段であり、ダウエルバーの位置決め用に従来使用されていたチェアーを不要とすることができる。
【0019】
まず、隣接配置されたコンクリート構造体(コンクリート舗装版)51、52、53の接続端面51a、52a、53a間に跨って本発明のダウエルバー1を埋設する概略手順を図4、図5に基づいて説明する。
図4(a)(b)は構造体(舗装版)を新設する際の製造(設置)手順を示しており、路盤等の基層部50上に平面形状が矩形枠体状の型枠60の裾部をボルト70にて固定した上で、隣接する他の構造体52、53との接続端面(目地)をカバーする型枠60の側板61の内側面に雄螺子部材31と、ボルト部材35と、ナット36及びワッシャー37を用いて本発明のダウエルバー1を水平に固定する。
ダウエルバー1は、型枠60内にコンクリートを打設することによって形成される構造体51の長手方向の接続端面51aに所要個数配置される。なお、この構造体の寸法は、例えば幅7.5m、長さ100m、厚さ35cm程度である。
このようにダウエルバー1を型枠60の側板61の所要位置に固定した状態で型枠60内にコンクリートを打設し固化させたあとで、ボルト部材35と、ナット36及びワッシャー37を側板61から除去し、ボルト70を型枠の裾部から除去した上で型枠60を基層部50上から撤去する。さらに、型枠60を撤去後、雄螺子部材31を除去することにより、第1の構造体(第1の舗装版)51が完成する。この状態ではダウエルバー1の一方の棒鋼(第1の鋼棒)10が構造体51内に埋設固定され、他方の棒鋼(第2の鋼棒)21は接続端面51aと直交する水平方向へ突出した状態となっている。
【0020】
次に図5は第1の構造体51を基層部50上に完成した後で、順次他の構造体52、53を構築する手順を説明しており、第1の構造体51を完成した後は、左右に隣接する第2の構造体52と第3の構造体53をそれぞれコ字状の型枠を用いて構築する。即ち、既設の第1の構造体51の両接続端面51aを型枠の側板として利用することができるため、第2、及び第3の構造体53を構築する際には残りの3面を包囲するコ字状の型枠があれば十分である。つまり、第1の構造体が存在しない側面だけを型枠により閉止した上で、コンクリートを打設することができる。また、第1の構造体51の接続端面51aからは第2の鋼棒21が水平に突設されているため、各型枠内にコンクリートを打設してから固化させることにより、ダウエルバー1の埋設が完了する。
なお、空港や道路の拡幅工事を行うために、既設の構造体に対して新たな構造体を連設配置する場合には、既設の構造体の接続端面に内部へ延びる穴を穿孔しておき、該穴にダウエルバー1の第2の埋設ユニット20を差し込み固定し埋設ユニット2を螺着した上で、既設の構造体の側面と型枠とによって形成される空間内部にコンクリートを打設し、固化させる。
【0021】
次に、図6(a)は側板に第1の埋設ユニットを固定した状態を示す断面図であり、(b)はその分解斜視図であり、(c)は雄螺子部材の変形実施形態の構成説明図である。
図4、図5、図6に基づいてダウエルバーユニット30を用いたダウエルバー1の埋設工法について説明する。
このダウエルバーの埋設工法においては、まず、図4、図5に示すように路盤50上に型枠60を立設してボルト70により固定してから、第1の埋設ユニット2を構成するソケット3の外側開口3a’内に雄螺子部材31を螺着する工程を実施する。雄螺子部材31は、ボルト部材35等との協働によって第1の埋設ユニット2を側板61に対して直交した状態で固定、支持するために機能する。雄螺子部材31はソケットの雌螺子部4に対して奥深く螺合させる。
次いで、型枠を構成する側板61に予め設けた貫通孔(第1の埋設ユニット固定孔)61aと雄螺子部材31の螺子穴32が連通するように第1の埋設ユニットを構成するソケットの外側端面3aを側板61の内側面に添設し、側板の外側から貫通孔61aにボルト部材35を差し込んで螺子穴32内に螺着する。その後、側板外側面から突出したボルト部材35の端部にワッシャー37を介してナット36を螺着することにより第1の埋設ユニット2を側板61に対して略水平に固定する工程を実施する。先端部を雄螺子部材の螺子穴32に螺着したボルト部材35の他端部にナット36を締結することにより、チェアー等の格別の支持部材を用いることなく、側板に対して第1の埋設ユニット2を水平姿勢にて固定することができる。
【0022】
次いで、型枠内にコンクリートを打設して固化させることによりコンクリート構造体を構築する工程と、コンクリートの固化後に、ナット36とボルト部材35を取り外してから型枠を除去する工程と、ソケット外側開口3a’から雄螺子部材31を除去する工程と、を順次実施する。
なお、雄螺子部材31の外側端面には、溝部31bを形成して速やかに除去できるように工夫してある。即ち、型枠を除去する前に、ナット36をボルト部材35から取り外した上で、ボルト部材を雄螺子部材31から取り外すが、構造体から型枠を除去した後にコンクリート構造体の接続端面に露出したソケット内から雄螺子部材を取り外す作業性を高めるために、図6(c)に示したように雄螺子部材31の外側端面(構造体接続端面に露出する面)に径方向へ延びる溝部31bを形成しておき、この溝部31bにマイナスドライバー等を差し込んで回転させることにより、雄螺子部材を取り外しやすくなる。即ち、型枠を除去した際には、雄螺子部材31はソケットの雌螺子部4から取出しにくくなっているが、この際の雄螺子部材の離脱作業性を高めるために溝部31bを利用することが便利である。
これにより、構造体51の構築を完了することができる。
【0023】
なお、ソケット内に雄螺子部材31を螺着させる際には、雄螺子部材31の外側端面がソケットの外側端面3aよりも内部に入り込むようにし、ソケットの外側端面を側板の内面に添設した際に雄螺子部材の外側端面と側板面との間に形成される空隙を埋めるように防水性を有したスポンジ、或いはパッキンを充填しておくのが好ましい。なお、スポンジ、或いはパッキンを充填する必要が生じるのは、側板61が局部的に変形し、ソケットの外側端面3aと側板61に隙間が生じる場合に限っており、通常は、スポンジ、或いはパッキンを必要としない。
なお、側板61には所定のピッチにて補強用の厚肉部(リブ)61bが形成されているため、貫通孔61aを所定の位置に形成することができない場合がある。この場合には、図7(a)(b)に示すように厚肉部61bを回避した位置に貫通孔61を形成する一方で、雄螺子部材31の軸中心に形成した螺子穴32の他に、軸中心よりずれた位置(偏心した位置)に偏心螺子穴32aを形成し、側板の貫通孔61aに挿通したボルト部材35を偏心螺子穴32aに螺着して側板61に締結するように構成する。このように偏心螺子穴32aを利用することにより、ボルト部材35及び偏心螺子穴32aを中心として雄螺子部材31を偏心回動させることができるため、貫通孔61aが本来の形成位置からずれていたとしても、第1の埋設ユニット2の位置を本来の取付け位置に保持することが可能となる。具体的には、第1の埋設ユニット2の本来の取付け位置が厚肉部61bにオーバーラップした部位である場合に、厚肉部61bに貫通孔61を形成できないことから、厚肉部を回避した位置に貫通孔を形成する。この際、ナット36やワッシャー37を配置するスペースを考慮して貫通孔61を厚肉部61bにできるだけ近づけた回避位置に形成する。一方、図7(c)の例では、ネジ穴32と偏心螺子穴32aとの中心間距離は12mmであるため、雄螺子部材31(ソケット3)の取付け位置は12mmの範囲内で微調整可能である。このため、実際に形成された貫通孔の位置が本来の位置よりも12mmの範囲内で横方向に位置ずれしている場合には、偏心螺子穴32aを中心として雄螺子部材を回転させることにより、本来の取付け位置に近づける(一致させる)ことが可能となる。
【0024】
図7(c)は、雄螺子部材の端面に溝部31bを形成した例を示している。
次に、図7の措置では、補強用の厚肉部(リブ)61bを回避したダウエルバーの設置が困難となる場合がある。図8はこのような側板部位に対して第1の埋設ユニットを固定し、コンクリート中に埋設する工法を説明する図であり、図8(a)はダウエルバーの分解斜視図であり、(b)は組み付け状態を示す断面図であり、(c)は角柱部材の溶接部を示す拡大図である。
このダウエルバーの埋設工法においては、まず、図4、図5に示すように路盤50上に型枠60を立設してボルト70により固定する。なお、厚肉部61bの存在により側板61の貫通孔を形成し得ない部位に予め角柱部材(鋼材)80の軸方向一端面を点溶接により固定しておく。なお、角柱部材(鋼材)80の溶接側端部は予め面取り部80aを形成しておき、この部位80aを利用して側板の内側面と溶接することにより溶接時にバリ等の突出部が形成されることを防止できる。角柱部材80とは、三角柱、四角柱、その他の多角柱を含むものである。
【0025】
また、外周面に雄螺子部81aを有すると共に、角柱部材80の外形と整合する内形状を有した角柱状の中空部81bを備えた雄螺子部材81を用意する。
次いで、角柱部材80の外面に、雄螺子部材81の中空部81bを嵌合させる。なお、角柱部材(鋼材)80の外周面に設けた穴80a内には、弾性部材80b、及びボールプランジャー80cを配置しておき、弾性部材が外径方向へ向けてボールプランジャー80cを弾性付勢するように構成する。一方、雄螺子部材の中空部81bの内壁にはボールプランジャー80cが嵌合するボール受け溝81cを形成する。このように構成したため、角柱部材80を雄螺子部材の中空部81b内に嵌合させた際に、外径方向へ弾性付勢されたボールプランジャー80cがボール受け溝81c内に嵌合し、角柱部材から雄螺子部材が脱落することを防止する。なお、弾性部材80bの弾発力を適正に設定することにより、コンクリートの打設、養生期間中、側板面に対して第1の埋設ユニット2を直交した状態で支持し続けることができる一方、重機を用いて型枠を除去する際に、中空部81b内から角柱部材を容易に抜き取ることが可能となる。
なお、この際、必要に応じて角柱部材(鋼材)80の先端部に防水性を有したスポンジ、或いはパッキンを配置しておき、側板内面との間からの雨水の浸入を防止するようにしてもよい。
【0026】
次いで、角柱部材によって支持された第1の埋設ユニットを構成するソケットの外側開口3a’内に円筒部材外面の雄螺子部81aを螺着することにより第1の埋設ユニット2を側板61に対して略水平に固定する。第1の埋設ユニット2は、側板に溶接固定された角柱部材80によって水平に支持された状態となる。
その後、型枠内にコンクリートを打設して固化させることによりコンクリート構造体を構築する工程と、コンクリートの固化後に、角柱部材80と共に型枠60を除去する工程と、ソケット外側開口内から雄螺子部材81を除去する工程と、を順次実施する。
このように側板に貫通孔を形成できない場合にも、ダウエルバーを使用することが可能となる。
【0027】
以上の構成を備えたダウエルバー1においては、ソケット3の雌螺子部4のネジピッチを2.0〜3.0mm、ネジ山(ネジ深さ)を約1.1〜1.6mm程度と小さくし、ネジ加工の精度を最大限に高めて雌螺子部4と雄螺子部10aとのクリアランスを最小限にしてネジ部間の隙間を極力無くするとともに、防水性を有した接着剤15を微細な隙間に充填したので、完全に雨水の浸透を抑制することができる。このため、防錆機能、応力軽減機能を高めることができる。
なお、このネジピッチやネジ深さならびにこれらに基づくネジ長さやソケットの肉厚の値は、ソケット付きダウエルバーの強度に影響するため、これらの四要素の組み合わせを考慮し、最適なソケットのネジ形状、ソケット形状を開発した。また、この場合には、施工の容易さも考慮している。
【0028】
また、ソケットと鋼棒との固定手段として溶接を用いないため、ソケットの軸心と鋼棒の軸心が常に一致し、より高い精度の設置が可能となった。
ソケットを製作する際に高強度の鋼管を精度良く切断し、切断面を直角に加工することによって、ソケットの軸心と第1の鋼棒の軸心とを容易に一致させることでき、第1の埋設ユニット2を側板に設置する際に、側板と隙間無く設置することが可能となる。このことにより、コンクリート構造体の接続端面とソケットの面が面一となり、浸入した雨水がソケット内部に滞水することを完全に防止することができるので、鋼棒とソケットの腐食を完全に抑制することが可能となる。
このように、ソケットと鋼棒との隙間をなくすことにより、コンクリート構造体の接続端面とソケットの外面が面一となり、コンクリート構造体の接続端面に直角に設置されることは、高い防錆効果があるばかりでなく、より高い荷重伝達性能を達成できることとなる。
【0029】
また、ソケットの材質を高強度にすることにより、ソケットの肉厚を薄くすることが可能となり、ソケット外周面にテーパー部を形成することによって第1の鋼棒とソケット端部の段差を2mmと極力、小さくし、応力集中を低減する構造とした。さらに、このテーパー部を形成することにより、コンクリート断面に対する鋼材(鋼棒とソケットを含む)の断面変化を緩和させることが可能となり、ソケット部の応力変化を極力緩和できる構造とした。このテーパーの勾配は、ソケット部の応力変化を極力緩和するため、1:10以上とした。
このようにソケットの肉厚を薄くし、さらに、1:10のテーパー部5を設けたことによって可能な限り、応力集中を低減するとともに応力変化を少なくすることができる。しかも、肉厚の薄いソケットにテーパー加工を施しているため、従来のものよりも軽量化が可能となり、現場での施工性も向上する。更に、本発明のダウエルバーと従来のソケット式ダウエルバーについて曲げ試験を実施した結果、本発明のものについては、従来型より強度が上回っていることや変形が小さいことが確認されている。
更に、使用材料(鉄筋が、約5.5kg/m)が減少し、施工が簡易になったことにより、施工の低コスト化が実現されることとなる。
【0030】
また、ソケットと鋼棒との連結は、螺子結合と防水性の接着剤による固定を併用しているため、ソケット制作時の搾孔或いは鋳物製作(従来は、ソケットと同様な径の鋼材を搾孔するか、鋳物で対応していた)が不要となり、また溶接が不要となることでダウエルバーの製作工数が減少して製作時間が短縮され、製作コストの縮減が可能となる。
本発明のダウエルバーユニット30にあっては、雄螺子部材31、ボルト部材35、ナット36だけを用いて第1の埋設ユニット2を側板61に固定するようにしており、鉄筋量の増大をもたらすチェアーなどの位置決め治具を一切使用しないため、ダウエルバー周りの鉄筋量を極端に減少させることができ、鉄筋の存在に起因したコンクリート構造体への損傷(ひび割れの誘発)を防止することが可能となる。また、ダウエルバーの設置に必要な雄螺子部材31、ボルト部材35、ナット36等は転用できるため、工事費の低廉化が実現できこととなる。
【符号の説明】
【0031】
1…ダウエルバー、2…埋設ユニット、3…ソケット、3a…外側端面、3b…内側端面、4…雌螺子部、5…テーパー部、5a…終端部、5b…外側端部、10…鋼棒、15…接着剤、15…防水接着剤、20…埋設ユニット、21…鋼棒、21a…雄螺子部、22…防水接着剤、30…ダウエルバーユニット、31…雄螺子部材、32…螺子穴、35…ボルト部材、36…ナット、37…ワッシャー、50…基層部(路盤)、51…コンクリート構造体、51a…接続端面、51a…両接続端面、52…コンクリート構造体、52a…各接続端面、60…型枠、61…側板、61a…貫通孔、70…ボルト、80…角柱部材、80a…穴、80b…弾性部材、80c…ボールプランジャー、81…雄螺子部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路盤上に隣接して設置され、且つ接続端面同士が相対的に変位する2つのコンクリート構造体間の荷重伝達手段としてのダウエルバーであって、
前記ダウエルバーは、一方の前記構造体の接続端面から内部にかけて水平に埋設固定される第1の埋設ユニットと、他方の前記構造体の接続端面から内部にかけて水平に埋設固定される第2の埋設ユニットと、を有し、
前記第1の埋設ユニットは、前記一方の構造体の接続端面に外側端面を露出した状態で埋設固定され且つその内部に軸方向全長に渡る雌螺子部を有した円管状のソケットと、該ソケットの内側開口内に螺着される雄螺子部を一端に有した第1の鋼棒と、該ソケットと該第1の鋼棒との間隙に充填された状態で両者を接着固定する防水接着剤と、を備え、
前記第2の埋設ユニットは、前記ソケットの外側開口内に一端の雄螺子部を螺着された状態で他方の構造体の内部に埋設固定される第2の鋼棒と、該ソケットと該第2の鋼棒との間隙に充填された状態で両者を接着固定する防水接着剤と、を備えており、
前記ソケットの外周には、内側端部から軸方向中央部に向けて外径が漸増するテーパー部が形成されていることを特徴とするダウエルバー。
【請求項2】
前記ソケットは、炭素鋼管から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のダウエルバー。
【請求項3】
前記第1の鋼棒の雄螺子部の先端部は、前記ソケット外周のテーパー部の軸方向中央寄りの終端部を越えた位置までソケット内に没入していることを特徴とする請求項1、又は2に記載のダウエルバー。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載のダウエルバーと、前記ソケットの外側開口内に螺合する雄螺子を外周に有した略円筒状の雄螺子部材と、該雄螺子部材の外側端面の軸心位置に、或いは/及び、該軸心位置から偏心した位置に形成された螺子穴と、該螺子穴内に螺着されるボルト部材と、該ボルト部材に締結されるナットと、を備えたことを特徴とするダウエルバーユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のダウエルバーユニットを用いたダウエルバーの埋設工法であって、
路盤上に型枠を立設する工程と、
前記第1の埋設ユニットを構成する前記ソケットの外側開口内に前記雄螺子部材を螺着する工程と、
前記型枠を構成する側板に設けた貫通孔と前記雄螺子部材の螺子穴が連通するように前記第1の埋設ユニットを構成するソケットの外側端面を前記側板の内側面に添設し、該側板の外側から前記貫通孔を介して前記螺子穴内に前記ボルト部材を螺着してから該側板外側面から突出した該ボルト部材にナットを螺着することにより前記第1の埋設ユニットを前記側板に対して略水平に固定する工程と、
前記型枠内にコンクリートを打設して固化させることによりコンクリート構造体を構築する工程と、
前記コンクリートの固化後に、前記ナットと前記ボルト部材を取り外してから前記型枠を除去する工程と、
前記ソケット外側開口から前記雄螺子部材を除去する工程と、
を備えたことを特徴とするダウエルバーの埋設工法。
【請求項6】
請求項1乃至3に記載のダウエルバーと、該ダウエルバーを構成する前記第1の埋設ユニットのソケットを支持する側板の内側面に一端面を固定されて突設された角柱部材と、外周面に前記ソケットの雌螺子部を螺合する雄螺子部を有し且つ軸心部に前記角柱部材を嵌合させる角柱状の中空部を有した雄螺子部材と、を備えたことを特徴とするダウエルバーユニット。
【請求項7】
請求項1乃至3に記載のダウエルバーを用いた埋設工法であって、側板の内側面に角柱部材の一端部を固定した型枠を用意する工程と、路盤上に前記型枠を立設する工程と、前記角柱部材の外面に、外周面に雄螺子部を有し且つ軸心部に角柱状の中空部を有した雄螺子部材の該中空部を嵌合させる工程と、前記第1の埋設ユニットを構成する前記ソケットの外側開口内に前記雄螺子部材を螺着させることにより前記第1の埋設ユニットを前記側板に対して略水平に固定する工程と、前記型枠内にコンクリートを打設して固化させることによりコンクリート構造体を構築する工程と、前記コンクリートの固化後に、前記角柱部材と共に前記型枠を除去する工程と、前記ソケット外側開口内から前記雄螺子部材を除去する工程と、を備えたことを特徴とするダウエルバーの埋設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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