ダクトの接続構造
【課題】本管に分岐管を容易に接続できるようにし、且つ、その接続部分において断熱性が保たれるようにする。
【解決手段】 断熱材層5を有する本管1に開口2を設けてその開口2に分岐管11の根元部12を固定する。前記分岐管11の根元部12に、その根元部12の端縁12aから管軸方向に突出する折り曲げ自在の爪部15を設け、その分岐管11の根元部12の外周に断熱材層13aを設けて爪部15側へ突出させる。その爪部15を前記開口2の内部に挿入して外径側に折り曲げることにより、前記断熱材層13aを変形させて前記本管1の内周面に押し付け、その爪部15に固定したピン16を本管1の外側へ引き出して前記本管1の外周面に沿って設けた固定部材17に係止する。このようにすれば、本管1と分岐管11との接続部分において断熱性が保たれ、また、それらの作業は本管1の外側から行うことができるので作業性がよく、容易に可能である。
【解決手段】 断熱材層5を有する本管1に開口2を設けてその開口2に分岐管11の根元部12を固定する。前記分岐管11の根元部12に、その根元部12の端縁12aから管軸方向に突出する折り曲げ自在の爪部15を設け、その分岐管11の根元部12の外周に断熱材層13aを設けて爪部15側へ突出させる。その爪部15を前記開口2の内部に挿入して外径側に折り曲げることにより、前記断熱材層13aを変形させて前記本管1の内周面に押し付け、その爪部15に固定したピン16を本管1の外側へ引き出して前記本管1の外周面に沿って設けた固定部材17に係止する。このようにすれば、本管1と分岐管11との接続部分において断熱性が保たれ、また、それらの作業は本管1の外側から行うことができるので作業性がよく、容易に可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物等に配設される空調設備用の配管(ダクト)の分岐構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物等に配設される空調設備用の配管(ダクト)には、空調効率を確保するため、その周囲に断熱材を備えたものが用いられる。これらのダクトは、室外や屋外に配置された空調機器の本体から、天井裏の空間等を通って室内まで配設される。また、その途中で分岐して各部屋に分配される場合が多い。
【0003】
これらのダクトに用いられる管体として、例えば、管状を成す金属製部材の外周にグラスウール等からなる断熱材層を設けた管体が用いられる。
また、フレキシブルダクトと呼ばれる屈曲自在の管体が用いられる場合もある。
【0004】
例えば、図9に示すように、フレキシブルダクトFは、螺旋状を成す金属製の芯材4の外周にグラスウール等の断熱材層5が設けられており、その断熱材層5のさらに外周側が樹脂製のシートからなる外装材6で覆われている。なお、金属製の芯材4の内周側も樹脂製のシートからなる内装材3で覆われているので、断熱材層5は、管軸方向端面を除いて外部に露出しないようになっている。
【0005】
また、フレキシブルダクトFの端部に絞り部7(本発明の実施形態の説明図である図7(a)(b)参照)が設けられて、他のダクトに接続できるようになっている。
その絞り部7は、断熱材層5がやや圧縮されて小径となって、その絞り部7の端部で内装材3と外装材6とを封止されている。この封止は、工場で予め施工される場合もあるし、現場において、そのフレキシブルダクトFが所定の長さに切断された後、その端面を粘着テープS等で被覆する場合もある。
【0006】
ダクトを分岐させる場合、通常、本管を構成する管体(以下、単に「本管」という)の途中に、管体の内外を貫通する分岐用の開口が設けられ、その開口を通じて分岐管用の管体(以下、単に「分岐管」という)が接続される。
【0007】
その構成として、例えば、図10に示すものがある。図10に示す分岐構造について説明すると、まず、2分割された円筒面状の支持部材33,33が本管1内に挿入される。支持部材33,33は、本管1の内周面に沿う形状となっている。分岐管11の根元部には、本管1の外周面に沿う形状のベースプレート32が一体に固定されている。
【0008】
つぎに、支持部材33,33とベースプレート32には、同程度の内径を有する貫通孔がそれぞれ形成されており、両方の貫通孔の位置を合わせて支持部材33,33とベースプレート32とをビス等で固定するとともに、その貫通孔の部分で本管1を切開する。その切開した部分は前記開口2となって、その開口2を通じて本管1内の空間と分岐管11内の空間とが連通する。また、その分岐管11の先端部には別の本管21が接続され、ダクトが各々の部屋へと通じていく。
このとき、本管1と分岐管11との接続部分、すなわち、分岐管11の根元部とベースプレート32の外周面は断熱材層5が途切れた状態となるので、適宜、追加の断熱材やテープ等で補修されて、その接続部分の断熱性を保持している(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、図11に示すように、分岐管11の端部に外周側に突出するフランジ部34を設けて、そのフランジ部34が本管1に設けた開口2周囲の内周面に接するように、分岐管11を本管1外に突出させて固定するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平10−9655号公報
【特許文献2】特開2007−113803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図10のダクトの分岐構造によれば、本管1に分岐管11を接続した後、その接続部分、すなわち、分岐管11の外周面のうちベースプレート32に近い根元部と、そのベースプレート32の外周面を、それぞれ、追加の断熱材やテープ等で補修して外気に露出しないようにする必要がある。
多数の箇所での切断を伴うフレキシブルダクトFの配設作業において、現場でこのような断熱材層5の補修作業を切断箇所毎に行うことは煩雑であり、また、天井裏のような閉鎖された空間では、このような細かな作業を行うことは困難な場合もある。
【0012】
また、図11のダクトの分岐構造によれば、分岐管11のフランジ部34が、本管1に設けられる開口2よりも大きいため、分岐管11を本管1の内側から差し入れる必要がある。このため、本管1と分岐管11との接続に要する作業を狭い本管1の内部で行わなければならず、その作業は繁雑である。また、本管1が長尺である場合は、採用できない接続構造であるともいえる。
さらに、本管1に分岐管11を接続した後、その接続部分、すなわち、分岐管11の外周面のうち本管1側に近い根元部、及び本管1の外周面のうち分岐管11周囲の部分を、追加の断熱材やテープ等で補修して外気に露出しないようにする必要があるのは、図10の場合と同様である。
【0013】
また、その図11において、本管1が、螺旋状の芯材4を用いたフレキシブルダクトFの場合、本管1を切開して開口2を設けた場合に、その開口2の周縁の部分で芯材4が切断される。このため、その芯材4の切断面が分岐管11の外周面に対向するという問題がある。
通常、芯材4の切断面は鋭利に尖ったままの状態であるので、分岐管11を本管1に接続する際に、分岐管11の外周に設けた断熱材層5に芯材4の先端が摺れて、その断熱材層5に傷をつけてしまう場合もある。断熱材層5に傷がつくと、分岐管11の断熱効果が阻害されるので好ましくない。
【0014】
そこで、この発明は、本管に分岐管を容易に接続できるようにし、且つ、その接続部分において断熱性が保たれるようにする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明は、本管の外周に断熱材層が設けられており、その本管に内外を貫通する開口を設け、その開口の周囲の前記本管に分岐管の根元部が固定されて、前記開口を通じて前記本管内の空間と前記分岐管内の空間とが連通し、その分岐管の外周に設けられる断熱材層を前記本管の内側から外側に亘って隙間なく接続されたダクトの接続構造において、前記分岐管の根元部に、その根元部の端縁から管軸方向に突出する折り曲げ自在の爪部を設け、少なくとも前記分岐管の根元部の外周に断熱材層を設けてその断熱材層を前記根元部の端縁よりも爪部側へ突出させ、前記爪部を前記開口の内部に挿入して外径側に折り曲げることにより、前記断熱材層を変形させて前記本管の内周面に押し付けた状態にして前記分岐管を本管に固定するとともに、前記分岐管の外周に設けられる断熱材層を前記本管の内側から外側に亘って隙間なく連続させた構成を採用した。
【0016】
また、前記分岐管の外周に設けられる断熱材層を気密性を有するものとすれば、本管内の気流が分岐管の外周に沿って遺漏せず、より高い断熱性を保つことができる。また、その断熱材層が外気に露出する部分では断熱材として機能することができる。
【0017】
また、前記分岐管の外周に設けられる断熱材層は、前記根元部の外周に設けられる断熱材層と、その根元部よりも先端側に接続された他の管体の外周に設けられる断熱材層とが隙間なく連続するように形成されている構成とすることもできる。
【0018】
このようにすれば、本管と分岐管との接続作業を本管の外側から行うことができ作業性がよいとともに、その接続部分において断熱材層が途切れないようにすることも簡単である。
【0019】
これらの構成において、前記根元部の断熱材層と本管の断熱材層とが連続するように、適宜の方法で両者を接続することが望ましい。
すなわち、両断熱材層の間に隙間ができないよう両者を突き合わせて密着させて連続した状態にし、加えて、その突き合わせた両断熱材層の境目が拡がらないよう適宜の方法で両者を接続する。例えば、粘着テープで両断熱材層間の境目を塞ぐように接続して、その接続により、前記根元部の断熱材層と本管の断熱材層とを隙間無く連続させるようにすれば、断熱効果がより良好に発揮できる。粘着テープは、分岐管又は開口の全周に亘って連続的に貼り付けることが望ましい。
また、前記根元部の外周に設けられる断熱材層と、その根元部よりも先端側に接続された他の管体の外周に設けられる断熱材層とを隙間なく連続させる場合にも、同様の粘着テープ等による接続手法を採用することができる。
【0020】
また、前記爪部にピンを固定し、そのピンを前記本管の外側へ引き出して前記本管の少なくとも一部を挟んで設けた固定部材に係止することにより、前記分岐管を前記本管に固定した構成を採用することができる。
前記爪部を外径側に折り曲げて本管の内周面に沿わせることにより、ある程度の強さで分岐管と本管とは固定され得るが、このようにピンを用いた固定手段を採用すれば、分岐管と本管とをよりしっかりと固定できる。また、そのピンによる固定作業は本管の外側から行うことができるので、広い作業スペースを確保し得る、このため、作業性がよい。
なお、固定部材は、例えば、ピンを係止し得る機能を備えた本管の外周面に沿う板状の部材であってもよいし、その他、棒状の部材、ブロック状の部材であってもよい。また、その固定部材は、本管の外周面からやや内径側に入り込んだ部分に設けても良い。すなわち、前記爪部と固定部材との間に、本管の構成部材の少なくとも一部が挟まれていればよい。
また、その係止方法としては、ピンに設けた係止部を前記固定部材に設けた被係止部に係止する構成であり、例えば、被係止部を前記固定部材に設けた係止孔とし、その係止孔に挿通したピンの端部をカシメることにより前記係止部を形成するようにしてもよい。
【0021】
また、上記の構成において、前記根元部の端縁は、前記本管の内周面に沿って形成すれば、本管内の空間において、分岐管が本管の内周面から内側に突出しないようにできるので、ダクト内の流体の流通が円滑になる。
【0022】
さらに、前記本管がフレキシブルダクトである場合には、上記の構成はより有利に作用する。
すなわち、フレキシブルダクトとは、螺旋状を成す金属製の芯材の外周にグラスウール等の断熱材層が設けられているものであり、本管を切開して開口を設けた場合に、その開口の周縁の部分で芯材が切断される。このため、その芯材の切断面が、開口内に差し入れた分岐管の根元部の外周面に対向する。
【0023】
しかし、開口内への分岐管の差し入れは本管の外側から行うため、根元部に設けた断熱材層と芯材の切断端部とが摺れるのを最小限に抑えることができる。
また、芯材は、本管の内径寄りの部分に配置されているので、爪部の折り曲げによって変形した前記根元部の断熱材層が、その切断端部を外径側に押さえつける。このため、切断端部が動くことを防止し、その切断端部によって他の断熱材層が傷つかないように保護することができる。
【0024】
また、前記根元部の断熱材層を、前記分岐管の外周に巻き付けられた発泡ゴムシートで構成することができる。
分岐管の根元部に設けられる断熱材層として、例えば、グラスウール等を樹脂シートからなる外装材で覆った構成の場合、特に樹脂シートは傷つきやすいので芯材の切断端部が直接触れると好ましくない場合も考えられる。
【0025】
しかし、断熱材層が発泡ゴムシートであれば、その発泡ゴムシートに芯材の切断端部が直接触れたり、あるいは摺れたりしても、断熱性能に影響を及ぼすような断熱材層の損傷を生じさせにくいといえる。
【発明の効果】
【0026】
この発明は、以上のようにしたので、本管に分岐管を容易に接続できるようにし、且つ、その接続部分において断熱性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、フレキシブルダクトFで構成される本管1に、分岐管11を介して、フレキシブルダクトFからなる他の管体21が接続されるダクトの分岐構造である。本管1は、ある程度の長さを有する長尺のフレキシブルダクトFを想定しており、その本管1の管軸方向中程においてダクトを分岐させる。
【0028】
フレキシブルダクトFの構成は、従来例と同様であり、螺旋状を成す金属製の芯材4の外周にグラスウール等の断熱材層5が設けられており、その断熱材層5のさらに外周側が樹脂製の外装材6で覆われている。また、芯材4の内周側も樹脂製の内装材3で覆われている。内装材3及び外装材6は、いずれも樹脂製のシートで構成されている。
【0029】
分岐管11は、図6に示すように打ち抜かれた金属板Pを用い、その端縁11a,11b同士を接合することにより、管状に形成されるものである。この接合には、溶接、接着、カシメ等の手法を採用することができる。
【0030】
分岐管11には、本管1側の根元部12に、その根元部12の端縁12aから管軸方向に突出する折り曲げ自在の爪部15が設けられている。
爪部15は、図1に示すように、相対的に突出長さの長い爪部15aと長さの短い爪部15bとが周方向に沿って交互に設けられている。爪部15aには、ピン挿通用の孔15cが設けられている。また、各爪15には長孔11cが設けられており、その各爪15が、前記根元部12の端縁12aを境に折り曲げやすいようになっている。
なお、前記各爪15a,15bに前記長孔11cを2箇所ずつ設けると、それらの爪15a,15bはさらに折り曲げやすくなる。
【0031】
この分岐管11の取付け作業を説明すると、図1に示すように、本管1の側周面を切開し円形の開口2を設ける。このとき、内装材3、芯材4、断熱材層5、外装材6をそれぞれ切断する。
【0032】
前記分岐管11の根元部12の外周全周に断熱材層13aを巻き付けて接着固定する。この根元部12に設けられる断熱材層13aには、発泡ゴムシートが用いられる。
この発泡ゴムシートからなる断熱材層13aは、前記根元部12の端縁12aよりも爪部15側へ突出し、さらに、前記爪部15aの先端よりもやや手前に位置させた状態に固定する。
【0033】
前記分岐管11を、その根元部12から前記開口2内に差し入れる。その分岐管11の内側及び開口2から手を入れて、前記爪部15a,15bを外径側に折り曲げることにより、前記断熱材層13aを変形させて前記本管1の内周面に押し付ける(図2参照)。
このとき、前記発泡ゴムシート先端の外周面に両面テープを貼り付けておけば、その発泡ゴムシートが前記本管1の内周面に押し付けられた際に、よりしっかりと本管1の内周面に密着して気密性が高まる。
続いて、爪部15aの孔15cにピン16を挿通する。ピン16の頭部16aは孔15cを通過できない大きさとなっており、ピン16の軸部16bが、前記内装材3、断熱材層5、外装材6をそれぞれ貫通させて本管1の外側に引き出される。前記内装材3、断熱材層5、外装材6は柔らかいので、ピン16は手作業で本管1を貫通させることが可能である。
【0034】
ピン16の先端16cは、本管1の外周面に沿って設けた板状の固定部材17の孔に挿通され、そのピン16を外径側に引っ張りながら先端16cをカシメることにより、ピン16が固定部材17の孔から抜けないようにする。固定部材17とピン16を介して爪部15aが本管1に対して不動となり、その結果、分岐管11が本管1に固定される。
ピン16の引っ張り、及びカシメは、本管1の外側の広いスペースで作業できるので、作業性がよいといえる。
【0035】
また、固定部材17を外装材6の内側に設けることもできる。固定部材17が外装材6の内側にあれば、美観が向上するとともに、ピン16からの伝熱による固定部材17の結露を防止することができる。このとき、固定部材17は、図8に示すように、断熱材層5の外周面と外装材6との間に設けてもよいし、断熱材層5の中に埋め込んで設けてもよい。また、そのピン16、固定部材17を樹脂製にすれば、前記伝熱をより効果的に抑制し得る。
【0036】
なお、前記ピン16のカシメ固定に代えて、ピン16先端を曲げ加工することにより、そのピン16を固定部材17から抜け止めしてもよいし、あるいは、ピン16をボルト軸とし、そのボルト軸の先端を固定部材17の孔に挿通してナットで締付ける態様なども考えられる。
すなわち、ピン16と固定部材17との係止方法としては、ピン側に設けた係止部を固定部材側に設けた被係止部に係止して、ピン16が固定部材17に対して外れないように固定されている構成であればよい。
【0037】
この実施形態では、さらに、その根元部12の外周に設けた断熱材層13aと本管1の開口2周囲の断熱材層5との境を塞ぐように、図4及び図5に示すように、粘着テープTが貼り付けられるので、ダクトの配設作業中あるいはダクトの配設後において、前記根元部12の断熱材層13aと本管1の断熱材層5との境に隙間ができて、断熱性が低下することを防止している。
【0038】
また、前記断熱材層13aは発泡ゴムシートであるので、その発泡ゴムシートに芯材4の切断端部が直接触れたり、あるいは摺れたりしても、断熱性能に影響を及ぼすような断熱材層13aの損傷を生じさせにくいといえる。
また、発泡ゴムシートは気密性を有するので、本管1内の気流が分岐管11の外周に沿って遺漏しない。このため、分岐管の接続部分において、より高い断熱性を保つことができる。また、その断熱材層13aが外気に露出する部分においても、断熱材として機能することができる。
【0039】
また、前記根元部12の端縁12aは、前記本管1の内周面1aに沿って形成されているので、その端縁12aが、本管1内の空間において内周面1aから内側に突出しないようになっている。このため、ダクト内のスムースな気体の流れを阻害しない。
なお、このような効果は、図6に示す金属板Pにおいて、図中右側に示す端縁12aを波状に形成したことにより可能となっている。
【0040】
また、図4に示すように、分岐管11の先端側にフレキシブルダクトFからなる他の管体21が接続される。この管体21は、本管1に向く側の端部に絞り部7を有するものであり、その構成は、図5に示すように、内装材3、芯材4、断熱材層13b、外装材6、絞り部7のテープSなど、前記本管1を構成するフレキシブルダクトFと同一である。
【0041】
この管体21の断熱材層13bは、図5に示すように、前記分岐管11の先端側外周に管体21を嵌めることにより、前記根元部12の外周に設けられる断熱材層13aと、隙間なく密着して分岐管11の外周に沿って連続する断熱材層13となる。
なお、前記根元部12の外周に設けられる断熱材層13aと、管体21の外周に設けられる断熱材層13bとの密着部分の境を塞ぐように、粘着テープTを貼り付けてもよい。
また、図5に示すように、管体21の絞り部7を、分岐管11の根元部12の外周に設けられる断熱材層13aに重なるように接続すれば、その絞り部7の外周から金属バンドを巻き付けて締め付けることにより、前記分岐管11と管体21を固定することもできる。
【0042】
上記の実施形態は、本管1が長尺のフレキシブルダクトFの場合を説明したが、このほか、図7(a)(b)に示すように、本管1が比較的長さの短い短尺のフレキシブルダクトFの場合においても、この発明のダクトの接続構造を採用し得る。
なお、図7(a)(b)に示す本管1両端の絞り部7,7は、それぞれ図示しない継手管の外周に嵌められて、その継手管を介して、次なる本管1に接続されるようになっている。
【0043】
また、この発明のダクトの接続構造は、本管1がフレキシブルダクトF以外の管体で構成される場合にも適用可能である。例えば、本管1が、スパイラルダクト等の筒状の金属からなる管体の外周に、グラスウール等の断熱材層5を巻き付けて固定した構成においても、この発明のダクトの接続構造を採用できる。
スパイラルダクト等を用いた場合、ピン16を本管1に貫通させることは手作業では困難であるので、ピン16を挿通する前に、本管1の外側からドリル等で孔を開けておくことが望ましい。
【0044】
また、上記の各実施形態は、前記分岐管11の外周に設けられる断熱材層13が、前記根元部12の外周に設けられる断熱材層13aと、その根元部12よりも先端側に接続された他の管体21の外周に設けられる断熱材層13bとが隙間なく連続して形成されるようにしたが、他の実施形態として、例えば、分岐管11の外周に、前記根元部12から先端側に至る全域の断熱材層13を設けた後、上記本管1への接続作業を行ってもよい。
【0045】
このとき、分岐管11の先端側に接続される他の管体21としては、その分岐管11の断熱材層13の外周に嵌めて接続される管体21としてもよいし、前記分岐管11の内周に嵌めて接続される管体21であってもよい。
この管体21は、フレキシブルダクトFのほか、スパイラルダクト等の筒状の金属からなる管体の外周にグラスウール等の断熱材層5を巻き付けて固定した管体21、あるいはさらに他の管体21と接続するために用いられる継手管の管体21であってもよい。
また、前記分岐管11の断熱材層13aとしては、上記実施形態に示す発泡ゴムシートに限定されず、発泡を伴わないゴムシートを用いることもできる。また、グラスウール等の一般的な断熱材を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】一実施形態における本管に分岐管を接続する前の状態を示す分解斜視図
【図2】同実施形態における本管に分岐管を接続後の本管内部を示す斜視図
【図3】同実施形態の断面図
【図4】本管に固定した分岐管に、他の管体を接続する状態を示す斜視図
【図5】図3の要部拡大図
【図6】分岐管の展開図
【図7(a)】本管に分岐管を接続する前の状態を示す分解斜視図
【図7(b)】はその接続後の状態を示す斜視図
【図8】他の実施形態の要部拡大図
【図9】フレキシブルダクトの構成を示す説明図
【図10】従来例の分解斜視図
【図11】従来例の断面図
【符号の説明】
【0047】
1 本管
2 開口
3 内装材
4 芯材
5,13,13a,13b 断熱材層
6 外装材
7 絞り部
11 分岐管
12 根元部
15,15a,15b 爪部
16 ピン
17 固定部材
21 他の管体
F フレキシブルダクト
P 金属板
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物等に配設される空調設備用の配管(ダクト)の分岐構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物等に配設される空調設備用の配管(ダクト)には、空調効率を確保するため、その周囲に断熱材を備えたものが用いられる。これらのダクトは、室外や屋外に配置された空調機器の本体から、天井裏の空間等を通って室内まで配設される。また、その途中で分岐して各部屋に分配される場合が多い。
【0003】
これらのダクトに用いられる管体として、例えば、管状を成す金属製部材の外周にグラスウール等からなる断熱材層を設けた管体が用いられる。
また、フレキシブルダクトと呼ばれる屈曲自在の管体が用いられる場合もある。
【0004】
例えば、図9に示すように、フレキシブルダクトFは、螺旋状を成す金属製の芯材4の外周にグラスウール等の断熱材層5が設けられており、その断熱材層5のさらに外周側が樹脂製のシートからなる外装材6で覆われている。なお、金属製の芯材4の内周側も樹脂製のシートからなる内装材3で覆われているので、断熱材層5は、管軸方向端面を除いて外部に露出しないようになっている。
【0005】
また、フレキシブルダクトFの端部に絞り部7(本発明の実施形態の説明図である図7(a)(b)参照)が設けられて、他のダクトに接続できるようになっている。
その絞り部7は、断熱材層5がやや圧縮されて小径となって、その絞り部7の端部で内装材3と外装材6とを封止されている。この封止は、工場で予め施工される場合もあるし、現場において、そのフレキシブルダクトFが所定の長さに切断された後、その端面を粘着テープS等で被覆する場合もある。
【0006】
ダクトを分岐させる場合、通常、本管を構成する管体(以下、単に「本管」という)の途中に、管体の内外を貫通する分岐用の開口が設けられ、その開口を通じて分岐管用の管体(以下、単に「分岐管」という)が接続される。
【0007】
その構成として、例えば、図10に示すものがある。図10に示す分岐構造について説明すると、まず、2分割された円筒面状の支持部材33,33が本管1内に挿入される。支持部材33,33は、本管1の内周面に沿う形状となっている。分岐管11の根元部には、本管1の外周面に沿う形状のベースプレート32が一体に固定されている。
【0008】
つぎに、支持部材33,33とベースプレート32には、同程度の内径を有する貫通孔がそれぞれ形成されており、両方の貫通孔の位置を合わせて支持部材33,33とベースプレート32とをビス等で固定するとともに、その貫通孔の部分で本管1を切開する。その切開した部分は前記開口2となって、その開口2を通じて本管1内の空間と分岐管11内の空間とが連通する。また、その分岐管11の先端部には別の本管21が接続され、ダクトが各々の部屋へと通じていく。
このとき、本管1と分岐管11との接続部分、すなわち、分岐管11の根元部とベースプレート32の外周面は断熱材層5が途切れた状態となるので、適宜、追加の断熱材やテープ等で補修されて、その接続部分の断熱性を保持している(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、図11に示すように、分岐管11の端部に外周側に突出するフランジ部34を設けて、そのフランジ部34が本管1に設けた開口2周囲の内周面に接するように、分岐管11を本管1外に突出させて固定するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平10−9655号公報
【特許文献2】特開2007−113803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図10のダクトの分岐構造によれば、本管1に分岐管11を接続した後、その接続部分、すなわち、分岐管11の外周面のうちベースプレート32に近い根元部と、そのベースプレート32の外周面を、それぞれ、追加の断熱材やテープ等で補修して外気に露出しないようにする必要がある。
多数の箇所での切断を伴うフレキシブルダクトFの配設作業において、現場でこのような断熱材層5の補修作業を切断箇所毎に行うことは煩雑であり、また、天井裏のような閉鎖された空間では、このような細かな作業を行うことは困難な場合もある。
【0012】
また、図11のダクトの分岐構造によれば、分岐管11のフランジ部34が、本管1に設けられる開口2よりも大きいため、分岐管11を本管1の内側から差し入れる必要がある。このため、本管1と分岐管11との接続に要する作業を狭い本管1の内部で行わなければならず、その作業は繁雑である。また、本管1が長尺である場合は、採用できない接続構造であるともいえる。
さらに、本管1に分岐管11を接続した後、その接続部分、すなわち、分岐管11の外周面のうち本管1側に近い根元部、及び本管1の外周面のうち分岐管11周囲の部分を、追加の断熱材やテープ等で補修して外気に露出しないようにする必要があるのは、図10の場合と同様である。
【0013】
また、その図11において、本管1が、螺旋状の芯材4を用いたフレキシブルダクトFの場合、本管1を切開して開口2を設けた場合に、その開口2の周縁の部分で芯材4が切断される。このため、その芯材4の切断面が分岐管11の外周面に対向するという問題がある。
通常、芯材4の切断面は鋭利に尖ったままの状態であるので、分岐管11を本管1に接続する際に、分岐管11の外周に設けた断熱材層5に芯材4の先端が摺れて、その断熱材層5に傷をつけてしまう場合もある。断熱材層5に傷がつくと、分岐管11の断熱効果が阻害されるので好ましくない。
【0014】
そこで、この発明は、本管に分岐管を容易に接続できるようにし、且つ、その接続部分において断熱性が保たれるようにする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明は、本管の外周に断熱材層が設けられており、その本管に内外を貫通する開口を設け、その開口の周囲の前記本管に分岐管の根元部が固定されて、前記開口を通じて前記本管内の空間と前記分岐管内の空間とが連通し、その分岐管の外周に設けられる断熱材層を前記本管の内側から外側に亘って隙間なく接続されたダクトの接続構造において、前記分岐管の根元部に、その根元部の端縁から管軸方向に突出する折り曲げ自在の爪部を設け、少なくとも前記分岐管の根元部の外周に断熱材層を設けてその断熱材層を前記根元部の端縁よりも爪部側へ突出させ、前記爪部を前記開口の内部に挿入して外径側に折り曲げることにより、前記断熱材層を変形させて前記本管の内周面に押し付けた状態にして前記分岐管を本管に固定するとともに、前記分岐管の外周に設けられる断熱材層を前記本管の内側から外側に亘って隙間なく連続させた構成を採用した。
【0016】
また、前記分岐管の外周に設けられる断熱材層を気密性を有するものとすれば、本管内の気流が分岐管の外周に沿って遺漏せず、より高い断熱性を保つことができる。また、その断熱材層が外気に露出する部分では断熱材として機能することができる。
【0017】
また、前記分岐管の外周に設けられる断熱材層は、前記根元部の外周に設けられる断熱材層と、その根元部よりも先端側に接続された他の管体の外周に設けられる断熱材層とが隙間なく連続するように形成されている構成とすることもできる。
【0018】
このようにすれば、本管と分岐管との接続作業を本管の外側から行うことができ作業性がよいとともに、その接続部分において断熱材層が途切れないようにすることも簡単である。
【0019】
これらの構成において、前記根元部の断熱材層と本管の断熱材層とが連続するように、適宜の方法で両者を接続することが望ましい。
すなわち、両断熱材層の間に隙間ができないよう両者を突き合わせて密着させて連続した状態にし、加えて、その突き合わせた両断熱材層の境目が拡がらないよう適宜の方法で両者を接続する。例えば、粘着テープで両断熱材層間の境目を塞ぐように接続して、その接続により、前記根元部の断熱材層と本管の断熱材層とを隙間無く連続させるようにすれば、断熱効果がより良好に発揮できる。粘着テープは、分岐管又は開口の全周に亘って連続的に貼り付けることが望ましい。
また、前記根元部の外周に設けられる断熱材層と、その根元部よりも先端側に接続された他の管体の外周に設けられる断熱材層とを隙間なく連続させる場合にも、同様の粘着テープ等による接続手法を採用することができる。
【0020】
また、前記爪部にピンを固定し、そのピンを前記本管の外側へ引き出して前記本管の少なくとも一部を挟んで設けた固定部材に係止することにより、前記分岐管を前記本管に固定した構成を採用することができる。
前記爪部を外径側に折り曲げて本管の内周面に沿わせることにより、ある程度の強さで分岐管と本管とは固定され得るが、このようにピンを用いた固定手段を採用すれば、分岐管と本管とをよりしっかりと固定できる。また、そのピンによる固定作業は本管の外側から行うことができるので、広い作業スペースを確保し得る、このため、作業性がよい。
なお、固定部材は、例えば、ピンを係止し得る機能を備えた本管の外周面に沿う板状の部材であってもよいし、その他、棒状の部材、ブロック状の部材であってもよい。また、その固定部材は、本管の外周面からやや内径側に入り込んだ部分に設けても良い。すなわち、前記爪部と固定部材との間に、本管の構成部材の少なくとも一部が挟まれていればよい。
また、その係止方法としては、ピンに設けた係止部を前記固定部材に設けた被係止部に係止する構成であり、例えば、被係止部を前記固定部材に設けた係止孔とし、その係止孔に挿通したピンの端部をカシメることにより前記係止部を形成するようにしてもよい。
【0021】
また、上記の構成において、前記根元部の端縁は、前記本管の内周面に沿って形成すれば、本管内の空間において、分岐管が本管の内周面から内側に突出しないようにできるので、ダクト内の流体の流通が円滑になる。
【0022】
さらに、前記本管がフレキシブルダクトである場合には、上記の構成はより有利に作用する。
すなわち、フレキシブルダクトとは、螺旋状を成す金属製の芯材の外周にグラスウール等の断熱材層が設けられているものであり、本管を切開して開口を設けた場合に、その開口の周縁の部分で芯材が切断される。このため、その芯材の切断面が、開口内に差し入れた分岐管の根元部の外周面に対向する。
【0023】
しかし、開口内への分岐管の差し入れは本管の外側から行うため、根元部に設けた断熱材層と芯材の切断端部とが摺れるのを最小限に抑えることができる。
また、芯材は、本管の内径寄りの部分に配置されているので、爪部の折り曲げによって変形した前記根元部の断熱材層が、その切断端部を外径側に押さえつける。このため、切断端部が動くことを防止し、その切断端部によって他の断熱材層が傷つかないように保護することができる。
【0024】
また、前記根元部の断熱材層を、前記分岐管の外周に巻き付けられた発泡ゴムシートで構成することができる。
分岐管の根元部に設けられる断熱材層として、例えば、グラスウール等を樹脂シートからなる外装材で覆った構成の場合、特に樹脂シートは傷つきやすいので芯材の切断端部が直接触れると好ましくない場合も考えられる。
【0025】
しかし、断熱材層が発泡ゴムシートであれば、その発泡ゴムシートに芯材の切断端部が直接触れたり、あるいは摺れたりしても、断熱性能に影響を及ぼすような断熱材層の損傷を生じさせにくいといえる。
【発明の効果】
【0026】
この発明は、以上のようにしたので、本管に分岐管を容易に接続できるようにし、且つ、その接続部分において断熱性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、フレキシブルダクトFで構成される本管1に、分岐管11を介して、フレキシブルダクトFからなる他の管体21が接続されるダクトの分岐構造である。本管1は、ある程度の長さを有する長尺のフレキシブルダクトFを想定しており、その本管1の管軸方向中程においてダクトを分岐させる。
【0028】
フレキシブルダクトFの構成は、従来例と同様であり、螺旋状を成す金属製の芯材4の外周にグラスウール等の断熱材層5が設けられており、その断熱材層5のさらに外周側が樹脂製の外装材6で覆われている。また、芯材4の内周側も樹脂製の内装材3で覆われている。内装材3及び外装材6は、いずれも樹脂製のシートで構成されている。
【0029】
分岐管11は、図6に示すように打ち抜かれた金属板Pを用い、その端縁11a,11b同士を接合することにより、管状に形成されるものである。この接合には、溶接、接着、カシメ等の手法を採用することができる。
【0030】
分岐管11には、本管1側の根元部12に、その根元部12の端縁12aから管軸方向に突出する折り曲げ自在の爪部15が設けられている。
爪部15は、図1に示すように、相対的に突出長さの長い爪部15aと長さの短い爪部15bとが周方向に沿って交互に設けられている。爪部15aには、ピン挿通用の孔15cが設けられている。また、各爪15には長孔11cが設けられており、その各爪15が、前記根元部12の端縁12aを境に折り曲げやすいようになっている。
なお、前記各爪15a,15bに前記長孔11cを2箇所ずつ設けると、それらの爪15a,15bはさらに折り曲げやすくなる。
【0031】
この分岐管11の取付け作業を説明すると、図1に示すように、本管1の側周面を切開し円形の開口2を設ける。このとき、内装材3、芯材4、断熱材層5、外装材6をそれぞれ切断する。
【0032】
前記分岐管11の根元部12の外周全周に断熱材層13aを巻き付けて接着固定する。この根元部12に設けられる断熱材層13aには、発泡ゴムシートが用いられる。
この発泡ゴムシートからなる断熱材層13aは、前記根元部12の端縁12aよりも爪部15側へ突出し、さらに、前記爪部15aの先端よりもやや手前に位置させた状態に固定する。
【0033】
前記分岐管11を、その根元部12から前記開口2内に差し入れる。その分岐管11の内側及び開口2から手を入れて、前記爪部15a,15bを外径側に折り曲げることにより、前記断熱材層13aを変形させて前記本管1の内周面に押し付ける(図2参照)。
このとき、前記発泡ゴムシート先端の外周面に両面テープを貼り付けておけば、その発泡ゴムシートが前記本管1の内周面に押し付けられた際に、よりしっかりと本管1の内周面に密着して気密性が高まる。
続いて、爪部15aの孔15cにピン16を挿通する。ピン16の頭部16aは孔15cを通過できない大きさとなっており、ピン16の軸部16bが、前記内装材3、断熱材層5、外装材6をそれぞれ貫通させて本管1の外側に引き出される。前記内装材3、断熱材層5、外装材6は柔らかいので、ピン16は手作業で本管1を貫通させることが可能である。
【0034】
ピン16の先端16cは、本管1の外周面に沿って設けた板状の固定部材17の孔に挿通され、そのピン16を外径側に引っ張りながら先端16cをカシメることにより、ピン16が固定部材17の孔から抜けないようにする。固定部材17とピン16を介して爪部15aが本管1に対して不動となり、その結果、分岐管11が本管1に固定される。
ピン16の引っ張り、及びカシメは、本管1の外側の広いスペースで作業できるので、作業性がよいといえる。
【0035】
また、固定部材17を外装材6の内側に設けることもできる。固定部材17が外装材6の内側にあれば、美観が向上するとともに、ピン16からの伝熱による固定部材17の結露を防止することができる。このとき、固定部材17は、図8に示すように、断熱材層5の外周面と外装材6との間に設けてもよいし、断熱材層5の中に埋め込んで設けてもよい。また、そのピン16、固定部材17を樹脂製にすれば、前記伝熱をより効果的に抑制し得る。
【0036】
なお、前記ピン16のカシメ固定に代えて、ピン16先端を曲げ加工することにより、そのピン16を固定部材17から抜け止めしてもよいし、あるいは、ピン16をボルト軸とし、そのボルト軸の先端を固定部材17の孔に挿通してナットで締付ける態様なども考えられる。
すなわち、ピン16と固定部材17との係止方法としては、ピン側に設けた係止部を固定部材側に設けた被係止部に係止して、ピン16が固定部材17に対して外れないように固定されている構成であればよい。
【0037】
この実施形態では、さらに、その根元部12の外周に設けた断熱材層13aと本管1の開口2周囲の断熱材層5との境を塞ぐように、図4及び図5に示すように、粘着テープTが貼り付けられるので、ダクトの配設作業中あるいはダクトの配設後において、前記根元部12の断熱材層13aと本管1の断熱材層5との境に隙間ができて、断熱性が低下することを防止している。
【0038】
また、前記断熱材層13aは発泡ゴムシートであるので、その発泡ゴムシートに芯材4の切断端部が直接触れたり、あるいは摺れたりしても、断熱性能に影響を及ぼすような断熱材層13aの損傷を生じさせにくいといえる。
また、発泡ゴムシートは気密性を有するので、本管1内の気流が分岐管11の外周に沿って遺漏しない。このため、分岐管の接続部分において、より高い断熱性を保つことができる。また、その断熱材層13aが外気に露出する部分においても、断熱材として機能することができる。
【0039】
また、前記根元部12の端縁12aは、前記本管1の内周面1aに沿って形成されているので、その端縁12aが、本管1内の空間において内周面1aから内側に突出しないようになっている。このため、ダクト内のスムースな気体の流れを阻害しない。
なお、このような効果は、図6に示す金属板Pにおいて、図中右側に示す端縁12aを波状に形成したことにより可能となっている。
【0040】
また、図4に示すように、分岐管11の先端側にフレキシブルダクトFからなる他の管体21が接続される。この管体21は、本管1に向く側の端部に絞り部7を有するものであり、その構成は、図5に示すように、内装材3、芯材4、断熱材層13b、外装材6、絞り部7のテープSなど、前記本管1を構成するフレキシブルダクトFと同一である。
【0041】
この管体21の断熱材層13bは、図5に示すように、前記分岐管11の先端側外周に管体21を嵌めることにより、前記根元部12の外周に設けられる断熱材層13aと、隙間なく密着して分岐管11の外周に沿って連続する断熱材層13となる。
なお、前記根元部12の外周に設けられる断熱材層13aと、管体21の外周に設けられる断熱材層13bとの密着部分の境を塞ぐように、粘着テープTを貼り付けてもよい。
また、図5に示すように、管体21の絞り部7を、分岐管11の根元部12の外周に設けられる断熱材層13aに重なるように接続すれば、その絞り部7の外周から金属バンドを巻き付けて締め付けることにより、前記分岐管11と管体21を固定することもできる。
【0042】
上記の実施形態は、本管1が長尺のフレキシブルダクトFの場合を説明したが、このほか、図7(a)(b)に示すように、本管1が比較的長さの短い短尺のフレキシブルダクトFの場合においても、この発明のダクトの接続構造を採用し得る。
なお、図7(a)(b)に示す本管1両端の絞り部7,7は、それぞれ図示しない継手管の外周に嵌められて、その継手管を介して、次なる本管1に接続されるようになっている。
【0043】
また、この発明のダクトの接続構造は、本管1がフレキシブルダクトF以外の管体で構成される場合にも適用可能である。例えば、本管1が、スパイラルダクト等の筒状の金属からなる管体の外周に、グラスウール等の断熱材層5を巻き付けて固定した構成においても、この発明のダクトの接続構造を採用できる。
スパイラルダクト等を用いた場合、ピン16を本管1に貫通させることは手作業では困難であるので、ピン16を挿通する前に、本管1の外側からドリル等で孔を開けておくことが望ましい。
【0044】
また、上記の各実施形態は、前記分岐管11の外周に設けられる断熱材層13が、前記根元部12の外周に設けられる断熱材層13aと、その根元部12よりも先端側に接続された他の管体21の外周に設けられる断熱材層13bとが隙間なく連続して形成されるようにしたが、他の実施形態として、例えば、分岐管11の外周に、前記根元部12から先端側に至る全域の断熱材層13を設けた後、上記本管1への接続作業を行ってもよい。
【0045】
このとき、分岐管11の先端側に接続される他の管体21としては、その分岐管11の断熱材層13の外周に嵌めて接続される管体21としてもよいし、前記分岐管11の内周に嵌めて接続される管体21であってもよい。
この管体21は、フレキシブルダクトFのほか、スパイラルダクト等の筒状の金属からなる管体の外周にグラスウール等の断熱材層5を巻き付けて固定した管体21、あるいはさらに他の管体21と接続するために用いられる継手管の管体21であってもよい。
また、前記分岐管11の断熱材層13aとしては、上記実施形態に示す発泡ゴムシートに限定されず、発泡を伴わないゴムシートを用いることもできる。また、グラスウール等の一般的な断熱材を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】一実施形態における本管に分岐管を接続する前の状態を示す分解斜視図
【図2】同実施形態における本管に分岐管を接続後の本管内部を示す斜視図
【図3】同実施形態の断面図
【図4】本管に固定した分岐管に、他の管体を接続する状態を示す斜視図
【図5】図3の要部拡大図
【図6】分岐管の展開図
【図7(a)】本管に分岐管を接続する前の状態を示す分解斜視図
【図7(b)】はその接続後の状態を示す斜視図
【図8】他の実施形態の要部拡大図
【図9】フレキシブルダクトの構成を示す説明図
【図10】従来例の分解斜視図
【図11】従来例の断面図
【符号の説明】
【0047】
1 本管
2 開口
3 内装材
4 芯材
5,13,13a,13b 断熱材層
6 外装材
7 絞り部
11 分岐管
12 根元部
15,15a,15b 爪部
16 ピン
17 固定部材
21 他の管体
F フレキシブルダクト
P 金属板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本管1の外周に断熱材層5が設けられており、その本管1に内外を貫通する開口2を設け、その開口2の周囲の前記本管1に分岐管11の根元部12が固定されて、前記開口2を通じて前記本管1内の空間と前記分岐管11内の空間とが連通し、その分岐管11の外周に設けられる断熱材層13を前記本管1の内側から外側に亘って隙間なく連続させたダクトの接続構造において、
前記分岐管11の根元部12に、その根元部12の端縁12aから管軸方向に突出する折り曲げ自在の爪部15を設け、少なくとも前記分岐管12の根元部12の外周に断熱材層13aを設けてその断熱材層13aを前記根元部12の端縁12aよりも爪部15側へ突出させ、前記爪部15を前記開口2の内部に挿入して外径側に折り曲げることにより、前記断熱材層13aを変形させて前記本管1の内周面に押し付けた状態にして前記分岐管11を本管1に固定するとともに、前記分岐管11の外周に設けられる断熱材層13aを、前記本管1の内側から外側に亘って隙間なく連続させたことを特徴とするダクトの接続構造。
【請求項2】
前記分岐管11の外周に設けられる断熱材層13aは、気密性を有することを特徴とする請求項1に記載のダクトの接続構造。
【請求項3】
前記分岐管11の外周に設けられる断熱材層13は、前記根元部12の外周に設けられる断熱材層13aと、その根元部12よりも先端側に接続された他の管体21の外周に設けられる断熱材層13bとが隙間なく連続して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のダクトの接続構造。
【請求項4】
前記根元部12の断熱材層13aと本管1の断熱材層5とは粘着テープTで接続されることにより、前記根元部12の断熱材層13aと本管1の断熱材層5とを隙間無く連続させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のダクトの接続構造。
【請求項5】
前記爪部15にピン16を固定し、そのピン16を前記本管1の外側へ引き出して前記本管1の少なくとも一部を挟んで設けた固定部材17に係止することにより、前記分岐管11を前記本管1に固定したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のダクトの接続構造。
【請求項6】
前記根元部12の端縁12aは、前記本管1の内周面1aに沿って形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のダクトの接続構造。
【請求項7】
前記本管1は、フレキシブルダクトであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のダクトの接続構造。
【請求項8】
前記根元部12の断熱材層13aは、前記分岐管11の外周に巻き付けられた発泡ゴムシートであることを特徴とする請求項7に記載のダクトの接続構造。
【請求項1】
本管1の外周に断熱材層5が設けられており、その本管1に内外を貫通する開口2を設け、その開口2の周囲の前記本管1に分岐管11の根元部12が固定されて、前記開口2を通じて前記本管1内の空間と前記分岐管11内の空間とが連通し、その分岐管11の外周に設けられる断熱材層13を前記本管1の内側から外側に亘って隙間なく連続させたダクトの接続構造において、
前記分岐管11の根元部12に、その根元部12の端縁12aから管軸方向に突出する折り曲げ自在の爪部15を設け、少なくとも前記分岐管12の根元部12の外周に断熱材層13aを設けてその断熱材層13aを前記根元部12の端縁12aよりも爪部15側へ突出させ、前記爪部15を前記開口2の内部に挿入して外径側に折り曲げることにより、前記断熱材層13aを変形させて前記本管1の内周面に押し付けた状態にして前記分岐管11を本管1に固定するとともに、前記分岐管11の外周に設けられる断熱材層13aを、前記本管1の内側から外側に亘って隙間なく連続させたことを特徴とするダクトの接続構造。
【請求項2】
前記分岐管11の外周に設けられる断熱材層13aは、気密性を有することを特徴とする請求項1に記載のダクトの接続構造。
【請求項3】
前記分岐管11の外周に設けられる断熱材層13は、前記根元部12の外周に設けられる断熱材層13aと、その根元部12よりも先端側に接続された他の管体21の外周に設けられる断熱材層13bとが隙間なく連続して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のダクトの接続構造。
【請求項4】
前記根元部12の断熱材層13aと本管1の断熱材層5とは粘着テープTで接続されることにより、前記根元部12の断熱材層13aと本管1の断熱材層5とを隙間無く連続させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のダクトの接続構造。
【請求項5】
前記爪部15にピン16を固定し、そのピン16を前記本管1の外側へ引き出して前記本管1の少なくとも一部を挟んで設けた固定部材17に係止することにより、前記分岐管11を前記本管1に固定したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のダクトの接続構造。
【請求項6】
前記根元部12の端縁12aは、前記本管1の内周面1aに沿って形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のダクトの接続構造。
【請求項7】
前記本管1は、フレキシブルダクトであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のダクトの接続構造。
【請求項8】
前記根元部12の断熱材層13aは、前記分岐管11の外周に巻き付けられた発泡ゴムシートであることを特徴とする請求項7に記載のダクトの接続構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−79838(P2009−79838A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249804(P2007−249804)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
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