説明

ダクト入りシートクッション

【課題】シートパッドと配風用ダクトとの組付け作業負担を解消し、さらに該配風用ダクトとその上流側接続管との連結をも容易にし、配風用ダクトと接続管の取付け作業性を向上させる。
【解決手段】乗員当接側の表面1aに窪み20を複数設けたシートパッド1と、該シートパッドの裏面1bに分配ダクト主部6を配し、その表面側に、前記窪み20とそれぞれ整合して、エア吐出口64を開設する一方、該分配ダクト主部6の裏面側に、筒体61aと該筒体61aから外方へ張出すフランジ61bとを有するエア導入筒部61を突出形成した配風用ダクト5と、を具備し、前記シートパッド1が該配風用ダクト5をインサートして一体発泡成形され、前記フランジ61bの背面側に位置するシートパッド裏面の部位に、その部位よりも外域周囲のシートパッド裏面と比べ、一段高くなった段部12を設け、該段部12の先端面121が該フランジ61bの背面に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用座席シートを構成するシートクッションで、ダクトをインサート成形で一体化したダクト入りシートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される座席シートの座部や背もたれを構成するシートクッションは乗員が座って直かに接する部分であり、暑い季節になると乗員はその箇所が汗ばむ一方、冬の季節を向かえると冷たく感じることがある。こうしたことから、シートパッド内部に配風通路を設けて温度調整された空気を送ることのできる座席シートが提案されている(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−125990号公報
【特許文献2】実開昭61−55858号公報
【特許文献3】特開2000−52747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1〜3のいずれの発明も、シートパッドと配風通路になる送風経路形成手段等のダクトとが別体構成のシートクッションであった。シートパッドとダクトを別々に造った後、後工程で両者を組付けていかねばならず、組付け作業負担を強いられた。従来、シートパッドのなかに送風経路形成手段等のダクトが一体発泡成形されたダクト入りシートクッションは存在しない。仮に、シートパッドの中にダクトが一体発泡成形されたとしても、そのままではダクトを埋設したシートパッドが邪魔をし、該ダクトとその上流側接続管との連結が難しくなっている。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、シートパッドと配風用ダクトとの組付け作業負担を解消し、さらに該配風用ダクトとその上流側接続管との連結をも容易にし、配風用ダクトと接続管の取付け作業性を向上させるダクト入りシートクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、車両用座席シートを構成するシートクッション(S)であって、乗員当接側の表面(1a)に空気吹き出し口(20)を複数設けたシートパッド(1)と、該シートパッド中に配置され、前記空気吹き出し口(20)にエア噴出口(64)が連通する配風用ダクト(5)とを備え、その配風用ダクト(5)の裏面側には、エア導入口(e)になる筒体(61a)と該筒体(61)から外方へ張出すフランジ(61b)とを有するエア導入筒部(61)が突出形成されると共に、前記シートパッド(1)は該配風用ダクト(5)をインサートして一体発泡成形され、且つ前記フランジ(61b)の背面側に位置するシートパッド裏面の部位(1b2)に、その部位よりも外域周囲のシートパッド裏面(1b1)と比べ、一段高くなった段部(12)を設け、該段部(12)の先端面(121)が該フランジ(61b)の背面に当接していることを特徴とするダクト入りシートクッションにある。
請求項2の発明たるダクト入りシートクッションは、請求項1で、配風用ダクト(5)には、発泡成形される前記シートパッド(1)と非接着性の樹脂製ダクトが用いられることを特徴とする。請求項3の発明たるダクト入りシートクッションは、請求項1又は2で、不織布(91)をさらに具備し、前記シートパッド(1)が該不織布(91)をインサートして一体発泡成形され、且つ該シートパッド(1)の裏面(1b)の前記段部(12)には該不織布(91)が配されていないことを特徴とする。請求項4の発明たるダクト入りシートクッションは、請求項1〜3で、段部(12)と接する前記フランジ(61b)及び前記筒体(61a)に、離型剤(k)が塗布されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のダクト入りシートクッションは、配風用ダクトをインサートしてシートパッドが一体発泡成形されることによって、これまで要した配風用ダクトとシートパッドの組付け作業をなくし、さらに、該配風用ダクトとその上流側接続管との連結も容易にして、配風用ダクトと接続管の取付け作業を向上させるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のダクト入りシートクッション一形態で、表皮を省いたダクト入りシートパッドの斜視図である。
【図2】図1のシートパッドの窪みにノズル部の先端口が対応配設される配風用ダクトの斜視図である。
【図3】図1のダクト入りシートクッションを裏面側から見た概略斜視図である。
【図4】図2のIV-IV線矢視図である。
【図5】図1のV-V線矢視図である。
【図6】図1の部分拡大図である。
【図7】図5のエア導入筒部周りの拡大断面図である。
【図8】図6のエア導入筒部に接続管を連結した様子を示す拡大断面図である。
【図9】図8で、エア導入筒部と接続管との連結で、連結用留め具が段部に与える負荷の様子を示す概略説明図である。
【図10】図7,図8との対比図で、(イ)が段部のないエア導入筒部周りの拡大断面図で、(ロ)がそのエア導入筒部に接続ダクトを連結した様子を示す拡大断面図である。
【図11】図10(ロ)で、エア導入筒部と接続ダクトとの連結で、連結用留め具が段部に与える負荷の様子を示す概略説明図である。
【図12】図10(イ)の配風用ダクト入りシートパッドを発泡成形する発泡型の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るダクト入りシートクッションについて詳述する。図1〜図9は本発明のダクト入りシートクッションの一形態で、図1はその斜視図、図2は配風用ダクトの斜視図、図3は図1のダクト入りシートクッションを裏面側から見た斜視図、図4は図2のIV-IV線矢視図、図5は図1のV-V線矢視図、図6は図1の部分拡大図、図7は図5のエア導入筒部周りの拡大断面図、図8はエア導入筒部に接続管を連結した様子の断面図、図9は図8の連結で、留め具と段部との関係を示す説明図を示す。
図面を判り易くするため、図1は表皮の図示を省き、図7,図8は不織布の図示を省く。図5はダクト流路を判り易くするため、便宜的に分配ダクト主部に係る横筒部とエア導入筒部とを同一断面上に描く。
【0010】
ダクト入りシートクッションSは、シートパッド1と配風用ダクト5(以下、単に「ダクト」という。)と不織布91と表皮99とを具備する(図4)。このダクト入りシートクッションSは、車両用座席シートの座部やバックレストに使用される。座部が着座する乗員Mの下半身を受け支え(図5)、その後部にバックレストを傾動可能に取付けて乗員Mの上半身を保持し、さらにバックレスト上端部にヘッドレストを取付けて乗員頭部を護る。
【0011】
以下、本実施形態のシートパッド1は、座部に使用するものを例にする。シートパッド1は、ポリウレタン材料等の発泡樹脂材料を用いて、シートクッションSの形状に発泡成形された発泡体である。クッション性に富むシートパッド1は、図1,図5のごとく、乗員の臀部及び大腿部を支持するメイン部2と、該メイン部2の両側で臀部及び大腿部の側部を支持するサイド部3とに大別される。乗員Mが車両走行で横方向の加速度を受けても姿勢を良好に保てるように、サイド部3はメイン部2に対し隆起形成する。ここで、図1の紙面左右方向が車両進行方向又は車両前後方向で、本発明では縦方向ともいう。図1の紙面右方向が車両前進方向になる。図1の紙面上下方向が車幅方向で、本発明では横方向ともいう。図1の紙面垂直方向が本発明の上下方向で、紙面垂直上方向が上方向(表面側)になる。
【0012】
シートパッド1の表面1aには、後工程で張り込む表皮99を引張固定するための吊溝41が形成される(図1)。吊溝41はメイン部2とサイド部3の境界部分で車両前後方向に走る縦溝41aが一対形成され、両縦溝41aをつなぐ横溝41bが車幅方向に形成される。符号42はホグリング部を示す。
乗員当接側となる該シートパッド1の表面1aには、空調エアが吹き出す空気吹き出し口20用の窪みが、必要箇所に複数点在して設けられる。本実施形態はメイン部2に空気吹き出し口20を6箇所設ける。そして、各窪み20にエア噴出口64を整合させたダクト5が配設される。
【0013】
ダクト5はシートパッド1の中に配される樹脂製管状部材で、該ダクト5の表面側には、前記各空気吹き出し口20とそれぞれ整合して、ダクト内流路60と空気吹き出し口20とを導通させるエア噴出口64が開設される。本実施形態では、シートパッド1に係るメイン部2の裏面2b沿いにダクト5の分配ダクト主部6が縦横に走るように設けられ、また該分配ダクト主部6の表面側に、短管からなるエア噴出口64用のノズル部65が複数立設する(図2,図4)。そして、前記各空気吹き出し口20に、ノズル部65に係る各先端口65aのエア噴出口64が整合するようにダクト5がインサートされた後、シートパッド1の発泡成形で、該ダクト5がシートパッド1に一体化する。
【0014】
本実施形態のダクト5は、一対の前記縦溝41aの間隔よりも若干狭い間隔で車両前後方向に走る一対の縦筒部6aと、両縦筒部6aの略中央で車幅方向に走って両縦筒部6aを連結する横筒部6bとで、図2のごとく平面視略H字状した配風流路60の分配ダクト主部6を有する。分配ダクト主部6がメイン部2の裏面2b沿いに配され、且つ各ノズル先端口65aのエア噴出口64を前記空気吹き出し口20にそれぞれ整合させ、ダクト内流路60が空気吹き出し口20内と導通するようにして、前記シートパッド1がダクト5と一体発泡成形される。図4,図5のように、分配ダクト主部6がメイン部裏面2b沿いに配されて、シートパッド1が一体成形されるため、ダクト5が存在しても、分配ダクト主部6の上方で、乗員Mが座るメイン部2には十分なパッド厚みが確保される。
尚、分配ダクト主部6は、図4,図5では分配ダクト主部6の一部がシートパッド裏面1bに露出し、シートパッド1の裏面1b沿いに配されているが、分配ダクト主部6はシートパッド1に完全埋設されてもよい。
【0015】
一方、本ダクト5に係る分配ダクト主部6の裏面側には、エア導入口eになる筒体61aと該筒体から外方へ張出すフランジ61bとを有するエア導入筒部61が設けられる。分配ダクト主部6の裏面側(下面側)に、エア導入口eたる筒口を有するエア導入筒部61が立設する。エア導入筒部61は、横筒部6bの裏面中央に立設し、図3,図4のごとくシートクッションSの裏面ほぼ中央から突出する。シートパッド1の裏面1b側に、該エア導入筒部61の先端口たるエア導入口eが覗き、該エア導入口eが接続管を介して送風ユニットにつながる。
【0016】
具体的には、本ダクト5に係る分配ダクト主部6の裏面側に、エア導入口e用の筒体61aと該筒体から外方へ張出すフランジ61bとを有し、分配ダクト主部6の裏面側に該エア導入筒部61が突出形成される(図1〜図4)。さらに、シートパッド1がダクト5をインサートして一体発泡成形されるが、フランジ61bの背面61b側に位置するシートパッド裏面の部位1bに、その部位よりも外域周囲のシートパッド裏面1bと比べ、一段高くなった段部12を設ける(図7)。フランジ61bよりも外側周囲に在るシートパッド1の外域裏面1bに対し、フランジ61bの在る部位1bが、シートパッド1の発泡成形で隆起して、シートパッド1の段部12を形成する。そして、該段部12の先端面121がフランジ61bの背面61bに当接する。この「フランジ61bの背面」とは、図4で、分配ダクト主部6側に面するフランジ面をいう。
分配ダクト主部6の裏面側にエア導入筒部61が突出し、該エア導入筒部61の筒体61a及びフランジ背面61bをシートパッド1が覆うものの、相手フランジとのフランジ締結面61bが露出し、該フランジ背面61bの箇所にはシートパッド1の段部12が形成される
【0017】
かくして、エア導入筒部61に設けたフランジ61bと接続管Dに設けたフランジDを突き合わせ、クリップやリベット等の留め具Pで両フランジ61b,Dを締結できる。尚、符号Dは接続管Dの管本体を示し、図7,図8では、図3〜図5と違って、フランジ61bを筒体61aの突端61aよりも筒体基端側へ若干後退させて図示している。エア導入筒部61と接続管Dとが連結された後、送風ユニットから接続管Dを経由してエア導入口eに空調エアが供給される。空調エアが、図4のごとく配風流路60を形成するダクト5内を通って各ノズル先端口65aを経て、窪みの上面開口20cから吹き出す構造とする。
【0018】
ところで、本ダクト入りシートクッションSに係るダクト5入りシートパッド1は、フランジ61bの背面側部位1bに、該フランジ61bの外域周囲の裏面1bと比べ、一段盛り上がった段部12を設けることにより、クリップ等の留め具Pによる両フランジ61b,Dの結合を円滑に行う。もし段部12を設けないと厄介な問題に直面する。
【0019】
シートパッド1がフランジ61b付きエア導入筒部61をインサートして発泡成形される場合、通常、図12のような発泡型Tが用いられる。図12中、符号Tは下型、符号Tは上型、符号jはヒンジ部を示し、ダクト5,分配ダクト主部6,ノズル部65を簡略図示する。図12の発泡型Tを用いて発泡成形されるダクト入りシートパッドは、ダクト5を下型Tにセットするため、締結用フランジ61bの背面にはシートパッド1の潜り込み部分19が必ず存在する(図10のイ)。そのため、エア導入筒部61と接続管Dを連結する前記両フランジ61b,Dの結合作業は困難になる。
図10(ロ)のごとく、例えば留め具Pたるリベットの高さを10mm以上を撓ませて、接続管Dとの連結を行うが、撓ませるのに非常に強い力を必要とする。シートパッド1のフランジ背面61bとフランジ61bの外側領域に在るシートパッド裏面1bとが面一で平坦な場合、リベット等の留め具Pの先端Pをシートパッド1に押し当てて必要高さ分を撓ませようとすると、シートパッド1が弾性体からなるため、押し当てる箇所にとどまらず、弾性変形が波及する周囲域全体をも撓ませる必要がある。図10中、符号Fは撓んで出来る凹所、符号Fはその外周縁を示す。図11でいえば、留め具Pたるリベットの高さを撓ませる場合、その撓みでシートパッド1が弾性変形で追随する直径dの大きな範囲を撓ませる外力を要し、エア導入筒部61と接続管Dとの連結作業に大きな負担を強いられる。改善策としてエア導入筒部61と接続管Dとのフランジ接続に先立ち、留め具Pの先端Pが当たるシートパッド1に穴を開ける対応も考えられるが、また余計な作業工数が必要になる。
【0020】
これに対し、本発明に係るダクト5入りシートパッド1は、フランジ61bの背面61b側に配されるシートパッド裏面の部位1bに、フランジ61bよりも外域周囲に位置するシートパッド裏面1bと比べ、一段高くなった段部12を設ける構成である。よって、留め具Pたるリベットの高さを撓ませる際、その撓みで変形追随するシートパッド1の範囲が小さくなり、撓みに必要な力を軽減できる。シートパッド1の発泡成形で、段部12の先端面121がフランジ61bの背面61bに当接するものの、フランジ61bの孔61bに留め具Pを挿通し、その高さたる10mm以上を撓ませるに要するシートパッド1の範囲は、フランジ61bの面積幅Wに限定されることから好都合になる。フランジ61bの面積幅Wは図11の直径dに比べると小さい。リベット等の留め具Pをフランジ孔へ挿入し、図7,図9(イ)の状態下の高さhで先端面121の面積幅Wの段部12の部分だけを、図8,図9(ロ)のごとく、留め具Pで高さhにまで沈めるだけの力で足り、エア導入筒部61bと接続管Dとの連結が円滑に進む。
【0021】
ここで、本ダクト5に、発泡成形されるシートパッド1と非接着性の樹脂製ダクトを用いるとより好ましくなる。一体発泡成形されるシートパッドに対し接着性に乏しい樹脂製ダクトであると、エア導入筒部61と接続管Dとのフランジ結合で、リベット等の留め具Pを用いて段部高さhから段部高さhへ沈める際(図7〜図9)、段部12がダクト5(詳しくはエア導入筒部61)に引き留められることなく、留め具Pに押し当てられる力に応じて、図7から図8へとスムーズに撓み、変形対応するからである。「発泡成形されるシートパッド1と非接着性の樹脂製ダクト」とは、シートパッド1がウレタン発泡体である場合、その発泡成形でインサートされてもウレタン発泡体との接着し難い樹脂製ダクトで、具体的にはポリプロピレン樹脂,ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂製ダクトをいう。本実施形態はシートパッド1にウレタン発泡体を用い、ダクト5にポリプロピレン樹脂製ダクトを用いる。そのため、エア導入筒部61と接続管Dのフランジ結合作業がより円滑に行える構造になっている。
【0022】
さらに、図7に示すように、段部12と接する前記フランジ61b及び前記筒体61aに離型剤kが塗布されると、より一層好ましくなる。エア導入筒部61と接続管Dとをフランジ結合する際(図8)、リベット等の留め具Pに押し当てられる力に応じて段部12がエア導入筒部61を円滑摺動し、図7から図8へと段部12がより一層スムーズに撓み変形するからである。
【0023】
シートパッド1は、該シートパッド1の裏面1bに不織布91をインサート成形して一体発泡成形される。これによりシートフレームとシートパッド1との擦れによる異音を低減することができる。不織布91は、シートパッド1の裏面1bで、フランジ61bが在る部位以外のシートパッド1の裏面1bに被着一体化される。本実施形態は、シートパッド1の裏面1bで、エア導入筒部61の領域以外の分配ダクト主部6を、不織布91がカバーしてシートパッド裏面1bに被着一体化される。詳しくは、不織布91が、図3,図4のようにシートパッド裏面1bに突出するエア導入筒部61で、シートパッド1から露出するフランジ61b、さらにシートパッド1が造る段部12の領域を除いたシートパッド裏面1bのほぼ全域を覆って、シートパッド1に一体化される。
【0024】
不織布91は、前記フランジ61bが在る部位には配置されないので、シートパッド1を該不織布と一体発泡成形する際、前記段部12が、それ以外のシートパッド裏面1bからより確実に分離して、シートパッド裏面1bに隆起形成される。
ちなみに、不織布91が、前記フランジ61bが在る部位に配置されていると、段部12の側壁と不織布91が接着し、その不織布がフランジ61bを覆ってしまうため、留め具の挿入時にシートパッド1(詳しくは段部12)を撓ませることが困難になる。
【0025】
表皮99は少なくともシートパッド1の乗員当接側を覆うシートで(図4)、通気性を有するファブリック表皮99や小孔を多数設けた孔開きレザー表皮等が用いられる。
不織布91が被着一体化された前記ダクト5入りシートパッド1に、表皮99を張込んで、ダクト入りシートクッションSが出来上がる。表皮99の張込みは、表皮99の裏面に設けたホグリング用クリップを表皮張込み用吊溝41に配置されたホグリング部42に係合させて行われる。前記接続管Dをつなげば、送風ユニットからの空調エアが、ダクト5,窪み20を経由しさらに表皮99を通って、シートクッションSに着座する乗員Mに到達する所望のダクト入りシートクッションSが出来上がる(図1〜図9)。
【0026】
このように構成したダクト入りシートクッションSは、エア導入筒部61のフランジ61bの背面61bに位置するシートパッド裏面の部位1bに、その部位よりも外域周囲のシートパッド裏面1bと比べ、一段高くなったシートパッド1の段部12が設けられるので、エア導入筒部61のフランジ61bと送風ユニットにつながる接続管DのフランジDとの締結が容易になる。リベット等の留め具Pを両フランジ61b,Dの孔に挿通し、一段高くなった段部12の面を留め具先端Pで図9のごとく押し付け、この部分を撓ませるだけで図8のようにフランジ結合ができる。図12のような通常の発泡型Tで造られる一般的ダクト入りシートパッドでは、フランジ61b周りにシートパッド裏面1bが面一に存在し、且つシートパッド1が弾性体からなるため、留め具Pで押し付けた力が図10のように広い範囲が変形伝播し、その広い範囲を撓ませねばフランジ結合できなかった。エア導入筒部61と接続管Dのフランジ61b,Dとの締結は至難であった。
【0027】
これに対し、本ダクト入りシートクッションSは、シートパッド1の発泡成形で、図12の潜り込み部分19を許容し、ダクト5を埋設一体成形することによって、従来必要としたダクト5とシートパッド1の組付け作業をなくす。シートパッド1がフランジ61bの背面61bに当接するのは許容して、シートパッド1がダクト5をインサートして一体発泡成形される構成を維持し、特許文献1〜3で問題となっていた組付け作業負担を解消する。その一方で、シートパッド1がダクト5をインサートして一体発泡成形されることによって派生するエア導入部61と、送風ユニットにつながる接続管Dと、をフランジ結合させる作業の難しさは、段部12を形成して解決する。シートパッド1は段部12の先端面121としてフランジ61bの背面61bに当接するにとどめて、図7〜図9のごとく段部12の範囲だけを弾性変形させることで、エア導入筒部61bのフランジ61bと接続管DのフランジDとをリベット等の留め具Pで簡単に締結できるようにする。フランジ背面61bとフランジ61bの外側領域に在るシートパッド裏面1bとが面一で平坦な図10のシートパッド1では、フランジ締結で、留め具Pたるリベット高さを撓ませるのに、図11のごとくシートパッド1が弾性変形で追随する直径dの大きな範囲を撓ませねばならないのに対し、本ダクト入りシートクッションSは段部12の範囲だけで足り(図8)、両フランジ61b,Dの締結作業が容易になる。
【0028】
また、ダクト5に、発泡成形されるシートパッド1と非接着性のポリプロピレン樹脂等の樹脂製ダクトが用いられると、エア導入筒部61と接続管Dとのフランジ締結で、留め具Pたるリベット高さを撓ませる際、ダクト5(エア導入筒部61)がシートパッド1と解離して移動し易くなっていることから、フランジ61b,Dの締結作業が一層容易になる。
加えて、段部12と接するフランジ61b及び筒体61aに、離型剤kが塗布されれば、エア導入筒部61がシートパッド1とより一段と解離し易くなっているので、フランジ61b,Dの締結作業が極めて容易になる。ダクト5入りシートパッド1の一体発泡成形の長所を享受し、さらに、この発泡成形で、フランジ背面61bに当接するシートパッド1が新たに引き起こすフランジ締結作業の難しい問題をもほぼ完全解決する。
【0029】
加えて、シートパッド1が不織布91をインサートして一体発泡成形され、この不織布91がシートパッド1の裏面1bで、エア導入筒部61の領域である段部12以外に配設されると、シートフレームとシートパッド1との擦れによる異音を低減することができるとともに、フランジ61bを覆った不織布が段部12の側壁と接着することがないので、留め具Pの挿入時にシートパッド1(段部12)を撓ませられる。
【0030】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。シートパッド1,ダクト5,分配ダクト主部6,エア導入筒部61,不織布91,表皮99等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、実施形態ではエア噴出口64用のノズル部65を設けたが、ノズル部65を設けずに、ダクト主部6に孔を開けてエア吐出部64を直接設けることもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 シートパッド
1a 表面(シートパッドの表面)
1b 裏面(シートパッドの裏面)
1b フランジの背面側に位置するシートパッド裏面の部位
1b フランジ背面側部位よりも外域周囲のシートパッド裏面
12 段部
121 先端面
20 空気吹き出し口(窪み)
5 配風用ダクト(ダクト)
6 分配ダクト主部
61 エア導入筒部
61a 筒体
61b フランジ
61b 背面
64 エア噴出口
91 不織布
S シートクッション
e エア導入口
k 離型剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用座席シートを構成するシートクッション(S)であって、乗員当接側の表面(1a)に空気吹き出し口(20)を複数設けたシートパッド(1)と、該シートパッド中に配置され、前記空気吹き出し口(20)にエア噴出口(64)が連通する配風用ダクト(5)とを備え、その配風用ダクト(5)の裏面側には、エア導入口(e)になる筒体(61a)と該筒体(61)から外方へ張出すフランジ(61b)とを有するエア導入筒部(61)が突出形成されると共に、
前記シートパッド(1)は該配風用ダクト(5)をインサートして一体発泡成形され、且つ前記フランジ(61b)の背面側に位置するシートパッド裏面の部位(1b2)に、その部位よりも外域周囲のシートパッド裏面(1b1)と比べ、一段高くなった段部(12)を設け、該段部(12)の先端面(121)が該フランジ(61b)の背面に当接していることを特徴とするダクト入りシートクッション。
【請求項2】
前記配風用ダクト(5)には、発泡成形される前記シートパッド(1)と非接着性の樹脂製ダクトが用いられる請求項1記載のダクト入りシートクッション。
【請求項3】
不織布(91)をさらに具備し、前記シートパッド(1)が該不織布(91)をインサートして一体発泡成形され、且つ該シートパッド(1)の裏面(1b)の前記段部(12)には該不織布(91)が配されていない請求項1又は2に記載のダクト入りシートクッション。
【請求項4】
前記段部(12)と接する前記フランジ(61b)及び前記筒体(61a)に、離型剤(k)が塗布される請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダクト入りシートクッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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