説明

ダスト除去装置

【課題】省スペースで構造的に簡単且つ低コストで運転可能な排ガス中のダストを除去するダスト除去装置を提供することを目的とする。
【解決手段】粉塵、飛灰、微粉炭等の粉粒物(以下ダストという)を含んだガスが通流するダクト1よりダストを除去するダスト除去装置において、少なくとも45°以下の傾き方向若しくは水平方向にほぼ直線状に流路が形成されている部位に、重力方向に向けて拡幅化されてなるバッファ部5を設けると共に、バッファ部5のガス流れ方向下流側位置(好ましくは終端側位置)に邪魔板2を設置し、邪魔板2によりガスが重力方向に迂回してバッファ部5終端より下流側に位置する流路に流れるように邪魔板2の取付位置と高さ及び幅域を設定するとともに、迂回時にダストに作用する遠心力によりダストをバッファ5底壁側に捕集し、バッファ5底壁側のダストの堆積位置7,8に開閉可能な開口部3を設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉塵、飛灰、微粉炭等の粉粒物(以下ダストという)を含んだガスが通流するダクト、例えば燃焼炉の排ガス通路若しくは煙道、若しくは微粉炭を空気などと混合して搬送する搬送路して機能するダクトよりダストを除去するダスト除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばごみ固形燃料化設備、ごみ焼却炉、一般焼却炉などにおいて、粉塵、飛灰、微粉炭等の粉粒物(以下ダストという)を含んだ排ガスが排出され、排ガス中に含まれる多くのダストにより周囲環境が悪化するので、その環境の悪化を防止するため排気する際に除塵するようにされている。このダストを含んだ排ガスは高温であるため、途中で発火して下流に設置される集塵器に送込まれることがある。このダストを除去する装置の一つにサイクロンがある。サイクロンは、ダストまたは固体粒子とガス体との混相流すなわち含塵気流からダストを遠心分離する除塵装置の一種であるが、設置スペースの確保が困難であり、コストもかかる。
【0003】
よって、より簡便なダスト除去として、排気ガス中に含まれるダストを集塵器以外の手段で除去する特許文献1(特開平10−230116号公報)が開示されている。特許文献1は、ダストを含む排ガスが流れる流路の断面積を拡大して排ガス流速を低減させ、ダストを分離して除去しようとするものである。詳しくは、粉状化した廃棄物または灰を高温で溶融処理する連続式溶融炉の排ガス通路構造において、前記溶融炉の上部に接続したテーパー状の接続部を下部に備え、且つダスト除去手段を上部に備えたダスト分離室を設け、ダスト分離室の上方に分離室上部径より小径のダクトを接続させた構成とし、流速を低減させることでダストの分離を促進している。
【0004】
また、特許文献2(特開平10−183232号公報)には、真空脱ガス装置のガスクーラーあるいはその隣接するダクトに、ガスクーラーの水管の表面に向かってガス体を吹き付けるノズルを有するランスを設けてダストを除去する発明が開示されている。特許文献2では、排ガスが流れているガスクーラーの水管に付着したダストを、ランスにガス体を供給して吹きつけることにより、水管の表面についているダストを除去している。なお、ここで用いられているガス体としては、蒸気、窒素ガス、空気、Arなどの不活性ガスやCO2等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−230116号公報
【特許文献2】特開平10−183232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、構造的に簡単で設置スペースを少なくできるダスト除去の構造ではあるが、小粒径ダストの捕集、除去についての具体的な方法は提案されておらず、排ガス流速を低減させることで比較的粒径が大きいダストは分離することができても小粒径ダストを分離するには不十分であると考えられる。
また、特許文献2に開示された発明では、連続的に吹き付けを行った場合、ガス体の消費量が増大し、コストがかかる。またコストの問題を解消するために、一定時間おきに駆動して吹き付けを行なった場合、効率が低下してダストの堆積が進行するという問題点が挙げられる。
【0007】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、省スペースで構造的に簡単且つ低コストで運転可能な排ガス中のダストを除去するダスト除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、粉塵、飛灰、微粉炭等の粉粒物(以下ダストという)を含んだガスが通流するダクトよりダストを除去するダスト除去装置において、
前記少なくとも45°以下の傾き方向若しくは水平方向にほぼ直線状に流路が形成されている部位に、重力方向に向けて拡幅化されてなるバッファ部を設けると共に、バッファ部のガス流れ方向下流側位置(好ましくは終端側位置)に邪魔板を設置し、該邪魔板により前記ガスが重力方向に迂回してバッファ部終端より下流側に位置する流路に流れるように邪魔板の取付位置と高さ及び幅域を設定するとともに、前記迂回時にダストに作用する遠心力によりダストをバッファ底壁側に捕集し、該バッファ底壁側の前記ダストの堆積位置に開閉可能な開口部を設けたことを特徴とする。
【0009】
このようにガス流路にバッファ部を設けることにより、ガス流路の断面積が急激に大きくなるバッファ部の入口部で流れが剥離し、よどんだ部分が形成されダストが捕集されやすくなり、バッファ部にダストが堆積される。また、上述した剥離域で堆積されずにガス流路にのったままダストも、バッファ部のガス流れ方向下流側位置に設置された邪魔板に衝突し重力で落下するため捕集することができる。
また、ダストの堆積位置に開口部を設けることにより、ダストの堆積が顕著になった場合にダストを開口部より抜き出して除去することが可能である。
【0010】
また、前記邪魔板はバッファ部のガス流れ方向下流側に位置するバッファ部上壁よりガス流れ方向(投影方向)において下流側流路を塞ぐ如くその下方延在長さを設定したことを特徴とする。
このように、バッファ部のガス流れ方向下流側位置に設置された邪魔板は、ガス流路を塞いで排ガス中のダストの分離除去を促進する。
【発明の効果】
【0011】
以上記載のごとく本発明によれば、ガス流路にバッファ部を設けることにより、ガス流路の断面積が急激に大きくなるバッファ部の入口部で流れが剥離し、よどんだ部分が形成されダストが捕集されやすくなり、バッファ部にダストが堆積される。また、上述した剥離域で堆積されずにガス流路にのったままダストも、バッファ部のガス流れ方向下流側位置に設置された邪魔板に衝突し重力で落下するため捕集することができる。
このようにして捕集して堆積されたダストは、ダクトに設けられた開閉可能な開口部により、ダストの堆積が顕著になった場合にダストを開口部より抜き出して除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】参考例1に係るダスト除去装置を示す概略側面図である。
【図2】参考例2に係るダスト除去装置を示す概略側面図である。
【図3】(a)は実施例1に係るダスト除去装置を示す概略側面図、(b)は図3(a)のA―A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例、及び本発明に対する参考例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【参考例1】
【0014】
図1は参考例1に係るダスト除去装置を示す概略側面図である。図1において、1はダスト(粉塵、飛灰、微粉炭等の粉粒物)を含んだガスが通流するダクト(ガス流路)、2はダクト内に設けられた邪魔板、3は開口部であり、4はダスト堆積位置、6はダクト1の角度変向若しくは湾曲により形成されるダクト曲がり部である。
なお、ダクト曲がり部6はダクト1の角度変向若しくは湾曲により形成されるものであり、ここでは例えばダクト1が直角に曲がって形成された曲がり部を示している。
【0015】
ダクト1を通流する排ガス中のダストは、ダクト曲がり部6を通過する際に、遠心力により曲がりの外側に振られてダスト堆積位置4に堆積する。この遠心力により曲がりの外側に振られるダストは、排ガス中有のダストの中でも比較的粒径の大きいものであるので、排ガスの流れに乗らず落下・沈降する。
一方、粒径の小さいダストは曲がりの外側に振られるものの、落下・沈降せず排ガスの流れにのったまま堆積しない場合が考えられ、これを捕集するために邪魔板2を設ける。ダストを含む排ガスの流路を塞ぐ邪魔板2にダストを衝突させることにより、ダストが落下し、ダスト堆積位置4に堆積するので分離を促進することができる。
【0016】
なお、邪魔板2はダクト曲がり部6のガス通流方向下流側に位置するダクト内壁部のガスの流れによる遠心力が作用する流路部位に設ける。邪魔板2の設置位置は、ガス流路径(ガス流路幅)をD、ダクト曲がり部6から邪魔板設置位置までの長さをLとしたとき、流路を塞がないL≦1D〜20Dの範囲で設置することが好ましく、特に排ガスの流速との関係からL≦3Dがより好ましい。
また、邪魔板2の高さHは、ガス流路径Dの半分である1/D以上であることが好ましく、邪魔板2の面積はダクト1の流路面積の半分以上であることが望ましい。
【0017】
ダスト堆積位置4に堆積されたダストは、ダクトに形成された開口部3により抜き出されて除去される。開口部3は通常は閉められており、ダスト堆積位置4のダストの堆積が顕著になった場合に開かれてダストを断続的に除去している。このようにして、ダストを含む排ガスからダストを分離除去することができる。
【参考例2】
【0018】
図2は、参考例2に係るダスト除去装置を示す概略側面図である。図1と同様に、1はダスト(粉塵、飛灰、微粉炭等の粉粒物)を含んだガスが通流するダクト(ガス流路)、2はダクト内に設けられた邪魔板、3は開口部であり、4はダスト堆積位置、6はダクト1の角度変向若しくは湾曲により形成されるダクト曲がり部を示しており、図1とほぼ同一の構成であるが、排ガスがダクト1の上方から下方へ流れる点が異なる。
【0019】
図2のように、ダクト1を通流する排ガス中のダストは、ダクト曲がり部6を通過する際に、遠心力により曲がりの外側に振られて重力によりダスト堆積位置4に堆積する。図2の場合、小粒径のダストも曲がりの外側に振られて重力によりダスト堆積位置4に堆積する。ダクト堆積位置4は邪魔板2上であるので、排ガスから分離されたダストが再び排ガスの流路に戻らないように、開口部3を開いて断続的にダストを除去する。
【実施例1】
【0020】
図3(a)は、実施例1に係るダスト除去装置を示す概略側面図を示し、図3(b)は図3(a)のA―A線に沿う断面図である。
図3において、1はダスト(粉塵、飛灰、微粉炭等の粉粒物)を含んだガスが通流するダクト(ガス流路)、2は邪魔板、3は開口部であり、7,8はダスト堆積位置、5はダクト1を拡幅して形成されたバッファである。
【0021】
ダクト1を通流する排ガス中は、ガス流路の断面積が急激に大きくなるバッファ5の入口部で流れが剥離し、よどんだ部分が形成されダストが捕集されやすくなり、バッファ5のダスト堆積位置7にダストが堆積される。
一方、剥離域で堆積されずにガス流路にのったままのダスト(小粒径のダスト)は、バッファ5のガス流れ方向下流側位置に設置された邪魔板2に衝突し重力で落下する。このため、ダストはダスト堆積位置8に堆積し、捕集することができる。このようにしてダスト堆積位置7,8に堆積したダストは、堆積が顕著になった場合に開口部3を開き抜き出して除去される。
【0022】
図3(a)に示すように、邪魔板2はダストと衝突させるために、バッファ5のガス流れ方向下流側位置に設置されており、バッファ5の上壁よりガス流れ方向(投影方向)において下流側流路を塞ぐ如くその下方延在長さを設定することが望ましい。つまり、邪魔板2の高さHはガス流路径Dよりも大とし、また邪魔板2の断面積はダクト1の断面積よりも大になるように形成する(図3(b))。
このように、バッファ5とともに邪魔板2を設けることにより、排ガス中のダストの分離除去を行なう。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、ダスト(粉塵、飛灰、微粉炭等の粉粒物)を含んだガスが通流するダクト、例えば燃焼炉の排ガス通路若しくは煙道、若しくは微粉炭を空気などと混合して搬送する搬送路して機能するダクトよりダストを除去するダスト除去装置として有益である。
【符号の説明】
【0024】
1 ダクト(ガス流路)
2 邪魔板
3 開口部
4 ダスト堆積位置
5 バッファ
6 ダクト曲がり部
7 ダスト堆積位置
8 ダスト堆積位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵、飛灰、微粉炭等の粉粒物(以下ダストという)を含んだガスが通流するダクトよりダストを除去するダスト除去装置において、
前記少なくとも45°以下の傾き方向若しくは水平方向にほぼ直線状に流路が形成されている部位に、重力方向に向けて拡幅化されてなるバッファ部を設けると共に、バッファ部のガス流れ方向下流側位置(好ましくは終端側位置)に邪魔板を設置し、該邪魔板により前記ガスが重力方向に迂回してバッファ部終端より下流側に位置する流路に流れるように邪魔板の取付位置と高さ及び幅域を設定するとともに、前記迂回時にダストに作用する遠心力によりダストをバッファ底壁側に捕集し、該バッファ底壁側の前記ダストの堆積位置に開閉可能な開口部を設けたことを特徴とするダスト除去装置。
【請求項2】
前記邪魔板はバッファ部のガス流れ方向下流側に位置するバッファ部上壁よりガス流れ方向(投影方向)において下流側流路を塞ぐ如くその下方延在長さを設定したことを特徴とする請求項1記載のダスト除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−27871(P2013−27871A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204762(P2012−204762)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2008−50032(P2008−50032)の分割
【原出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】