説明

ダッシュボード冷却システム

【課題】ダッシュボードを冷却するダッシュボード冷却システムを提供する。
【解決手段】ダッシュボード冷却システム1は、ダッシュボード4の上面に冷却パネル6が設けられ、車室3内と車外とを連通する通気路にラジエータ25とファン26とを有する放熱器24が設けられる。ポンプ22及びファン26が駆動すると、ダッシュボード4の上面は冷却液によって冷却され、昇温した冷却液は、車室3内の空気によって冷却され、車室3内は換気される。ダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気は、乗員による操作スイッチ28への入力指示と車室3内の温度とに基づいて行われる。操作スイッチ28は、オン、オフ及びオートの何れかに設定可能である。操作スイッチ28がオンに設定された場合、又はオートに設定されて車室3内の温度が所定温度以上の場合には、ダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるダッシュボード冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9−95124号公報には、自動車室内と車外とを連通する通気口に設けられた排気ファンを回転させ、自動車室内の空気を外気と強制的に交換し、自動車室内を外気温に近い状態に保持する換気装置が記載されている。
【0003】
また、特開2006−27461号公報には、インパネの内部空間に外気を導入してインパネの内部空間の滞留空気を車内空間に排気し、さらに車内の滞留空気を車外へ排気することで、インパネの内部空間の温度を下げてインパネ表面の温度を下げる換気装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−95124号公報
【特許文献2】特開2006−27461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、車両のフロントウィンドウパネルの直下に配置されるダッシュボードは、太陽光の入射に起因して高温になり易い。ダッシュボードの高温化は、車室内の温度上昇を招く。特に、夏場等で日射量が多く気温が高いときには、ダッシュボードの温度や車室内の温度は非常に高温となり、乗員に不快感を与える。このため、ダッシュボードの温度上昇を抑制することが望ましい。
【0006】
しかし、上記特開平9−95124号公報に記載された換気装置は、車室内を換気して車室内温度を低下させるものであり、ダッシュボードの温度を直接低下させるものではない。
【0007】
また、上記特開2006−27461号公報に記載された換気装置は、インパネの内部空間を換気することでインパネ表面の温度を低下させるものであり、太陽光の入射を受けて高温となるダッシュボードの上面を直接冷却するものではない。このため、ダッシュボードの温度を十分に低下させることができない可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、ダッシュボードの温度上昇を効果的に抑制することが可能なダッシュボード冷却システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、車両のダッシュボードの温度上昇を抑制するダッシュボード冷却システムであって、冷却路と循環路とポンプと放熱器と車室内温度検出センサと制御手段とを備える。
【0010】
冷却路は、冷却液が流入する流入口と流出する流出口とを有し、ダッシュボードの上面のほぼ全域の近傍を巡回する。循環路は、流入口と流出口とを連通する。ポンプは、循環路に設けられ、流出口から回収した冷却液を流入口へ循環供給する。放熱器は、循環路を流通する冷却液を冷却する。車室内温度検出センサは、車室内の温度を検出する。制御手段は、車室内温度検出センサが検出した車室内の温度が所定温度以上の場合、ポンプを駆動させ、検出した車室内の温度が所定温度未満の場合、ポンプを停止させる。
【0011】
上記構成では、車室内の温度が所定温度以上の場合には、制御手段によってポンプが駆動される。ポンプが駆動すると、冷却液は、流入口から冷却路へ流入してダッシュボードのほぼ全域の近傍を巡回して流出口から流出し、循環路を流通して再び流入口から冷却路へ流入する。ダッシュボードの上面は、冷却路を流通する冷却液によって冷却され、ダッシュボードを冷却して昇温した冷却液は、循環路を流通する間に放熱器で冷却される。一方、車室内の温度が所定温度未満の場合には、ポンプが停止される。ポンプが停止すると、冷却液は冷却路に循環供給されず、ダッシュボードの上面は冷却されない。このように、太陽光の入射を受けて高温となるダッシュボードの上面を、比較的比熱の大きい冷却液を循環させて冷却するので、ダッシュボードの温度上昇を効果的に抑制することができる。また、ダッシュボードの温度上昇が抑制されるので、間接的に車室内の温度上昇も抑制することができる。さらに、車室内の温度に応じてポンプが駆動又は停止されるので、冬場のように車室内の温度が低く、ダッシュボード及び車室内の温度上昇を抑制する必要がない場合には、ダッシュボードの冷却を行わず、夏場の炎天下に駐車したときのように車室内の温度が非常に高く、ダッシュボード及び車室内の温度上昇を抑制する必要がある場合には、ダッシュボードの冷却を行うことができる。
【0012】
上記ダッシュボード冷却システムは、通気路と開閉手段とを備えてもよく、放熱器はラジエータとファンとを有してもよい。通気路は、車室内と車外とを連通する。開閉手段は、通気路を、車室内と車外とを連通させる開放位置と、車室内と車外とを連通させない閉止位置とに選択的に設定可能である。ラジエータは、循環路に設けられ且つ通気路に配置されて内部を冷却液が流通する。ファンは、ラジエータの車室内側又は車外側の少なくとも一方に設けられてラジエータに通風する。制御手段は、検出した車室内の温度が所定温度以上の場合、開閉手段を開放位置に設定するとともにファンを駆動させ、検出した車室内の温度が所定温度未満の場合、開閉手段を閉止位置に設定するとともにファンを停止させる。
【0013】
上記構成では、放熱器は、ラジエータとファンとを有し、車室内と車外とを連通する通気路に設けられる。車室内の温度が所定温度以上の場合には、制御手段によって開閉手段が開放位置に設定されるとともにファンが駆動される。開閉手段が開放位置に設定されると、通気路は、車室内と車外とを連通する。ファンが駆動すると、通気路内に空気が流通する。ラジエータの内部を流通する昇温した冷却液は、通気路内を流通する空気によって冷却され、車室内は換気される。一方、車室内の温度が所定温度未満の場合には、開閉手段が閉止位置に設定されるとともにファンが停止される。開閉手段が閉止位置に設定されると、通気路は車室内と車外とを連通しない。このように、車室内と車外とを連通する通気路に、ラジエータとファンとを有する放熱器を設けているので、ダッシュボードの冷却と同時に車室内の換気を行うことができる。また、車室内の温度に応じてポンプ及びファンが駆動又は停止されるので、ダッシュボード及び車室内の温度上昇を抑制する必要がある場合にのみダッシュボードの冷却及び車室内の換気を行うことができる。また、ダッシュボードの冷却を行わない場合には、通気路は車室内と車外とを連通しないので、車室内への外気の流入が遮断され、エアコンの過剰使用を抑制することができる。
【0014】
上記ダッシュボード冷却システムは、ポンプ及びファンの駆動又は停止の指示、及び切り替え手段の設定指示が入力される入力手段を備えてもよい。制御手段は、車室内の温度に関わらず、入力手段に入力された指示に応じて、ポンプ及びファンを駆動又は停止させるとともに、開閉手段を開放位置又は閉止位置に設定する。
【0015】
上記構成では、ポンプ及びファンの駆動又は停止の指示と開閉手段の設定指示とが入力手段に入力されると、制御手段は、車室内の温度に関わらず、入力された指示に応じてポンプ及びファンと開閉手段とを制御する。従って、乗員が自己の判断によって任意にダッシュボードの冷却や車室内の換気を行うことができる。
【0016】
上記ダッシュボード冷却システムは、太陽光線を電力に変換する太陽電池とバッテリとを備えてもよい。この場合、ポンプ及びファンは、太陽電池からの電力によって直接駆動する。制御手段は、ポンプ及びファンを停止したとき、太陽電池が発電した電力をバッテリに供給させる。
【0017】
上記構成では、ダッシュボードの冷却及び車室内の換気を行う場合には、太陽電池が発電した電力が制御手段によってポンプ及びファンに供給され、ダッシュボードの冷却及び車室内の換気を行わない場合には、太陽電池が発電した電力がバッテリに供給される。ポンプ及びファンは、太陽電池から直接供給される電力によって駆動し、太陽電池の発電量は日射量に比例して変化するので、ポンプ及びファンの駆動は日射量に比例して変化する。このため、日射量が多いほど、冷却路に供給される冷却液の流量及びラジエータを通過する空気の風量は増大し、ダッシュボードの冷却効果及び車室内の換気効果が向上する。従って、ポンプ及びファンの駆動を制御することなく、環境条件に適したダッシュボードの冷却及び車室内の換気を行うことができる。また、ポンプ及びファンの駆動を制御するためのセンサ等が不要であるので、部品点数の増加を抑制し、システムを簡素化することができる。また、ダッシュボードの冷却及び車室内の換気を行わない場合には、太陽電池が発電した電力はバッテリに蓄電されるので、発電した電力を有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ダッシュボードの上面を冷却液によって冷却するので、ダッシュボードの温度上昇を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態のダッシュボード冷却システム1が搭載された車両2の概略図である。
【図2】ダッシュボード冷却システム1の構成図である。
【図3】冷却パネル6の平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態のダッシュボード冷却システム1について、図面を参照して説明する。図1は、ダッシュボード冷却システム1が搭載された車両2の概略図である。図2は、ダッシュボード冷却システム1の構成図である。図3(a)は、冷却パネル6の平面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A矢視断面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、ダッシュボード冷却システム1は、冷却パネル6と循環パイプ10と太陽電池14と通気ダクト17とポンプ22と放熱器24と操作スイッチ28と車室内温度検出センサ29とコントローラ30とを備え、車両2に搭載されている。放熱器24は、ラジエータ25とファン26とを有する。
【0022】
冷却パネル6は、図3(a)及び図3(b)に示すように、冷却パイプ7とカバー8とを有する。カバー8は、相対向する第1冷却プレート9aと第2冷却プレート9bとを有する薄板状の矩形箱状体であり、冷却パイプ7の外周を覆う。第1冷却プレート9aは、所望の柔軟性があり熱伝導率が低い(断熱性の)樹脂材等で形成され、第2冷却プレート9bは、所望の柔軟性があり熱伝導率が高い(高伝熱性の)樹脂材等で形成されている。
【0023】
冷却パイプ7は、所望の柔軟性があり熱伝導率が高い(高伝熱性の)樹脂材等で形成され、カバー8に保持される。冷却パイプ7の内周面は、冷却液の流路(冷却路)を形成している。冷却パイプ7の全長は、カバー8(第1及び第2冷却プレート9a,9b)の長手方向の長さの数倍に設定され、冷却パイプ7は、カバー8の長手方向に沿って延びる複数の直線部分を有するように蛇行状に曲折された状態でカバー8の内部に配置され、カバー8の内部のほぼ全域を巡回する。冷却パイプ7の一端(流入口)7aには、流入側コネクタ(図示省略)が固定され、他端(流出口)7bには、流出側コネクタ(図示省略)が固定されている。第1冷却プレート9aの周縁と第2冷却プレート9bの周縁とは、冷却パイプ7の両端7a,7bを露出させる開口部分を除く領域で、互いに接合されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、冷却パネル6は、ダッシュボード4の上面に載置され固定される。この状態で、第2冷却プレート9bは、ダッシュボード4の上面をほぼ全域に亘って覆うとともに、ダッシュボード4の上面に密着する。なお、冷却パネル6の構造は、上記に限定されない。例えば、冷却パイプ7を、カバー8の内部のほぼ全域を巡回する他の形状(例えば螺旋状)に配置してもよい。また、冷却パイプ7を省略し、カバー8の内面によって冷却液の流路を形成してもよい。
【0025】
循環パイプ10は、ポンプ22の流出口22bと冷却パイプ7の一端(流入側コネクタ)7aとを接続する第1管路11と、冷却パイプ7の他端(流出側コネクタ)7bとラジエータ25の流入口25aとを接続する第2管路12と、ラジエータ25の流出口25bとポンプ22の流入口22aとを接続する第3管路13とを有する。循環パイプ10は、熱伝導率が低い(断熱性の)金属材や樹脂材等によって形成される。循環パイプ10の内周面は、冷却液の流路(循環路)を形成し、この流路内を冷却液が封入された状態で流通する。循環パイプ10内の冷却液は、一端7aから冷却パイプ7に流入し、他端7bから循環パイプ10に流出する。
【0026】
太陽電池14は、車両2のルーフ5上に設けられ、太陽光線を電力に変換する。太陽電池14の電力供給線15は、コントローラ30を介してバッテリ16、弁駆動モータ21、ポンプモータ23及びファンモータ27に接続される。バッテリ16は、車両2に搭載され、車両2の始動時や走行時等に使用する各種モータを駆動するための電力が蓄電されている。太陽電池14の発電量は、日射量に比例して変化し、日射量の増減に応じて増減する。
【0027】
通気ダクト17は、車両2の後部の車内空間に設けられる。通気ダクト17の一端には、後部座席の後方で車室3内に開口する第1開口18が設けられ、他端には、車外に開口する第2開口19が設けられている。通気ダクト17の内周面は、通気路を形成している。通気ダクト17の内部の第1開口18の近傍には、開閉弁(開閉手段)20が設けられる。開閉弁20は、通気ダクト17に回転自在に支持され、弁駆動モータ21によって開放位置と閉止位置とに選択的に設定される。開閉位置の開閉弁20は、通気路を開放し、閉止位置の開放弁20は、第1開口18の近傍で通気路を閉止する。開閉弁20が開放位置に設定されると、通気路は、第1開口18及び第2開口19を介して車室3内と車外とを連通し、開閉弁20が閉止位置に設定されると、通気路は、車室3内と車外とを連通しない。弁駆動モータ21は、太陽電池14から直接供給される電力によって駆動する。なお、図1及び図2では、開閉弁20が開放位置に設定された状態を示している。また、本システム以外の用途のために車両2に設けられた通風用等のダクトを、本システムの通気ダクト17として用いてもよい。
【0028】
ポンプ22は、ポンプモータ23の回転軸に従動回転するインペラを有する遠心式ポンプであり、流入口22aから吸入した冷却液を、インペラの回転によって昇圧して流出口22bから吐出する。ポンプモータ23は、バッテリ16から断絶した状態で太陽電池14から直接供給される電力によって駆動し、太陽電池14の発電量は、日射量に比例して変化するため、ポンプ22の吐水量は、日射量に比例して変化する。
【0029】
放熱器24は、通気ダクト17の内部の第2開口19の近傍に配置され、ブラケット(図示省略)を介して通気ダクト17の内周面に支持される。ラジエータ25は、チューブとフィンとで構成されるコア部と、コア部の両端に位置する2つのタンクとを有する。2つのタンクの一方と他方とには、それぞれ流入口25aと流出口25bとが設けられ、冷却液は、一方のタンクの流入口25aから流入し、コア部のチューブを通過して、他方のタンクの流出口25bから流出する。ファン26は、ファンモータ27の回転軸に従動して回転する。ファン26が回転すると、第1開口18から通気路内に車室3内の空気が流入し、流入した空気がラジエータ25を通過して第2開口19から車外へ流出する。ファンモータ27は、バッテリ16から断絶した状態で太陽電池14から直接供給される電力によって駆動し、太陽電池14の発電量は、日射量に比例して変化するため、ファン26の送風量は、日射量に比例して変化する。
【0030】
操作スイッチ(入力手段)28は、乗員からの入力操作を受け、その入力に対応した情報をコントローラ30に出力する。操作スイッチ28は、乗員によってオンとオフとオートとに選択的に設定される。
【0031】
車室内温度検出センサ29は、車室3内に設けられ、所定時間毎に車室3内の温度を検出し、コントローラ30に出力する。
【0032】
コントローラ30には、操作スイッチ28からの指示信号と車室内温度検出センサ29からの車室内温度信号とが入力する。コントローラ30は、操作スイッチ28が受け付ける乗員からの各種入力に対応する情報と、車室内温度検出センサ29が検出する車室3内の温度とに基づいて、弁駆動モータ21の駆動を制御して開閉弁20の状態を適宜変更するとともに、ポンプモータ23及びファンモータ27を駆動又は停止してポンプ22及びファン26を駆動又は停止させる。コントローラ30による弁駆動モータ21の駆動制御は、弁駆動モータ21の作動のオン/オフと回転方向の変更とを含む。また、コントローラ30は、ポンプ22及びファン26を駆動させる場合には、太陽電池14が発電した電力をポンプモータ23及びファンモータ27へ供給してバッテリ16への電力の供給を遮断し、ポンプ22及びファン26を停止させる場合には、太陽電池14が発電した電力をバッテリ16へ供給してポンプモータ23及びファンモータ27への電力の供給を遮断する。
【0033】
コントローラ30は、操作スイッチ28がオンに設定された場合には、開閉弁20を開放位置に設定してポンプ22及びファン26を駆動させ、操作スイッチ28がオフに設定された場合には、開閉弁20を閉止位置に設定してポンプ22及びファン26を停止させる。また、操作スイッチ28がオートに設定された場合には、コントローラ30は、車室3内の温度に応じて開閉弁20を開放位置又は閉止位置に設定して、ポンプ22及びファン26を駆動又は停止させる。操作スイッチ28がオートに設定されると、コントローラ30は、車室3内の温度が所定温度以上の場合には、開閉弁20を開放位置に設定してポンプ22及びファン26を駆動させ、車室3内の温度が所定温度未満の場合には、開閉弁20を閉止位置に設定してポンプ22及びファン26を停止させる。すなわち、コントローラ30は、操作スイッチ28への入力指示と車室3内の温度とに応じて、開閉弁20を開放位置又は閉止位置に設定するとともに、ポンプ22及びファン26を駆動又は停止させる制御手段として機能する。
【0034】
上記のように構成されたダッシュボード冷却システム1では、操作スイッチ28がオンに設定された場合、又は操作スイッチ28がオートに設定されて車室3内の温度が所定温度以上の場合には、駆動中のポンプ22から吐出された冷却液は、第1管路11→冷却パネル6の冷却パイプ7→第2管路12→ラジエータ25→第3管路13→ポンプ22の順に循環する。また、車室3内の空気は、第1開口18から通気路内に流入し、ラジエータ25を通過して第2開口19から車外へ排出される。これにより、ダッシュボード4の上面は、冷却パイプ7を流通する冷却液によって冷却され、ダッシュボード4を冷却して昇温した冷却液は、主として車室3内の空気によって冷却され、車室3内は換気される。一方、操作スイッチ28がオフに設定された場合、又は操作スイッチ28がオートに設定されて車室3内の温度が所定温度未満の場合には、ダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気は行われず、太陽電池14が発電した電力はバッテリ16に供給され蓄電される。
【0035】
また、ポンプモータ23とファンモータ27とは、太陽電池14から直接供給される電力によってそれぞれ駆動し、ポンプ22の吐水量及びファン26の送風量は、日射量に比例してそれぞれ変化する。このため、日射しが強く日射量が多い環境下であるほど、冷却パイプ7に流入する冷却液の流量及びラジエータ25を通過する空気の風量が増大し、ダッシュボード4の冷却効果及び車室3内の換気効果が向上する。
【0036】
このように、本実施形態のダッシュボード冷却システム1によれば、太陽光の入射を受けて高温となるダッシュボード4の上面を、比較的比熱の大きい冷却液を循環させて冷却するので、ダッシュボード4の温度上昇を効果的に抑制することができ、ダッシュボード4の高温化に伴う車室3内の温度上昇を抑制することができる。
【0037】
また、ダッシュボード4の内部構造を変更することなく、冷却パネル6をダッシュボード4の上面に設けているため、既存の車両に対しても本システムを容易に適用することができる。
【0038】
また、放熱器24は、車室3内と車外とを連通する通気路に配置されているので、ダッシュボード4の冷却と同時に、車室3内を換気することができる。
【0039】
また、ダッシュボード4の冷却を行わない場合には、通気路が閉止されるので、車室3内への外気の流入が遮断され、エアコンの過剰使用を抑制することができる。
【0040】
また、乗員が操作スイッチ28をオン又はオフに設定することで、開閉弁20が開放位置又は閉止位置に設定されるとともに、ポンプ22及びファン26が駆動又は停止されるので、乗員が自己の判断によって任意にダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気を行うことができる。
【0041】
また、操作スイッチ28をオートに設定すると、車室3内の温度が所定温度以上の場合には、ダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気が行われ、車室3内の温度が所定温度未満の場合には、ダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気は行われない。このため、冬場のように車室3内の温度が低く、ダッシュボード4及び車室3内の温度上昇を抑制する必要がない場合には、ダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気を行わず、夏場の炎天下に駐車したときのように車室3内の温度が非常に高く、ダッシュボード4及び車室3内の温度上昇を抑制する必要がある場合には、ダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気を行うことができる。
【0042】
また、ダッシュボード4の冷却及び車室3内の冷却の有無は、乗員の意思と車室3内の温度との双方に基づいて設定されることに限定されず、何れか一方や他の判断基準に基づいて設定されてもよい。車室3内の温度のみに基づいて設定される場合、車室内温度検出センサ29とコントローラ30とに代えて、サーモスタットを車室3内に設け、サーモスタットからのオン/オフ信号に応じて、太陽電池14が発電した電力の供給先及び弁駆動モータ21の回転方向が制御されて開閉弁20の状態が切り替わってもよい。
【0043】
また、ポンプモータ23及びファンモータ27は、日射量に比例して発電量が変化する太陽電池14から直接供給される電力によって駆動するので、ポンプモータ23及びファンモータ27の駆動を制御することなく、ポンプ22の吐水量及びファン26の送風量が変化し、環境条件に適したダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気を行うことができる。
【0044】
また、弁駆動モータ21、ポンプモータ23及びファンモータ27は、太陽電池14からの電力のみで駆動されるので、ダッシュボード冷却システム1の作動はバッテリ16に対して影響を与えない。
【0045】
また、ダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気を行わない場合には、太陽電池14が発電した電力はバッテリ16に供給されるので、太陽電池14が発電した電力を有効に活用することができる。
【0046】
なお、ダッシュボード4を冷却する方法は、上記に限定されない。例えば、ダッシュボード4の上面のパネル内側に冷却液が流通するパイプを直接取り付けてもよく、ダッシュボード4の上面のパネルに、仕切板等で冷却液が流通する流路を形成して、冷却液を流通させてもよい。
【0047】
また、開閉弁20の状態を、コントローラ30によって変更設定せず、エアシリンダや油圧シリンダ等によって変更してもよい。
【0048】
また、通気路の状態を変更する方法は、上記に限定されない。例えば、第1開口18に開閉自在なルーバー等を設け、乗員が車室3内からルーバー等を直接操作することによって変更してもよく、また、第2開口19に風圧に応じて開閉する弁等を設け、ファン26の駆動により車室3内の空気が通気路内に流通して弁が開閉することによって変更されてもよい。
【0049】
また、ファン26の回転方向は、上記に限定されず、逆方向でもよく、環境条件に応じてファンモータ27の回転方向を制御して適宜変更してもよい。
【0050】
また、放熱器24の配置場所は、車室3内と車外とを連通する通気路以外であってもよい。この場合、ファン26の駆動によって車室3内の換気は行われないが、昇温した冷却液は車外の空気によって冷却されるので、ダッシュボード4の冷却効果が向上する。
【0051】
また、太陽電池14の配置場所は、上記に限定されず、例えば、ダッシュボード4上の冷却パネル6の上面であってもよい。太陽電池14は、自身の温度が低いほど発電効率が向上することから、太陽電池14を冷却パネル6の第1冷却プレート9aの上面に載置し、第1冷却プレート9aを、第2冷却プレート9bと同様に熱伝導率が高い樹脂等で形成することによって、太陽電池14の発電効率を向上させることができる。
【0052】
また、ダッシュボード4の冷却及び車室3内の換気を行わない場合における太陽電池14が発電した電力の用途は、上記に限定されず、例えば、車室3内に電気ヒータを設け、太陽電池14が発電した電力を電気ヒータに供給して作動させてもよい。
【0053】
上記実施形態は本発明の一例であり、本発明を逸脱しない範囲において変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、車両のダッシュボード及び車室内の温度上昇の抑制に有効である。
【符号の説明】
【0055】
1:ダッシュボード冷却システム
6:冷却パネル
7:冷却パイプ
8:カバー
9a,9b:第1及び第2冷却プレート
10:循環パイプ
11:第1管路
12:第2管路
13:第3管路
14:太陽電池
15:電力供給線
16:バッテリ
17:通気ダクト
20:開閉弁
21:弁駆動モータ
22:ポンプ
23:ポンプモータ
24:放熱器
25:ラジエータ
26:ファン
27:ファンモータ
28:操作スイッチ
29:車室内温度検出センサ
30:コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液が流入する流入口と流出する流出口とを有し、ダッシュボードの上面のほぼ全域の近傍を巡回する冷却路と、
前記流入口と前記流出口とを連通する循環路と、
前記循環路に設けられ、前記流出口から回収した冷却液を前記流入口へ循環供給するポンプと、
前記循環路を流通する冷却液を冷却する放熱器と、
車室内の温度を検出する車室内温度検出センサと、
前記車室内温度検出センサが検出した車室内の温度が所定温度以上の場合、前記ポンプを駆動させ、前記検出した車室内の温度が所定温度未満の場合、前記ポンプを停止させる制御手段と、を備える
ことを特徴とするダッシュボード冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載のダッシュボード冷却システムであって、
車室内と車外とを連通する通気路と、
前記通気路を、車室内と車外とを連通させる開放位置と、車室内と車外とを連通させない閉止位置とに選択的に設定可能な開閉手段と、を備え、
前記放熱器は、前記循環路に設けられ且つ前記通気路に配置されて内部を冷却液が流通するラジエータと、前記ラジエータの車室内側又は車外側の少なくとも一方に設けられて前記ラジエータに通風するファンとを有し、
前記制御手段は、前記検出した車室内の温度が所定温度以上の場合、前記開閉手段を前記開放位置に設定するとともに前記ファンを駆動させ、前記検出した車室内の温度が所定温度未満の場合、前記開閉手段を前記閉止位置に設定するとともに前記ファンを停止させる
ことを特徴とするダッシュボード冷却システム。
【請求項3】
請求項2に記載のダッシュボード冷却システムであって、
前記ポンプ及び前記ファンの駆動又は停止の指示、及び前記切り替え手段の設定指示が入力される入力手段を備え、
前記制御手段は、車室内の温度に関わらず、前記入力手段に入力された指示に応じて、前記ポンプ及び前記ファンを駆動又は停止させるとともに、前記開閉手段を前記開放位置又は前記閉止位置に設定する
ことを特徴とするダッシュボード冷却システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のダッシュボード冷却システムであって、
太陽光線を電力に変換する太陽電池と、
バッテリと、を備え、
前記ポンプ及び前記ファンは、前記太陽電池からの電力によって直接駆動し、
前記制御手段は、前記ポンプ及び前記ファンを停止したとき、前記太陽電池が発電した電力を前記バッテリに供給させる
ことを特徴とするダッシュボード冷却システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate