説明

ダブルホイール取付け構造

【課題】 インナーナットの緩み回転を防止できるダブルホイール取付け構造の提供。
【解決手段】 (1) ハブボルト1をインナーナット2を軸方向に貫通させてインナーナットの外に延ばし、該外に延ばした部分11に、ハブボルトのインナーナットとの螺合部に切ったねじのねじ切り方向と逆方向にねじ切りしたねじ12を切っておき、外に延ばした部分11に切ったねじ12にロックハブナット14を螺合するとともにロックハブナット14をインナーナット2に軸方向に当接させたダブルホイール取付け構造。
(2) ロックハブナットとインナーナットとの間に、軸方向の一方向でインナーナットに当接し他方向でロックハブナットに当接するスペーサ15を介在させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルホイール取付け構造に関し、とくにダブルホイール取付け構造におけるインナーナット緩み防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2002−181025号公報、特開2001−74018号公報に示されているように、または、図6に示すように、ハブ4に固定されたハブボルト1にインナーホイール5を押さえるインナーナット2を螺合し、インナーナットの外周にアウターホイール6を押さえるアウターナット3を螺合することによって、インナーホイールとアウターホイールのダブルホイールをハブに取付けるダブルホイール取付け構造に適用可能な、ボルト・ナット緩み防止装置は知られている。
【特許文献1】特開2002−181025号公報
【特許文献2】特開2001−74018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来構造では、インナーナットがハブボルトに対する緩み方向の回転を止める対策が講じられておらず、インナーナットが緩むとインナーホイールが緩むという問題がある。また、インナーナットが緩み方向に回転すると、インナーナット外周に螺合しているアウターナットもそれに連れ回りして緩むので、アウターホイールも緩み、ダブルホイール共に緩むという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、インナーナットの緩み回転を防止できるダブルホイール取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) ハブボルトにインナーホイールを押さえるインナーナットを螺合しインナーナットの外周にアウターホイールを押さえるアウターナットを螺合したダブルホイール取付け構造であって、
ハブボルトをインナーナットを軸方向に貫通させてインナーナットの外に延ばし、
ハブボルトのインナーナットの外に延ばした部分に、ハブボルトのインナーナットとの螺合部に切ったねじのねじ切り方向と逆方向にねじ切りしたねじを切っておき、
ハブボルトのインナーナットの外に延ばした部分に切ったねじにロックハブナットを螺合するとともにロックハブナットをインナーナットにインナーナットの軸方向に当接させたダブルホイール取付け構造。
(2) ロックハブナットとインナーナットとの間に、軸方向の一方向でインナーナットに当接し他方向でロックハブナットに当接するスペーサを介在させた(1)記載のダブルホイール取付け構造。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)のダブルホイール取付け構造によれば、ハブボルトのインナーナットの外に延ばした部分に、ハブボルトのインナーナットとの螺合部に切ったねじのねじ切り方向と逆方向にねじ切りしたねじを切っておき、ハブボルトのインナーナットの外に延ばした部分に切ったねじにロックハブナットを螺合するとともにロックハブナットをインナーナットに軸方向に当接させたので、インナーナットが緩み方向に回転する時に、ロックハブナットが連れ回りしようとすると、ロックハブナットはインナーナットが緩み方向に回転する時の軸方向の移動と反対方向に、軸方向に移動しようとし、インナーナットとロックハブナットの軸方向移動の方向が互いに逆方向でかつ食い込む方向となり、互いに移動できず、したがって互いに回転できずロックし、インナーナットの緩み回転を防止できる。
ただし、アウターナットの緩み回転まで防止するものではない。
上記(2)のダブルホイール取付け構造によれば、ロックハブナットとインナーナットとの間に、軸方向の一方向でインナーナットに当接し他方向でロックハブナットに当接するスペーサを介在させたので、インナーナットが緩み方向に回転する時に、スペーサを介してロックハブナットが連れ回りしようとすると、ロックハブナットはインナーナットが緩み方向に回転する時の軸方向の移動と反対方向に、軸方向に移動しようとし、インナーナットとロックハブナットの軸方向移動の方向が互いに逆方向でスペーサを互いに逆方向から押して互いに移動できず、したがって互いに回転できずロックし、インナーナットの緩み回転を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のダブルホイール取付け構造を、図1〜図5を参照して説明する。
図1、図2は本発明の実施例1を示しており、図3、図4は本発明の実施例2を示し、図5は本発明の実施例3を示す。
また、本発明の全実施例にわたって共通する部分には、本発明の全実施例にわたって同じ符号が付してある。
【0008】
まず、本発明の全実施例にわたって共通する部分を、図1〜図2を参照して説明する。
本発明のダブルホイール取付け構造は、ハブ4に固定されたハブボルト1にインナーホイール5を押さえるインナーナット2を螺合し、インナーナット2の外周にアウターホイール6を押さえるアウターナット3を螺合し、インナーホイール5とアウターホイール6のダブルホイールをハブ4に取り付けるダブルホイール取付け構造である。ハブボルト1は外周にねじ12が切ってある部分を有する。インナーナット2は内周にハブボルト1のねじ12と螺合するねじ20を有し、外周にアウターナット3が螺合するねじ21を有する。ハブボルト1、インナーナット2、インナーホイール5、アウターホイール6は同軸芯である。ねじ20、21、22のねじ切り方向は同じであり、たとえば、すべて右ねじか、すべて左ねじである。
ハブ4の一側にはブレーキドラム7が装着され、ドラム7はハブナット8とハブ4とで挟持される。ハブナット8はハブボルト1のドラム側の端部のねじ22に螺合される。ハブ4の他側にはインナーホイール5とアウターホイール6のダブルホイールが装着され、インナーホイール5はハブ4とインナーナット2の膨出部9とで挟持され、アウターホイール6はインナーナット2の膨出部9とアウターナット3とで挟持される。
【0009】
インナーナット2が緩み方向に回転するとインナーホイール5が緩み、かつ、アウターナット3がインナーナット2に連れ回りして緩み方向に回転しアウターホイール6も緩む。緩むとボルト折損を起こすおそれがあるので、インナーナット2が緩むことは防止されなければならない。本発明はダブルホイール取付け構造におけるインナーナット2の緩み防止構造を提供するものである。
【0010】
本発明のダブルホイール取付け構造では、インナーナット2の先端部(従来は閉塞端部となっていた部分)に軸方向貫通孔10が設けられており、ハブボルト1が、インナーナット2を軸方向に貫通して、すなわち貫通孔10を通り抜けて、インナーナット2の外に延びている。貫通孔10はねじが切られていない孔である。
【0011】
ハブボルト1のインナーナット2の外に延ばした部分11に、ハブボルト1のインナーナット2との螺合部に切ったねじ12のねじ切り方向と逆方向にねじ切りしたねじ13が切ってある。ねじ12が右ねじの場合はねじ13は左ねじであり、ねじ12が左ねじの場合はねじ13は右ねじである。ねじ13はねじ12より小径である。たとえば、ねじ12がM22の時は、ねじ13はM18といった具合である。
ハブボルト1のインナーナット2の外に延ばした部分11に切ったねじ13にロックハブナット14を螺合するとともに、ロックハブナット14をインナーナット2に軸方向に、直接的に、または間接的に(間接的にとはスペーサ15等を介してという意味である)、当接させる。
【0012】
本発明の全実施例にわたって共通する部分の作用・効果を説明する。
ハブボルト1のインナーナット2の外に延ばした部分11に、ハブボルト1のインナーナット2との螺合部に切ったねじ12のねじ切り方向と逆方向にねじ切りしたねじ13を切っておき、ハブボルト1のインナーナットの外に延ばした部分11に切ったねじ13にロックハブナット14を螺合するとともにロックハブナット14をインナーナット2に軸方向に直接的にまたは間接的に当接させたので、インナーナット2が緩み方向に回転する時に、ロックハブナット14が同じ回転方向に連れ回りしようとすると、ロックハブナット14は、インナーナット2が緩み方向に回転する時の軸方向の移動と反対方向に、軸方向に移動しようとし、インナーナット2とロックハブナット14の軸方向移動の方向が互いに逆方向でかつ食い込む方向(互いに接近する方向、当接が強くなる方向)となり、互いに移動できず、したがって互いに回転できずロックし、インナーナット2の緩み回転を防止できる。
ただし、本発明のインナーナット2の緩み防止構造は、アウターナット3の緩み回転まで防止するものではない。
【0013】
つぎに、本発明の各実施例に特有な部分を説明する。
本発明の実施例1では、図1、図2に示すように、ロックハブナット14はインナーナット2に、直接、軸方向に当接面23にて当接している。
【0014】
本発明の実施例1の作用・効果については、ロックハブナット14はインナーナット2に、直接、軸方向に当接しているので、ロックハブナット14とインナーナット2との間にスペーサ15を介在させる本発明の実施例2の場合に比べて、ハブボルト1の長さを短くすることができる。
【0015】
本発明の実施例2では、図3、図4に示すように、ロックハブナット14とインナーナット2との間に、軸方向の一方向でインナーナット2に当接し他方向でロックハブナット14に当接するスペーサ15が介在されている。スペーサ15とインナーナット2は同軸芯である。スペーサ15を回転方向にインナーナット2に拘束してインナーナット2と一体的に回転させるために、スペーサ15にインナーナット2の端部の断面四角形部24の外周部位に延びる延長部16を設け、該延長部16の内側にインナーナット2の端部の断面四角形部24に嵌合する断面四角形穴を設け、スペーサ15の断面四角形穴とインナーナット2の端部の断面四角形部24を嵌合させてある。スペーサ15の延長部16と反対側の端部の端面25はロックハブナット14の軸直交面17に当接している。ロックハブナット14は頭部19から軸方向に延びる延長部18を有し、延長部18の内周部に切ったねじ部でハブボルト1の端部のねじ13に螺合している。軸直交面17は延長部18と頭部19との間に位置する。
【0016】
本発明の実施例2の作用・効果については、ロックハブナット14とインナーナット2との間にスペーサ15を介在させたので、インナーナット2が緩み方向に回転する時に、スペーサ15を介してロックハブナット14が連れ回りしようとすると、ロックハブナット14はインナーナット2が緩み方向に回転する時の軸方向の移動と反対方向に、軸方向に移動しようとし、インナーナット2とロックハブナット14の軸方向移動の方向が互いに逆方向でスペーサ15を互いに逆方向から押して互いに移動できず、したがって互いに回転できずロックし、インナーナット2の緩み回転を防止できる。
【0017】
本発明の実施例3では、図5に示すように、上記の本発明の実施例2の構造に、アウターナット3の軸力管理ナットアッセンブリ構造100(本出願人が特願2005−4147号で提案した構造)が付加された実施例である。
ロックハブナット14とインナーナット2との間に、軸方向に、一方向にインナーナット2に当接し他方向にロックハブナット14に当接するスペーサ15が介在されている。スペーサ15とインナーナット2は同軸芯である。スペーサ15を回転方向にインナーナット2に拘束してインナーナット2と一体的に回転させるために、スペーサ15にインナーナット2の端部の断面四角形部24の外周部位に延びる延長部16を設け、該延長部16の内側にインナーナット2の端部の断面四角形部24に嵌合する断面四角形穴を設け、スペーサ15の断面四角形穴とインナーナット2の端部の断面四角形部24を嵌合させてある。スペーサ15の延長部16と反対側の端部の端面25はロックハブナット14の軸直交面17に当接している。ロックハブナット14は頭部19から軸方向に延びる延長部18を有し、延長部18の内周部に切ったねじ部でハブボルト1の端部のねじ13に螺合している。軸直交面17は延長部18と頭部19との間に位置する。
【0018】
軸力管理ナットアッセンブリ構造100は、アウターナット3と、アウターナット3に対して相対回転される締め付けナット112と、アウターナット3と締め付けナット112との間に介装されるリングアッセンブリ113と、を備えている。
リングアッセンブリ113は、複数のリング(軸力伝達リング122、弾性変形リング121、軸力管理リング120、第2の軸力管理リング123)を含み、そのうちの少なくとも1つのリング120は、ボルト軸力(インナーナット軸力)が適正軸力になる前は回転自在でありボルト軸力(インナーナット軸力)が適正軸力以上で回転が拘束される軸力管理リングであり、締め付けナット112を締めつけていった時に軸力管理リング120が回転を拘束されると、軸力が適正軸力に到達したことを知ることができ、少し増し締めしておく。第2の軸力管理リング123は、ボルト軸力(インナーナット軸力)が適正軸力より大の過剰軸力になる前は回転自在であり、ボルト軸力(インナーナット軸力)が過剰軸力以上になると回転が拘束されるリングであり、締め付けナット112を締めつけていった時に第2の軸力管理リング123が回転を拘束されると、それ以上の回転を止め、少し緩めておく。これによって、ボルト軸力(インナーナット軸力)を適正軸力と過剰軸力との間の軸力に設定することができる。
【0019】
本発明の実施例3の作用・効果については、ロックハブナット14とインナーナット2との間にスペーサ15を介在させたので、インナーナット2が緩み方向に回転する時に、スペーサ15を介してロックハブナット14が連れ回りしようとすると、ロックハブナット14はインナーナット2が緩み方向に回転する時の軸方向の移動と反対方向に軸方向に移動しようとし、インナーナット2とロックハブナット14の軸方向移動の方向が互いに逆方向でスペーサ15を互いに逆方向から押して互いに移動できず、したがって互いに回転できずロックし、インナーナット2の緩み回転を防止できる。
【0020】
また、アウターナット3の軸力管理ナットアッセンブリ構造100が付加されているので、軸力管理ナットアッセンブリ構造100が付加されていない構造に比べて、アウターナット3が緩みにくく、かつ、ボルト軸力(インナーナット軸力)管理ができるので、さらにボルト、インナーナットなどに対する安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1のダブルホイール取付け構造の断面図(図2のI−I断面図)である。
【図2】本発明の実施例1のダブルホイール取付け構造の正面図である。
【図3】本発明の実施例2のダブルホイール取付け構造の断面図(図4のIII-III断面図)である。
【図4】本発明の実施例2のダブルホイール取付け構造の正面図である。
【図5】本発明の実施例3のダブルホイール取付け構造の断面図である。
【図6】従来のダブルホイール取付け構造の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ハブボルト
2 インナーナット
3 アウターナット
4 ハブ
5 インナーホイール
6 アウターホイール
7 ブレーキドラム
8 ハブナット
9 膨出部
10 貫通孔
11 ハブボルトの、インナーナットの外に延ばした部分
12 ハブボルトのねじ
13 ハブボルトの、インナーナットの外に延ばした部分のねじ
14 ロックハブナット
15 スペーサ
16 スペーサの延長部
17 軸直交面
18 ロックハブナットの延長部
19 ロックハブナットの頭部
20、21、22 ねじ
23 当接面
24 断面四角形部
25 スペーサの端面
100 軸力管理ナットアッセンブリ構造
112 締め付けナット
113 リングアッセンブリ
120 軸力管理リング
121 弾性変形リング
122 軸力伝達リング
123 第2の軸力管理リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブボルトにインナーホイールを押さえるインナーナットを螺合しインナーナットの外周にアウターホイールを押さえるアウターナットを螺合したダブルホイール取付け構造であって、
ハブボルトをインナーナットを軸方向に貫通させてインナーナットの外に延ばし、
ハブボルトのインナーナットの外に延ばした部分に、ハブボルトのインナーナットとの螺合部に切ったねじのねじ切り方向と逆方向にねじ切りしたねじを切っておき、
ハブボルトのインナーナットの外に延ばした部分に切ったねじにロックハブナットを螺合するとともにロックハブナットをインナーナットにインナーナットの軸方向に当接させたダブルホイール取付け構造。
【請求項2】
ロックハブナットとインナーナットとの間に、軸方向の一方向でインナーナットに当接し他方向でロックハブナットに当接するスペーサを介在させた請求項1記載のダブルホイール取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−248458(P2006−248458A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70425(P2005−70425)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)